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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079925
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】繊維ボード
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/02 20060101AFI20240606BHJP
   D04H 1/4382 20120101ALI20240606BHJP
   D04H 1/55 20120101ALI20240606BHJP
   D04H 1/544 20120101ALI20240606BHJP
   B27N 3/04 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B32B5/02 A
D04H1/4382
D04H1/55
D04H1/544
B27N3/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192618
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山上 利昭
(72)【発明者】
【氏名】小島 英揮
(72)【発明者】
【氏名】田邊 誠一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰雄
【テーマコード(参考)】
2B260
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
2B260AA03
2B260BA19
2B260CB01
2B260CB04
2B260CD04
4F100AJ04A
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG00A
4F100JB16A
4F100JB16B
4L047AA13
4L047AA14
4L047AA19
4L047AA21
4L047AA28
4L047AB02
4L047BA09
4L047BB01
4L047BB02
4L047BB09
4L047CA06
(57)【要約】
【課題】繊維ボードの強度を十分に得られないおそれがある。
【解決手段】布や糸を解繊して得た第1繊維、及び、熱可塑性を有する第2繊維を堆積させて成形した繊維構造体と、フィルム状の表面シートと、を含んで構成される繊維ボードであって、第2繊維、及び、表面シートは、同じ熱可塑性成分を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布や糸を解繊して得た第1繊維、及び、熱可塑性を有する第2繊維を堆積させて成形した繊維構造体と、
フィルム状の表面シートと、を含んで構成される繊維ボードであって、
前記2繊維、及び、前記表面シートは、同じ熱可塑性成分を含む、繊維ボード。
【請求項2】
前記第1繊維の長尺方向の長さは、1mm以上、20mm以下である、請求項1に記載の繊維ボード。
【請求項3】
前記第2繊維の長尺方向の長さは、1mm以上、20mm以下である、請求項1に記載の繊維ボード。
【請求項4】
前記熱可塑性成分はポリエチレンである、請求項1に記載の繊維ボード。
【請求項5】
前記熱可塑性成分はPETである、請求項1に記載の繊維ボード。
【請求項6】
前記熱可塑性成分はポリプロピレンである、請求項1に記載の繊維ボード。
【請求項7】
前記表面シートの厚みは、50μm以上、400μm以下である、請求項1に記載の繊維ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、繊維と樹脂とを混合後にプレスして成形した繊維ボードに非透水性のフィルムで真空状に被覆した防湿の繊維ボードが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-23773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の繊維ボードは、繊維、樹脂、フィルム等の条件について考慮されておらず、非透水性フィルムとの十分な接着強度を得られないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
布や糸を解繊して得た第1繊維、及び、熱可塑性を有する第2繊維を堆積させて成形した繊維構造体と、フィルム状の表面シートと、を含んで構成される繊維ボードであって、前記2繊維、及び、前記表面シートは、同じ熱可塑性成分を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】繊維ボード製造装置の構成を示す模式図。
図2】積層される表面シート、及び、第2繊維構造体を示す断面図。
図3】繊維ボードを示す断面図。
図4】加熱加圧部の構成の一例を示す模式図。
図5】加熱加圧部の構成の他の例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.繊維ボードの構成
以下、実施形態に係る繊維ボードS4の構成について、図1図5を参照しながら、繊維ボード製造装置1による繊維ボードS4の製造を通じて説明していく。なお、図中における方向を、三次元座標系を用いて説明する。説明の便宜上、Z軸の正方向を上方向、上方、又は単に上と称し、負方向を下方向、下方、又は単に下と称し、Y軸の正方向を右方向、右方、又は単に右と称し、負方向を左方向、左方、又は単に左と称し、X軸の正方向を前方向、前方、又は単に前と称し、負方向を後方向、後方、又は単に後と称して説明する。
なお、以下では、繊維ボード製造装置1を、単に製造装置1と称することとする。
【0008】
