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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079916
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】カッターマシンおよび鉄骨切断方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20240606BHJP
   B23K 7/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
E04G23/08 H
B23K7/00 501A
B23K7/00 501F
B23K7/00 508Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192604
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 善伸
(72)【発明者】
【氏名】榮田 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 耕一
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA07
2E176DD52
(57)【要約】
【課題】クレーンを使用するだけで梁状および柱状の双方の鉄骨を容易に切断できるようにする。
【解決手段】クレーン200に吊り下げた状態で鉄骨SFの切断に使用されるカッターマシン1である。鉄骨SFの横幅よりも長く延びる可動枠部30から直交する方向に平行して延びるとともに相対的に接近または離間した状態に移動可能な第1枠部40および第2枠部50を備える。鉄骨SFの切断時に、鉄骨SFを第1枠部40と第2枠部50とで挟持するように構成されており、第1枠部40よりも第2枠部50の方が短いことを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンに吊り下げた状態で鉄骨の切断に使用されるカッターマシンであって、
前記鉄骨の横幅よりも長く延びる可動枠部と、
前記可動枠部から直交する方向に平行して延びるとともに相対的に接近または離間した状態に移動可能な第1枠部および第2枠部と、
を備え、
前記鉄骨の切断時に、当該鉄骨を前記第1枠部と前記第2枠部とで挟持するように構成されており、前記第1枠部よりも前記第2枠部の方が短いことを特徴とするカッターマシン。
【請求項2】
請求項1に記載のカッターマシンにおいて、
前記第2枠部に、トーチと、当該トーチを前記第2枠部に沿って移動させるトーチ移動機構とが設けられていて、火炎を噴射する前記トーチを移動させることによって前記鉄骨を切断するように構成されているカッターマシン。
【請求項3】
請求項2に記載のカッターマシンにおいて、
前記トーチが、前記第2枠部からはみ出して移動することにより、前記第1枠部の長さに対応した範囲で移動可能とされているカッターマシン。
【請求項4】
クレーンに吊り下げた状態で鉄骨の切断に使用されるカッターマシンであって、
前記鉄骨の横幅よりも長く延びる可動枠部と、
前記可動枠部から直交する方向に平行して延びるとともに相対的に接近または離間した状態に移動可能な第1枠部および第2枠部と、
を備え、
前記第2枠部に、トーチと、当該トーチを前記第2枠部に沿って移動させるトーチ移動機構と、が設けられていて、
鉛直方向に延びる鉄骨柱の切断時に、当該鉄骨柱の側方から前記第1枠部と前記第2枠部とで当該鉄骨柱を挟持し、火炎を噴射する前記トーチを移動させることによって前記鉄骨柱を切断するように構成されており、
前記可動枠部から前記第2枠部の逆方向に延びるトーチケースを更に備え、
前記トーチ移動機構が、前記第2枠部から突出して当該第2枠部の逆方向に延びることによって前記トーチケースに収容される逆向き突出部を有していることを特徴とするカッターマシン。
【請求項5】
請求項4に記載のカッターマシンにおいて、
前記可動枠部を支点に、前記第1枠部および前記第2枠部が有る作業側と前記トーチケースおよび前記逆向き突出部が有る非作業側との間で力のモーメントがつりあうように重量バランスが調整されているカッターマシン。
【請求項6】
請求項5に記載のカッターマシンにおいて、
前記可動枠部に、前記クレーンの第1ワイヤに吊すための第1吊環が設置されているカッターマシン。
【請求項7】
請求項6に記載のカッターマシンにおいて、
前記可動枠部に、前記クレーンの第2ワイヤに吊すための第2吊環が更に設置されているカッターマシン。
【請求項8】
請求項7に記載のカッターマシンにおいて、
前記可動枠部の長手方向に離れた2箇所に前記第1吊環が1つずつ設置されるとともに、前記第1吊環から前記可動枠部の短手方向に離れた箇所に前記第2吊環が設置されているカッターマシン。
【請求項9】
請求項8に記載のカッターマシンにおいて、
前記第2吊環が、ブラケットを介して前記可動枠部から前記非作業側に離れた位置に設置されているカッターマシン。
【請求項10】
クレーンに吊り下げた状態で鉄骨の切断に使用されるカッターマシンであって、
前記鉄骨の横幅よりも長く延びる可動枠部と、
前記可動枠部から直交する方向に平行して延びるとともに相対的に接近または離間した状態に移動可能な第1枠部および第2枠部と、
を備え、
前記第2枠部に、トーチと、当該トーチを前記第2枠部に沿って移動させるトーチ移動機構とが設けられていて、
鉛直方向に延びる鉄骨柱の切断時に、当該鉄骨柱の側方から前記第1枠部と前記第2枠部とで当該鉄骨柱を挟持し、火炎を噴射する前記トーチを移動させることによって前記鉄骨柱を切断するように構成されており、
前記第1枠部よりも前記第2枠部の方が短くされるとともに、前記可動枠部から前記第2枠部の逆方向に延びるトーチケースを更に備え、前記トーチ移動機構が、前記第2枠部から突出して前記トーチケースに収容される逆向き突出部を有していることを特徴とするカッターマシン。
【請求項11】
請求項10に記載のカッターマシンにおいて、
前記第1枠部に、前記トーチの火炎を受け止める火炎受止器が設置されているカッターマシン。
【請求項12】
鉄骨切断方法であって、
