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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079873
(43)【公開日】2024-06-12
(54)【発明の名称】車両の機械部品の適合性の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/021 20190101AFI20240605BHJP
【FI】
G01M13/021
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041956
(22)【出願日】2024-03-18
(62)【分割の表示】P 2021559423の分割
【原出願日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】1903978
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タレ-ピネ サラ
(72)【発明者】
【氏名】リシャール-ヴィットン エメリ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両の機械部品で実施される適合性の検査の分野に関し、作業者によりラックを検査するステップでは、一方では紫外線で照らされた部屋に作業者がいる必要があり、他方では欠陥を検出するために本体と歯部を観察できるように、検査されるラックを作業者が握る必要がある。この方法は人為的なミスが生じやすい。そして、作業者が欠陥に気付かないおそれがある。
【解決手段】車両の機械部品の適合性の検査方法(100)であって、機械部品(10)の観察画像(101)を生成するための画像キャプチャステップ(60)と、解析ユニットによって観察画像(101)を解析するステップ(90)とを有し、前記解析ステップ(90)が、機械部品(10)が適合しているか、逆に適合していないかを示す結果信号(C,D)を発する結果段階を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の機械部品(10)の適合性の検査方法(100)であって、
機械部品(10)の観察画像(101)を生成するための画像キャプチャステップ(60)と、解析ユニット(9)によって観察画像(101)を解析するステップ(90)とを有し、前記解析ステップ(90)は、機械部品(10)が適合しているか、逆に適合していないかを示す結果信号(C,D)を発する結果段階(94)を有する検査方法(100)。
【請求項2】
請求項1に記載の検査方法(100)において、
解析ステップ(90)は、少なくとも1つの検出基準(X)が定義される定義段階(92)を有する検査方法(100)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検査方法(100)において、
少なくとも1つの検出基準(X)は、値及び/または所定の色彩を有する一組のピクセルの幅と、値及び/または所定の色彩を有する一組のピクセルの高さとから定められる検査方法(100)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の検査方法(100)において、
画像キャプチャステップ(60)は、少なくとも1つの画像キャプチャ装置(61、62)が、機械部品(10)の少なくとも1つの未加工画像を生成する未加工画像段階(68)を有する検査方法(100)。
【請求項5】
請求項4に記載の検査方法(100)において、
未加工画像段階(68)中に、画像キャプチャ装置(61、62)は、少なくとも1つの未加工の白黒画像を生成する検査方法(100)。
【請求項6】
請求項4または5に記載の検査方法(100)において、
未加工画像段階(68)中に、画像キャプチャ装置(61、62)は、機械部品(10)が白色光で照射され、第1画像を生成する検査方法(100)。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載の検査方法(100)において、
未加工画像段階(68)中に、画像キャプチャ装置(61、62)は、機械部品(10)が紫外線で照射され、第2画像を生成する検査方法(100)。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1項に記載の検査方法(100)において、
