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特開2024-79971二酸化炭素分離用組成物およびこれを用いた二酸化炭素分離材
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  • 特開-二酸化炭素分離用組成物およびこれを用いた二酸化炭素分離材 図1
  • 特開-二酸化炭素分離用組成物およびこれを用いた二酸化炭素分離材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079971
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離用組成物およびこれを用いた二酸化炭素分離材
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20240606BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20240606BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20240606BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20240606BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20240606BHJP
   B01D 71/60 20060101ALI20240606BHJP
   B01D 71/74 20060101ALI20240606BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20240606BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20240606BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20240606BHJP
   C08L 79/02 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B01J20/26 A
B01D69/00 500
B01D71/06
B01D71/52
B01D71/56
B01D71/60
B01D71/74
B01J20/22 A
B01J20/24 A
C08L101/02
C08L79/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192733
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 教博
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕大
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 澄人
(72)【発明者】
【氏名】増田 清司
【テーマコード(参考)】
4D006
4G066
4J002
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA41
4D006HA01
4D006MA01
4D006MA09
4D006MA10
4D006MA22
4D006MA31
4D006MB03
4D006MB04
4D006MB09
4D006MB10
4D006MC03
4D006MC04
4D006MC07X
4D006MC11
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC28
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC39
4D006MC45
4D006MC48
4D006MC58
4D006MC60X
4D006MC62
4D006MC63
4D006MC65
4D006NA45
4D006PA01
4D006PB17
4D006PB19
4D006PB63
4D006PB64
4D006PB68
4G066AA80B
4G066AC01C
4G066AC22B
4G066AC27B
4G066BA38
4G066CA35
4G066DA02
4G066DA03
4G066EA13
4J002AA031
4J002AA051
4J002AA071
4J002AB011
4J002AB041
4J002AB051
4J002BE011
4J002BE021
4J002BG131
4J002BJ001
4J002CH021
4J002CK051
4J002CM011
4J002CM012
4J002DE056
4J002DE206
4J002DE226
4J002EN046
4J002EN106
4J002EN116
4J002EN137
4J002EU026
4J002EU027
4J002EU076
4J002EU117
4J002EU136
4J002EU187
4J002EV086
4J002EW177
4J002EY017
4J002FD027
4J002FD202
4J002FD206
4J002FD207
4J002GD01
4J002GD05
4J002GR00
4J002HA05
(57)【要約】
【課題】実運転で想定される条件下で、低分圧または低濃度の二酸化炭素含有ガス組成物から効率的に二酸化炭素を分離または回収することができる技術を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、極性基を有する高極性樹脂と、二酸化炭素キャリアと、沸点が200℃以上である極性溶剤と、を含む、二酸化炭素分離用組成物;ならびに、該二酸化炭素分離用組成物を含む、二酸化炭素分離膜、二酸化炭素分離用吸収液、および二酸化炭素分離用固体吸収材が提供される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性基を有する高極性樹脂と、二酸化炭素キャリアと、沸点が200℃以上である極性溶剤と、を含む、二酸化炭素分離用組成物。
【請求項2】
前記高極性樹脂が、数平均分子量が1000以上である、アミン系高分子、アルコール系高分子、アミド系高分子、多糖類、およびエーテル系高分子から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項3】
前記二酸化炭素キャリアが、数平均分子量が1000未満であるオリゴアミン化合物を含む、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項4】
前記極性溶剤のHSP値が、ΔDが12以上22以下、ΔPが5以上15以下、ΔHが3以上30以下である、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項5】
前記極性溶剤が、イオン液体である、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離用組成物を含む分離機能層を有する、二酸化炭素分離膜。
【請求項7】
二酸化炭素/窒素比が1/99の二酸化炭素濃度の供給ガスを使用した透過度試験において、60℃、相対湿度15%における二酸化炭素/窒素の透過選択性が1000以上であり、二酸化炭素透過係数が600バーラー以上である、請求項6に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項8】
二酸化炭素/メタン比が1/9の二酸化炭素濃度の供給ガスを使用した透過度試験において、60℃、相対湿度30%における二酸化炭素/メタンの透過選択性が400以上であり、二酸化炭素透過係数が200バーラー以上である、請求項6に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項9】
二酸化炭素/水素比が1/9の二酸化炭素濃度の供給ガスを使用した透過度試験において、60℃、相対湿度30%における二酸化炭素/水素の透過選択性が50以上であり、二酸化炭素透過係数が100バーラー以上である、請求項6に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離用組成物を含む、二酸化炭素分離用吸収液。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離用組成物を含む、二酸化炭素分離用固体吸収材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素分離用組成物、および該二酸化炭素分離用組成物を用いた二酸化炭素分離材、具体的には、二酸化炭素分離膜、二酸化炭素分離用吸収液、または二酸化炭素分離用固体吸収材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルの実現に向けて、様々な二酸化炭素分離回収技術が開発されている。代表的な二酸化炭素分離回収技術としては、化学吸収法、物理吸収法、および膜分離法(例えば、特許文献1および2、非特許文献1)が挙げられる。