請求項1~11のいずれかに記載されているカッターマシンをクレーンに吊り下げる吊るし工程と、
起立姿勢にした前記カッターマシンを水平方向に延びる鉄骨梁に載せ置いた状態で前記鉄骨梁を切断する梁切断工程と、
横臥姿勢にした前記カッターマシンに鉛直方向に延びる鉄骨柱を受け入れた状態で前記鉄骨柱を切断する柱切断工程と、
を含む鉄骨切断方法。
【請求項13】
クレーンで吊り下げたカッターマシンを使用し、2本のワイヤを操作して鉄骨を切断する鉄骨切断方法であって、
前記ワイヤの一方で前記カッターマシンを吊り下げた状態で他方のワイヤを引き上げることによって前記カッターマシンを回動させる姿勢変更工程を含む、鉄骨切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、建造物を解体する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルディングなどの建造物を解体する際、鉄骨、鉄筋コンクリートなどの構造物を切断する作業が行われる。その際、高位置で構造物を切断しなければならない場合には、大型の作業機械やクレーンで切断装置を高位置に持ち上げて、遠隔操作によって切断する作業が行われる。
【0003】
特許文献1には、作業機械に組み付けて使用する切断装置が開示されている。その作業機械は、屈曲可能な長い支柱を有しており、その先端に破砕装置が取り付けられている。その支柱の先端部分に、アームが枝分かれするように組み付けられている。そのアームの先端に、ガス切断を行う切断装置が備えられている。
【0004】
その切断装置は、上下に対向してスライド開閉する一対の把持部を有している。これら把持部で鉄骨の上下の面を挟み込む。その状態で、火炎を噴射するトーチを上下方向に移動させることによって鉄骨を切断する。
【0005】
切断装置がガス切断機である場合、強力な高温の火炎で鉄骨を切断するので、火花やノロ(溶融時に発生するスラグ)が、多量に発生して、周囲に飛散する。そのため、切断箇所の周囲に防火幕を設置するなど、事前の対策が必要になる。また、高位置に持ち上げた切断装置は僅かな操作で大きく動くので、切断箇所に切断装置を取り付けることは非常に難しい。
【0006】
そこで、本出願人は、遠隔操作でも適切な解体作業が容易に行えるカッターマシンを先に提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-178450号公報
【特許文献2】特開2022-99679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2のカッターマシン(以下、従来機ともいう)は、伸縮する可動枠部と、この可動枠部から平行して延びる外側枠部および内側枠部とを有するアーチ形状ないし逆U形状をしており、クレーンに吊り下げて使用する。従来機で水平方向に延びる梁状の鉄骨(鉄骨梁)を切断する際には、その鉄骨梁の上に跨がるように可動枠部を載せ置いた後、その鉄骨梁を外側枠部および内側枠部で挟み付けて切断する。
【0009】
従来機の側部には把手が取り付けられていて、従来機で鉛直方向に延びる柱状の鉄骨(鉄骨柱)を切断する際には、作業機械でその把手を把持した後、作業機械で従来機を横向きにしてその鉄骨柱に取り付け、その鉄骨柱を従来機で挟み付けて切断する。
【0010】
従って、遠隔操作でも適切な解体作業が容易に行える。
【0011】
しかし、従来機の場合、建造物の解体には、クレーンと作業機械の双方を使用する必要があり、利便性の点で改良の余地があった。
【0012】
開示する技術の目的は、クレーンを使用するだけで梁状および柱状の双方の鉄骨を容易に切断でき、利便性に優れるカッターマシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
開示する技術は、クレーンに吊り下げた状態で鉄骨の切断に使用されるカッターマシンに関する。
【0014】
前記カッターマシンは、前記鉄骨の横幅よりも長く延びる可動枠部と、前記可動枠部から直交する方向に平行して延びるとともに相対的に接近または離間した状態に移動可能な第1枠部および第2枠部と、を備える。
【0015】
そして、前記鉄骨の切断時に、当該鉄骨を前記第1枠部と前記第2枠部とで挟持するように構成されており、前記第1枠部よりも前記第2枠部の方が短いことを特徴とする。
【0016】
すなわち、このカッターマシンによれば、従来機と同様に、可動枠部と、外側枠部および内側枠部に相当する第1枠部および第2枠部とを備え、鉄骨の切断時に、鉄骨を第1枠部と第2枠部とで挟持するように構成されている。
【0017】
そして、アーチ形状ないし逆U形状、つまり外側枠部および内側枠部がほぼ同じ長さで対向している従来機と異なり、このカッターマシンでは、第1枠部よりも第2枠部の方が短くされている。
【0018】
従来機の場合、鉄骨にカッターマシンを取り付ける時には、並んで位置する外側枠部および内側枠部の突端の間に、これら突端の先方から鉄骨を受け入れる必要があり、鉄骨梁でもクレーンだけではカッターマシンを取り付け難いという難点があった。
【0019】
それに対し、このカッターマシンの場合、第1枠部よりも第2枠部の方が短くされていて、第1枠部の突端に対して第2枠部の突端の位置が相対的に基端側にずれているので、これらの突端の先方からだけでなく、第2枠部の側方からも第2枠部の突端の下方を通じて鉄骨を受け入れることが可能になる。従って、鉄骨を受け入れることができる範囲が大幅に拡大し、クレーンだけでも、カッターマシンを容易に鉄骨に取り付けることができる。
【0020】
前記第2枠部に、トーチと、当該トーチを前記第2枠部に沿って移動させるトーチ移動機構とが設けられていて、火炎を噴射する前記トーチを移動させることによって前記鉄骨を切断するように構成されている、としてもよい。
【0021】
そうすれば、トーチから噴射される火炎は、第1枠部で受け止めることができる。従って、火炎やスラグの飛散を抑制できる。
【0022】
前記トーチが、前記第2枠部からはみ出して移動することにより、前記第1枠部の長さに対応した範囲で移動可能とされている、としてもよい。
【0023】
そうすれば、第2枠部が短くても、第1枠部に対応した範囲で切断できる。従来機と同様の切断範囲を確保できる。
