(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079932
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】昇降機の保守作業結果入力システム及び昇降機の保守作業結果入力方法
(51)【国際特許分類】
G10L 15/00 20130101AFI20240606BHJP
G10L 15/22 20060101ALI20240606BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G10L15/00 200L
G10L15/22 453
B66B5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192632
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】主税 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一朗
(72)【発明者】
【氏名】星崎 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】神谷 駿
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA01
3F304BA26
(57)【要約】
【課題】本発明は、保守作業結果の入力作業の効率を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明の昇降機の保守作業結果入力システムは、昇降機の保守作業項目を表示する表示部23を備えた携帯端末装置1と、作業者が発声した音声を携帯端末装置1に入力するマイク21(音声入力部)と、マイク21から入力された音声を文字データに変換する文字変換処理部31と、文字変換処理部31で変換された文字データが表示部23に表示され、表示部23に表示された文字データの中から選択された文字データを前記保守作業項目に転記する作業記録入力処理部35と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機の保守作業結果を入力する昇降機の保守作業結果入力システムにおいて、
前記昇降機の保守作業項目を表示する表示部を備えた携帯端末装置と、
作業者が発声した音声を前記携帯端末装置に入力する音声入力部と、
前記音声入力部から入力された音声を文字データに変換する文字変換処理部と、
前記文字変換処理部で変換された文字データが前記表示部に表示され、前記表示部に表示された文字データの中から選択された文字データを前記保守作業項目に転記する作業記録入力処理部と、を備えたことを特徴とする昇降機の保守作業結果入力システム。
【請求項2】
請求項1に記載の昇降機の保守作業結果入力システムにおいて、
前記文字変換処理部、前記作業記録入力処理部は、前記携帯端末装置に備えたことを特徴とする昇降機の保守作業結果入力システム。
【請求項3】
請求項1に記載の昇降機の保守作業結果入力システムにおいて、
作業者が発声した音声を再生する音声再生処理部と、前記音声再生処理部で再生された音声を外部に発する音声再生部と、を備えたことを特徴とする昇降機の保守作業結果入力システム。
【請求項4】
請求項3に記載の昇降機の保守作業結果入力システムにおいて、
前記文字変換処理部で変換された文字データを単語に分割する単語分割処理部を備えたことを特徴とする昇降機の保守作業結果入力システム。
【請求項5】
請求項4に記載の昇降機の保守作業結果入力システムにおいて、
前記単語分割処理部で単語に分割された文字データを語群に分類する用語分類処理部を備えたことを特徴とする昇降機の保守作業結果入力システム。
【請求項6】
請求項5に記載の昇降機の保守作業結果入力システムにおいて、
前記用語分類処理部は、語群に分類した文字データを表形式に変換して前記表示部に表示することを特徴とする昇降機の保守作業結果入力システム。
【請求項7】
請求項5に記載の昇降機の保守作業結果入力システムにおいて、
保守作業用語群を集めた辞書ファイルを備え、
前記用語分類処理部は、前記辞書ファイルで定めた語群に分類することを特徴とする昇降機の保守作業結果入力システム。
【請求項8】
請求項3に記載の昇降機の保守作業結果入力システムにおいて、
記憶部を備え、
前記記憶部には、
