(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079959
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】コイル部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240606BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240606BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20240606BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
H01F41/04 C
H01F27/32 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192697
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕一
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和弘
(72)【発明者】
【氏名】西川 朋永
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直明
(72)【発明者】
【氏名】陳 利益
【テーマコード(参考)】
5E044
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA03
5E062DD04
5E070AA01
5E070AB02
5E070AB08
5E070CB13
5E070CB17
5E070EA01
(57)【要約】
【課題】端子電極と磁性素体の絶縁性を高めつつ、導体ポストと端子電極の接続抵抗を低減する。
【解決手段】コイル部品1は、磁性素体Mに埋め込まれたコイル部3及び導体ポストP1と、実装面4を覆うカバー絶縁膜21と、開口21aを介して導体ポストP1に接続された端子電極E1とを備える。端子電極E1は、開口21aを介して導体ポストP1と接する導体層31と、導体層31よりも抵抗値の低い導電材料からなり、導体層31の表面を覆うとともに、開口31aを介して導体ポストP1と接する導体層32とを含む。これにより、端子電極E1と磁性素体Mの絶縁性を高めつつ、導体ポストP1と端子電極E1の接続抵抗を低減することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有する磁性素体と、
前記磁性素体に埋め込まれたコイルパターンと、
前記磁性素体に埋め込まれ、一端が前記コイルパターンに接続された導体ポストと、
前記導体ポストと前記磁性素体の間に設けられたポスト保護膜と、
前記磁性素体の前記実装面を覆うカバー絶縁膜と、
前記カバー絶縁膜上に設けられ、前記カバー絶縁膜に設けられた第1の開口を介して前記導体ポストの他端に接続された端子電極と、を備え、
前記端子電極は、第1の導電材料からなり、前記第1の開口を介して前記導体ポストの前記他端と接するとともに、前記導体ポストの前記他端の一部を露出させる第2の開口を有する第1の導体層と、前記第1の導電材料よりも抵抗値の低い第2の導電材料からなり、前記第1の導体層の表面を覆うとともに、前記第2の開口を介して前記導体ポストの前記他端の前記一部と接する第2の導体層とを含み、
前記第1の開口は、前記磁性素体の前記実装面と重ならない、コイル部品。
【請求項2】
前記第2の開口は、前記カバー絶縁膜と重ならない、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記カバー絶縁膜は、前記導体ポストの前記他端の一部を被覆する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記ポスト保護膜と前記カバー絶縁層が接する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1の導電材料は導電性樹脂である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第2の導電材料は金属である、請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1の導体層は、前記第2の開口を複数有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
コイルパターン及び一端が前記コイルパターンに接続された導体ポストを磁性素体で埋め込む工程と、
前記導体ポストの他端が露出するまで前記磁性素体の表面を研磨する工程と、
前記導体ポストの前記他端と同一平面を構成する前記磁性素体の実装面にカバー絶縁膜を形成する工程と、
前記導体ポストの前記他端が露出し、前記磁性素体の前記実装面が露出しないよう、前記カバー絶縁膜に第1の開口を形成する工程と、