【0024】
前記カッターマシンはまた、前記第2枠部に、トーチと、当該トーチを前記第2枠部に沿って移動させるトーチ移動機構と、が設けられていて、鉛直方向に延びる鉄骨柱の切断時に、当該鉄骨柱の側方から前記第1枠部と前記第2枠部とで当該鉄骨柱を挟持し、火炎を噴射する前記トーチを移動させることによって前記鉄骨柱を切断するように構成されており、前記可動枠部から前記第2枠部の逆方向に延びるトーチケースを更に備え、前記トーチ移動機構が、前記第2枠部から突出して当該第2枠部の逆方向に延びることによって前記トーチケースに収容される逆向き突出部を有していることを特徴としてもよい。
【0025】
このカッターマシンによれば、可動枠部を境にして、第1枠部および第2枠部と、トーチケースおよび逆向き突出部とが、逆向きに突き出した状態になる。それにより、可動環枠部の両側で力のモーメントの差が小さくなり、可動枠部をクレーンに吊り下げた場合に、カッターマシンを横向きにできる。
【0026】
それにより、第1枠部および第2枠部の突端は横方向に向いた状態になるので、第2枠部を短くしたことと相俟って、クレーンでカッターマシンを鉄骨柱に容易に取り付けることができる。その結果、クレーンだけで、鉄骨柱の側方から第1枠部と第2枠部とで鉄骨柱を挟持し、火炎を噴射するトーチを移動させることによって鉄骨柱を切断することができる。
【0027】
また、トーチケースにより、逆向きに突出したトーチおよびトーチ移動機構を保護できる。
【0028】
前記可動枠部を支点に、前記第1枠部および前記第2枠部が有る作業側と前記トーチケースおよび前記逆向き突出部が有る非作業側との間で力のモーメントがつりあうように重量バランスが調整されている、としてもよい。
【0029】
そうすれば、可動枠部をクレーンに吊り下げるだけで、カッターマシンを略水平な姿勢(横臥姿勢)にできる。第1枠部および第2枠部の突端は略水平方向に向いた状態になるので、クレーンンに吊り下げるだけで、鉛直方向に延びる鉄骨柱に取り付ける最適な姿勢にできる。従って、利便性に優れる。
【0030】
前記可動枠部に、前記クレーンの第1ワイヤに吊すための第1吊環を設置してもよいし、前記クレーンの第2ワイヤに吊すための第2吊環を更に設置してもよい。
【0031】
そうすれば、カッターマシン近傍のワイヤが鉄骨に接触するのを抑制できる。第1ワイヤによって可動枠部をクレーンで吊り下げることができる。そして、第2ワイヤで操作できるので、1台のクレーンでカッターマシンの傾きを調整できる。
【0032】
前記可動枠部の長手方向に離れた2箇所に前記第1吊環が1つずつ設置されるとともに、前記第1吊環から前記可動枠部の短手方向に離れた箇所に前記第2吊環が設置されているようにするのが好ましい。
【0033】
そうすれば、カッターマシンを2点で吊り下げることができ、安定して支持できる。可動枠部を回動し易いので、操作も容易にできる。
【0034】
前記第2吊環は、ブラケットを介して前記可動枠部から前記非作業側に離れた位置に設置されている、としてもよい。
【0035】
そうすれば、第2吊環に連結したワイヤを引き上げる時に、そのワイヤがカッターマシンと干渉するのを回避できる。
【0036】
前記第1枠部に、前記トーチの火炎を受け止める火炎受止器が設置されている、としてもよい。
【0037】
そうすれば、火炎やスラグの拡散を効果的に抑制できる。
【0038】
開示する技術はまた、鉄骨切断方法に関する。
【0039】
前記鉄骨切断方法は、上述したカッターマシンをクレーンに吊り下げる吊るし工程と、起立姿勢にした前記カッターマシンを水平方向に延びる鉄骨梁に載せ置いた状態で前記鉄骨梁を切断する梁切断工程と、横臥姿勢にした前記カッターマシンに鉛直方向に延びる鉄骨柱を受け入れた状態で前記鉄骨柱を切断する柱切断工程と、を含む。
【0040】
上述したカッターマシンによれば、クレーンを使用するだけで、鉄骨に容易に取り付けることができる。従って、クレーンを使用して鉄骨梁および鉄骨柱の双方を容易に切断できる。
【0041】
前記鉄骨切断方法はまた、クレーンで吊り下げたカッターマシンを使用し、2本のワイヤを操作して鉄骨を切断する鉄骨切断方法であって、前記ワイヤの一方で前記カッターマシンを吊り下げた状態で他方のワイヤを引き上げることによって前記カッターマシンを回動させる姿勢変更工程を含むものであってもよい。
【0042】
2本のワイヤの操作だけで、鉄骨梁および鉄骨柱の双方の切断ができる起立姿勢および横臥姿勢の双方にできる。従って、クレーンだけを使用して鉄骨梁および鉄骨柱の双方を切断できる。
【発明の効果】
【0043】
開示する技術を適用したカッターマシンによれば、クレーンを使用するだけで鉄骨に取り付け易くなり、梁状および柱状の双方の鉄骨を容易に切断できる。従って、利便性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】カッターマシン(改良機)の使用例を示す概略図である。
図2】従来機の全体を示す概略斜視図である。
図3】従来機の要部を左側から見た概略側面図である。
図4】従来機の要部の概略縦断面図である。
図5図3における矢印X-X線での概略断面図である。
図6】改良機(横臥姿勢)の全体を示す概略斜視図である。
図7】改良機の主体部分を示す概略斜視図である。
図8】第2枠部およびトーチケースの内部構造を示す概略斜視図である。
図9】改良機(起立姿勢)の全体を示す概略斜視図である。
図10】鉄骨を切断する過程を説明するための図である。
図11】改良機による鉄骨柱の切断過程を説明するための図である。
図12】改良機による鉄骨梁の切断過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、開示する技術の実施形態について説明する。ただし、以下の説明は例示に過ぎない。説明で用いる上下、前後、および左右の方向は、各図に示す方向を基準とする。
【0046】
<カッターマシンの使用例>
図1に、高層ビルHB(建造物の一例)の解体現場を例示する。高層ビルHBは、主に、外面や各階層を仕切るコンクリート壁と、これらコンクリート壁の内部に埋設された鉄骨構造物SSとで構成されている。鉄骨構造物SSは、一般に、鉛直方向に延びる複数の柱状の鉄骨SF(鉄骨柱SFp)と、水平方向に延びる複数の梁状の鉄骨SF(鉄骨梁SFb)とを、格子状に組み合わることによって構成されている。