画像キャプチャステップ(60)は、観察画像(101)を得るために、少なくとも1つの未加工画像の画像処理段階(69)を有する検査方法(100)。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の検査方法(100)において、
画像処理段階(69)中に、第1画像から第2画像を減算することにより観察画像(101)を得る検査方法(100)。
【請求項10】
請求項9に記載の検査方法(100)において、
識別された各欠陥の数及び/または位置を推定するステップを有する検査方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の機械部品で実施される適合性の検査の分野に関し、より詳細には、欠陥を自動的に検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品の中には、車両の乗員の安全性に関わるものがある。そのため、そのような部品の製造業者は、あらかじめ定められた仕様に応じた適合性についての適合性検査によって、その適合性を保証する必要がある。
【0003】
適合性検査により、特に、例えば材料の製造上の問題または機械部品の表面処理(粒界レベル)に起因して、表面または下層に冶金的な欠陥がないことを認識、特定、及び保証することができる。
【0004】
そして、限定的でない例として、特定の機械部品であるステアリングシステムのラックで実施される適合性検査がある。ただし、適合性検査は、例えば、駆動ピニオン、コネクティングロッド、カムシャフト、ステアリングナックルのような他の機械部品にも適用できる。
【0005】
ラックは、タイロッドを介して車輪を操ること、言い換えると車輪の方位角度を変えるようにする機械部品である。ラックは、一般に400mmから900mmの間である。ラックは強磁性体の材料で形成される。ラックは、一般に直径が22mmから34mmの間のほぼ円筒形の本体と、歯部とを有している。
【0006】
歯部は、ラックの長手方向軸と交差する軸に沿って延びる複数の歯を有する。各歯は、歯溝によって、隣接する歯から離れている。各歯は、歯の頂点で接続される右側歯部フランクと左側歯部フランクとを有する。
【0007】
ラックの製造中には欠陥が生じることがある。より具体的には、本体が少なくとも1つの「ロッドライン」を有することがある。ロッドラインは、ラックの長手方向軸に沿って延びる線状の欠陥で構成される。さらに、歯部は、長さが少なくとも1mmで幅が少なくとも5μmの、以下で「クラック」と称する欠陥を有することがある。そのため、各ラックの適合性検査、言い換えると欠陥がないことを検査する必要がある。
【0008】
これまで、ラックの適合性検査には、
ラックに電流を流すことが可能な磁化装置によりラックを磁化するステップと、
紫外線で蛍光性になる現像剤を噴霧装置によりラックに吹き付けるステップと、
作業者によりラックを検査するステップと、
消磁するステップと、
が含まれている。
【0009】
この適合性検査は、当然ながらラック以外の他の機械部品にも適用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
作業者によりラックを検査するステップでは、一方では紫外線で照らされた部屋に作業者がいる必要があり、他方では欠陥を検出するために本体と歯部を観察できるように、検査されるラックを作業者が握る必要がある。
【0011】
この方法は人為的なミスが生じやすいのが欠点である。そして、作業者が欠陥に気付かないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述の欠点のすべてまたは一部を克服することを目的とし、機械部品の観察画像を生成するための画像キャプチャステップと、解析ユニットによって観察画像を解析するステップと、機械部品が適合しているか逆に非適合であるかを表す結果信号を発する結果段階とを有する、車両の機械部品の適合性の検査方法を提案するものである。
【0013】
画像キャプチャステップ中には、画像キャプチャ装置が機械部品の観察画像を少なくとも1つ作成する。前記観察画像は、n×mピクセルのサイズのデジタル画像であり、n≧1及びm>1である。ピクセルは、画像の最小構成要素である。ピクセルは、その輝度と色彩とを表す値によって特定される。
【0014】
