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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079900
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】研磨ブラシ、および研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 13/10 20060101AFI20240606BHJP
   B24D 3/28 20060101ALI20240606BHJP
   B24B 29/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B24D13/10
B24D3/28
B24B29/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192580
(22)【出願日】2022-12-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】597022425
【氏名又は名称】株式会社ジーベックテクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】391062595
【氏名又は名称】大明化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康児
【テーマコード(参考)】
3C063
3C158
【Fターム(参考)】
3C063AA07
3C063AB02
3C063AB09
3C063BA17
3C063BA25
3C063BB11
3C063BC03
3C063BC05
3C063BH27
3C063FF30
3C158AA06
3C158CB01
(57)【要約】
【課題】ブラシの毛丈が短くなった場合でも、線状砥材の折れの発生や、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなることを抑制できる研磨ブラシを提供すること。
【解決手段】研磨ブラシ1Aは、ワークWを研磨する際にシャンク6の第1回転方向R1に回転させられて各ブラシ3の先端部をワークWに接触させる。ブラシホルダが備える複数のブラシ保持穴4は、その中心軸線L1が、当該ブラシ保持穴4の底面4bから開口4aに向かって第1回転方向R1の後方に延びる。ブラシ3は、複数本の線状砥材10と、複数本の線状砥材10の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材11と備える。樹脂部材11は、ブラシ保持穴4の内側に位置し、樹脂部材11におけるブラシ保持穴4の開口4aの側の端面11aは、中心軸線L1と直交する。複数の線状砥材10からなる砥材束12は、ブラシ保持穴4の開口4aから第1回転方向R1の後方に延びる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブラシ保持穴を備えるホルダ本体および前記ホルダ本体から突出するシャンクを備えるブラシホルダと、基端部分が各ブラシ保持穴に挿入された状態で前記ブラシホルダに保持された複数のブラシと、を有し、ワークを研磨する際に前記シャンクの軸線回りの第1回転方向に回転させられて各ブラシの先端部を前記ワークに接触させる研磨ブラシにおいて、
複数の前記ブラシ保持穴は、前記軸線回りに環状に配列され、
各ブラシ保持穴の中心軸線は、当該ブラシ保持穴の底面から開口に向かって前記第1回転方向の後方に延び、
前記ブラシは、直線状に延びる複数本の線状砥材と、複数本の前記線状砥材の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材と、備え、
前記線状砥材は、無機長繊維の集合糸と、前記集合糸に含侵する樹脂と、を備え、
前記樹脂部材は、硬化した接着剤からなり、
前記ブラシが前記ブラシ保持穴に保持されたときに、前記樹脂部材における前記ブラシ保持穴の前記開口の側の端面は、前記中心軸線と直交することを特徴とする研磨ブラシ。
【請求項2】
前記ブラシは、複数本の前記線状砥材の前記基端部分と前記樹脂部材とを外周側から覆う筒部、および前記線状砥材の基端に当接して前記筒部の一方の開口を封鎖する底部を有するホルダを備え、
前記樹脂部材は、複数本の前記線状砥材を前記ホルダに固定し、
前記ホルダは、前記ブラシ保持穴に挿入されて前記ブラシホルダに着脱可能に固定され、
前記樹脂部材における前記ブラシの先端側の端面は、前記筒部の他方の開口と一致し、
前記ブラシが前記ブラシ保持穴に保持されたときに、前記筒部の他方の開口は、前記中心軸線と直交することを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項3】
前記ホルダの径方向外側には、前記ブラシ保持穴の内周壁面が全周に渡って存在することを特徴とする請求項2に記載の研磨ブラシ。
【請求項4】
前記ブラシ保持穴は、前記中心軸線に沿った方向を前記底面から前記開口に向かって順に、小径穴部分と、前記小径穴部分よりも内径寸法が大きい大径穴部分と、を備え、
前記樹脂部材は、前記小径穴部分の内側で、複数本の前記線状砥材を前記ブラシホルダに固定することを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項5】
前記樹脂部材は、複数本の前記線状砥材を前記ブラシホルダに固定することを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項6】
各ブラシ保持穴の前記中心軸線は、前記シャンクの前記軸線と直交し、
前記ブラシにおいて前記ブラシ保持穴の前記開口から外に露出する先端側部分は、外周側に向かって前記第1回転方向の後方に傾斜することを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項7】
前記ホルダ本体は、前記シャンクと同軸の環状外周面を備え、
前記ブラシ保持穴は、前記開口が前記環状外周面に露出し、
前記開口は、前記軸線に沿った軸線方向よりも周方向に長い形状を備えることを特徴とする請求項6に記載の研磨ブラシ。
【請求項8】
前記軸線に沿った軸線方向において、前記ホルダ本体が位置する側を第1方向、前記シャンクが位置する側を第2方向とした場合に、
各ブラシ保持穴の前記中心軸線は、前記底面の側から前記開口に向かって、前記ホルダ本体の内周側に向かって前記第1方向に傾斜し、
前記ブラシにおいて前記ブラシ保持穴の前記開口から外に露出する先端側部分は、前記第1方向に向かって前記内周側および前記第1回転方向の後方に傾斜し、
前記軸線方向を前記シャンクの側から見た場合に、前記先端側部分は、前記ホルダ本体から外周側に突出する部分を有さないことを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項9】
前記ホルダ本体は、前記第1方向の端面に、複数の前記ブラシ保持穴と同数の切欠き凹部を備え、
複数の前記切欠き凹部は、前記軸線回りに環状に配列され、
各切欠き凹部は、前記第1回転方向の後方を向く第1内壁面と、前記第1内壁面における前記第2方向の端から前記第1回転方向の後方に延びる第2内壁面と、を備え、
前記ブラシ保持穴は、前記開口が前記第1内壁面に露出し、
前記第1内壁面は、前記ブラシ保持穴の前記中心軸線と直交し、
前記第2内壁面は、前記ブラシ保持穴の前記中心軸線と平行であることを特徴とする請求項8に記載の研磨ブラシ。
【請求項10】
前記軸線に沿った軸線方向において、前記ホルダ本体が位置する側を第1方向、前記シャンクが位置する側を第2方向とした場合に、
各ブラシ保持穴の前記中心軸線は、前記底面の側から前記開口に向かって、前記ホルダ本体の外周側に向かって前記第1方向に傾斜し、
前記ブラシにおいて前記ブラシ保持穴の前記開口から外に露出する先端側部分は、前記第1方向に向かって前記外周側および前記第1回転方向の後方に傾斜し、
前記ブラシの先端側部分は、前記ホルダ本体から外周側に突出することを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項11】
前記ホルダ本体は、前記シャンクと同軸で、前記第1方向に向かって内周側に傾斜するテーパー外周面を備え、
前記ブラシ保持穴は、前記開口が前記テーパー外周面に露出し、
前記開口は、前記テーパー外周面に沿った径方向よりも周方向に長い形状を備えることを特徴とする請求項10に記載の研磨ブラシ。
【請求項12】
請求項6に記載の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法において、
前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して平行として前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする研磨方法。
【請求項13】
請求項8に記載の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法において、
前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して垂直として前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする研磨方法。
【請求項14】
請求項10に記載の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法において、
前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して傾斜させて前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする研磨方法。
【請求項15】
請求項10に記載の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法において、
前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して垂直として前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
線状砥材の束を備える研磨ブラシ、および研磨ブラシを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシホルダと、ブラシホルダに保持された複数のブラシと、を備える研磨ブラシは、特許文献1に記載されている。ブラシホルダは、複数のブラシ保持穴を備えるホルダ本体と、ホルダ本体から突出するシャンクと、を備える。ホルダ本体は円盤形状であり、複数のブラシ保持穴はホルダ本体の環状外周面に設けられている。ブラシ保持穴は、環状外周面からホルダ本体の径方向内側に延びる。複数のブラシは、それぞれ基端部分が各ブラシ保持穴に挿入された状態でブラシホルダに保持される。各ブラシは、砥材として、無機長繊維の集合糸に樹脂を含浸、硬化させた複数本の線状砥材を備える。複数本の線状砥材は、ブラシ保持穴に挿入されることにより、ブラシ保持穴に充填された接着剤によって基端部が拘束された状態でブラシホルダに固定される。無機長繊維は、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、炭素繊維、窒化珪素繊維、或いは、ガラス繊維である。研磨ブラシは、シャンクの軸線回りに回転した状態でブラシの先端部をワークに接触させてワークの研磨対象面を切削或いは研磨する。
【0003】
ここで、無機長繊維は、密度が高く、高硬度であり、剛性が高い。従って、無機長繊維を備える線状砥材を束ねたブラシは、研削能力が高い。この一方、無機長繊維を備える線状砥材を束ねたブラシは、研磨時、研削時にブラシの先端部をワークに接触させる切り込み量を大きくすると、硬度が高いゆえに、線状砥材に折れを発生させやすいという問題がある。
【0004】
この問題に対して、特許文献1のブラシは、線状砥材が先端側から基端側の少なくとも一か所で湾曲している。同文献の研磨ブラシでは、線状砥材が湾曲しているので、ブラシは湾曲方向に向かっては容易に変形する。従って、線状砥材が直線的に延びる研磨ブラシと比較して、ブラシは、先端部のワークに対する当たりが柔らかい。また、ブラシは、過大な負荷が加わったときに変形して、その力を逃す。従って、線状砥材に折れを発生させることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2007/097115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
研磨ブラシのブラシは、ワークの研磨に伴って摩耗して、毛丈(ブラシの長さ寸法)が短くなる。ここで、上記の研磨ブラシでは、ブラシの毛丈が湾曲箇所よりも短くなると、ブラシがブラシホルダから径方向外側に直線状に突出する状態に近づく。
【0007】
このような状態になると、ブラシの線状砥材に折れが発生しやすくなる。また、毛丈が短くなるのに伴ってブラシの剛性が増加するので、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなる。
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、ブラシの毛丈が短くなった場合でも、線状砥材の折れの発生や、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなることを抑制できる研磨ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の研磨ブラシは、複数のブラシ保持穴を備えるホルダ本体および前記ホルダ本体から突出するシャンクを備えるブラシホルダと、基端部分が各ブラシ保持穴に挿入された状態で前記ブラシホルダに保持された複数のブラシと、を有し、ワークを研磨する際に前記シャンクの軸線回りの第1回転方向に回転させられて各ブラシの先端部を前記ワークに接触させる研磨ブラシにおいて、複数の前記ブラシ保持穴は、前記軸線回りに環状に配列され、各ブラシ保持穴の中心軸線は、当該ブラシ保持穴の底面から開口に向かって前記第1回転方向の後方に延び、前記ブラシは、直線状に延びる複数本の線状砥材と、複数本の前記線状砥材の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材と、備え、前記線状砥材は、無機長繊維の集合糸と、前記集合糸に含侵する樹脂と、を備え、前記樹脂部材は、硬化した接着剤からなり、前記ブラシが前記ブラシ保持穴に保持されたときに、前記樹脂部材における前記ブラシ保持穴の前記開口の側の端面は、前記中心軸線と直交することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ブラシホルダに設けられたブラシ保持穴が、底面から開口に向かってワークを研磨する際の第1回転方向の後方に傾斜する。従って、ブラシは、ブラシホルダに保持されることにより、ブラシ保持穴の開口から第1回転方向の後方に延びる。よって、研磨時にブラシに負荷がかかった場合には、ブラシはホルダ本体に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材の折れの発生や、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシは、第1回転方向の後方に延びている。従って、ブラシの毛丈が短くなった場合でも、線状砥材の折れの発生や、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなることを抑制できる。さらに、本発明では、ブラシがブラシ保持穴に保持されたときに、ブラシを拘束する樹脂部材の開口の側の端面は、ブラシ保持穴の中心軸線と直交する。従って、樹脂部材の端面からブラシの先端までの寸法を、ブラシを構成する全ての線状砥材について、同様の長さ寸法となる。よって、ブラシを第1回転方向の後方に撓ませることが容易である。
【0011】
本発明において、前記ブラシは、複数本の前記線状砥材の前記基端部分と前記樹脂部材とを外周側から覆う筒部、および前記線状砥材の基端に当接して前記筒部の一方の開口を封鎖する底部を有するホルダを備え、前記樹脂部材は、複数本の前記線状砥材を前記ホルダに固定し、前記ホルダは、前記ブラシ保持穴に挿入されて前記ブラシホルダに着脱可能に固定され、前記樹脂部材における前記ブラシの先端側の端面は、前記筒部の他方の開口と一致し、前記ブラシが前記ブラシ保持穴に保持されたときに、前記筒部の他方の開口は、前記中心軸線と直交するものとすることができる。このようにすれば、ブラシは、複数本の線状砥材の基端部分を覆うホルダを備える。従って、ブラシを、市場に流通可能な部品とすることができる。また、ブラシは、着脱可能にブラシホルダに固定される。従って、ブラシを、消耗品として、交換できる。さらに、ブラシをブラシ保持穴に保持させたときに、ブラシにおける樹脂部材の端面よりも先端側部分、すなわち、ブラシにおけるホルダの筒部の他方の開口よりも先端側部分では、ブラシ保持穴の内周壁面との間に筒部の厚み分の隙間が形成される。この隙間により、ブラシが、より、撓みやすくなる。
【0012】
本発明において、前記ホルダの径方向外側には、前記ブラシ保持穴の内周壁面が全周に渡って存在するものとすることができる。このようにすれば、ブラシのホルダがブラシ保持穴の開口から外に露出することがない。
【0013】
本発明において、前記ブラシ保持穴は、前記中心軸線に沿った方向を前記底面から前記開口に向かって順に、小径穴部分と、前記小径穴部分よりも内径寸法が大きい大径穴部分と、を備え、前記樹脂部材は、前記小径穴部分の内側で、複数本の前記線状砥材を前記ブ
ラシホルダに固定するものとすることができる。このようにすれば、ブラシにおける樹脂部材の端面よりも先端側部分と、ブラシ保持穴の内周壁面(大径穴部分の内周壁面)との間に隙間を設けることができる。これにより、ブラシが、より、撓みやすくなる。
【0014】
本発明において、前記樹脂部材は、複数本の前記線状砥材を前記ブラシホルダに固定するものとすることができる。
【0015】
本発明において、各ブラシ保持穴の前記中心軸線は、前記シャンクの前記軸線と直交し、前記ブラシにおいて前記ブラシ保持穴の前記開口から外に露出する先端側部分は、外周側に向かって前記第1回転方向の後方に傾斜するものとすることができる。このようにすれば、シャンクをワークの研磨対象面と平行にした姿勢で、研磨ブラシを第1回転方向に回転させて、研磨対象面を研磨できる。
【0016】
この場合において、前記ホルダ本体は、前記シャンクと同軸の環状外周面を備え、前記ブラシ保持穴は、前記開口が前記環状外周面に露出し、前記開口は、前記軸線に沿った軸線方向よりも周方向に長い形状を備えるものとすることができる。このようにすれば、ホルダ本体にブラシ保持穴を形成しやすい。
【0017】
ここで、上記の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法は、前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して平行として前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記軸線に沿った軸線方向において、前記ホルダ本体が位置する側を第1方向、前記シャンクが位置する側を第2方向とした場合に、各ブラシ保持穴の前記中心軸線は、前記底面の側から前記開口に向かって、前記ホルダ本体の内周側に向かって前記第1方向に傾斜し、前記ブラシにおいて前記ブラシ保持穴の前記開口から外に露出する先端側部分は、前記第1方向に向かって前記内周側および前記第1回転方向の後方に傾斜し、前記軸線方向を前記シャンクの側から見た場合に、前記先端側部分は、前記ホルダ本体から外周側に突出する部分を有さないものとすることができる。このようにすれば、シャンクをワークの研磨対象面と垂直にした姿勢で、研磨ブラシを第1回転方向に回転させて、研磨対象面を研磨できる。
