(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079966
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】冷凍/空調機
(51)【国際特許分類】
F24F 1/22 20110101AFI20240606BHJP
F24F 11/36 20180101ALI20240606BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F24F1/22
F24F11/36
F25B49/02 520M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192717
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】522469512
【氏名又は名称】高谷 松生
(71)【出願人】
【識別番号】522469523
【氏名又は名称】安井 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093506
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 洋二
(72)【発明者】
【氏名】高谷 松生
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA52
3L260CA17
3L260FA02
(57)【要約】
【課題】冷媒に可燃性ガスを使用する際の電気回路や素子を搭載した基板に生じる絶縁破壊(スパーク)に起因する火災、爆発の懸念を回避可能とした冷凍/空調機を提供する。
【解決手段】室内機1の運転動作を制御するための電気回路を搭載した第1基板3は室外機2の運転動作を制御するための電気回路を搭載した第2基板4と共にシステム制御基板部50として室外機2の筐体内に設置される。第1基板3と第2基板4の全周囲は防爆絶縁膜34で被覆されている。第1基板3の基板31の動作時にスパーク発生の恐れが大なる回路実装領域HVCの絶縁防爆膜34aの厚みを動作時にスパーク発生の恐れが小なる回路実装領域LVCの絶縁防爆膜34bの厚みよりも熱伝導率が少なくとも1.0W/mk、絶縁破壊強度を少なくとも3.0kV/mm」を規準にして予想されるスパーク電圧に対応した厚みとした。第2基板4についても同様。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍又は空調処理される閉塞空間に設置される冷凍/空調子機と、前記閉塞空間と可燃性の冷媒を巡回させる冷媒管で結合された冷媒液化凝縮親機で構成された冷凍/空調機であって、
前記冷凍/空調子機の運転動作を制御するための電気回路を搭載した第1基板と前記冷媒液化凝縮親機の運転動作を制御するための電気回路を搭載した第2基板を備え、
前記第1基板と前記第2基板は、その全周囲を被覆した防爆絶縁膜を有し、
前記第1基板と前記第2基板は、システム制御基板部として前記冷媒液化凝縮親機に設置されてなり、
前記冷凍/空調子機に、前記冷媒液化凝縮親機の運転開始及び停止の制御と前記冷凍又は空調処理される閉塞空間内部の空調状態調整を指令する遠隔信号を受信して前記冷媒液化凝縮親機に設置した前記システム制御基板部に信号線を通して伝送し、前記指令に対応する前記システム制御基板部からの応答制御信号を受信するための遠隔信号送受信器を備えたことを特徴とする冷凍/空調機。
【請求項2】
前記冷凍/空調子機にガスセンサーを備え、当該冷凍/空調子機にガス漏洩発生時のガス検知信号を前記遠隔信号送受信器を介して前記冷媒液化凝縮親機に設置された前記システム制御基板部に与えて冷凍/空調動作を停止させることを特徴とする請求項1に記載の冷凍/空調機。
【請求項3】
