(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079926
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】車両の原動機室の防水構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20240606BHJP
B60R 13/06 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B62D25/08 H
B60R13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192619
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 峻
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】養父 昌平
【テーマコード(参考)】
3D201
3D203
【Fターム(参考)】
3D201AA01
3D201AA08
3D201BA01
3D201CB09
3D201DA11
3D201DA14
3D201DA31
3D203AA02
3D203CA07
3D203CB26
3D203DA02
3D203DA19
3D203DA37
3D203DA38
3D203DA68
(57)【要約】
【課題】カウルルーバから原動機室内への水の浸入を抑制する。
【解決手段】フード12とカウルルーバ18の間を、カウルルーバ前壁22に係合されたゴムシール24でシールする。カウルルーバ前壁22の前側および後側それぞれの壁面に車両左右方向に延びる並行する2本の突条34を設ける。ゴムシール24の、カウルルーバ前壁22に対向する壁面に突条34に係合する溝36を設ける。係合する突条34と溝36は同一の断面形状を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウインドシールドの下縁に沿って配置されたカウルルーバであって、当該カウルルーバの前縁に、当該前縁に沿って形成されたカウルルーバ前壁を含むカウルルーバと、
車両左右方向に沿って延び、前記カウルルーバ前壁を挟むようにして前記カウルルーバと係合したシールゴムであって、車両の閉じたフードと前記カウルルーバの間をシールするシールゴムと、
を備え、
前記カウルルーバ前壁の、前側の壁面および後側の壁面の少なくとも一方に、車両左右方向に沿って並行して延びる複数の突条が設けられ、
前記シールゴムには、前記複数の突条と係合し、係合する突条と同一の断面形状の溝が形成されている、
車両の原動機室の防水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の原動機室の防水構造であって、前記複数の突条の断面形状が四角形である、車両の原動機室の防水構造。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の原動機室の防水構造であって、前記カウルルーバの車両前後方向において前側に配置され、前記カウルルーバの前縁に隣接し、前記カウルルーバの前縁に沿って左右に延びる樋をさらに備えた車両の原動機室の防水構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の原動機室の防水構造であって、前記樋の前縁は、車両の閉じたフードの下面に接触している、車両の原動機室の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部に設けられた、エンジン等の原動機を収容する原動機室の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員が登場する乗員室の前方に突出した車両前部にエンジン等の車両を駆動する原動機を収容する原動機室を有する車両が知られている。原動機室の上方には、開閉するフードが配置されている。車体の、閉じたフード後縁に対応する部分には、原動機室内への水の浸入を防止するための防水構造が設けられている。
【0003】
下記特許文献1には、車体のフロントガラス(2)の下端縁と、閉じたフロントフード(3)の間に設けられたカウルルーバ(4)が示されている。カウルルーバ(4)は、前縁に車体幅方向に沿って延びたシール取付部(6)を有し、シール取付部(6)は、フードシール(10)を保持している。フードシール(10)が、フロントフード(3)の下面に接触して、フロントフード(3)とカウルルーバ(4)の間が封止される。
【0004】
また、下記特許文献2,3には、カウルルーバ内から水を排出するための排水構造が示されている。
【0005】
なお、上記の( )内の符号は、下記特許文献1で用いられている符号であり、本願の実施形態の説明で用いられる符号とは関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-218029号公報
【特許文献2】特開2006-205913号公報
【特許文献3】特開2005-200007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フードとカウルルーバの隙間をシールするようにカウルルーバに係合されたゴム製のシール部材が経年変化により収縮すると、このシール部材とカウルルーバの間に隙間ができる。この隙間から原動機室内に水が浸入する可能性がある。