【0003】
化学吸収法は、二酸化炭素と結合する媒体を用いて、当該媒体と二酸化炭素との化学反応を利用して二酸化炭素を分離する技術である。物理吸収法は、二酸化炭素を吸収できる媒体と処理対象のガスを高圧・低温下で接触させて物理的に二酸化炭素を吸収させ、減圧または加熱して二酸化炭素を回収する技術である。これらの技術は、二酸化炭素の吸放出に大量のエネルギー投入が必要となる、二酸化炭素の放出に伴って媒体が揮散する、等の問題がある。また、物理吸収法は、低分圧または低濃度の二酸化炭素含有ガスへの適用には不向きである。
【0004】
これに対し、膜分離法は、高分子膜等を用い、圧力差を駆動力として二酸化炭素を分離回収する技術であり、化学吸収法や物理吸収法に比べて消費エネルギーが少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2020-531260号公報
【特許文献2】WO2017/146231
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING OF JAPAN,49(7),607-613
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の膜分離法(いわゆる、高分子膜、無機膜)は透過選択性が低く、低分圧または低濃度の二酸化炭素含有ガス組成物から、二酸化炭素を高い生産性で分離回収することができない。二酸化炭素キャリアを含む促進輸送膜は透過選択性が向上されているものの、液状では成膜性または膜安定性が不十分である、ハイドロゲルは乾燥により固化するため供給ガスを加湿する必要がある等、膜の性状によって駆動条件が制限されるという問題がある。
【0008】
以上のように、二酸化炭素分離回収技術においては、低分圧または低濃度の二酸化炭素含有ガス組成物から、実運転で想定される条件下で、効率的に二酸化炭素を分離または回収する方法が、未だ確立されていない。
【0009】
本発明の課題は、実運転で想定される条件下で、低分圧または低濃度の二酸化炭素含有ガス組成物から効率的に二酸化炭素を分離または回収することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの局面によれば、極性基を有する高極性樹脂と、二酸化炭素キャリアと、沸点が200℃以上である極性溶剤と、を含む、二酸化炭素分離用組成物が提供される。
1つの実施形態において、上記高極性樹脂が、数平均分子量が1000以上である、アミン系高分子、アルコール系高分子、アミド系高分子、多糖類、およびエーテル系高分子から選択される少なくとも1種を含む。
1つの実施形態において、上記二酸化炭素キャリアが、数平均分子量が1000未満であるオリゴアミン化合物を含む。
1つの実施形態において、上記極性溶剤のHSP値が、ΔDが12以上22以下、ΔPが5以上15以下、ΔHが3以上30以下である。
1つの実施形態において、上記極性溶剤が、イオン液体である。
本発明の別の局面によれば、上記二酸化炭素分離用組成物を含む分離機能層を有する、二酸化炭素分離膜が提供される。
1つの実施形態において、二酸化炭素/窒素比が1/99の二酸化炭素濃度の供給ガスを使用した透過度試験において、上記二酸化炭素分離膜の60℃、相対湿度15%における二酸化炭素/窒素の透過選択性が1000以上であり、二酸化炭素透過係数が600バーラー以上である。
1つの実施形態において、二酸化炭素/メタン比が1/9の二酸化炭素濃度の供給ガスを使用した透過度試験において、上記二酸化炭素分離膜の60℃、相対湿度30%における二酸化炭素/メタンの透過選択性が400以上であり、二酸化炭素透過係数が200バーラー以上である。
1つの実施形態において、二酸化炭素/水素比が1/9の二酸化炭素濃度の供給ガスを使用した透過度試験において、上記二酸化炭素分離膜の60℃、相対湿度30%における二酸化炭素/水素の透過選択性が50以上であり、二酸化炭素透過係数が100バーラー以上である。
本発明の別の局面によれば、上記二酸化炭素分離用組成物を含む、二酸化炭素分離用吸収液が提供される。
本発明の別の局面によれば、上記二酸化炭素分離用組成物を含む、二酸化炭素分離用固体吸収材が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の二酸化炭素分離用組成物によれば、高極性樹脂および沸点が200℃以上である極性溶剤から構成されるマトリクス中で二酸化炭素キャリアが二酸化炭素を効率的に輸送し得ることから、実運転で想定される条件下で、低分圧または低濃度の二酸化炭素含有ガス組成物から効率的に二酸化炭素を分離または回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の1つの実施形態による二酸化炭素分離膜の概略断面図である。
図2】本発明の1つの実施形態による二酸化炭素分離膜の概略断面図である。
図3】ガス透過度試験を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。本明細書中で、数値範囲を表す「~」は、その上限および下限の数値を含む。また、「重量」との表現がある場合は、重さを示すSI系単位として慣用されている「質量」と読み替えてもよい。「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0014】
≪A.二酸化炭素分離用組成物≫
本発明の実施形態による二酸化炭素分離用組成物は、高極性樹脂と、二酸化炭素キャリアと、沸点が200℃以上である極性溶剤(以下、「高沸点極性溶剤」または単に「極性溶剤」と称する場合がある)と、を含む。
【0015】
1つの実施形態において、二酸化炭素分離用組成物は温度依存的かつ可逆的にゾル-ゲル転移する。二酸化炭素分離用組成物のゾル-ゲル転移温度は、例えば30℃~80℃であり得る。この場合、二酸化炭素分離用組成物は、室温(23℃)ではゲル状の固体であり、駆動温度(例えば60℃)では流動性が増大して、例えばゾル状または液状の流動体であり得る。このような二酸化炭素分離用組成物は、加熱により粘性が低下するので二酸化炭素の拡散が促進され、二酸化炭素の透過性および吸収性に優れ得る。また、二酸化炭素分離材に成形する際の成形性および操作性に優れるとともに、二酸化炭素分離材に成形された後の形状安定性にも優れ得る。二酸化炭素分離用組成物のゾル-ゲル転移温度は、好ましくは30℃~70℃である。
【0016】
<高極性樹脂>
高極性樹脂としては、アミノ基、ヒドロキシル基、アミド基、カルボニル基、エーテル基等から選択されるルイス塩基性の極性基を有する高分子が用いられる。高極性樹脂は、二酸化炭素キャリアおよび極性溶剤と、水素結合による相互作用を発現することで、二酸化炭素分離用組成物中への、水素、窒素、メタン等の低極性分子の溶解を阻止し、二酸化炭素を選択的に透過させることができる。また、高沸点極性溶剤と共にオルガノゲルまたはオルガノゾルであるマトリクスを形成することから、膜中に水分を保持することが難しい低湿度条件下においても高い二酸化炭素分離効果が維持され得る。高極性樹脂は架橋構造を有していてもよい。
【0017】
高極性樹脂の数平均分子量は、例えば1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは4,000以上、さらに好ましくは7,000以上であり、その上限は特に制限はされないが、例えば5,000,000以下であり得る。高極性樹脂の重量平均分子量は、例えば1,000以上、好ましくは3,000以上、より好ましくは6,000以上、さらに好ましくは10,000以上であり、その上限は特に制限はされないが、例えば5,000,000以下であり得る。当該範囲の重量平均分子量および/または数平均分子量を有する高極性樹脂は、高沸点極性溶剤と共に十分に安定なオルガノゲルまたはオルガノゾルであるマトリクスを形成することから、製膜時および駆動時に高い安定性が発揮され得る。高極性樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、特に制限はされないが、例えば1~500、好ましくは1~100、より好ましくは1~20である。高極性樹脂の重量平均分子量および数平均分子量は、例えば、プルラン、ポリエチレングリコール等を標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0018】
高極性樹脂としては、アミン系高分子、アルコール系高分子、多糖類、アミド系高分子(例えば、(メタ)アクリルアミド等)、エーテル系高分子(例えば、ポリエチレングリコール等)等が挙げられる。なかでも、二酸化炭素キャリアおよび極性溶剤と、水素結合による相互作用を高密度で発現することから、アミン系高分子、アルコール系高分子、および多糖類が好ましく、アミン系高分子がより好ましく用いられ得る。
【0019】
