(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079951
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】留め具
(51)【国際特許分類】
F16B 13/04 20060101AFI20240606BHJP
F16B 19/10 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F16B13/04 D
F16B19/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192674
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】磯村 恒久
【テーマコード(参考)】
3J025
3J036
【Fターム(参考)】
3J025AA02
3J025BA10
3J025CA01
3J025EA05
3J036AA05
3J036BA01
3J036FA06
(57)【要約】
【課題】グロメット体を構成する胴部の座屈時に留め付け対象の穴における胴部の挿入先側に位置される穴縁と胴部との間にの間に隙間が生じないようにする。
【解決手段】留め付け対象Pの穴Paにグロメット体2の胴部15を挿入した後に軸体1をグロメット体2内から所要量を抜き出すことで胴部15の少なくとも一部を頭部12側の基部17とこれと反対の端末部18との間で中心軸xから離れ出させるように座屈させて頭部12と胴部15とで留め付け対象Pを挟み付けて留めつく留め具である。胴部15の外面の一部を、中心軸xに沿う向きに続き、かつ、端末部18側に近づくに連れて中心軸xとの間の距離を漸増させる傾斜面19とすると共に、この傾斜面19の形成範囲において胴部15の肉厚20を端末部18側に近づくに連れて漸増させるようにしてなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、
頭部と胴部とを備え、前記軸体を前記頭部において開放して前記胴部の中心軸に沿って続く収容部に前記軸体の一部を前記開放箇所から外部に突き出させた状態で納めてなるグロメット体とからなり、
留め付け対象の穴に前記グロメット体の胴部を挿入した後に前記軸体の一部を利用して前記グロメット体内から所要量軸体を抜き出すことで前記胴部の少なくとも一部を前記頭部側の基部とこれと反対の端末部との間で前記中心軸から離れ出させるように座屈させて前記頭部と前記胴部とで留め付け対象を挟み付けて前記留め付け対象に留めつく留め具であって、
前記胴部の外面の一部を、前記中心軸に沿う向きに続き、かつ、前記端末部側に近づくに連れて前記中心軸との間の距離を漸増させる傾斜面とすると共に、この傾斜面の形成範囲において前記胴部の肉厚を前記端末部側に近づくに連れて漸増させるようにしてなる、留め具。
【請求項2】
前記傾斜面を、前記留め付け対象の穴に前記胴部を挿入したときに、前記傾斜面のいずれかの箇所が前記穴における前記挿入の挿入先側の穴縁に向き合うように形成させてなる、請求項1に記載の留め具。
【請求項3】
前記傾斜面を、平面によって構成させてなる、請求項1に記載の留め具。
【請求項4】
前記傾斜面の少なくとも一部は前記端末部に近づくに連れてその幅を漸減させてなる、請求項3に記載の留め具。
【請求項5】
前記胴部における前記傾斜面と前記端末部との間に前記座屈時に屈曲される薄肉のヒンジ部を形成させてなる、請求項1に記載の留め具。
【請求項6】
前記胴部は、2以上の胴部構成体を、これらの内側に前記収容部が形成されるように、前記基部と前記端末部とでそれぞれ一体化させてなる、請求項1に記載の留め具。
【請求項7】
2つの前記胴部構成体から前記胴部を構成させると共に、2つの前記胴部構成体の間に前記中心軸に沿う向きに続く開口部を形成させてなり、かつ、前記開口部における前記基部側の開口縁に前記端末部側に突き出す凸部を形成させてなる、請求項6に記載の留め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸体とその一部を納めてなるグロメット体とからなり、留め付け対象の穴にグロメット体を挿入した後の軸体の抜き出し操作によって挿入先側でグロメット体に座屈を生じさせてグロメット体の頭部と座屈箇所との間で留め付け対象を挟み付けてこれに留めつくように構成された留め具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
