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  • 特開-床版持ち上げ木橋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079881
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】床版持ち上げ木橋
(51)【国際特許分類】
   E01D 15/00 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
E01D15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192544
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(71)【出願人】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】598034823
【氏名又は名称】株式会社 ウッディさんない
(74)【代理人】
【識別番号】100110537
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 繁
(72)【発明者】
【氏名】野田 龍
(72)【発明者】
【氏名】及川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】後藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】森岡 吉己
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059BB21
(57)【要約】
【課題】本発明は、冬期の積雪期間に床版を持ち上げて積雪荷重を回避することができる床版持ち上げ木橋を提供する。
【解決手段】本発明の床版持ち上げ木橋は、所定間隔を隔てて並列状に対置した、所定長さの縦桁1と、該縦桁1の先端及び後端に対置した縦桁1を連結固定する枕梁2と、前記縦桁1の長さ方向に床版4の幅間隔に架け渡された複数本の支軸棒3と、前記縦桁1間に配置され、前記支軸棒3に一端を枢支された所定幅の複数枚の床版4と、持ち上げた床版4を垂直に引っ張り支持する複数本の支持部材5とからなる。支軸棒3を軸に床版4を持ち上げて支持部材5により垂直に立設することができるため、冬期の積雪期間に床版4を持ち上げて積雪荷重を回避することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔を隔てて並列状に対置した、所定長さの縦桁と、該縦桁の先端及び後端に、対置した縦桁を連結固定する枕梁と、前記縦桁の長さ方向に床版の幅間隔に架け渡された複数本の支軸棒と、前記縦桁間に配置され、前記支軸棒に一端を枢支された所定幅の複数枚の床版と、持ち上げた床版を垂直に引っ張り支持する複数本の支持部材とからなり、積雪期間には支軸棒を軸に床版を持ち上げて支持部材により垂直に立設することを特徴とする床版持ち上げ木橋。
【請求項2】
前記支持部材は、床版を垂直に持ち上げた時に床版が倒れないように支える支持具であり、床版の上端の中央部と縦桁の内側とを斜めに結ぶ前側支持部材と、床版の上端の両側部と縦桁の外側とを一直線に結ぶ後側支持部材とからなることを特徴とする請求項1記載の床版持ち上げ木橋。
【請求項3】
前記縦桁の両側に高欄を設け、該高欄は、支軸棒と略同位置の縦桁の両側に適宜高さの丸棒体又は角棒体からなり、各高欄間を挿通した複数本のガイドロープを取り付けることを特徴とする請求項1記載の床版持ち上げ木橋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冬期の積雪期間に床版を持ち上げて積雪荷重を回避することができる床版持ち上げ木橋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、間伐材の有効利用を目的に開発されたプレストレス木箱桁橋タイプのオンサイト木橋(非特許文献1を参照)は、東日本大震災以降、緊急架設橋としての用途も含めて改良が続けられ、主に秋田県内の町道や森吉山、大平山といった豪雪山間部の登山道として、県外も含めると10橋が架設され、そのオンサイト施工性、豪雪地帯での耐久性など、既に実用性が確認され、より長いスパンへの拡張等にも期待されている。