前記第1の開口を介して前記導体ポストの前記他端と接するよう、前記カバー絶縁膜上に第1の導電材料からなる第1の導体層を形成する工程と、
前記導体ポストの前記他端の一部が露出し、前記カバー絶縁膜が露出しないよう、前記第1の導体層に第2の開口を形成する工程と、
前記第1の導体層の表面を覆うとともに、前記第2の開口を介して前記導体ポストの前記他端の前記一部と接し、前記第1の導電材料よりも抵抗値の低い第2の導電材料からなる第2の導体層を形成する工程と、を備えるコイル部品の製造方法。
【請求項9】
前記第2の開口を形成する工程は、前記第1の導体層にレーザービームを照射することにより行う、請求項8に記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、コイルパターン及びこれに接続された導体ポストが磁性素体で埋め込まれた構造を有するコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルパターン及びこれに接続された導体ポストが磁性素体に埋め込まれた構造を有するコイル部品が開示されている。特許文献1においては、導体ポストと磁性素体の間には絶縁膜が設けられており、これにより導体ポストと磁性素体の絶縁が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコイル部品においては、導体ポストに接続される端子電極が導電性樹脂材料によって構成されている。
【0005】
本開示においては、コイルパターン及び導体ポストが磁性素体で埋め込まれた構造を有するコイル部品及びその製造方法において、導体ポスト及び端子電極と磁性素体の絶縁性を高めつつ、導体ポストと端子電極の接続抵抗を低減する技術が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面によるコイル部品は、実装面を有する磁性素体と、磁性素体に埋め込まれたコイルパターンと、磁性素体に埋め込まれ、一端がコイルパターンに接続された導体ポストと、導体ポストと磁性素体の間に設けられたポスト保護膜と、磁性素体の実装面を覆うカバー絶縁膜と、カバー絶縁膜上に設けられ、カバー絶縁膜に設けられた第1の開口を介して導体ポストの他端に接続された端子電極とを備え、端子電極は、第1の導電材料からなり、第1の開口を介して導体ポストの他端と接するとともに、導体ポストの他端の一部を露出させる第2の開口を有する第1の導体層と、第1の導電材料よりも抵抗値の低い第2の導電材料からなり、第1の導体層の表面を覆うとともに、第2の開口を介して導体ポストの他端の一部と接する第2の導体層とを含み、第1の開口は磁性素体の実装面と重ならない。
【0007】
本開示の一側面によるコイル部品の製造方法は、コイルパターン及び一端がコイルパターンに接続された導体ポストを磁性素体で埋め込む工程と、導体ポストの他端が露出するまで磁性素体の表面を研磨する工程と、導体ポストの他端と同一平面を構成する磁性素体の実装面にカバー絶縁膜を形成する工程と、導体ポストの他端が露出し、磁性素体の実装面が露出しないよう、カバー絶縁膜に第1の開口を形成する工程と、第1の開口を介して導体ポストの他端と接するよう、カバー絶縁膜上に第1の導電材料からなる第1の導体層を形成する工程と、導体ポストの他端の一部が露出し、カバー絶縁膜が露出しないよう、第1の導体層に第2の開口を形成する工程と、第1の導体層の表面を覆うとともに、第2の開口を介して導体ポストの他端の一部と接し、第1の導電材料よりも抵抗値の低い第2の導電材料からなる第2の導体層を形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
このように、本開示によれば、コイルパターン及び導体ポストが磁性素体で埋め込まれた構造を有するコイル部品及びその製造方法において、導体ポスト及び端子電極と磁性素体の絶縁性を高めつつ、導体ポストと端子電極の接続抵抗を低減する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態によるコイル部品1の外観を説明するための略斜視図である。
【
図2】
図2は、コイル部品1の模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、導体ポストP1とカバー絶縁膜21に設けられた開口21a及び導体層31に設けられた開口31aの位置関係を説明するための模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、導体層C0のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図5】
図5は、導体層C1のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図6】
図6は、導体層C2のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図7】
