(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079878
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】管理装置、管理方法および管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20240606BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192541
(22)【出願日】2022-12-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】516140214
【氏名又は名称】booost technologies株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218958
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 重樹
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】組織単位での人的資本の管理を容易とする。
【解決手段】本実施形態に係る管理システムは、評価用データに基づき、組織の人的資本の評価値である第1評価値を算出する第1評価部131を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価用データに基づき、組織の人的資本の評価値である第1評価値を算出する第1評価部を備える、管理装置。
【請求項2】
前記第1評価値の目標値である第1目標値の入力を受ける入力部をさらに備える、請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記第1評価値および前記第1目標値に基づいて、前記第1評価値を前記第1目標値に到達させるための手段である第1手段を出力する第1出力部をさらに備える、請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記評価用データに基づき、個人の人的資本の評価値である第2評価値を算出する第2評価部をさらに備える、請求項1に記載の管理装置。
【請求項5】
前記第2評価値の目標値である第2目標値の入力を受ける入力部をさらに備える、請求項4に記載の管理装置。
【請求項6】
前記第2評価値および前記第2目標値に基づいて、前記第2評価値を前記第2目標値に到達させるための手段である第2手段を出力する第2出力部をさらに備える、請求項5に記載の管理装置。
【請求項7】
前記評価用データは、財務データと、前記組織または個人の能力を示す指標であるケイパビリティデータとを含む、請求項1に記載の管理装置。
【請求項8】
前記財務データは、人的教育費に関するデータを含む、請求項7に記載の管理装置。
【請求項9】
サーバ装置が、評価用データに基づき、人的資本の評価値を算出するステップを備える、管理方法。
【請求項10】
コンピュータに、請求項9に記載の管理方法を実行させるための管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人的資本を管理する管理装置、管理方法および管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人材を評価するシステムが開示されている。例えば、特許文献1には、評価内容が定量的で把握しやすい人材評価システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の一実施形態に係る管理装置は、評価用データに基づき、組織の人的資本の評価値である第1評価値を算出する第1評価部を備える。
【0005】
また、前記第1評価値の目標値である第1目標値の入力を受ける入力部をさらに備える、としてもよい。
【0006】
また、前記第1評価値および前記第1目標値に基づいて、前記第1評価値を前記第1目標値に到達させるための手段である第1手段を出力する第1出力部をさらに備える、としてもよい。
【0007】
また、前記評価用データに基づき、個人の人的資本の評価値である第2評価値を算出する第2評価部をさらに備える、としてもよい。
【0008】
また、前記第2評価値の目標値である第2目標値の入力を受ける入力部をさらに備える、としてもよい。
【0009】
また、前記第2評価値および前記第2目標値に基づいて、前記第2評価値を前記第2目標値に到達させるための手段である第2手段を出力する第2出力部をさらに備える、としてもよい。
【0010】
また、前記評価用データは、財務データと、前記組織または個人の能力を示す指標であるケイパビリティデータとを含む、としてもよい。
【0011】
また、前記財務データは、人的教育費に関するデータを含む、としてもよい。
【0012】
また、本開示の他の実施形態に係る管理方法は、評価用データに基づき、人的資本の評価値を算出するステップを備える。
【0013】
また、本開示の他の実施形態に係る管理プログラムは、コンピュータに、前記管理方法を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る管理システムの構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態に係る仕訳DBの一例を示す概念図。
【
図3】実施形態に係る従業員評価DBの一例を示す概念図。
【
図4】実施形態に係る組織評価DBの一例を示す概念図。
【
図5】実施形態に係る表示部に表示される表示画面の一例。
【
図6】実施形態に係る表示部に表示される表示画面の一例。
【
図7】実施形態に係る管理作成システムの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
本開示に係る管理装置、管理方法および管理プログラムは、本実施形態に係る管理システムの一部または全部として実現されている。
【0017】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る管理システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、管理システムは、サーバ装置1を備える。サーバ装置1は、通信ネットワークNを介して、端末2と通信可能に構成されている。