一組のピクセルは、第1ピクセルの少なくとも一辺が第2ピクセルの一辺に並置された少なくとも2つのピクセルで構成されると定められ、第1ピクセルと第2ピクセルは、定められた範囲内に含まれる値及び/または色彩を有する。一組のピクセルは、欠陥、歯の頂部、歯のフランクなどの機械部品の要素に対応する観察画像の特徴表示である。言い換えると、特徴表示は、観察画像上の機械部品の要素の表示に特有の観察画像の形状または表面である。同一要素の特徴表示は、例えば、観察画像が作成された照明条件、視る角度、または機械部品の表面の状態に応じて変化する。
【0015】
解析ステップは、機械部品、または機械部品の少なくとも一部を表す観察画像を入力として受ける。機械部品がラックである場合、観察画像は、ラックの本体または歯部の少なくとも一部を表す。
【0016】
解析ステップにより、機械部品の欠陥の有無を検出できる。
【0017】
本発明の特徴によれば、解析ステップは、観察画像の一組のピクセルの少なくとも1つの特性の値を、少なくとも1つの検出基準に対応する少なくとも1つの特性の基準値と比較する段階を有する。
【0018】
比較段階では、観察画像から、機械部品の欠陥の有無を判断する。より詳細には、比較段階では、観察画像の一組のピクセルの少なくとも1つの特性の値を、検出基準に対応する少なくとも1つの特性の基準値と比較し、少なくとも1つの検出基準の関数として、観察画像が、機械部品の欠陥の存在を露わにする一組のピクセル、つまり特徴表示を有するか否かを判断する。
【0019】
比較段階は、観察画像のすべての組のピクセルを比較するように繰り返される。
【0020】
少なくとも1つの検出基準は、ピクセルの組の測定可能な大きさ、つまりピクセルの組の特性の基準値である。検出基準は、作業者または機械によって慎重に選択され、欠陥を表す一組のピクセル、つまり、特性が検出基準の正当性を立証する一組のピクセルの観察画像における検出を可能にする。
【0021】
検出基準の選択を容易にするために、機械部品の観察画像は、定められた、再現可能なパラメータに従って作成される。このパラメータは、画像キャプチャ装置の外部の量であり、且つ検査方法の外部の量である。
【0022】
このように、画像キャプチャステップ中には、定められたパラメータに従って、1つまたは複数の機械部品の複数の画像を作成できる。そして、複数の画像上で欠陥の有無を検査できるので、単一または複数の機械部品と、すべての観察画像と同一の少なくとも1つの検出基準と、の適合性を判断できる。
【0023】
本発明に係るラックの適合性の検査方法は、観察画像に基づき、且つ客観的な検出基準に基づく。したがって、機械部品の欠陥の検査は、もはや作業者によって主観的に判断されない。
【0024】
この検査方法の目的は、欠陥を有する機械部品を、欠陥を有さない機械部品から選別することである。そのため、解析ステップは結果段階を有する。結果段階は、結果信号を送信することにより、機械部品が欠陥を有するか否かを示す。
【0025】
より詳細には、比較段階で、その特性が少なくとも1つの検出基準の正当性を立証する一組のピクセルが検出された場合、その機械部品は欠陥を有する。逆に、比較段階で、少なくとも1つの検出基準の正当性を立証するどのような組のピクセルも検出されない場合、機械部品は欠陥を含まないので、機械部品は適合する。
【0026】
結果信号は、音声信号または視覚信号で構成してもよい。
【0027】
結果信号は、作業者に、またはラックを選別する選別装置に送信される。
【0028】
結果信号は、適合信号または欠陥信号である。
【0029】
本発明の特徴によれば、画像キャプチャステップは自動的に行われる。
【0030】
したがって、観察画像が生成されるパラメータは、機械によって客観的に検査される。
【0031】
本発明の特徴によれば、解析ステップは、少なくとも1つのプロセッサを有する解析ユニットによって、人間が介入せずに自動的に実行される。
【0032】
したがって、機械部品の欠陥の検出は、人為的なエラーに影響されない。欠陥の検出は客観性を有する。
【0033】
本発明の特徴によれば、比較段階は、観察画像の一組のピクセルの特性の値を、複数の検出基準に対応する複数の特性の基準値と比較する。
【0034】
本発明の特徴によれば、この方法の特に比較段階は繰り返される。
【0035】
本発明の特徴によれば、解析ステップは、少なくとも1つの検出基準が定義される定義段階を有する。
【0036】
定義段階では、作業者または機械は、少なくとも1つの検出基準、つまり少なくとも1つの特性の基準値を、画像が生成されたパラメータの関数として変更できる。