しかし、オンサイト木橋は、巨大な積雪荷重という環境外力に対して、鋼製部材の積極的な利用で対処しており、登山道の歩道橋としてはオーバースペックになっていると共に、鋼製部材の比率が大きくなり、相対的に環境親和性が犠牲にされている。
【0003】
そこで、冬期間だけ雪を落とせるように床版を折り畳み、構造形式を変換することで冬季のみに倍増する環境外力をかわせるトランスフォーマブルな木橋を開発した。
これにより、環境親和性は高くても剛性の低い木質構造物では、山間部の豪雪といった環境外力に耐えられないというトレードオフも解決することができる。
【0004】
なお、冬期に積雪量の多い山間僻地に設置された送電鉄塔等を、定期点検する時に利用するのに好適した降雪対策を講じると共に、人力のみで架設できる様に作られた跳上式鋼製巡視橋が知られている(特許文献1を参照)。
この公知技術は、長さが異なる3基の橋桁ユニットAを縦列状に連結して、所望の長さの橋桁を組み立て、各橋桁ユニットAの側端には、その長さに応じて、2枚又は3枚の歩行板ユニットBの各側端を、ヒンジ部Cを介して、起立・倒伏自在に連結させている。又、各橋桁ユニットAの一方の側端には、手すりEを立設して、各歩行板ユニットBには、手すりEに起立状態を固定させる為の、固定手段Dを付設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-178919号公報
【非特許文献1】秋田県立大学の教員による地域貢献の論文集、秋田県立大学ウェブジャーナル編集委員会編、Vol.1,pp.10-18、2014、秋田スギの角材を利用した組立・分解が容易な木橋の開発
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、冬期の積雪期間に床版を持ち上げて積雪荷重を回避することができる床版持ち上げ木橋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の床版持ち上げ木橋は、所定間隔を隔てて並列状に対置した、所定長さの縦桁と、該縦桁の先端及び後端に対置した縦桁を連結固定する枕梁と、前記縦桁の長さ方向に床版の幅間隔に架け渡された複数本の支軸棒と、前記縦桁間に配置され、前記支軸棒に一端を枢支された所定幅の複数枚の床版と、持ち上げた床版を垂直に引っ張り支持する複数本の支持部材とからなり、積雪期間には支軸棒を軸に床版を持ち上げて支持部材により垂直に立設する。
前記支持部材は、床版を垂直に持ち上げた時に床版が倒れないように支える支持具であり、床版の上端の中央部と縦桁の内側とを斜めに結ぶ前側支持部材と、床版の上端の両側部と縦桁の外側とを一直線に結ぶ後側支持部材とからなる。
前記縦桁の両側に高欄を設け、該高欄は、支軸棒と略同位置の縦桁の両側に適宜高さの丸棒体又は角棒体からなり、各高欄間を挿通した複数本のガイドロープを取り付ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明の床版持ち上げ木橋は、支軸棒を軸に床版を持ち上げて支持部材により垂直に立設することができるため、冬期の積雪期間に床版を持ち上げて積雪荷重を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の床版持ち上げ木橋の床版を持ち上げた時の側面図である。
図2】本発明の床版持ち上げ木橋の床版を持ち上げた時の平面図である。
図3】本発明の床版持ち上げ木橋の通行時の側面図である。
図4】本発明の床版持ち上げ木橋の通行時の平面図である。
図5】その他の床版持ち上げ木橋の床版を持ち上げた時の側面図である。
図6】その他の床版持ち上げ木橋の床版を持ち上げた時の平面図である。
図7】その他の床版持ち上げ木橋の通行時の側面図である。
図8】その他の床版持ち上げ木橋の通行時の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の床版持ち上げ木橋の一実施例を添付図面に基づいて、以下に説明する。
