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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079992
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240606BHJP
   B41J 2/135 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/135
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192784
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸昌
(72)【発明者】
【氏名】洞田 竜児
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 貴文
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB07
2C056EB39
2C056EB40
2C056EC07
2C056EC38
2C056FA10
2C056JA13
2C056KD06
2C057AM16
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】ノズルが異常であるか否かを検出するときに液体吐出ヘッドまたは電極に印加する電圧を昇圧させるための回路をより小さくする。
【解決手段】電圧印加回路51は、直列に接続された複数のチャージポンプ64を有し、入力された電圧を複数のチャージポンプ64によって昇圧し、昇圧した電圧を電極に印加する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを有し、前記ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
電極を有し、前記ノズルから液体が吐出されたときの前記電極における電気的な変化に応じた信号を出力する信号出力部と、
コンデンサとダイオードとを含み入力された電圧を昇圧させる直列に接続された複数のチャージポンプを有し、前記複数のチャージポンプにより昇圧された電圧を前記液体吐出ヘッドまたは前記電極に印加することによって、前記液体吐出ヘッドと前記電極との間に電位差を生じさせる電圧印加回路と、を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記電圧印加回路は、
50V以下の電圧が入力され、
前記複数のチャージポンプにより、入力された電圧を300V以上の電圧に昇圧させることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記電圧印加回路は、
前記複数のチャージポンプにより、入力された電圧を10倍以上の電圧に昇圧させることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記電圧印加回路は、
10個以上の前記複数のチャージポンプを有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記電圧印加回路が、前記複数のチャージポンプに入力された電圧による前記コンデンサへの充電および前記コンデンサからの放電の状態を切り換えるスイッチ素子、を備え、
制御部、を備え、
前記制御部は、PWM信号により前記スイッチ素子を制御して、前記複数のチャージポンプにおける前記充電および前記放電の状態を切り換えることによって、前記液体吐出ヘッドまたは前記電極に印加する電圧を調整することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記電圧印加回路に入力される電圧を変更する入力電圧変更部を有し、
前記制御部は、前記入力電圧変更部を制御して前記電圧印加回路に入力される電圧を変更することによって、前記液体吐出ヘッドまたは前記電極に印加する電圧を調整することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記複数のチャージポンプは、第1チャージポンプと、前記第1チャージポンプよりも高い電圧を出力する第2チャージポンプとを含み、
前記電圧印加回路が、前記第1チャージポンプの出力電圧を前記液体吐出ヘッドまたは前記電極に印加するか、前記第2チャージポンプの出力電圧を前記液体吐出ヘッドまたは前記電極に印加するかを切り換える切換部を備え、
前記制御部は、前記切換部を制御して、前記第1チャージポンプの出力電圧を前記液体吐出ヘッドまたは前記電極に印加するか、前記第2チャージポンプの出力電圧を前記液体吐出ヘッドまたは前記電極に印加するかを切り換えることによって、前記液体吐出ヘッドまたは前記電極に印加する電圧を調整することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記電圧印加回路により電圧が印加された前記液体吐出ヘッドまたは前記電極に流れる電流の大きさが100μA以下であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記チャージポンプを構成するコンデンサがセラミックコンデンサであることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記液体吐出ヘッドと前記電極との間に流れるリーク電流を検出するリーク検出回路、を備え、
前記制御部は、
前記リーク検出回路の検出結果に応じて、前記電圧印加回路から出力される電圧を調整することを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記リーク検出回路がリーク電流を検出したことに応じて前記電圧印加回路から出力される電圧を高くすることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記リーク検出回路によって検出された前記リーク電流の大きさが所定値以上のときに、前記PWM信号のデューティ比を0にすることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記リーク検出回路が、
直流のリーク電流を検出する第1リーク検出回路と、
交流のリーク電流を検出する第2リーク検出回路と、を含み、