【0019】
この場合において、前記ホルダ本体は、前記第1方向の端面に、複数の前記ブラシ保持穴と同数の切欠き凹部を備え、複数の前記切欠き凹部は、前記軸線回りに環状に配列され、各切欠き凹部は、前記第1回転方向の後方を向く第1内壁面と、前記第1内壁面における前記第2方向の端から前記第1回転方向の後方に延びる第2内壁面と、を備え、前記ブラシ保持穴は、前記開口が前記第1内壁面に露出し、前記第1内壁面は、前記ブラシ保持穴の前記中心軸線と直交し、前記第2内壁面は、前記ブラシ保持穴の前記中心軸線と平行であり、前記先端側部分は、前記第2内壁面と隙間を開けて対向するものとすることができる。このようにすれば、ホルダ本体にブラシ保持穴を形成しやすい。
【0020】
ここで、上記の記載の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法は、前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して垂直として前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする。
【0021】
本発明において、前記軸線に沿った軸線方向において、前記ホルダ本体が位置する側を第1方向、前記シャンクが位置する側を第2方向とした場合に、各ブラシ保持穴の前記中心軸線は、前記底面の側から前記開口に向かって、前記ホルダ本体の外周側に向かって前記第1方向に傾斜し、前記ブラシにおいて前記ブラシ保持穴の前記開口から外に露出する
先端側部分は、前記第1方向に向かって前記外周側および前記第1回転方向の後方に傾斜し、前記ブラシの先端側部分は、前記ホルダ本体から外周側に突出するに延びるものとすることができる。このようにすれば、シャンクをワークの研磨対象面に対して傾斜した姿勢で、研磨ブラシを第1回転方向に回転させて、研磨対象面を研磨できる。
【0022】
この場合において、前記ホルダ本体は、前記シャンクと同軸で、前記第1方向に向かって内周側に傾斜するテーパー外周面を備え、前記ブラシ保持穴は、前記開口が前記テーパー外周面に露出し、前記開口は、前記テーパー外周面に沿った径方向よりも周方向に長い形状を備えるものとすることができる。このようにすれば、ホルダ本体にブラシ保持穴を形成しやすい。
【0023】
ここで、上記の記載の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法は、前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して傾斜させて前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする。
【0024】
また、上記の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法は、前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して垂直として前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ブラシホルダに設けられたブラシ保持穴が、シャンクの軸線を中心とする径方向に延びておらず、底面から開口に向かってワークを研磨する際の第1回転方向の後方に傾斜する。従って、ブラシは、ブラシホルダに保持されることにより、ブラシ保持穴の開口から第1回転方向の後方に延びる。よって、研磨時にブラシに負荷がかかった場合には、ブラシはホルダ本体に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材の折れの発生や、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシは、第1回転方向の後方に延びている。従って、ブラシの毛丈が短くなった場合でも、線状砥材の折れの発生や、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ブラシがブラシ保持穴に保持されたときに、ブラシを拘束する樹脂部材の開口の側の端面は、ブラシ保持穴の中心軸線と直交し、樹脂部材の径方向外側には、ブラシ保持穴の内周壁面が全周に渡って存在する。従って、樹脂部材の端面からブラシの先端までの寸法を、ブラシを構成する全ての線状砥材について、同様の長さ寸法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1の研磨ブラシの斜視図である。
図2図1の研磨ブラシの底面図である。
図3図1のA-A線における研磨ブラシの断面図である。
図4】ブラシの斜視図である。
図5】本例の研磨ブラシのd効果の説明図である。
図6】実施例1の変形例の研磨ブラシの斜視図である。
図7】実施例2の研磨ブラシの斜視図である。
図8図7の研磨ブラシの底面図である。
図9】ブラシを取り外した状態のブラシホルダをホルダ本体の側から見た場合の斜視図である。
図10】実施例3の研磨ブラシの斜視図である。
図11図10の研磨ブラシの底面図である。
図12】ブラシを取り外した状態のブラシホルダをホルダ本体の側から見た場合の斜視図である。
図13】実施例3の研磨ブラシを使用した第1の研磨方法の説明図である。
図14】実施例3の研磨ブラシを使用した第2の研磨方法の説明図である。
図15】変形例1のブラシホルダの斜視図である。
図16図15のB-B線断面図である。
図17】変形例2のブラシホルダの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態である研磨ブラシを説明する。
【0028】
(実施例1)
図1は、本例の研磨ブラシの斜視図である。図2は、図1の研磨ブラシの底面図である。図3は、図1のA-A線における研磨ブラシの断面図である。図4は、ブラシの斜視図である。図1の研磨ブラシ1Aは、ブラシホルダ2と、ブラシホルダ2に保持された複数本のブラシ3と、を備える。ブラシホルダ2は、複数のブラシ保持穴4を備えるホルダ本体5と、ホルダ本体5から突出するシャンク6を備える。ホルダ本体5は、円盤形状であり、径方向外側を向く環状外周面7を備える。シャンク6は、ホルダ本体5の中心部分から突出する。シャンク6とホルダ本体5とは同軸であり、シャンク6と環状外周面7とは同軸である。シャンク6は、工作機械或いは回転工具のヘッドに接続される。ブラシ3は、基端部分がブラシ保持穴4に挿入された状態でブラシホルダ2に保持される。研磨ブラシ1Aは、ワークWを研磨する際にシャンク6の軸線L0回りの第1回転方向R1に回転させられて各ブラシ3の先端部をワークWに接触させる。以下の説明では、シャンク6の軸線L0に沿った方向を軸線方向X、シャンク6の軸線L0回りを周方向とする。また、軸線方向Xにおいて、ホルダ本体5が位置する側を第1方向X1、シャンク6が位置する側を第2方向X2とする。
【0029】
図2に示すように、複数のブラシ保持穴4は、シャンク6の軸線L0回りに環状に配列されている。本例では、ホルダ本体5は5つのブラシ保持穴4を備える。5つのブラシ保持穴4は、等角度間隔で設けられている。図1に示すように、ブラシ保持穴4は、その開口4aが環状外周面7に露出する。ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、シャンク6の軸線L0と直交する。また、図2に示すように、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、ブラシ保持穴4の底面4bから開口4aに向かって、外周側に向かって第1回転方向R1の後方に傾斜する。
【0030】
ここで、ブラシ保持穴4の開口4aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1に対して傾斜しており、図1に示すように、軸線方向Xよりも周方向に長い楕円形状を備える。また、図2に示すように、ホルダ本体5の底面4bにおいて各ブラシ保持穴4の底面4bに近い部分には、軸線方向Xに延びてブラシ保持穴4に連通するブラシ固定用貫通孔8が設けられている。
【0031】
次に、ホルダ本体5は、図3に示すように、周方向に延びてブラシ保持穴4とブラシ保持穴4の第1回転方向R1の後方に位置するブラシ保持穴4とを連通させる連通孔9を備える。連通孔9の一方の開口9aは、第1回転方向R1の前側に位置するブラシ保持穴4の内周壁面に露出する。連通孔9の他方の開口9bは、第1回転方向R1の後方で隣り合うブラシ保持穴4の底面4bに露出する。また、連通孔9の一方の開口9aは、第1回転方向R1の後方に位置するブラシ保持穴4の中心軸線L1に沿った方向から見た場合に、第1回転方向R1の前方に位置するブラシ保持穴4の開口4aの内側に位置する。
【0032】
図5に示すように、ブラシ3は、直線状に延びる複数本の線状砥材10と、複数本の線状砥材10の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材11と、を備える。複数本の線状
砥材10は、樹脂部材11により束状に固められて、砥材束12とされる。線状砥材10は無機長繊維の集合糸と、集合糸に含浸する樹脂と、を備える。無機長繊維は、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、炭素繊維、窒化珪素繊維、或いは、ガラス繊維である。本例では、無機長繊維は、アルミナ繊維である。また、ブラシ3は、複数本の線状砥材10の基端部分と樹脂部材11とを覆うホルダ13を備える。ホルダ13は、複数本の線状砥材10の基端部分と樹脂部材11とを外周側から覆う筒部14、および、線状砥材10の基端に当接して筒部14の一方の開口を封鎖する底部15を備える。筒部14は円筒形状であり、一定の高さ寸法を備える。ホルダ13の底部15は、円盤形状であり、一定の厚みを備える。底部15には、筒部14の軸線と直交する方向に貫通するネジ孔16が設けられている。
【0033】
ここで、樹脂部材11は、硬化した接着剤である。樹脂部材11は、複数本の線状砥材10をホルダ13に固定する。樹脂部材11におけるブラシ3の先端側の端面は、筒部14の開口14aと一致する。
【0034】
ブラシ3は、その基端部分が各ブラシ保持穴4に挿入された状態でブラシホルダ2に保持される。図3に示すように、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ホルダ13および樹脂部材11は、ブラシ保持穴4の内側に位置する。より具体的には、ホルダ13の底部15には、ブラシ保持穴4の底面4bが当接する。また、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。従って、ホルダ13の筒部14および樹脂部材11は、ホルダ本体5の環状外周面7から外に突出していない。また、筒部14の開口14aはブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。従って、筒部14の開口14aと一致する樹脂部材11の端面11aも、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。
【0035】
ここで、図3に示すように、本例では、軸線L0から径方向に延びて、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と樹脂部材11の端面11aとが交差する交点Pを通過する仮想線Qを規定した場合に、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、仮想線Qに対し、第1回転方向R1の後方に45°以上の角度θ1で傾斜する。
【0036】
なお、角度θ1は、以下の条件式を満たすことが望ましい。
10° ≦ θ1 ≦ 70°
すなわち、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、仮想線Qに対し、第1回転方向R1の後方に10°以上、かつ、70°以下の範囲で傾斜することが望ましい。ここで、θ1が10°以上であれば、ブラシ3が傾斜する分だけ、研磨時にブラシ3にかかる負荷を逃しやすくなる。また、θ1を70°以下とすれば、研磨により砥材束12がある程度短くなるまで、ブラシ3を使用できる。
【0037】
ブラシ3は、ホルダ本体5の底面4bに設けられたブラシ固定用貫通孔8を介してホルダ13の底部15に設けられたネジ孔16に捩じ込まれる固定ネジ17によりホルダ本体5に固定される。固定ネジ17は、棒状であり、外周に雄ネジを備える。固定ネジ17は、ホーローセットである。
【0038】
固定ネジ17は、ホルダ本体5のブラシ固定用貫通孔8を介してホルダ13のネジ孔16に捩じ込まれ、その先端が、ブラシ保持穴4においてネジ孔16の捩じ込み方向の前方に位置する内壁部分に当接する。この状態から固定ネジ17を更に捩じ込むと、ホルダ13は、ブラシ保持穴4内において、ネジ孔16の捩じ込み方向の後方に移動し、ブラシ保持穴4においてブラシ固定用貫通孔8の開口が形成されている内壁部分に押し付けられる。これにより、ブラシ3は、ホルダ本体5に固定される。なお、本例では、ブラシ固定用貫通孔8の内周壁面4cにおいて、固定ネジ17の捩じ込み方向の先端が当接するブラシ
保持穴4の内周壁部分には、円形凹部が設けられている。固定ネジ17の先端は、円形凹部に挿入されて、その先端が円形凹部の底に当接する。
【0039】
ここで、図4に示すように、連通孔9の一方の開口9aは、ブラシ保持穴4においてブラシ3のホルダ13よりもブラシ保持穴4の開口4aの側に位置する。従って、図1に示すように、ブラシ3がホルダ本体5に保持されると、連通孔9の一方の開口9aは、ホルダ13から突出する砥材束12により覆われる。また、ブラシ3がホルダ本体5に保持されると、図3に示すように、ブラシ3においてブラシ保持穴4の開口4aから外に露出する砥材束12の先端側部分12aは、ホルダ本体5の外周側に向かって第1回転方向R1の後方に傾斜する。さらに、ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態では、ブラシ保持穴4の内周壁面4cにおいてブラシ3のホルダ13よりもブラシ保持穴4の開口4aの側に位置する内周壁面部分4dは、先端側部分12aと、ホルダ13の筒部14の厚み分の隙間を開けて対向する。
【0040】
(研磨方法)
研磨ブラシ1Aを用いてワークWの研磨対象面Sを研磨する場合には、図1に示すように、シャンク6の軸線L0を研磨対象面Sに対して平行とする。そして、研磨ブラシ1Aを第1回転方向R1に回転させて、ブラシ3の先端部を研磨対象面Sに接触させる。
【0041】
(作用効果)
本例によれば、ブラシホルダ2に設けられたブラシ保持穴4が、シャンク6の軸線L0を中心とする径方向に延びておらず、底面4bから開口4aに向かってワークWを研磨する際の第1回転方向R1の後方に傾斜する。従って、ブラシ3は、ブラシホルダ2に保持されることにより、ブラシ保持穴4の開口4aから第1回転方向R1の後方に延びる。よって、研磨時にブラシ3に負荷がかかった場合には、ブラシ3が径方向に延びる場合と比較して、ブラシ3はホルダ本体5に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークWの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシ3は、第1回転方向R1の後方に延びている。従って、ブラシ3の毛丈が短くなった場合でも、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。
【0042】
また、本例では、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。従って、樹脂部材11の端面11aからブラシ3の先端までの寸法が、ブラシ3を構成する全ての線状砥材10について、同様の長さ寸法となる。よって、ブラシ3を第1回転方向R1の後方に撓ませることが容易となる。
【0043】
例えば、ホルダ13の形状および樹脂部材11の形状をブラシ保持穴4の形状に一致させた場合には、筒部14の開口14aの形状がブラシ保持穴4の開口4aと同様に、筒部14の軸線(砥材保持孔4の中心軸線L1)に対して傾斜して、周方向に長い楕円形状となる。さらに、筒部14の開口14aと樹脂部材11の端面11aとを一致させた場合には、樹脂部材11の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1に対して周方向に傾斜して、周方向に長い楕円形状となる。このように、樹脂部材11の端面11aがブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交せずに、傾斜する場合には、砥材束12の延設方向に対しても樹脂部材11の端面11aが傾斜する。従って、樹脂部材11は、その端面11aにおいて最もブラシ3の先端に近い端まで、砥材束12を拘束する。従って、ブラシ3が第1回転方向R1の後方に撓むことが阻害されやすくなる。また、樹脂部材11の端面11aにおいて最もブラシ3の先端に近い端の近傍の線状砥材10は、端面11aから先端までの長さ寸法が短くなる。この結果、この部分の線状砥材10は剛性が高まる。従って、線
状砥材10に折れが発生しやすくなる。これに対して、樹脂部材11の端面11aをブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交させれば、ブラシ3を第1回転方向R1の後方に撓ませることが容易となり、線状砥材10に折れを発生させやすくなることを抑制できる。
【0044】
さらに、本例では、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、かつ、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。従って、ホルダ13および樹脂部材11がホルダ本体5の環状外周面7から径方向外側に突出することがない。
【0045】
また、ブラシ3は、複数本の線状砥材10の基端部分を覆うホルダ13を備える。これにより、砥材束12を、ブラシ3として市場に流通可能な部品とすることができる。さらに、ブラシ3は、ホルダ13を利用して着脱可能にブラシホルダ2に固定される。従って、ブラシ3を、消耗品として、交換できる。
【0046】
ここで、ホルダ本体5は、シャンク6と同軸の環状外周面7を備える。ブラシ保持穴4は、開口4aが環状外周面7に露出する。開口4aは、軸線方向Xよりも周方向に長い形状を備える。従って、ホルダ本体5にブラシ保持穴4を形成することが容易である。
【0047】
また、ブラシ3をブラシ保持穴4に保持させたときに、ブラシ3における樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12a、すなわち、砥材束12におけるホルダ13の筒部14の他方の開口9bよりも先端側部分12aでは、先端側部分12aとブラシ保持穴4の内周壁面4cの内周壁面部分4dとの間には、筒部14の厚み分の隙間が形成される。この隙間により、ブラシ3が、より、撓みやすくなる。
【0048】
さらに、ホルダ本体5は、ブラシ保持穴4の開口4aが、軸線方向Xよりも周方向に長い形状を備えるので、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ブラシ3において樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12aの内周側に、ブラシ保持穴4の内周壁面4c(内周壁面部分4d)が存在する。従って、内周壁面部分4dにより、ワークWの研磨対象面Sを研磨するときに、ブラシ3がホルダ本体5の側に撓み過ぎることを防止或いは抑制できる。
【0049】