【0047】
鉄骨柱SFpとしては、例えば、中空角柱状の角形鋼管や断面H形のH形鋼が多く用いられている。鉄骨梁SFbとしては、例えば、断面H形のH形鋼が多く用いられている。これら鉄骨柱SFpおよび鉄骨梁SFbを溶接して組み付けることで鉄骨構造物SSが構成されている。
【0048】
解体時には、コンクリート壁を崩して取り除いた後、カッターマシンでこれら鉄骨柱SFpおよび鉄骨梁SFbを少しずつ切り取って行く。そうすることによって、鉄骨構造物SSを解体する。
【0049】
上述した従来機(以下、従来機100ともいう)では、鉄骨構造物SSの解体作業に、少なくとも1台のクレーン200と、図1に仮想線で示すような、少なくとも1台の解体機300(作業機械)が必要とされる。すなわち、従来機100の場合、鉄骨梁SFbの切断はクレーン200だけでも行えるが、鉄骨柱SFpの切断は、解体機300でなければ行えない。従って、従来機100の場合、クレーン200だけでは、鉄骨構造物SSの解体は行えない。
【0050】
それに対し、今回開示する技術を適用したカッターマシン(以下、改良機1ともいう)は、図1に実線で示すように、普通のクレーン200が1台あれば、クレーン200に吊り下げた状態で、鉄骨柱SFpおよび鉄骨梁SFbの双方の切断が容易に行えるように工夫されている。
【0051】
(クレーン)
図1に、改良機1の使用に好適なクレーン200を例示する。クレーン200は、ホイール式の下部走行体201と、この下部走行体201に旋回可能に搭載された上部旋回体202とを備える。下部走行体201は、クローラ式でもよい。クレーン200の形態は一例である。クレーン200のサイズも解体対象に応じて選択される。
【0052】
下部走行体201は、所定位置にアウトリガーで固定して使用される。固定されたクレーン200の周辺には、改良機1に電力を供給するとともに改良機1の動作を制御するメイン装置400と、改良機1に燃料ガス、酸素、および散水用の水を供給するサブ装置500(燃料供給装置)とが設置される。
【0053】
上部旋回体202の前部には、テレスコピック構造のブーム203が、起伏可能に装着されている。すなわち、ブーム203は、断面サイズが異なる複数の中空支柱で入れ子状に構成されていて、これら複数の中空支柱が伸び縮みする。図示のブーム203は縮んだ状態を表しており、使用時にはブーム203は伸ばされる。
【0054】
ブーム203の先端には、長さ調節が可能な2本のワイヤ(主巻ワイヤ204aおよび補巻ワイヤ204b)が設けられている。そして、これら主巻ワイヤ204a(第1ワイヤに相当)および補巻ワイヤ204b(第2ワイヤに相当)の各々の下端には、シープを介してフック205が設けられている。
【0055】
改良機1は、主巻ワイヤ204aで吊り下げられる。改良機1の場合、吊り下げるのではないが、更に補巻ワイヤ204bとも連結される。改良機1は、主巻ワイヤ204aおよび補巻ワイヤ204bの双方を用いて操作される。
【0056】
改良機1は、従来機100を改良したものである。そのため、その基本的な構成は従来機100と同様である。従って、改良機1を説明する前に、従来機100の概略について説明する。
【0057】
(従来機100)
図2図5に、その従来機100を示す。図2は、従来機100の全体を示す概略斜視図である。図3は、従来機100の要部を左側から見た概略側面図である。図4は、従来機100の要部の概略縦断面図である。図5は、図3における矢印X-X線での概略断面図である。
【0058】
従来機100は、連結具103、固定装置104、熱切断装置105などで構成されている。熱切断装置105は、固定装置104と一体に構成されている。固定装置104は、4本の支持ワイヤ101を介して吊り下げ可能な連結具103に連結されている。
【0059】
連結具103には旋回モータが設置されていて、その駆動により、連結具103に吊された固定装置104が旋回するように構成されている。
【0060】
固定装置104は、可動枠部130、外側枠部140、および内側枠部150を有し、外観が門(アーチ)形状に形成されている。
【0061】
可動枠部130は、伸縮可能に構成されていて、その可動枠部130の両端部の各々から外側枠部140および内側枠部150の各々が平行に延びている。内側枠部150には、熱切断装置105が設置されていて、外側枠部140には、図4図5に示すように、火炎受止器106が熱切断装置105に対向して設置されている。外側枠部140および内側枠部150の各々は、縦長な箱形状を有し、互いに間隔を隔てて対向している。
【0062】
外側枠部140は、その両サイドに位置するとともに縦枠141aおよび横枠141bを有する逆L形状をした一対の外側支持部材141,141と、これらの縦枠141aの間を覆うように外側面に取り付けられた外側カバープレート142とを有している。外側カバープレート142の外面には、解体機300がその破砕装置を用いて把持できる把手180が設けられている。
【0063】
外側カバープレート142の内面側に火炎受止器106が設置されている。各外側支持部材141,141の横枠141bの上面には、図3に示すように、平行して延びる一対のスライドガイド131,131が設けられている。これらスライドガイド131,131に、板状のスライドプレート132がスライド可能な状態で取り付けられている。
【0064】
図4に示すように、スライドプレート132は、内側枠部150に組み付けられていて、これらは一体に構成されている。それにより、内側枠部150は、スライドプレート132と共に、一対のスライドガイド131,131に沿ってスライドする。可動枠部130は、各外側支持部材141,141の横枠141b、一対のスライドガイド131,131、スライドプレート132などによって構成されている。
【0065】
図4図5に示すように、内側枠部150は、その両サイドに一対の内側支持部材151,151を有している。各内側支持部材151は、角筒形状を有する部材からなる。各内側支持部材151の上端部分には、図4に示すように、外側枠部140の側に張り出すプレート受部151aが設けられている。これらプレート受部151a,151aにスライドプレート132が固定されている。