【0018】
端末2(入力部)は、PCやスマートフォンなどであり、ユーザ(組織の被用者や使用者など)によって操作される端末である。端末2は、表示部21と、操作部22とを備える。表示部21は、モニタなどで構成されており、端末2の制御部からの指示に応じて、ユーザに対して画像を表示する。操作部22は、キーボードやマウスなどの入力装置で構成されており、ユーザからの操作を受け付ける。また、端末2の記憶部には、予め、管理プログラムがインストールされている。端末2の制御部は、管理プログラムに応じて端末2の各部を動作させる。
【0019】
端末2は、操作部22によってユーザから受け付けた操作入力を示す情報をサーバ装置1に送信する。また、端末2は、サーバ装置1から送信される各種情報を表示部21に表示させる。
【0020】
(サーバ装置1の構成について)
図1に示すように、サーバ装置1は、通信部11、記憶部12および制御部13を備える。
【0021】
通信部11は、例えば、電気回路などで構成され、通信ネットワークNを介して、端末2と通信を行う。
【0022】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)等によって構成される記憶媒体である。記憶部12には、制御部13によって実行される各種プログラムが記憶されている。
【0023】
また、記憶部12には、各種のデータベースが構成されている。具体的には、記憶部12には、仕訳DBおよび評価用DBが格納されている。
【0024】
仕訳DB(仕訳データベース)には、組織(企業等)の取引内容(仕訳)を示すデータが格納されている。仕訳DBには、取引内容を示す「勘定科目」と、取引により発生した金銭の額とが関連づけられて格納されている。この仕訳DBを基に、各種財務諸表(例えば、貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュ・フロー計算書など)が構成される。
【0025】
図2は仕訳DBの概念図を示す。
図2に示すように、仕訳DBには、仕訳IDごとに、組織コード、担当者コード、勘定科目、金額が関連付けられている。組織コードは、当該取引を行った担当者が所属する組織のコードを示す。従業員コードは、当該取引を行った従業員(個人)のコードを示す。勘定科目は、当該取引内容に相当等する勘定科目を示す。金額は、当該取引における金額を示す。なお、ここでいう「組織」とは、グループ企業や団体の連合等の全体、各企業や団体等、および各企業や団体等における各種部門(人事部、経理部など)など、従業員が所属する任意の範囲の組織を指す。
【0026】
また、評価用DB(評価用データベース)には、人的資本を評価するための各種データ(評価用データ)が格納されている。具体的には、評価用DBには、従業員評価DBおよび組織評価DBが含まれる。
【0027】
図3は従業員評価DBの概念図を示す。
図3に示すように、従業員評価DBには、従業員コードごとに、当該従業員が所属する組織コードや、当該従業員の収益、経費、給与、人的教育費、福利厚生費、役職、性別、育児休暇取得率および従業員満足度が関連付けられている。ここで、従業員評価DBにおける収益、経費、給与、人的教育費および福利厚生費は、例えば、仕訳DBに含まれるデータのうち、当該従業員の従業員コードに関連付けられたデータに基づき、生成される。例えば、当該従業員の収益は、仕訳DBにおいて、「現金」、「預金」、「売掛金」、「電子債権」など、当該従業員の収益を示す勘定科目に関連付けられた金額を合計することにより求められる。また、当該従業員の経費は、仕訳DBにおいて、「接待交際費」、「旅費交通費」、「消耗品費」など、当該従業員の経費を示す勘定科目に関連付けられた金額を合計することにより求められる。また、当該従業員の給与は、仕訳DBにおいて、「給与手当」、「雑給」、「外注費」など、当該従業員の給与を示す勘定科目に関連付けられた金額を合計することにより求められる。また、当該従業員(組織)の人的教育費は、組織が当該従業員の能力を向上させるために、従業員に対して投資した費用であって、人的教育投資額、研修投資額、教育訓練投資額等の投資金額として表されてもよい。例えば、当該従業員の人的教育費は、仕訳DBにおいて、「研修費(採用研修費など)」、「新聞図書費」、「前払費用」、「雑費」など、当該従業員の研修に関連する費用を示す勘定科目に関連付けられた金額を合計することにより求められる。また、当該従業員の福利厚生費は、仕訳DBにおいて、「福利厚生費」など、当該従業員の福利厚生費に関連する費用を示す勘定科目に関連付けられた金額を合計することにより求められる。なお、仕訳DBに記憶された各収益や各費用等が複数の従業員コードに関連付けられる場合、制御部13は、当該各収益や費用等において関連付けられた従業員コードの数または所定割合に応じた費用を各従業員コードに割り当てて従業員評価DBに記憶してよいし、各収益や費用等はあらかじめ仕訳DBにおいて各従業員コードに割り当てられていてもよい。
【0028】
図4は組織評価DBの概念図を示す。
図4に示すように、組織評価DBには、組織コードごとに、当該組織の、収益、経費、給与、人的教育費、福利厚生費、女性管理職比率、男女間賃金格差、育児休暇取得率、従業員満足度が関連付けられている。ここで、組織評価DBにおける収益、経費、給与、人的教育費、福利厚生費は、例えば、仕訳DBに含まれるデータのうち、当該組織の従業員コードに関連付けられたデータに基づき、生成される。例えば、当該組織の収益は、仕訳DBにおいて、当該組織の従業員コードに関連付けられたデータのうち、「現金」、「預金」、「売掛金」、「電子債権」など、当該組織の収益を示す勘定科目に関連付けられた金額を合計することにより求められる。また、当該組織の経費は、仕訳DBにおいて、当該組織の従業員コードに関連付けられたデータのうち、「接待交際費」、「旅費交通費」、「消耗品費」など、当該組織の経費を示す勘定科目に関連付けられた金額を合計することにより求められる。また、当該組織の給与は、仕訳DBにおいて、当該組織の従業員コードに関連付けられたデータのうち、「給与手当」、「雑給」、「外注費」など、当該組織の給与を示す勘定科目に関連付けられた金額を合計することにより求められる。