【0037】
本発明の特徴によれば、検出基準は、「マシンラーニング」または「ディープラーニング」とも呼ばれる機械学習プロセスによって定められる。
【0038】
本発明の特徴によれば、機械部品は、車両のステアリングシステムの部品である。
【0039】
本発明の特徴によれば、機械部品は、ラックである。
【0040】
本発明の特徴によれば、
少なくとも1つの検出基準は、値及び/または所定の色彩を有する一組のピクセルの幅と、値及び/または所定の色彩を有する一組のピクセルの高さとから定められる。
【0041】
したがって、観察画像が生成されたパラメータに応じて、作業者または機械が検出基準を変更できる。
【0042】
本発明の特徴によれば、画像キャプチャステップは、少なくとも1つの画像キャプチャ装置が機械部品の少なくとも1つの未加工画像を生成する未加工画像段階を有する。
【0043】
機械部品の未加工画像は、観察画像が生成されるパラメータと、画像キャプチャ装置の設定によって決まる。
【0044】
本発明の特徴によれば、画像キャプチャ装置は、少なくとも1つの未加工の白黒画像を生成する。
【0045】
未加工の白黒画像は、ピクセルのマトリクスを有し、前記ピクセルはその値のみによって定められる。黒は0の値を有する。白は255の値を有する。0から255の間の値を持つピクセルは、程度の差はあるがダークグレーの色彩を有する。
【0046】
白黒画像は、その画像のピクセルが色彩を有さないので、選択できる検出基準の数が少なくなる。
【0047】
本発明の特徴によれば、未加工画像段階中に、画像キャプチャ装置は、機械部品が白色光で照射されて第1画像を生成する。
【0048】
白色光は、可視帯域の複数の電磁放射、つまり約400nmから800nmの間の波長を含む多色光であり、または加算合成の原色、すなわち赤、緑、青に対応する同じ強度の放射を含む多色光である。
【0049】
第1画像は、画像内に存在する領域を決定することは可能であるが、欠陥の表示特徴を確実に検出することはできない。これらは、光沢のある部分である。
【0050】
第1画像において、光沢のある部分は白く表示され、機械部品の他の部分は薄いグレーになる。
【0051】
第1画像は、解析ステップ中に、自動解析の対象にならない画像の領域の幾何学的なマスクを作成するために使用される。
【0052】
本発明の特徴によれば、未加工画像段階中に、画像キャプチャ装置は、機械部品が紫外線で照射され、第2画像を生成する。
【0053】
紫外線は、約400nmより波長の短い放射線からなる光である。
【0054】
機械部品に存在する欠陥を検出するために、紫外線下で蛍光性になる現像剤を前記機械部品に噴霧することが知られている。
【0055】
第2画像では、紫外線下で光る欠陥が存在する可能性を強調できる。したがって、第2
画像上で、機械部品の残りの部分が暗いグレーであるのに対し、欠陥は白く表れる。
【0056】
本発明の特徴によれば、第1画像は第2画像と同一の寸法を有する。
【0057】
本発明の特徴によれば、機械部品の位置は、第1画像と第2画像で同一である。
【0058】
本発明の特徴によれば、画像キャプチャステップは、観察画像を得るために、少なくとも1つの未加工画像の画像処理段階を有する。
【0059】
画像処理段階では、処理された未加工画像の少なくとも1つのピクセルの値または/及び色彩の修正を行う。
【0060】
処理段階は、新たな画像を得るために、複数の未加工画像を組み合わせることもできる。
【0061】
処理段階は、新たな画像を作成するように複数の画像を最後に組み合わせることができる。例えば、画像キャプチャ装置がリニア画像キャプチャ装置である場合、未加工画像は、1*nピクセル(n≧1)に近い大きさのリニア画像である。リニア画像は輝度が一様である。したがって、処理段階では、機械部品の展開図(developed view)を特徴とする新たな画像を得るように、リニア画像を組み合わせることができる。
【0062】
処理段階では、未加工画像のコントラストや輝度を変えたり、シャープネスを高めたり、色彩を変えたりすることができる。
【0063】
このようにして、欠陥を検出できる観察画像を得ることができる。
【0064】
本発明の特徴によれば、画像処理段階中に、第1画像から第2画像を減算することにより観察画像が得られる。観察画像は、第1画像と第2画像から作成される新たな画像である。
【0065】