リベットスリーブとピンとからなるブラインドリベットとして、特許文献1に示されるものがある。
【0003】
特許文献1のものでは、留め付け対象の穴にリベットスリーブを挿入した後、リベットスリーブ内からピンを引き抜くと、リベットスリーブのシャンクが座屈し、これにより、リベットスリーブのヘッドと座屈箇所とで留め付け対象を挟み付けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、この種の留め具においては、前記座屈時、すなわち、前記挟み付け時に、留め付け対象の穴におけるリベットスリーブのシャンクの挿入先側の穴縁と、シャンクとの間に、隙間を生じさせてしまっていると、例えば留め付け対象が二枚のパネルであるときは、留め具により二枚のパネルの離間は抑止できるがリベットスリーブの中心軸に直交する向きにおける前記隙間の範囲でのパネルの移動や前記穴内での留め具の移動、すなわち、ガタつきは抑止できない。このようなガタつきは、例えば、この種の留め具を自動車を構成する二つの部品の留め付けに用いた場合、走行時の異音の原因となる。
【0006】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の留め具を前記のように座屈させたときに、座屈された後述のグロメット体を構成する胴部と留め付け対象の穴における前記胴部の挿入先側に位置される穴縁との間に前記胴部の中心軸に直交する向きの隙間が可及的に生じないようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、留め具を、
軸体と、
頭部と胴部とを備え、前記軸体を前記頭部において開放して前記胴部の中心軸に沿って続く収容部に前記軸体の一部を前記開放箇所から外部に突き出させた状態で納めてなるグロメット体とからなり、
留め付け対象の穴に前記グロメット体の胴部を挿入した後に前記軸体の一部を利用して前記グロメット体内から所要量軸体を抜き出すことで前記胴部の少なくとも一部を前記頭部側の基部とこれと反対の端末部との間で前記中心軸から離れ出させるように座屈させて前記頭部と前記胴部とで留め付け対象を挟み付けて前記留め付け対象に留めつく留め具であって、
前記胴部の外面の一部を、前記中心軸に沿う向きに続き、かつ、前記端末部側に近づくに連れて前記中心軸との間の距離を漸増させる傾斜面とすると共に、この傾斜面の形成範囲において前記胴部の肉厚を前記端末部側に近づくに連れて漸増させるようにしてなる、ものとした。
【0008】
前記傾斜面の傾斜の向きによって、前記胴部の挿入先側に位置される穴縁に対して向き合う傾斜面の箇所での胴部の肉厚は、これより端末部側に位置される胴部の肉厚よりも常に薄くなるようにすることができる。これにより、前記座屈時において、前記箇所はこれよりも座屈中心に近い位置に比し常に脆弱で前記軸体を抜き出すことにより胴部に作用される力により屈曲しやすく、したがって、前記座屈時に前記箇所よりも座屈中心に偏った位置において胴部の基部側が屈曲してしまう事態の可及的防止が図られる。
これによって、胴部が座屈するときは、前記胴部の挿入先側に位置される穴縁に、これに向き合う傾斜面の箇所を必ず押しつけさせた状態で、この箇所を中心として胴部の基部側を屈曲させることができる。この結果、座屈された胴部と留め付け対象の穴における前記胴部の挿入先側に位置される穴縁との間に前記中心軸に直交する向きの隙間が生じないようにすることができる。
【0009】
前記傾斜面を、前記留め付け対象の穴に前記胴部を挿入したときに、前記傾斜面のいずれかの箇所が前記穴における前記挿入の挿入先側の穴縁に向き合うように形成させておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0010】
また、前記傾斜面を、平面によって構成させることが、この発明の態様の一つとされる。
【0011】
また、前記傾斜面の少なくとも一部は前記端末部に近づくに連れてその幅を漸減させるように構成させることが、この発明の態様の一つとされる。
【0012】
また、前記胴部における前記傾斜面と前記端末部との間に前記座屈時に屈曲される薄肉のヒンジ部を形成させておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0013】