アミン系高分子は、アミノ基を含む構成単位を有する高分子である。構成単位に含まれるアミノ基は1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよい。アミン系高分子の全アミン価は、例えば100KOHmg/g~1500KOHmg/g、好ましくは500KOHmg/g~1300KOHmg/gである。全アミン価が当該範囲内であれば、二酸化炭素分離用組成物中に多量の二酸化炭素を吸収することができる。全アミン価は、JIS1557-7に準じた方法で測定することができる。
【0020】
アミン系高分子の具体例としては、ポリエチレンイミン、ポリウレタンポリアミン、ポリビニルアミン、およびポリアリルアミン等が挙げられる。なかでも、二酸化炭素の吸収脱離におけるエネルギーが低減されることから、2級アミノ基、3級アミノ基の割合が全アミノ基の半分以上を占める、ポリエチレンイミン、1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ポリエチレンイミン、ポリウレタンポリアミン、1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ポリウレタンポリアミン、1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ポリビニルアミン、および1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ポリアリルアミン等が好ましく用いられる。
【0021】
ポリエチレンイミンは、特に制限されず、各種のものを使用できる。ポリエチレンイミンの数平均分子量は、例えば1,000以上、10,000以上、70,000以上、または100,000以上であり得、また例えば10,000,000以下であり得る。ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、例えば1,000以上、10,000以上、70,000以上、または100,000以上であり得、また例えば10,000,000以下であり得る。ポリエチレンイミンの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、例えば1~100、好ましくは1~50、より好ましくは1~10である。ポリエチレンイミンの市販品の例としては、日本触媒社製のSP-012、SP-018、SP-200、HM-2000、P-1000等が挙げられる。
【0022】
ポリウレタンポリアミンは、ウレタンユニットとアミンユニットとが繋がった構成単位を含む。ポリウレタンポリアミンの具体例としては、下記式(1)~(3)で表されるウレタンユニットと下記式(4)~(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位を含むポリウレタンポリアミン(I)が挙げられる。より具体的には、以下の構成単位のうち、1つ以上の構成単位を含むポリウレタンポリアミンが好ましく例示される。
・下記式(1)で表されるウレタンユニットと下記式(4)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(1)で表されるウレタンユニットと下記式(5)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(1)で表されるウレタンユニットと下記式(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(2)で表されるウレタンユニットと下記式(4)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(2)で表されるウレタンユニットと下記式(5)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(2)で表されるウレタンユニットと下記式(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(3)で表されるウレタンユニットと下記式(4)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(3)で表されるウレタンユニットと下記式(5)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、及び
・下記式(3)で表されるウレタンユニットと下記式(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位。
【化1】
【0023】
上記ポリウレタンポリアミン(I)は、下記式(7)~(9)で表されるカルバミン酸ユニット、下記式(10)~(11)で表されるアジリジンユニット、下記式(12)~(18)で表される尿素ユニットを含んでいてもよい。
【化2】
【0024】
ポリウレタンポリアミン(I)は、上記式(1)~(18)で表される構造単位を質量比で40質量%以上有するポリウレタンポリアミンであることが好ましく、60質量%以上有するポリウレタンポリアミンであることがより好ましく、80質量%以上有するポリウレタンポリアミンであることがさらに好ましい。上限としては100質量%である。
【0025】
ポリウレタンポリアミン(I)におけるウレタン比率は、例えば7%以上であり、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。上限としては90%程度である。ポリウレタンポリアミンにおけるウレタン比率は、1HNMRの面積比より、ウレタンユニット由来メチレンピーク面積/総メチレンピーク面積=モル%として求められる値である。
【0026】
ポリウレタンポリアミン(I)は、特開2021-147528号公報に記載の合成方法で合成することができる。
【0027】
アミン系高分子は、架橋していてもよい。架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0028】
アルコール系高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコールが挙げられる。なかでも、二酸化炭素キャリアおよび極性溶剤と、水素結合による相互作用を高密度で発現することから、ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
【0029】
多糖類の具体例としては、プルラン、デキストラン、デンプン、アミロース、アミロペクチン、キチン、キトサン、セルロース等が挙げられる。なかでも、溶解性、分散性が比較的良好であることから、プルラン、デキストラン、デンプン、アミロース、およびキトサンが好ましく、デンプンおよびアミロースが汎用性の観点からより好ましく用いられる。
【0030】
高極性樹脂は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
<二酸化炭素キャリア>
二酸化炭素キャリアとしては、二酸化炭素と可逆的に反応可能な物質、好ましくは二酸化炭素と可逆的にかつ選択的に反応可能な物質が用いられ得る。二酸化炭素キャリアを用いることにより、二酸化炭素と二酸化炭素キャリアとの可逆的な反応により促進輸送機構が発現する効果に加えて、二酸化炭素キャリアと高極性樹脂との水素結合による相互作用によって二酸化炭素分離用組成物中への、水素、窒素、メタン等の低極性分子の溶解を阻止することから、二酸化炭素キャリアと反応しないガスに比べて二酸化炭素の透過速度が増大し、結果として透過選択性も大幅に向上し得る。
【0032】
二酸化炭素キャリアとしては、アミン化合物(ただし、高極性樹脂に該当するものを除く)、アミノ酸、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。なかでも、高沸点極性溶剤への溶解性に優れることから、アミン化合物が好ましい。
【0033】
アミン化合物の具体例としては、オリゴアミン化合物、低分子アミン化合物が挙げられる。なかでも、蒸気圧が低く、処理ガス中に揮発しにくいことから、オリゴアミン化合物が好ましい。オリゴアミン化合物は、複数のアミノ基を有する化合物である。アミノ基は二酸化炭素と速やかに反応する点から1級アミノ基および/または2級アミノ基であることが好ましい。
【0034】
オリゴアミン化合物の沸点は、例えば200℃以上であり、好ましくは300℃以上、より好ましくは400℃以上、さらに好ましくは沸点を有さないことである。
【0035】
オリゴアミン化合物の数平均分子量は、例えば1000未満であり、好ましくは200以上1000未満、より好ましくは250~900、さらに好ましくは300~800である。オリゴアミン化合物の全アミン価は、例えば400KOHmg/g~1500KOHmg/g、好ましくは600KOHmg/g~1300KOHmg/gである。このようなアミン価および数平均分子量を有するオリゴアミン化合物は、二酸化炭素との反応性および二酸化炭素分離用組成物中の移動性に優れることから、透過選択性と透過効率との両方の点で有利である。オリゴアミン化合物の数平均分子量は、エブリオメータ等を用いて沸点上昇法によって測定することができる。沸点上昇法においては、一定量の溶媒を採取して沸点を測定し;次いで微量の溶質をその溶媒に溶解し、その溶液の沸点を測定した上で、下式を用いて計算する。これにより、溶質のモル質量を求めることができ、オリゴアミン化合物を溶質とする場合には、当該モル質量を数平均分子量とすることができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等を使用することができる。