2つの画像を減算する操作では、第1画像の各ピクセルの値から、第2画像のピクセルの値を、対応するピクセルから減算することにより、観察画像の対応するピクセルの値を得ることができる。
【0066】
減算の操作は、以下の式で示される。
【0067】
[数1]
xy=P xy-P xy
ここで、P xy:観察画像の座標(x,y)を有するピクセルの値、P xy:第1画像の座標(x,y)を有するピクセルの値、P xy:第2画像の座標(x,y)を有するピクセルの値である。
【0068】
この減算操作により、第2画像に存在する欠陥のコントラストを高めることが可能となる。
【0069】
第2画像では欠陥が白く、欠陥を表すピクセルP xyは255に近い高い値になっている。
【0070】
第1画像で解析されたピクセルP xyは概ねグレーであり、255よりも小さく、例えば0に近い値である。
【0071】
そのため、減算操作中に、観察画像の欠陥を表すピクセルの値は-255に近くなる。負の値はすべて値0と同じである。したがって、観察画像が欠陥を表すピクセルは黒くなる。
【0072】
機械部品の残りの部分は、第1画像では明るいグレー、第2画像では暗いグレーで表され、第1画像のピクセルの値は第2画像のピクセルの値よりも大きい。したがって、観察画像のピクセルの値は大きく、言い換えると機械部品は観察画像では薄いグレーで表示される。
【0073】
このように、観察画像では、機械部品の損失に対して欠陥のコントラストが大きくなり、言い換えると機械部品の幾何学的変化のコントラストが小さくなる。
【0074】
比較段階では、欠陥のコントラストを高めるように処理された画像が使用される。
【0075】
したがって、少なくとも1つの検出基準が容易に決定される。
【0076】
本発明の特徴によれば、減算操作に続いて、識別された各欠陥の数及び/または位置を推定するステップを有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1図1は、本発明に係る検査方法を実行可能な設備を第1角度で見た図である。
図2図2は、図1の設備を第2角度で見た図である。
図3図3は、少なくとも1つの未加工画像を生成する装置の概略図である。
図4図4は、本発明に係る検査方法のフローチャートである。
図5図5は、本発明に係る画像キャプチャステップ中に撮影される、ラックの歯部の第1画像である。
図6図6は、図5のラックの歯部の第2画像である。
図7図7は、本発明に係る観察画像である。
図8図8は、本発明に係る比較段階の画像である。
図9図9は、解析ステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明をよりよく理解するために、非限定的な例である本発明に係る実施形態について、添付の概略図面を参照して以下に説明する。
【0079】
図1及び図2は、本発明に係る検査方法100を実行可能にする設備1を示す。この設備1は、2本のコンベヤベルト21を備えたコンベヤ2を有する。前記コンベヤ2は、車両のステアリングシステム用のラック10を受け入れるための「V」字形状の支持部を有する。ラック10は、コンベヤベルト21と交差するよう配置されている。一のコンベヤベルト21は、他方に対して相対的に移動可能である。したがって、2本のコンベヤベルト21の間の間隔は、前記ラック10の長さの関数として調整される。
【0080】
設備1は、磁化装置3を有する。磁化装置3は、ラック10に電流を流すことによりラックを磁化する。
【0081】
設備1は、現像剤を噴霧する装置4を有する。現像剤は、紫外線によって蛍光を発する。現像剤は水性の基剤を含む。
【0082】
設備1は、現像剤を乾燥させる装置5を有する。乾燥装置5は、ラック10に電流を流することにより、その温度を上昇させて現像剤を乾燥させる。
【0083】
また、装置1は、少なくとも1つの画像を生成する装置6を有する。図3は、少なくとも1つの画像を生成する装置6を示す概略図である。
【0084】
前述の少なくとも1つの画像を生成する装置6は、ラック10の長手方向軸に平行に配置された4つの第1画像キャプチャ装置61を有する。第1画像キャプチャ装置61は、カメラで構成されている。第1画像キャプチャ装置61は、設備1に対して固定され、より具体的には、ラック10の長手方向軸に沿って延びる支持部63に固定されている。第1画像キャプチャ装置61は、いわゆるリニア画像キャプチャ装置である。各第1画像キャプチャ装置61は、20°から120°まで設定可能な、40°の未加工のリニア画像を生成する。第1画像キャプチャ装置61は、未加工の白黒画像を生成する。第1画像キャプチャ装置61は、白色光の下で、または紫外線ランプ7から照射される紫外線の下で動作する。