図1の床版を持ち上げた時の側面図および図2の床版を持ち上げた時の平面図に示すように、本発明の床版持ち上げ木橋は、所定間隔を隔てて並列状に対置した、所定長さの縦桁1と、該縦桁1の先端及び後端に対置した縦桁1を連結固定する枕梁2と、前記縦桁1の長さ方向に床版4の幅間隔に架け渡された複数本の支軸棒3と、前記縦桁1間に配置され、前記支軸棒3に一端を枢支された所定幅の複数枚の床版4と、持ち上げた床版4を垂直に引っ張り支持する複数本の支持部材5とからなる。
【0011】
前記縦桁1は、断面寸法が180×300mmで、長さが6,000mmのすぎ集成材の角材からなり、910mmの左右間隔を隔てて並列状に対置する。したがって、登山者等が歩ける有効幅は910mmである。
【0012】
前記枕梁2は、前記縦桁1の間隔を保持固定するように、対置した縦桁1の先端下部と後端下部に突き出た状態で連結固定する。
【0013】
前記支軸棒3は、前記縦桁1の上部を横断貫通し、前記縦桁1の長さ方向に約1,000mm間隔で6本架け渡される。
前記支軸棒3は、床版4の一端に取り付けられた持ち上げ用回転治具と嵌合して床版4を回転可能に枢支する。
【0014】
前記床版4は、通行時に床版4を倒伏して縦桁1に載置するように、断面寸法が1,000×28mmで、長さが1,000mmの構造用合板の6枚の矩形材からなり、一方端に持ち上げ用回転治具を固定し、床版4を持ち上げた時に、縦桁1を避けることができるように床版4の両隅を四角に切り欠いている。
さらに、各床版4の上部には、幅45×高さ75×長さ810mmの地覆が取り付けられる。
【0015】
前記支持部材5は、ロープや棒からなり、床版4を垂直に持ち上げた時に床版4が倒れないように支える支持具であり、床版4の上端の中央部と縦桁1の内側とを斜めに結ぶ二等辺三角状の前側支持部材5-1と、床版4の上端の両側部と縦桁1の外側とを一直線に結ぶ二辺状の後側支持部材5-2とからなる。
【0016】
次に、本発明の床版持ち上げ木橋の操作動作を添付図面に基づいて、以下に説明する。
図3の通行時の側面図および図4の通行時の平面図に示すように、雪が降らない春期から秋期にかけて、支軸棒3を軸に床版4を回転させて縦桁1の上に床版4を平坦に載置させることにより、登山者等は約1,000mm幅の木橋を渡ることができる。
【0017】
冬期の積雪期間には、図1及び図2に示すように、支軸棒3を軸に床版4を回転させて床版4を垂直に立設し、床版4の裏面の上端中央部と縦桁1の内側とを前側支持部材5-1で結び、さらに床版4の両側面の上端部と縦桁1の外側とを後側支持部材5-2で結ぶ。
床版4は垂直に支持固定され、これによって積雪荷重を回避することができる。
【0018】
本発明の床版持ち上げ木橋のその他の実施例を添付図面に基づいて、以下に説明する。
図5の床版を持ち上げた時の側面図および図6の床版を持ち上げた時の平面図に示すように、その他の床版持ち上げ木橋は、前述の一実施例の床版持ち上げ木橋と同構造に構成し、縦桁1の両側に高欄6を設けたものである。
【0019】
前記高欄6は、支軸棒3と略同位置の縦桁1の両側に適宜高さの丸棒体又は角棒体からなり、各高欄6間を挿通した複数本のガイドロープ7を取り付ける。
【0020】
次に、その他の実施例の床版持ち上げ木橋の操作動作を添付図面に基づいて、以下に説明する。
図7の通行時の側面図および図8の通行時の平面図に示すように、雪が降らない春期から秋期にかけて、支軸棒3を軸に床版4を回転させて縦桁1の上に床版4を平坦に載置させることにより、登山者等は木橋を渡ることができる。
【0021】
冬期の積雪期間には、図5及び図6に示すように、支軸棒3を軸に床版4を回転させて床版4を垂直に立設し、床版4の裏面の上端中央部と縦桁1の内側とを前側支持部材5-1で結び、さらに床版4の両側面の上端部と縦桁1の外側とを後側支持部材5-2で結ぶ。
床版4は垂直に固定され、これによって積雪荷重を回避することができる。
高欄6とガイドロープ7は、床版4と接触することがないので、床版4の持ち上げや支持部材5による支持固定には支障がない。
【符号の説明】
【0022】
1 縦桁
2 枕梁
3 支軸棒
4 床版
5 支持部材
5-1 前側支持部材
5-2 後側支持部材
6 高欄
7 ガイドロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8