・Δtb=ΔKb×m(沸点上昇度:Δtb〔K〕、モル沸点上昇:ΔKb〔K〕、溶質の質量モル濃度:m〔mol/kg〕)
・m=w/M×1000/W(溶質の質量:w〔g〕、溶質の質量モル濃度:m[mol/kg]、溶質のモル質量:M〔g/mol〕、溶媒の質量:W〔g〕)
オリゴアミン化合物の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、例えば1~20、好ましくは1~8、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1~2である。
【0036】
1つの実施形態において、オリゴアミン化合物の1級アミン価および2級アミン価の合計と3級アミン価との割合((1級アミン価+2級アミン価)/3級アミン価)は、例えば100/0~40/60、好ましくは100/0~50/50、より好ましくは100/0~60/40である。1級アミン価および2級アミン価の合計と3級アミン価との割合が当該範囲であると、二酸化炭素の吸着が容易化することから、二酸化炭素を効果的に組成物内に取り込むことが可能になる。
【0037】
オリゴアミン化合物の具体例としては、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ポリエチレンイミン、ピペラジン、ジエチレントリアミン、ジエチレントリアミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラエチレンペンタミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ペンタエチレンヘキサミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘキサエチレンヘプタミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、ヘプタエチレンオクタミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ヘプタエチレンオクタミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(2-アミノエチル)アミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性トリス(2-アミノエチル)アミン、テトラキス(2-アミノエチル)エチレンジアミン、テトラキス(2-アミノエチル)エチレンジアミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性テトラキス(2-アミノエチル)エチレンジアミン等が挙げられる。なかでも、蒸気圧が低く、処理ガス中に揮発しにくいことから、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ポリエチレンイミン、テトラエチレンペンタミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ペンタエチレンヘキサミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘキサエチレンヘプタミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、ヘプタエチレンオクタミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性ヘプタエチレンオクタミン、トリス(2-アミノエチル)アミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性トリス(2-アミノエチル)アミン、テトラキス(2-アミノエチル)エチレンジアミン、テトラキス(2-アミノエチル)エチレンジアミンの1級アミノ基の一部または全部が2級アミノ基に変換された変性テトラキス(2-アミノエチル)エチレンジアミンが好ましい。ポリエチレンイミンの市販品の例としては、日本触媒社製のSP-003、SP-006等が挙げられる。
【0038】
低分子アミン化合物の具体例としては、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)等のアルカノールアミン類、2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン、3-アセトアミドピロリジン等のピロリジン類、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン、3―(ヒドロキシメチル)ピペリジン等のピペリジン類、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン等のピペラジン類が挙げられる。二酸化炭素と速やかに反応する点から、アミン化合物は、1級アミノ基および/または2級アミノ基を有することが好ましい。
【0039】
アミノ酸の具体例としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、2,3-ジアミノプロピオン酸、アルギニン、オルニチン、カナリン、グルタミン、グルタミン酸、シスチン、プロリン、ヒスチジン、トリプトファン等が挙げられる。
【0040】
アルカリ金属炭酸塩の具体例としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0041】
アルカリ金属重炭酸塩の具体例としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
【0042】
アルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。
【0043】
二酸化炭素キャリアは、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
<極性溶剤>
極性溶剤(高沸点極性溶剤)としては、高極性樹脂および二酸化炭素キャリアを溶解もしくは分散することができ、沸点(大気圧における沸点)が200℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上である溶剤が用いられる。極性溶剤は、代表的には、室温(約23℃)で液体である。200℃以上の沸点を有する溶剤を用いることにより、駆動時の蒸発を抑制することができ、広い駆動条件での適用に有利である。極性溶剤は、沸点を有さない化合物であっても良い。上記極性溶剤(すなわち、室温で液体であり、高極性樹脂および二酸化炭素キャリアを溶解もしくは分散することができ、沸点が200℃以上である溶剤)が二酸化炭素と可逆的に反応可能である場合、当該極性溶剤は二酸化炭素キャリアとしても機能し得る。このような極性溶剤は、本発明の効果が得られる限りにおいて、二酸化炭素分離用組成物における二酸化炭素キャリアの一部または全部として用いられ得るが、二酸化炭素の効率的な分離回収の観点から、二酸化炭素キャリアの少なくとも一部、好ましくは全部が極性溶剤に該当しない物質で構成され得る。例えば、二酸化炭素分離用組成物が二酸化炭素キャリアとしても機能し得る極性溶剤を含む場合、当該極性溶剤を二酸化炭素キャリアとして取り扱わず、二酸化炭素キャリアの全部を極性溶剤に該当しない物質で構成することができる。
【0045】
高沸点極性溶剤のハンセン溶解度パラメータ(HSP値)は、例えばΔDが12以上22以下、ΔPが5以上15以下、ΔHが3以上30以下、好ましくはΔDが14以上20以下、ΔPが6以上14以下、ΔHが4以上29以下、より好ましくはΔDが15以上18以下、ΔPが7以上13以下、ΔHが5以上28以下である。HSP値が当該範囲内であれば、高極性樹脂および二酸化炭素キャリアを効果的に溶解もしくは分散できる。HSP値の具体例としては、トリエタノールアミン(ΔD:17.3、ΔP:7.6、ΔH:21)、トリエチエングリコール(ΔD:16、ΔP:12.5、ΔH:18.6)、1,6-ヘキサンジオール(ΔD:15.7、ΔP:8.4、ΔH:17.8)、1,9-ノナンジオール(ΔD:15.7、ΔP:7、ΔH:15.1)、N-メチルピロリドン(ΔD:18、ΔP:12.3、ΔH:7.2)、フタル酸ジメチル(ΔD:18.6、ΔP:10.8、ΔH:4.9)、カテコール(ΔD:20、ΔP:11.3、ΔH:21.8)、リン酸トリクレジル(ΔD:19、ΔP:12.3、ΔH:4.5)、リン酸(ΔD:14.7、ΔP:18.6、ΔH:28.4)、乳酸(ΔD:17、ΔP:8.3、ΔH:28.4)、オクタン酸(ΔD:15.7、ΔP:3.3、ΔH:8.2)等が挙げられる。HSP値は、下記[3]-[5]に記載の方法で求められる。