図7は、導体層C3のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図8】
図8は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図9】
図9は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図10】
図10は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図11】
図11は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図12】
図12は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図13】
図13は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図14】
図14は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図15】
図15は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図16】
図16は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図17】
図17は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態によるコイル部品1の外観を説明するための略斜視図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態によるコイル部品1は、Z方向をコイル軸とするコイル部3が磁性素体Mに埋め込まれた構造を有するチップ型のコイル部品である。磁性素体Mは、コイル軸と直交しXY面を構成する実装面4及び上面5を有している。実装面4と上面5は、互いに反対側に位置する。実装面4には端子電極E1,E2が設けられており、実装時においては、実装面4が回路基板と向かい合うよう、端子電極E1,E2が回路基板にハンダ付けされる。つまり、
図1に示すコイル部品1の上下方向は、実装時とは180°異なっている。
【0013】
図2は、本実施形態によるコイル部品1の模式的な断面図である。
【0014】
図2に示すように、本実施形態によるコイル部品1は、コイル軸方向(Z方向)に交互に積層された層間絶縁膜10~14及び導体層C0~C3を有している。導体層C0~C3はCuなどからなり、コイル部3を構成する。磁性素体Mは、磁性樹脂層M1,M2からなる。このうち、磁性樹脂層M1はコイル部3の内径領域、コイル部3の径方向における外側領域、並びに、コイル部3のコイル軸方向における一方側に設けられる。磁性樹脂層M2は、コイル部3のコイル軸方向における他方側に設けられる。磁性樹脂層M1,M2は、磁性フィラーとバインダー樹脂を含む複合磁性材料からなる。磁性樹脂層M1を構成する複合磁性材料と磁性樹脂層M2を構成する複合磁性材料は、互いに同じ材料であっても構わないし、互いに異なる材料であっても構わない。磁性フィラーとしては、鉄(Fe)やパーマロイ系材料などの金属磁性材料を用いることができる。バインダー樹脂としては、エポキシ樹脂を用いることができる。
【0015】
磁性樹脂層M1には導体ポストP1,P2が埋め込まれている。導体ポストP1,P2はCuなどからなり、Z方向に延在するピラー状の導体である。このうち、導体ポストP1の一端である下面Bは、導体層C0~C3によって構成されるコイルの一端に接続され、導体ポストP2の一端である下面Bは、導体層C0~C3によって構成されるコイルの他端に接続される。一方、導体ポストP1,P2の他端である上面Tは、実装面4と同一平面を構成するよう実装面4から露出し、それぞれ端子電極E1,E2に接続される。導体ポストP1,P2の側面S(Z方向に沿った面)は、ポスト保護膜15で覆われている。これにより、導体ポストP1,P2と磁性素体Mの間にポスト保護膜15が介在することから、導体ポストP1,P2と磁性素体Mの接触が防止され、両者の絶縁が確保される。また、導体ポストP1,P2を有する本実施形態のコイル部品1を回路基板等に実装すると、導体ポストP1,P2によって応力が緩和され、コイル部3へのダメージが低減される。このため、コイル部品1の実装信頼性も向上する。
【0016】
磁性素体Mの実装面4及び上面5は、それぞれカバー絶縁膜21,22で覆われている。このうち、カバー絶縁膜22については上面5のほぼ全面を覆うのに対し、カバー絶縁膜21には導体ポストP1,P2と重なる位置にそれぞれ開口21a,21bが設けられている。これにより、導体ポストP1,P2の上面T(XY面)は、カバー絶縁膜21の開口21a,21bからそれぞれ露出する。開口21a,21bの面積は導体ポストP1,P2の上面Tの面積よりも小さく、これにより、カバー絶縁膜21,22は、導体ポストP1,P2の上面Tの一部を被覆する。カバー絶縁膜21上には、端子電極E1,E2が設けられる。端子電極E1,E2は、例えば、Agなどからなる金属粉とバインダー樹脂を含む導電性樹脂材料からなる導体層31と、導体層31の表面に形成された金属からなる導体層32によって構成される。したがって、導体層32を構成する導電材料は、導体層31を構成する導電材料よりも抵抗値が低い。