前記音声入力部から入力された音声を音声データとして保存する音声ファイルと、前記文字変換処理部で変換された文字データとして保存する文字変換ファイルと、前記音声ファイルの音声データと前記文字変換ファイルの文字データとの相関関係情報を持つ文字・音声データ相関関係ファイルと、を備え、
前記音声再生部は、前記表示部に表示された任意の文字データが選択されると、前記文字・音声データ相関関係ファイルを参照し選択された文字データの位置に対応する音声データの位置を特定し、該当箇所の音声データを前記音声ファイルから読み出して再生することを特徴とする昇降機の保守作業結果入力システム。
【請求項9】
昇降機の保守作業結果を入力する昇降機の保守作業結果入力方法において、
前記昇降機の保守作業項目を携帯端末装置に表示し、
作業者が発声した音声を前記携帯端末装置に入力し、
前記携帯端末装置に入力された音声を文字データに変換し、
変換された文字データを前記携帯端末装置に表示し、表示された文字データの中から選択された文字データを前記保守作業項目に転記することを特徴とする昇降機の保守作業結果入力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機の保守作業結果入力システム及び昇降機の保守作業結果入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターやエスカレーターなどの昇降機の保守作業を実施すると、作業者は実施した作業内容や結果を記録する必要がある。記録した内容は、次回以降の作業計画、および昇降機の所有者への報告のために利用する。昇降機の保守作業記録は、記録後の処理を合理化するため、作業者が携行する携帯端末に電子的に記録し、データ化することが行われているが、保守作業は部品の交換作業、調整作業など、工具を使用するなどの両手を使用することが多い。また、保守作業では、狭あい部、高所など危険を伴う場所で実施する作業もある。そのため、作業者が実施した作業結果を携帯端末に作業実施と並行して実施することが困難であることも多く、作業者は一時的に作業結果を紙片に書き込み、作業が完了した後に携帯端末の操作が可能な場所で紙に書き込んだ内容を転記する必要がある。
【0003】
したがって、作業者は、実施した作業結果の紙片への書込み作業と、紙片から携帯端末への転記作業の二つの手順を踏む必要があるため、作業効率の低下を招いている。また、紙片から携帯端末への転記の際に誤記する恐れがあり、作業記録の正確性が低下する。
【0004】
このような課題を解決するために、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1では、作業者の発声を携帯端末装置に備えた音声認識装置が認識して文字データに変換し、その文字データを音声化してスピーカーから音声を再生するようにしている。そして、作業者が発声した内容と音声化した内容が一致していることを携帯端末装置から認証すると、音声信号を文字データ記録として携帯端末装置の記憶部に格納するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、発声する毎に作業者の認証が必要となり、さらに外乱音などの作業環境によっては文字データ化できないため、作業者は再度発声する必要がある。そのため、個々の作業結果を、携帯端末装置への入力内容として確定するまでに多くの手順や時間を要し、昇降機の保守作業の作業効率を損なうといった課題があった。
【0007】
本発明は、保守作業結果の入力作業の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、昇降機の保守作業結果を入力する昇降機の保守作業結果入力システムにおいて、前記昇降機の保守作業項目を表示する表示部を備えた携帯端末装置と、作業者が発声した音声を前記携帯端末装置に入力する音声入力部と、前記音声入力部から入力された音声を文字データに変換する文字変換処理部と、前記文字変換処理部で変換された文字データが前記表示部に表示され、前記表示部に表示された文字データの中から選択された文字データを前記保守作業項目に転記する作業記録入力処理部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保守作業結果の入力作業の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例に係る昇降機の保守作業結果入力システムの全体構成図である。
【