また、本例では、ホルダ本体5は、周方向に延びて、ブラシ保持穴4と、ブラシ保持穴4の第1回転方向R1の後方に位置するブラシ保持穴4とを連通させる連通孔9を備える。連通孔9の一方の開口9aは、第1回転方向R1の前側に位置するブラシ保持穴4の内周壁面4cに露出する。連通孔9の他方の開口9bは、第1回転方向R1の後方で隣り合うブラシ保持穴4の底面4bに露出する。連通孔9の一方の開口9aは、第1回転方向R1の後方に位置するブラシ保持穴4の中心軸線L1に沿った方向から見た連通孔9の一方の開口9aを見た場合に、第1回転方向R1の前方に位置するブラシ保持穴4の開口4aの内側に位置する。また、ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態では、連通孔9の一方の開口9aは、ブラシ3のホルダ13よりもブラシ保持穴4の開口4aの側に位置する。従って、ブラシ保持穴4にブラシ3を保持させる際に、ブラシ3のホルダ13の底部15とブラシ保持穴4の底面4bとの間の空気を、連通孔9を介して、第1回転方向R1の前方のブラシ保持穴4から外に排出できる。よって、ブラシ3をブラシ保持穴4に挿入することが容易である。また、ブラシ3を交換する際に、固定ネジ17によるブラシ3のホルダ本体5への固定状態を解除したにも拘わらず、ブラシ3のホルダ13がブラシ保持穴4に嵌っていてブラシ3をブラシ保持穴4から抜くことが困難な場合には、第1回転方向R1の前方のブラシ保持穴4の内周壁面4cに露出する連通孔9の一方の開口9aからピンを挿入してホルダ13の底部15に当接させて押し込むことにより、ブラシ3をブラシ保持穴4から押し出すことができる。ここで、連通孔9の一方の開口9aは、第1回転方
向R1の後方に位置するブラシ保持穴4の中心軸線L1に沿った方向から見た連通孔9の一方の開口9aを見た場合に、第1回転方向R1の前方に位置するブラシ保持穴4の開口4aの内側に位置する。従って、連通孔9の開口4aに、ピンを挿入することが容易である。
【0050】
(変形例)
図6は、実施例1の変形例の研磨ブラシの斜視図である。本例の研磨ブラシ1A´は、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ホルダ13の一部分がブラシ保持穴4から外に露出する。すなわち、本例の研磨ブラシ1A´では、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の端面11aは、ホルダ13の筒部14の開口14aと一致する。ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、樹脂部材11の端面11aおよび筒部14の開口14aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。この一方で、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在しない。言い換えれば、ホルダ13の先端側部分では、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には周方向の一部分にブラシ保持穴4の内周壁面4cが存在するが、周方向の他の部分にはブラシ保持穴4の内周壁面4cは存在しない。
【0051】
図6に示す例では、ホルダ13の径方向外側にブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在している部分(ホルダ13においてブラシ保持穴4から外に露出していない部分)の中心軸線L1に沿った長さ寸法は、ホルダ13の中心軸線L1の沿った全長の1/2以上である。これにより、変形例の研磨ブラシ1A´の樹脂部材11の端面11aの位置は、実施例1の研磨ブラシ1Aの樹脂部材11の端面11aの位置よりも、ホルダ本体5の外周側、かつ、第1回転方向R1の後方に位置する。ここで、本例の研磨ブラシ1A´は、研磨ブラシ1Aのブラシ保持穴4の中心軸線L1の沿った深さ寸法を短くすることにより実現できる。
【0052】
変形例の研磨ブラシ1A´では、ホルダ13の先端側の一部分がブラシ保持穴4から外に露出する。従って、ブラシ3は、摩耗により砥材束12がホルダ13に近い位置に達するまで使用できる。よって、摩耗によりブラシ3を交換する際に、砥材束12において研磨に使用されずに残っている部分を少なくすることができる。
【0053】
なお、実施例1の研磨ブラシ1Aでは、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には全周に渡ってブラシ保持穴4の内周壁面4cが存在する。すなわち、ホルダ13は、ブラシ保持穴4から外に露出しない。これにより、実施例1の研磨ブラシ1Aの樹脂部材11の端面11aの位置は、変形例の研磨ブラシ1A´の樹脂部材11の端面11aの位置よりも、ホルダ本体5の内周側、かつ、第1回転方向R1の前方に位置する。従って、ブラシ3は、摩耗により砥材束12がホルダ本体5の環状外周面7に近い位置に達するまでしか使用できない。よって、摩耗によりブラシ3を交換する際には、砥材束12において研磨に使用されずに残っている部分が、変形例の研磨ブラシ1A´よりも多くなってしまう。
【0054】
しかし、砥材束12において研磨に使用されずに残る部分が多いということは、摩耗によってブラシ3の毛丈が短くなり、砥材束12の先端がホルダ13或いはホルダ本体5に接近した時点でも、ブラシ3における砥材束12の先端と樹脂部材11の端面11aとの間の寸法が確保されているということである。従って、ブラシ3の交換が必要となる程度まで砥材束12が摩耗してきたときに、実施例1の研磨ブラシ1Aの方が、変形例の研磨ブラシ1A´よりも、砥材束12を撓ませやすい。よって、ブラシ3の交換が必要となる程度まで砥材束12が摩耗してきたときに、実施例1の研磨ブラシ1Aの方が、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けることを抑制できる。
【0055】
(実施例2)
図7は、本例の研磨ブラシの斜視図である。図8は、図7の研磨ブラシの底面図である。図9は、ブラシを取り外した状態のブラシホルダをホルダ本体の側から見た場合の斜視図である。図7に示す本例の研磨ブラシ1Bは、研磨ブラシ1Aと対応する構成を備えるので、対応する構成には同一の符号を付して説明する。
【0056】
研磨ブラシ1Bは、ブラシホルダ2と、ブラシホルダ2に保持された複数本のブラシ3と、を備える。ブラシホルダ2は、複数のブラシ保持穴4を備えるホルダ本体5と、ホルダ本体5から突出するシャンク6を備える。ホルダ本体5は、円盤形状である。シャンク6は、ホルダ本体5の中心部分から突出する。シャンク6とホルダ本体5とは同軸である。シャンク6は、工作機械或いは回転工具のヘッドに接続される。ブラシ3は、基端部分がブラシ保持穴4に挿入された状態でブラシホルダ2に保持される。研磨ブラシ1Bは、ワークWを研磨する際にシャンク6の軸線L0回りの第1回転方向R1に回転させられて各ブラシ3の先端部をワークWに接触させる。以下の説明では、シャンク6の軸線L0に沿った方向を軸線方向X、シャンク6の軸線L0回りを周方向とする。また、軸線方向Xにおいて、ホルダ本体5が位置する側を第1方向X1、シャンク6が位置する側を第2方向X2とする。
【0057】
図8図9に示すように、複数のブラシ保持穴4は、シャンク6の軸線L0回りに環状に配列されている。本例では、ホルダ本体5は、等角度間隔で設けられた5つのブラシ保持穴4を備える。ブラシ保持穴4は、その開口4aがホルダ本体5のシャンク6とは反対側の面に露出する。図8に示すように、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、底面4bの側から開口4aに向かって、第1方向X1に向かって第1回転方向R1の後方に傾斜する。図7に示すように、本例では、研磨ブラシ1Bを軸線L1と直交する方向から見た場合に、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、軸線L0に対し、第1方向X1に向かって第1回転方向R1の後方に45°以上の角度θ2で傾斜する。また、図8に示すように、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、第1方向X1に向かって、ホルダ本体5の内周側に傾斜する。
【0058】
より詳細には、図9に示すように、ホルダ本体5は、第1方向X1の端面に、外周側から切り欠かれた5つの切欠き凹部21を備える。複数の切欠き凹部21は、軸線L0回りに環状に配列されている。各切欠き凹部21は、第1回転方向R1の後方を向く第1内壁面22と、第1内壁面22における第2方向X2の端から第1回転方向R1の後方に延びる第2内壁面23と、を備える。ブラシ保持穴4は、その開口4aが第1内壁面22に露出する。開口4aは円形である。開口4aは、第1内壁面22の第2方向X2の端において第2内壁面23を第2方向X2に抉る。ここで、切欠き凹部21の第1内壁面22は、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。第2内壁面23は、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と平行である。第2内壁面23には、開口4aから連続して第1回転方向R1の後方に直線状に延びる湾曲面部分23aが設けられている。湾曲面部分23aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と平行である。湾曲面部分23aは、第2内壁面23を抉るように形成されている。ここで、ホルダ本体5のシャンク6とは反対側の面には、その中央に円形凹部25が設けられている。円形凹部25は、シャンク6と同軸である。
【0059】
図7に示すように、ホルダ本体5において径方向外側を向く環状外周面7には、内周側に延びてブラシ保持穴4に連通するブラシ固定用貫通孔8が設けられている。ブラシ固定用貫通孔8は、ブラシ保持穴4の底面4bに近い部分に連通する。
【0060】
ブラシ3は、上記の例と同一である。図5に示すように、ブラシ3は、直線状に延びる複数本の線状砥材10と、複数本の線状砥材10の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材11と、を備える。線状砥材10は無機長繊維の集合糸と、集合糸に含侵する樹脂と、を備える。無機長繊維は、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、炭素繊維、窒化珪素繊維、或
いは、ガラス繊維である。本例では、無機長繊維は、アルミナ繊維である。また、ブラシ3は、複数本の線状砥材10の基端部分と樹脂部材11とを覆うホルダ13を備える。ホルダ13は、複数本の線状砥材10の基端部分と樹脂部材11とを外周側から覆う筒部14、および、線状砥材10の基端に当接して筒部14の一方の開口を封鎖する底部15を備える。筒部14は円筒形状であり、一定の高さ寸法を備える。ホルダ13の底部15は、円盤形状であり、一定の厚みを備える。底部15には、筒部14の軸線と直交する方向に貫通するネジ孔16が設けられている。
【0061】
ここで、樹脂部材11は、硬化した接着剤である。樹脂部材11は、複数本の線状砥材10をホルダ13に固定する。樹脂部材11におけるブラシ3の先端側の端面11aは、筒部14の開口14aと一致する。
【0062】
ブラシ3は、その基端部分が各ブラシ保持穴4に挿入された状態でブラシホルダ2に保持される。ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ホルダ13および樹脂部材11は、ブラシ保持穴4の内側に位置する。より具体的には、ホルダ13の底部15には、ブラシ保持穴4の底面4bが当接する。また、ホルダ13の筒部14の開口14aは、切欠き凹部21の第1内壁面22に露出するブラシ保持穴4の開口4aと一致する。従って、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。また、筒部14の開口14aはブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。従って、筒部14の開口14aと一致する樹脂部材11の端面11aも、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。
【0063】
ブラシ3は、ホルダ本体5の環状外周面7に設けられたブラシ固定用貫通孔8を介してホルダ13の底部15に設けられたネジ孔16に捩じ込まれる固定ネジ17によりホルダ本体5に固定される。固定ネジ17は、棒状であり、外周に雄ネジを備える。固定ネジ17は、ホーローセットである。
【0064】
固定ネジ17は、ホルダ本体5のブラシ固定用貫通孔8を介してホルダ13のネジ孔16に捩じ込まれ、その先端が、ブラシ保持穴4においてネジ孔16の捩じ込み方向の前方に位置する内壁部分に当接する。この状態から固定ネジ17を更に捩じ込むと、ホルダ13は、ブラシ保持穴4内において、ネジ孔16の捩じ込み方向の後方に移動し、ブラシ保持穴4においてブラシ固定用貫通孔8の開口が形成されている内壁部分に押し付けられる。これにより、ブラシ3は、ホルダ本体5に固定される。なお、本例では、ブラシ固定用貫通孔8の内周壁面4cにおいて、固定ネジ17の捩じ込み方向の先端が当接するブラシ保持穴4の内周壁部分には、円形凹部が設けられている。固定ネジ17の先端は、円形凹部に挿入されて、その先端が円形凹部の底に当接する。
【0065】
ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態では、ブラシ3においてブラシ保持穴4の開口4aから外に露出する砥材束12の先端側部分12aは、第1方向X1に向かって、第1回転方向R1の後方に傾斜する。また、先端側部分12aは、第1方向X1に向かって、内周側に傾斜する。ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態を第2方向X2の側から見た場合には、先端側部分12aは、ホルダ本体5に隠れる。すなわち、先端側部分12aは、ホルダ本体5よりも外周側に突出する部分を備えていない。また、ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態では、先端側部分12aは、第2内壁面23と隙間を開けて対向する。本例では、先端側部分12aは、第2内壁面23の湾曲面部分23aと隙間を開けて対向する。
【0066】
(研磨方法)
研磨ブラシ1Bを用いてワークWの研磨対象面Sを研磨する場合には、図7に示すように、シャンク6の軸線L0を研磨対象面Sに対して垂直とする。そして、研磨ブラシ1B
を第1回転方向R1に回転させて、ブラシ3の先端部を研磨対象面Sに接触させる。
【0067】
(作用効果)
本例によれば、ブラシホルダ2に設けられたブラシ保持穴4が、シャンク6の軸線L0に沿った軸線方向Xに延びておらず、底面4bから開口4aに向かってワークWを研磨する際の第1回転方向R1の後方に傾斜する。従って、ブラシ3は、ブラシホルダ2に保持されることにより、ブラシ保持穴4の開口4aから第1回転方向R1の後方に延びる。よって、研磨時にブラシ3に負荷がかかった場合には、ブラシ3が径方向に延びる場合と比較して、ブラシ3はホルダ本体5に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークWの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシ3は、第1回転方向R1の後方に延びている。従って、ブラシ3の毛丈が短くなった場合でも、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。
【0068】
また、本例では、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の端面11aがブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。従って、樹脂部材11の端面11aからブラシ3の先端までの寸法が、ブラシ3を構成する全ての線状砥材10について、同様の長さ寸法となる。よって、ブラシ3を第1回転方向R1の後方に撓ませることが容易となる。
【0069】
さらに、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、かつ、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。従って、ホルダ13および樹脂部材11がホルダ本体5の第1方向X1の端面から第1方向X1に突出することがない。
【0070】
また、ブラシ3は、複数本の線状砥材10の基端部分を覆うホルダ13を備える。これにより、砥材束12を、ブラシ3として市場に流通可能な部品とすることができる。さらに、ブラシ3は、ホルダ13を利用して着脱可能にブラシホルダ2に固定される。従って、ブラシ3を、消耗品として、交換できる。
【0071】
さらに、ホルダ本体5は、ブラシ保持穴4と同数の切欠き凹部21を備え、複数の切欠き凹部21は、軸線L0回りに環状に配列される。各切欠き凹部21は、第1回転方向R1の後方を向く第1内壁面22と、第1内壁面22における第2方向X2の端から第1回転方向R1の後方に延びる第2内壁面23と、を備える。ブラシ保持穴4は、開口4aが第1内壁面22に露出する。第1内壁面22は、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。第2内壁面23(湾曲面部分23a)は、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と平行である。従って、ホルダ本体5にブラシ保持穴4を形成しやすい。
【0072】
また、ブラシ3をブラシ保持穴4に保持させたときに、ブラシ3における樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12a、すなわち、ブラシ3におけるホルダ13の筒部14の他方の開口9bよりも先端側部分12aは、ホルダ本体5の切欠き凹部21の第2内壁面23(湾曲面部分23a)と、ホルダ13の筒部14の厚み分の隙間を開けて対向する。従って、ブラシ3は、この隙間によって、より、撓みやすくなる。
【0073】
さらに、本例では、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ブラシ3において樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12aの第2方向X2に、ホルダ本体5の切欠き凹部21の第2内壁面23(湾曲面部分23a)が存在する。従って、内周壁面4cにより、ワークWの研磨対象面Sを研磨するときに、ブラシ3がホルダ本体5の側に撓み
過ぎることを防止できる。
【0074】
また、本例では、ホルダ本体5が第1方向X1の端面に切欠き凹部21を備え、切欠き凹部21の第1内壁面22にブラシ保持穴4の開口4aが露出する。従って、ブラシ3の交換が必要となった時に、切欠き凹部21に位置する砥材束12を掴んで、ブラシ3をブラシ保持穴4から引き抜くことができる。すなわち、ブラシ3の交換が必要となった時点では、摩耗して砥材束12の先端がホルダ本体5の第1方向X1の端面に接近した状態となっている。従って、ホルダ本体5の第1方向X1の端面の側から砥材束12を掴んで、ブラシ3をブラシ保持穴から引き抜くことは容易ではない。しかし、砥材束12の先端がホルダ本体5の第1方向X1の端面に接近した状態となっている場合でも、切欠き凹部21の第1内壁面22に露出するブラシ保持穴4の開口4aからは、砥材束12は突出している。従って、ブラシ保持穴4の開口4aから突出する砥材束12の突出部分を掴んで、ブラシ3をブラシ保持穴4から引き抜くことができる。
【0075】