【0017】
導体層32は、複数の金属の積層膜、例えばNiとSnの積層膜であっても構わない。NiとSnの積層膜は、銀ペーストなどの導電性樹脂材料よりも十分に低抵抗であるとともに、ハンダに対する高い耐熱性と高い濡れ性を有している。一方、下層に位置する導体層31は、上層に位置する導体層32と比べ、カバー絶縁膜21に対して高い密着性を得ることができるとともに、導電性樹脂の持つ高い柔軟性によって熱衝撃や外部応力を緩和することができるため、信頼性が高められる。
【0018】
端子電極E1,E2は、カバー絶縁膜21の開口21a,21bを介して、それぞれ導体ポストP1,P2の上面Tに接続される。このように、磁性素体Mの実装面4をカバー絶縁膜21で覆うことにより、端子電極E1,E2と磁性素体Mの接触が防止され、これにより製品の信頼性が高められる。また、磁性素体Mの上面5をカバー絶縁膜22で覆うことにより、製品の信頼性が高められるとともに、上面5に方向性マークなどを設けることが可能となる。
【0019】
また、導電性樹脂材料からなる導体層31には、導体ポストP1,P2の上面Tの一部を露出させる開口31a,31bが設けられている。これにより、導体ポストP1,P2の上面Tの一部は、導電性樹脂材料からなる導体層31を介することなく、金属からなる導体層32と直接接することになる。その結果、導体ポストP1,P2と導体層32の間の全面に導電性樹脂材料からなる導体層31が介在する場合と比べ、導体ポストP1,P2と導体層32の接続抵抗を低減することができる。
【0020】
図3は、導体ポストP1とカバー絶縁膜21に設けられた開口21a及び導体層31に設けられた開口31aの位置関係を説明するための模式的な平面図である。尚、導体ポストP2とカバー絶縁膜21に設けられた開口21b及び導体層31に設けられた開口31bの位置関係についても同様である。
【0021】
図3(a)に示す例では、導体ポストP1の上面Tの径をD3とし、カバー絶縁膜21に設けられた開口21aの径をD2とし、導体層31に設けられた開口31aの径をD1とした場合、
D1<D2<D3
を満たしている。ここで、カバー絶縁膜21に設けられた開口21aは、全体が導体ポストP1の上面Tと重なり、磁性素体Mの実装面4とは重ならない。これにより、端子電極E1が磁性素体Mと直接接することがないため、製品の信頼性が高められる。さらに、導体層31に設けられた開口31aは、全体がカバー絶縁膜21に設けられた開口21aと重なり、カバー絶縁膜21とは重ならない。このような構成により、金属などからなる導体層32がカバー絶縁膜21と直接接することがなく、両者の界面における剥離が防止される。また、導体ポストP1の上面Tの外周領域がカバー絶縁膜21によって被覆されているため、ポスト保護膜15の上端がカバー絶縁層21が接することになる。これにより、ポスト保護膜15とカバー絶縁層21が隙間なく密着することから、信頼性が高められる。
【0022】
図3(b)に示す例では、導体層31に複数の開口31aが設けられており、これら開口31aがいずれもカバー絶縁膜21に設けられた開口21aと重なり、カバー絶縁膜21とは重ならない。このように、導体層31に設ける開口31aの数は、複数であっても構わない。また、図示しないが、開口31aの形状が円形である必要はなく、矩形、十字形、ドーナツ型など、種々の平面形状を採り得る。
【0023】
図4~
図7は、それぞれ導体層C0~C3のパターン形状を説明するための略平面図である。
【0024】
図4に示すように、導体層C0にはコイルパターン100が設けられる。コイルパターン100は約1ターン周回するパターンであり、その両端は、層間絶縁膜11に設けられたビア11a,11bを介して導体層C1に接続される。
【0025】
図5に示すように、導体層C1にはコイルパターン110及び接続パターン111が設けられる。コイルパターン110は約1ターン周回するパターンであり、その一端は、層間絶縁膜11に設けられたビア11bを介して導体層C0のコイルパターン100の他端に接続されるとともに、その他端は、層間絶縁膜12に設けられたビア12bを介して導体層C2に接続される。接続パターン111は、導体層C0に設けられたコイルパターン100の一端と重なる位置に設けられており、層間絶縁膜11に設けられたビア11aを介して導体層C0のコイルパターン100の一端に接続されるとともに、層間絶縁膜12に設けられたビア12aを介して導体層C2に接続される。
【0026】