前記第1リーク検出回路によって検出された前記直流のリーク電流の大きさが第1所定値を超えたとき、または、前記第2リーク検出回路によって検出された前記交流のリーク電流の大きさが第2所定値を超えたときに、前記PWM信号のデューティ比を0にすることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
ノズルを有し、前記ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
電極を有し、前記ノズルから液体が吐出されたときの前記電極における電気的な変化に応じた信号を出力する信号出力部と、
コンデンサとダイオードとを含み入力された電圧を昇圧させるチャージポンプを有し、前記チャージポンプにより昇圧された電圧を前記液体吐出ヘッドまたは前記電極に印加することによって、前記液体吐出ヘッドと前記電極との間に電位差を生じさせる電圧印加回路と、を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置の一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して記録を行うインクジェットプリンタが記載されている。特許文献1に記載のインクジェットプリンタは、ノズルを覆うキャッピング部材が電極部材を含む検査領域を有する。そして、インクジェットプリンタの内部で引き回される数ボルトの電気配線の電圧を、昇圧回路を介して数十から数百ボルトに昇圧し、印刷ヘッドを構成するキャビティプレートに昇圧後の電圧を印加することによって、印刷ヘッドと検査領域との間に電位差を生じさせる。そして、この状態で、印刷ヘッドにノズルから検査領域に向けてインクを吐出させるための動作を行わせたときの検査領域の電圧の変化に基づいて、ノズルから正常にインクが吐出されたか否かを検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-136858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1では、昇圧回路により電圧を大きく昇圧させる必要がある。電圧を大きく昇圧させる昇圧回路は、例えば変圧器を用いて形成することが考えられる。しかしながら、変圧器を用いて昇圧回路を形成する場合、変圧器が大きいために昇圧回路が大型化してしまう。
【0005】
本発明の目的は、ノズルが異常であるか否かを検出するときに液体吐出ヘッドまたは電極に印加する電圧を昇圧させるための回路をより小さくすることが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、ノズルを有し、前記ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、電極を有し、前記ノズルから液体が吐出されたときの前記電極における電気的な変化に応じた信号を出力する信号出力部と、コンデンサとダイオードとを含み入力された電圧を昇圧させる、直列に接続された複数のチャージポンプを有し、前記複数のチャージポンプにより昇圧された電圧を前記液体吐出ヘッドまたは前記電極に印加することによって、前記液体吐出ヘッドと前記電極との間に電位差を生じさせる電圧印加回路と、を備えている。
【0007】
また、本発明の液体吐出装置は、ノズルを有し、前記ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、電極を有し、前記ノズルから液体が吐出されたときの前記電極における電気的な変化に応じた信号を出力する信号出力部と、コンデンサとダイオードとを含み入力された電圧を昇圧させるチャージポンプを有し、前記チャージポンプにより昇圧された電圧を前記液体吐出ヘッドまたは前記電極に印加することによって、前記液体吐出ヘッドと前記電極との間に電位差を生じさせる電圧印加回路と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、チャージポンプを用いて電圧印加回路を形成することにより、変圧器を用いて電圧印加回路を形成するよりも、回路を小型化することができる。具体的には、チャージポンプを用いて電圧印加回路を形成するほうが、変圧器を用いて電圧印加回路を形成するよりも、回路基板の面積を小さくすることができる。また、コンデンサおよびダイオードによって形成されるチャージポンプのほうが、変圧器よりも、回路基板からの突出量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態のプリンタの概略構成図である。
図2】キャップ内に配置された電極等を説明するための図である。
図3】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図4図3の検査用回路の構成を示す図である。
図5】(a)は吐出駆動によりノズルからインクが吐出されなかった場合に、ハイパスフィルタから増幅回路に向けて出力される信号を説明するための図であり、(b)は吐出駆動によりノズルからインクが吐出された場合に、ハイパスフィルタから増幅回路に向けて出力される信号を説明するための図であり、(c)は増幅回路から出力される吐出検知信号を説明するための図である。
図6】(a)は図4の電圧印加回路の構成を示す図であり、(b)はPWM信号を説明するための図である。
図7】(a)はあるチャージポンプ64での昇圧を説明するための図であり、(b)はPWM信号の変化に対する電圧Vc,Vd,Veの変化の一例を示す図である。
図8】PWM信号を制御するための処理の流れを示すフローチャートである。
図9】第1電圧入力部に入力する電圧を変圧器で調整する例を説明するための図である。
図10】第1電圧入力部に入力する電圧を、チャージポンプ64を有する電圧調整回路で調整する例を説明するための図である。
図11】第2電圧入力部に入力する電圧を、チャージポンプ64を有する電圧調整回路で調整する例を説明するための図である。
図12】どのチャージポンプの出力電圧を電圧出力部から出力するかを切り換える例を説明するための図である。
図13】2つのチャージポンプユニットのどちらの出力電圧を電圧出力部から出力するかを切り換える例を説明するための図である。
図14】電圧印加回路がチャージポンプを1つだけ有する例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0011】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4、プラテン5、搬送ローラ6,7、メンテナンスユニット8などを備えている。なお、本実施形態では、プリンタ1が本発明の「液体吐出装置」に相当し、インクジェットヘッド4が本発明の「液体吐出ヘッド」に相当する。