[3] Hansen, Charles (2007). Hansen Solubility Parameters: A user’s handbook, Second Edition. Boca Raton, Fla: CRC Press.
[4] Emmanuel Stefanis and Costas Panayiotou, Int J Thermophys (2008) 29:568-585
[5] HSPiP: Hansen Solubility Parameter in Practice. http://www.hansen-solubility.com/
【0046】
高沸点極性溶剤の具体例としては、N-メチルピロリドン(202℃)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(215℃)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(215℃)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(225℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(230℃)、カテコール(245℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(249℃)、1,6-ヘキサンジオール(250℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(256℃)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(261℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(275℃)、トリエチエングリコール(285℃)、フタル酸ジメチル(284℃)、1,9-ノナンジオール(288℃)、アジポニトリル(295℃)、テトラエチレングリコール(314℃)、トリエタノールアミン(335.4℃)、リン酸トリクレジル(410℃)、ポリエチレングリコール200(>200℃)、ポリエチレングリコール300(>200℃)、ポリエチレングリコール400(>200℃)、ポリエチレングリコール500(>200℃)、ポリエチレングリコール600(>200℃)、ポリエチレングリコール800(>200℃)等が挙げられる。
【0047】
高沸点極性溶剤の別の具体例としては、イオン液体が挙げられる。イオン液体は、特に限定されず、例えば、イミダゾリウム系、ピリジニウム系、ピロリジニウム系、ピペリジニウム系、アンモニウム系、ホスホニウム系等のカチオンと、ハロゲン化物イオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、等のアニオンとの組み合わせであり得る。高極性樹脂との親和性が高いことから、有機基の比較的小さい、炭素数13未満のジアルキルイミダゾリウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、テトラアルキルホスホニウムイオン等のカチオンと、乳酸イオン等のカルボン酸系アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン等のアニオンの組み合わせが好ましい。
【0048】
高沸点極性溶剤は一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
<その他の成分>
二酸化炭素分離用組成物は、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記高極性樹脂、二酸化炭素キャリア、および極性溶剤以外の成分をさらに含み得る。このような任意成分およびその含有割合は、目的等に応じて適切に選択され得る。
【0050】
<含有割合>
二酸化炭素分離用組成物における上記各成分の含有割合は、二酸化炭素分離材の構成、使用環境等に応じて調整され得る。二酸化炭素分離用組成物における高極性樹脂と二酸化炭素キャリアと極性溶剤との合計含有割合は、例えば60重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%である。
【0051】
二酸化炭素分離用組成物が二酸化炭素分離膜に適用される場合、二酸化炭素分離用組成物における高極性樹脂の含有割合は、例えば0.1重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~15重量%であり、より好ましくは1重量%~10重量%であり;二酸化炭素キャリアの含有割合は、例えば10重量%~79.9重量%、好ましくは15重量%~69.5重量%であり、より好ましくは20重量%~59重量%であり;極性溶剤の含有割合は、例えば20重量%~89.9重量%、好ましくは30重量%~80重量%であり、より好ましくは40重量%~75重量%である。
【0052】
二酸化炭素分離用組成物が二酸化炭素分離用吸収液に適用される場合、二酸化炭素分離用組成物における高極性樹脂の含有割合は、例えば0.01重量%~20重量%、好ましくは0.05重量%~10重量%であり、より好ましくは0.2重量%~5重量%であり;二酸化炭素キャリアの含有割合は、例えば20重量%~69.99重量%、好ましくは25重量%~64.95重量%であり、より好ましくは30重量%~59.8重量%であり;極性溶剤の含有割合は、例えば30重量%~79.99重量%、好ましくは35重量%~74.95重量%であり、より好ましくは40重量%~69.8重量%である。
【0053】
二酸化炭素分離用組成物が二酸化炭素分離用固体吸収材に適用される場合、二酸化炭素分離用組成物における高極性樹脂の含有割合は、例えば0.1重量%~40重量%、好ましくは0.2重量%~30重量%であり、より好ましくは0.5重量%~20重量%であり;二酸化炭素キャリアの含有割合は、例えば20重量%~99重量%、好ましくは30重量%~98重量%であり、より好ましくは40重量%~97重量%であり;極性溶剤の含有割合は、例えば0.1重量%~79.9重量%、好ましくは0.2重量%~69.8重量%であり、より好ましくは0.5重量%~59.5重量%である。
【0054】
<調製方法>
二酸化炭素分離用組成物は、液状の混合物が得られる温度条件下、例えば20℃~100℃の温度条件下で上記各成分を混合し、極性溶剤に溶解もしくは分散することによって調製され得る。
【0055】
≪B.二酸化炭素分離材≫
A項に記載の二酸化炭素分離用組成物は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離するための二酸化炭素分離材に適用され得る。
【0056】
<二酸化炭素分離膜>
二酸化炭素分離材は、A項に記載の二酸化炭素分離用組成物を含む分離機能層を有する、二酸化炭素分離膜であり得る。
【0057】
二酸化炭素分離膜の有する分離機能層は、A項に記載の二酸化炭素分離用組成物のみから構成されてもよく、支持体をさらに含んでいても良い。支持体を含む分離機能層では、例えば、多孔質材料の支持体が用いられ、二酸化炭素分離用組成物は支持体の空孔内に保持され得る。支持体を用いることにより、分離機能層を安定に維持することができる。
【0058】
二酸化炭素分離膜は、さらに保護層を含んでいてもよい。例えば、図1に例示する二酸化炭素分離膜100aは、下側保護層10および上側保護層30とこれらの間に挟持された分離機能層20とを含み、この分離機能層20は、多孔質の支持体22と支持体22の空孔内に保持された二酸化炭素分離用組成物24とを含む。さらに例えば、図2に例示する二酸化炭素分離膜100bは、下側保護層10および上側保護層30とこれらの間に挟持された薄層の分離機能層20とを含み、この分離機能層20は二酸化炭素分離用組成物24のみで構成されている。保護層を含む構成とすることにより、取り扱い性に優れた二酸化炭素分離膜が得られ得る。
【0059】
分離機能層の厚みは、例えば0.01μm~500μm、好ましくは0.05μm~200μm、より好ましくは0.1μm~40μm、さらに好ましくは0.2μm~60μmである。なお、分離機能層が支持体を含む構成である場合、二酸化炭素分離用組成物が存在している領域の厚みを分離機能層の厚みとすることができる。
【0060】
支持体としては、例えば、織布、不織布、または多孔質フィルム等の多孔質材料を用いることができる。支持体の形成材料は、二酸化炭素分離用組成物を効果的に保持することから、好ましくは親水性樹脂であり、その具体例としては、セルロース、ビニロン、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。また、二酸化炭素分離用組成物を空孔内に保持し得る限りにおいて、親水化処理がなされた疎水性樹脂を用いてもよい。具体例としては、酢酸セルロース、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等からなる多孔質材料に親水化処理を施した多孔質材料を用いることもできる。市販の親水性メンブレンフィルターを支持体として用いることもできる。