なお、ホルダ本体5に切欠き凹部21を設けずに、ブラシ保持穴4を形成してもよい。すなわち、ホルダ本体5を円盤形状とし、ホルダ本体5の第1方向X1の端面から、第2方向X2に向かってブラシ保持穴4を設けることもできる。また、この場合には、ホルダ本体5に、一方の開口がホルダ本体5の第2方向X2の端面に露出し、他方の開口がブラシ保持穴4の底面4bの一部分に露出する貫通孔を設けることができる。貫通孔は、例えば、ブラシ保持穴4の中心軸線L1に沿って延設される。このような貫通孔を備えれば、ホルダ本体5の第2方向X2の端面に設けられた開口からピンを挿入することにより、ピンの先端をブラシ保持穴4に保持されたブラシ3のホルダ13の底部15に当接させることができる。従って、ピンを押し込むことにより、ブラシ3をブラシ保持穴4から押し出すことができる。よって、ブラシ3を交換する際に、固定ネジ17によるブラシ3のホルダ本体5への固定状態を解除したにも拘わらず、ブラシ3のホルダ13がブラシ保持穴4に嵌っている場合に、ブラシ3の引き抜きが容易となる。
【0076】
(実施例3)
図10は、実施例3の研磨ブラシの斜視図である。図11は、図10の研磨ブラシの底面図である。図12は、ブラシ3を取り外した状態のブラシホルダ2をホルダ本体5の側から見た場合の斜視図である。図10に示す研磨ブラシ1Cは、ブラシホルダ2と、ブラシホルダ2に保持された複数本のブラシ3と、を備える。ブラシホルダ2は、複数のブラシ保持穴4を備えるホルダ本体5と、ホルダ本体5から突出するシャンク6を備える。ホルダ本体5は、円盤形状である。シャンク6は、ホルダ本体5の中心部分から突出する。シャンク6とホルダ本体5とは同軸である。シャンク6は、工作機械或いは回転工具のヘッドに接続される。ブラシ3は、基端部分がブラシ保持穴4に挿入された状態でブラシホルダ2に保持される。研磨ブラシ1Cは、ワークWを研磨する際にシャンク6の軸線L0回りの第1回転方向R1に回転させられて各ブラシ3の先端部をワークWに接触させる。以下の説明では、シャンク6の軸線L0に沿った方向を軸線方向X、シャンク6の軸線L0回りを周方向とする。また、軸線方向Xにおいて、ホルダ本体5が位置する側を第1方向X1、シャンク6が位置する側を第2方向X2とする。
【0077】
複数のブラシ保持穴4は、シャンク6の軸線L0回りに環状に配列されている。本例では、ホルダ本体5には、6つのブラシ保持穴4が等角度間隔で設けられている。より具体的には、ホルダ本体5は、シャンク6の側から第1方向X1に向かって、円盤部分31と、第1方向X1に向かって径寸法が小さくなる円錐台部分32と、備える。円盤部分31の外周面31aは、軸線方向Xから見た場合に、略12角形形状をしている。円錐台部分32は、第1方向X1に向かって径寸法が小さくなる環状のテーパー外周面33を備える。ここで、図11図12に示すように、円錐台部分32の第1方向X1の端面に中心には、円形凹部35が設けられている。円形凹部35は、シャンク6と同軸である。
【0078】
ブラシ保持穴4は、その開口4aがテーパー外周面33に露出する。図10に示すように、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、底面4bの側から開口4aに向かって、第1方向X1に向かって第1回転方向R1の後方に傾斜する。本例では、研磨ブラシ1Cを軸線L1と直交する方向から見た場合に、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、軸線L0に対し、第1方向X1に向かって第1回転方向R1の後方に45°以上の角度θ3で傾斜する。また、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、図11に示すように、第1方向X1に向かって、ホルダ本体5の外周側に傾斜する。ここで、ブラシ保持穴4の開口4aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1に対して傾斜しており、軸線方向Xよりも周方向に長い楕円形状を備える。図11に示すように、ホルダ本体5の円盤部分31の外周面31aにおいて各ブラシ保持穴4の底面4bに近い部分には、内周側に延びてブラシ保持穴4に連通するブラシ固定用貫通孔8が設けられている。
【0079】
ブラシ3は、上記の例と同一である。図5に示すように、ブラシ3は、直線状に延びる複数本の線状砥材10と、複数本の線状砥材10の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材11と、を備える。線状砥材10は無機長繊維の集合糸と、集合糸に含侵する樹脂と、を備える。無機長繊維は、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、炭素繊維、窒化珪素繊維、或いは、ガラス繊維である。本例では、無機長繊維は、アルミナ繊維である。また、ブラシ3は、複数本の線状砥材10の基端部分と樹脂部材11とを覆うホルダ13を備える。ホルダ13は、複数本の線状砥材10の基端部分と樹脂部材11とを外周側から覆う筒部14、および、線状砥材10の基端に当接して筒部14の一方の開口を封鎖する底部15を備える。筒部14は円筒形状であり、一定の高さ寸法を備える。ホルダ13の底部15は、円盤形状であり、一定の厚みを備える。底部15には、筒部14の軸線と直交する方向に貫通するネジ孔16が設けられている。
【0080】
ここで、樹脂部材11は、硬化した接着剤である。樹脂部材11は、複数本の線状砥材10をホルダ13に固定する。樹脂部材11におけるブラシ3の先端側の端面11aは、筒部14の開口14aと一致する。
【0081】
ブラシ3は、その基端部分が各ブラシ保持穴4に挿入された状態でブラシホルダ2に保持される。ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ホルダ13および樹脂部材11は、ブラシ保持穴4の内側に位置する。より具体的には、ホルダ13の底部15には、ブラシ保持穴4の底面4bが当接する。また、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。すなわち、ホルダ13の筒部14および樹脂部材11は、ホルダ本体5のテーパー外周面33から外に突出していない。また、筒部14の開口14aはブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。従って、筒部14の開口14aと一致する樹脂部材11の端面11aも、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。
【0082】
ブラシ3は、ホルダ本体5の円盤部分31の環状外周面7に設けられたブラシ固定用貫通孔8を介してブラシ3のホルダ13の底部15に設けられたネジ孔16に捩じ込まれる固定ネジ17によりホルダ本体5に固定される。固定ネジ17は、棒状であり、外周に雄ネジを備える。固定ネジ17は、ホーローセットである。
【0083】
固定ネジ17は、ホルダ本体5のブラシ固定用貫通孔8を介してホルダ13のネジ孔16に捩じ込まれ、その先端が、ブラシ保持穴4においてネジ孔16の捩じ込み方向の前方に位置する内壁部分に当接する。この状態から固定ネジ17を更に捩じ込むと、ホルダ13は、ブラシ保持穴4内において、ネジ孔16の捩じ込み方向の後方に移動し、ブラシ保持穴4においてブラシ固定用貫通孔8の開口が形成されている内壁部分に押し付けられる。これにより、ブラシ3は、ホルダ本体5に固定される。なお、本例では、ブラシ固定用
貫通孔8の内周壁面4cにおいて、固定ネジ17の捩じ込み方向の先端が当接するブラシ保持穴4の内周壁部分には、円形凹部が設けられている。固定ネジ17の先端は、円形凹部に挿入されて、その先端が円形凹部の底に当接する。
【0084】
ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態では、ブラシ3においてブラシ保持穴4の開口4aから外に露出する砥材束12の先端側部分12aは、第1方向X1に向かって、第1回転方向R1の後方に傾斜する。また、先端側部分12aは、第1方向X1に向かって、外周側に傾斜する。ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態を軸線方向Xから見た場合には、先端側部分12aは、ホルダ本体5から外周側に突出する部分を備える。また、ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態では、ブラシ保持穴4の内周壁面4cにおいてブラシ3のホルダ13よりもブラシ保持穴4の開口4aの側に位置する内周壁面部分4dは、先端側部分12aと、ホルダ13の筒部14の厚み分の隙間を開けて対向する。
【0085】
(研磨方法)
図13は、本例の研磨ブラシを用いた第1の研磨方法の説明図である。図14は、本例の研磨ブラシを用いた第2の研磨方法の説明図である。図13に示すように、研磨ブラシ1Cを用いてワークWの研磨対象面Sを研磨する場合には、シャンク6の軸線L0を研磨対象面Sに対して傾斜させる。そして、研磨ブラシ1Cを第1回転方向R1に回転させて、ブラシ3の先端部を研磨対象面Sに接触させる。また、図14に示すように、研磨ブラシ1Cを用いてワークWの研磨対象面Sを研磨する場合には、シャンク6の軸線L0を研磨対象面Sに対して垂直とする。そして、研磨ブラシ1Cを第1回転方向R1に回転させて、ブラシ3の先端部を研磨対象面Sに接触させる。
【0086】
(作用効果)
本例によれば、ブラシホルダ2に設けられたブラシ保持穴4が、シャンク6の軸線L0に沿った軸線方向Xに延びておらず、底面4bから開口4aに向かってワークWを研磨する際の第1回転方向R1の後方に傾斜する。従って、ブラシ3は、ブラシホルダ2に保持されることにより、ブラシ保持穴4の開口4aから第1回転方向R1の後方に延びる。よって、研磨時にブラシ3に負荷がかかった場合には、ブラシ3が径方向に延びる場合と比較して、ブラシ3はホルダ本体5に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークWの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシ3は、第1回転方向R1の後方に延びている。従って、ブラシ3の毛丈が短くなった場合でも、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。
【0087】
また、本例では、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の端面11aがブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。従って、樹脂部材11の端面11aからブラシ3の先端までの寸法が、ブラシ3を構成する全ての線状砥材10について、同様の長さ寸法となる。よって、ブラシ3を第1回転方向R1の後方に撓ませることが容易となる。
【0088】
さらに、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の開口4aの側の端面11aはブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。従って、ホルダ13および樹脂部材11がホルダ本体5のテーパー外周面33から径方向外側に突出することがない。
【0089】
また、ホルダ本体5は、第1方向X1に向かって径寸法が小さくなる円錐台部分32を備える。ブラシ保持穴4は、開口4aが円錐台部分32のテーパー外周面33に露出する
。開口4aは、軸線方向Xよりも周方向に長い形状を備える。従って、ホルダ本体5にブラシ保持穴4を形成しやすい。
【0090】
さらに、ブラシ3は、複数本の線状砥材10の基端部分を覆うホルダ13を備える。よって、ブラシ3を、市場に流通可能な部品とすることができる。さらに、ブラシ3は、着脱可能にブラシホルダ2に固定される。従って、ブラシ3を、消耗品として、交換できる。
【0091】
また、ブラシ3をブラシ保持穴4に保持させたときに、ブラシ3における樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12a、すなわち、ブラシ3におけるホルダ13の筒部14の他方の開口9bよりも先端側部分12aでは、ブラシ保持穴4の内周壁面4cとの間に筒部14の厚み分の隙間が形成される。この隙間により、ブラシ3が、より、撓みやすくなる。
【0092】
さらに、本例では、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ブラシ3において樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12aの内周側および第2方向X2に、ホルダ本体5におけるブラシ保持穴4の内周壁面4cが存在する。従って、内周壁面4cにより、ワークWの研磨対象面Sを研磨するときに、ブラシ3がホルダ本体5の側に撓み過ぎることを防止できる。
【0093】
なお、本例においても、ホルダ本体5に、一方の開口がホルダ本体5の第2方向X2の端面に露出し、他方の開口がブラシ保持穴4の底面4bの一部分に露出する貫通孔を設けることができる。貫通孔は、例えば、ブラシ保持穴4の中心軸線L1に沿って延設される。このような貫通孔を備えれば、ホルダ本体5の第2方向X2の端面に設けられた開口からピンを挿入することにより、ピンの先端をブラシ保持穴4に保持されたブラシ3のホルダ13の底部15に当接させることができる。従って、ピンを押し込むことにより、ブラシ3をブラシ保持穴4から押し出すことができる。よって、ブラシ3を交換する際に、固定ネジ17によるブラシ3のホルダ本体5への固定状態を解除したにも拘わらず、ブラシ3のホルダ13がブラシ保持穴4に嵌っている場合に、ブラシ3の引き抜きが容易となる。
【0094】
(変形例1)
図15は、変形例1の研磨ブラシの斜視図である。図16は、図15のB-B線断面図である。図15に示す変形例1の研磨ブラシ1Dは、実施例1の研磨ブラシ1Aにおいて、ブラシホルダ2に保持されるブラシ3がホルダ13を有さない形態である。研磨ブラシ1Dにおいて、研磨ブラシ1Aに対応する構成は、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0095】
本例では、ブラシ3は、直線状に延びる複数本の線状砥材10と、複数本の線状砥材10の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材11と、備える。ブラシ保持穴4は、その中心軸線L1に沿った方向を底面4bから開口4aに向かって順に、小径穴部分41と、小径穴部分41よりも内径寸法が大きい大径穴部分42と、を備える。ブラシ保持穴4の開口4aは、大径穴部分42に設けられている。
【0096】
樹脂部材11は、樹脂部材11は、硬化した接着剤であり、小径穴部分41の内側で、複数本の線状砥材10をブラシホルダ2に固定する。ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、樹脂部材11におけるブラシ保持穴4の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。樹脂部材11の端面11aは、小径穴部分41と大径穴部分42との間に形成される環状の段部の端面43と一致する。樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。
【0097】
変形例1の研磨ブラシ1Dにおいても、ブラシホルダ2に設けられたブラシ保持穴4が、底面4bから開口4aに向かってワークWを研磨する際の第1回転方向R1の後方に傾斜する。従って、ブラシ3は、ブラシホルダ2に保持されることにより、ブラシ保持穴4の開口4aから第1回転方向R1の後方に延びる。よって、研磨時にブラシ3に負荷がかかった場合には、ブラシ3はホルダ本体5に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークWの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシ3は、第1回転方向R1の後方に延びている。従って、ブラシ3の毛丈が短くなった場合でも、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。
【0098】
また、変形例1の研磨ブラシ1Dにおいても、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。従って、樹脂部材11の端面11aからブラシ3の先端までの寸法を、ブラシ3を構成する全ての線状砥材10について、同様の長さ寸法となる。よって、ブラシ3を第1回転方向R1の後方に撓ませることが容易である。
【0099】
さらに、変形例1の研磨ブラシ1Dにおいても、ブラシ3をブラシホルダ2に保持させたときに、ブラシ3における樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12aと、ブラシ保持穴4の大径穴部分42の内周壁面部分4dとの間に、隙間を設けることができる。これにより、ブラシ3が、より、撓みやすくなる。
【0100】
ここで、ブラシホルダ2に保持されるブラシ3がホルダ13を有さない形態において、ブラシ保持穴4は、その中心軸線L1に沿った方向を底面4bから開口4aに向かって順に、小径穴部分41と、小径穴部分41よりも内径寸法が大きい大径穴部分42と、を備える構成、樹脂部材11は、小径穴部分41の内側で、複数本の線状砥材10をブラシホルダ2に固定する構成、樹脂部材11におけるブラシ保持穴4の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する構成を備える本例の形態は、実施例3の研磨ブラシ1Cに適用できる。
【0101】
(変形例2)
変形例2は、実施例1において、ブラシホルダ2に保持されるブラシ3がホルダ13を有さない形態の研磨ブラシである。図17は、変形例2の研磨ブラシの斜視図である。本例の研磨ブラシ1Dにおいて、研磨ブラシ1Aに対応する構成は、同一の符号を付して、その説明を省略する。研磨ブラシ1Eのブラシ3は、直線状に延びる複数本の線状砥材10と、複数本の線状砥材10の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材11と、備える。ブラシ保持穴4の内径寸法は、一定である。ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、樹脂部材11におけるブラシ保持穴4の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。樹脂部材11は、硬化した接着剤であり、ブラシ保持穴に内側で、複数本の線状砥材10を、ブラシホルダに固定する。
【0102】
変形例2の研磨ブラシにおいても、ブラシホルダ2に設けられたブラシ保持穴4が、底面4bから開口4aに向かってワークWを研磨する際の第1回転方向R1の後方に傾斜する。従って、ブラシ3は、ブラシホルダ2に保持されることにより、ブラシ保持穴4の開口4aから第1回転方向R1の後方に延びる。よって、研磨時にブラシ3に負荷がかかっ
た場合には、ブラシ3はホルダ本体5に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークWの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシ3は、第1回転方向R1の後方に延びている。従って、ブラシ3の毛丈が短くなった場合でも、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。
【0103】
また、変形例1の研磨ブラシにおいても、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。従って、樹脂部材11の端面11aからブラシ3の先端までの寸法を、ブラシ3を構成する全ての線状砥材10について、同様の長さ寸法となる。よって、ブラシ3を第1回転方向R1の後方に撓ませることが容易である。
【0104】
ここで、ブラシホルダ2に保持されるブラシ3がホルダ13を有さない形態において、樹脂部材11は、ブラシ保持穴4の内側で、複数本の線状砥材10をブラシホルダ2に固定し、樹脂部材11におけるブラシ保持穴4の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する構成は、実施例2、3の研磨ブラシに適用できる。
