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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079887
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】被覆方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/14 20060101AFI20240606BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B32B37/14
E04B1/94 T
E04B1/94 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192556
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 明
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001GA06
2E001HD03
2E001HD04
4F100AA21B
4F100AB03A
4F100AH05C
4F100AH10B
4F100AK36B
4F100AK51C
4F100AK54B
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA01C
4F100CA08C
4F100DJ01C
4F100EH46
4F100EJ02B
4F100GB07
4F100JJ07B
(57)【要約】
【課題】本発明は、十分な断熱性及び耐火性を確保するとともに、工期を短縮することができ、かつ付着性に優れる被膜形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の被覆方法は、基材上に、発泡性耐火被覆層を形成した後、吹付けによりウレタンフォーム層を形成する被覆方法であり、
上記ウレタンフォーム層は、ポリオール化合物、発泡剤、触媒、整泡剤、及びポリイソシアネート化合物を含有する硬化性組成物によって形成されてなるものであり、
上記発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンを含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、発泡性耐火被覆層を形成した後、吹付けによりウレタンフォーム層を形成する被覆方法であり、
上記ウレタンフォーム層は、ポリオール化合物、発泡剤、触媒、整泡剤、及びポリイソシアネート化合物を含有する硬化性組成物によって形成されてなるものであり、
上記発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンを含むことを特徴とする請求項1に記載の被覆方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍・冷蔵倉庫(低温物流倉庫)においては、倉庫内外の温度差が大きいため、高い断熱性が要求されている。また、近年では一般建築物においても、省エネ等の観点から断熱性が要求されるようになってきた。このような断熱性を満たすために、有機系断熱材が多く採用されている。このような有機系断熱材を用いる場合、防火性(難燃性)の向上等を目的として、例えば、特許文献1のような、難燃剤を配合したウレタンフォームや、特許文献2のような、ウレタンフォーム等の有機系断熱材の上にモルタル組成物等を積層した複合断熱材等が開発されている。
【0003】
一方で、大型倉庫や高層の建築物では、主体構造である鉄骨構造に対して高い耐火性能が要求される。しかし、上記特許文献1、2は、ウレタンフォームの防火性(難燃性)は確保することができるが、主体構造である鉄骨構造の耐火性能は考慮されていない。鉄骨構造の耐火性能を確保するためには、鉄骨構造を耐火被覆することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-270877号公報
【特許文献2】特開2014-087961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐火被覆材としては、例えば、セメントやモルタルを主成分とする無機系耐火被覆材や、加熱により発泡する発泡性耐火被覆材が知られている。
しかしながら、無機系耐火被覆材は被覆厚みが大きく、その上にウレタンフォーム層を形成した場合には、利用可能な空間が狭められてしまう。また、無機系耐火被覆材は、乾燥(硬化)等に時間を要するため施工期間が長期化してしまうおそれがある。一方、発泡性耐火被覆材は、無機系耐火被覆材と比較すると被覆厚みは小さいが、発泡性耐火被覆材の上にウレタンフォームを吹付けると、ウレタンフォーム形成時の反応熱によって発泡性耐火被覆材層の劣化を引き起こし、付着性等に支障をきたすおそれがある。
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、十分な断熱性及び耐火性を確保するとともに、工期を短縮することができ、かつ付着性に優れる被膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明者らは、基材に対し、発泡性耐火被覆層を形成した後、吹付けにより特定のウレタンフォーム層を形成することにより、付着性に優れ、十分な断熱性及び耐火性を確保するとともに、工期を短縮することができる被膜形成方法を見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.基材上に、発泡性耐火被覆層を形成した後、吹付けによりウレタンフォーム層を形成する被覆方法であり、
上記ウレタンフォーム層は、ポリオール化合物、発泡剤、触媒、整泡剤、及びポリイソシアネート化合物を含有する硬化性組成物によって形成されてなるものであり、
上記発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンを含むことを特徴とする請求項1に記載の被覆方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の被覆方法は、基材上に、発泡性耐火被覆層を形成した後、吹付けによりウレタンフォーム層を形成する被覆方法である。本発明では、ウレタンフォーム層が特定の硬化性組成物によって形成されるものであることにより、付着性に優れ、十分な断熱性及び耐火性を確保するとともに、工期を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
本発明の被覆方法は、基材上に、発泡性耐火被覆層を形成した後、吹付けによりウレタンフォーム層を形成することを特徴とするものである。まず、各構成について説明する。
【0011】
<基材>
本発明の対象となる基材としては、耐火性及び断熱性を要求される建築物・土木構築物等の構造物に用いられるものであり、具体的に、柱、梁、壁、床、屋根、階段、天井、戸等の各種基材が挙げられる。このような基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、煉瓦、プラスチック、木材、金属、鉄骨(鋼材)、ガラス、磁器タイル等が挙げられる。これら基材は、その表面に、既に被膜が形成されたもの、何らかの下地処理(防錆処理、難燃処理等)が施されたもの、壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。本発明は、特に、冷凍・冷蔵倉庫(低温物流倉庫)における主体構造(躯体)である鉄骨(鋼材)の耐火性及び断熱性を高めるのに最適な被覆方法である。