図1に示すように、製造装置1は、原料OPから繊維ボードS4を成形していく順に配置される、原料供給部5、粗砕部10、解繊部30、第2繊維ホッパー13、堆積部100、形状維持シート供給ローラー81、形状維持シート搬送部120、バッファー部140、第1熱融着部150、第1冷却部180、第1切断部160、積層部130、搬送部133、第2熱融着部153、第2冷却部181、第2切断部161を含んで構成される。
【0009】
さらに、製造装置1は制御部200を備える。制御部200は、製造装置1の各部を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)、入出力を管理するUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、論理回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)、記憶部などを含んで構成されている。CPUはプロセッサーともいう。
記憶部は、書き換え可能な不揮発性メモリーであるフラッシュROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)、揮発性メモリーであるRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されている。
制御部200のCPUは、記憶部の不揮発性メモリーに記憶されたファームウェアなどのプログラムを読み出し、記憶部の揮発性メモリーを作業領域として用いて、各種の処理を実行する。
【0010】
図1に示すように、原料供給部5は、粗砕部10に原料OPを供給する。この原料OPは、例えば、綿や絹などの天然繊維、ポリエステルやナイロンなどの化学繊維、パルプや古紙等を含む。また、原料OPは、木材や竹などを細かくした繊維、炭素繊維などを含んでいてもよい。本実施形態では、原料OPは、使用済み又は不要となった布を例として説明する。
【0011】
原料供給部5により、原料OPが粗砕部10へ供給される。粗砕部10は、原料供給部5から供給された原料OPを粗砕する。粗砕部10は、例えば布裁断機で構成される。
粗砕部10は一対の粗砕刃11を有する。一対の表面にある粗砕刃11は、相対的に反対方向に移動することにより、これらの間で原料OPを粗砕して粗砕片にすることができる。なお、一対の粗砕刃11のうち、一方が固定されていてもよい。粗砕部10により粗砕された粗砕片の形状や大きさは、次の解繊部30における解繊に適するように、例えば、1辺の長さが100mm以下の小片であるのが好ましく、70mm以下の小片であるのがより好ましい。なお、粗砕部10が布裁断機の場合、粗砕片として、裁断された裁断片が形成される。
【0012】
定量供給機50は、粗砕片を一定量ずつ解繊部30へ供給可能である。具体的には、定量供給機50は、一定量の粗砕片を粗砕片ホッパー12へ投入し、粗砕片導入管20を経て解繊部30へ供給する。
定量供給機50は、例えば、振動フィーダーにより粗砕片を連続的に供給するように構成してもよく、フレキシブルコンテナバッグに粗砕片を一定量貯めてから供給するように構成してもよい。
【0013】
粗砕片導入管20は解繊部30の供給口31に連通している。解繊部30は、回転刃を有して回転するローター34、固定刃を有するステーター33を有する。供給口31から解繊部30へ供給された粗砕片は、回転するローター34の回転刃、及び、ステーター33の固定刃の間で解繊され、第1繊維DFとなる。
ここで、「解繊する」とは、複数の繊維が集合されてなる解繊対象物、すなわち粗砕片を、糸1本1本に、さらには繊維1本1本に、又は数本単位に、綿状に解きほぐすことをいう。そして、この解きほぐされたものが第1繊維DFである。第1繊維DFの形状は、必ずしもすべてが綿状でなくてもよく、糸状や帯状のものが混ざっていてもよい。
なお、解繊部30により解繊された第1繊維DFの長尺方向の長さは、1mm以上、20mm以下の範囲であることが好ましい。なお、以下では、第1繊維DFの長尺方向の長さを、単に第1繊維DFの長さと称する。
【0014】
解繊された第1繊維DFは、回転するローター34が発生する気流により、解繊部30の外周へ移動していき、排出口32から排出される。さらに、第1繊維DFは、この気流に乗って排出口32から第1繊維搬送管40へと排出される。なお、解繊部30は、別途、気流発生機構を備えて気流を発生させ、第1繊維DFを強制的に移動させるようにしてもよい。
解繊部30から排出された第1繊維DFは、第1繊維搬送管40及び搬送管60を通過し、堆積部100へ供給される。第1繊維DFが搬送管60を通過する際、第2繊維搬送管61から第2繊維N1が混入される。以下では、第2繊維N1が混入された第1繊維DFを、混合繊維DF1と称する。
【0015】
第2繊維N1は、熱可塑性を有する第1熱可塑性成分を含むものであり、いわゆる溶融材料である。第1熱可塑性成分は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの各種ポリオレフィン、PET(Polyethylene terephthalate)等のポリエステル、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、EVA(Ethylen-Vinyl Acetate)、PLA(Poly Lactic Acid)等の熱可塑性樹脂、各種熱可塑性エラストマー等の少なくともいずれかを含む。また、第1繊維DF中に同様の成分がある場合は、代用することができる。
なお、第1熱可塑性成分は、200℃以下で溶融又は軟化するものが好ましい。200℃を越えると、混合繊維DF1に含まれる第1繊維DFが焦げたり、燃えたりするなど、劣化するおそれがあるからである。
【0016】
第2繊維N1の形状は、繊維状であることが好ましい。第2繊維N1の長尺方向の長さは、1mm以上、20mm以下の範囲であることが好ましい。なお、以下では、第2繊維N1の長尺方向の長さを、単に第2繊維N1の長さと称する。