図2】本発明の実施例に係る昇降機の保守作業結果入力システムの処理内容を示すフローチャートである。
【
図3】携帯端末装置1の表示部23に表示する表示例を示す図である。
【
図4】作業中に音声で入力した内容を表示部23に表示している状態を示す図である。
【
図5】文字変換ファイル42の一例を示す図である。
【
図6】文字・音声データ相関関係ファイル43と、音声ファイル41と、文字変換ファイル42との関係を示す図である。
【
図7】入力した保守作業結果から作業記録ファイルに転記操作している表示部23の表示例を示す図である。
【
図8】変形例に係る昇降機の保守作業結果入力システムの処理内容を示すフローチャートである。
【
図9】単語分割ファイル45の一例を示す図である。
【
図11】表変換ファイル47の一例を示す図である。
【
図12】作業記録入力処理の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、同一の要素については、全ての図において、原則として同一の符号を付している。また、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。なお、以下に説明する構成はあくまで実施例に過ぎず、本発明に係る実施様態が、以下の具体的様態に限定されることを意図する趣旨ではない。
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。全図に亘って同一の構成には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る昇降機の保守作業結果入力システムの全体構成図である。本実施例では、保守作業結果入力システムを携帯端末装置に備えた例で説明するが、例えば、保守作業結果入力システムを構成する一部の機器を外部に備え、携帯端末装置と通信するように構成しても良い。この場合、携帯端末装置には、表示部と操作部を備えるようにすると良い。
【0014】
図1において、作業者が昇降機の保守作業を行うために携帯する携帯端末装置1は、入出力部2、処理部3、記憶部4からなっている。処理部3は、保守作業結果入力システムにおいて制御・演算を行う機能を有しており、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成される。また、処理部3には、中央処理装置を動作させるためのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)が備えられている。
【0015】
入出力部2は、作業者の音声を捉えて携帯端末装置1に入力するマイク21(音声入力部)、録音した作業者の音声データを再生して確認するスピーカー22(音声再生部)と、各種の情報を表示する表示部23と、キーボードやマウス、タッチパネルなどで携帯端末装置1の操作を行う操作部24と、からなる。
【0016】
処理部3は、作業者が発した音声を文字データに変換し、文字変換ファイル42として記憶部4に保存する文字変換処理部31と、音声ファイル41に保存された作業者の音声データを音声で再生処理する音声再生処理部32と、文字変換ファイル42の文字データを単語に分割し、単語分割ファイル45として記憶部4に保存する単語分割処理部33と、単語分割ファイル45に保存された分割された文字データを語群に分類してテーブルファイル化する用語分類処理部34と、作業記録ファイル44との対応関係を推定して作業結果を入力する作業記録入力処理35と、からなる。
【0017】
記憶部4は、マイク21で捉えた作業者の音声を音声データとしてファイル化した音声ファイル41と、作業者の音声を文字変換処理部31にて文字データに変換してファイル化した文字変換ファイル42と、音声ファイル41の音声データと文字変換ファイル42の文字データとの相関関係情報を持つ文字・音声データ相関関係ファイル43と、昇降機の保守作業結果を記録、保存する作業記録ファイル44と、文字変換ファイル42を単語分割処理部33にて用語に分割した結果を保存した単語分割ファイル45と、保守作業用語群を集めた辞書ファイル46と、単語分割ファイル45を語群に分類してテーブル化した結果を保存する表変換ファイル47と、からなる。
【0018】
図2は、本発明の実施例に係る昇降機の保守作業結果入力システムの処理内容を示すフローチャートである。本実施例では、昇降機の保守作業を実施した際の作業結果を携帯端末装置1に入力を行う。
【0019】
まず作業者は作業指示に従って昇降機の保守作業を開始する(ステップS1)。