【0012】
<発泡性耐火被覆層>
本発明の発泡性耐火被覆層(以下、単に「耐火被覆層」ともいう。)は、平常時には密な構造(非発泡体)をしており、火災等により耐火被覆層の表面が200℃以上(より好ましくは250℃以上)に温度上昇した場合に被膜が発泡(膨張)し、炭化断熱層を形成する。これにより基材の耐火性を高めることができるものである。このような耐火被覆層としては、発泡性耐火被覆材を塗付して形成、あるいは発泡性耐火被覆材をシート状に成型したもの(発泡性耐火シート)を貼り付けて形成したもの等があげられる。本発明では、発泡性耐火被覆材を塗付して形成することが好適である。
このような発泡性耐火被覆材は、構成成分として樹脂成分(A)及び耐火性粉体(B)を含むものが好適である。
【0013】
樹脂成分(A)は、公知の発泡性耐火被覆材で採用されているものを使用することができる。このような(A)成分としては、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル-アクリル共重合樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンゴム等の有機質結合材が挙げられる。これらの結合材は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、必要に応じて、セメント、石膏、水ガラス、シリコーン樹脂等の無機質結合材を併用することも可能である。
【0014】
本発明では、(A)成分として、架橋性樹脂を含むことが好適である。架橋性樹脂は、反応性官能基を有する化合物の組み合わせによって、乾燥硬化する際に架橋反応を生じ、耐火被覆層に架橋構造を形成することができる。このような反応性官能基の組み合わせによって形成される架橋構造により、よりいっそう工期の短縮が可能となる。さらに、吹付けによりウレタンフォーム層を形成した場合であってもよりいっそう優れた付着性を確保することができるとともに、よりいっそう優れた耐火性を発揮することができる。
その作用機構は、以下に限定されるものではないが、耐火被覆層に架橋構造を形成することにより、ウレタンフォーム層の形成時の反応熱による耐火被覆層の劣化・損傷を抑制することができるとともに、経時的な不具合を生じにくく十分な付着性を保持することができる。これにより、安定した耐火被覆層を保持することが可能であり、火災等により温度上昇した場合には、よりいっそう優れた耐火性を発揮することができる。
【0015】
このような架橋反応を生じる反応性官能基の組み合わせとしては、例えば、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルド基とセミカルバジド基、ケト基とセミカルバジド基、アルコキシル基どうし、カルボキシル基と金属イオン、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0016】
本発明では、(A)成分として、ポリオール化合物(A1)及びポリイソシアネート化合物(A2)を含有するものが好ましい。これにより、ウレタンフォーム層との付着性を高めることができる。
【0017】
本発明のポリオール化合物(A1)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシ含有ポリオール、シリコーン含有ポリオール、フッ素含有ポリオール、ひまし油、ひまし油変性ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリペンタジエンポリオール等が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
上記ポリオール化合物(A1)は、20℃において液体であることが好ましく、それぞれの粘度は、0.05~10Pa・s(より好ましくは0.1~5.0Pa・s)であることが好ましい。これにより、本発明の効果が得られやすい。
なお、ポリオール成分の粘度は、温度20℃において、BH型粘度計で測定した20rpmにおける粘度(5回転目の指針値)であり、「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0019】
本発明では、ポリオール化合物(A1)として、ポリエーテルポリオール(a1)を含むことが好ましい。ポリエーテルポリオール(a1)は、その分子量が、好ましくは1000以上(より好ましくは3000以上20000以下、さらに好ましくは5000以上18000以下)である。ポリオール化合物(A1)として、このようなポリエーテルポリオール(a1)を含むことにより、耐火被覆層の温度上昇(好ましくは被膜表面温度が200℃以上、さらに好ましくは250℃以上)によって、優れた発泡性を示し、基材の耐火性を高めることができる。
なお、本発明においてポリオール化合物(A1)の分子量は、数平均分子量(Mn)であり、ポリスチレン重合体をリファレンスとして用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求めた、いわゆるポリスチレン換算分子量である。
【0020】
上記ポリエーテルポリオール(a1)は、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール誘導体、ソルビトール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール類と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加重合により得られるものである。本発明では、上記多価アルコール類と、エチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドとの付加重合により得られる重合体が好適であり、末端にエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドが付加されたものがより好適である。さらに、上記のポリエーテルポリオールとして、活性水素原子を有する官能基が3つ以上(官能基数3以上)のポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。この場合、硬化性に優れ、安定して耐火被覆層を形成することができるため本発明の効果が得られやすい。活性水素原子を有する官能基としては水酸基が好適である。
【0021】
また、ポリエーテルポリオール(a1)は、水酸基価(固形分)が好ましくは3~150mgKOH/g(より好ましくは5~100mgKOH/g、さらに好ましくは7~40mgKOH/g、最も好ましくは10~30mgKOH/g)である。このようなポリオール化合物(a1)を使用することにより、いっそう優れた発泡性を発揮し、基材の耐火性を高めることができる。
なお、本発明において水酸基価とは、固形分1gに含まれる水酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数によって表される値(mgKOH/g)である。
【0022】