第2繊維N1の長さが1mm未満の場合には、粉状に近くなるため、脱落しやすく、後述するフォーミング時の表裏差になりやすい。この結果、第2繊維構造体S2の表面側の第2繊維N1が少なくなり、表面シートHとの結着力が弱くなる。一方、第2繊維N1の長さが20mmを越える場合には、糸毬となり易く、第2繊維構造体S2内でムラが発生し易くなり、また、相対的に第2繊維N1の端点が少なくなるので表面シートHとの結着力が弱くなるおそれがある。
第2繊維N1の長さを1mm以上、20mm以下の範囲とすることにより、糸毬や第2繊維構造体S2内でのムラの発生を抑制することができ、製造される繊維ボードS4の表面シートHと繊維ボードS2との接着強度を強くすることができる。
【0017】
また、第2繊維N1の長さ、及び、第1繊維DFの長さは、それぞれ同程度の長さとすることが好ましい。
第2繊維N1の長さと、第1繊維DFの長さとの差が大きい場合、後述の堆積部100により落下して堆積される際、第2繊維N1、及び、第1繊維DFの降積速度に差が発生し易い。この結果、製造される繊維ボードS4の表裏の成分の差や繊維ボードS4内でのムラなどが発生し易くなり、繊維ボードS4の強度が弱くなるおそれがある。
第2繊維N1の長さと第1繊維DFの長さとを同程度の長さとすることにより、堆積部100による降積速度を同程度にすることができる。この結果、製造される繊維ボードS4の表裏の成分の差や繊維ボードS4内でのムラの発生を抑制することができ、繊維ボードS4の強度を強くすることができる。
【0018】
第2繊維N1は、第2繊維ホッパー13に投入される。第2繊維N1は、第2繊維ホッパー13から第2繊維搬送管61を経て、搬送管60へ供給される。
このとき、第2繊維N1は、調整バルブ65によって、搬送管60へ供給される量が調整される。また、第2繊維搬送管61の管径は搬送管60の管径より小さくすることが好ましい。第2繊維N1が搬送管60へ供給される際、第1繊維DF中に分散し易くなるからである。
第1繊維DFは、第2繊維搬送管61から第2繊維N1が混入され、混合繊維DF1となり、搬送管60を経て、堆積部100へ供給される。
【0019】
堆積部100は、混合繊維DF1を空気中で分散させる分散機構と堆積機構である、回転可能なフォーミングドラム101を含んで構成される。
回転するフォーミングドラム101内に、混合繊維DF1、及び、空気が供給され、撹拌される。フォーミングドラム101の表面には小孔スクリーンが設けられており、混合繊維DF1が所定量ずつ空気とともに吐出されるようになっている。小孔スクリーンの孔の形状は、混合繊維DF1のサイズにも関係して設定され、円形でもよいが、5mm×25mm程度の長孔が生産性と均一性とを両立でき、好ましいサイズとなる。
フォーミングドラム101は、さらに混合繊維DF1を撹拌しながら、より均一化しつつ、表面の小孔スクリーンから通過させる。フォーミングドラム101の小孔スクリーンを通過した混合繊維DF1は、空気中に分散しながら、後述のメッシュベルト122上の形状維持シートRへ向かって落下し、空気と分離されながら堆積していく。
【0020】
製造装置1の後方に位置する形状維持シート供給ローラー81からは、長尺状の形状維持シートRが堆積部100に供給される。形状維持シートRは、堆積部100で成形される繊維状ウエブである第1繊維構造体S1の底面を構成する土台部分となる。
形状維持シートRは、第1繊維構造体S1を支持して形状を維持させることができるシートであり、例えば不織布である。なお、形状維持シートRは、通気性があるシートであれば、織布や紙であってもよい。
【0021】
フォーミングドラム101の下方には、形状維持シートRを前方へ搬送する形状維持シート搬送部120が配置される。形状維持シート搬送部120は、複数の張架ローラー121にメッシュベルト122が張架されて構成される。メッシュベルト122は、メッシュが形成されている無端状のベルトである。張架ローラー121が時計回りに回転することに伴い、メッシュベルト122も時計回りに周回する。
なお、メッシュベルト122は、金属製でも、樹脂製でもよい。メッシュの穴径は60μm~125μm程度が好ましい。
堆積部100のフォーミングドラム101から分散しながら落下する混合繊維DF1は、メッシュベルト122により搬送されている形状維持シートR上に堆積する。なお、フォーミングドラム101の下に整流板(不図示)を設置することにより、落下する混合繊維DF1の左右方向である幅方向の範囲を調整することができる。
【0022】
堆積部100は、下方へ向かう気流を発生可能なサクション装置110を含んで構成される。サクション装置110は、形状維持シートRを載置するメッシュベルト122の下方に位置する。サクション装置110は、分離された空気を吸引しその気流でメッシュベルト122を介して、形状維持シートRに混合繊維DF1をウエブ状に吸着させることができる。
【0023】
なお、サクション装置110により吸引する気体量である気体容量を、落下する混合繊維DF1を含む気体量である気体容量より大きくすることにより、製造装置1外への混合繊維DF1の吹き出しを抑制することができる。
サクション装置110が吸引する気体には、形状維持シートR及びメッシュベルト122を通過した原料中の微粉が混じっているので、排気側にサイクロンや、フィルター集塵機を設置して、微粉を分離し除去することが好ましい。
また、メッシュベルト122は、移動しながら、クリーニングブレード123によって擦られて、表面の汚れ等が除去される。
【0024】
堆積部100により、シート状の第1繊維構造体S1が成形される。第1繊維構造体S1は、形状維持シートR上に混合繊維DF1を所定の厚さに堆積した繊維状ウエブである。