【0061】
支持体の平均孔径は、例えば0.1μm~200μm、好ましくは0.4μm~100μmである。支持体の空隙率は、例えば10~90%、好ましくは20~80%である。
【0062】
分離機能層における単位面積当たりの二酸化炭素分離用組成物の保持量は、例えば1000mg/m~500000mg/m、好ましくは2000mg/mm~200000mg/m、より好ましくは5000mg/m~100000mg/mである。
【0063】
保護層としては、高分子フィルム、多孔質フィルム等を用いることができる。保護層の形成材料は、分離機能層を安定に膜内に保護することから、疎水性材料を用いることが望ましい。具体例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、メチルフェニルシリコーン等が挙げられる。なかでも、二酸化炭素分離用組成物が浸入しにくいことから、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、およびフェニルメチルシリコーンが好ましい。
【0064】
保護層が多孔質である場合、保護層の平均孔径は、例えば0.01μm~5μm、好ましくは0.05μm~2μmである。
【0065】
保護層の厚みは、例えば5μm~200μm、好ましくは10μm~100μmである。
【0066】
保護層としては、表面のみを親水化した材料を用いることができる。親水化処理を施した疎水性材料を用いることで、表面に安定して二酸化炭素分離用組成物を保持することが可能となるため、支持体を使用することなく、分離機能層を形成することができる。親水化処理の方法としては、コロナ処理、プラズマ処理等の方法を使用することができる。
【0067】
例えば、分離機能層は、支持体に液状またはゾル状の二酸化炭素分離用組成物を含侵させることによって得られ得る。支持体への二酸化炭素分離用組成物の含浸は、多孔質基材(例えば、保護層)上で行われてもよく、非多孔質基材上で行われてもよい。保護層上に分離機能層を形成し、さらにその上に別の保護層を積層することにより、[下側保護層/分離機能層(支持体および二酸化炭素分離用組成物)/上側保護層]の構成を有する二酸化炭素分離膜が得られる。
【0068】
また例えば、分離機能層は、多孔質基材または非多孔質基材からなる保護層上に液状またはゾル状の二酸化炭素分離用組成物を塗布し、冷却定着させることによって得られ得る。保護層上に形成された分離機能層の上に別の保護層を積層することにより、[下側保護層/分離機能層(二酸化炭素分離用組成物)/上側保護層]の構成を有する二酸化炭素分離膜が得られる。塗布方法としては、キャスト法、ディップ法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、スプレー塗布法、スピンコーティング法等が挙げられる。非多孔質基材の塗布面には、コロナ処理等の表面処理がなされていてもよい。
【0069】
1つの実施形態において、二酸化炭素分離膜は、中空糸膜を保護層として、該中空糸膜の内膜側に分離機能層を形成させた構成を有する中空糸膜モジュールであり得る。
【0070】
中空糸膜としては、UF膜またはMF膜を用いることができ、UF膜がより好ましい。中空糸膜の形成材料としては、保護層の形成材料と同様のものが挙げられる。
【0071】
中空糸膜の内膜側に形成される分離機能層の厚みは、例えば0.01μm~50μm、好ましくは0.02μm~20μm、より好ましくは0.05μm~10μmである。
【0072】
中空糸膜モジュールとしての二酸化炭素分離膜は、例えば、二酸化炭素分離用組成物に中空糸膜の内腔内を通過させることによって、中空糸膜の内表面側に二酸化炭素分離用組成物を浸透または堆積させて分離機能層を形成することによって得られ得る。
【0073】
供給ガス組成(二酸化炭素/窒素)が1/99である場合の二酸化炭素分離膜の60℃、相対湿度15%における二酸化炭素/窒素の透過選択性は、例えば1000以上であり、好ましくは1100以上、より好ましくは1200以上である。当該透過選択性は、例えば50000以下であり得る。
【0074】
供給ガス組成(二酸化炭素/窒素)が1/99である場合の二酸化炭素分離膜の60℃、相対湿度15%における二酸化炭素透過係数は、例えば400バーラー(Barrer)以上であり、好ましくは600バーラー以上、より好ましくは800バーラー以上である。当該二酸化炭素透過係数は、例えば50000バーラー以下であり得る。
【0075】
供給ガス組成(二酸化炭素/窒素)が2/998である場合の二酸化炭素分離膜の40℃、相対湿度40%における二酸化炭素/窒素の透過選択性は、1000以上であり、好ましくは1100以上、より好ましくは1200以上である。当該透過選択性は、例えば100000以下であり得る。
【0076】
供給ガス組成(二酸化炭素/窒素)が2/998である場合の二酸化炭素分離膜の40℃、相対湿度40%における二酸化炭素透過係数は、例えば200バーラー以上であり、好ましくは300バーラー以上、より好ましくは400バーラー以上である。当該二酸化炭素透過係数は、例えば50000バーラー以下であり得る。
【0077】
供給ガス組成(二酸化炭素/窒素)が5/9995である場合の二酸化炭素分離膜の40℃、相対湿度40%における二酸化炭素/窒素の透過選択性は、例えば1000以上であり、好ましくは1100以上、より好ましくは1200以上である。当該透過選択性は、例えば100000以下であり得る。
【0078】
供給ガス組成(二酸化炭素/窒素)が5/9995である場合の二酸化炭素分離膜の40℃、相対湿度40%における二酸化炭素透過係数は、例えば300バーラー(Barrer)以上であり、好ましくは400バーラー以上、より好ましくは500バーラー以上である。当該二酸化炭素透過係数は、例えば50000バーラー以下であり得る。
【0079】
供給ガス組成(二酸化炭素/メタン)が1/9である場合の二酸化炭素分離膜の60℃、相対湿度30%における二酸化炭素/メタンの透過選択性は、例えば400以上であり、好ましくは600以上、より好ましくは800以上である。当該透過選択性は、例えば100000以下であり得る。
【0080】
供給ガス組成(二酸化炭素/メタン)が1/9である場合の二酸化炭素分離膜の60℃、相対湿度30%における二酸化炭素透過係数は、例えば200バーラー(Barrer)以上であり、好ましくは300バーラー以上、より好ましくは400バーラー以上である。当該二酸化炭素透過係数は、例えば50000バーラー以下であり得る。
【0081】
供給ガス組成(二酸化炭素/メタン)が1/9である場合の二酸化炭素分離膜の50℃、相対湿度40%における二酸化炭素/メタンの透過選択性は、例えば1000以上であり、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上である。当該透過選択性は、例えば100000以下であり得る。
【0082】
供給ガス組成(二酸化炭素/メタン)が1/9である場合の二酸化炭素分離膜の50℃、相対湿度40%における二酸化炭素透過係数は、例えば200バーラー(Barrer)以上であり、好ましくは300バーラー以上、より好ましくは400バーラー以上である。当該二酸化炭素透過係数は、例えば50000バーラー以下であり得る。
【0083】
供給ガス組成(二酸化炭素/メタン)が1/9である場合の二酸化炭素分離膜の40℃、相対湿度50%における二酸化炭素/メタンの透過選択性は、例えば2000以上であり、好ましくは3000以上、より好ましくは4000以上である。当該透過選択性は、例えば100000以下であり得る。
【0084】
供給ガス組成(二酸化炭素/メタン)が1/9である場合の二酸化炭素分離膜の40℃、相対湿度50%における二酸化炭素透過係数は、例えば200バーラー(Barrer)以上であり、好ましくは300バーラー以上、より好ましくは400バーラー以上である。当該二酸化炭素透過係数は、例えば50000バーラー以下であり得る。
【0085】
供給ガス組成(二酸化炭素/水素)が1/9である場合の二酸化炭素分離膜の60℃、相対湿度30%における二酸化炭素/水素の透過選択性は、例えば50以上であり、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。当該透過選択性は、例えば20000以下であり得る。
【0086】
供給ガス組成(二酸化炭素/水素)が1/9である場合の二酸化炭素分離膜の60℃、相対湿度30%における二酸化炭素透過係数は、例えば100バーラー(Barrer)以上であり、好ましくは200バーラー以上、より好ましくは300バーラー以上である。当該二酸化炭素透過係数は、例えば20000バーラー以下であり得る。
【0087】