【0066】
スライドプレート132および内側枠部150と、外側枠部140との間には、一対の油圧シリンダ133,133が設置されている。各油圧シリンダ133は、各外側支持部材141,141の横枠141bの上側に配置されている、各油圧シリンダ133のピストンロッドの先端は、外側枠部140の上端部に取り付けられている。各油圧シリンダ133のシリンダチューブは、スライドプレート132に取り付けられている。
【0067】
各油圧シリンダ133が伸縮することにより、スライドプレート132および内側枠部150が、両スライドガイド131,131に沿ってスライドし、外側枠部140と内側枠部150との間の距離が大小に変化する。
【0068】
図4図5に示すように、熱切断装置105は、トーチ161が一対の内側支持部材151,151の間に突出するように、内側枠部150に設置されている。熱切断装置105は、強力な火炎で切断する公知の装置である。この従来機100では、その熱切断装置105が内側枠部150と一体に設けられている。熱切断装置105は、トーチ161、スライダー162などで構成されている。
【0069】
図4に示すように、一対の内側支持部材151,151の間を覆うように、これらの外側端面に内側カバープレート152が取り付けられている。内側カバープレート152の中央には、上下方向に延びる長孔152aが形成されていて、そこからトーチ161が突出している。
【0070】
内側カバープレート152の外面に、長孔152aに沿って延びるガイドレールおよびボールネジを含むスライダー162が設置されている。これらガイドレールおよびボールネジに、ガイドブロック162cが組みつけられている。内側枠部150の上部には、ボールネジを回転させるスライドモータ162dが設置されている。スライドモータ162dの駆動により、ガイドブロック162cは、制御された速度でガイドレールに沿ってスライドする。
【0071】
トーチ161は、長孔152aを通じてその先端側を一対の内側支持部材151,151の間に突出させた状態で、ガイドブロック162cに取り付けられている。
【0072】
トーチ161の基端部には、燃料ガスや酸素を供給するホースが接続されていて、トーチ161の先端からこれら燃料ガスおよび酸素が高速で噴射されるように、トーチ161は構成されている。トーチ161にはまた、図示しないが、自動着火装置が付設されている。トーチ161の先端から噴射される燃料ガスおよび酸素に着火することにより、トーチ161は強力な火炎を噴射する。
【0073】
火炎を噴射したトーチ161が、長孔152aの一端から他端まで移動すると、その火炎は、内側枠部150と外側枠部140との間を横切って、これらの下端部と上端部との間を移動する。その結果、図4に仮想線で示すように、内側枠部150と外側枠部140との間に配置された鉄骨SFは、火炎により、内側枠部150および外側枠部140が延びる方向に切断されていく。
【0074】
火炎は、鉄骨SFを貫通し、その後方に拡散する。鉄骨SFを切断した際に多量に発生するスラグ(ノロ)も、火炎とともに拡散する。従来機100では、その火炎を火炎受止器106が受け止める。
【0075】
火炎受止器106の内部には、水膜を形成する散水ノズル175が設けられている。両側の散水ノズル175から噴射される水が衝突することで、火炎受止器106の入口に水膜を形成する。
【0076】
(従来機による鉄骨梁の切断)
従来機100による鉄骨梁SFbの切断はクレーンを使用して行う。すなわち、クレーンに従来機100を吊した後、鉄骨梁SFbの切断箇所の上方に従来機100を移動させる。そして、従来機100を旋回させることによって従来機100の向きを調整した後、従来機100を降下させ、可動枠部130を鉄骨梁SFbの上に載せ置く。そうして、可動枠部130を縮ませることにより、外側枠部140および内側枠部150で鉄骨梁SFbを挟み込む。
【0077】
その後、熱切断装置105を作動させて、鉄骨梁SFbを切断する。切断が終われば、可動枠部130を伸ばして、従来機100を鉄骨梁SFbから離れさせてクレーンで吊り上げる。
【0078】
(従来機による鉄骨柱の切断)
従来機100による鉄骨梁SFbの切断はクレーンと解体機300の双方を使用して行う。すなわち、鉄骨梁SFbの解体と同様にクレーンを操作して、切断する鉄骨柱SFpの近傍に位置する鉄骨梁SFbに従来機100を載せ置く。ただし、このとき、把手180が外側に位置するように配置する。
【0079】
そうした状態で、解体機300を操作して把手180を把持する。
【0080】
その後、解体機300を操作することによって従来機100を横向きし、鉄骨柱SFpの切断箇所を外側枠部140および内側枠部150の間に入れ込んで、可動枠部130および外側枠部140の各々が鉄骨柱SFpに接するように押し付ける。
【0081】
そうした状態で、可動枠部130を縮ませ、従来機100を鉄骨柱SFpに取り付ける。そして、熱切断装置105を作動させ、鉄骨柱SFpを切断する。切断が終われば、可動枠部130を伸ばすとともに解体機300を操作して従来機100を鉄骨柱SFpから離れさせる。
【0082】
<改良機の構造>
改良機1の基本的な構成は、上述したように従来機100と同様である。従って、同じ構成の部材には同じ符号を用いてその説明は簡略化ないし省略する。
【0083】
図6図9に、改良機1を示す。図6は、クレーン200で吊した時の横臥姿勢の改良機1の全体を示す概略斜視図である。図7は、改良機1の本体部分を示す概略斜視図である。図8は、第2枠部50およびトーチケース60の内部構造を示す概略斜視図である。図9は、起立姿勢に操作した時の改良機1の全体を示す概略斜視図である。
【0084】
(付属部材)
図6に示すように、改良機1は、その本体部分(以下、装置本体1aともいう)をクレーン200に吊り下げて操作するために、付属部材として、吊り下げ具2および操作ワイヤ3を有している。吊り下げ具2は、横長な棒状の部材からなる。吊り下げ具2は、切断対象とされる鉄骨SFの横幅よりも長く形成されている。
【0085】