図6に示すように、導体層C2にはコイルパターン120及び接続パターン121が設けられる。コイルパターン120は約1ターン周回するパターンであり、その一端は、層間絶縁膜12に設けられたビア12bを介して導体層C1のコイルパターン110の他端に接続されるとともに、その他端は、層間絶縁膜13に設けられたビア13bを介して導体層C3に接続される。接続パターン121は、導体層C1に設けられた接続パターン111と重なる位置に設けられており、層間絶縁膜12に設けられたビア12aを介して導体層C1の接続パターン111に接続されるとともに、層間絶縁膜13に設けられたビア13aを介して導体層C3に接続される。
【0027】
図7に示すように、導体層C3にはコイルパターン130及び接続パターン131が設けられる。コイルパターン130は約0.5ターン周回するパターンであり、その一端は、層間絶縁膜13に設けられたビア13bを介して導体層C2のコイルパターン120の他端に接続されるとともに、その他端は、層間絶縁膜14に設けられたビア14bを介して導体ポストP2に接続される。接続パターン131は、導体層C2に設けられた接続パターン121と重なる位置に設けられており、層間絶縁膜13に設けられたビア13aを介して導体層C2の接続パターン121に接続されるとともに、層間絶縁膜14に設けられたビア14aを介して導体ポストP1に接続される。
【0028】
これにより、端子電極E1,E2間には、コイルパターン100,110,120,130が直列に接続され、合計で約3.5ターンのコイルが形成される。本実施形態によるコイル部品1は、層間絶縁膜10~14と導体層C0~C3が交互に積層されてなるコイル部3が磁性素体Mに埋め込まれた構造を有する埋め込み型のコイル部品であり、セラミックなどからなる磁性シートとコイルパターンが交互に積層されてなる積層型のコイル部品とは構造が異なる。例えば、積層型のコイル部品においては、積層方向に隣接するコイルパターン間に磁性シートが介在するが、本実施形態によるコイル部品1は、積層方向に隣接するコイルパターンが層間絶縁膜によって絶縁されており、両者間に磁性素体Mは介在しない。また、プリント基板上にコイルパターンを形成したタイプのシートコイルとも構造が異なる。
【0029】
そして、本実施形態においては、コイル部3を構成するコイルパターン100,110,120,130や接続パターン111,121,131については層間絶縁膜10~14によって磁性素体Mから絶縁され、導体ポストP1,P2についてはポスト保護膜15によって磁性素体Mから絶縁され、端子電極E1,E2についてはカバー絶縁膜21によって磁性素体Mから絶縁される。これにより、全ての導体パターンが磁性素体Mから絶縁されることから、高い絶縁特性を得ることが可能となる。
【0030】
ここで、層間絶縁膜10~14、ポスト保護膜15及びカバー絶縁膜21,22を構成する具体的な材料については特に限定されないが、ポスト保護膜15とカバー絶縁膜21,22が互いに異なる絶縁材料からなるものであっても構わない。これは、ポスト保護膜15については、磁性素体Mに埋め込まれるとともに、導体ポストP1,P2と接触するのに対し、カバー絶縁膜21,22については、コイル部品1の最表層を構成することから、製品の信頼性を高めるために求められる諸特性が異なるからである。
【0031】
具体的には、ポスト保護膜15については、シリカなどの無機材料からなるフィラーを含有する熱膨張係数の低い絶縁材料を選択することにより、導体ポストP1,P2の材料であるCuとの熱膨張係数差を低減することができる。これに対し、カバー絶縁膜21,22については、ヤング率の低い感光性樹脂材料を用いることにより、実装面4及び上面5における磁性素体Mの物理的な保護特性が高められるとともに、開口21a,21bの形成が容易となる。したがって、ポスト保護膜15としては、カバー絶縁膜21,22よりも熱膨張係数の低い絶縁材料を選択し、カバー絶縁膜21,22については、ポスト保護膜15よりもヤング率よりも低い絶縁材料を選択すればよい。また、カバー絶縁膜21,22を構成する絶縁材料に磁性フィラーを添加すれば、インダクタンスをより高めることも可能である。
【0032】
層間絶縁膜10~14については、磁性素体Mに埋め込まれるとともに、コイルパターン100,110,120,130や接続パターン111,121,131と接触することから、ポスト保護膜15と同じ絶縁材料を用いても構わない。層間絶縁膜10~14とポスト保護膜15に同じ絶縁材料を用いれば、材料コストを低減することが可能となる。
【0033】
次に、本実施形態によるコイル部品1の製造方法について説明する。
【0034】
図8~
図17は、本実施形態によるコイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図8~
図17には、1個のコイル部品1に相当する部分のみが示されているが、実際には、集合基板を用いて複数のコイル部品1が同時に作製される。
【0035】
まず、支持基板40を用意し(
図8)、その表面に層間絶縁膜10~14と導体層C0~C3を交互に形成することによりコイル部3を形成した後、層間絶縁膜14にビア14a,14bを形成し、さらに導体ポストP1,P2を形成する(