【0020】
処理部3は、作業の実施に伴い必要となる作業結果を入力する画面を携帯端末装置1の表示部23に表示する(ステップS2)。
【0021】
図3は、携帯端末装置1の表示部23に表示する表示例を示す図である。携帯端末装置1の表示部23には、例えばロープ、ブレーキといった保守作業項目が表示されている。
図3では、エレベーターのロープが4本あり、それぞれのロープの調整状態(例えば張力調整ばね)を示す寸法を計測する作業と、ブレーキの部品(例えばブレーキライニング)が左右に2組取り付けられており、それぞれの部品の状態(例えばブレーキライニングの厚さ)を計測する作業を実施し、測定した値を入力する画面である。表示部23の画面上部には4本のロープ、および左右のブレーキの測定値を入力する画面を表示する。また、表示部23の画面下部には音声記録を開始、終了を指示する操作部24が設けられている。
【0022】
図2に戻り、作業者は、作業開始時に操作部24から音声記録・変換機能の録音開始操作を行う(ステップS3)と、携帯端末装置1はマイク21が捉えた音声を音声ファイルとして記録を開始する(ステップS4)。
【0023】
図4は、作業中に音声で入力した内容を表示部23に表示している状態を示す図である。
図4に示すように、作業者が作業開始時に操作部24から音声記録・変換機能の録音開始操作を行うと、作業中に音声で入力した内容(文字変換処理部31で変換された文字データ)が表示部23に表示される。
【0024】
作業者は昇降機の作業の実施に伴い、確認結果や測定値を発声し、音声入力操作を行う(ステップS5)。
【0025】
この作業者の音声は携帯端末装置1のマイク21によって捉えられ、音声ファイル41として保存すると共に、文字変換処理部31で文字データに変換する(ステップS6)。
【0026】
文字変換処理部31で変換された文字データは、文字変換ファイル42として記憶部4に保存するとともに、文字変換ファイル42の内容は表示部23下の文字変換表示部23aに表示し、作業者の音声が文字に変換された結果を随時確認することができる(ステップS7)。
【0027】
図5は、文字変換ファイル42の一例を示す図である。携帯端末装置1のマイク21から入力した作業者の音声は、文字変換処理部31で文字変換し、記憶部4の文字変換ファイル42に保存される。
【0028】
作業者の音声は、作業結果とは直接的には関係のない音声や、外乱情報を含む。また、作業者の音声がマイク21で十分入力できず、音声情報として認識できない場合もある。そのため、音声情報が文字変換処理部31で処理された文字変換の結果は、作業者が発声した語句とは必ずしも一致せず、変換結果は作業者の発声を文字変換した結果の羅列であり、言わば作業結果をメモ帳に一時的に書き込んだ状態と類似した状態となる。
【0029】
さらに、音声ファイルおよび文字変換ファイルの保存と同時に、音声記録開始からの時刻と、変換した文字データとの相関関係とを文字・音声データ相関関係ファイル43に記録する(ステップS8)。
【0030】
図6は、文字・音声データ相関関係ファイル43と、音声ファイル41と、文字変換ファイル42との関係を示す図である。
【0031】
音声ファイル41は、録音開始から終了までの間、携帯端末装置1のマイク21から入力した音声を録音した音声データファイルであり、音声の発声位置は時系列的に表すことができる。
【0032】
例えば、作業者が「ロープ」あるいは「1番」と発声したのは録音開始からそれぞれ10秒後、16秒後である。
【0033】
一方、文字変換ファイル42は作業者の発声を文字変換した文字列データであり、ファイル内の位置データで表すことができる。
【0034】
例えば、「ロープ」あるいは「1番」の文字列の先頭はファイルのそれぞれ1ワード目、5ワード目、などと表すことができる。
【0035】
文字・音声データ相関関係ファイル43は、文字変換された文字列のそれぞれの語句と、文字変換前の音声ファイルの時系列的な位置関係を示すもので、例えば、「ロープ」は文字変換ファイル位置「1」、音声ファイル位置「10」として紐づけて記録しておく。
【0036】
この音声入力の音声ファイル保存処理および文字変換処理部31で文字データに変換し、文字変換ファイル42に保存する処理、および音声記録開始からの時刻と、変換した文字データとの相関関係とを文字・音声データ相関関係ファイル43に保存する処理は、作業が完了し、表示部23の下側の文字変換表示部23aに表示した音声記録処理を終了するまで継続する(ステップS9)。ステップS9の処理が未完の場合(ステップS9のNo)には、ステップS5からの処理を繰り返す。ステップS9の処理が完了した場合(ステップS9のYes)には、ステップS10に進む。