なお、堆積部100による混合繊維DF1の堆積量、メッシュベルト122の搬送速度、及び、第1熱融着部150による加熱加圧の条件に基づき、後述の第2繊維構造体S2の密度が決定される。例えば、10mm厚の密度0.1g/cm3~0.15g/cm3程度の第2繊維構造体S2を得るときには、堆積部100は、約40mm~60mm程度、混合繊維DF1を堆積させることが好ましい。
【0025】
第1繊維構造体S1は、バッファー部140を経て、第1熱融着部150へ搬送される。
バッファー部140は、上下に移動可能な架橋ローラーである、いわゆるダンサーローラーを有している。バッファー部140は、ダンサーローラーを上下させることにより、第1熱融着部150へ搬送する第1繊維構造体S1の搬送量を調整することができる。
【0026】
第1熱融着部150は、上方に第1加熱加圧部151、下方に第2加熱加圧部152を備える。
第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152は、少なくともいずれかが昇降可能に構成され、それらの間に第1繊維構造体S1を挟んで加圧、及び、離反して開放することができる。
【0027】
制御部200の制御の下、第1熱融着部150は、第1繊維構造体S1を、第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152で挟み、所定の条件で加熱加圧し、第2繊維N1を融着させ、第2繊維構造体S2を成形することができる。
その後、開放された状態のとき、成形された第2繊維構造体S2が取り出され、次に成形される第1繊維構造体S1が、第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152の間に搬送される。
【0028】
なお、第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152は、0.01MPa~30MPaの圧力で、第1繊維構造体S1を加圧することが好ましい。
第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152は、それぞれヒーターを有する。第1繊維構造体S1を加圧しているとき、第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152は、各ヒーターにより、第1繊維構造体S1を所定時間、加熱することができる。
第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152の各ヒーターにより、第1繊維構造体S1を加熱する温度は、上述のように、第1繊維DFの劣化を抑制するために200℃以下にすることが好ましい。
【0029】
第1繊維構造体S1には、第2繊維N1が分散して含まれている。第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152の各ヒーターは、第2繊維N1が溶融又は軟化する温度以上で、加圧された第1繊維構造体S1を所定時間、加熱加圧する。溶融又は軟化した第2繊維N1は、第1繊維構造体S1内の第1繊維DFの間に滲み出し、第1繊維構造体S1を融着する。
【0030】
第1熱融着部150は、第1繊維構造体S1を加圧しつつ加熱するので、第2繊維N1が溶融又は軟化しても、第1繊維構造体S1の変形を抑制することができ、又は、再成形することができる。
第1熱融着部150により加熱加圧された第1繊維構造体S1を、第2繊維構造体S2と称する。なお、第1熱融着部150は、第1繊維構造体S1を同時に加熱及び加圧しなくてもよく、加熱後、加圧してもよい。
【0031】
バッファー部140は、第1熱融着部150が第1繊維構造体S1を加熱加圧する際、第1繊維構造体S1の搬送を停止するように調整する。
加熱加圧された後、第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152から開放された第2繊維構造体S2は、バッファー部140により、第1冷却部180へ搬送される。
【0032】
第1冷却部180は、下方へ向いた気流発生装置を有し、第2繊維構造体S2へ向かって室温の外気もしくは冷却された気流を発生可能である。第1冷却部180は、加熱加圧された第2繊維構造体S2に気流を当てて冷却する、いわゆる強制冷却することが可能である。第1冷却部180は、第2繊維N1が溶融又は軟化する温度より低くなるように、第2繊維構造体S2を冷却する。
【0033】
第1冷却部180により冷却されるとき、第2繊維構造体S2内の第1繊維DFの繊維の間に入り込んだ第2繊維N1が硬化する。第2繊維N1が硬化するとき、第2繊維構造体S2内の第1繊維DFと共に一体化して強固に硬化することができる。
なお、第2繊維構造体S2の強制冷却は、第1冷却部180のように、ファンより単に空気を送風する他、冷却装置を用いて冷却した空気を送風するようにしてもよい。例えば、熱交換機、電磁式冷却器、加湿式空気冷却器の少なくともいずれかを用いて冷却した空気を送風し、第2繊維構造体S2を強制冷却してもよい。
また、製造装置1は、第1冷却部180を備えず、加熱加圧された第2繊維構造体S2を、外気中に放置するいわゆる自然冷却するようにしてもよい。
【0034】
第1冷却部180により冷却され、硬化された第2繊維構造体S2は、第1切断部160により、所定の大きさに切断される。第1切断部160は、後述の表面シートHの大きさに合わせて、第2繊維構造体S2を切断することが好ましい。
第1切断部160は、例えば、超音波カッターである。第1切断部160は、固定刃及び移動刃で構成されるカッターでもよい。また、第1切断部160は、例えば、ロータリーカッターでもよい。
第1切断部160により切断されたカットシート状の第2繊維構造体S2は、積層部130が備える第2繊維構造体用トレイ(不図示)に載置される。
【0035】