図9)。導体層C0~C3及び導体ポストP1,P2の形成は、電解メッキによって行うことができる。また、導体層C0~C3は、コイル部3の内径領域及びコイル部3の外側領域に位置する犠牲パターン41を含んでいる。
【0036】
次に、導体ポストP1,P2の露出面の全面を覆うポスト保護膜15を形成する(
図10)。導体ポストP1,P2の露出面の全面とは、Z方向に沿った側面S及びXY面を構成する上面Tである。次に、この状態でウェットエッチングを行うことにより、犠牲パターン41を除去する(
図11)。コイル部3を構成する導体パターンについては、層間絶縁膜10~14で覆われているため、エッチングされることはない。導体ポストP1,P2についても、ポスト保護膜15で覆われているため、エッチングされることはない。これにより、コイル部3の内径領域及び外側領域には、空間42が形成される。
【0037】
次に、犠牲パターン41の除去によって形成された空間42を磁性樹脂層M1で埋め込む(
図12)。次に、導体ポストP1,P2が露出するまで、磁性樹脂層M1の表面を研磨する(
図13)。この工程により、磁性樹脂層M1の実装面4と導体ポストP1,P2の上面Tが同一平面となる。また、研磨前と比べ、磁性樹脂層M1の実装面4側における平坦性が高められる。
【0038】
次に、支持基板40を除去した後、層間絶縁膜10を覆うよう、磁性樹脂層M1の下面側に磁性樹脂層M2を形成する(
図14)。その後、磁性樹脂層M2の表面を研磨することにより、上面5を平滑化しても構わない。次に、磁性素体Mの実装面4及び上面5にそれぞれカバー絶縁膜21,22を形成した後、導体ポストP1,P2の上面Tの一部が露出するよう、カバー絶縁膜21に開口21a,21bを形成する(
図15)。この時、開口21a,21bは、全体がそれぞれ導体ポストP1,P2の上面Tと重なり、磁性素体Mの実装面4とは重ならない位置に形成する。このため、開口21a,21bから磁性素体Mの実装面4が露出することはない。また、上述の通り、研磨によって磁性樹脂層M1の実装面4側における平坦性が高められていることから、カバー絶縁膜21の厚みは薄くても足りる。これにより、コイル部品1の全体の厚みを低減することができる。これに対し、ポスト保護膜15については、
図11に示す犠牲パターン41の除去において導体ポストP1,P2を保護するレジストとして機能することから、ある程度の厚みが必要である。このため、ポスト保護膜15の膜厚は、カバー絶縁膜21の厚みよりも厚くても構わない。
【0039】
次に、それぞれ開口21a,21bを介して導体ポストP1,P2に接続されるよう、カバー絶縁膜21上に導電性樹脂材料からなる導体層31を形成する(
図16)。導体層31は、スクリーン印刷などの厚膜工法によって形成することができる。上述の通り、開口21a,21bは、磁性素体Mの実装面4と重ならない位置に設けられていることから、導体層31が磁性素体Mと直接接することはない。次に、レーザービームを照射することにより、導体層31に開口31a,31bを形成する(
図17)。この時、開口31a,31bは、全体がそれぞれカバー絶縁膜21に設けられた開口21a,21bと重なり、カバー絶縁膜21とは重ならない位置に形成する。このため、開口31a,31bからカバー絶縁膜21が露出することはない。
【0040】
但し、レーザービームの照射によってカバー絶縁膜21が除去される条件であれば、レーザービームの照射位置が部分的にカバー絶縁膜21と重なっても構わない。例えば、
図3(c)において符号Aで示すように、一部がカバー絶縁膜21と重なるようレーザービームを照射すれば、符号Aで示す領域のカバー絶縁膜21の一部又は全部が除去され、導体ポストP1が新たに露出する。このような条件であれば、レーザービームの照射位置がカバー絶縁膜21と一部重なっても構わない。また、
図3(b)に示すように、より小径の開口31aをレーザービームの照射によって複数形成すれば、径の大きい単一の開口31aをレーザービームの照射によって形成するよりも、高い位置精度を得ることが可能である。さらに、レーザービームの照射位置によって開口31a,31bを形成するのではなく、スクリーン印刷時に開口31a,31bが形成されるようなスクリーンマスクを用いて導体層31を形成しても構わない。
【0041】
そして、バレルメッキ法などによってNiとSnの積層膜などからなる導体層32を成膜した後、ダイシングによって個片化すれば、本実施形態によるコイル部品1が完成する。
【0042】
このように、本実施形態においては、実装面4に端子電極E1,E2を直接形成するのではなく、カバー絶縁膜21を介して端子電極E1,E2を形成していることから、端子電極E1,E2と磁性素体Mの接触を防止することができる。しかも、端子電極E1,E2に含まれる導体層31に開口31a,31bを設けていることから、より低抵抗な導体層32の一部が導体ポストP1,P2と直接接触する。これにより、端子電極E1,E2と導体ポストP1,P2の接続抵抗を低減することが可能となる。