供給ガス組成(二酸化炭素/水素)が1/9である場合の二酸化炭素分離膜の50℃、相対湿度40%における二酸化炭素/水素の透過選択性は、例えば50以上であり、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。当該透過選択性は、例えば20000以下であり得る。
【0088】
供給ガス組成(二酸化炭素/水素)が1/9である場合の二酸化炭素分離膜の50℃、相対湿度40%における二酸化炭素透過係数は、例えば100バーラー(Barrer)以上であり、好ましくは200バーラー以上、より好ましくは300バーラー以上である。当該二酸化炭素透過係数は、例えば20000バーラー以下であり得る。
【0089】
供給ガス組成(二酸化炭素/水素)が1/9である場合の二酸化炭素分離膜の40℃、相対湿度50%における二酸化炭素/水素の透過選択性は、例えば50以上であり、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。当該透過選択性は、例えば20000以下であり得る。
【0090】
供給ガス組成(二酸化炭素/水素)が1/9である場合の二酸化炭素分離膜の40℃、相対湿度50%における二酸化炭素透過係数は、例えば100バーラー(Barrer)以上であり、好ましくは200バーラー以上、より好ましくは300バーラー以上である。当該二酸化炭素透過係数は、例えば20000バーラー以下であり得る。
【0091】
<二酸化炭素分離用吸収液>
二酸化炭素分離材は、A項に記載の二酸化炭素分離用組成物を含む、二酸化炭素分離用吸収液であり得る。二酸化炭素分離用吸収液(二酸化炭素分離用組成物)は、化学吸収法における吸収液として好適に用いられ得る。
【0092】
1つの実施形態において、二酸化炭素分離用吸収液は、20℃~80℃で二酸化炭素を含む供給ガスと接触することにより二酸化炭素を吸収し、60℃~120℃に加熱することにより当該二酸化炭素を放出する。
【0093】
<二酸化炭素分離用固体吸収材>
二酸化炭素分離材は、A項に記載の二酸化炭素分離用組成物を含む、二酸化炭素分離用固体吸収材であり得る。二酸化炭素分離用固体吸収材は、二酸化炭素分離用組成物のみから構成されていても良く、担体と当該担体に担持された二酸化炭素分離用組成物を含んでいても良い。
【0094】
担体は、好ましくは多孔質であり、細孔を有する。担体の形成材料は、本発明の効果が得られる限りにおいて制限されず、無機材料または有機材料であり得る。無機材料としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ガラス、活性炭等が挙げられる。有機材料としては、二酸化炭素分離膜の支持体の形成材料と同様のものを例示することができる。
【0095】
担体の比表面積は、例えば100m/g~2000m/g、好ましくは200m/g~1500m/gである。
【0096】
担体の細孔径は、例えば1nm~200nm、好ましくは5nm~100nmである。
【0097】
担体による二酸化炭素分離用組成物の担持量は、本発明の効果が得られる限りにおいて制限されず、例えば、担体の重量に対して10重量%~80重量%、好ましくは20重量%~70重量%である。
【0098】
二酸化炭素分離用固体吸収材は、例えば、担体に二酸化炭素分離用組成物を含侵させ、空孔内面に付着させることによって得られる。また例えば、固体(例えば、粒状)の二酸化炭素分離用組成物をそのままカラム等の充填容器に充填して用いてもよい。
【0099】
1つの実施形態において、二酸化炭素分離用固体吸収材は、20℃~80℃で二酸化炭素を含む供給ガスと接触することにより二酸化炭素を吸収し、60℃~120℃に加熱することにより当該二酸化炭素を放出する。供給ガスと放出ガスを切り替えて運転することにより二酸化炭素を分離および回収することができる。
【実施例0100】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0101】
<厚みの測定方法>
厚みは、シックネスゲージ(ミツトヨ社製、製品名「547-401」)を用いて測定した。
<重量平均分子量の測定方法>
重量平均分子量は、濃度0.1wt%の高極性樹脂を含有するサンプルに対して、島津製作所社製HPLCシステム Prominenceを使用し、昭和電工社製Shodex SB-806M、SB-807を直列に連結して分離を行い、RI検出器により測定を行い、GPCアプリケーションにて解析を行うことで決定した。
溶離液としては、酢酸0.5mol/L、硝酸ナトリウム0.5mol/Lを含有する水溶液を用いた。
較正曲線は、プルラン(Shodex社製GPC標準試料P-82)を使用して作成した。
なお、市販品については、製品データとして公開されている重量平均分子量または数平均分子量を用いた。
【0102】
[製造例1:架橋ポリエチレンイミン(Mw=70万)の合成]
ポリエチレンイミン(Mw=35万)1gを水4gに溶解し、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(アルドリッチ製、分子量6000)0.05gを含む水溶液0.3gを添加し、20℃にて1時間混合した後、60℃にて2時間攪拌し、重量平均分子量70万の架橋ポリエチレンイミン20重量%水溶液5.3gを得た。
【0103】
[製造例2:架橋ポリエチレンイミン(Mw=47万)の合成]
ポリエチレンイミン(Mw=35万)1gを水4gに溶解し、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(アルドリッチ製、分子量500)0.05gを含む水溶液0.1gを添加し、20℃にて1時間混合した後、60℃にて2時間攪拌し、重量平均分子量47万の架橋ポリエチレンイミン20重量%水溶液5.1gを得た。
【0104】
[製造例3:架橋ポリウレタンポリアミンの合成]
特開2021-147528号公報に記載の方法によって、重量平均分子量が3,500のポリウレタンポリアミンを合成した。
次いで、ポリウレタンポリアミン(Mw=3500)1gを水1gに溶解し、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(アルドリッチ製、分子量6000)0.5gを添加し、20℃にて1時間混合した後、80℃にて2時間攪拌し、重量平均分子量1万の架橋ポリウレタンポリアミン60重量%水溶液2.5gを得た。
【0105】
[製造例4:PO変性ポリエチレンイミン(Mn’=450)の合成]
ポリエチレンイミン(Mn=300)1gをメタノール1.5gに溶解し、プロピレンオキサイド(東京化成製)0.5gを添加し、20℃にて12時間混合した後、40℃にて2時間攪拌し、推定数平均分子量(Mn’)が450の架橋ポリエチレンイミン50重量%水溶液2.5gを得た。推定数平均分子量(Mn’)は下記の式から求めた。
推定数平均分子量=(原料ポリエチレンイミンの分子量)+(プロピレンオキサイドの分子量)×(プロピレンオキサイドのモル数)÷(原料ポリエチレンイミンのモル数)
【0106】
[製造例5:イオン液体(プロリン=テトラブチルアンモニウム塩)の合成]
プロリン1gを水1gに溶解し、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド40質量%水溶液(東京化成製)5.6gを添加し、20℃にて1時間混合した後、80℃、0.1kPaにて2時間乾燥し、イオン液体(プロリン=テトラブチルアンモニウム塩)を得た。
【0107】
下記実施例および比較例で用いた成分は以下の通りである。
・架橋ポリエチレンイミン(Mw=70万):製造例1
・架橋ポリエチレンイミン(Mw=47万):製造例2
・架橋ポリウレタンポリアミン(Mw=1万):製造例3
・ポリエチレンイミン(Mw=45万、Mn=10万):日本触媒社製、「エポミンP-3000」
・ポリエチレンイミン(Mw=35万、Mn=7万):日本触媒社製、「エポミンP-1000」
・ポリエチレンイミン(Mn=1万):日本触媒社製、「エポミンSP-200」
・ポリエチレンイミン(Mn=600):日本触媒社製、「エポミンSP006」
・ポリエチレンイミン(Mn=300):日本触媒社製、「エポミンSP003」
・PO変性ポリエチレンイミン(Mn’=450):製造例4
・ポリビニルアルコール(Mw=6万):日本合成社製、「ゴーセノールGH-17R」
・イオン液体(プロリン=テトラブチルアンモニウム塩):製造例5
・可溶化でんぷん(Mw=9000):富士フィルム和光純薬社製、「でんぷん(溶性)」
・ペンタエチレンヘキサミン(Mn=232):東京化成工業社製「ペンタエチレンヘキサミン(混合物)」
【0108】
[実施例1-1~3、比較例1-1~1-3]
表1~3に記載の配合量となるように各成分をガラス製容器に量り採り、マグネティックスターラーを用いて60℃にて30分間撹拌混合することによって、二酸化炭素分離用組成物を調製した。
【0109】
上記二酸化炭素分離用組成物を用いて、以下のようにして二酸化炭素分離膜を作製した。