前記冷媒液化凝縮親機にガスセンサーを備え、当該冷媒液化凝縮親機にガス漏洩発生時のガス検知信号を前記システム制御基板部に与えて冷凍/空調動作を停止させることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍/空調機。
【請求項4】
前記システム制御基板部を構成する前記第1基板と前記第2基板の動作時にスパーク発生の恐れが大なる回路実装領域の前記絶縁防爆膜の厚みが他のスパーク発生の恐れが小なる回路実装領域の前記絶縁防爆膜の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍/空調機。
【請求項5】
前記システム制御基板部の全体が防爆膜で封止された一個のユニット基板部品とされてなり、当該システム制御基板部に搭載された回路の内、動作時にスパーク発生の恐れが大なる回路実装領域の防爆膜の厚みが他のスパーク発生の恐れが前記実装領域よりも小なる回路実装領域の前記絶縁防爆膜の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍/空調機。
【請求項6】
前記冷凍/空調子機に送風器および風向調整器を備え、前記送風器および風向調整器を駆動する電気回路を前記冷媒液化凝縮親機に設置してなり、前記送風器および風向調整器を駆動する制御信号および電力を前記冷媒液化凝縮親機から送信および給電する構成としたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の冷凍/空調機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍/空調技術に係り、特に、冷媒(ヒートポンプ方式の熱媒体)に可燃性ガスを用いた冷凍/空調機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明における“冷凍/空調機”とは、住居用と業務用の冷凍機あるいは空調機を含めたヒートポンプ方式の冷凍技術、空調技術全般を意味し、一般的には“エアコン”といえば理解し易い機器である。ヒートポンプ方式の冷凍/空調機に用いる冷媒として、歴史的には所謂“フロン系ガス”が用いられてきた。しかし、地球環境破壊の観点、特に温暖化の問題から使用規制がなされ、現状では新規にフロン系のガス冷媒の使用は禁止されている。
【0003】
その代替として、プロパン、ブタンなどの炭化水素ガス、あるいは旧来から業務用の冷凍機に使用されていた吸熱材であるアンモニアガスが再び採用される状況にある。なお、アンモニアガスを用いる熱移動サイクルはフロン系や炭化水素ガスを用いる熱移動サイクルとは異なるので、ここでは炭化水素ガス、特に空気よりも重い炭化水素ガス、すなわち炭化水素冷媒を用いる冷凍/空調機を主たる対象とする。
【0004】
炭化水素冷媒としては、R600aと呼ばれるイソブタン、R290と呼ばれるプロパンなどが知られている。これらの冷媒はオゾン層を破壊せず、温暖化係数が低いことで、環境に与える負荷が小さいという特徴を有する。
【0005】
上記のように、冷媒として空気よりも重い炭化水素ガスの典型的なガスはプロパン、ブタンで、これらの炭化水素ガスは可燃性である。そして、上記した環境負荷が小さいと言う利点を有する一方で、冷媒に可燃性ガスを用いた場合に危惧されるガス漏れに伴う空気汚染、あるいは火災や爆発の発生に対して対応機器を安全サイド導くフェィルセ-フを徹底することが解決すべき重要課題となっている。
【0006】
一般的に、住居などの建物に設置する、所謂“エアコン”は、吸熱/放熱器等を備える冷凍/空調子機(室内機)と冷媒圧縮器等を備える冷媒凝縮親機(室外機)を有し、当該室内機の吸熱/放熱器と室外機の冷媒圧縮器の間を冷媒管(通常は銅管)で繋ぎ、冷凍サイクルに合わせて冷媒(ガス)を循環させて室内機の排出空気の脱熱(吸熱)あるいは加熱(放熱)をすることで室内の空調を行うものであることは前記したとおりである。なお、冷凍/空調子機(室内機)と冷媒圧縮器等を備える冷媒凝縮親機(室外機)を共通の筐体に収容したものもある。
【0007】