【0085】
また、前述の少なくとも1つの画像を生成する装置6は、ラック10の長手方向軸とで90°より小さい角度を形成するように配置された2つの第2画像キャプチャ装置62を有する。2つの第2画像キャプチャ装置62は、カメラで構成されている。2つの第2画像キャプチャ装置62は、ラック10の長手方向軸に交差する軸に対して対称に配置されている。第2画像キャプチャ装置62は、2つの第2画像キャプチャ装置62の移動系、より具体的には、ラック10の長手方向軸に沿った2つの第2画像キャプチャ装置62の並進系64に固定されている。第2画像キャプチャ装置62は、いわゆるマトリクス画像キャプチャ装置である。第2画像キャプチャ装置62は、未加工の白黒マトリクス画像を生成する。第2画像キャプチャ装置62は、白色光の下で、または紫外線ランプ7から照射される紫外線の下で動作する。
【0086】
前述の少なくとも1つの画像を生成する装置6は、ラック10を移動させるシステムをさらに有する。ラック10を移動させるシステムは、ラック10の長手方向軸の周りでラック10を回転させるシステム65を備える。ラック10をその長手方向軸の周りで回転させるために、回転システム65は、ラック10の一端に接触する軸要素を有する。
【0087】
少なくとも1つの画像を生成する前述の装置6は、少なくとも1つの画像を解析ユニット9に送信するための装置8を備えている。
【0088】
解析ユニット9は、スクリーンに接続されたプロセッサである。解析ユニット9は、少なくとも1つの画像を生成する装置6から、ある距離を置いて配置される。
【0089】
また、設備1は、ラック10を消磁する装置3’を備え、当該ラックを消磁できる。
【0090】
図4は、本発明に係る検査方法100のフローチャートである。
【0091】
ラック10の適合性を検査する方法100は、上述した設備1で実行される。
【0092】
検査方法100は、ラック10をコンベヤ2上に載置するステップ20を有する。この載置ステップ20は、作業者または機械によって行われる。作業者または機械は、ラック10の各端部を、コンベヤベルト21の支持部に配置する。
【0093】
コンベヤ2は、ラック10を磁化するステップ30を実行する磁化装置3へラック10を搬送する。
【0094】
その後、ラック10には、噴霧ステップ40中に現像剤が噴霧装置4によって噴霧される。
【0095】
乾燥装置5は、ラック10に電流を流すことにより、その温度を上昇させて乾燥ステップ50で現像剤を乾燥させる。このため、画像キャプチャステップ60中は現像剤が乾燥しており、形成される光沢領域は少ない。
【0096】
コンベヤ2は、ラック10の画像キャプチャステップ60を実行する、少なくとも1つの画像を生成する装置6へラック10を搬送する。画像キャプチャステップ60は、ラック10の観察画像101を生成する。
【0097】
より具体的には、画像キャプチャステップ60は、未加工画像段階68を含んでいる。
【0098】
未加工画像段階68は、第1ロッド画像を生成するための白色光の下でのロッド画像キャプチャ段階と、次に第2ロッド画像を生成するための紫外線の下での、ッド画像キャプチャ段階を含む。ロッド画像キャプチャ段階では、ラック10の回転装置65がラック10の所定角度の回転を段階的に行い、各第1画像キャプチャ装置61が各回転ステップで第1画像と第2ロッド画像を生成する。
【0099】
言い換えると、第1ステップ「n」では、第1画像キャプチャ装置61のそれぞれが、ラック10のライン「m」の部分の未加工画像を、白色光の下で、次に紫外線の下で生成する。第1画像キャプチャ装置61に面するラック10の表面の、ラック10の全長に渡って延びる領域を、ラック10のラインと称する。
【0100】
次のステップ「n+1」では、ラックをその長手方向軸の周りで所定角度旋回させる。そうすると、ライン「m+1」は第1画像キャプチャ装置61に面する。各第1画像キャプチャ装置61は、ラック10のライン「m+1」の一部分の未加工画像を、白色光の下で生成し、次に紫外線の下で生成する。
【0101】
ラックがその長手方向軸の周りで完全に回転すると、つまりライン「m」が再び第1画像キャプチャ装置61に対向すると、ラックラインの組の未加工画像が白色光及び紫外線の下で生成されている。