また、前記胴部を、2以上の胴部構成体を、これらの内側に前記収容部が形成されるように、前記基部と前記端末部とでそれぞれ一体化させたものとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0014】
また、2つの前記胴部構成体から前記胴部を構成させると共に、2つの前記胴部構成体の間に前記中心軸に沿う向きに続く開口部を形成させてなり、かつ、前記開口部における前記基部側の開口縁に前記端末部側に突き出す凸部を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、留め具を前記のように座屈させたときに、座屈されたグロメット体を構成する胴部と留め付け対象の穴における前記胴部の挿入先側に位置される穴縁との間に前記胴部の中心軸に直交する向きの隙間が可及的に生じないように留め具の留め付け状態を制御可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、この発明の一実施の形態にかかる留め具の斜視図である。
【
図2】
図2は、前記留め具を
図1と異なる向きから見て示した斜視図である。
【
図3】
図3は、前記留め具の要部破断斜視図である。
【
図4】
図4は、前記留め具の側面図であり、留め付け対象を想像線で示している。
【
図5】
図5は、グロメット体の胴部を座屈させて留め付け対象に留め付けた状態の留め具の側面図である。
【
図6】
図6は、グロメット体の胴部を座屈させて留め付け対象に留め付けた状態の留め具の側面図であり、留め付け対象の厚さを
図5に示される留め付け対象よりも薄くしたときの様子を示している。
【
図7】
図7は、前記座屈時における前記留め具の要部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1乃至
図13に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる留め具は、留め付け対象Pの穴Paに挿入した後に、後述のグロメット体2内から後述の軸体1を所用量抜き出す操作を行うことで、グロメット体2の胴部15を座屈させてこの胴部15における座屈により拡大変形した箇所と後述の頭部12との間で留め付け対象Pを挟み付ける機能を持つものである。
【0018】
かかる留め具は、典型的には、二以上の留め付け対象Pを留め具を介して一体化させるために用いられる。
具体的には、二以上の留め付け対象Pの穴Paを連通させるように二以上の留め付け対象Pを重ね合わせた状態から、かかる穴Paにグロメットの胴部15を挿入し、挿入先側においてかかる胴部15を座屈させることで、頭部12と胴部15との間で二以上の留め付け対象Pを挟み付けて留め具を介してこれらを一体化させる。
この意味で、かかる留め具は、リベットの代用となるものである。加えて、リベットと異なり、前記グロメット体2からの軸体1の前記抜き出し操作によって、リベットにおけるカシメに相当する前記胴部15の座屈を生じさせることができ、留め付け対象Pの一面側からの操作のみにより留め付け対象Pに対する留め付け作業を完結させることができる特長を有する。こうしたことから、かかる留め具は、ブラインドリベットなどとも称されている。
【0019】
かかる留め具は、軸体1と、グロメット体2とから構成されている。グロメット体2を合成樹脂から構成すれば、前記抜き出し操作によって前記座屈を生じさせて頭部12との間で留め付け対象Pをガタつき無く弾性的に挟み付けるようにすることができる。
軸体1とグロメット体2とを共に合成樹脂から構成する場合には、留め具は二色成形によって成形可能となる。
【0020】
図示の例では、留め具は、軸体1を合成樹脂により成形した後に、軸体1の一部を胴部15内に位置させるようにして、グロメット体2を合成樹脂により成形することで、構成されている。
グロメット体2の胴部15の内部形状は、軸体1の一部が位置されている箇所では、軸体1の外面形状に対し相補となる形状となる。
【0021】
前記グロメット体2は、頭部12と胴部15とを備え、前記軸体1を前記頭部12において開放して前記胴部15の中心軸xに沿って続く収容部16に前記軸体1の一部を前記開放箇所から外部に突き出させた状態で納めてなる。
【0022】