図5は冷凍/空調機の仕組みを簡単に説明する模式図で、冷媒(熱媒体とも称する)の循環系統を説明している。
図5において、参照符号100は吸熱器側筐体(冷凍/空調子機の筐体)、200は放熱器側筐体(冷媒凝縮親機)、500は冷媒管(熱媒体流通管)、130は膨張弁、140は圧縮/凝縮器を示す。運転を制御する制御回路等の付帯機器は図示を省略した。
【0008】
一般に、エアコンは室内機と室外機を建物の外壁9を隔てて設置されるものが多いが、冷凍機の場合は、吸熱器側筐体100と放熱器側筐体200は共通の容器に収容されて単一の機器とされる場合が多い。
図5において、吸熱器(冷凍空調子機)側筐体100では吸熱ラジエーター150で冷媒の冷媒管内の蒸発気体による当該筐体100内の吸熱が行われる。吸熱を“→C”で示す。吸熱した冷媒は圧縮凝縮器140で液化される。
【0009】
液化された冷媒は放熱器側筐体200に収納されている放熱器側筐体200を流通するときに放熱ラジエーター250で放熱器側筐体200の外部に熱を放出する。放出熱を“→H”で示す。放熱した冷媒は、膨張弁130で気化されて吸熱器(冷凍空調子機)側筐体100に収納されている吸熱ラジエーター150に循環する。これにより吸熱器側筐体100の内部が冷凍された雰囲気に処理される。
【0010】
図6は典型的な空調機である主として住居用に用いられるエアコンの設置例を説明するための概略図で、
図7は冷媒管接続構造部分の一例を説明する模式図である。
図6において、参照符号1は室内機、2は室外機である。室内機(前記の冷凍空調子機に相当)1は建物の外壁9の内側(室内)で通常は天井側(
図5の紙面上方)に設置される。室外機(前記の冷媒凝縮親機に相当)2は外壁9の外側(室外)で通常は地面側(
図6の紙面下方)に設置される。
【0011】
室内機1と室外機2を繋ぐ冷媒管5は、一般的には外壁9を貫通して配管される。この冷媒管5は通常は銅管が用いられ、室内機1と室外機2の冷媒出入口の接手管に接合される。冷媒管5を継ぎ足す場合も同様の接合構造を用いる。接続の具体例は後述する。
また、室内機1の運転動作を制御するための電気回路を搭載した第1基板3は当該室内機の筐体(ケーシング)内に設置されている。同様に、室外機2の運転動作を制御するための電気回路を搭載した第2基板4は当該室内機の筐体内に設置されている。
【0012】
第1基板3と第2基板4は制御線6で接続されて、室内機1側からの運転指令信号を室外機2に伝え、室外機2からの運転応答信号を室内機1に伝達して室内機を操作する利用者の要求に沿った空調状態を設定する。室内機1にはリモート信号受信/送信回路30が設けられており、利用者が操作するリモート端末(リモコン)60からの光信号あるいは電磁波信号での指示を第1基板3に与え、あるいは室外機2の第2基板4に伝えて所要の応答操作制御を実行するようになっている。
【0013】
なお、室内機1と室外機2の配線引き回し距離が長い場合など、制御線6を繋ぎ伸ばす場合には、繋ぎ接続箇所に防爆ジャンクションボックス7(7a,7b)を用いることで接続部でのスパーク発生を回避する防爆対策を取るのが好ましい。また、参照符号12a、12bは、それぞれ室内機1、室外機2の商用電源の給電コンセントを示す。
【0014】
図7において、配管引き回し側(配管側)の冷媒管5は室内機1と室外機2の冷媒出入口の冷媒管接続部11a,11bでそれらの繋手側の冷媒管(受け側冷媒管)に接合される。
図7に示した冷媒管接続構造では、配管側を冷媒管5Aとし、受け側を冷媒管5Bとして接続する場合を想定する。この場合、受け側の冷媒管5Bの端縁がテーパー形状(先細り)51Bに形成されているものとする。両冷媒管の関係Dは同一であることが望ましい。
【0015】
この受け側の冷媒管5Bのテーパー形状51Bに対応させて、配管側の冷媒管5Aの端縁を専用の工具を用いてフレア51Aに形状加工する。フレア51Aの内周斜壁は受け側の冷媒管5Bのテーパー形状51Bの端縁の外周斜壁に全周に渡って応接する形状である。
【0016】