また、当該組織の人的教育費は、組織が当該組織に所属する当該従業員の能力を向上させるために投資した費用を指し、人的教育投資額、研修投資額、教育訓練投資額等の投資金額として表されてもよい。例えば、当該組織の人的教育費は、仕訳DBにおいて、当該組織の従業員コードに関連付けられたデータのうち、「研修費(採用研修費)」、「新聞図書費」、「前払費用」、「雑費」など、当該組織の研修に関連する費用を示す勘定科目に関連付けられた金額を合計することにより求められる。また、当該組織の福利厚生費は、仕訳DBにおいて、当該組織の従業員コードに関連付けられたデータのうち、「福利厚生費」など、当該組織の福利厚生費に関連する費用を示す勘定科目に関連付けられた金額を合計することにより求められる。なお、仕訳DBに記憶された各収益や費用等が複数の組織コードに関連付けられる場合、制御部13は、当該各収益や費用等において関連付けられた組織コードの数または所定割合に応じた費用を各組織コードに割り当てて組織評価DBに記憶してよいし、各収益や費用等はあらかじめ仕訳DBにおいて各組織コードに割り当てられていてもよい。
【0029】
なお、従業員評価DBにおける従業員の収益、経費、給与、人的教育費および福利厚生費、ならびに、組織評価DBにおける当該組織の収益、経費、給与、人的教育費、福利厚生費など財務諸表の作成に用いられる、および財務諸表によって提供されるデータが財務データに相当する。また、従業員評価DBにおける当該従業員の給与、役職、性別、育児休暇取得率および従業員満足度、ならびに、組織評価DBにおける当該組織の、給与、女性管理職比率、男女間賃金格差、育児休暇取得率および従業員満足度が、ケイパビリティデータに相当する。
【0030】
制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)および半導体メモリ等を含むマイクロコンピュータで構成される。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムなどを実行することにより、サーバ装置1の各部を制御する。
【0031】
また、制御部13は、第1評価部131、第1目標設定部132、第1出力部133、第2評価部134、第2目標設定部135および第2出力部136を備える。
【0032】
第1評価部131は、組織の人的資本の評価値である第1評価値を算出する。具体的には、第1評価部131は、記憶部12の組織評価DBを参照しつつ、下記の式(1)に基づいて、組織における人的資本ROI(投資収益率;Return On Investment)を算出する。この組織における人的資本ROIが、第1評価値に相当する。なお、下記式(1)において、「収益」は損益計算書の収益、「経費」は損益計算書の費用であってもよい。また、「経費」は損益計算書の費用のうち、例えば売上原価から工場員等の人件費を除くなど人的資本に関する費用を除いたものであってもよい。この場合、当該人的資本に関する費用は「給与」「福利厚生費」その他の費用に追加されてもよい。
【0033】
【0034】
図4の例では、第1評価部131は、組織B001の第1評価値を「0.69」、組織B002の第1評価値を「0.70」、組織B003の第1評価値を「0.67」と算出する。
【0035】
第1目標設定部132は、第1目標値を設定する。具体的には、第1目標設定部132は、ユーザが端末2の操作部22に対して入力した第1評価値の目標値を第1目標値として設定する。例えば、第1目標設定部132は、端末2の操作部22を介して、ユーザから、組織の人的資本ROIの将来(例えば、1年後、2年後、3年後、4年後、5年後、10年後、20年、50年後など、およびこれらの年数の1または複数を組み合わせて短期、中期、長期等の期間としてもよい)の目標値を第1目標値として受け付ける。
【0036】
第1出力部133は、第1評価部131が算出した第1評価値および第1目標設定部132が設定した第1目標値に基づいて、第1評価値を第1目標値に到達させるための手段である第1手段を、表示部21に表示(出力)させる。具体的には、第1出力部133は、第1手段として、当該組織に所属する従業員に対する研修時間の総計を表示部21に表示させる。例えば、第1出力部133は、組織Aの第1評価値が「0.5」であり、組織Aの第1目標値が「0.7」である場合、組織Aに所属する従業員の研修時間の総計を100時間と算出する。なお、詳細な説明は省略するが、第1出力部133は、第1評価値および第1目標値と、従業員の研修時間との関連性を示すテーブルや計算式に基づいて、組織に所属する従業員の研修時間を出力する。
【0037】
第2評価部134は、従業員(個人)の人的資本の評価値である第2評価値を算出する。具体的には、第2評価部134は、従業員評価DBを参照しつつ、上記式(1)に基づいて、従業員における人的資本ROIを算出する。この従業員(個人)における人的資本ROIが、第2評価値に相当する。
【0038】
図3の例では、第2評価部134は、従業員U001の第2評価値を「0.80」、従業員U002の第2評価値を「0.75」、従業員U003の第2評価値を「0.69」と算出する。
【0039】
第2目標設定部135は、第2目標値を設定する。具体的には、第2目標設定部135は、ユーザが端末2の操作部22に対して入力した第2評価値の目標値を第2目標値として設定する。例えば、第2目標設定部135は、端末2の操作部22を介して、ユーザから、従業員の人的資本ROIの将来(例えば、1年後、2年後、3年後、4年後、5年後、10年後、20年、50年後など、およびこれらの年数の1または複数を組み合わせて短期、中期、長期等の期間としてもよい)の目標値を第2目標値として受け付ける。
【0040】
第2出力部136は、第2評価部134が算出した第2評価値および第2目標設定部135が設定した第2目標値に基づいて、第2評価値を第2目標値に到達させるための手段である第2手段を、表示部21に表示(出力)させる。具体的には、第2出力部136は、第2手段として、当該従業員に対する研修時間を表示部21に表示させる。例えば、第2出力部136は、従業員Bの第1評価値が「0.6」であり、従業員Bの第2目標値が「0.7」である場合、従業員Bの研修時間を10時間と算出する。なお、第2出力部136は、第2評価値および第2目標値と、従業員の研修時間との関連性を示すテーブルや計算式に基づいて、従業員の研修時間を出力する。