そして、この実施の形態にかかる留め具は、留め付け対象Pの穴Paに前記グロメット体2の胴部15を挿入した後に前記軸体1の一部(図示の例では後述のヘッド部5)を利用して前記グロメット体2内から所要量軸体1を抜き出すことで前記胴部15の少なくとも一部を前記頭部12側の基部17とこれと反対の端末部18との間で前記中心軸xから離れ出させるように座屈させて前記頭部12と前記胴部15とで留め付け対象Pを挟み付けて前記留め付け対象Pに留めつくようになっている。
【0023】
加えて、前記胴部15の外面の一部は、前記中心軸xに沿う向きに続き、かつ、前記端末部18側に近づくに連れて前記中心軸xとの間の距離を漸増させる傾斜面19によって構成されている。
この傾斜面19の形成範囲においては、前記胴部15はその周囲より薄肉になっている。それと共に、この傾斜面19の形成範囲においては前記胴部15の肉厚20(
図9、
図11、
図12参照)は前記端末部18側に近づくに連れて、言い換えれば、前記頭部12側から離れるに連れて漸増されるようになっている。
【0024】
すなわち、前記留め付け対象Pの穴Paに対して前記胴部15を挿入したときに、前記胴部15における前記挿入の挿入先側の穴縁Pbにいずれかの箇所29(
図4参照)を向き合わせる前記傾斜面19は、前記中心軸xに沿う向きに続く長さと、この中心軸xに直交する向きの幅とを持っている。
【0025】
また、前記傾斜面19は、前記留め付け対象Pの穴Paに前記胴部15を挿入したときに、前記傾斜面19のいずれかの箇所29が、前記中心軸xに直交する向きにおいて前記穴における前記挿入の挿入先側の穴縁Pbに向き合うように形成されている(
図4)。
【0026】
留め付け対象Pの厚さによって、前記留め付け対象Pの穴Paにおける前記胴部15の挿入先側に位置される穴縁Pbに対して向き合う(前記中心軸x方向において同じレベルとなる)こととなる傾斜面19の箇所29は変わる。前記厚さが大きければ大きいほど前記箇所29は胴部15の端末部18側となり、前記厚さが小さければ小さいほど前記箇所29は胴部15の基部17側となる。
【0027】
この実施の形態にあっては、前記軸体1は、棒状主体3と、この棒状主体3の一端部3aに形成されたアンカー部4と、この棒状主体3の他端部3bに形成されたヘッド部5とを備えた構成となっている。
【0028】
棒状主体3は、その中心軸y(
図8参照/図示の例では胴部15の中心軸xと一致)に直交する向きの断面を、いずれの位置においても実質的に円形とするように構成されている。
【0029】
アンカー部4は、長さを持つように構成され、その長さ方向(
図8における左右方向)を棒状主体3の中心軸yに直交させるように形成されている。棒状主体3の直径よりもアンカー部4の長さは大きい。アンカー部4の長さ方向中程の位置に、棒状主体3の一端部3aが、棒状主体3の中心軸yを挟んだ両側にそれぞれ、アンカー部4によって棒状主体3の中心軸yに直交する向きに突き出すフック部6が形成されるようにして、一体化されている。
【0030】
ヘッド部5も、長さを持つように構成され、その長さ方向(
図8における左右方向)を棒状主体3の中心軸yに直交させるように形成されている。棒状主体3の直径よりもヘッド部5の長さは大きく、かつ、ヘッド部5の長さはアンカー部4の長さよりも大きくなっている。ヘッド部5の長さ方向中程の位置に、棒状主体3の他端部3bが、棒状主体3の中心軸yを挟んだ両側にそれぞれ、ヘッド部5によって顎部7が形成されるように、一体化されている。
【0031】
棒状主体3には、前記中心軸xに沿った向きにおいて、複数の周回隆起部8が全体として多段状をなすように、形成されている。
各周回隆起部8はいずれも、アンカー部4側に向いた係合面8aと、ヘッド部5側に向いたテーパー面8bとを有している。各周回隆起部8のテーパー面8bはいずれも、ヘッド部5側に向かうに連れて周回隆起部8の突き出し量を減じさせる向きに傾斜している。各周回隆起部8の係合面8aはいずれも、前記中心軸xに直交する面となっている。
図示の例では、棒状主体3は、ヘッド部5からグロメット体2の頭部12内に入り込んだ箇所までの間を太径部9とし、この太径部9とアンカー部4との間を細径部10としている。太径部9と細径部10との間にはアンカー部4側に向いた周回段差面11が形成されている。
各周回隆起部8の稜部8c、すなわち、前記係合面8aとテーパー面8bとが接する稜部8cにおける細径部10の直径は太径部9の直径と実質的に等しいが、前記中心軸xに沿った向きにおいて隣り合う周回隆起部8の一方のテーパー面8bと他方の係合面8aとが接する谷部8dにおける細径部10の直径は太径部9の直径よりも小さくなっている。