配管側の冷媒管5Aのフレア51Aの内周に受け側の冷媒管5Bのテーパー形状51Bの部分を嵌合させ、ナット52Aをねじ52Bにねじ込み、ナット52Cも上記のねじ52Bにねじ込んで、両ナットの締め付け具合によってフレア61Aとテーパー形状61Bを密着接合する。なお、フレア51Aとテーパー形状51Bの対応面に適宜の笠状パッキング(銅リングなど)を介挿するのが望ましい。
【0017】
この種の空調設備では、設置において加工が必要となる上記したような繋ぎ目を必然的に有する。この繋ぎ目の近傍から冷媒の漏洩発生を完全に否定することはできない。空調機の設置時に規定に合った配管接続がなされてあっても、その後の環境変化、材料の経年劣化、あるいは地震等による外的衝撃などで冷媒の漏洩が生じることを否定できない。なお、継ぎ目部分に限らず、機器内部の様々な接続部分でも同様の漏洩が発生する可能性はある。また、大きな外力が冷媒管にかかったような場合に配管の途中に破損が生じてガスの漏洩が起きることも可能性としてはある。
【0018】
従来は、冷媒の熱交換効率の観点と、上記のような原因による冷媒の漏洩による火災などの発生がない安全性の観点から冷媒にフロンを含んだ不燃性のガスを用いるのが一般的であった。
しかしながら、地球環境破壊の懸念からフロンを含んだ冷媒の使用が禁止され、その代替品としてプロパンやブタンなどの炭化水素ガス、あるいはアンモニアガスの使用が考慮されるようになった。ここでは、主として空気よりも重い炭化水素ガスを冷媒とした冷凍/空調機について考察するが、アンモニアガスなどの空気よりも軽い冷媒を用いるものでは、実施例で後記するガス漏れセンサの設置位置は機器の上方となる。
【0019】
このような可燃性ガスを冷媒とした場合には、上記した冷媒の漏洩が引き起こす火災発生や爆発の懸念を防止する必要が生じる。空調機を構成する室外機、室外機には、それらの運転のための電気エネルギーを供給するための電気回路や冷凍/空調の動作を制御するための電子回路を搭載した配線基板(一般的にはプリント基板、単に基板とも称する)が収納されている。
【0020】
これらの配線基板の動作時には、その配線回路や部品端子の間において稀にスパークが生じることがある。この時、回路基板の近傍に漏洩した可燃性の冷媒のガスが漂っていると、その漏洩ガスに着火が起こって火災、あるいは爆発の原因となる。このような事故は未然に防ぐ必要がある。以下、この火災発生や爆発の懸念の防止をまとめて防爆と称する。
【0021】
可燃性ガスを冷媒とした場合の防爆対策に関連する先行技術を開示したものとして、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を挙げることができる。
特許文献1は、可燃性冷媒を用いた空気調和機の室内機を統括的に制御する制御回路を含む第1電装品、室内機を制御する統括的に第2電装品の一方又は双方を室外で、冷媒接続部分よりも高い位置に設置して安全性を向上させる空気調和機(エアコン)を開示する。
【0022】
特許文献2は、配線基板上に実装された複数の金属部品の少なくとも一つと安全保持部品としての電子部品を覆う樹脂膜を有し、当該樹脂膜は、少なくとも1.0W/mkの熱伝導率と少なくとも3.0kV/mmの絶縁破壊強さとを有する基板ユニットを開示する。
特許文献3は、室内機と室外機の電装品を熱交換器よりも上位に位置するようにケーシング(筐体)の上部に配置した空気調和器(エアコン)を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2022-124314号公報
【特許文献2】特開2017-188597号公報
【特許文献3】特許第3807004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