【0041】
図5は実施形態に係る表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
図5の表示画面は、操作部22に対して行われたユーザの操作に応じて、端末2の表示部21に表示される。具体的には、
図5の表示画面には、上部領域のヘッダSc1と、左下領域のサイドバーSc2と、右下領域のデータ表示領域Sc3とを含む。ヘッダSc1には、データ表示領域Sc3に表示されたデータに対して各種処理を行う際に選択されるタブA1~A6が表示される。サイドバーSc2には、データ表示領域Sc3に表示されるデータを選択するためのタブB11~B15,B21~B23,B31~B36,B41~B48,B51,B61が表示される。データ表示領域Sc3には、タブA1~A6およびタブB11~B15,B21~B23,B31~B36,B41~B48,B51,B61の選択に応じて、各種データが表示される。
【0042】
例えば、
図5の表示画面において、タブA1(マテリアル)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、本管理システムの使用マニュアルや、各種イニシアティブや基準等(TCFD等)のガイドラインや規定類等、組織の基礎データ(金銭的資本や人的資本の詳細情報)などが表示される。また、タブA2(データ集計)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、サーバ装置1の記憶部12に格納された各種データが任意の形式により表示される。また、タブA3(インターフェース)が選択された場合、データ表示領域Sc3に表示されたデータのレイアウトなどが変更される。また、タブA4(グラフ)が選択された場合、データ表示領域Sc3に表示されたデータがグラフとして表示される。また、タブA5(印刷)が選択された場合、データ表示領域Sc3に表示されたデータの印刷処理を行う。また、タブA6(ファイル保存)が選択された場合、上記タブA1のマテリアルとは異なる所望のファイルの読み出し処理やデータ表示領域Sc3に表示されたデータの保存処理(例えば、記憶部12への格納)等がされる。
【0043】
また、タブB11~B15は、組織のESG(Environment, Social, Governance)についての各種情報を閲覧する際に選択されるタブである。具体的には、タブB11(Environment(環境))が選択された場合、データ表示領域Sc3に、組織のESGに関する情報のうち、組織の環境についての各種情報が表示される。タブB12(Social(社会))が選択された場合、データ表示領域Sc3に、組織のESGに関する情報のうち、組織の社会についての各種情報が表示される。タブB13(Governance(ガバナンス))が選択された場合、データ表示領域Sc3に、組織のESGに関する情報のうち、組織のガバナンスについての各種情報が表示される。タブB14(ESG Key Indicator)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、組織のESGに関する情報のうち主要なものが主な指標として表示される。主な指標は各種イニシアティブ等や業種等によりあらかじめ定められた情報が示されてもよいし、ユーザが任意に選択した情報が示されてもよい。タブB14(Disclosure)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、組織外への情報開示に適した形式で組織のESGに関する各種情報が表示される。
【0044】
また、タブB21~B23は、組織の財務諸表についての各種情報を閲覧する際に選択されるタブである。具体的には、タブB21(Financial Overall)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、組織の財務諸表についての各種情報、特に貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等が表示される。タブB22(Financial Key Indicator)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、組織の財務諸表に関する情報のうち主要なものが主な指標が表示される。タブB23(Enterprise Value)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、組織の価値(企業価値など)についての各種情報が表示される。
【0045】
また、タブB31~B36は、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)における組織の各種情報を閲覧する際に選択されるタブである。具体的には、タブB31(ガバナンス)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、TCFDにおける組織のガバナンスについての各種情報が表示される。タブB32(戦略)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、TCFDにおける組織の戦略についての各種情報が表示される。タブB33(リスク管理)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、TCFDにおける組織のリスク管理についての各種情報が表示される。タブB34(指標と目標)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、TCFDにおける組織の指標と目標についての各種情報が表示される。タブB35(Disclosure)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、組織外への情報開示に適した形式で組織のTCFDに関する各種情報が表示される。タブB36(財務影響 impact)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、TCFDにおいて財務諸表に与える影響を示す各種情報が表示される。
【0046】