【0012】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ36(図3参照)に接続されており、キャリッジモータ36を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、図1に示すように、走査方向の右側および左側を定義して説明を行う。
【0013】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1は、カートリッジホルダ13を備えており、カートリッジホルダ13に4つのインクカートリッジ14が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ14は、走査方向に並んでおり、走査方向の右側に配置されたものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクを貯留している。本実施形態では、インクが本発明の「液体」に相当する。サブタンク3は、4本のチューブ15を介してカートリッジホルダ13に装着された4つのインクカートリッジ14と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ14からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0014】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、ノズル面4aにおいて、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0015】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙Sの全長にわたって延び、記録用紙Sを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4およびプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4およびプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ37(図3参照)に接続されている。搬送モータ37を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Sが搬送方向に搬送される。
【0016】
そして、プリンタ1においては、後述する制御部30(図3参照)により、キャリッジモータ36を制御してキャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド4に複数のノズル10からインクを吐出させる記録パスと、搬送モータ37を制御して搬送ローラ6,7に記録用紙Sを搬送させる搬送動作とを繰り返し行わせることによって、記録用紙Sへの記録を行うことができる。
【0017】
メンテナンスユニット8は、キャップ21と、吸引ポンプ22と、廃液タンク23とを備えている。キャップ21は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ21と対向する。
【0018】
また、キャップ21は、キャップ昇降機構38(図3参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させることによって複数のノズル10とキャップ21とを対向させた状態で、キャップ昇降機構38によりキャップ21を上昇させると、キャップ21の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ21に覆われたキャップ状態となる。また、キャップ昇降機構38によりキャップ21を降下させた状態では、複数のノズル10がキャップ21で覆われていないアンキャップ状態となる。なお、キャップ21はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ21は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0019】
吸引ポンプ22はチューブポンプなどであり、キャップ21および廃液タンク23と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上記キャップ状態で吸引ポンプ22を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク23に貯留される。
【0020】
なお、ここでは、便宜上、キャップ21が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ21が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク、つまり、イエロー、シアン、マゼンタのインクを吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインクおよびカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ21が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0021】
また、図2に示すように、キャップ21内には、矩形の平面形状を有する電極26が配置されている。電極26は、後述する検査用回路27(図3図4参照)を構成している。検査用回路27は制御部30(図3図4参照)によって制御される。そして、本実施形態では、上記キャップ状態にするとともに、後述するようにインクジェットヘッド4と電極26との間に電位差を生じさせた状態で、インクジェットヘッド4に、ノズル10からインクを吐出させるための吐出駆動を行わせたときの電極26の電圧の変化に応じて検査用回路27の後述する増幅回路55から出力される吐出検知信号基づいて、ノズル10からインクが吐出されたか否かを判定することができる。なお、本実施形態では、検査用回路27が、本発明の「信号出力部」に相当する。