吊り下げ具2は、その上部における長手方向の中央部分に設けられた掛止ブラケット2aと、その両端部の各々に設けられた吊り部2bとを有している。各吊り部2bには、同じ吊りワイヤ4の一端が連結されている。これら吊りワイヤ4の他端は、装置本体1aに設けられた後述する2つの第1吊環11,11に連結されている。
【0086】
改良機1は、図1に示したように、クレーン200が有する2本のワイヤ(主巻ワイヤ204aおよび補巻ワイヤ204b)のうち、主巻ワイヤ204aに吊り下げて使用する。すなわち、掛止ブラケット2aに主巻ワイヤ204aのフック205を掛け止めることにより、吊り下げ具2を介して装置本体1aを吊り下げる。
【0087】
操作ワイヤ3の一端は、装置本体1aに設けられた後述する1つの第2吊環12に連結されている。操作ワイヤ3の他端は、フック205に掛け止めることによって補巻ワイヤ204bに連結される。操作ワイヤ3は、主に鉄骨梁SFbを切断する際に使用される。
【0088】
図6に示すように、改良機1(装置本体1a)は、クレーン200で吊り下げた時には、従来機100を横向きにしたような状態(横臥姿勢)になる。そして、操作ワイヤ3を引き上げ操作して縦向きにすることで、図9に示すように、改良機1(装置本体1a)は、従来機100のような状態(起立姿勢)になる。
【0089】
(装置本体)
装置本体1aは、従来機100の固定装置104に相当し、可動枠部30、第1枠部40、第2枠部50、トーチケース60などで構成されている。なお、以下の説明において、可動枠部30に対して、第1枠部40および第2枠部50が有る側を「作業側」といい、トーチケース60および後述する逆向き突出部72が有る側を「非作業側」ともいう。
【0090】
可動枠部30および第1枠部40は、従来機100の可動枠部130および外側枠部140の各々に相当する。すなわち、第1枠部40は、図6図7に示すように、一対の外側支持部材141,141、外側カバープレート142を有している。ただし、外側カバープレート142の外面に把手180は設けられていない。
【0091】
火炎受止器106、一対のスライドガイド131,131、スライドプレート132も、従来機100と同様に可動枠部30および第1枠部40に設けられている。改良機1の可動枠部30も、各外側支持部材141,141の横枠141b、一対のスライドガイド131,131、スライドプレート132などによって構成されている。各外側支持部材141,141の横枠141bの上側には、油圧シリンダ133が配置されている。
【0092】
それにより、可動枠部30は、鉄骨SFの横幅よりも長く延びるように、伸縮可能に構成されている。そして、その可動枠部30の両端部の各々から第1枠部40および第2枠部50の各々が、可動枠部30から直交する方向に平行して延びている。
【0093】
第1枠部40および第2枠部50は、相対的に接近または離間した状態に移動可能であり、鉄骨SFの切断時には、鉄骨SFを第1枠部40と第2枠部50とで挟持するように構成されている。
【0094】
第2枠部50は、従来機100の内側枠部150に相当する部分であり、図7図8に示すように、一対の内側支持部材151,151、プレート受部151a、内側カバープレート152を有している。第2枠部50にも、従来機100と同様に熱切断装置(改良型熱切断装置70)が設置されている。
【0095】
ただし、第2枠部50は、従来機100と異なり、第1枠部40よりも短く形成されている。具体的には、第2枠部50の可動枠部30からの突出量は、第1枠部40の可動枠部30からの突出量の半分以下(詳細には1/3程度)とされている。
【0096】
その分、改良機1には、可動枠部30から第2枠部50の逆方向に延びるトーチケース60が設けられている。トーチケース60は、第2枠部50に連続した構造物である。トーチケース60の内部にも、第2枠部50から引き続いて改良型熱切断装置70が設置されている。
【0097】
すなわち、第2枠部50は、改良型熱切断装置70の周囲を覆う断面がU形状ないしアーチ状のカバー51を有している。トーチケース60は、そのカバー51に連なって可動枠部30から逆方向に延びる延出カバー61と、図6図8に示すように、延出カバー61の開口部分を覆うサイドパネル62およびエンドパネル63とを有し、改良型熱切断装置70の周囲を覆う角柱状に形成されている。
【0098】
図8に示すように、内側カバープレート152における作業側の端部中央には、そこから第2枠部50に沿って切り欠いた切欠長孔52が形成されている。第2枠部50の作業側は開放されている。
【0099】
(改良型熱切断装置)
改良型熱切断装置70は、従来機100の熱切断装置105と同様に、トーチ161と、このトーチ161を移動させるトーチ移動機構71などで構成されている。ただし、改良型熱切断装置70は、従来機100の熱切断装置105と異なり、短くなった第2枠部50に対応するよう変更されている。
【0100】
図8に示すように、改良型熱切断装置70は、従来機100の熱切断装置105と同様に、トーチ161、スライダー162、ガイドブロック162c、スライドモータ162dなどで構成されている。スライダー162、ガイドブロック162c、スライドモータ162dは、トーチ移動機構71を構成しており、トーチ161を第2枠部50に沿って移動させる。
【0101】
ただし、改良型熱切断装置70のトーチ移動機構71は、第2枠部50に収容されていてトーチ161が移動する作用部位と、トーチケース60に収容されていてトーチ161が移動しない非作用部位とを有している。すなわち、トーチ移動機構71は、第2枠部50から突出して第2枠部50の逆方向、つまり非作業側に延びることによってトーチケース60に収容される逆向き突出部72を有し、この逆向き突出部72が非作用部位を構成している。
【0102】
そして、トーチ161は、ガイドブロック162cに支持アーム73を介して取り付けられている。具体的には、ガイドブロック162cには作業側に延びる支持アーム73が取り付けられていて、その突端部分にトーチ161が取り付けられている。
【0103】