上記ポリエーテルポリオール(a1)の含有量は、ポリオール化合物(A1)の全量に対して、50重量%以上100重量%以下(より好ましくは60~99重量%、さらに好ましくは70~98重量%)であることが好ましい。
【0023】
本発明では、上記ポリオール化合物(A1)として、フッ素含有ポリオール(a2)を含むことが好ましい。これにより、火災等による温度上昇の際には、耐火被覆層が優れた発泡性を有するとともに、炭化断熱層の灰化・収縮等を抑制して安定した炭化断熱層を形成し、基材の耐火性をよりいっそう高めることができる。
【0024】
このようなフッ素含有ポリオール(a2)としては、特に限定されないが、例えば、フルオロオレフィンモノマー、フルオロアルキル基含有アクリル系モノマー等の含フッ素モノマーと、水酸基含有ビニル系モノマーと、必要に応じて他の重合性モノマーとを共重合することにより得られるものである。
【0025】
フルオロオレフィンモノマーしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のパーフルオロオレフィン類、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等が挙げられる。フルオロアルキル基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、パーフルオロメチルメタクリレート、パーフルオロイソノニルメチルメタクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。本発明では、好ましくはテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンから選ばれる1種以上、より好ましくはクロロトリフルオロエチレンを使用することが好ましい。
【0026】
水酸基含有ビニル系単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル等のヒドロキシアリルエーテル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0027】
その他の重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー等が挙げられ、必要に応じこれらの1種または2種以上が使用できる。
【0028】
このようなフッ素含有ポリオール(a2)としては、フッ素含有ポリオール(a2)固形分中のフッ素含有率が、10~50重量%(より好ましくは15~40重量%、さらに好ましくは20~35重量%)であることが好ましい。また、水酸基価(固形分)が、5~100mgKOH/g(より好ましくは10~80mgKOH/g)であることが好ましい。さらに、分子量[数平均分子量(Mn)]が、5000~100000(より好ましくは8000~60000)であることが好ましい。このようなフッ素含有ポリオール(a2)を含むことにより、火災等による温度上昇の際には、耐火被覆層が優れた発泡性を発揮し炭化断熱層を形成し、高温雰囲気下でも灰化・収縮を抑制することができ、基材の耐火性をよりいっそう高めることができる。
【0029】
フッ素含有ポリオール(a2)の含有量は、ポリオール化合物(A1)の全量に対して、固形分換算で好ましくは0.1~30重量%(より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%)である。この範囲を満たすことにより、基材の耐火性を高めるとともに、ウレタンフォーム層との密着性を十分に確保することができる。
【0030】
本発明のポリイソシアネート化合物(A2)としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(pure-MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI、水添MDI等、あるいはこれらをアロファネート化、ビウレット化、2量化(ウレトジオン化)、3量化(イソシアヌレート化)、アダクト化、カルボジイミド化した誘導体等;及び、これらをアルコール類、フェノール類、ε-カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類等でブロックした、ブロックイソシアネート等が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
本発明では、ポリイソシアネート化合物(A2)として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)及び/またはその誘導体(以下「HMDI類」ともいう。)を含むことが好ましい。上記HMDI類の含有量は、ポリイソシアネート化合物(A2)の全量に対して、90重量%以上(より好ましくは95重量%以上)であることが好ましい。また、ポリイソシアネート化合物(A2)が、HMDI類のみからなる態様も好適である。また、誘導体としては、ビウレット体、及び/またはイソシアヌレート体が好適である。このような場合、発泡性耐火被覆材の硬化性に優れ、耐火被覆層の形成工程を短縮することができる。さらに、耐火被覆層が温度上昇した際には、より優れた発泡性を発揮し、基材の耐火性を高めることができる。
【0032】
本発明では、ポリイソシアネート化合物(A2)として、固形分中のイソシアネート基含有量が10重量%以上(好ましくは15重量%以上30重量%以下)のものを含むことが好ましい。このような場合、発泡性耐火被覆材の硬化性に優れた効果を発揮することができ、安定した耐火被覆層を形成することができる。
なお、本発明において、イソシアネート基含有量とは、ポリイソシアネート化合物の固形分中に含まれるイソシアネート基の含有量(重量%)と定義され、イソシアネート基を過剰のアミンで中和した後、塩酸による逆滴定によって求められる値である。
【0033】
本発明では、ポリオール化合物(A1)とポリイソシアネート化合物(A2)の混合比率が、NCO/OH当量比率で1以上(好ましくは1.2~3.5、より好ましくは1.5~3.0)であることが好ましい。このような場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0034】
本発明の発泡性耐火被覆材において、耐火性粉体(B)(以下「(B)成分」ともいう。)は、火災時等の温度上昇によって上記(A)成分との相互作用(例えば、脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、炭化促進効果、炭化断熱層形成効果等の少なくとも1つ)により炭化断熱層を形成する成分である。このような(B)成分としては、例えば、発泡剤(b1)、炭化剤(b2)、難燃剤(b3)、及び充填剤(b4)等が挙げられ、これらから選ばれる1種以上を含むものである。
【0035】
発泡剤(b1)は、火災時等の温度上昇によって耐火被覆層に発泡作用を付与するものであり、具体的には、耐火被覆層の表面温度が好ましくは200℃以上となった場合に発泡作用を付与するものである。発泡剤(b1)としては、例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾビステトラゾーム及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。発泡剤(b1)の含有量は、上記ポリオール化合物(A1)の固形分100重量部に対して、好ましくは10~200重量部(より好ましくは20~150重量部)である。