また、タブB41~B48は、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)における組織の各種情報を閲覧する際に選択されるタブである。具体的には、タブB41(ガバナンス)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、TNFDにおける組織のガバナンスについての各種情報が表示される。タブB42(戦略)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、TNFDにおける組織の戦略についての各種情報が表示される。タブB43(リスク管理)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、TNFDにおける組織のリスク管理についての各種情報が表示される。タブB44(指標と目標)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、TNFDにおける組織の指標と目標についての各種情報が表示される。タブB45(水・生物多様性)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、TNFDにおける水・生物多様性についての各種情報が表示される。タブB46(産業廃棄物)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、TNFDにおける産業廃棄物についての各種情報が表示される。タブB47(Leap approach)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、TNFDにおけるLEAPアプローチ(自然関連リスクと評価のアプローチ)についての各種情報が表示される。タブB48(Disclosure)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、組織外への情報開示に適した形式で組織のTNFDに関する各種情報が表示される。
【0047】
また、タブB51(Disclosure)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的な要求事項(IFRS S1)および気候関連開示(IFRS S2)に関する各種情報が表示される。
【0048】
また、タブB61(統合報告書)が選択された場合、データ表示領域Sc3に、統合報告書に関する各種情報が表示される。
【0049】
なお、サイドバーSc2のタブB11~B61は、各項目の表示メニューの一例であって、各項目においてさらにメニューが追加されてもよい。例えば、タブB51(Disclosure)の前に全般的な要求事項(IFRS S1)および気候関連開示(IFRS S2)が追加され、それぞれについて各種関連情報が示されてもよい。
【0050】
以上に説明したように、
図5の表示画面を操作することによって気候変動や持続可能性に関する組織の各種情報を全体的に容易に表示することができる。また、
図5に示すように、本管理システムにおいては各種情報が相互に連携するように表示されるから、情報の取得・処理等を効率化することができる。例えば、TCFDに基づく影響に用いるデータとして環境・社会・ガバナンス(ESG)に関するデータを利用してもよい。また、ESGデータは気候変動に関して予め取得した温室効果ガス(GHG)データからライフサイクル評価(LCA)の指標間の関係を利用した計算によって取得されてもよい。例えば1つの物(材料、部品、製品等)または行為(加工、役務の提供等)に対するLCAとして気候変動に対する影響がGHG排出量、大気汚染に対する影響がNOx・SOx等の大気汚染物質の排出量であった場合、大気汚染汚染物質の排出量は予め取得したGHG排出量から上記LCAに基づいて算定されてよい。なお、LCAは影響管理DBにおいて記憶されてよいし、または各リスクや機会について構築される他のリレーショナルデータベースに記憶されてもよい。
【0051】
ここで、タブB12(Social(社会))が選択された場合、データ表示領域Sc3には、社会データ(Social Data)DT1、グラフデータDT2および社会の主指標データ(Social Key Indicators)DT3が表示される(
図5参照)。なお、社会データDT1、グラフデータDT2および社会の主指標データDT3は、他のタブ(「人的資本」等の名称を付された他のタブ)を選択することで表示されてもよい。
【0052】
社会データDT1には、組織のESGにおける「S(社会)」に関する各種データが表示される。社会データDT1には、例えば、組織のEGSの「S(社会)」における各種項目の現在値や将来の目標値などが表示される。
【0053】
グラフデータDT2には、組織のEGSの「S(社会)」における各種項目のグラフに関するデータが表示される。
図5のグラフデータDT2には、組織の「男女間賃金格差(男性平均年収-女性平均年収)」に関するグラフが表示されている。これは、社会データDT1におけるC1(男女間賃金格差(男性平均年収-女性平均年収)の項目)を操作することで、
図5のように表示される。
【0054】
社会の主指標データDT3には、組織のEGSの「S(社会)」における主な項目の現在値や将来の目標値などが表示される。
図5に示すように、組織のEGSの「S(社会)」において主な指標として選択された項目ごとに、現年度の現在値および目標年度(Target year)および中間年度における目標値(Target Percentage)が表示される。例えば、
図5には、組織のEGSの「S(社会)」における主な指標として、「女性管理職比率」、「男女間賃金格差」、「男性育児休業取得率」、「社員年間研修費用」、「キャリア(中途)採用者数」および「人的資本ROI」が表示されている。ここで、
図5の社会の主指標データDT3では、人的資本ROIの項目D1には、第1評価部131が算出した第1評価値(「2020」の欄)として「0.60」が表示され、第1目標設定部132は設定した第1目標値(「2030」の欄)として「0.70」が表示されている。また、
図5の社会の主指標データDT3では、社員年間研修費用の項目D2には、第1出力部133が出力した第1手段として各年度の研修費用(「20億円」、「30億円」、「40億円」)が表示されている。