上記した文献に開示された先行技術は、何れも、冷媒に可燃性ガスとしての炭化水素ガス(プロパン、ブタンなど)の使用を想定したものであり、これらの炭化水素ガスの比重は、空気を1.0とした場合に、それぞれ1.56(プロパン)、2.09(ブタン)で、平均mol分子量は空気が約29g/mol、プロパンが約44g/mol、ブタンが約58g/molであり、空気よりも重いことを前提としている。
【0025】
そして、上記特許文献1、3では、その電装品(通常、基板を用いて構成される)を冷媒の漏洩を考慮して、機器の上位に設置することで電装品にスパークが生じても漏洩ガスとの接触を極力回避するようにしている。
また、特許文献2では、電装品を実装した基板の防爆基準が基板の温度上昇で確保できない可能性を、スパーク安全性が特に要求される素子の搭載領域に樹脂膜を樹脂膜で覆い、その熱伝導率を少なくとも1.0W/mk、絶縁破壊強度を少なくとも3.0kV/mmとした基板ユニットとしている。
【0026】
上記の特許文献1、3に開示された先行技術では、室内機や室外機の周辺の空気流が漏洩ガスの巻き上げで電装部品に達する可能性について考慮されていない。また、特許文献2の基板ユニットは、スパーク安全性が特に要求される素子(実施例ではツェナーダイオード)の搭載領域当の特定領域にのみ上記した樹脂膜を充填している。基板に搭載される他の領域の配線や素子についても、設置環境や経年に伴う塵埃の付着でその絶縁破壊能が低下することについては考慮されていない。
本発明の目的は、冷媒に可燃性ガスを使用する際の電気回路や素子を搭載した基板に生じる絶縁破壊(スパーク)やコロナ放電(以下、単にコロナ)、アーク放電(以下、単にアーク)等に起因する火災、爆発の懸念を回避可能とした冷凍/空調機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記目的を達成するための本発明の典型的な構成を以下に記載する。なお、ここでは、本発明の構成の理解を容易にするために、発明の構成に後述する実施例の図面に用いる参照符号を付してある。
【0028】
(1)本発明に係る冷凍/空調機は、冷凍又は空調処理される閉塞空間に設置される冷凍/空調子機1と、閉塞空間と可燃性の冷媒を巡回させる冷媒管5で結合された冷媒液化凝縮親機2で構成される。
そして、冷凍/空調子機の運転動作を制御するための電気回路を搭載した第1基板3と冷媒液化凝縮親機2の運転動作を制御するための電気回路を搭載した第2基板4を備え、第1基板3と第2基板4の全周囲に防爆絶縁膜34が被覆されている。
【0029】
第1基板3と第2基板4は、システム制御基板部50として冷媒液化凝縮親機2に設置され、冷凍/空調子機1には冷媒液化凝縮親機2の運転開始及び停止の制御と冷凍又は空調処理される閉塞空間内部の空調状態調整を指令する遠隔信号を受信して冷媒液化凝縮親機2に設置したシステム制御基板部50に信号線6を通して伝送し、その指令に対応するシステム制御基板部50にからの応答制御信号を受信するための遠隔信号送受信器30を備えた。
【0030】
(2)また、冷凍/空調子機1にガスセンサー40aを備え、当該冷凍/空調子機1にガス漏洩発生時のガス検知信号を、遠隔信号送受信器30を介して冷媒液化凝縮親機2に設置されたシステム制御基板部50に与えて冷凍/空調動作を停止させる構成とした。
【0031】
(3)また、冷媒液化凝縮親機2にガスセンサー40bを備え、当該冷媒液化凝縮親機2にガス漏洩発生時のガス検知信号をシステム制御基板部50に与えて冷凍/空調動作を停止させる構成とした。
【0032】
(4)システム制御基板部50を構成する第1基板3と第2基板4の動作時にスパーク発生の恐れが大なる回路実装領域HVCの絶縁防爆膜34aの厚みを他のスパーク発生の恐れが小なる回路実装領域LVCの絶縁防爆膜34bの厚みよりも厚くした。
絶縁防爆膜34(34a、34b)は、シリコーン、エポキシ、ウレタンなどが好適で、特にシリコーンは耐アーク性もよく取り扱いも容易である。
【0033】