【符号の説明】
【0105】
1A・1B・1C…研磨ブラシ、2…ブラシホルダ、3…ブラシ、4…ブラシ保持穴、4a…開口、4b…底面、4c…内周壁面、4d…内周壁面部分、5…ホルダ本体、6…シャンク、7…環状外周面、8…ブラシ固定用貫通孔、9…連通孔、9a…一方の開口、9b…他方の開口、10…線状砥材、11…樹脂部材、11a…端面、12…砥材束、12a…先端側部分、13…ホルダ、14…筒部、15…底部、16…ネジ孔、17…固定ネジ、21…切欠き凹部、22…第1内壁面、23…第2内壁面、23a…湾曲面部分、25…円形凹部、31…円盤部分、31a…外周面、32…円錐台部分、33…テーパー外周面、35…円形凹部、41…小径穴部分、42…大径穴部分、L0…シャンクの軸線、L1…ブラシ保持穴の中心軸線、R1…第1回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2023-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブラシ保持穴を備えるホルダ本体および前記ホルダ本体から突出するシャンクを備えるブラシホルダと、基端部分が各ブラシ保持穴に挿入された状態で前記ブラシホルダに保持された複数のブラシと、を有し、ワークを研磨する際に前記シャンクの軸線回りの第1回転方向に回転させられて各ブラシの先端部を前記ワークに接触させる研磨ブラシにおいて、
複数の前記ブラシ保持穴は、前記軸線回りに環状に配列され、
各ブラシ保持穴の中心軸線は、当該ブラシ保持穴の底面から開口に向かって前記第1回転方向とは逆方向に延び、
前記ブラシは、直線状に延びる複数本の線状砥材と、複数本の前記線状砥材の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材と、備え、
前記線状砥材は、無機長繊維の集合糸と、前記集合糸に含侵する樹脂と、を備え、
前記樹脂部材は、硬化した接着剤からなり、前記ブラシが前記ブラシ保持穴に保持されたときに前記中心軸線に沿って延びる柱形状であり、前記ブラシ保持穴の前記開口の側に複数本の前記線状砥材が突出する端面を備え、
前記樹脂部材の前記端面は、前記中心軸線と直交することを特徴とする研磨ブラシ。
【請求項2】
前記ブラシは、複数本の前記線状砥材の前記基端部分と前記樹脂部材とを外周側から覆う筒部、および前記線状砥材の基端に当接して前記筒部の一方の開口を封鎖する底部を有するホルダを備え、
前記樹脂部材は、複数本の前記線状砥材を前記ホルダに固定し、
前記ホルダは、前記ブラシ保持穴に挿入されて前記ブラシホルダに着脱可能に固定され、
前記樹脂部材の前記端面は、前記筒部の他方の開口と一致し、
前記ブラシが前記ブラシ保持穴に保持されたときに、前記筒部の他方の開口は、前記中心軸線と直交することを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項3】
前記ホルダの径方向外側には、前記ブラシ保持穴の内周壁面が全周に渡って存在するこ
とを特徴とする請求項2に記載の研磨ブラシ。
【請求項4】
前記ブラシ保持穴は、前記中心軸線に沿った方向を前記底面から前記開口に向かって順に、小径穴部分と、前記小径穴部分よりも内径寸法が大きい大径穴部分と、を備え、
前記樹脂部材は、前記小径穴部分の内側で、複数本の前記線状砥材を前記ブラシホルダに固定することを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項5】
前記樹脂部材は、複数本の前記線状砥材を前記ブラシホルダに固定することを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項6】
各ブラシ保持穴の前記中心軸線は、前記シャンクの前記軸線と直交し、
前記ブラシにおいて前記ブラシ保持穴の前記開口から外に露出する先端側部分は、外周側に向かって前記第1回転方向とは逆方向に傾斜することを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項7】
前記ホルダ本体は、前記シャンクと同軸の環状外周面を備え、
前記ブラシ保持穴は、前記開口が前記環状外周面に露出し、
前記開口は、前記軸線に沿った軸線方向よりも周方向に長い形状を備えることを特徴とする請求項6に記載の研磨ブラシ。
【請求項8】
前記軸線に沿った軸線方向において、前記ホルダ本体が位置する側を第1方向、前記シャンクが位置する側を第2方向とした場合に、
各ブラシ保持穴の前記中心軸線は、前記底面の側から前記開口に向かって、前記ホルダ本体の内周側に向かって前記第1方向に傾斜し、
前記ブラシにおいて前記ブラシ保持穴の前記開口から外に露出する先端側部分は、前記第1方向に向かって前記内周側および前記第1回転方向とは逆方向に傾斜し、
前記軸線方向を前記シャンクの側から見た場合に、前記先端側部分は、前記ホルダ本体から外周側に突出する部分を有さないことを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項9】
前記ホルダ本体は、前記第1方向の端面に、複数の前記ブラシ保持穴と同数の切欠き凹部を備え、
複数の前記切欠き凹部は、前記軸線回りに環状に配列され、
各切欠き凹部は、前記第1回転方向とは逆方向を向く第1内壁面と、前記第1内壁面における前記第2方向の端から前記第1回転方向とは逆方向に延びる第2内壁面と、を備え、
前記ブラシ保持穴は、前記開口が前記第1内壁面に露出し、
前記第1内壁面は、前記ブラシ保持穴の前記中心軸線と直交し、
前記第2内壁面は、前記ブラシ保持穴の前記中心軸線と平行であることを特徴とする請求項8に記載の研磨ブラシ。
【請求項10】
前記軸線に沿った軸線方向において、前記ホルダ本体が位置する側を第1方向、前記シャンクが位置する側を第2方向とした場合に、
各ブラシ保持穴の前記中心軸線は、前記底面の側から前記開口に向かって、前記ホルダ本体の外周側に向かって前記第1方向に傾斜し、
前記ブラシにおいて前記ブラシ保持穴の前記開口から外に露出する先端側部分は、前記第1方向に向かって前記外周側および前記第1回転方向とは逆方向に傾斜し、
前記ブラシの先端側部分は、前記ホルダ本体から外周側に突出することを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項11】
前記ホルダ本体は、前記シャンクと同軸で、前記第1方向に向かって内周側に傾斜する
テーパー外周面を備え、
前記ブラシ保持穴は、前記開口が前記テーパー外周面に露出し、
前記開口は、前記テーパー外周面に沿った径方向よりも周方向に長い形状を備えることを特徴とする請求項10に記載の研磨ブラシ。
【請求項12】
請求項6に記載の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法において、
前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して平行として前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする研磨方法。
【請求項13】
請求項8に記載の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法において、
前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して垂直として前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする研磨方法。
【請求項14】
請求項10に記載の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法において、
前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して傾斜させて前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする研磨方法。
【請求項15】
請求項10に記載の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法において、
前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して垂直として前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする研磨方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
線状砥材の束を備える研磨ブラシ、および研磨ブラシを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシホルダと、ブラシホルダに保持された複数のブラシと、を備える研磨ブラシは、特許文献1に記載されている。ブラシホルダは、複数のブラシ保持穴を備えるホルダ本体と、ホルダ本体から突出するシャンクと、を備える。ホルダ本体は円盤形状であり、複数のブラシ保持穴はホルダ本体の環状外周面に設けられている。ブラシ保持穴は、環状外周面からホルダ本体の径方向内側に延びる。複数のブラシは、それぞれ基端部分が各ブラシ保持穴に挿入された状態でブラシホルダに保持される。各ブラシは、砥材として、無機長繊維の集合糸に樹脂を含浸、硬化させた複数本の線状砥材を備える。複数本の線状砥材は、ブラシ保持穴に挿入されることにより、ブラシ保持穴に充填された接着剤によって基端部が拘束された状態でブラシホルダに固定される。無機長繊維は、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、炭素繊維、窒化珪素繊維、或いは、ガラス繊維である。研磨ブラシは、シャンク
の軸線回りに回転した状態でブラシの先端部をワークに接触させてワークの研磨対象面を切削或いは研磨する。
【0003】
ここで、無機長繊維は、密度が高く、高硬度であり、剛性が高い。従って、無機長繊維を備える線状砥材を束ねたブラシは、研削能力が高い。この一方、無機長繊維を備える線状砥材を束ねたブラシは、研磨時、研削時にブラシの先端部をワークに接触させる切り込み量を大きくすると、硬度が高いゆえに、線状砥材に折れを発生させやすいという問題がある。
【0004】
この問題に対して、特許文献1のブラシは、線状砥材が先端側から基端側の少なくとも一か所で湾曲している。同文献の研磨ブラシでは、線状砥材が湾曲しているので、ブラシは湾曲方向に向かっては容易に変形する。従って、線状砥材が直線的に延びる研磨ブラシと比較して、ブラシは、先端部のワークに対する当たりが柔らかい。また、ブラシは、過大な負荷が加わったときに変形して、その力を逃す。従って、線状砥材に折れを発生させることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2007/097115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
研磨ブラシのブラシは、ワークの研磨に伴って摩耗して、毛丈(ブラシの長さ寸法)が短くなる。ここで、上記の研磨ブラシでは、ブラシの毛丈が湾曲箇所よりも短くなると、ブラシがブラシホルダから径方向外側に直線状に突出する状態に近づく。
【0007】
このような状態になると、ブラシの線状砥材に折れが発生しやすくなる。また、毛丈が短くなるのに伴ってブラシの剛性が増加するので、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなる。
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、ブラシの毛丈が短くなった場合でも、線状砥材の折れの発生や、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなることを抑制できる研磨ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の研磨ブラシは、複数のブラシ保持穴を備えるホルダ本体および前記ホルダ本体から突出するシャンクを備えるブラシホルダと、基端部分が各ブラシ保持穴に挿入された状態で前記ブラシホルダに保持された複数のブラシと、を有し、ワークを研磨する際に前記シャンクの軸線回りの第1回転方向に回転させられて各ブラシの先端部を前記ワークに接触させる研磨ブラシにおいて、複数の前記ブラシ保持穴は、前記軸線回りに環状に配列され、各ブラシ保持穴の中心軸線は、当該ブラシ保持穴の底面から開口に向かって前記第1回転方向とは逆方向に延び、前記ブラシは、直線状に延びる複数本の線状砥材と、複数本の前記線状砥材の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材と、備え、前記線状砥材は、無機長繊維の集合糸と、前記集合糸に含侵する樹脂と、を備え、前記樹脂部材は、硬化した接着剤からなり、前記ブラシが前記ブラシ保持穴に保持されたときに前記中心軸線に沿って延びる柱形状であり、前記ブラシ保持穴の前記開口の側に複数本の前記線状砥材が突出する端面を備え、前記樹脂部材の前記端面は、前記中心軸線と直交することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ブラシホルダに設けられたブラシ保持穴が、底面から開口に向かって
ワークを研磨する際の第1回転方向とは逆方向に傾斜する。従って、ブラシは、ブラシホルダに保持されることにより、ブラシ保持穴の開口から第1回転方向とは逆方向に延びる。よって、研磨時にブラシに負荷がかかった場合には、ブラシはホルダ本体に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材の折れの発生や、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシは、第1回転方向とは逆方向に延びている。従って、ブラシの毛丈が短くなった場合でも、線状砥材の折れの発生や、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなることを抑制できる。さらに、本発明では、ブラシがブラシ保持穴に保持されたときに、ブラシを拘束する樹脂部材の開口の側の端面は、ブラシ保持穴の中心軸線と直交する。従って、樹脂部材の端面からブラシの先端までの寸法を、ブラシを構成する全ての線状砥材について、同様の長さ寸法となる。よって、ブラシを第1回転方向とは逆方向に撓ませることが容易である。
【0011】
本発明において、前記ブラシは、複数本の前記線状砥材の前記基端部分と前記樹脂部材とを外周側から覆う筒部、および前記線状砥材の基端に当接して前記筒部の一方の開口を封鎖する底部を有するホルダを備え、前記樹脂部材は、複数本の前記線状砥材を前記ホルダに固定し、前記ホルダは、前記ブラシ保持穴に挿入されて前記ブラシホルダに着脱可能に固定され、前記樹脂部材における前記ブラシの先端側の端面は、前記筒部の他方の開口と一致し、前記ブラシが前記ブラシ保持穴に保持されたときに、前記筒部の他方の開口は、前記中心軸線と直交するものとすることができる。このようにすれば、ブラシは、複数本の線状砥材の基端部分を覆うホルダを備える。従って、ブラシを、市場に流通可能な部品とすることができる。また、ブラシは、着脱可能にブラシホルダに固定される。従って、ブラシを、消耗品として、交換できる。さらに、ブラシをブラシ保持穴に保持させたときに、ブラシにおける樹脂部材の端面よりも先端側部分、すなわち、ブラシにおけるホルダの筒部の他方の開口よりも先端側部分では、ブラシ保持穴の内周壁面との間に筒部の厚み分の隙間が形成される。この隙間により、ブラシが、より、撓みやすくなる。
【0012】
本発明において、前記ホルダの径方向外側には、前記ブラシ保持穴の内周壁面が全周に渡って存在するものとすることができる。このようにすれば、ブラシのホルダがブラシ保持穴の開口から外に露出することがない。
【0013】
本発明において、前記ブラシ保持穴は、前記中心軸線に沿った方向を前記底面から前記開口に向かって順に、小径穴部分と、前記小径穴部分よりも内径寸法が大きい大径穴部分と、を備え、前記樹脂部材は、前記小径穴部分の内側で、複数本の前記線状砥材を前記ブラシホルダに固定するものとすることができる。このようにすれば、ブラシにおける樹脂部材の端面よりも先端側部分と、ブラシ保持穴の内周壁面(大径穴部分の内周壁面)との間に隙間を設けることができる。これにより、ブラシが、より、撓みやすくなる。
【0014】
本発明において、前記樹脂部材は、複数本の前記線状砥材を前記ブラシホルダに固定するものとすることができる。
【0015】
本発明において、各ブラシ保持穴の前記中心軸線は、前記シャンクの前記軸線と直交し、前記ブラシにおいて前記ブラシ保持穴の前記開口から外に露出する先端側部分は、外周側に向かって前記第1回転方向とは逆方向に傾斜するものとすることができる。このようにすれば、シャンクをワークの研磨対象面と平行にした姿勢で、研磨ブラシを第1回転方向に回転させて、研磨対象面を研磨できる。
【0016】
この場合において、前記ホルダ本体は、前記シャンクと同軸の環状外周面を備え、前記ブラシ保持穴は、前記開口が前記環状外周面に露出し、前記開口は、前記軸線に沿った軸線方向よりも周方向に長い形状を備えるものとすることができる。このようにすれば、ホ
ルダ本体にブラシ保持穴を形成しやすい。
【0017】
ここで、上記の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法は、前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して平行として前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記軸線に沿った軸線方向において、前記ホルダ本体が位置する側を第1方向、前記シャンクが位置する側を第2方向とした場合に、各ブラシ保持穴の前記中心軸線は、前記底面の側から前記開口に向かって、前記ホルダ本体の内周側に向かって前記第1方向に傾斜し、前記ブラシにおいて前記ブラシ保持穴の前記開口から外に露出する先端側部分は、前記第1方向に向かって前記内周側および前記第1回転方向とは逆方向に傾斜し、前記軸線方向を前記シャンクの側から見た場合に、前記先端側部分は、前記ホルダ本体から外周側に突出する部分を有さないものとすることができる。このようにすれば、シャンクをワークの研磨対象面と垂直にした姿勢で、研磨ブラシを第1回転方向に回転させて、研磨対象面を研磨できる。
【0019】
この場合において、前記ホルダ本体は、前記第1方向の端面に、複数の前記ブラシ保持穴と同数の切欠き凹部を備え、複数の前記切欠き凹部は、前記軸線回りに環状に配列され、各切欠き凹部は、前記第1回転方向とは逆方向を向く第1内壁面と、前記第1内壁面における前記第2方向の端から前記第1回転方向とは逆方向に延びる第2内壁面と、を備え、前記ブラシ保持穴は、前記開口が前記第1内壁面に露出し、前記第1内壁面は、前記ブラシ保持穴の前記中心軸線と直交し、前記第2内壁面は、前記ブラシ保持穴の前記中心軸線と平行であり、前記先端側部分は、前記第2内壁面と隙間を開けて対向するものとすることができる。このようにすれば、ホルダ本体にブラシ保持穴を形成しやすい。
【0020】
ここで、上記の記載の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法は、前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して垂直として前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする。
【0021】