【0036】
炭化剤(b2)は、火災時等の温度上昇によって、上記(A)成分の炭化とともに脱水炭化することにより、炭化断熱層を形成する作用を付与するものである。炭化剤(b2)としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、デンプン、カゼイン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、特にペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用に優れている点で好ましい。炭化剤(b2)の含有量は、上記ポリオール化合物(A1)の固形分100重量部に対して、好ましくは10~200重量部(より好ましくは20~120重量部)である。
【0037】
難燃剤(b3)としては、例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、塩素化パラフィン、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、リン酸ホウ素、ポリリン酸ホウ素、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等の無機質化合物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、難燃剤(b3)として、例えば、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、またはポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩とピロ硫酸ジメラムとの複合化合物等から選ばれる少なくとも1種以上のリン化合物を含むことが好ましく、さらには、ポリリン酸アンモニウムとこれらを併用して含むことも好ましい。難燃剤(b3)の含有量は、上記ポリオール化合物(A1)の固形分100重量部に対して、好ましくは30~800重量部(より好ましくは50~500重量部)である。
【0038】
充填剤(b4)としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、粘土、クレー、シラス、マイカ、珪砂、珪石粉、石英粉、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。充填剤(b4)の含有量は、上記ポリオール化合物(A1)の固形分100重量部に対して、好ましくは3~200重量部(より好ましくは5~150重量部)である。
【0039】
さらに、本発明では、上記成分に加えて金属水和物(b5)、繊維(b6)等を含むこともできる。金属水和物(b5)は、温度上昇時に、脱水反応等による吸熱性を示すものであり、上記充填剤(b4)とは異なるものである。このような金属水和物(b5)としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。また、金属水和物(b5)の平均粒子径は、好ましくは0.1~20μm(より好ましくは0.2~15μm、さらに好ましくは0.3~8μm、最も好ましくは0.4~3μm)である。金属水和物(b5)の含有量は、上記ポリオール化合物(A1)の固形分100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部(より好ましくは0.2~30重量部)である。
【0040】
本発明では、充填剤(b4)と金属水和物(b5)を併用することが好ましく、この場合、金属水和物(b5)の含有量は、充填剤(b4)に対して、好ましくは0.1~20重量%(より好ましくは0.3~15重量%、さらに好ましくは0.5~10重量%)である。この場合、発泡性、特に高温下における炭化断熱層の収縮等を抑制し、安定した炭化断熱層を形成することができるため、本発明の効果を高めることができる。なお、平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置によって測定される。
【0041】
繊維(b6)は、耐火被覆層のひび割れを抑制することができる。また、繊維(b6)は、火災等による温度上昇の際には、耐火被覆層のタレ等を生じ難くすることができるとともに、耐火被覆層内部の熱伝導性を高めることができる。その結果、優れた発泡性を示し、均一な炭化断熱層を形成して、基材の耐火性を高めることができる。このような繊維(b6)としては、例えば、アクリル繊維、アセテート繊維、アラミド繊維、銅アンモニア繊維(キュプラ)、ナイロン繊維、ノボロイド繊維、パルプ繊維、ビスコースレーヨン、ビニリデン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリクラール繊維、ボリノジック繊維、ポリプロピレン繊維、セルロース繊維(セルロースナノファイバーを除く)等の有機質繊維、炭素繊維、ロックウール繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ-アルミナ繊維、スラグウール繊維、セラミックファイバー、カーボン繊維、炭化珪素繊維等の無機繊維等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、無機繊維を含むことが好適であり、中でも、ロックウール繊維、スラグウール繊維、ガラス繊維、セラミックファイバー等の人造鉱物繊維が好適である。
【0042】
また、繊維(b6)の大きさ(繊維長及び繊維径)は、平均繊維長が好ましくは10~1000μm(より好ましくは15~800μm、さらに好ましくは20~600μm)、平均繊維径が好ましくは0.5~10μm(より好ましくは1~8μm)の範囲内である。また、そのアスペクト比(繊維長/繊維径)は、好ましくは3~300(より好ましくは5~200)である。繊維(b6)の含有量は、上記ポリオール化合物(A1)の固形分100重量部に対して、好ましくは0.5~30重量部(より好ましくは1~25重量部、さらに好ましくは2~20重量部)である。
【0043】
本発明の発泡性耐火被覆材は、さらに高沸点化合物(C)(以下「(C)成分」ともいう。)を含むことが好ましい。(C)成分は、20℃において液体であり、沸点が100℃以上(より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上)の高沸点液状化合物である。このような(C)成分を含むことにより、上記(B)成分等の分散安定性等を高めることができる。また、付着性に優れた良好な耐火被覆層を形成、特に耐火被覆層の弾性が向上し、ウレタンフォーム層との追従性が高まり、剥がれや割れ等を防止することができる。さらに、火災等によって高温に曝された場合には、耐火被覆層の適度な軟化に寄与し発泡性をよりいっそう高め、形成した炭化断熱層の脱落(剥離)等を抑制し、基材の耐火性を高めることができる。
【0044】