【0037】
図7は、入力した保守作業結果から作業記録ファイルに転記操作している表示部23の表示例を示す図である。
【0038】
入力した音声は文字データに変換され、その結果が文字変換表示部23aに表示される。この音声の文字変換結果は文字変換ファイル42の内容と同じものである。作業者は文字変換表示部23aに表示された内容を目視で確認し、必要な語句を選択する(ステップS11)。
【0039】
選択した語句は、携帯端末装置1の記憶部4にコピーされ、一時的に保存される(ステップS12)。
【0040】
次に、作業者は選択した語句を作業結果として入力する位置を選択する(ステップS13)。
【0041】
携帯端末装置1は、記憶部4に一時的に保存した語句を選択した入力位置に貼り付け、作業結果を作業記録ファイル44に転記する(ステップS14)。これらの処理は、作業記録入力処理部35で実行される。すなわち、文字変換処理部で変換された文字データが表示部23(文字変換表示部23a)に表示され、作業記録入力処理部35は、表示部23に表示された文字データの中から選択された文字データを保守作業項目に転記する処理を実行する。
【0042】
選択した語句が、実際の発声と異なる疑いがある場合は、音声再生処理部32にて音声ファイル41を処理することによってスピーカー22から音声を再生し、作業者の発声を確認することができる。
【0043】
この際、音声再生処理部32は、作業者が表示部23(文字変換表示部23a)に表示された任意の語句(文字データ)を選択すると、文字・音声データ相関関係ファイル43を参照し、文字変換ファイル42の選択された文字データの位置に紐づけられた(対応した)音声ファイル41の音声データの位置を特定し、該当箇所の音声データを音声ファイル41から読み出し、音声を再生する。この結果、語句(文字データ)と再生された音声とが一致する。携帯端末装置1には、音声再生処理部で再生された音声を外部に発するスピーカー22が備えられている。
【0044】
作業者は再生した音声を確認し、選択した文字変換結果の語句が正しいと判断した場合は前述のステップS13、ステップS14の操作、処理により作業結果を作業記録ファイル44に転記する。選択した文字変換結果の語句に誤りがある場合は、キーボードなどの入力手段によって、正しい語句や数値を入力する。
【0045】
また、文字変換処理部31で文字データに変換できず、作業記録ファイルに入力すべき語句が文字変換ファイル42に存在しない場合も、音声再生処理部32にて音声ファイル41を処理することによって音声を再生し、作業者の発声内容を確認して、正しい語句や数値を入力する。
【0046】
このような、作業記録ファイルに必要な作業結果を全て入力するまで繰り返す(ステップS15)。ステップS15の処理が未完の場合(ステップS15のNo)には、ステップS11からの処理を繰り返す。ステップS15の入力作業が完了した場合(ステップS15のYes)、昇降機の保守作業が完了する(ステップS16)。
【0047】
以上のように本実施例によれば、音声から変換された文字データを確認しながらシステムの入力できるので、保守作業結果の入力作業の効率を向上させるができる。また、本実施例によれば、作業者が発声した音声を文字データに変換できない場合、若しくは誤って変換された場合であっても、録音された音声を再生して確認することができるので、システムへの誤入力を抑制することができる。
【0048】
次に、変形例について
図8~
図12を参照して説明する。
【0049】
図8は、変形例に係る昇降機の保守作業結果入力システムの処理内容を示すフローチャートである。ただし、
図8のフローチャートにおけるステップS9までの手順は
図2と同一であるので、図示を一部省略する。
【0050】
前述の通り、文字変換ファイル42は、携帯端末装置1のマイク21から入力した作業者の音声を、文字変換処理部31で文字変換した文字列である。そのため、変換結果によっては、転記したい数値や語句の前後に別の語句が繋がり、転記するためのコピー範囲の選択が煩雑になる可能性がある。
【0051】
そこで、変形例では、文字変換ファイル42を単語分割処理部33で処理し、文字列を単語に分解し、単語分割ファイル45として格納する(ステップS10’)。処理結果は、例えば