本発明において、前記軸線に沿った軸線方向において、前記ホルダ本体が位置する側を第1方向、前記シャンクが位置する側を第2方向とした場合に、各ブラシ保持穴の前記中心軸線は、前記底面の側から前記開口に向かって、前記ホルダ本体の外周側に向かって前記第1方向に傾斜し、前記ブラシにおいて前記ブラシ保持穴の前記開口から外に露出する先端側部分は、前記第1方向に向かって前記外周側および前記第1回転方向とは逆方向に傾斜し、前記ブラシの先端側部分は、前記ホルダ本体から外周側に突出するに延びるものとすることができる。このようにすれば、シャンクをワークの研磨対象面に対して傾斜した姿勢で、研磨ブラシを第1回転方向に回転させて、研磨対象面を研磨できる。
【0022】
この場合において、前記ホルダ本体は、前記シャンクと同軸で、前記第1方向に向かって内周側に傾斜するテーパー外周面を備え、前記ブラシ保持穴は、前記開口が前記テーパー外周面に露出し、前記開口は、前記テーパー外周面に沿った径方向よりも周方向に長い形状を備えるものとすることができる。このようにすれば、ホルダ本体にブラシ保持穴を形成しやすい。
【0023】
ここで、上記の記載の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法は、前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して傾斜させて前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする。
【0024】
また、上記の研磨ブラシを用いてワークの研磨対象面を研磨する研磨方法は、前記シャンクの前記軸線を前記研磨対象面に対して垂直として前記研磨ブラシを前記第1回転方向に回転させて、前記ブラシの先端部を前記研磨対象面に接触させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ブラシホルダに設けられたブラシ保持穴が、シャンクの軸線を中心とする径方向に延びておらず、底面から開口に向かってワークを研磨する際の第1回転方向とは逆方向に傾斜する。従って、ブラシは、ブラシホルダに保持されることにより、ブラシ保持穴の開口から第1回転方向とは逆方向に延びる。よって、研磨時にブラシに負荷がかかった場合には、ブラシはホルダ本体に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材の折れの発生や、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシは、第1回転方向とは逆方向に延びている。従って、ブラシの毛丈が短くなった場合でも、線状砥材の折れの発生や、ブラシがワークの研磨対象面に傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ブラシがブラシ保持穴に保持されたときに、ブラシを拘束する樹脂部材の開口の側の端面は、ブラシ保持穴の中心軸線と直交し、樹脂部材の径方向外側には、ブラシ保持穴の内周壁面が全周に渡って存在する。従って、樹脂部材の端面からブラシの先端までの寸法を、ブラシを構成する全ての線状砥材について、同様の長さ寸法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1の研磨ブラシの斜視図である。
図2図1の研磨ブラシの底面図である。
図3図1のA-A線における研磨ブラシの断面図である。
図4】ブラシの斜視図である。
図5】本例の研磨ブラシのd効果の説明図である。
図6】実施例1の変形例の研磨ブラシの斜視図である。
図7】実施例2の研磨ブラシの斜視図である。
図8図7の研磨ブラシの底面図である。
図9】ブラシを取り外した状態のブラシホルダをホルダ本体の側から見た場合の斜視図である。
図10】実施例3の研磨ブラシの斜視図である。
図11図10の研磨ブラシの底面図である。
図12】ブラシを取り外した状態のブラシホルダをホルダ本体の側から見た場合の斜視図である。
図13】実施例3の研磨ブラシを使用した第1の研磨方法の説明図である。
図14】実施例3の研磨ブラシを使用した第2の研磨方法の説明図である。
図15】変形例1のブラシホルダの斜視図である。
図16図15のB-B線断面図である。
図17】変形例2のブラシホルダの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態である研磨ブラシを説明する。
【0028】
(実施例1)
図1は、本例の研磨ブラシの斜視図である。図2は、図1の研磨ブラシの底面図である。図3は、図1のA-A線における研磨ブラシの断面図である。図4は、ブラシの斜視図である。図1の研磨ブラシ1Aは、ブラシホルダ2と、ブラシホルダ2に保持された複数本のブラシ3と、を備える。ブラシホルダ2は、複数のブラシ保持穴4を備えるホルダ本体5と、ホルダ本体5から突出するシャンク6を備える。ホルダ本体5は、円盤形状であ
り、径方向外側を向く環状外周面7を備える。シャンク6は、ホルダ本体5の中心部分から突出する。シャンク6とホルダ本体5とは同軸であり、シャンク6と環状外周面7とは同軸である。シャンク6は、工作機械或いは回転工具のヘッドに接続される。ブラシ3は、基端部分がブラシ保持穴4に挿入された状態でブラシホルダ2に保持される。研磨ブラシ1Aは、ワークWを研磨する際にシャンク6の軸線L0回りの第1回転方向R1に回転させられて各ブラシ3の先端部をワークWに接触させる。以下の説明では、シャンク6の軸線L0に沿った方向を軸線方向X、シャンク6の軸線L0回りを周方向とする。また、軸線方向Xにおいて、ホルダ本体5が位置する側を第1方向X1、シャンク6が位置する側を第2方向X2とする。
【0029】
図2に示すように、複数のブラシ保持穴4は、シャンク6の軸線L0回りに環状に配列されている。本例では、ホルダ本体5は5つのブラシ保持穴4を備える。5つのブラシ保持穴4は、等角度間隔で設けられている。図1に示すように、ブラシ保持穴4は、その開口4aが環状外周面7に露出する。ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、シャンク6の軸線L0と直交する。また、図2に示すように、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、ブラシ保持穴4の底面4bから開口4aに向かって、外周側に向かって第1回転方向R1とは逆方向に傾斜する。
【0030】
ここで、ブラシ保持穴4の開口4aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1に対して傾斜しており、図1に示すように、軸線方向Xよりも周方向に長い楕円形状を備える。また、図2に示すように、ホルダ本体5の底面4bにおいて各ブラシ保持穴4の底面4bに近い部分には、軸線方向Xに延びてブラシ保持穴4に連通するブラシ固定用貫通孔8が設けられている。
【0031】
次に、ホルダ本体5は、図3に示すように、周方向に延びてブラシ保持穴4とブラシ保持穴4の第1回転方向R1とは逆方向に位置するブラシ保持穴4とを連通させる連通孔9を備える。連通孔9の一方の開口9aは、第1回転方向R1の前側に位置するブラシ保持穴4の内周壁面に露出する。連通孔9の他方の開口9bは、第1回転方向R1とは逆方向で隣り合うブラシ保持穴4の底面4bに露出する。また、連通孔9の一方の開口9aは、第1回転方向R1とは逆方向に位置するブラシ保持穴4の中心軸線L1に沿った方向から見た場合に、第1回転方向R1の前方に位置するブラシ保持穴4の開口4aの内側に位置する。
【0032】
図5に示すように、ブラシ3は、直線状に延びる複数本の線状砥材10と、複数本の線状砥材10の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材11と、を備える。複数本の線状砥材10は、樹脂部材11により束状に固められて、砥材束12とされる。線状砥材10は無機長繊維の集合糸と、集合糸に含浸する樹脂と、を備える。無機長繊維は、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、炭素繊維、窒化珪素繊維、或いは、ガラス繊維である。本例では、無機長繊維は、アルミナ繊維である。また、ブラシ3は、複数本の線状砥材10の基端部分と樹脂部材11とを覆うホルダ13を備える。ホルダ13は、複数本の線状砥材10の基端部分と樹脂部材11とを外周側から覆う筒部14、および、線状砥材10の基端に当接して筒部14の一方の開口を封鎖する底部15を備える。筒部14は円筒形状であり、一定の高さ寸法を備える。ホルダ13の底部15は、円盤形状であり、一定の厚みを備える。底部15には、筒部14の軸線と直交する方向に貫通するネジ孔16が設けられている。
【0033】
ここで、樹脂部材11は、硬化した接着剤である。樹脂部材11は、複数本の線状砥材10をホルダ13に固定する。樹脂部材11におけるブラシ3の先端側の端面は、筒部14の開口14aと一致する。
【0034】
ブラシ3は、その基端部分が各ブラシ保持穴4に挿入された状態でブラシホルダ2に保持される。図3に示すように、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ホルダ13および樹脂部材11は、ブラシ保持穴4の内側に位置する。より具体的には、ホルダ13の底部15には、ブラシ保持穴4の底面4bが当接する。また、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。従って、ホルダ13の筒部14および樹脂部材11は、ホルダ本体5の環状外周面7から外に突出していない。また、筒部14の開口14aはブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。従って、筒部14の開口14aと一致する樹脂部材11の端面11aも、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。
【0035】
ここで、図3に示すように、本例では、軸線L0から径方向に延びて、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と樹脂部材11の端面11aとが交差する交点Pを通過する仮想線Qを規定した場合に、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、仮想線Qに対し、第1回転方向R1とは逆方向に45°以上の角度θ1で傾斜する。
【0036】
なお、角度θ1は、以下の条件式を満たすことが望ましい。
10° ≦ θ1 ≦ 70°
すなわち、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、仮想線Qに対し、第1回転方向R1とは逆方向に10°以上、かつ、70°以下の範囲で傾斜することが望ましい。ここで、θ1が10°以上であれば、ブラシ3が傾斜する分だけ、研磨時にブラシ3にかかる負荷を逃しやすくなる。また、θ1を70°以下とすれば、研磨により砥材束12がある程度短くなるまで、ブラシ3を使用できる。
【0037】
ブラシ3は、ホルダ本体5の底面4bに設けられたブラシ固定用貫通孔8を介してホルダ13の底部15に設けられたネジ孔16に捩じ込まれる固定ネジ17によりホルダ本体5に固定される。固定ネジ17は、棒状であり、外周に雄ネジを備える。固定ネジ17は、ホーローセットである。
【0038】
固定ネジ17は、ホルダ本体5のブラシ固定用貫通孔8を介してホルダ13のネジ孔16に捩じ込まれ、その先端が、ブラシ保持穴4においてネジ孔16の捩じ込み方向の前方に位置する内壁部分に当接する。この状態から固定ネジ17を更に捩じ込むと、ホルダ13は、ブラシ保持穴4内において、ネジ孔16の捩じ込み方向の後方に移動し、ブラシ保持穴4においてブラシ固定用貫通孔8の開口が形成されている内壁部分に押し付けられる。これにより、ブラシ3は、ホルダ本体5に固定される。なお、本例では、ブラシ固定用貫通孔8の内周壁面4cにおいて、固定ネジ17の捩じ込み方向の先端が当接するブラシ保持穴4の内周壁部分には、円形凹部が設けられている。固定ネジ17の先端は、円形凹部に挿入されて、その先端が円形凹部の底に当接する。
【0039】
ここで、図4に示すように、連通孔9の一方の開口9aは、ブラシ保持穴4においてブラシ3のホルダ13よりもブラシ保持穴4の開口4aの側に位置する。従って、図1に示すように、ブラシ3がホルダ本体5に保持されると、連通孔9の一方の開口9aは、ホルダ13から突出する砥材束12により覆われる。また、ブラシ3がホルダ本体5に保持されると、図3に示すように、ブラシ3においてブラシ保持穴4の開口4aから外に露出する砥材束12の先端側部分12aは、ホルダ本体5の外周側に向かって第1回転方向R1とは逆方向に傾斜する。さらに、ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態では、ブラシ保持穴4の内周壁面4cにおいてブラシ3のホルダ13よりもブラシ保持穴4の開口4aの側に位置する内周壁面部分4dは、先端側部分12aと、ホルダ13の筒部14の厚み分の隙間を開けて対向する。
【0040】
(研磨方法)
研磨ブラシ1Aを用いてワークWの研磨対象面Sを研磨する場合には、図1に示すように、シャンク6の軸線L0を研磨対象面Sに対して平行とする。そして、研磨ブラシ1Aを第1回転方向R1に回転させて、ブラシ3の先端部を研磨対象面Sに接触させる。
【0041】
(作用効果)
本例によれば、ブラシホルダ2に設けられたブラシ保持穴4が、シャンク6の軸線L0を中心とする径方向に延びておらず、底面4bから開口4aに向かってワークWを研磨する際の第1回転方向R1とは逆方向に傾斜する。従って、ブラシ3は、ブラシホルダ2に保持されることにより、ブラシ保持穴4の開口4aから第1回転方向R1とは逆方向に延びる。よって、研磨時にブラシ3に負荷がかかった場合には、ブラシ3が径方向に延びる場合と比較して、ブラシ3はホルダ本体5に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークWの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシ3は、第1回転方向R1とは逆方向に延びている。従って、ブラシ3の毛丈が短くなった場合でも、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。
【0042】
また、本例では、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。従って、樹脂部材11の端面11aからブラシ3の先端までの寸法が、ブラシ3を構成する全ての線状砥材10について、同様の長さ寸法となる。よって、ブラシ3を第1回転方向R1とは逆方向に撓ませることが容易となる。
【0043】
例えば、ホルダ13の形状および樹脂部材11の形状をブラシ保持穴4の形状に一致させた場合には、筒部14の開口14aの形状がブラシ保持穴4の開口4aと同様に、筒部14の軸線(砥材保持孔4の中心軸線L1)に対して傾斜して、周方向に長い楕円形状となる。さらに、筒部14の開口14aと樹脂部材11の端面11aとを一致させた場合には、樹脂部材11の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1に対して周方向に傾斜して、周方向に長い楕円形状となる。このように、樹脂部材11の端面11aがブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交せずに、傾斜する場合には、砥材束12の延設方向に対しても樹脂部材11の端面11aが傾斜する。従って、樹脂部材11は、その端面11aにおいて最もブラシ3の先端に近い端まで、砥材束12を拘束する。従って、ブラシ3が第1回転方向R1とは逆方向に撓むことが阻害されやすくなる。また、樹脂部材11の端面11aにおいて最もブラシ3の先端に近い端の近傍の線状砥材10は、端面11aから先端までの長さ寸法が短くなる。この結果、この部分の線状砥材10は剛性が高まる。従って、線状砥材10に折れが発生しやすくなる。これに対して、樹脂部材11の端面11aをブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交させれば、ブラシ3を第1回転方向R1とは逆方向に撓ませることが容易となり、線状砥材10に折れを発生させやすくなることを抑制できる。
【0044】
さらに、本例では、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、かつ、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。従って、ホルダ13および樹脂部材11がホルダ本体5の環状外周面7から径方向外側に突出することがない。
【0045】
また、ブラシ3は、複数本の線状砥材10の基端部分を覆うホルダ13を備える。これにより、砥材束12を、ブラシ3として市場に流通可能な部品とすることができる。さらに、ブラシ3は、ホルダ13を利用して着脱可能にブラシホルダ2に固定される。従って、ブラシ3を、消耗品として、交換できる。
【0046】
ここで、ホルダ本体5は、シャンク6と同軸の環状外周面7を備える。ブラシ保持穴4は、開口4aが環状外周面7に露出する。開口4aは、軸線方向Xよりも周方向に長い形状を備える。従って、ホルダ本体5にブラシ保持穴4を形成することが容易である。
【0047】
また、ブラシ3をブラシ保持穴4に保持させたときに、ブラシ3における樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12a、すなわち、砥材束12におけるホルダ13の筒部14の他方の開口9bよりも先端側部分12aでは、先端側部分12aとブラシ保持穴4の内周壁面4cの内周壁面部分4dとの間には、筒部14の厚み分の隙間が形成される。この隙間により、ブラシ3が、より、撓みやすくなる。
【0048】
さらに、ホルダ本体5は、ブラシ保持穴4の開口4aが、軸線方向Xよりも周方向に長い形状を備えるので、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ブラシ3において樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12aの内周側に、ブラシ保持穴4の内周壁面4c(内周壁面部分4d)が存在する。従って、内周壁面部分4dにより、ワークWの研磨対象面Sを研磨するときに、ブラシ3がホルダ本体5の側に撓み過ぎることを防止或いは抑制できる。
【0049】
また、本例では、ホルダ本体5は、周方向に延びて、ブラシ保持穴4と、ブラシ保持穴4の第1回転方向R1とは逆方向に位置するブラシ保持穴4とを連通させる連通孔9を備える。連通孔9の一方の開口9aは、第1回転方向R1の前側に位置するブラシ保持穴4の内周壁面4cに露出する。連通孔9の他方の開口9bは、第1回転方向R1とは逆方向で隣り合うブラシ保持穴4の底面4bに露出する。連通孔9の一方の開口9aは、第1回転方向R1とは逆方向に位置するブラシ保持穴4の中心軸線L1に沿った方向から見た連通孔9の一方の開口9aを見た場合に、第1回転方向R1の前方に位置するブラシ保持穴4の開口4aの内側に位置する。また、ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態では、連通孔9の一方の開口9aは、ブラシ3のホルダ13よりもブラシ保持穴4の開口4aの側に位置する。従って、ブラシ保持穴4にブラシ3を保持させる際に、ブラシ3のホルダ13の底部15とブラシ保持穴4の底面4bとの間の空気を、連通孔9を介して、第1回転方向R1の前方のブラシ保持穴4から外に排出できる。よって、ブラシ3をブラシ保持穴4に挿入することが容易である。また、ブラシ3を交換する際に、固定ネジ17によるブラシ3のホルダ本体5への固定状態を解除したにも拘わらず、ブラシ3のホルダ13がブラシ保持穴4に嵌っていてブラシ3をブラシ保持穴4から抜くことが困難な場合には、第1回転方向R1の前方のブラシ保持穴4の内周壁面4cに露出する連通孔9の一方の開口9aからピンを挿入してホルダ13の底部15に当接させて押し込むことにより、ブラシ3をブラシ保持穴4から押し出すことができる。ここで、連通孔9の一方の開口9aは、第1回転方向R1とは逆方向に位置するブラシ保持穴4の中心軸線L1に沿った方向から見た連通孔9の一方の開口9aを見た場合に、第1回転方向R1の前方に位置するブラシ保持穴4の開口4aの内側に位置する。従って、連通孔9の開口4aに、ピンを挿入することが容易である。