(5)システム制御基板部50の全体が防爆膜で封止された一個のユニット基板部品とし、当該システム制御基板部50に搭載された回路の内、動作時にスパーク発生の恐れが大なる回路実装領域HVCの防爆膜34aの厚みを他のスパーク発生の恐れが前記実装領域LVCよりも小なる回路実装領域LVCの絶縁防爆膜34bの厚みよりも厚くした。コーティング膜は、その熱伝導率を少なくとも1.0W/mk、絶縁破壊強度を少なくとも3.0kV/mmを規準として、動作電圧や設置環境を考慮した厚みとする。
【0034】
(6)冷凍/空調子機1に送風器および風向調整器を備え、送風器および風向調整器を駆動する電気回路を冷媒液化凝縮親機2に設置してなり、送風器および風向調整器を駆動する制御信号および電力を冷媒液化凝縮親機2から送信および給電する構成とした。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、冷媒に可燃性ガスを使用する際の電気回路や素子を搭載した基板をコーティングする防爆膜として耐スパーク性(隊コロナ性、耐アーク性も含む)が良好な絶縁膜を用いることで、基盤内や基板周りに生じる絶縁破壊に起因する火災、爆発の懸念を回避し、温度や湿度などの環境からの影響を最小とする冷凍/空調機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明をセパレート式のエアコンに適用した場合の実施例1を説明する模式図
【
図2】
図1のシステム制御基板部の第1の構成例を第1基板と第2基板の構成例を説明する模式図
【
図3】
図1のシステム制御基板部の第2の構成例を説明する模式図
【
図4】本発明をセパレート式のエアコンに適用した場合の実施例2を説明する模式図
【
図5】冷凍/空調機の仕組みを簡単に説明する模式図、
【
図6】典型的な空調機である主として住居用に用いられるエアコンの設置例を説明するための概略図
【
図7】冷媒管接続構造部分の一例を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る冷凍/空調機の実施の形態につき、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例0038】
図1は本発明をセパレート式のエアコンに適用した場合の実施例1を説明する模式図で、基本的な設置態様は
図6で説明した従来例と同様であるので、重複して説明される部分もある。
図1において、参照符号1は室内機、2は室外機である。室内機1は建物の外壁9の内側の天井近くに設置される。室外機2は外壁9の外側で床側(地面側)に設置される。
【0039】
室内機1と室外機2を繋ぐ冷媒管5は外壁9を貫通して配管される。この冷媒管5は室内機1と室外機2の冷媒出入口の接手管(図示せず)に接合される。冷媒管5を継ぎ足す場合も同様の接合構造を用いる。接続の具体例は
図7で説明した通りである。
【0040】
また、室内機1の運転動作を制御するための電気回路を搭載した第1基板3は室外機2の運転動作を制御するための電気回路を搭載した第2基板4と共にシステム制御基板部50として室外機2の筐体内に設置される。第1基板3と第2基板4の全周囲は防爆絶縁膜34で被覆されている。
【0041】
図2は
図1のシステム制御基板部の第1の構成例を第1基板と第2基板の構成例を説明する模式図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA-A線に沿ってB方向から見た断面図を示す。第1基板と第2基板は共に同様の外見構成であるので、ここでは第1基板を例として説明する。参照符号3は第1基板、31はプリント基板、32は低電圧回路部品、33は比較的高電圧の回路部品、34は防爆絶縁膜で、34aは動作時にスパーク発生の恐れが大なる回路実装領域HVCの絶縁防爆膜、34bはスパーク発生の恐れが小なる回路実装領域LVCの絶縁防爆膜を示す。
【0042】