図9に示すような形態となる。
図9は、単語分割ファイル45の一例を示す図である。単語分割ファイル45には、文字列から分解された単語が羅列され保存されている。
【0052】
このような単語分割処理を行うことにより、
図7で説明した、音声入力結果を作業記録ファイルに転記する操作を、一層効率化することができる。
【0053】
さらに、変形例では単語分割ファイル45に保存された単語を、用語分類処理部34にて辞書ファイル46で定めた語群に分類し、さらに表変換ファイル47に変換の上、作業記録ファイルへの仮入力処理を行う(ステップS11’)。
【0054】
図10は、辞書ファイル46の一例を示す図である。携帯端末装置1の記憶部4には、予め昇降機の保守作業で用いる用語を語群に分けてそれぞれの語句を入力したものを辞書ファイル46として格納されている。
【0055】
昇降機の保守作業は、作業の範囲、内容が基準化、既定化されているため、入力する語句は限定的であり、いくつかの語群に分類することができる。例えば、作業内容を特定するための部品名や、作業内容を示す作業名称、同一部品が複数個存在する場合の部品番号や位置情報(階床,前後上中下左右,東西南北など)、測定,検査結果を表す優劣、良否などの語句、測定した数値、測定値の単位、などが挙げられる。
【0056】
図11は、表変換ファイル47の一例を示す図である。例えば、辞書ファイル46で、作業内容を特定するための部品名や、作業内容を示す作業名称キーワードとして登録されている「ロープ」や「ブレーキ」を、単語分割ファイル45から検索する。「ロープ」の後の語句はロープの保守作業に関するデータと推定し、入力の順序などから、番号や位置、優劣、良否、数値、単位、などの語句に分類し、テーブルに変換していく。
【0057】
前述の通り、単語分割ファイル45に含まれる語句は、作業者の発声を文字変換した文字変換ファイル42を単語に分割処理したものであり、語群に含まれないものも含まれる。これらは分類不能な語群として残す。
【0058】
図12は、作業記録入力処理の表示例を示す図である。
【0059】
例えば、表変換ファイル47は部品名「ロープ」の、1番から4番について、長さをミリメートル単位で入力したテーブル、および、部品名「ブレーキ」の、右側および左側の、長さをミリメートル単位で入力したテーブルとなっている。
【0060】
これに対し、作業記録ファイル44も同様のフォーマットになっている。
【0061】
そこで、作業記録ファイル44において作業結果を入力する項目である、ロープおよびブレーキの測定値として、表変換ファイル47のそれぞれの部品名、番号と照合し、相当する数値欄の値を、転記処理し、表示部23の上部に作業記録ファイル44への転記結果を、表示部23の下部の表変換表示部23bに表変換ファイル47をそれぞれ表示し、作業記録入力処理の結果を確認することができる。
【0062】
このような方法とすることにより,作業結果を紙片に記載した手書き文字から携帯端末の作業記録ファイルへ入力し直す作業が不要となり、省力化を図ることができるほか、誤入力を防止することができる。
【0063】
また、作業者の音声入力を文字に変換した結果と、該当する音声部を即再生して比較、確認することができ,誤入力を防止することができる。
【0064】
さらに、作業者の音声入力を文字に変換した結果を語句に分割することによって、作業記録ファイルに転記する作業を効率化することが可能となる。
【0065】
さらに、作業者の音声入力を文字に変換した結果を語群に分類して表に変換することによって、表変換後の語句と作業記録ファイル44との対応関係を推定して、作業記録ファイル44への転記処理を機械化することができる。
【0066】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成を置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…携帯端末装置、2…入出力部、3…処理部、4…記憶部、21…マイク、22…スピーカー、23…表示部、23a…文字変換表示部、23b…表変換表示部、24…操作部、31…文字変換処理部、32…音声再生処理部、33…単語分割処理部、34…用語分類処理部、35…作業記録入力処理部、41…音声ファイル、42…文字変換ファイル、43…文字・音声データ相関関係ファイル、44…作業記録ファイル、45…単語分割ファイル、46…辞書ファイル、47…表変換ファイル