【0102】
未加工画像段階68は、次に、第1歯部画像を生成するための白色光の下での歯部画像キャプチャ段階と、次に第2歯部画像を生成するための紫外線の下での歯部画像キャプチャ段階を有する。歯部画像キャプチャ段階中に、2つの第2画像キャプチャ装置62のそれぞれは、ラック10の歯部12の未加工画像を、白色光の下で生成し、次に紫外線の下で生成する。
【0103】
より詳細には、第2画像キャプチャ装置62の一方は、歯部12の少なくとも1つの歯71の右側歯部フランク70の未加工画像を撮ることができるように方向が定められ、画像キャプチャ装置62の他方は、少なくとも1つの歯71の左側歯部フランクの画像を撮ることができるように方向が定められている。第2画像キャプチャ装置62の被写界深度により、同じ未加工画像上で3つの歯部フランクを撮影することが可能である。
【0104】
このように、ラック10は、歯部を第2画像キャプチャ装置62に向けて配置するように方向が定められている。第2画像キャプチャ装置62は、白色光の下で、次に紫外線の下で、最初の3つの歯「d」の右側及び左側歯部フランク70の未加工画像を撮る。次に、第2画像キャプチャ装置62は、並進システム64によって所定の距離だけ平行に移動
する。この所定の距離は、第2画像キャプチャ装置62の被写界深度によって決まる。第2画像キャプチャ装置62は、白色光の下で、次に紫外線の下で、次の3つの歯「d+1」の右側及び左側歯部フランク70の未加工画像を撮影する。このようにして、一組の歯12の全ての歯71の右側及び左側歯部フランク70の未加工画像が生成される。
【0105】
画像キャプチャステップ60は、画像処理段階69を有する。画像処理段階69は、ラック10のライン「m」の画像を形成するように、白色光の下で撮影されたラインの4つの部分「m」の未加工ロッド画像を組み合わせる。次に、処理段階69では、ラック10のライン「m+1」の画像を形成するように、白色光の下で撮影されたラインの4つの部分「m+1」を組み合わせる。最後に、処理段階69では、白色光の下で撮影されたラック10の本体の展開図に対応する第1ロッド画像を生成するように、ライン「m」の白色光の下での画像とライン「m+1」の白色光の下での画像とを組み合わせる。
【0106】
同様に、処理段階69では、紫外線下で撮影されたラック10の本体の展開図に対応する第2ロッド画像を生成する。
【0107】
処理段階69では、白色光下で撮影されたラックの右側歯部フランク70の未加工画像を、歯部12の右側歯部フランク70の展開図に対応する歯部の第1画像72を得るように組み合わせる。歯部72の第1画像が図5に示されている。歯部12が薄いグレーであるのに対し、歯の頂部71と歯の溝部71は白色光の下で光沢領域であるため、白色である。
【0108】
同様に、処理段階69では、紫外線下で撮影されたラックの右側歯部フランク70の未加工画像を、右側歯部フランク70の展開図に対応する第2歯部画像73を得るように組み合わせる。第2歯部の画像73が図6に示されている。歯部12が濃いグレーであるのに対し、欠陥部74は白色である。実際、紫外線下で生成された前述の画像では、クラック74に導入された現像剤が蛍光色になり、したがって光沢を有する。
【0109】
当然ながら、処理段階69では、白色光の下で撮影されたラックの左側歯部フランクの未加工画像に同じ処理を実施する。
【0110】
処理段階69では、次に、第1歯部画像72から第2歯部画像73を減算して観察画像101を作成する。観察画像101を図7に示す。
【0111】
観察画像101において欠陥部74は黒で示され、薄いグレーで示される右側歯部70のフランク上に明確に現れている。
【0112】
少なくとも1つの画像を生成する装置6によって撮影された観察画像101は、送信装置8によって観察画像を送信するステップ80で解析ユニット9に送信される。
【0113】
解析ユニット9は、観察画像101の解析ステップ90を実行する。
【0114】
解析ステップ90は、少なくとも1つの検出基準Xが定義される定義段階92を有し、例えば、3つの検出基準を定義できる。検出基準Xは、観察画像101の一組のピクセルの特性の基準値に対応する。
【0115】
解析ステップ90は比較段階93を含み、比較段階中に観察画像101の第1組のピクセルが検出される。次に、前述した第1組のピクセルの第1特性の値が、第1検出基準に対応する前記第1特性の基準値と比較される。次に、前述した第一組のピクセルの第2特性の値が、第2検出基準に対応する前記第2特性の基準値と比較される。先の操作は、検