【0032】
グロメット体2は、図示の例では、円板状の頭部12と、この頭部12の一面の中央から、この一面に直交する向きに突き出すように、この頭部12と一体化された胴部15を備えている。
胴部15における頭部12と一体化された箇所が胴部15の基部17であり、この基部17と反対の側の胴部15の端部が胴部15の端末部18となる。
頭部12は、留め付け対象Pの穴Paに入らない外径を備えている。一方、胴部15は留め付け対象Pの穴Paに挿入可能な太さを持ち、かつ、この穴に胴部15を挿入しきった位置でその端末部18側を挿入先側の穴縁Pbより先に一定の寸法分突き出させるようになっている(
図4)。
また、この実施の形態にあっては、胴部15における基部17と端末部18との間に位置される外面22(外側面)のうち前記傾斜面19と後述のヒンジ部25以外の部分は、図示しない仮想の円柱の表面に倣うように形成されている(
図1、
図2参照)。
傾斜面19は、前記仮想の円柱の一部をその長さ方向に沿う向きに削り取ったような外観となっており、したがって、前記仮想の円柱の表面よりも前記中心軸x側に位置するようになっている。
【0033】
また、端末部18は、胴部15との間に軸体1のアンカー部4を位置させるようにして形成されており、端末部18の外面は前記中心軸x上に頂部を位置させる半球状面21となっている。
【0034】
軸体1とグロメット体2とは以下のように一体化されている。図示の例では、図示しない成形型内に、先だって成形した軸体1を位置づけた状態で、グロメット体2を構成する合成樹脂を送り込んでグロメット体2を成形するようにしており、軸体1とグロメット体2とが接し合う範囲では、軸体1の外郭形状とグロメット体2の内部形状とは相補となる形状となっている。
(1)軸体1のアンカー部4は、グロメット体2の端末部18側に内蔵されている。図示の例では、アンカー部4の突き出し端面4aは胴部15の外面22と同面をなすようにして端末部18側において露出しているが、アンカー部4におけるこの突き出し端面4a以外の箇所は、胴部15及び端末部18によって覆われており、胴部15はフック部6に対する被フック部23を備えるようになっている。
(2)軸体1のヘッド部5は、グロメット体2の外部に位置している。
(3)軸体1の太径部9は、周回段差面11側をグロメット体2の頭部12内に位置させている。頭部12には、太径部9の外径と等しい穴径の貫通穴13と、周回段差面11に対応した周回被係合面14とが形成されている。
(4)軸体1の細径部10は、グロメット体2の胴部15内に位置されている。これにより、グロメット体2の胴部15内には、多段状をなす前記周回隆起部8に対応した凹所24が多段状に形成されている。
【0035】
前記傾斜面19は、胴部15の外面22の一部をなす。また、前記傾斜面19は胴部15における基部17と端末部18との間となる箇所に形成されている。
【0036】
また、この実施の形態にあっては、前記傾斜面19を平面から構成しており、傾斜面19の少なくとも一部は前記端末部18に近づくに連れてその幅を漸減させている。すなわち、かかる傾斜面19は前記中心軸xに対して傾斜しているが、湾曲を持たない平面となっている。
【0037】
図示の例では、
図2中、符号19aで示される基部17側の始端から、符号19bで示される胴部15の長さ方向中程の位置の終端までの範囲で、傾斜面19が形成されている。始端19aと基部17との間には段差19cが形成されている。図示の例では、傾斜面19の幅は始端19aから傾斜面19の全長の中程の位置19dまでは一定であるが、この中程の位置19dから終端19bまでの間は終端19bに近づくに連れて漸減するようになっている(
図2)。
軸体1の太径部9及び周回隆起部8の稜部8cの稜部8cを通る前記中心軸xに平行な線分L1(
図9参照)と前記傾斜面19(傾斜面19の倣う仮想の線分を
図9においてL2で示す。)との間の距離となる胴部15の肉厚20、図示の例では、後述の2つの胴部15構成体のかかる肉厚20(
図9参照)はそれぞれ、傾斜面19の終端19b側(
図9の下側)に近づくに連れて厚くなっている。
【0038】
また、胴部15における前記傾斜面19と前記端末部18との間には、前記座屈時に屈曲される薄肉のヒンジ部25が形成されている。