(C)成分としては、上記を満たすものであれば特に限定されず、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル化合物;アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ビス(ブチルジグリコール)、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジヘキシル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等の脂肪族二塩基酸エステル化合物;アジピン酸-1,3ブチレングリコール系ポリエステル、アジピン酸-1,2プロピレングリコール系ポリエステル等のアジピン酸系ポリエステル;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジ-2-エチルヘキシル、マレイン酸ジイソノニル、マレイン酸ジイソデシル等のマレイン酸エステル化合物;リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸-2エチルヘキシルジフェニル等のリン酸エステル化合物;
【0045】
トリス-2-エチルヘキシルトリメリテート等のトリメット酸エステル化合物;メチルアセチルリジノレート等のリシノール酸エステル化合物;エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエポキシステアリル、エポキシ化脂肪酸ブチル、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ系エステル化合物;安息香酸グリコールエステル等の安息香酸系エステル化合物;1-フェニル-1-キシリルエタン、1-フェニル-1-エチルフェニルエタン等の芳香族炭化水素化合物、γ-ブチロラクトン等のラクトン類、石油樹脂(炭素原子数が8~10である芳香族炭化水素留分重合物)とスチリルキシレン等の混合物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
【0046】
本発明では、(C)成分として、フタル酸エステル化合物、脂肪族二塩基酸エステル化合物、リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、さらには、アルキル基の炭素数が4~11(より好ましくは5~10、さらに好ましくは6~9)のフタル酸エステル化合物、脂肪族二塩基酸エステル化合物から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。その具体例としては、例えば、フタル酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソノニル等が好適である。
【0047】
(C)成分の含有量は、上記ポリオール化合物(A1)の固形分100重量部に対して、好ましくは5~150重量部(より好ましくは8~100重量部、さらに好ましくは10~80重量部)である。上記範囲を満たす場合、上記(B)成分の分散性が高まり、火災等による温度上昇の際には、優れた発泡性を有し、基材の耐火性能を維持する効果を十分に発揮することができる。
【0048】
その他、添加剤としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく、例えば、顔料、湿潤剤、吸水剤、脱水剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、増粘剤、タレ防止剤、粘性調整剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、架橋剤、硬化触媒、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、ハロゲン捕捉剤、希釈溶媒等が挙げられる。
【0049】
本発明の発泡性耐火被覆材は、加熱残分が、好ましくは70重量%以上(より好ましくは75~98重量%(より好ましく80~95重量%)である。発泡性耐火被覆材の加熱残分が、上記範囲を満たす場合、良好な塗装作業性を得ることができ、厚塗りも可能となるため工期を短縮することができる。さらには吹付けによりウレタンフォーム層を形成した場合であっても、耐火被覆層の劣化・損傷が抑制され、優れた付着性を確保することができる。これにより、耐火性をよりいっそう高めることができる。
なお、発泡性耐火被覆材の加熱残分は、JIS K 5601-1-2の方法にて測定された値であり、加熱温度は105℃、加熱時間は60分)である。
【0050】
また、本発明では、発泡性耐火被覆材の粘度が、好ましくは5~70Pa・s(より好ましくは7~60Pa・s、さらに好ましくは10~50Pa・s)である。発泡性耐火被覆材の粘度が、上記範囲を満たす場合、塗装作業性に優れ、均一な被膜が形成することができる。その結果、十分な耐火性を得ることができる。なお、発泡性耐火被覆材の粘度は、発泡性耐火被覆材調製後(2液型の場合は、主剤と硬化剤を混合後)、直ちに温度23℃において、BH型粘度計で測定した20rpmにおける粘度(5回転目の指針値)である。
【0051】
本発明では、上記加熱残分、及び上記粘度の範囲を満たす発泡性耐火被覆材を塗付して耐火被覆層を形成することにより、所望の厚みを有する耐火被覆層を形成することができる。さらに、耐火被覆層は、火災等による温度上昇の際に、優れた発泡性を示し、炭化断熱層を形成して、基材の耐火性を維持することができる。
【0052】
本発明の発泡性耐火被覆材は、上記ポリオール化合物(A1)を含む主剤、及び上記ポリイソシアネート化合物(A2)を含む硬化剤を有する2液型の被覆材であることが好ましい。すなわち、流通時には主剤と、硬化剤とを、それぞれ別のパッケージに保存した状態とし、使用時(塗付時)にこれらを混合すればよい。この場合、上記耐火性粉体(B)、(必要に応じて、高沸点化合物(C)、添加剤)はそれぞれ、主剤と硬化剤の少なくとも一方に混合すればよいが、本発明では主剤に混合することが好ましい。また、主剤と硬化剤の混合時に、各成分を添加することもできる。
【0053】
<ウレタンフォーム層>
本発明のウレタンフォーム層は、平常時にフォーム層を形成しており断熱性を付与するものであり、例えば、ポリオール化合物、発泡剤、触媒、整泡剤、及びポリイソシアネート化合物を含有する硬化性組成物により形成されるものであり、上記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィンを含むことを特徴とする。このような硬化性組成物によって形成されるフォーム層は、好ましくは硬質ポリウレタンフォーム層であり、より好ましくは硬質ポリイソシアヌレートフォーム層である。
【0054】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリペンタジエンポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
本発明におけるポリオール化合物の水酸基価は、特に限定されないが、50mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であることが望ましい。
【0055】
発泡剤としては、ハイドロフルオロオレフィンを使用する。これにより、ウレタンフォーム形成時の反応熱が抑えられ、上記耐火被覆層の劣化・損傷するおそれがなく、優れた付着性を確保しつつ十分な断熱性及び耐火性を確保することができる。
【0056】
ハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、例えば、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)等のペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)等のテトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1243zf)等のトリフルオロプロペン、テトラフルオロブテン(HFO1345)、ペンタフルオロブテン(HFO1354)、ヘキサフルオロブテン(HFO1336)、ヘプタフルオロブテン(HFO1327)、ヘプタフルオロペンテン(HFO1447)、オクタフルオロペンテン(HFO1438)、ノナフルオロペンテン(HFO1429)等、あるいはこれらの異性体(シス体、トランス体)等が挙げられる。ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)としては、例えば、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、ジクロロトリフルオロプロペン(HCFO1223)等、あるいはこれらの異性体(シス体、トランス体)等が挙げられる。
【0057】
本発明では、その他の発泡剤として、例えば、ハイドロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、水、液化炭酸ガス等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0058】
本発明では発泡剤として、水を含むことが好ましい。この場合、水の含有量は発泡剤の全量に対して好ましくは0.5重量%以上5重量%以下(より好ましくは0.8重量%以上4重量%以下)とすることが好適である。このような場合、上記耐火被覆層が劣化・損傷するおそれがなく、付着性、断熱性等をよりいっそう高めることができる。
【0059】
発泡剤の混合量は、ポリオール化合物100重量部に対して、好ましくは10~200重量部(より好ましくは20~180重量部)である。
【0060】
触媒としては、特に限定されないが、例えば、ヌレート化触媒、泡化触媒、樹脂化触媒等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
ヌレート化触媒としては、イソシアヌレート化に有効な触媒であれば、特に限定されず、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドまたはその有機酸塩(有機酸として、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸、乳酸等)、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のトリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドまたはその有機酸塩、アルキルカルボン酸(例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸、乳酸等)の金属塩、アルミニウムアセチルアセトン、リチウムアセチルアセトン等のβ-ジケトンの金属キレート化合物、塩化アルミニウム、三フッ化硼素等のフリーデル・クラフツ触媒、チタンテトラブチレート、トリブチルアンチモン酸化物等の有機金属化合物、ヘキサメチルシラザン等のアミノシリル基含有化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
泡化触媒としては、例えば、N,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N,N,N’,N’’-テトラメチル-N’’-(2-ヒドロキシルエチル)トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’’-テトラメチル-(2-ヒドロキシルプロピル)トリエチレンジアミン等の3級アミンまたはその有機酸塩等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
樹脂化触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン(TEDA)、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチル-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルグアニジン、135-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の3級アミンまたはその有機酸塩、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)、ビスマストリス(ネオデカノエート)、ビスマストリス(パルミテート)、ビスマステトラメチルヘプタンジオエート、ナフテン酸ビスマス、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテート、オクチル酸スズ等の有機金属、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール、または、N-メチル-N′-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチルピペラジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,1’-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)イミノ)ビス(2-プロパノール)等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0061】
触媒の混合量(有効成分換算)はポリオール化合物100重量部に対して、好ましくは0.1~40重量部、より好ましくは0.5~30重量部である。なお触媒に活性水素含有成分が含まれる場合、触媒に含まれる活性水素含有成分も考慮してイソシアネート指数を算出する。
本発明では、触媒としてヌレート化触媒とともに泡化触媒及び/または樹脂化触媒を含むことが望ましく、特にヌレート化触媒とともに泡化触媒及び樹脂化触媒を含むことが望ましい。
【0062】
整泡剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン化合物等のシリコーン系整泡剤や、含フッ素化合物系整泡剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、例えば、ポリジメチルシロキサンとポリオキシエチレングリコールまたはポリオキシエチレン-プロピレングリコールとのグラフト共重合体等が挙げられる。整泡剤の混合量は、ポリオール化合物100重量部に対して、好ましくは0.1~40重量部、より好ましくは0.5~30重量部である。
【0063】
ポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において公知の各種ポリイソシアネート化合物が使用できる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられる。本発明では、取扱の容易性、反応の速さ、得られるフォームの物理特性、コスト面での優位性等の点から、MDIが好ましい。MDIとしては、例えば、モノメリックMDI、ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルイソシアネート)等が挙げられる。