【0055】
図6は実施形態に係る表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
図6は、
図5の社会の主指標データDT3におけるC2(人的資本ROI)を選択した場合に表示部21に表示される。
【0056】
図6に示すように、データ表示領域Sc3には、個人指標データDT4が表示される。個人指標データには、従業員コードごとに、当該従業員が所属する組織のコードや、「人的資本ROI」、「人的資本ROI目標値」、「研修時間」、「研修費用」などが関連付けて表示される。「人的資本ROI」には、第2評価部134が算出した第2評価値が表示され、「人的資本ROI目標値」には、第2目標設定部135が設定した第2目標値が表示される。また、「研修時間」には、第2出力部136が出力した第2手段が表示される。
【0057】
(管理システムの動作について)
図7は実施形態に係る管理作成システムの動作を示すフローチャートである。
【0058】
まず、端末2の操作部22を介して、ユーザから第1目標値(組織の人的資本ROI)の入力を受ける(ステップS1)。そして、サーバ装置1の第1目標設定部132は、入力された第1目標値を端末2から受信し、第1目標値を設定する。
【0059】
端末2の操作部22を介して、ユーザから第2目標値(個人の人的資本ROI)の入力を受ける(ステップS2)。そして、サーバ装置1の第2目標設定部135は、入力された第2目標値を端末2から受信し、第2目標値を設定する。
【0060】
サーバ装置1の第1評価部131は、組織の人的資本の評価値である第1評価値を算出する(ステップS3)。具体的には、第1評価部131は、記憶部12から組織評価DBを読み出し、上記式(1)に基づいて、組織の人的資本ROIを算出する。
【0061】
サーバ装置1の第2評価部134は、従業員(個人)の人的資本の評価値である第2評価値を算出する(ステップS4)。具体的には、第2評価部134は、記憶部12から従業員評価DBを読み出し、上記式(1)に基づいて、従業員の人的資本ROIを算出する。
【0062】
サーバ装置1の第1出力部133は、第1評価部131が算出した第1評価値および第1目標設定部132が設定した第1目標値に基づいて、第1評価値を第1目標値に到達させるための第1手段を、表示部21に表示(出力)させる(ステップS5)。具体的には、第1出力部133は、端末2の操作部22に対して、所定操作(例えば、タブB12の操作)が行われると、
図5の表示画面を表示する。
図5の社会の主指標データDT3には、第1評価部131が算出した第1評価値(「2020」の欄参照)と、第1目標設定部132は設定した第1目標値(「2030」の欄参照)と、第1出力部133が出力した第1手段(各年度の研修費用)が表示される。
【0063】
サーバ装置1の第2出力部136は、第2評価部134が算出した第2評価値および第2目標設定部135が設定した第2目標値に基づいて、第2評価値を第2目標値に到達させるための第2手段を、表示部21に表示(出力)させる(ステップS6)。具体的には、
図5の表示画面において、C2を操作すると、
図6の表示画面が表示される。
図6の個人指標データDT4には、第2評価部134が算出した第2評価値(「人的資本ROI」の欄参照)と、第2目標設定部135が設定した第2目標値(「人的資本ROI目標値」の欄参照)と、第2出力部136が出力した第2手段(「研修時間」の欄参照)が表示される。
【0064】
以上の構成により、実施形態に係る管理システムは、組織評価DBを含む評価用DB(評価用データ)に基づき、組織の人的資本の評価値である第1評価値を算出する第1評価部131を備える。これにより、各組織の人的資本の評価値である第1評価値が算出されるため、組織単位での人的資本の管理が容易となる。また、第1評価値は組織の人的教育費であってよく、第2評価値は従業員1人あたりの人的教育費であってもよい。これにより、人的資本の主指標として人的教育費ないし人的教育投資額を用いることができる。
【0065】
また、端末2は、第1評価値の目標値である第1目標値の入力を受ける。これにより、ユーザは、第1評価値の目標値である第1目標値を設定することができる。
【0066】
また、第1出力部133は、第1評価値および第1目標値に基づいて、第1評価値を第1目標値に到達させるための手段である第1手段を出力(表示)する。これにより、ユーザは、第1評価値を第1目標値に到達させるための具体的な手段を知ることができる。
【0067】
また、第2評価部134は、従業員評価DBを含む評価用DBに基づき、従業員(個人)の人的資本の評価値である第2評価値を算出する。これにより、各従業員の人的資本の評価値である第2評価値が算出されるため、従業員単位での人的資本の管理が容易となる。
【0068】
また、端末2は、第2評価値の目標値である第2目標値の入力を受ける。これにより、ユーザは、第2評価値の目標値である第2目標値を設定することができる。
【0069】
また、第2出力部136は、第2評価値および第2目標値に基づいて、第2評価値を第2目標値に到達させるための手段である第2手段を出力(表示)する。これにより、ユーザは、第2評価値を第2目標値に到達させるための具体的な手段を知ることができる。
【0070】
また、評価用DBは、従業員評価DBおよび組織評価DBを含む。評価用DBは、従業員評価DBにおける、従業員の収益、経費、給与、人的教育費および福利厚生費、ならびに、組織評価DBにおける当該組織の、収益、経費、給与、人的教育費、福利厚生費などの財務データを含む。従業員評価DBにおける当該従業員の給与、役職、性別、育児休暇取得率および従業員満足度、ならびに、組織評価DBにおける当該組織の、給与、女性管理職比率、男女間賃金格差、育児休暇取得率および従業員満足度などの、組織または個人の能力を示す指標であるケイパビリティデータを含む。これにより、財務データおよびケイパビリティデータに基づいて、第1評価値および第2評価値が算出される。
【0071】
また、財務データには、人的教育費が含まれる。これにより、人的教育費に基づいて、第1評価値が算出される。
【0072】
(その他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態について説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。