なお、剥離バー及び巻取部を有する剥離部(不図示)を備え、第2繊維N1が硬化する前に、剥離バーにより第2繊維構造体S2から形状維持シートRを剥離し、巻取部で巻き取るようにしてもよい。第2繊維構造体S2に含まれる形状維持シートRが不要の場合には、剥離部により、形状維持シートRを除去することができる。
【0036】
積層部130は、第2カットシートフィーダー132を備える。第2カットシートフィーダー132は、切断されたカットシート状の第2繊維構造体S2を、第2繊維構造体用トレイから、1枚ずつ、搬送部133へ送り出すことができる。
また、積層部130は、第1カットシートフィーダー131を備える。さらに、積層部130は、熱可塑性を有する第2熱可塑性成分N2を含むカットシート状の表面シートHを載置する表面シートH用トレイ(不図示)を備える。第1カットシートフィーダー131は、表面シートH用トレイから、カットシート状の表面シートHを、1枚ずつ、搬送部133へ送り出すことができる。
第2カットシートフィーダー132、及び、第1カットシートフィーダー131は、例えば、ゴムローラーなどによるフリクションフィード方式により、第2繊維構造体S2及び表面シートHを、1枚ずつ、送り出すことができる。
【0037】
表面シートHは、熱可塑性を有する第2熱可塑性成分N2を含む。第2熱可塑性成分N2は、上述の第2繊維N1に含まれる第1熱可塑性成分と同様、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、EVA、PETなどの各種ポリオレフィン、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、PLA等の熱可塑性樹脂、各種熱可塑性エラストマー等の少なくともいずれかを含む。
【0038】
第2熱可塑性成分N2は、上述の第1熱可塑性成分と同様、200℃以下で溶融又は軟化するものが好ましい。
表面シートHは薄いフィルム状の形状をしている。表面シートHの厚さは、第2繊維構造体S2に対し全面で接着でき、また防水できるよう穴が開かないようにする一方、第2構造体S2との熱収収縮差による変形を抑制するために、50μm以上、400μm以下の範囲とすることが好ましい。
なお、表面シートHは、印刷や着色されていてもよく、白色、透明などでもよい。
【0039】
積層部130の第1カットシートフィーダー131は、第2カットシートフィーダー132の上方に位置している。制御部200の制御の下、第1カットシートフィーダー131から送り出された表面シートHは、第2カットシートフィーダー132から送り出された第2繊維構造体S2に対し、位置を合わせて上方に積層される。表面シートHが積層された第2繊維構造体S2を、表面シート付き繊維構造体S3と称する。
図2に示すように、第2熱可塑性成分N2を含む表面シートHは、硬化された第2繊維N1を内部に含む第2繊維構造体S2の上に積層され、表面シート付き繊維構造体S3を成形する。
【0040】
なお、上述の例では、積層部130は、表面シートHを第2繊維構造体S2の一方の面である上面に積層させた。積層部130は、さらに、表面シートHを第2繊維構造体S2の他方の面である下面にも積層させるように、表面シートH用のトレイ及びカットシートフィーダーなどを別途備えて構成してもよい。
【0041】
搬送部133は、複数の張架ローラー134にベルト135が張架されて構成される。ベルト135は無端状のベルトである。張架ローラー134が時計回りに回転することに伴い、ベルト135も時計回りに周回する。
搬送部133は、ベルト135上に載置された表面シート付き繊維構造体S3を、第2熱融着部153へ搬送する。
【0042】
第2熱融着部153は、上方に第3加熱加圧部154、下方に第4加熱加圧部155を備える。なお、第2熱融着部153は、第1熱融着部150と同様の構成であってもよい。
第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155は、少なくともいずれかが昇降可能に構成され、それらの間に表面シート付き繊維構造体S3を挟んで加圧、又は、離反して開放することができる。
【0043】
制御部200の制御の下、第2熱融着部153は、表面シートHが第2繊維構造体S2に積層された表面シート付き繊維構造体S3を、第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155で挟み、所定の条件で加熱加圧し、第2熱可塑性成分N2を融着させ、繊維ボードS4を成形することができる。このとき、第2熱融着部153は、第2繊維構造体S2に含まれる第2繊維N1を、再度融着させることもできる。
その後、開放された状態のとき、成形された繊維ボードS4が取り出され、次に成形される表面シート付き繊維構造体S3が、第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155の間に搬送される。
【0044】
なお、第2熱融着部153の第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155は、0.01MPa~30MPaの圧力で、表面シート付き繊維構造体S3を加圧することが好ましい。
第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155は、それぞれヒーターを有する。表面シート付き繊維構造体S3を加圧しているとき、第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155は、各ヒーターにより、表面シート付き繊維構造体S3を加熱することができる。
【0045】
第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155の各ヒーターにより、表面シート付き繊維構造体S3を加熱する温度は、上述のように、含まれている第1繊維DFの劣化を抑制するために200℃以下が好ましい。