【0064】
本発明における硬化性組成物では、イソシアネート指数が好ましくは150以上、より好ましくは180~800、さらに好ましくは200~500、最も好ましくは250~400となるように、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物等を混合することが望ましい。イソシアネート指数がこのような範囲内であれば、耐火性等の点で好適である。なお、イソシアネート指数とは、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量数を、活性水素含有成分(ポリオール化合物、及び水等)の活性水素の総当量数で除した数値の100倍で表されるものである。
【0065】
本発明における硬化性組成物には、上記成分の他に、例えば、難燃剤、着色剤、界面活性剤、重合禁止剤、繊維等を混合することができる。
難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、有機臭素系難燃剤、窒素系難燃剤、金属水和物系難燃剤等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、顔料、染料等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。このような界面活性剤は、貯蔵安定性、分散安定性を付与することができる。
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン系重合禁止剤、ベンゾキノン系重合禁止剤、カテコール系重合禁止剤、ピペリジン系重合禁止剤等が挙げられる。このような重合禁止剤は、後述する2液型の形態において、長期貯蔵安定性を付与するとともに、ポリオール製造過程で添加した場合は、製造安定性にも寄与する。
繊維としては、例えば、有機繊維、無機繊維等が挙げられる。このような繊維は、施工作業性、フォーム形成性、寸法安定性等を付与することができる。
【0066】
本発明の硬化性組成物は、流通時に2液型の形態としておき、使用時(フォーム層形成時)に混合して使用することが望ましい。このような2液型の形態においては、例えば、第1液が、ポリオール化合物、発泡剤、触媒、及び整泡剤を含む形態、第2液がポリイソシアネート化合物を含む形態とすることができる。
【0067】
<被覆方法>
本発明の被覆方法は、
(1)基材に対し、上述の発泡性耐火被覆材を塗付し、発泡性耐火被覆層を形成する工程、
(2)硬化性組成物を吹付け施工して発泡させ、ウレタンフォーム層を形成する工程、
を含むものである。
【0068】
上記(1)において、発泡性耐火被覆材の塗付方法としては、特に限定されず、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装(エアスプレー、エアレススプレー)等の種々の方法を用いて塗装することができる。特に、ローラー塗装、スプレー塗装(エアスプレー、エアレススプレー)においての塗装作業性に優れ、仕上り性に優れた被膜を形成することができる。
【0069】
本発明の発泡性耐火被覆材を基材に塗付する際には、上記方法により1工程ないし数工程塗り重ねて塗付すれば良い。本発明の発泡性耐火被覆材は、1工程あたりの乾燥膜厚が1000μmを超えるように塗付した場合であっても、優れた硬化性及び基材への付着性を得ることができ、耐火性に優れた被膜を形成することができる。また、最終的に形成される耐火被覆層の厚みは、所望の機能性、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.4~8mm程度である。また、本発明の発泡性耐火被覆材の乾燥は、好ましくは常温で行い、次工程への間隔は、好ましくは2時間以上(より好ましくは3時間以上30日以内)で行えばよい。特に、本発明では、上記(1)工程と上記(2)工程の間隔を24時間以内(さらには20時間以内)とすることが可能である。
【0070】
上記(2)において、硬化性組成物を発泡性耐火被覆層の上に塗付する際には、好ましくは発泡性耐火被覆層の全体に硬化性組成物を吹付け施工して発泡させ、ウレタンフォーム層を形成する。硬化性組成物の塗付は、例えば、吹付け工事用のスプレー発泡機等(例えば、二液先端混合型吹付け塗工機等)を使用して、上記第1液と第2液との混合物を吹付け施工すればよい。この場合、第1液、第2液は、それぞれ、好ましくは20~60℃、より好ましくは30~50℃程度となるように温度設定しておくことが好ましい。このように所定温度に設定された第1液と第2液は、スプレー先端にて混合され、基材に向けて吹付けられ、基材上でフォームを形成する。第1液と第2液との混合は、体積比で1:1程度とすることが望ましい。このような方法で形成されるフォーム層は、低熱伝導性、耐火性等において優れた性能を発揮することができる。フォーム層の厚みは、特に限定されず、要求性能等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは10mm以上、より好ましくは15~700mm程度である。なお、本発明では、上記(2)工程の前に、耐火被覆材層上に、中塗材等を塗付することもできる。本発明では、耐火被覆材層上に直接、硬化性組成物を吹きつけてウレタンフォーム層を形成する場合に好適である。
【0071】
本発明の被覆方法では、ウレタンフォーム層の防火性、美観性を高めるために、上記(2)の工程後に、
(3)ウレタンフォーム層の上(表面)に、無機質被覆材を塗付し無機被覆層を形成する工程、
を含むことができる。
【0072】
上記無機質被覆材は、無機質結合剤を含むものである。
無機質結合剤としては、例えば、水硬性無機質物質、反応性珪素化合物、珪素樹脂等が挙げられる。水硬性無機質物質としては、例えば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント、膨張セメント、酸性リン酸塩セメント、シリカセメント、石灰混合セメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、キーンスセメント、マグネシアセメント、ドロマイト、水硬性石灰、石膏等が挙げられる。反応性珪素化合物としては、例えば、水ガラス、アルコキシシラン類等が挙げられる。珪素樹脂としては、シリコーン類等が挙げられる。これらは1種以上または2種以上で使用することができる。無機質結合剤として水硬性無機質物質を用いた場合は、その水硬性無機質物質にもとづく色彩を付与することができる。
【0073】
本発明における無機質被覆材では、着色顔料を混合することにより、所望の色調を付与することもできる。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、鉄クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0074】
無機質被覆材には、上記成分の他、例えば、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等の体質顔料;珪砂、寒水石等の無機質骨材;パーライト、膨張バーミキュライト等の無機質軽量骨材;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、ハロイサイト、アロフェン、エトリンジャイト等の吸熱物質;ガラス繊維、鋼繊維等の無機質繊維物質;等を混合することができる。また、本発明の効果が著しく損なわれない限り、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂等の有機質結合剤;スチレン樹脂発泡体、エチレン酢酸ビニル樹脂発泡体、塩化ビニル樹脂発泡体等の有機質軽量骨材;