【0073】
上記実施形態における組織は、どのような組織であってもよい。例えば、組織は国、地方自治体、企業、団体その他の集団であってよい。また、組織は、電力、ガス、水道、通信回線、保険、銀行業務、ウェブショッピング、教育などの知識の教授、広告業務、物流、リース、小売、物販等の商品販売などのサービスを提供する事業者であってもよい。また、組織は、製造業、不動産業、小売業、金融業などの事業を行う者であってもよい。
【0074】
上記実施形態では、財務データとして、従業員(個人)の収益、経費、給与、人的教育費および福利厚生費、ならびに、組織の、収益、経費、給与、人的教育費、福利厚生費などを例にして説明したが、これに限られず、従業員および組織の他の財務データを含んでもよい。
【0075】
上記実施形態では、ケイパビリティデータとして、従業員(個人)の給与、役職、性別、育児休暇取得率および従業員満足度、ならびに、組織の、給与、女性管理職比率、男女間賃金格差、育児休暇取得率および従業員満足度などを例にして説明したが、これに限られず、ケイパビリティデータとして、従業員および組織の能力を示す指標であればどのようなものを含んでもよい。
【0076】
なお、上記実施形態において、サーバ装置1は、第2評価部134が算出した第2評価値に基づいて、当該従業員の転職市場価値を算出してもよい。例えば、サーバ装置1は、第2評価値(従業員の人的資本ROI)、収益、勤務年数、役職などのデータを基に、転職市場における当該従業員の給与を算出する。そして、サーバ装置1は、算出した転職市場における当該従業員の給与と、現在の当該社員の給与とを比較して、差分を算出する。このとき、サーバ装置1は、現在の当該社員の給与が、算出した転職市場における当該従業員の給与よりも高い場合、転職市場における当該従業員の給与水準のケイパビリティを有するために必要な研修内容や研修時間をレコメンドしてもよい。また、現在の当該社員の給与が、算出した転職市場における当該従業員の給与よりも低い場合、当該従業員の給与の給与の改定をレコメンドしてもよい。
【0077】
また、組織評価DBは、従業員DBのデータを基に生成されてもよい(すなわち、個人の評価値である第1評価値の積み上げとして生成される)し、財務諸表や勘定科目ごとの集計値などの組織の財務データに基づいて生成されていてもよい。後者の場合、本管理システムは、
図7においてステップS2,S4,S6を実行せずに、ステップS1,S3,S5のみを実行してもよい。
【0078】
また、上記実施形態において、従業員評価DBおよび組織評価DBは、記憶部12に記憶されていたが、これに限られない。例えば、従業員評価DBおよび組織評価DBの一部または全部が他のシステムに記憶されていてもよい。この場合、制御部13は通信部11および通信ネットワークNを介して当該他のシステムから各データを取得してもよい。
【0079】
また、従業員評価DBは、各従業員の収益などのデータのほか、人事評価や転職市場価値など財務データに含まれない他の非財務データを含んでもよい。人事評価は、各従業員に対する人事考課等の人事上の評価を示す。また、転職市場価値は各従業員の転職市場(外部労働市場など)における需給の指標となる価値を示す。例えば、転職市場価値は、各従業員の転職市場における適正年収、適正役職等であってもよい。なお、この他の非財務データの全部または一部が、ケイパビリティデータに相当する。
【0080】
また、上記実施形態において、第1評価部131および第2評価部132は、上記式(1)に基づいて、第1評価値および第2評価値をそれぞれ算出したが、これに限られない。例えば、第1評価部131および第2評価部132は、下記式(2)~(7)に基づいて、第1評価値および第2評価値をそれぞれ算出してもよい。
【0081】
【0082】
上記式(2)は、上記式(1)と比較すると、人的教育費を計算式に含まないものである。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
ROIC(Return On Invested Capital;投下資本利益率)は、組織が事業に投じた資本に対して、どれくらいの利益を生み出したかを示す指標である。ROE(Return On Equity;自己資本利益率)は、株主が出資したお金を元手に、組織がどれだけの利益を上げたのかを示す指標である。ROA(Return On Assets;純資産利益率)は、組織が所有している資産を利用して、どの程度の利益を上げているかを示す指標である。なお、投下資本は、株主資本+(有利子負債または運転資本)+固定資産で算出される。
【0088】
【0089】
上記式(7)は、上記式(1)と比較すると、人的教育費に代えて採用費(人材採用に関する費用)が計算式に含まれるものである。式(7)により、採用に関する投資効果を第1評価値および第2評価値に反映させることができる。
【0090】
第1評価部131および第2評価部132は、式(1)~(3)および(7)の1または複数の算出結果を、第1評価値および第2評価値としてもよい。また、式(4)~(6)は、第1評価値および第2評価値に加えてフリーキャッシュフローおよび/または企業価値の向上に向けた評価にも用いられてもよい。
【0091】
なお、式(1)および式(2)に基づいて、第1評価値および第2評価値を算出した場合、人件費に対する収益率を測る人的資本ROI(式(2)の人的資本ROI’)と、人的教育費を踏まえた収益率を測る教育効果も踏まえた人的資本ROI(式(1)の人的資本ROI)の相関を比較することで人的教育制度や教育投資が人的資本価値および収益の向上に結びついているかを確認することができる。同様に式(2)および式(7)に基づいて、第1評価値および第2評価値を算出した場合、人件費に対する収益率を測る人的資本ROI(式(2)の人的資本ROI’)と、人材採用を踏まえた収益率を測る採用への投資効果も踏まえた人的資本ROI(式(7)の人的資本ROI’’)の相関を比較することで採用に対する投資が人的資本価値および収益の向上に結びついているかを確認することができる。さらに同様に式(1)および式(7)による教育効果と採用効果の関係を確認することができる。
【0092】
また、式(3)の算出結果を用いることで、人的教育費と収益の関係を直接確認することができる。