【0008】
原動機室内への水の浸入を防止する、フードとカウルルーバの間の防水構造には改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の原動機室の防水構造は、車両のウインドシールドの下縁に沿って配置されたカウルルーバと、車両の閉じたフードとカウルルーバの間をシールするシールゴムとを備える。カウルルーバは、当該カウルルーバの前縁に、当該前縁に沿って形成されたカウルルーバ前壁を含む。シールゴムは、車両左右方向に沿って延び、カウルルーバ前壁を挟むようにしてカウルルーバと係合している。カウルルーバ前壁の、前側の壁面および後側の壁面の少なくとも一方に、車両左右方向に沿って並行して延びる複数の突条が設けられている。シールゴムには、カウルルーバの前壁に設けられた複数の突条と係合する溝が形成されている。
【0010】
カウルルーバ前壁とシールゴムの互いに対向する壁面に、互いに係合する複数の突条と複数の溝を設けることにより、互いの間に隙間ができても屈曲した隙間となる。隙間を通過する水が隙間の屈曲した角を通過する際に圧力損失を生じ、原動機室内への水の浸入が抑制される。
【0011】
上記の原動機室の防水構造において、カウルルーバ前壁に設けられた突条を断面形状が四角形のものとすることができる。簡易な形状で隙間に多くの屈曲した角を形成することができる。
【0012】
上記の原動機室の防水構造において、カウルルーバの車両前後方向において前側に配置され、カウルルーバの前縁に隣接し、カウルルーバの前縁に沿って左右に延びる樋をさらに備えるものとすることができる。カウルルーバ前壁とシールゴムの隙間を水が通過したとしても、樋によって受けることにより、原動機室内への水の浸入が抑制される。
【0013】
上記の原動機室の防水構造において、樋の前縁は、車両の閉じたフードの下面に接触するものとすることができる。樋とフードの隙間からの原動機室内への水の浸入が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
カウルルーバとシールゴムの接合面に、想定される水浸入方向に対して交差するように複数の突条と複数の溝が配置される。これにより、水が浸入する経路が連続的に屈曲し、屈曲の角部分にて圧力損失が生じて、原動機室内への水の浸入が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】車両の前部、特にフードおよびウインドシールドと、その周囲の構成を示す図である。
【
図2】カウルルーバおよびその周囲の構造、特に原動機室の防水構造を示す断面図である。
【
図3】カウルルーバ前壁の詳細形状を示す断面図である。
【
図6】樋底板の
図2に示すA-A線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。以下の説明において、特段の断りがない限り、前後左右上下等の相対位置および向きを表す語句は、車両に関する相対位置および向きを表す。
【0017】
図1は、車両10の前部、特にフード12およびウインドシールド14とその周囲を示す図である。フード12の下方には、エンジン、モータなどの車両を駆動する原動機を収容する原動機室16(
図2参照)が画定されている。ウインドシールド14の前縁に隣接する位置であって、フード12との境界に合成樹脂製のカウルルーバ18が配置されている。カウルルーバ18は、ウインドシールド14の下縁、およびフード12の後縁に沿って左右方向に延びている。このカウルルーバ18は、図示するように、ウインドシールド14の前方に凸に湾曲した下縁に沿って湾曲していてよい。また、カウルルーバ18は、左右方向に延びる凹部を画定し、ウインドシールド14を流れ落ちた水、またはフード12を越えてきた前方からの水を受ける。カウルルーバ18が受けた水は、凹部を通って側方に排出される。これにより、原動機室16への水の浸入が抑制されている。また、カウルルーバ18には乗員室内に空気を取り込むための開口(不図示)が設けられている。さらに、カウルルーバ18の凹部内には、フロントワイパー(不図示)が収められてよい。
【0018】
図2は、カウルルーバ18周囲の原動機室16の防水構造を示す断面図である。カウルルーバ18は、カウルルーバ18が画定する凹部の底を形成するカウルルーバ底板20と、カウルルーバ18の前縁に沿って左右方向に延びる起立したカウルルーバ前壁22とを含む。カウルルーバ前壁22は、カウルルーバ底板20の前縁から上方に向けて、特に前方にやや傾いて立設されている。
【0019】
カウルルーバ前壁22の上端部には、カウルルーバ18とフード12の間をシールするゴム製のシールゴム24が係合されている。フード12は、車体の外表面を形成するフードアウタ(不図示)と、フードアウタと重ねられて、その内側に位置するフードインナ26を含む。シールゴム24は、カウルルーバ前壁22と共に左右方向に延びている。フード12が閉じられ、シールゴム24の上端部28がフードインナ26に当接すると、シールゴム24はゴムの可撓性によってつぶれ、フードインナ26とカウルルーバ前壁22の間をシールする。