図8に実線で示すように、ガイドブロック162cがスライダー162の非作業側の端部に位置する時には、トーチ161は、切欠長孔52の非作業側の端部に位置するとともに、火炎受止器106の非作業側の端部と対向する。そして、ガイドブロック162cが作業側に移動していくと、支持アーム73が第2枠部50から作業側に突出し、トーチ161は、第2枠部50から作業側にはみ出して移動するようになる。
【0104】
ガイドブロック162cがスライダー162の作業側の端部に位置する時には、図8に仮想線で示すように、トーチ161は、火炎受止器106の作業側の端部と対向する。それにより、第2枠部50が第1枠部40よりも短く形成されていても、トーチ161は、第1枠部40の長さに対応した範囲で移動可能とされている。
【0105】
改良機1も、従来機100と同様に、鉄骨SFの切断時には、第1枠部40と第2枠部50とで鉄骨SFを挟持し、火炎を噴射するトーチ161を移動させることによって鉄骨SFを切断する。
【0106】
図10に、鉄骨SFを切断する過程を例示する。まず、各散水ノズル175から水が噴射される。それにより、火炎受止器106に水膜が形成される。そうした状態で、トーチ161に燃料ガスおよび酸素が供給され、これらに着火することにより、図10の(a)に破線矢印A1で示すように、トーチ161は火炎を噴射するようになる。
【0107】
火炎を噴射するトーチ161がスライドすることで、鉄骨SFは切断されていく。このとき、鉄骨SFを貫通した火炎や、火炎と共に吹き飛ぶスラグは火炎受止器106に向かう。火炎およびスラグの温度は、水膜を通過することによって急激に低下する。
【0108】
その結果、火炎は勢いが弱められて拡散が防止され、スラグは冷却される。従って、改良機1によれば、防火幕の設置などの事前の対策は不要である。
【0109】
そうして、図10の(b)に示すように、火炎を噴射するトーチ161は、第2枠部50からはみ出し、火炎受止器106の作業側の端部に達するまで移動する。それにより、第2枠部50が第1枠部40より短くても、鉄骨SFを完全に切断することができる。
【0110】
(第1吊環、第2吊環)
この改良機1には、図6図7図9に示すように、2つの第1吊環11,11と1つの第2吊環12とが設けられていて、これら第1吊環11,11および第2吊環12は、可動枠部30に設置されている。
【0111】
図7に示すように、第1吊環11には、上述したように2本の吊りワイヤ4がそれぞれ連結されることから、これらの間隔に対応して、可動枠部30の長手方向に離れた2箇所に1つずつ設置されている。具体的には、2つの第1吊環11,11は、一方の外側支持部材141の横枠141bに設置されており、第1枠部40および第2枠部50が延びる方向と直交しているその横枠141bの側面に配置されている。
【0112】
そして、装置本体1aは、これら第1吊環11,11を介して2本の吊りワイヤ4,4で吊り下げた時に、横臥姿勢になるように構成されている。すなわち、装置本体1aは、可動枠部30を支点に、第1枠部40および第2枠部50が有る作業側と、トーチケース60および逆向き突出部72が有る非作業側との間で力のモーメントがつりあうように重量バランスが調整されている。
【0113】
具体的には、トーチケース60の突端部分に、その重量バランスを調整するウエイト13(錘)が取り付けられている。このウエイト13により、装置本体1aを2本の吊りワイヤ4,4に吊り下げた時、装置本体1aは、第1枠部40および第2枠部50が延びる方向が略水平となる横臥姿勢となるように調整されている。
【0114】
なお、装置本体1aの各部材だけで重量バランスが調整できれば、ウエイト13は取り付けなくてもよい。また、図6ではサイドパネル62にウエイト13を取り付けているが、これに限られず、カバー51(延出カバー61)やエンドパネル63にウエイト13を取り付けてもよい。ウエイト13の取付場所も一箇所に限らず、複数箇所であってもよい。
【0115】
図6図9に示すように、第2吊環12には、上述したように1本の操作ワイヤ3が連結されることから、第2吊環12は、第1吊環11から可動枠部30の短手方向に離れた箇所に設置されている。具体的には、第2吊環12は、第1吊環11の無い他方の外側支持部材141の横枠141bに設置されており、その横枠141bの長手方向における略中央部位に配置されている。
【0116】
第2吊環12はまた、ブラケット14を介して可動枠部30から非作業側に離れた位置に設置されている。可動枠部30の非作業側には、油圧シリンダ133などの付属設備が設置されている。第2吊環12を、これら付属設備よりも非作業側に位置させることで、装置本体1aが横臥姿勢の時に、操作ワイヤ3を引っ張っても、操作ワイヤ3がこれら付属設備に干渉することが無い。
【0117】
従って、操作ワイヤ3を支障なく操作することができる。操作ワイヤ3を引き上げることにより、装置本体1aは、可動枠部30(詳細には第1吊環11による支持部位)を支点に回動し、図9に示すように、第1枠部40および第2枠部50が下方に向くとともにこれら40,50の延びる方向が略垂直となる起立姿勢にできる。
【0118】
改良機1の場合、吊りワイヤ4で吊り下げることで、鉄骨柱SFpの切断が可能になる横臥姿勢となり、操作ワイヤ3で操作することで、鉄骨梁SFbの切断が可能になる起立姿勢となる。従って、クレーン200を使用するだけで鉄骨梁SFbおよび鉄骨柱SFpの双方を切断できる。
【0119】
図1に示したような高層ビルHBの解体時には、その鉄骨構造物SSを解体する作業が必要になる。その際、改良機1の場合、1台のクレーン200で鉄骨柱SFpおよび鉄骨梁SFbの双方を容易に切断できる。
【0120】
すなわち、改良機1をクレーン200に吊り下げる吊るし工程と、起立姿勢にした装置本体1aを水平方向に延びる鉄骨梁SFbに載せ置いた状態で鉄骨梁SFbを切断する梁切断工程と、横臥姿勢にした装置本体1aに鉛直方向に延びる鉄骨柱SFpを受け入れた状態で鉄骨柱SFpを切断する柱切断工程とを含む鉄骨切断方法によって鉄骨SFを切断すればよい。
【0121】
次に、その鉄骨切断方法について具体的に説明する。最初は、図1に示すように、解体現場にて、改良機1をクレーン200で吊り下げる(吊るし工程)。すなわち、操作ワイヤ3に補巻ワイヤ204bを連結した状態で、主巻ワイヤ204aで吊り下げ具2を引き上げて装置本体1aを吊り下げる。
【0122】