この絶縁防爆膜34(34a、34b)はシリコーンのコーティング等で形成され、スパークやコロナの発生の恐れが大なる回路実装領域HVCの絶縁防爆膜34aは動作時にスパークやコロナあるいはアークの発生の恐れが小なる回路実装領域LVCの絶縁防爆膜34bよりも厚みよりも厚く形成されている。厚みの大きさは、前記した「熱伝導率が少なくとも1.0W/mk、絶縁破壊強度を少なくとも3.0kV/mm」を規準にして、予想されるスパーク電圧に対応した厚みとする。
【0043】
絶縁防爆膜34(34a、34b)は、シリコーン、エポキシ、ウレタンなどの樹脂が好適で、本実施例では特にシリコーン樹脂を採用した。シリコー樹脂は湿気の吸収性が低く、耐スパーク性、耐アーク性、耐コロナ性(以下、スパークやコロナ等)もよい絶縁材である。
絶縁防爆膜34aと34bとで異なる膜厚のコーティングは、ポッティング回数、二段塗布、あるいは型抜きなどで実現できる。また、熱軟化性の樹脂膜では、膜厚保部分に樹脂シートを多重重ねして加熱することでも実現できる。
【0044】
図3は
図1のシステム制御基板部の第2の構成例を説明する模式図であり、(a)は第2の構成例の断面模式図、(b)は第3の変形例の断面模式図である。第2の構成例は第1基板3と第2基板4の2枚の基板を重ね合わせてシステム制御基板部50とした。
【0045】
図3の(a)では、スパークやコロナ等の発生の恐れが大なる回路実装領域HVC同士とスパークやコロナ等の発生の恐れが小なる回路実装領域LVC同志を各基板の一方側に背中合わせに合わせ、この部分の絶縁防爆膜34aの厚みをスパークやコロナ等の発生の恐れが小なる回路実装領域LVCの絶縁防爆膜34bよりも厚くしたものである。両基板の間にも絶縁防爆膜が塗布されていることは言うまでもない。膜厚については前記と同様の基準である。
【0046】
図3の(b)では、スパークやコロナ等の発生の恐れが大なる回路実装領域HVCとスパークやコロナ等の発生の恐れが小なる回路実装領域LVCとを互いに基板の反対側に位置させた。そして、回路実装領域HVCの絶縁防爆膜34aの厚み、スパークやコロナ等の発生の恐れが小なる回路実装領域LVCの絶縁防爆膜34bの厚みを2枚の基板の表裏において前記
図2で説明したものと同様にしたものである。この構成例でも両基板の間に絶縁防爆膜が塗布されていることは言うまでもない。
【0047】
なお、室内機1には室外機2の運転開始及び停止の制御と室内機1の空調状態調整を指令する遠隔信号を受信して室外機2に設置したシステム制御基板部50に信号線6を通して伝送し、その指令に対応するシステム制御基板部50にからの応答制御信号を受信するための遠隔信号送受信器30を備えている。
【0048】
また、室内機1にガスセンサー40aを備え、当該室内機1にガス漏洩が発生した時のガス検知信号を、遠隔信号送受信器30を介して室外機2に設置されたシステム制御基板部50に与えて空調動作を停止させる構成としている。
【0049】
さらに、室外機2にガスセンサー40bを備え、当該室外機2にガス漏洩が発生した時のガス検知信号をシステム制御基板部50に与えて空調動作を停止させる構成としている。
【0050】
そして、室内機1には送風器および風向調整器を備え、送風器および風向調整器を駆動する電気回路を室外機2に設置しており、この送風器および風向調整器を駆動する制御信号および電力を室外機2から送信および給電する構成としている。
なお、室内機1への駆動電源を室外機2側から供給する給電線を設ける場合、ガスセンサーの検知信号やシステム制御基板部50から室内機1に与える応答信号(制御信号)を、給電線を用いた電力線通信、すなわちPLC伝送(パワーラインコミュニケーション)方式とすることもできる。
【0051】
実施例1の構成としたことにより、冷媒に可燃性ガスを使用する際の電気回路や素子を搭載した基板コーティングする防爆膜として耐スパーク性等が良好な絶縁膜を用いることで、基板内や基板周りに生じる絶縁破壊等に起因する火災、爆発の懸念を回避した冷凍/空調機を提供することができる。
実施例2の構成としたことで、第1基板との第2基板の機能の一部を実行する回路機能を共通化することで、回路規模の低減を図ることができ、室外機の筐体利用効率を向上することもできる。