下側保護層としてのPTFE多孔質メンブレンフィルター(アドバンテック社製、T050A090C、孔径0.50μm)上に、ビニロン製不織布(クラレ製「品番:BFZ-No.1」)を載せ、30℃~40℃の二酸化炭素分離用組成物を含浸させた。次いで、その上に上側保護層としてのPTFE多孔質メンブレンフィルター(アドバンテック社製、T050A090C、孔径0.50μm)を積層し、ゴムローラー(土牛製ウレタンローラー)を用いて均一な厚みに調整し、室温空気中にて一晩静置することで、約55μm厚の分離機能層を有する二酸化炭素分離膜を得た。二酸化炭素分離膜の全体厚みは、約200μmであった。
【0110】
得られた二酸化炭素分離膜をガス透過度試験に供した。結果を表1~3に示す。
【0111】
<窒素および二酸化炭素の混合ガスのガス透過度試験>
JIS K7126-2の試験方法に準拠してガス透過度試験を行った。
図3に示すように、温度および湿度を調整可能なオーブン内に設置したステンレス製測定セル200に二酸化炭素分離膜100を挟み、COおよびNからなる供給ガスを上面側に供給し、スイープガスによって下面側に透過した透過ガスを測定セル200と接続したマイクロガスクロマトグラフ300に運び、COおよびNをTCD検出器で検出した。スイープガスとしては、マスフローコントローラー(BROOKS社製、5850E)を用いて流量を25ml/minまたは20ml/minに調整したヘリウムを測定用セルに導入した。
TCD検出器で測定されるピーク面積から測定対象ガス(COまたはN)の体積濃度、透過ガス量を算出し、膜面積、膜厚を用いて、下記式からガス透過度、透過係数、およびCO/N選択性を求めた。
・ガス透過度=測定したガス流量×測定したガス量中の測定対象ガスの体積濃度÷ガス分離膜有効面積÷(供給ガス中の測定対象ガスの分圧-測定ガス中の測定対象ガスの分圧)
(1GPU=1×10-6cm(STP)/(s・cm・cmHg))
・ガス透過係数=ガス透過度÷分離機能層の平均厚さ
(1barrer=1×10-10cm(STP)・cm/(s・cm・cmHg))
・CO/N選択性=COのガス透過度÷Nのガス透過度
使用した装置は以下の通りである。
・オーブン:ヤマト科学社製、DNE810
・マイクロガスクロマトグラフ:VARIAN社製、CP4900
・カラムモジュール:Molesieve 5A 10m/PoraPLOT Q 10m
【0112】
上記ガス透過度試験に用いる供給ガスは以下のようにして調製した。
マスフローコントローラー(窒素用マスフローコントローラー:コフロック社製、3660、二酸化炭素用マスフローコントローラー:BROOKS社製、5850S)を用いて流量を160ml/min~199ml/minの範囲で調整した窒素と、流量を2ml/min~40ml/minの範囲で調整した二酸化炭素とを所定の組成(体積比)となるように混合し、恒温槽(ADVANTEC社製、TBT210AA)で所定の温度に調節した容器内で純水中にバブリングすることで湿度を調節して、供給ガスを得た。なお、CO/N=1/99、2/998、および5/9995の供給ガスはそれぞれ、低二酸化炭素濃度の排ガス、閉鎖空間内空気、および大気からの二酸化炭素分離回収を想定したものである。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
[実施例4~9]
表4~9に記載の配合量となるように各成分をガラス製容器に量り採り、マグネティックスターラーを用いて60℃にて30分間撹拌混合することによって、二酸化炭素分離用組成物を調製した。上記二酸化炭素分離用組成物を用い、実施例1-1等と同様の方法により、二酸化炭素分離膜を作製した。得られた二酸化炭素分離膜をガス透過度試験に供した。
<メタンまたは水素と二酸化炭素とからなる混合ガスの透過度試験>
ガス透過率測定装置(GTRテック製GTR―10XFKS)を使用して、JIS K―7126第2部・ISO 15105-2(等圧式・ガスクロ法)に準拠し、ガス透過度を測定した。供給ガスが二酸化炭素/メタン=1/9の場合、スイープガスはヘリウムを使用し、供給ガスが二酸化炭素/水素=1/9の場合、スイープガスは窒素を使用した。温度・湿度の条件は、60℃30%RH、50℃40%RH、または40℃50%RHに調節して測定を実施した。
【0117】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0118】
[実施例10~11]
表10または11に記載の配合量となるように各成分をガラス製容器に量り採り、マグネティックスターラーを用いて60℃にて30分間撹拌混合することによって、二酸化炭素分離用組成物を調製した。
【0119】
上記二酸化炭素分離用組成物を用いて、以下の作製方法1または2によって二酸化炭素分離膜を作製した。
【0120】
<作製方法1:支持体含浸>
下側保護層としてのPTFE多孔質メンブレンフィルター(アドバンテック社製、T050A090C、孔径0.50μm)上に、親水性PTFE多孔質メンブレンフィルター(メルク社製、オムニポアJVWP09025、孔径0.10μm)を載せ、20℃~30℃の二酸化炭素分離用組成物を含浸させた。次いで、その上に上側保護層としてのPTFE多孔質メンブレンフィルター(アドバンテック社製、T050A090C、孔径0.50μm)を積層し、ゴムローラー(土牛製ウレタンローラー)を用いて均一な厚みに調整し、室温空気中にて一晩静置することで二酸化炭素分離膜を得た。
【0121】
<作製方法2:フレキソ印刷>
0.07mm厚の多孔質フィルム(PE:コージン製TSF-EU、またはPP:3M製マイクロポーラスフィルム)のコロナ処理面に、ハンドコーター(RK Print Coat Instrument社製、ハンドKロックス)を用いて20℃~30℃の二酸化炭素分離用組成物を均一に塗布した。塗膜の上にPTFE多孔質メンブレンフィルター(ザルトリウス製、11803-100-G、孔径1.2μm)を積層し、室温空気中にて一晩静置することで、二酸化炭素分離膜を得た。なお、塗膜(分離機能層)の膜厚は彫刻ローラーのセル容積によって調整した。
【0122】
得られた二酸化炭素分離膜を上記<窒素および二酸化炭素の混合ガスのガス透過度試験>に供した。結果を表10~11に示す。
【0123】
【表10】

【表11】
【0124】
[実施例12、比較例12]
表12に記載の配合量となるように各成分をガラス製容器に量り採り、マグネティックスターラーを用いて60℃にて30分間撹拌混合することによって、二酸化炭素分離用組成物を調製した。
【0125】
得られた二酸化炭素分離用組成物を二酸化炭素分離用吸収液として40℃の吸収槽に移し、供給ガス(CO>99%)を吸収液10gに対して、バルーンにより気相部に供給し40℃にて1時間撹拌を行った。次いで、二酸化炭素を吸収した吸収液を60℃、80℃、100℃に加熱して重量を測定し、放出されたガス量を重量減少により測定した。以下のようにして、吸脱着量を求めた。結果を表7に示す。
・吸脱着量(60℃⇔80℃)=(60℃吸収液重量-80℃吸収液重量)/吸収前吸収液重量
・吸脱着量(80℃⇔100℃)=(80℃吸収液重量-100℃吸収液重量)/吸収前吸収液重量
【0126】
【表12】
【0127】
[実施例13、比較例13]
表13に記載の配合量となるように各成分をガラス製容器に量り採り、マグネティックスターラーを用いて60℃にて30分間撹拌混合することによって、二酸化炭素分離用組成物を調製した。
【0128】
20℃~40℃の二酸化炭素分離用組成物10gに水10gを添加し20℃~40℃にて1時間撹拌し、表中の重量組成となるように担体20gを添加して、40℃にて30分間超音波を照射して振とうし、80℃、0.1kPaにて2時間乾燥し、二酸化炭素分離用固体吸収材を得た。
担体としては、活性炭素(富士フィルム和光純薬社製、活性炭素、顆粒状)を使用した。
【0129】
得られた二酸化炭素分離用固体吸収材10gをステンレス製カラムに充填し、100℃にてCO/N=5/9995に調整した供給ガスを1時間流通させた。その後、40℃にて1時間供給ガスを流通させ吸着状態の重量を計量し、次いで、60℃にて1時間供給ガスを流通させ脱離状態の重量を計量した。以下のようにして、二酸化炭素の吸脱着量を求めた。結果を表13に示す。
・吸脱着量(40℃⇔60℃)=(40℃吸収材重量-60℃吸収材重量)/初期吸収材重量
【0130】
【表13】
【0131】
表1~表13に示される通り、実施例の二酸化炭素分離材は、実運転に適した温度および湿度条件下において、低分圧または低濃度の二酸化炭素含有ガス組成物から効率的に二酸化炭素を分離または回収することができた。また、成形性および成形安定性が高く、取り扱い性にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、排ガスや副生ガスからの二酸化炭素の分離または回収、あるいは、建造物、乗り物等の閉鎖空間における空気または大気からの二酸化炭素の分離または回収に利用可能である。
【符号の説明】
【0133】
10 下側保護層
20 分離機能層
22 支持体
24 二酸化炭素分離用組成物
30 上側保護層
100 二酸化炭素分離膜

図1
図2
図3