【0043】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0044】
例えば、上記実施形態では、コイル部3が4層の導体層C0~C3によって構成されているが、コイル部に含まれる導体層の層数については特に限定されない。また、上記実施形態では、各導体層C0~C2に設けられたコイルパターン100,110,120のターン数が約1ターンであるが、各導体層に設けられるコイルパターンのターン数については特に限定されない。
【0045】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0046】
本開示の一側面によるコイル部品は、実装面を有する磁性素体と、磁性素体に埋め込まれたコイルパターンと、磁性素体に埋め込まれ、一端がコイルパターンに接続された導体ポストと、導体ポストと磁性素体の間に設けられたポスト保護膜と、磁性素体の実装面を覆うカバー絶縁膜と、カバー絶縁膜上に設けられ、カバー絶縁膜に設けられた第1の開口を介して導体ポストの他端に接続された端子電極とを備え、端子電極は、第1の導電材料からなり、第1の開口を介して導体ポストの他端と接するとともに、導体ポストの他端の一部を露出させる第2の開口を有する第1の導体層と、第1の導電材料よりも抵抗値の低い第2の導電材料からなり、第1の導体層の表面を覆うとともに、第2の開口を介して導体ポストの他端の一部と接する第2の導体層とを含み、第1の開口は磁性素体の実装面と重ならない。これによれば、導体ポスト及び端子電極と磁性素体の絶縁性を高めつつ、導体ポストと端子電極の接続抵抗を低減することが可能となる。
【0047】
上記のコイル部品において、第2の開口はカバー絶縁膜と重ならなくても構わない。これによれば、第2の導体層と導体ポストの接触面積を十分に確保することが可能となる。
【0048】
上記のコイル部品において、カバー絶縁膜は導体ポストの他端の一部を被覆しても構わない。これによれば、第1の開口の形成が容易となる。
【0049】
上記のコイル部品において、ポスト保護膜とカバー絶縁層が接していても構わない。これによれば、ポスト保護膜とカバー絶縁層が密着することから、信頼性が高められる。
【0050】
上記のコイル部品において、第1の導電材料は導電性樹脂であっても構わない。これによれば、端子電極とカバー絶縁膜の密着性が高められる。
【0051】
上記のコイル部品において、第2の導電材料は金属であっても構わない。これによれば、端子電極を低抵抗化することができるとともに、ハンダに対する高い耐熱性と高い濡れ性を確保することが可能となる。
【0052】
上記のコイル部品において、第1の導体層は、第2の開口を複数有していても構わない。これによれば、第2の開口の位置精度が高められる。
【0053】
本開示の一側面によるコイル部品の製造方法は、コイルパターン及び一端がコイルパターンに接続された導体ポストを磁性素体で埋め込む工程と、導体ポストの他端が露出するまで磁性素体の表面を研磨する工程と、導体ポストの他端と同一平面を構成する磁性素体の実装面にカバー絶縁膜を形成する工程と、導体ポストの他端が露出し、磁性素体の実装面が露出しないよう、カバー絶縁膜に第1の開口を形成する工程と、第1の開口を介して導体ポストの他端と接するよう、カバー絶縁膜上に第1の導電材料からなる第1の導体層を形成する工程と、導体ポストの他端の一部が露出し、カバー絶縁膜が露出しないよう、第1の導体層に第2の開口を形成する工程と、第1の導体層の表面を覆うとともに、第2の開口を介して導体ポストの他端の一部と接し、第1の導電材料よりも抵抗値の低い第2の導電材料からなる第2の導体層を形成する工程とを備える。これによれば、導体ポスト及び端子電極と磁性素体の絶縁性が高められ、導体ポストと端子電極の接続抵抗が低減されたコイル部品を作製することが可能となる。
【0054】
上記のコイル部品の製造方法において、第2の開口を形成する工程は、第1の導体層にレーザービームを照射することにより行っても構わない。これによれば、第2の開口を容易に形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 コイル部品
3 コイル部
4 実装面
5 上面
10~14 層間絶縁膜
11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b ビア
15 ポスト保護膜
21,22 カバー絶縁膜
21a,21b,31a,31b 開口
31,32 導体層
40 支持基板
41 犠牲パターン
42 空間
100,110,120,130 コイルパターン
111,121,131 接続パターン
A カバー絶縁膜が除去される領域
B 導体ポストの下面
C0~C3 導体層
E1,E2 端子電極
M 磁性素体
M1,M2 磁性樹脂層
P1,P2 導体ポスト
S 導体ポストの側面
T 導体ポストの上面