ビニロン繊維、パルプ繊維等の有機質繊維物質;その他、増粘剤、消泡剤、減水剤、膨張剤、凝結促進剤、界面活性剤等を混合することもできる
【0075】
無機質被覆材を塗付する際には、例えば、コテ、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を適宜用いることができる。形成される無機被覆層の厚みは、適用部位、用途、要求性能等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは0.2~20mm、より好ましくは0.5~15mm程度である。
【0076】
<耐火構成体>
本発明の被覆方法により得られた耐火構成体は、基材上に、発泡性耐火被覆層、ウレタンフォーム層が積層されたものであり、好ましくは基材上に形成された発泡性耐火被覆層の全体にウレタンフォーム層が被覆(発泡性耐火被覆層の全体がウレタンフォーム層で被覆)されたものであり、優れた断熱性と耐火性を有するものである。
具体的に、耐火構成体は、平常時には十分な断熱性を確保することができる。また、火災等により耐火構成体が高温に晒された場合には、ウレタンフォーム層は収縮し、一方で発泡性耐火層が発泡して炭化断熱層を形成するため、基材の耐火性を確保することができる。
【実施例0077】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。なお、本発明は、ここでの実施例に制限されるものではない。
【0078】
耐火被覆層を形成する耐火被覆材として、下記のものを使用した。
(発泡性耐火被覆材1)
ポリエーテルポリオール[固形分100重量%、数平均分子量7000、官能基数3、水酸基価24mgKOH/g]100重量部に対して、メラミン85重量部、ペンタエリスリトール60重量部、ポリリン酸アンモニウム250重量部、酸化チタン55重量部、フタル酸ジイソノニル(沸点420℃)25重量部、希釈溶剤[芳香族炭化水素]90重量部、及び添加剤[硬化触媒、増粘剤、分散剤、等]10重量部を常法にて混合し主剤を調製した。
硬化剤として、ビウレット型ヘキサメチレンジイソシアネート(NCO含有量23.5%)を使用した。
上記主剤と上記硬化剤をNCO/OH当量比が1.5となるように混合したものを発泡性耐火被覆材1(加熱残分85重量%)とした。
【0079】
(発泡性耐火被覆材2)
アクリル樹脂(ビニルトルエン-アクリル酸エステル共重合物、固形分40重量%)250重量部に対して、メラミン85重量部、ペンタエリスリトール60重量部、ポリリン酸アンモニウム250重量部、酸化チタン55重量部、及び添加剤[硬化触媒、増粘剤、分散剤、等]10重量部を常法にて混合したものを発泡性耐火塗料2(加熱残分77重量%)とした。
【0080】
(非発泡性耐火被覆材)
ポルトランドセメント100重量部、水酸化アルミニウム300重量部、エチレン酢酸ビニル系再乳化形粉末樹脂15重量部、膨張バーミキュライト30重量部及びガラス繊維6重量部からなる組成物を水とともに混合したものを耐火被覆材とした。
【0081】
ウレタンフォーム層を形成する硬化性組成物として、下記のものを使用した。
(硬化性組成物1)
芳香族ポリエステルポリオール[テレフタル酸系ポリエステルポリオール、粘度1900mPa・s、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:250mgKOH/g]100重量部、ヌレート化触媒2重量部、樹脂化触媒2重量部、泡化触媒6重量部、リン系難燃剤40重量部、整泡剤5重量部、ハイドロフルオロオレフィン25重量部、水0.8重量部、を混合し第1液とした。
第2液としては、ポリメリックMDIを用意した。
【0082】
(硬化性組成物2)
芳香族ポリエステルポリオール[テレフタル酸系ポリエステルポリオール、粘度1900mPa・s、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:250mgKOH/g]100重量部、ヌレート化触媒2重量部、樹脂化触媒2重量部、泡化触媒6重量部、リン系難燃剤40重量部、整泡剤5重量部、ハイドロフルオロオレフィン25重量部、水1.5重量部、を混合し第1液とした。
第2液としては、ポリメリックMDIを用意した。
【0083】
(硬化性組成物3)
芳香族ポリエステルポリオール[テレフタル酸系ポリエステルポリオール、粘度1900mPa・s、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:250mgKOH/g]100重量部、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート5重量部、ヌレート化触媒3重量部、樹脂化触媒3重量部、泡化触媒3重量部、整泡剤3重量部、リン系難燃剤40重量部、水8重量部、を混合し第1液とした。
第2液としては、ポリメリックMDIを用意した。
【0084】
(試験例1~9)
予めさび止め塗装した鋼板(縦100mm×横100mm×厚さ6mm)の全面に耐火被覆材を塗付し、常温(25℃)で養生し(養生期間は表1に示す)耐火被覆層を形成した。
次いで、耐火被覆層が硬化後、硬化性組成物の第1液、第2液をそれぞれ40℃に加温し、イソシアネート指数が400となるように混合し、得られた混合液を、スプレーガンで吹き付け、発泡させて、ウレタンフォーム層(1回吹付け厚最大30mm、合計厚み200mm)を形成し、常温(25℃)で3日間養生して試験体を得た。
【0085】
得られた試験体について、以下の評価を実施した。なお、発泡性耐火被覆材と硬化性組成物の組み合わせ、及び評価の結果は、表1~3に示す。
<付着性1>
得られた試験体の表面(ウレタンフォーム層)に接着剤でジグを取り付け、引張試験機を用い、常温(25℃)下で破断するまでの最大引張荷重(付着強度:N/mm)を測定し、破断の状況を確認した。評価基準は以下のとおりである。
◎:0.3N/mm以上、ウレタンフォーム層内部の破断
○:0.3N/mm以上、ウレタンフォーム層と耐火被覆層の界面での破断
△:0.3N/mm以上、耐火被覆層内部の破断
×:0.3N/mm以下、耐火被覆層内部の破断
<付着性2>
得られた試験体を50℃下で1ヶ月間養生後、上記と同様の試験を行った。
【0086】
<断熱性>
得られた試験体について、熱伝導率計を用いて、熱伝導率を測定した。評価基準は以下のとおりである。
○:熱伝導率が0.026W/(m・K)以下
△:熱伝導率が0.026W/(m・K)超0.03W/(m・K)以下
×:熱伝導率が0.03W/(m・K)超
【0087】
<耐火性>
得られた試験体について、ISO 5660-1 コーンカロリーメーター法に基づき、電気ヒーター(CONEIII、株式会社東洋精機製)を用いて、試験体表面に50kW/mの輻射熱を60分間放射したとき鋼板裏面温度を測定した。評価基準は以下のとおりである。
○:550℃未満
△:550℃以上、600℃未満
?:600℃以上
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】