【0093】
また、式(1)~(7)において、マクロ経済や業界の動向等による影響を遅行指数として加味してもよい。例えば、マクロ経済の影響は、世界や日本等の地域における実質GDP成長率を用いてもよく、業界の動向による影響は、業界の平均成長率を用いてよく、これらを遅行指数として加味するためにそれぞれの値に1を加えたものの逆数を式(1)~(7)に乗じてもよい。例えば、式(1)を用いる場合、実質GDP成長率がマイナス3%であり、当該マクロ経済の影響を遅行指数として加味すると、式(1)の計算結果に1/(1-0.03)を乗じることにより、人的資本ROIが増大することとなる。このため、当該人的資本ROIは、今後受ける実体経済の悪影響を除いたものとして適切に評価することができる。
【0094】
また、式(1)~(7)に、1+株価変動率を乗じることによって、景気や市況等により利益に生じ得る影響をリアルタイム指数または先行指数として加味し評価してもよい。「株価変動率」は所定の期間における組織の株価の変動の割合を示す。例えば、ある会計年度の期初の1株あたりの株価が1,000円、算定時点における1株あたりの株価が1,100円であった場合、この間の株価変動率は(1,100/1,000)-1=0.1となり、1+株価変動率は1+0.1=1.1となる。この場合、式(1)の計算結果に1.1を乗じることにより、1+株価変動率が1より大きくなるため、現時点の利益に今後の景気や市況等の好影響が加味され、人的資本ROIが増大する。そして株価は実体経済の動きよりも早く動くその瞬間の直接的な利益として反映されているものとしてより適切に評価することができる。
【0095】
また、上記実施形態において、第1出力部133および第2出力部136は、第1手段および第2手段として研修時間等を表示部21にそれぞれ表示させるとしたが、これに併せて(またはこれとは別に)、既に実行された第1手段および第2手段を実績として表示部21にそれぞれ表示させてよい。例えば、第1出力部133および第2出力部136は、既に実施された研修時間等を表示してよい。
【0096】
また、第1手段および第2手段は、研修時間以外の他の人材育成に関する手段であってもよい。例えば、第1手段および第2手段は、報酬制度上の施策、人事制度上の施策、採用制度上の施策、エンゲージメント向上策、健康増進プログラム、生産管理向上策、資格取得促進策、リーダーシップ育成策等であってもよい。例えば、人事制度上の施策は、各バンドに要求されるケイパビリティデータを有する人材について年齢・性別・人種等に関係なく昇進及び裁量の権限が与えられる人事制度であってもよく、各バンドは、例えば各種ケーパビリティシート、OJTおよび各種研修制度における習熟度、部門の収益達成度、人事評価、および転職市場価値等の1または複数を各ケイパビリティ水準に応じた基準で設定されてもよい。
【0097】
また、サーバ装置1および端末2には、それぞれ、上記実施形態に係る機能を実現するための管理プログラムがインストールされている。サーバ装置1および端末2は、管理プログラムを実行することにより、上記実施形態に係る各種機能を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本実施形態に係る管理システムは、組織単位での人的資本の管理が容易となるため、有用である。
【符号の説明】
【0099】
1 サーバ装置
12 記憶部
13 制御部
131 第1評価部
132 第1目標設定部
133 第1出力部
134 第2評価部
135 第2目標設定部
136 第2出力部
2 端末(入力部)
21 表示部
22 操作部
【手続補正書】
【提出日】2023-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収益、経費、ならびに、人的教育費および採用費をいずれも含まない人的資本に関する費用を含む評価用データに基づく、前記経費から前記人的資本に関する費用を減じた費用を前記収益から減じ、さらに前記人的資本に関する費用で除して1を減じた人的資本ROI’、
収益、経費、および、人的教育費は含むが採用費は含まない人的資本に関する費用を含む評価用データに基づく、前記経費から前記人的資本に関する費用を減じた費用を前記収益から減じ、さらに前記人的資本に関する費用で除して1を減じた人的資本ROI、ならびに、
収益、経費、および、人的教育費は含まないが採用費は含む人的資本に関する費用を含む評価用データに基づく、前記経費から前記人的資本に関する費用を減じた費用を前記収益から減じ、さらに前記人的資本に関する費用で除して1を減じた人的資本ROI’’
のうち少なくとも2つを組織の人的資本の評価値である第1評価値として算出する第1評価部を備える、管理装置。
【請求項2】
前記第1評価部が遅行指数またはリアルタイム指数もしくは先行指数を加味して前記第1評価値を算出する、請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記第1評価値の目標値である第1目標値の入力を受ける入力部をさらに備える、請求項1に記載の管理装置。
【請求項4】
前記第1評価値および前記第1目標値に基づいて人材育成に関する手段である第1手段を出力する第1出力部をさらに備える、請求項3に記載の管理装置。
【請求項5】
サーバ装置が、収益、経費、ならびに、人的教育費および採用費をいずれも含まない人的資本に関する費用を含む評価用データに基づく、前記経費から前記人的資本に関する費用を減じた費用を前記収益から減じ、さらに前記人的資本に関する費用で除して1を減じた人的資本ROI’、
収益、経費、および、人的教育費は含むが採用費は含まない人的資本に関する費用を含む評価用データに基づく、前記経費から前記人的資本に関する費用を減じた費用を前記収益から減じ、さらに前記人的資本に関する費用で除して1を減じた人的資本ROI、ならびに、
収益、経費、および、人的教育費は含まないが採用費は含む人的資本に関する費用を含む評価用データに基づく、前記経費から前記人的資本に関する費用を減じた費用を前記収益から減じ、さらに前記人的資本に関する費用で除して1を減じた人的資本ROI’’
のうち少なくとも2つを人的資本の評価値として算出するステップを備える、管理方法。
【請求項6】
コンピュータに、請求項5に記載の管理方法を実行させるための管理プログラム。