第2熱融着部153の加熱加圧における加熱温度は、第2繊維N1、及び、第2熱可塑性成分N2がともに軟化、溶融する温度とすることもできる。
【0046】
表面シート付き繊維構造体S3には、積層された表面シートH内に第2熱可塑性成分N2が含まれている。第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155の各ヒーターは、第2熱可塑性成分N2が溶融又は軟化する温度以上で、加圧された表面シート付き繊維構造体S3を加熱する。表面シート付き繊維構造体S3内において、溶融又は軟化した第1熱可塑性成分N1は、表面シートHの第2熱可塑性成分N2と一体化し、融着する。
このように、第2熱融着部153は、積層された表面シートH、及び、第2繊維構造体S2を含む表面シート付き繊維構造体S3を融着させる。
【0047】
また、このとき、第2熱融着部153が、第2熱可塑性成分N2に加え、積層された第2繊維構造体S2に含まれる第2繊維N1も溶融又は軟化する温度以上で加熱した場合、再度、溶融又は軟化した第2繊維N1は、第2繊維構造体S2内の第1繊維DFの間に滲み出し、融着することができる。このように、第2熱融着部153は、第2熱可塑性成分N2に加え、積層された第2繊維構造体S2の内部の第2繊維N1も含めて、表面シート付き繊維構造体S3をより強固に融着させることができる。
【0048】
第2熱融着部153により、第2熱可塑性成分N2に加えて、再度、第2繊維N1も融着させることができると、接着強度をより強くすることができる。
なお、第2繊維N1は繊維形状をしているため、繊維形状の端部が、第1繊維構造体S1、及び、第2繊維構造体S2の表面に出易い。第2繊維構造体S2の表面に出た第2繊維N1の端部は、積層した表面シートHの第2熱可塑性成分N2と接して共に溶融又は軟化し易くなり、一体化し易くなることで防水性がより高くすることができる。
【0049】
第2熱融着部153は、表面シート付き繊維構造体S3を加圧しつつ、加熱するので、第2熱可塑性成分N2や第2繊維N1が溶融又は軟化しても、表面シート付き繊維構造体S3の変形を抑制することができ、又は、再成形することができる。
第2熱融着部153により加熱加圧された表面シート付き繊維構造体S3を、繊維ボードS4と称する。なお、第2熱融着部153は、表面シート付き繊維構造体S3を同時に加熱及び加圧しなくてもよく、加熱後、加圧してもよい。
【0050】
図3に示すように、溶融又は軟化した第2熱可塑性成分N2により、表面シートHと第2繊維構造体S2とを融着し、繊維ボードS4が成形される。
このように、第2繊維構造体S2と、フィルム状の表面シートHと、を含んで繊維ボードS4が構成される。上述のように、この第2繊維構造体S2は、第1繊維DF、及び、熱可塑性を有する第2繊維N1を堆積させて成形された第1繊維構造体S1から構成されたものである。
【0051】
表面シートHに含まれる第2熱可塑性成分N2と、第2繊維構造体S2に含まれる第2繊維N1の第1熱可塑性成分とは、同じ熱可塑性成分を含むことが好ましい。
この場合、第2繊維構造体S2の第2繊維N1の第1熱可塑性成分は、表面シートHの第2熱可塑性成分N2と同質の熱可塑性成分を含むので、加熱加圧されると、共に溶融又は軟化して一体化し易くなる。
【0052】
第2繊維N1の第1熱可塑性成分、及び、第2熱可塑性成分N2は、溶融又は軟化して一体化しつつ、第2繊維構造体S2と表面シートHとの間の接着強度を強くすることができる。
【0053】
搬送部133は、第2熱融着部153が表面シート付き繊維構造体S3を加熱加圧する際、表面シート付き繊維構造体S3の搬送を停止するように調整する。
加熱加圧された後、第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155から開放された繊維ボードS4は、搬送部133により第2冷却部181へ搬送される。なお、第2冷却部181まで延長された搬送部133、又は、搬送部133とは別の搬送機構を設けることにより、繊維ボードS4を第2冷却部181へ向かって搬送することができる。
【0054】
第2冷却部181は、下方へ向いた気流発生装置を有し、繊維ボードS4へ向かって気流を発生可能である。第2冷却部181は、加熱加圧された繊維ボードS4に気流を当てて冷却する、いわゆる強制冷却することが可能である。第2冷却部181は、第2熱可塑性成分N2が溶融又は軟化する温度より低くなるように、繊維ボードS4を冷却する。なお、第2冷却部181は、第2繊維N1、及び、第2熱可塑性成分N2が溶融又は軟化する温度より低くなるように冷却してもよい。
なお、第2冷却部181は、例えば第1冷却部180と同様の構成であってもよい。
【0055】
第2冷却部181により冷却されるとき、第2熱可塑性成分N2が硬化する。このとき、第2繊維N1も、再度、硬化することができる。第2熱可塑性成分N2が硬化するとき、表面シートH、及び、第2繊維構造体S2を含む繊維ボードS4と共に一体化して強固に硬化することができる。
【0056】
繊維ボードS4において、表面シートHが積層された上方の面には、第2熱可塑性成分N2がリッチとなった膜が成形される。この膜は非透水性の性質を有することができる。
なお、繊維ボードS4の強制冷却は、第2冷却部181のように、ファンにより単に室温の外気を送風する他、冷却装置を用いて冷却した空気を送風するようにしてもよい。例えば、熱交換機、電磁式冷却器、加湿式空気冷却器の少なくともいずれかを用いて冷却した空気を送風し、繊維ボードS4を強制冷却してもよい。
また、製造装置1は、第2冷却部181を備えず、加熱加圧された繊維ボードS4を、外気中に放置するいわゆる自然冷却するようにしてもよい。
【0057】
第2冷却部181により冷却され、硬化された繊維ボードS4は、第2切断部161により、所定の大きさに切断される。