【0050】
(変形例)
図6は、実施例1の変形例の研磨ブラシの斜視図である。本例の研磨ブラシ1A´は、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ホルダ13の一部分がブラシ保持穴4から外に露出する。すなわち、本例の研磨ブラシ1A´では、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の端面11aは、ホルダ13の筒部14の開口14aと一致する。ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、樹脂部材11の端面11aおよび筒部14の開口14aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。この一方で、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在しない。言い換えれば、ホルダ13の先端側部分では、ホルダ13および
樹脂部材11の径方向外側には周方向の一部分にブラシ保持穴4の内周壁面4cが存在するが、周方向の他の部分にはブラシ保持穴4の内周壁面4cは存在しない。
【0051】
図6に示す例では、ホルダ13の径方向外側にブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在している部分(ホルダ13においてブラシ保持穴4から外に露出していない部分)の中心軸線L1に沿った長さ寸法は、ホルダ13の中心軸線L1の沿った全長の1/2以上である。これにより、変形例の研磨ブラシ1A´の樹脂部材11の端面11aの位置は、実施例1の研磨ブラシ1Aの樹脂部材11の端面11aの位置よりも、ホルダ本体5の外周側、かつ、第1回転方向R1とは逆方向に位置する。ここで、本例の研磨ブラシ1A´は、研磨ブラシ1Aのブラシ保持穴4の中心軸線L1の沿った深さ寸法を短くすることにより実現できる。
【0052】
変形例の研磨ブラシ1A´では、ホルダ13の先端側の一部分がブラシ保持穴4から外に露出する。従って、ブラシ3は、摩耗により砥材束12がホルダ13に近い位置に達するまで使用できる。よって、摩耗によりブラシ3を交換する際に、砥材束12において研磨に使用されずに残っている部分を少なくすることができる。
【0053】
なお、実施例1の研磨ブラシ1Aでは、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には全周に渡ってブラシ保持穴4の内周壁面4cが存在する。すなわち、ホルダ13は、ブラシ保持穴4から外に露出しない。これにより、実施例1の研磨ブラシ1Aの樹脂部材11の端面11aの位置は、変形例の研磨ブラシ1A´の樹脂部材11の端面11aの位置よりも、ホルダ本体5の内周側、かつ、第1回転方向R1の前方に位置する。従って、ブラシ3は、摩耗により砥材束12がホルダ本体5の環状外周面7に近い位置に達するまでしか使用できない。よって、摩耗によりブラシ3を交換する際には、砥材束12において研磨に使用されずに残っている部分が、変形例の研磨ブラシ1A´よりも多くなってしまう。
【0054】
しかし、砥材束12において研磨に使用されずに残る部分が多いということは、摩耗によってブラシ3の毛丈が短くなり、砥材束12の先端がホルダ13或いはホルダ本体5に接近した時点でも、ブラシ3における砥材束12の先端と樹脂部材11の端面11aとの間の寸法が確保されているということである。従って、ブラシ3の交換が必要となる程度まで砥材束12が摩耗してきたときに、実施例1の研磨ブラシ1Aの方が、変形例の研磨ブラシ1A´よりも、砥材束12を撓ませやすい。よって、ブラシ3の交換が必要となる程度まで砥材束12が摩耗してきたときに、実施例1の研磨ブラシ1Aの方が、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けることを抑制できる。
【0055】
(実施例2)
図7は、本例の研磨ブラシの斜視図である。図8は、図7の研磨ブラシの底面図である。図9は、ブラシを取り外した状態のブラシホルダをホルダ本体の側から見た場合の斜視図である。図7に示す本例の研磨ブラシ1Bは、研磨ブラシ1Aと対応する構成を備えるので、対応する構成には同一の符号を付して説明する。
【0056】
研磨ブラシ1Bは、ブラシホルダ2と、ブラシホルダ2に保持された複数本のブラシ3と、を備える。ブラシホルダ2は、複数のブラシ保持穴4を備えるホルダ本体5と、ホルダ本体5から突出するシャンク6を備える。ホルダ本体5は、円盤形状である。シャンク6は、ホルダ本体5の中心部分から突出する。シャンク6とホルダ本体5とは同軸である。シャンク6は、工作機械或いは回転工具のヘッドに接続される。ブラシ3は、基端部分がブラシ保持穴4に挿入された状態でブラシホルダ2に保持される。研磨ブラシ1Bは、ワークWを研磨する際にシャンク6の軸線L0回りの第1回転方向R1に回転させられて各ブラシ3の先端部をワークWに接触させる。以下の説明では、シャンク6の軸線L0に
沿った方向を軸線方向X、シャンク6の軸線L0回りを周方向とする。また、軸線方向Xにおいて、ホルダ本体5が位置する側を第1方向X1、シャンク6が位置する側を第2方向X2とする。
【0057】
図8図9に示すように、複数のブラシ保持穴4は、シャンク6の軸線L0回りに環状に配列されている。本例では、ホルダ本体5は、等角度間隔で設けられた5つのブラシ保持穴4を備える。ブラシ保持穴4は、その開口4aがホルダ本体5のシャンク6とは反対側の面に露出する。図8に示すように、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、底面4bの側から開口4aに向かって、第1方向X1に向かって第1回転方向R1とは逆方向に傾斜する。図7に示すように、本例では、研磨ブラシ1Bを軸線L1と直交する方向から見た場合に、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、軸線L0に対し、第1方向X1に向かって第1回転方向R1とは逆方向に45°以上の角度θ2で傾斜する。また、図8に示すように、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、第1方向X1に向かって、ホルダ本体5の内周側に傾斜する。
【0058】
より詳細には、図9に示すように、ホルダ本体5は、第1方向X1の端面に、外周側から切り欠かれた5つの切欠き凹部21を備える。複数の切欠き凹部21は、軸線L0回りに環状に配列されている。各切欠き凹部21は、第1回転方向R1とは逆方向を向く第1内壁面22と、第1内壁面22における第2方向X2の端から第1回転方向R1とは逆方向に延びる第2内壁面23と、を備える。ブラシ保持穴4は、その開口4aが第1内壁面22に露出する。開口4aは円形である。開口4aは、第1内壁面22の第2方向X2の端において第2内壁面23を第2方向X2に抉る。ここで、切欠き凹部21の第1内壁面22は、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。第2内壁面23は、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と平行である。第2内壁面23には、開口4aから連続して第1回転方向R1とは逆方向に直線状に延びる湾曲面部分23aが設けられている。湾曲面部分23aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と平行である。湾曲面部分23aは、第2内壁面23を抉るように形成されている。ここで、ホルダ本体5のシャンク6とは反対側の面には、その中央に円形凹部25が設けられている。円形凹部25は、シャンク6と同軸である。
【0059】
図7に示すように、ホルダ本体5において径方向外側を向く環状外周面7には、内周側に延びてブラシ保持穴4に連通するブラシ固定用貫通孔8が設けられている。ブラシ固定用貫通孔8は、ブラシ保持穴4の底面4bに近い部分に連通する。
【0060】
ブラシ3は、上記の例と同一である。図5に示すように、ブラシ3は、直線状に延びる複数本の線状砥材10と、複数本の線状砥材10の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材11と、を備える。線状砥材10は無機長繊維の集合糸と、集合糸に含侵する樹脂と、を備える。無機長繊維は、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、炭素繊維、窒化珪素繊維、或いは、ガラス繊維である。本例では、無機長繊維は、アルミナ繊維である。また、ブラシ3は、複数本の線状砥材10の基端部分と樹脂部材11とを覆うホルダ13を備える。ホルダ13は、複数本の線状砥材10の基端部分と樹脂部材11とを外周側から覆う筒部14、および、線状砥材10の基端に当接して筒部14の一方の開口を封鎖する底部15を備える。筒部14は円筒形状であり、一定の高さ寸法を備える。ホルダ13の底部15は、円盤形状であり、一定の厚みを備える。底部15には、筒部14の軸線と直交する方向に貫通するネジ孔16が設けられている。
【0061】
ここで、樹脂部材11は、硬化した接着剤である。樹脂部材11は、複数本の線状砥材10をホルダ13に固定する。樹脂部材11におけるブラシ3の先端側の端面11aは、筒部14の開口14aと一致する。
【0062】
ブラシ3は、その基端部分が各ブラシ保持穴4に挿入された状態でブラシホルダ2に保
持される。ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ホルダ13および樹脂部材11は、ブラシ保持穴4の内側に位置する。より具体的には、ホルダ13の底部15には、ブラシ保持穴4の底面4bが当接する。また、ホルダ13の筒部14の開口14aは、切欠き凹部21の第1内壁面22に露出するブラシ保持穴4の開口4aと一致する。従って、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。また、筒部14の開口14aはブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。従って、筒部14の開口14aと一致する樹脂部材11の端面11aも、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。
【0063】
ブラシ3は、ホルダ本体5の環状外周面7に設けられたブラシ固定用貫通孔8を介してホルダ13の底部15に設けられたネジ孔16に捩じ込まれる固定ネジ17によりホルダ本体5に固定される。固定ネジ17は、棒状であり、外周に雄ネジを備える。固定ネジ17は、ホーローセットである。
【0064】
固定ネジ17は、ホルダ本体5のブラシ固定用貫通孔8を介してホルダ13のネジ孔16に捩じ込まれ、その先端が、ブラシ保持穴4においてネジ孔16の捩じ込み方向の前方に位置する内壁部分に当接する。この状態から固定ネジ17を更に捩じ込むと、ホルダ13は、ブラシ保持穴4内において、ネジ孔16の捩じ込み方向の後方に移動し、ブラシ保持穴4においてブラシ固定用貫通孔8の開口が形成されている内壁部分に押し付けられる。これにより、ブラシ3は、ホルダ本体5に固定される。なお、本例では、ブラシ固定用貫通孔8の内周壁面4cにおいて、固定ネジ17の捩じ込み方向の先端が当接するブラシ保持穴4の内周壁部分には、円形凹部が設けられている。固定ネジ17の先端は、円形凹部に挿入されて、その先端が円形凹部の底に当接する。
【0065】
ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態では、ブラシ3においてブラシ保持穴4の開口4aから外に露出する砥材束12の先端側部分12aは、第1方向X1に向かって、第1回転方向R1とは逆方向に傾斜する。また、先端側部分12aは、第1方向X1に向かって、内周側に傾斜する。ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態を第2方向X2の側から見た場合には、先端側部分12aは、ホルダ本体5に隠れる。すなわち、先端側部分12aは、ホルダ本体5よりも外周側に突出する部分を備えていない。また、ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態では、先端側部分12aは、第2内壁面23と隙間を開けて対向する。本例では、先端側部分12aは、第2内壁面23の湾曲面部分23aと隙間を開けて対向する。
【0066】
(研磨方法)
研磨ブラシ1Bを用いてワークWの研磨対象面Sを研磨する場合には、図7に示すように、シャンク6の軸線L0を研磨対象面Sに対して垂直とする。そして、研磨ブラシ1Bを第1回転方向R1に回転させて、ブラシ3の先端部を研磨対象面Sに接触させる。
【0067】
(作用効果)
本例によれば、ブラシホルダ2に設けられたブラシ保持穴4が、シャンク6の軸線L0に沿った軸線方向Xに延びておらず、底面4bから開口4aに向かってワークWを研磨する際の第1回転方向R1とは逆方向に傾斜する。従って、ブラシ3は、ブラシホルダ2に保持されることにより、ブラシ保持穴4の開口4aから第1回転方向R1とは逆方向に延びる。よって、研磨時にブラシ3に負荷がかかった場合には、ブラシ3が径方向に延びる場合と比較して、ブラシ3はホルダ本体5に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークWの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシ3は、第1回転方向R1とは逆方向に延びている。従って、ブラシ3の毛丈が短くなった場合でも、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨
対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。
【0068】
また、本例では、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の端面11aがブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。従って、樹脂部材11の端面11aからブラシ3の先端までの寸法が、ブラシ3を構成する全ての線状砥材10について、同様の長さ寸法となる。よって、ブラシ3を第1回転方向R1とは逆方向に撓ませることが容易となる。
【0069】
さらに、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、かつ、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。従って、ホルダ13および樹脂部材11がホルダ本体5の第1方向X1の端面から第1方向X1に突出することがない。
【0070】
また、ブラシ3は、複数本の線状砥材10の基端部分を覆うホルダ13を備える。これにより、砥材束12を、ブラシ3として市場に流通可能な部品とすることができる。さらに、ブラシ3は、ホルダ13を利用して着脱可能にブラシホルダ2に固定される。従って、ブラシ3を、消耗品として、交換できる。
【0071】
さらに、ホルダ本体5は、ブラシ保持穴4と同数の切欠き凹部21を備え、複数の切欠き凹部21は、軸線L0回りに環状に配列される。各切欠き凹部21は、第1回転方向R1とは逆方向を向く第1内壁面22と、第1内壁面22における第2方向X2の端から第1回転方向R1とは逆方向に延びる第2内壁面23と、を備える。ブラシ保持穴4は、開口4aが第1内壁面22に露出する。第1内壁面22は、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。第2内壁面23(湾曲面部分23a)は、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と平行である。従って、ホルダ本体5にブラシ保持穴4を形成しやすい。
【0072】
また、ブラシ3をブラシ保持穴4に保持させたときに、ブラシ3における樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12a、すなわち、ブラシ3におけるホルダ13の筒部14の他方の開口9bよりも先端側部分12aは、ホルダ本体5の切欠き凹部21の第2内壁面23(湾曲面部分23a)と、ホルダ13の筒部14の厚み分の隙間を開けて対向する。従って、ブラシ3は、この隙間によって、より、撓みやすくなる。
【0073】
さらに、本例では、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ブラシ3において樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12aの第2方向X2に、ホルダ本体5の切欠き凹部21の第2内壁面23(湾曲面部分23a)が存在する。従って、内周壁面4cにより、ワークWの研磨対象面Sを研磨するときに、ブラシ3がホルダ本体5の側に撓み過ぎることを防止できる。
【0074】
また、本例では、ホルダ本体5が第1方向X1の端面に切欠き凹部21を備え、切欠き凹部21の第1内壁面22にブラシ保持穴4の開口4aが露出する。従って、ブラシ3の交換が必要となった時に、切欠き凹部21に位置する砥材束12を掴んで、ブラシ3をブラシ保持穴4から引き抜くことができる。すなわち、ブラシ3の交換が必要となった時点では、摩耗して砥材束12の先端がホルダ本体5の第1方向X1の端面に接近した状態となっている。従って、ホルダ本体5の第1方向X1の端面の側から砥材束12を掴んで、ブラシ3をブラシ保持穴から引き抜くことは容易ではない。しかし、砥材束12の先端がホルダ本体5の第1方向X1の端面に接近した状態となっている場合でも、切欠き凹部21の第1内壁面22に露出するブラシ保持穴4の開口4aからは、砥材束12は突出している。従って、ブラシ保持穴4の開口4aから突出する砥材束12の突出部分を掴んで、ブラシ3をブラシ保持穴4から引き抜くことができる。
【0075】
なお、ホルダ本体5に切欠き凹部21を設けずに、ブラシ保持穴4を形成してもよい。すなわち、ホルダ本体5を円盤形状とし、ホルダ本体5の第1方向X1の端面から、第2方向X2に向かってブラシ保持穴4を設けることもできる。また、この場合には、ホルダ本体5に、一方の開口がホルダ本体5の第2方向X2の端面に露出し、他方の開口がブラシ保持穴4の底面4bの一部分に露出する貫通孔を設けることができる。貫通孔は、例えば、ブラシ保持穴4の中心軸線L1に沿って延設される。このような貫通孔を備えれば、ホルダ本体5の第2方向X2の端面に設けられた開口からピンを挿入することにより、ピンの先端をブラシ保持穴4に保持されたブラシ3のホルダ13の底部15に当接させることができる。従って、ピンを押し込むことにより、ブラシ3をブラシ保持穴4から押し出すことができる。よって、ブラシ3を交換する際に、固定ネジ17によるブラシ3のホルダ本体5への固定状態を解除したにも拘わらず、ブラシ3のホルダ13がブラシ保持穴4に嵌っている場合に、ブラシ3の引き抜きが容易となる。
【0076】
(実施例3)
図10は、実施例3の研磨ブラシの斜視図である。図11は、図10の研磨ブラシの底面図である。図12は、ブラシ3を取り外した状態のブラシホルダ2をホルダ本体5の側から見た場合の斜視図である。図10に示す研磨ブラシ1Cは、ブラシホルダ2と、ブラシホルダ2に保持された複数本のブラシ3と、を備える。ブラシホルダ2は、複数のブラシ保持穴4を備えるホルダ本体5と、ホルダ本体5から突出するシャンク6を備える。ホルダ本体5は、円盤形状である。シャンク6は、ホルダ本体5の中心部分から突出する。シャンク6とホルダ本体5とは同軸である。シャンク6は、工作機械或いは回転工具のヘッドに接続される。ブラシ3は、基端部分がブラシ保持穴4に挿入された状態でブラシホルダ2に保持される。研磨ブラシ1Cは、ワークWを研磨する際にシャンク6の軸線L0回りの第1回転方向R1に回転させられて各ブラシ3の先端部をワークWに接触させる。以下の説明では、シャンク6の軸線L0に沿った方向を軸線方向X、シャンク6の軸線L0回りを周方向とする。また、軸線方向Xにおいて、ホルダ本体5が位置する側を第1方向X1、シャンク6が位置する側を第2方向X2とする。