出基準が定義されるのと同じ回数だけ繰り返される。
【0116】
先の操作は、次に、第2組のピクセルについて、ピクセルの組が検出されるのと同じ回数だけ繰り返される。
【0117】
その後、比較段階は、実行された比較の結果Rを結果テーブルの形で結果段階94に送信する。
【0118】
結果段階94は、観察画像101の一組のピクセルの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの値により、少なくとも1つの検出基準の正当性が立証されるかどうかを判断し、次に、ラック10が適合しているか、または逆に適合していないかを示す結果信号C,Dを発する。
【0119】
また、結果段階94では、図8に示すように、検出された欠陥部74’が現れる観察画像101を表示してもよい。
【0120】
ラック10がロッドラインやクラックタイプの欠陥部を有さない場合、ラック10は適合していると判断される。そうすると、解析ユニット9から適合信号Cが発せられる。ラック10がロッドラインまたはクラックタイプの欠陥を有する場合、ラック10は不適合であると判断される。そうすると、解析ユニット9から欠陥信号Dが発せられる。
【0121】
適合信号Cの場合、コンベヤ2がラック10を消磁装置3’に運び、ラック10を消磁するステップ300が実行される。
【0122】
欠陥信号Dの場合は、作業者または機械によってラックが退避して、退避ステップ400中にコンベヤ2から当該ラックが取り除かれる。このとき、ラックに消磁ステップ300は行われない。
【0123】
このように、設備1によりラック10の適合性検査が可能になる。
【0124】
当然ながら、本発明は、添付の図に記載され且つ表された実施形態に限定されない。特に様々な要素の構成に関して、または技術的に同等なものの代用によって、さらに本発明の保護範囲から逸脱することなく、変更することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングシステム用の、磁化処理されて現像剤が噴霧されるラック(10)を検査するための方法(100)であって、
前記ラック(10)の観察画像(101)を生成するための画像キャプチャステップ(60)と、解析ユニット(9)によって観察画像(101)を解析する解析ステップ(90)とを有し、
前記画像キャプチャステップ(60)は、
少なくとも1つのリニア画像キャプチャ装置(61、62)が、前記ラック(10)の少なくとも1つの未加工画像を生成する未加工画像段階(68)であって、前記未加工画像が1*nピクセル(n≧1)に近い大きさのリニア画像であり、前記リニア画像キャプチャ装置(61、62)が、前記ラック(10)が白色光で照射される第1画像と、欠陥が存在する可能性を強調するために前記ラック(10)が紫外線で照射される第2画像とを生成する未加工画像段階(68)と、
少なくとも1つの未加工画像の画像処理段階(69)であって、観察画像(101)を得るために、第1画像から第2画像が減算され、前記第1画像が、前記解析ステップの対象にならない観察画像の領域の幾何学的なマスクを作成するために使用される画像処理段階(69)と、を有し、
前記解析ステップ(90)は、
前記ラック(10)が適合しているか、逆に適合していないかを示す結果信号(C,D)を発する結果段階(94)を有し、
前記解析ステップ(90)は、
観察画像の一組のピクセルの少なくとも1つの特性の値を、前記ラック(10)の欠陥を検出するための少なくとも1つの検出基準に対応する少なくとも1つの特性の基準値と比較する段階であって、少なくとも1つの検出基準(X)が、輝度が所定値である、並置される一組のピクセルの幅と、輝度が所定値である、並置される一組のピクセルの高さから定められる段階を有する
ことを特徴とする検査方法(100)。
【請求項2】
請求項1に記載の検査方法(100)において、
解析ステップ(90)は、少なくとも1つの検出基準(X)が定義される定義段階(92)を有する検査方法(100)。
【請求項3】
請求項1に記載の検査方法(100)において、
未加工画像段階(68)中に、画像キャプチャ装置(61、62)は、少なくとも1つの未加工の白黒画像を生成する検査方法(100)。
【請求項4】
請求項1に記載の検査方法(100)において、
識別された各欠陥の数及び/または位置を推定するステップを有する検査方法(100)。