図2において、シールゴム24は、つぶれる前の状態が示されている。シールゴム24は、またカウルルーバ前壁22を前後方向において挟むようにして、カウルルーバ18と係合する基部30を有する。
【0020】
図3には、カウルルーバ前壁22の詳細を示す断面図が、
図4には、シールゴム24の詳細を示す断面図が示されている。シールゴム24の基部30は、下方から切り込み32が形成されており、この切り込み32にカウルルーバ前壁22が挿入される。切り込み32を画定する、基部30の
図4において左右に位置する部分が、カウルルーバ前壁22を挟むことにより、シールゴム24がカウルルーバ前壁22に固定される。
【0021】
カウルルーバ前壁22の前側および後側の壁面には、左右方向に延びる突条34が設けられている。前側および後側の壁面それぞれに、互いに並行して延びる2本の突条34が設けられている。突条34の断面形状は、長方形または正方形である。カウルルーバ前壁22の上縁側に配置された突条34は、カウルルーバ前壁22の上縁から離れた位置に配置されている。これにより、カウルルーバ前壁22の上縁と上側の突条34の間にカウルルーバ前壁22の壁面と、突条34の側面とによって隅部が形成される。
【0022】
シールゴム24に形成された切り込み32には、その壁面に、カウルルーバ前壁22の突条34に対応した溝36が形成されている。溝36は、前側および後側の壁面それぞれに、2本が互いに並行して左右方向に延びている。溝36は、突条34と同一の断面形状を有し、切り込み32の全体の断面形状は、カウルルーバ前壁22の断面形状と同一となっている。
【0023】
カウルルーバ前壁22とシールゴム24の接合面には、カウルルーバ18から原動機室16内への想定される水の浸入方向に対して交差するように、2本の突条34と2本の溝36が配置される。これにより、水が浸入する経路が連続的にクランク状に屈曲する。
【0024】
経年変化によってシールゴム24が収縮し、カウルルーバ前壁22との間に隙間が生じ、この隙間を通って、カウルルーバ18の凹部内から原動機室16に水が浸入する可能性がある。しかし、この実施形態の防水構造によれば、カウルルーバ前壁22とシールゴム24の隙間が、水の浸入方向に関して連続するクランク状に屈曲しているため、クランク形状の角において圧力損失が生じ、原動機室16内への水の浸入を抑制することができる。
【0025】
突条34および溝36の断面形状は、長方形または正方形以外の形状、例えば三角形であってよく、また突条34および溝36の1つが、またはいくつかが、または全てが、他の突条34および溝36とは異なる形状であってもよい。カウルルーバ前壁22の一方の壁面に設けられる突条34およびこの突条34に対応する溝36は、2本に限らず3本以上であってよい。突条34およびこれに対応する溝36は、カウルルーバ前壁22の前側の壁面と後側の壁面のいずれか一方に対応して設けられてもよい。
【0026】
図2に戻って説明を続ける。カウルルーバ18の前方には、カウルルーバ18の前縁に隣接し、前縁に沿って左右方向に延びる樋38が配置されてよい。樋38は、カウルルーバ前壁22またはシールゴム24と協働して上方に開いたコの字形状を形成する樋底板40および樋前壁42を有する。樋38は、ゴム製であり、シールゴム24に接着等により固定されてよく、またシールゴム24と一体に成形されてもよい。これにより、樋38は、カウルルーバ前壁22に吊り下げられるようにして支持される。樋前壁42は、樋底板40の前縁に上方に向けて立設されている。
図5に示されるように、樋前壁42の上縁には、上縁に沿って延びる当接リップ44が設けられている。当接リップ44は、フード12が閉じられたときにフードインナ26に接触してたわみ、密着して樋38の前縁とフード12の間をシールする。カウルルーバ前壁22を越えた水は、樋38によって受けられ、樋38に沿って側方に流される。また、樋38の前縁とフード12の間がシールされていることで、樋前壁42を越える原動機室16内への水の浸入が抑制される。
【0027】
樋38は、樋38の後縁、特に樋底板40の後縁から後方に延びる支持基部46が設けられている。支持基部46は、カウルルーバ底板20の下面に沿って延び、少なくとも一部で、特にその後端でカウルルーバ底板20の下面に接触している。支持基部46は、樋38と共に左右方向に延びて連続的に設けられてよく、また梁のように構成されて、左右方向の複数の箇所に間隔を空けて配置されてもよい。支持基部46によって、樋38は、カウルルーバ18に片持ち支持される。
【0028】
図6は、
図2に示すA-A線による樋底板40の断面図である。樋底板40は、左右方向において、ジグザグ、つまり上下交互に折れ曲がった断面形状を有し、樋前壁42も同様にジグザグ形状を有する。これにより、樋38は全体として蛇腹形状となっており、樋38を取り付ける際に、カウルルーバ18の前縁の湾曲に合わせて、湾曲させることができる。一方、樋38を、カウルルーバ18に合わせて湾曲した状態に製作する場合には、蛇腹形状とせず、樋底板40および樋前壁42を平らに形成してよい。
【符号の説明】
【0029】
10 車両、12 フード、14 ウインドシールド、16 原動機室、18 カウルルーバ、20 カウルルーバ底板、22 カウルルーバ前壁、24 シールゴム、26 フードインナ、28 上端部、30 基部、32 切り込み、34 突条、36 溝、38 樋、40 樋底板、42 樋前壁、44 当接リップ、46 支持基部。