第2切断部161は、例えば、超音波カッターである。第2切断部161は、固定刃及び移動刃で構成されるカッターでもよい。第2切断部161は、例えば、ロータリーカッターでもよい。
切断された繊維ボードS4は、繊維ボードトレイ170に排出される。なお、第2切断部161は、第1切断部160と同様の構成であってもよい。
【0058】
このように製造された繊維ボードS4は、その表面が防水性を有し、木材ボード、樹脂ボード、樹脂シート等の建材の代替材料として使用されたり、ボード材、シート材、梱包材等として、各種製品の部材として使用される。表面シートHを予め印刷しておくことにより、繊維ボードS4の表面の質感やデザインを変えることができる。また、繊維ボードS4は防湿の用途に使用されることもできる。
【0059】
2.繊維ボードの製造条件と強度
下記の表1は、上述の本実施形態に係る、繊維ボードS4を製造するときの好ましい条件である、第2繊維構造体S2に含まれる第2繊維N1の第1熱可塑性成分の種類と長さ、表面シートHに含まれる第2熱可塑性成分N2の種類と厚さ、第2熱融着部153による加熱条件などと、製造した繊維ボードS4の表面シートHの接着強度との関係を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1において、繊維ボードS4のA1~A4は、本実施形態の好ましい条件によりそれぞれ製造されたものである。なお、以下では、本実施形態の好ましい条件を単に、本実施形態の条件と称する。一方、繊維ボードS4のB1~B3は、A1~A4と比較するためのものであり、本実施形態の条件とは異なる条件によりそれぞれ製造されたものである。なお、以下では、繊維ボードS4のA1等を、単にA1等と称する。
【0062】
なお、A1~A4、B1~B3において、いずれも本実施形態の条件である、表面シートHの厚さが50μm以上、400μm以下の範囲、第2熱融着部153による加熱温度が200℃以下などの条件は満たされている。加熱時間は、20sec~60secである。
繊維ボードS4の接着強度は、相対的な接着強度の程度を示す。例えば、繊維ボードS4から表面シートHが剥がれ難いものを「強」、中程度のものを「中」、剥がれ易いものを「弱」として示す。
【0063】
表1を参照しながら、A1~A4について説明する。A1~A4は、いずれも本実施形態の条件である、第2繊維N1の長さが1mm以上、20mm以下の範囲を満たしている。
A1~A4において、第2繊維構造体S2に含まれる第2繊維N1の第1熱可塑性成分の種類、表面シートHに含まれる第2熱可塑性成分N2の種類の関係は、それぞれ、次の通りである。
A1は、いずれも、ポリエチレンを含む。A2は、前者がポリエチレンであり、後者がポリエチレンを含む接着層にEVA/防水表面にPETの複合成分となっている。A3は、いずれも、PETを含む。A4は、いずれも、ポリプロピレンを含む。
このように、A1~A4において、第2熱可塑性成分N2と第1熱可塑性成分とは、本実施形態の条件である、同じ熱可塑性成分を含んでいることとなる。
以上のように、A1~A4は本実施形態の条件を満たしており、その結果、強度はいずれも「強」となる。
【0064】
一方、B1~B3において、それぞれ次の点が本実施形態の条件を満たしていなく、強度の程度が「強」よりも弱くなってしまっている。
B1は、第2熱可塑性成分N2の種類と第1熱可塑性成分の種類の関係が、ポリエチレンとアクリルであり、異なっている。この結果、B1の強度は「弱」となる。なお、第2繊維N1の長さは5mmであり、本実施形態の条件を満たしている。
B2は、第2繊維N1の長さが0.5mmであり、本実施形態の条件である1mm以上ではない。この結果、B2の強度は「中」となる。なお、第2熱可塑性成分N2の種類と第1熱可塑性成分の種類はいずれもポリエチレンであり、本実施形態の条件を満たしている。
B3は、第2繊維N1の長さが30mmであり、本実施形態の条件である20mm以下ではない。この結果、B3の強度は「中」となる。なお、第2熱可塑性成分N2の種類と第1熱可塑性成分の種類はいずれもポリエチレンであり、本実施形態の条件を満たしている。
【0065】
3.熱融着部からの離反面
ここで、図4図5を用いて、第1熱融着部150、第2熱融着部153に、溶融又は軟化した第2繊維N1や第2熱可塑性成分N2などが付着することを抑制して離反した、第2繊維構造体S2、繊維ボードS4の面について説明する。
図4は、第1熱融着部150、第2熱融着部153に離型部T1を設けた例を示し、図5は、第1熱融着部150、第2熱融着部153に離型シートであるシートT2を供給する例を示す。
【0066】
図4に示す離型部T1、図5に示すシートT2は、少なくともシリコン樹脂、及び、フッ素樹脂などのいわゆる非粘着性を有する樹脂の層を含んで構成されている。離型部T1、及び、シートT2は、溶融又は軟化した第2繊維N1、及び、第2熱可塑性成分N2などが付着することを抑制することができる。
【0067】
図4に示すように、第1熱融着部150は、第1加熱加圧部151の下部、及び、第2加熱加圧部152の上部における第2繊維構造体S2と接触する面に、それぞれ離型部T1が構成される。
第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152は、搬送された第1繊維構造体S1を挟んで加熱加圧し、第2繊維構造体S2を成形した後、離反して開放する。このとき、離型部T1は、第2繊維構造体S2において溶融又は軟化した第2繊維N1が、第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152の面に付着することを抑制することができる。
【0068】
同様に、第2熱融着部153の場合も、第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155における繊維ボードS4と接触する面に、離型部T1が構成される。