図示の例では、傾斜面19の終端19bと、露出したアンカー部4の突き出し端面4aとの間となる箇所に、楕円形の輪郭を持った凹みが形成されており、この凹みによって前記ヒンジ部25が形成されている。
【0039】
また、この実施の形態にあっては、胴部15は、2以上の胴部構成体30を、これらの内側に前記収容部16が形成されるように、前記基部17と前記端末部18とでそれぞれ一体化させて構成させている。
【0040】
図示の例では、2つの前記胴部構成体30から前記胴部15を構成させると共に、2つの前記胴部構成体30の間に前記中心軸xに沿う向きに続くと共に収容部16に対する窓穴状をなす開口部26を形成させてなり、かつ、前記開口部26における前記基部17側の開口縁に前記端末部18側に突き出す凸部27を形成させている。
この凸部27によって、前記座屈時に、2つの胴部構成体30の一方の基部17側の屈曲によって生じる応力と、2つの胴部構成体30の他方の基部17側の屈曲によって生じる応力とが、前記開口部26における前記基部17側の開口縁の中央に集中させずに、凸部27を挟んだ両側にそれぞれ分散されるようにすることができる。
図示の例では、軸体1は前記ヘッド部5側をこれを構成する樹脂のゲート側とし、グロメット体2は前記端末部18側をこれを構成する樹脂のゲート側とするように金型設計をすることが合理的であるところ、こうすると前記凸部27の形成箇所にウエルドラインが位置されることとなる。しかるに、前記凸部27によってウエルドラインへの応力集中を避けて前記座屈時にウエルドラインで胴部15が破断する事態を可及的に防止できる。かかる凸部27は前記のように金型設計した場合には、金型内においては前記ウエルドライン上での樹脂の溜まり部となる。
【0041】
図示の例では、開口部26は、前記中心軸xを挟んだ胴部15の直径方向両側にそれぞれ形成されている。
開口部26の基部17側の開口縁は傾斜面19の始端19aと実質的に同じレベルにあり、開口部26の端末部18側の開口縁は前記ヒンジ部25と実質的に同じレベルにある。
開口部26における胴部15の長さ方向に沿った開口縁は前記中心軸xに実質的に平行をなし、左右のこの開口縁間においては開口部26の幅は一定となっている。
この開口部26の形成範囲においては軸体1が露出している。
前記中心軸xを周回する向きでの二箇所の開口部26の幅はそれぞれ等しく、したがって、同じ向きでの二つの胴部構成体30の幅もそれぞれ等しくなっている。
【0042】
これにより、この実施の形態にあっては、2つの胴部構成体30を、これらの内側に前記収容部16が形成されるように、前記基部17と前記端末部18とでそれぞれ一体化させた構成となっている。
【0043】
図示は省略するが、前記中心軸xを周回する方向において間隔を開けて、胴部15に3つの開口部26を形成すれば胴部15は3つの胴部構成体30から構成でき、胴部15に4つの開口部26を形成すれば胴部15は4つの胴部構成体30から構成でき、 胴部15に5つの開口部26を形成すれば胴部15は5つの胴部構成体30から構成できる。すなわち、胴部15は、開口部26の数と同じ数の胴部構成体30から構成でき、開口部26の数が偶数なら胴部構成体30も偶数個となり、開口部26の数が奇数なら胴部構成体30も奇数個となる。
【0044】
この実施の形態にあっては、2つの胴部構成体30にそれぞれ、前記傾斜面19とヒンジ部25とが形成されている。2つの胴部構成体30は実質的に同じ形状となっている。すなわち、この実施の形態にあっては、前記中心軸xを挟んだ胴部15の直径方向両側においてそれぞれ、前記傾斜面19とヒンジ部25とを形成させている。
傾斜面19は、胴部構成体30における幅方向(前記中心軸xに直交する方向)において、中央に形成されており、傾斜面19の両側においては胴部構成体30の外面は図示しない仮想の円柱の表面に倣った湾曲面となっている。また、前述のように軸体1を構成する棒状主体3はその中心軸xに直交する向きの断面をいずれの位置においても実質的に円形としている。これにより、傾斜面19の形成範囲では、胴部構成体30はその幅方向の中程の位置において最も肉厚20を小さくしており(
図11、
図12)、これにより前記座屈が生じるときは、傾斜面19における前記挿入先側の穴縁Pbに向き合う箇所29を、傾斜面19に接し且つ前記中心軸xに直交する仮想の線分z(
図7、
図11、
図12参照)を中心とする
図7において符号rで示す向きに制御した状態で屈曲させることができる。
【0045】