【0077】
複数のブラシ保持穴4は、シャンク6の軸線L0回りに環状に配列されている。本例では、ホルダ本体5には、6つのブラシ保持穴4が等角度間隔で設けられている。より具体的には、ホルダ本体5は、シャンク6の側から第1方向X1に向かって、円盤部分31と、第1方向X1に向かって径寸法が小さくなる円錐台部分32と、備える。円盤部分31の外周面31aは、軸線方向Xから見た場合に、略12角形形状をしている。円錐台部分32は、第1方向X1に向かって径寸法が小さくなる環状のテーパー外周面33を備える。ここで、図11図12に示すように、円錐台部分32の第1方向X1の端面に中心には、円形凹部35が設けられている。円形凹部35は、シャンク6と同軸である。
【0078】
ブラシ保持穴4は、その開口4aがテーパー外周面33に露出する。図10に示すように、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、底面4bの側から開口4aに向かって、第1方向X1に向かって第1回転方向R1とは逆方向に傾斜する。本例では、研磨ブラシ1Cを軸線L1と直交する方向から見た場合に、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、軸線L0に対し、第1方向X1に向かって第1回転方向R1とは逆方向に45°以上の角度θ3で傾斜する。また、ブラシ保持穴4の中心軸線L1は、図11に示すように、第1方向X1に向かって、ホルダ本体5の外周側に傾斜する。ここで、ブラシ保持穴4の開口4aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1に対して傾斜しており、軸線方向Xよりも周方向に長い楕円形状を備える。図11に示すように、ホルダ本体5の円盤部分31の外周面31aにおいて各ブラシ保持穴4の底面4bに近い部分には、内周側に延びてブラシ保持穴4に連通するブラシ固定用貫通孔8が設けられている。
【0079】
ブラシ3は、上記の例と同一である。図5に示すように、ブラシ3は、直線状に延びる複数本の線状砥材10と、複数本の線状砥材10の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材11と、を備える。線状砥材10は無機長繊維の集合糸と、集合糸に含侵する樹脂と、を備える。無機長繊維は、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、炭素繊維、窒化珪素繊維、或いは、ガラス繊維である。本例では、無機長繊維は、アルミナ繊維である。また、ブラシ3は、複数本の線状砥材10の基端部分と樹脂部材11とを覆うホルダ13を備える。ホルダ13は、複数本の線状砥材10の基端部分と樹脂部材11とを外周側から覆う筒部14、および、線状砥材10の基端に当接して筒部14の一方の開口を封鎖する底部15を備える。筒部14は円筒形状であり、一定の高さ寸法を備える。ホルダ13の底部15は、円盤形状であり、一定の厚みを備える。底部15には、筒部14の軸線と直交する方向に貫通するネジ孔16が設けられている。
【0080】
ここで、樹脂部材11は、硬化した接着剤である。樹脂部材11は、複数本の線状砥材10をホルダ13に固定する。樹脂部材11におけるブラシ3の先端側の端面11aは、筒部14の開口14aと一致する。
【0081】
ブラシ3は、その基端部分が各ブラシ保持穴4に挿入された状態でブラシホルダ2に保持される。ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ホルダ13および樹脂部材11は、ブラシ保持穴4の内側に位置する。より具体的には、ホルダ13の底部15には、ブラシ保持穴4の底面4bが当接する。また、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。すなわち、ホルダ13の筒部14および樹脂部材11は、ホルダ本体5のテーパー外周面33から外に突出していない。また、筒部14の開口14aはブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。従って、筒部14の開口14aと一致する樹脂部材11の端面11aも、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。
【0082】
ブラシ3は、ホルダ本体5の円盤部分31の環状外周面7に設けられたブラシ固定用貫通孔8を介してブラシ3のホルダ13の底部15に設けられたネジ孔16に捩じ込まれる固定ネジ17によりホルダ本体5に固定される。固定ネジ17は、棒状であり、外周に雄ネジを備える。固定ネジ17は、ホーローセットである。
【0083】
固定ネジ17は、ホルダ本体5のブラシ固定用貫通孔8を介してホルダ13のネジ孔16に捩じ込まれ、その先端が、ブラシ保持穴4においてネジ孔16の捩じ込み方向の前方に位置する内壁部分に当接する。この状態から固定ネジ17を更に捩じ込むと、ホルダ13は、ブラシ保持穴4内において、ネジ孔16の捩じ込み方向の後方に移動し、ブラシ保持穴4においてブラシ固定用貫通孔8の開口が形成されている内壁部分に押し付けられる。これにより、ブラシ3は、ホルダ本体5に固定される。なお、本例では、ブラシ固定用貫通孔8の内周壁面4cにおいて、固定ネジ17の捩じ込み方向の先端が当接するブラシ保持穴4の内周壁部分には、円形凹部が設けられている。固定ネジ17の先端は、円形凹部に挿入されて、その先端が円形凹部の底に当接する。
【0084】
ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態では、ブラシ3においてブラシ保持穴4の開口4aから外に露出する砥材束12の先端側部分12aは、第1方向X1に向かって、第1回転方向R1とは逆方向に傾斜する。また、先端側部分12aは、第1方向X1に向かって、外周側に傾斜する。ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態を軸線方向Xから見た場合には、先端側部分12aは、ホルダ本体5から外周側に突出する部分を備える。また、ブラシ3がホルダ本体5に保持された状態では、ブラシ保持穴4の内周壁面4cにおいてブラシ3のホルダ13よりもブラシ保持穴4の開口4aの側に位置する内周壁面部分4dは、先端側部分12aと、ホルダ13の筒部14の厚み分の隙間を開けて対向する。
【0085】
(研磨方法)
図13は、本例の研磨ブラシを用いた第1の研磨方法の説明図である。図14は、本例の研磨ブラシを用いた第2の研磨方法の説明図である。図13に示すように、研磨ブラシ1Cを用いてワークWの研磨対象面Sを研磨する場合には、シャンク6の軸線L0を研磨対象面Sに対して傾斜させる。そして、研磨ブラシ1Cを第1回転方向R1に回転させて、ブラシ3の先端部を研磨対象面Sに接触させる。また、図14に示すように、研磨ブラシ1Cを用いてワークWの研磨対象面Sを研磨する場合には、シャンク6の軸線L0を研磨対象面Sに対して垂直とする。そして、研磨ブラシ1Cを第1回転方向R1に回転させて、ブラシ3の先端部を研磨対象面Sに接触させる。
【0086】
(作用効果)
本例によれば、ブラシホルダ2に設けられたブラシ保持穴4が、シャンク6の軸線L0に沿った軸線方向Xに延びておらず、底面4bから開口4aに向かってワークWを研磨する際の第1回転方向R1とは逆方向に傾斜する。従って、ブラシ3は、ブラシホルダ2に保持されることにより、ブラシ保持穴4の開口4aから第1回転方向R1とは逆方向に延びる。よって、研磨時にブラシ3に負荷がかかった場合には、ブラシ3が径方向に延びる場合と比較して、ブラシ3はホルダ本体5に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークWの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシ3は、第1回転方向R1とは逆方向に延びている。従って、ブラシ3の毛丈が短くなった場合でも、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。
【0087】
また、本例では、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の端面11aがブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。従って、樹脂部材11の端面11aからブラシ3の先端までの寸法が、ブラシ3を構成する全ての線状砥材10について、同様の長さ寸法となる。よって、ブラシ3を第1回転方向R1とは逆方向に撓ませることが容易となる。
【0088】
さらに、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の開口4aの側の端面11aはブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、ホルダ13および樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。従って、ホルダ13および樹脂部材11がホルダ本体5のテーパー外周面33から径方向外側に突出することがない。
【0089】
また、ホルダ本体5は、第1方向X1に向かって径寸法が小さくなる円錐台部分32を備える。ブラシ保持穴4は、開口4aが円錐台部分32のテーパー外周面33に露出する。開口4aは、軸線方向Xよりも周方向に長い形状を備える。従って、ホルダ本体5にブラシ保持穴4を形成しやすい。
【0090】
さらに、ブラシ3は、複数本の線状砥材10の基端部分を覆うホルダ13を備える。よって、ブラシ3を、市場に流通可能な部品とすることができる。さらに、ブラシ3は、着脱可能にブラシホルダ2に固定される。従って、ブラシ3を、消耗品として、交換できる。
【0091】
また、ブラシ3をブラシ保持穴4に保持させたときに、ブラシ3における樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12a、すなわち、ブラシ3におけるホルダ13の筒部14の他方の開口9bよりも先端側部分12aでは、ブラシ保持穴4の内周壁面4cとの間に筒部14の厚み分の隙間が形成される。この隙間により、ブラシ3が、より、撓みやすくなる。
【0092】
さらに、本例では、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、ブラシ3において樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12aの内周側および第2方向X2に、ホルダ本体5におけるブラシ保持穴4の内周壁面4cが存在する。従って、内周壁面4cにより、ワークWの研磨対象面Sを研磨するときに、ブラシ3がホルダ本体5の側に撓み過ぎることを防止できる。
【0093】
なお、本例においても、ホルダ本体5に、一方の開口がホルダ本体5の第2方向X2の端面に露出し、他方の開口がブラシ保持穴4の底面4bの一部分に露出する貫通孔を設けることができる。貫通孔は、例えば、ブラシ保持穴4の中心軸線L1に沿って延設される。このような貫通孔を備えれば、ホルダ本体5の第2方向X2の端面に設けられた開口からピンを挿入することにより、ピンの先端をブラシ保持穴4に保持されたブラシ3のホルダ13の底部15に当接させることができる。従って、ピンを押し込むことにより、ブラシ3をブラシ保持穴4から押し出すことができる。よって、ブラシ3を交換する際に、固定ネジ17によるブラシ3のホルダ本体5への固定状態を解除したにも拘わらず、ブラシ3のホルダ13がブラシ保持穴4に嵌っている場合に、ブラシ3の引き抜きが容易となる。
【0094】
(変形例1)
図15は、変形例1の研磨ブラシの斜視図である。図16は、図15のB-B線断面図である。図15に示す変形例1の研磨ブラシ1Dは、実施例1の研磨ブラシ1Aにおいて、ブラシホルダ2に保持されるブラシ3がホルダ13を有さない形態である。研磨ブラシ1Dにおいて、研磨ブラシ1Aに対応する構成は、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0095】
本例では、ブラシ3は、直線状に延びる複数本の線状砥材10と、複数本の線状砥材10の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材11と、備える。ブラシ保持穴4は、その中心軸線L1に沿った方向を底面4bから開口4aに向かって順に、小径穴部分41と、小径穴部分41よりも内径寸法が大きい大径穴部分42と、を備える。ブラシ保持穴4の開口4aは、大径穴部分42に設けられている。
【0096】
樹脂部材11は、樹脂部材11は、硬化した接着剤であり、小径穴部分41の内側で、複数本の線状砥材10をブラシホルダ2に固定する。ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、樹脂部材11におけるブラシ保持穴4の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。樹脂部材11の端面11aは、小径穴部分41と大径穴部分42との間に形成される環状の段部の端面43と一致する。樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。
【0097】
変形例1の研磨ブラシ1Dにおいても、ブラシホルダ2に設けられたブラシ保持穴4が、底面4bから開口4aに向かってワークWを研磨する際の第1回転方向R1とは逆方向に傾斜する。従って、ブラシ3は、ブラシホルダ2に保持されることにより、ブラシ保持穴4の開口4aから第1回転方向R1とは逆方向に延びる。よって、研磨時にブラシ3に負荷がかかった場合には、ブラシ3はホルダ本体5に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークWの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシ3は、第1回転方向R1とは逆方向に延びている。従って、ブラシ3の毛丈が短くなった場合でも、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。
【0098】
また、変形例1の研磨ブラシ1Dにおいても、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持された
ときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。従って、樹脂部材11の端面11aからブラシ3の先端までの寸法を、ブラシ3を構成する全ての線状砥材10について、同様の長さ寸法となる。よって、ブラシ3を第1回転方向R1とは逆方向に撓ませることが容易である。
【0099】
さらに、変形例1の研磨ブラシ1Dにおいても、ブラシ3をブラシホルダ2に保持させたときに、ブラシ3における樹脂部材11の端面11aよりも先端側部分12aと、ブラシ保持穴4の大径穴部分42の内周壁面部分4dとの間に、隙間を設けることができる。これにより、ブラシ3が、より、撓みやすくなる。
【0100】
ここで、ブラシホルダ2に保持されるブラシ3がホルダ13を有さない形態において、ブラシ保持穴4は、その中心軸線L1に沿った方向を底面4bから開口4aに向かって順に、小径穴部分41と、小径穴部分41よりも内径寸法が大きい大径穴部分42と、を備える構成、樹脂部材11は、小径穴部分41の内側で、複数本の線状砥材10をブラシホルダ2に固定する構成、樹脂部材11におけるブラシ保持穴4の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する構成を備える本例の形態は、実施例3の研磨ブラシ1Cに適用できる。
【0101】
(変形例2)
変形例2は、実施例1において、ブラシホルダ2に保持されるブラシ3がホルダ13を有さない形態の研磨ブラシである。図17は、変形例2の研磨ブラシの斜視図である。本例の研磨ブラシ1Dにおいて、研磨ブラシ1Aに対応する構成は、同一の符号を付して、その説明を省略する。研磨ブラシ1Eのブラシ3は、直線状に延びる複数本の線状砥材10と、複数本の線状砥材10の基端部分を束状に纏めて固定する樹脂部材11と、備える。ブラシ保持穴4の内径寸法は、一定である。ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、樹脂部材11におけるブラシ保持穴4の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交する。樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。樹脂部材11は、硬化した接着剤であり、ブラシ保持穴に内側で、複数本の線状砥材10を、ブラシホルダに固定する。
【0102】
変形例2の研磨ブラシにおいても、ブラシホルダ2に設けられたブラシ保持穴4が、底面4bから開口4aに向かってワークWを研磨する際の第1回転方向R1とは逆方向に傾斜する。従って、ブラシ3は、ブラシホルダ2に保持されることにより、ブラシ保持穴4の開口4aから第1回転方向R1とは逆方向に延びる。よって、研磨時にブラシ3に負荷がかかった場合には、ブラシ3はホルダ本体5に接近する側に撓みやすく、負荷を逃しやすい。従って、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。また、ワークWの研磨に伴って摩耗して、毛丈が短くなった場合でも、ブラシ3は、第1回転方向R1とは逆方向に延びている。従って、ブラシ3の毛丈が短くなった場合でも、線状砥材10の折れの発生や、ブラシ3がワークWの研磨対象面Sに傷を付けやすくなることを抑制できる。
【0103】
また、変形例1の研磨ブラシにおいても、ブラシ3がブラシ保持穴4に保持されたときに、複数本の線状砥材10を砥材束12として拘束する樹脂部材11の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する。従って、樹脂部材11の端面11aからブラシ3の先端までの寸法を、ブラシ3を構成する全ての線状砥材10について、同様の長さ寸法となる。よって、ブラシ3を第1回転方向R1とは逆方向に撓ませるこ
とが容易である。
【0104】
ここで、ブラシホルダ2に保持されるブラシ3がホルダ13を有さない形態において、樹脂部材11は、ブラシ保持穴4の内側で、複数本の線状砥材10をブラシホルダ2に固定し、樹脂部材11におけるブラシ保持穴4の開口4aの側の端面11aは、ブラシ保持穴4の中心軸線L1と直交し、樹脂部材11の径方向外側には、ブラシ保持穴4の内周壁面4cが全周に渡って存在する構成は、実施例2、3の研磨ブラシに適用できる。
【符号の説明】
【0105】
1A・1B・1C…研磨ブラシ、2…ブラシホルダ、3…ブラシ、4…ブラシ保持穴、4a…開口、4b…底面、4c…内周壁面、4d…内周壁面部分、5…ホルダ本体、6…シャンク、7…環状外周面、8…ブラシ固定用貫通孔、9…連通孔、9a…一方の開口、9b…他方の開口、10…線状砥材、11…樹脂部材、11a…端面、12…砥材束、12a…先端側部分、13…ホルダ、14…筒部、15…底部、16…ネジ孔、17…固定ネジ、21…切欠き凹部、22…第1内壁面、23…第2内壁面、23a…湾曲面部分、25…円形凹部、31…円盤部分、31a…外周面、32…円錐台部分、33…テーパー外周面、35…円形凹部、41…小径穴部分、42…大径穴部分、L0…シャンクの軸線、L1…ブラシ保持穴の中心軸線、R1…第1回転方向