第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155は、搬送された表面シート付き繊維構造体S3を挟んで加熱加圧し、繊維ボードS4を成形した後、離反して開放する。このとき、離型部T1は、繊維ボードS4おいて溶融又は軟化した第2繊維N1及び第2熱可塑性成分N2が、第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155の面に付着することを抑制することができる。
なお、溶融又は軟化した第2繊維N1及び第2熱可塑性成分N2の状況により、少なくとも、第1熱融着部150、及び、第2熱融着部153の一方は、離型部T1を有することが好ましい。
【0069】
一方、図5に示すように、第1熱融着部150は、離型シート供給部である、第1シート搬送部136、及び、第2シート搬送部138を備える。第1シート搬送部136は、第1熱融着部150の第1加熱加圧部151の下部の面を通過するシートT2、及び、シートT2を搬送して供給する複数の第1シート搬送ローラー137を含んで構成される。第2シート搬送部138は、第1熱融着部150の第2加熱加圧部152の上部の面を通過するシートT2、及び、シートT2を搬送して供給する複数の第2シート搬送ローラー139を含んで構成される。
第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152は、搬送された第1繊維構造体S1の上下にシートT2を挟んだ状態で、加熱加圧し、第2繊維構造体S2を成形した後、離反して開放する。
【0070】
このとき、離型シートである上下のシートT2は、第2繊維構造体S2において溶融又は軟化した第2繊維N1が、第1加熱加圧部151、及び、第2加熱加圧部152の面に付着することを抑制することができる。
なお、第1熱融着部150が加熱加圧する際、第1シート搬送部136、及び、第2シート搬送部138は、シートT2の搬送を停止する。
【0071】
同様に、第2熱融着部153は、第3加熱加圧部154の下部の面を通過するシートT2、及び、シートT2を搬送する複数の第1シート搬送ローラー137を含む第1シート搬送部136を備える。さらに、第2熱融着部153は、第4加熱加圧部155の上部の面を通過するシートT2、及び、シートT2を搬送する複数の第2シート搬送ローラー139を含む第2シート搬送部138を備える。なお、便宜上、第1シート搬送部136及び第2シート搬送部138等は、第1熱融着部150の場合と同様の符号を用いている。
【0072】
第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155は、搬送された表面シート付き繊維構造体S3の上下にシートT2を挟んだ状態で、加熱加圧し、繊維ボードS4を成形した後、離反して開放する。
このとき、上下のシートT2は、繊維ボードS4において溶融又は軟化した第2繊維N1及び第2熱可塑性成分N2が、第3加熱加圧部154、及び、第4加熱加圧部155の面に付着することを抑制することができる。
【0073】
なお、第2熱融着部153が加熱加圧する際、第1シート搬送部136、及び、第2シート搬送部138は、シートT2の搬送を停止する。
また、溶融又は軟化した第2繊維N1及び第2熱可塑性成分N2の状況により、少なくとも、第1熱融着部150、及び、第2熱融着部153の一方に、シートT2及びシートT2を供給する第1シート搬送部136又は第2シート搬送部138を有することが好ましい。
【0074】
上述のように、溶融又は軟化した第2繊維N1が第1熱融着部150に付着しない。この結果、第1熱融着部150から離反した第2繊維構造体S2の面は、凹凸が少ない滑らかな形状の緻密な面となって成形される。
表面シートHは、第2繊維構造体S2の滑らかな面に、より密着して積層されることができる。また、表面シートHと第2繊維構造体S2との間に気泡が生じることも抑制できる。このように成形された第2繊維構造体S2は、積層された表面シートHと共に、第2熱融着部153で、より強固に融着されることができ、強度が向上される。
【0075】
さらに、溶融又は軟化した第2繊維N1及び第2熱可塑性成分N2が第2熱融着部153に付着しない。第2熱融着部153から離反した繊維ボードS4の面も、凹凸が少ない滑らかな形状の緻密な面となって成形され、表面等の強度も向上される。
また、この滑らかな整った面により、繊維ボードS4の品質を向上させることができる。そして、繊維ボードS4の滑らかな面上に樹脂用のコーティングを品質よく施すこともでき、表面硬度を上げて耐擦性を向上させたり、印刷性を向上させることもできる。
【0076】
以上、本実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
例えば、第1熱融着部150、第2熱融着部153を、いわゆる平板プレス機の構成の例で説明したが、いわゆるローラープレス機など別の構成にしても構わない。また、第1切断部160、第2切断部161などの各切断部においても、配置の有無や個数などの変更をしても構わない。
【符号の説明】
【0077】
1…繊維ボード製造装置、10…粗砕部、30…解繊部、100…堆積部、120…形状維持シート搬送部、130…積層部、133…搬送部、136…第1シート搬送部、138…第2シート搬送部、140…バッファー部、150…第1熱融着部、151…第1加熱加圧部、152…第2加熱加圧部、153…第2熱融着部、154…第3加熱加圧部、155…第4加熱加圧部、160…第1切断部、161…第2切断部、180…第1冷却部、181…第2冷却部、200…制御部、DF…第1繊維、DF1…混合繊維、H…表面シート、N1…第2繊維、N2…第2熱可塑性成分、OP…原料、S1…第1繊維構造体、S2…第2繊維構造体、S3…表面シート付き繊維構造体、S4…繊維ボード、T1…離型部、T2…シート。
図1
図2
図3
図4
図5