留め付け対象Pの穴Paに留め付け対象Pの一面にグロメット体2の頭部12が当接する位置まで胴部15を挿入する(
図4)。
この状態から、グロメット体2の頭部12を留め付け対象Pの一面に押しつける押しつけ操作をしながら、軸体1をグロメット体2から抜き出させる抜き出し操作を行う。そうすると、軸部のフック部6がグロメット体2の胴部15の端末部18側を基部17側に近づける向きの力を胴部15に作用させる。この力により、胴部15は基部17側と端末部18側とをそれぞれ中心軸x側を屈曲外側とするように屈曲させ、かつ、両者の間を前記中心軸x側を屈曲内側とするように屈曲させて(座屈中心28)、前記中心軸xに沿う向きにおいて間隔を開けた三箇所において屈曲される(
図5)。この実施の形態にあっては、前記ヒンジ部25により端末部18側の屈曲中心が制御されるようになっている。これにより、留め付け対象Pの他面側において胴部15を座屈によりカシメ状に拡大変形させて前記頭部12との間で留め付け対象Pを内外、前後、表裏、あるいは上下から挟み付けるようにして、典型的には重ね合わされた複数の留め付け対象Pを留め具を介して一体化(締結)させることができる(
図5、
図6参照)。
図示の例では、前記抜き出し操作によって、2つの胴部構成体30はそれぞれ、前記のように変形されるようになっている。
【0046】
典型的には、留め具は、断続的に留め具を供給可能で、留め付け対象Pの穴Paへのグロメット体2の胴部15の挿入(打ち込み)操作に続いて、前記押しつけ操作および前記引き抜き操作とを行えるように構成された公知の自動締結機(図示は省略する。)を利用して留め付け対象Pに留め付けられる。
【0047】
前述のように、留め付け対象Pの厚さによって、前記留め付け対象Pの穴Paにおける前記胴部15の挿入先側に位置される穴縁Pbに対して向き合う傾斜面19の箇所29は変わる。傾斜面19は長さを持っており、この長さにより厚さを異にする複数種類の留め付け対象Pの留め付けに対応できるようになっている。
【0048】
また、留め付け対象Pの厚さによって、前記抜き出し操作による軸体1の抜き出し量は変わる。軸体1における前記抜き出し操作後に頭部12から突き出されている部分は、前記自動締結機などを用いて、必要に応じて切除される(
図7参照)。
【0049】
軸体1は、前記周回隆起部8のテーパー面8bによって、主としてグロメット体2側を収容部16を拡大させる向きに弾性変形させることで、グロメット体2の内部の破壊を招くことなく、グロメット体2から抜き出し可能となっている。図示の例では、頭部12と座屈された胴部15とで留め付け対象Pを挟み付けた状態は、多段状をなす周回隆起部8のうち、前記周回被係合面14上に位置される周回隆起部8の係合面8aに前記抜き出し操作を停止した状態において前記前記周回被係合面14を係合させて安定的に維持させるようになっている。
【0050】
前記傾斜面19の傾斜の向きによって、前記胴部15の挿入先側に位置される穴縁Pbに対して向き合う傾斜面19の箇所29での胴部15の肉厚20は、これより端末部18側に位置される胴部15の肉厚20よりも常に薄くなるようにすることができる。これにより、前記座屈時において、前記箇所29はこれよりも座屈中心28に近い位置に比し常に脆弱で前記力により屈曲しやすく、したがって、前記座屈時に前記箇所29よりも座屈中心28に偏った位置において胴部15の基部17側が屈曲してしまう事態の可及的防止が図られる。
これによって、胴部15が座屈するときは、前記胴部15の挿入先側に位置される穴縁Pbに、これに向き合う傾斜面19の箇所29を必ず押しつけさせた状態で、この箇所29を中心として胴部15の基部17側を屈曲させることができる。この結果、座屈された胴部15と留め付け対象Pの穴Paにおける前記胴部15の挿入先側に位置される穴縁Pbとの間に前記中心軸xに直交する向きの隙間が生じないようにすることができる(
図5、
図6)。
また、前記傾斜面19は平面から構成されていることから、座屈された胴部15の基部17と座屈中心28との間において、傾斜面19を留め付け対象Pに対し前記挿入の挿入先側において面的に押しつけさせることができる(
図5、
図6)。
【0051】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0052】
P 留め付け対象
Pa 穴
1 軸体
2 グロメット体
12 頭部
15 胴部
17 基部
18 端末部
19 傾斜面
20 肉厚
x 中心軸