そうすれば、重量バランスが調整されているので、装置本体1aは、図6に示すように、鉄骨柱SFpの切断が可能な横臥姿勢になる。
【0123】
(改良機による鉄骨柱の切断)
図11に、改良機1による鉄骨柱SFpの切断過程を例示する。図11の(a)に示すように、作業側、つまり第1枠部40および第2枠部50の有る側が、切断対象とされる鉄骨柱SFpに向くように、クレーン200で装置本体1aの向きを調整しながら装置本体1aをその鉄骨柱SFpに側方から近づける。
【0124】
このとき、第1枠部40よりも第2枠部50の方が短くされていて、第1枠部40の突端に対して第2枠部50の突端の位置が相対的に基端側にずれているので、これらの突端の先方からだけでなく、第2枠部50の側方からも第2枠部50の突端の下方を通じて鉄骨柱SFpを受け入れることが可能になる。
【0125】
すなわち、図11において符号rで示す範囲で、鉄骨柱SFpを第1枠部40と第2枠部50の間に受け入れることができる。従来機100よりも広い範囲で鉄骨柱SFpを受け入れることができる。従って、図11の(b)に示すように、クレーン200であっても容易に装置本体1aを鉄骨柱SFpに取り付けることができる。
【0126】
鉄骨柱SFpが第1枠部40に接触した後は、装置本体1aを鉄骨柱SFpに更に近づけるだけで、図11の(c)に示すように、第1枠部40と第2枠部50との間に鉄骨柱SFpを円滑に入れ込むことができる。このとき、一対の吊りワイヤ4,4の間隔は、鉄骨SFの横幅よりも大きいので、鉄骨柱SFpに鉄骨梁SFbの一部が残存していても、鉄骨梁SFbと吊りワイヤ4とが接触するのを回避できる。
【0127】
その後は、可動枠部30を操作して第1枠部40と第2枠部50とで鉄骨柱SFpを挟持し、図10に示したように、改良型熱切断装置70を作動させれば、鉄骨柱SFpを切断できる。
【0128】
(改良機による鉄骨梁の切断)
図12に、改良機1による鉄骨柱SFpの切断過程を例示する。図12の(d)および(e)に示すように、主巻ワイヤ204aによってクレーン200で吊り下げた状態から、クレーン200を操作し、操作ワイヤ3を引き上げる。それにより、装置本体1aを回動させて起立姿勢にする(姿勢変更工程に相当)。
【0129】
このとき、作業側と非作業側とで力のモーメントがつりあうように装置本体1aの重量バランスが調整されているので、可動枠部30を支点に、容易かつ円滑に装置本体1aを回動させることができる。
【0130】
そうして、作業側、つまり第1枠部40および第2枠部50の有る側が、切断対象とされる鉄骨梁SFbに向くように、クレーン200で装置本体1aの向きを調整しながら装置本体1aをその鉄骨柱SFpに上方から近づける。
【0131】
このとき、第2枠部50は第1枠部40よりも短いので、鉄骨柱SFpの時と同様に、鉄骨梁SFbを第1枠部40と第2枠部50の間に広い範囲で受け入れることができる。従って、クレーン200であっても容易に装置本体1aを鉄骨梁SFbに取り付けることができる。
【0132】
鉄骨梁SFbが第1枠部40に接触した後は、装置本体1aを更に下ろすだけで、図12の(f)に示すように、第1枠部40と第2枠部50との間に鉄骨梁SFbを円滑に入れ込むことができる。更に装置本体1aを下ろせば、図12の(g)に示すように、鉄骨梁SFbの上に装置本体1aを載せ置くことができる。
【0133】
その後は、可動枠部30を操作して第1枠部40と第2枠部50とで鉄骨梁SFbを挟持し、図10に示したように、改良型熱切断装置70を作動させれば、鉄骨梁SFbを切断できる。
【0134】
このように、改良機1によれば、従来機100と異なり、クレーン200を使用するだけで、鉄骨柱SFに容易に取り付けることができ、鉄骨梁SFbおよび鉄骨柱SFpの双方を容易に切断できる。従って、利便性に優れる。
【0135】
なお、開示する技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0136】
例えば、使用するクレーンは、通常の移動式クレーンに加えて、クレーン機能を有するショベルや、工場内に設けられた天井クレーンなどでもよい。主巻および補巻を有するクレーンであれば1台で十分であるが、主巻しかないクレーンの場合、2台のクレーンを使ってもよい。
【0137】
熱切断装置は、特許文献1の切断装置のように、可動する可動枠部30に沿って移動するように構成してもよい。装置本体1aは、吊り下げ具2を用いて2点で吊り下げるのが好ましいが、吊り下げ具2を用いずに主巻ワイヤ204aで吊り下げてもよい。また、操作ワイヤ3も1本でなく吊りワイヤ4と同様に2本にしてもよい。
【0138】
吊りワイヤ4で吊り下げた時に装置本体1aは横臥姿勢でなく起立姿勢になるように構成し、操作ワイヤ3を操作することで横臥姿勢になるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1 カッターマシン(改良機)
1a 装置本体
2 吊り下げ具
3 操作ワイヤ
4 吊りワイヤ
11 第1吊環
12 第2吊環
13 ウエイト
14 ブラケット
30 可動枠部
40 第1枠部
50 第2枠部
51 カバー
52 切欠長孔
60 トーチケース
61 延出カバー
62 サイドパネル
63 エンドパネル
70 改良型熱切断装置
71 トーチ移動機構
72 逆向き突出部
73 支持アーム
100 カッターマシン(従来機)
101 支持ワイヤ
103 連結具
104 固定装置
105 熱切断装置
106 火炎受止器
130 可動枠部
131 スライドガイド
132 スライドプレート
133 油圧シリンダ
140 外側枠部
141 外側支持部材
141a 縦枠
141b 横枠
142 外側カバープレート
150 内側枠部
151 内側支持部材
152 内側カバープレート
161 トーチ
162 スライダー
162c ガイドブロック
162d スライドモータ
175 散水ノズル
200 クレーン
204a 主巻ワイヤ(第1ワイヤ)
204b 補巻ワイヤ(第2ワイヤ)
HB 高層ビル(建造物)
SS 鉄骨構造物
SF 鉄骨
SFp 鉄骨柱
SFb 鉄骨梁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12