【0022】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。図3に示すように、プリンタ1は、制御部30を備えている。制御部30は、CPU31、ROM32、RAM33、メモリ34、ASIC35などからなる。ここで、CPUはCentral Processing Unitの略語であり、ROMはRead Only Memoryの略語であり、RAMはRandom Access Memoryの略語であり、ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略語である。制御部30は、キャリッジモータ36、インクジェットヘッド4、搬送モータ37、キャップ昇降機構38、吸引ポンプ22、検査用回路27等の動作を制御する。また、制御部30は、検査用回路27から信号を受信する。
【0023】
なお、制御部30は、CPU31のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC35のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU31とASIC35とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御部30は、1つのCPU31が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU31が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部30は、1つのASIC35が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC35が処理を分担して行うものであってもよい。
【0024】
<検査用回路>
次に、検査用回路27について説明する。図4に示すように、検査用回路27は、上述の電極26と、電圧印加回路51と、ローパスフィルタ52と、DCリーク信号出力部53と、ハイパスフィルタ54と、増幅回路55と、ACリーク信号出力部56とを有する。
【0025】
電圧印加回路51は、電極26に電圧を印加するための回路である。電圧印加回路51は、入力された電圧を昇圧して、昇圧した電圧を出力することによって電極26に電圧を印加する。電圧印加回路51の構成および動作については、後ほど詳細に説明する。
【0026】
電圧印加回路51と電極26とは、ローパスフィルタ52を介して接続されている。ローパスフィルタ52は、電極26での電圧変動における遮断周波数より高い周波数の成分を逓減させて電圧印加回路51側に出力するフィルタである。すなわち、電極26の電圧の主に直流成分が、ローパスフィルタ52を介して電圧印加回路51側に出力される。
【0027】
DCリーク信号出力部53は、電圧印加回路51とローパスフィルタ52とを接続する配線から分岐した配線に接続されている。ここで、プリンタ1では、例えば、吸引パージの際にキャップ21に付着したインクを介して、電極26とインクジェットヘッド4とが導通することにより、電極26とインクジェットヘッド4の間に直流のリーク電流が流れることがある。電極26とインクジェットヘッド4の間に直流のリーク電流が流れると電極26の電圧が低下する。また、この直流のリーク電流が大きいときほど、電極26の電圧の低下量が大きくなる。DCリーク信号出力部53は、上述の、ローパスフィルタ52を通して入力された電極26の電圧の直流成分に基づいて、電極26とインクジェットヘッド4の間に直流のリーク電流が流れているか否か、および、直流のリーク電流の大きさを示すDCリーク信号を制御部30に出力する。なお、本実施形態では、ローパスフィルタ52とDCリーク信号出力部53とを合わせたものが、本発明の「第1リーク検出回路」に相当する。
【0028】
ハイパスフィルタ54は、電極26とローパスフィルタ52とを接続する配線から分岐した配線に接続されている。増幅回路55は、ハイパスフィルタ54に接続されている。
【0029】
ハイパスフィルタ54は、電極26の電圧の直流成分、すなわち、電極26の電圧の高電圧成分を逓減するフィルタである。これにより、電極26に電圧変動が生じたときに、電極26の電圧の変化が、ハイパスフィルタ54において高電圧成分が除去されたうえで、増幅回路55側に出力される。ハイパスフィルタ54から増幅回路55に入力された電圧は、増幅回路55において増幅され、吐出検知信号として制御部30に出力される。
【0030】
ここで、上記キャップ状態にするとともに、電圧印加回路51により電極26に電圧を印加することによってインクジェットヘッド4と電極26との間に電位差を生じさせた状態で、インクジェットヘッド4に吐出駆動を行わせたときの電極26の電圧の変化について説明する。吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されなかったときには、電極26の電圧がほとんど変化しない。吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されたときには、電極26の電圧が変化する。また、このときの電極26の電圧の変化は急激なものとなる。したがって、吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されたか否かによって、電極26の電圧の高周波成分が異なる。
【0031】
これにより、吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されなかったときには、ハイパスフィルタ54から増幅回路55に向けて出力される信号、および、増幅回路55で増幅されて出力される吐出検知信号は、図5(a)に示すように、電圧がV0からほとんど変化しない信号となる。ここで、V0は例えばグランド電位に近い電圧である。
【0032】
一方、吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されて電極26の電圧が変化したときには、ハイパスフィルタ54から増幅回路55に向けて出力される信号が、図5(b)に示すように、電圧がV0に対して変化する信号となる。ただし、吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されたときの電極26の電圧の変化量は、後述するようにインクジェットヘッド4と電極26との間に交流のリーク電流が流れたときの電極26の電圧の変化量と比べて小さい。そのため、吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されたときにハイパスフィルタ54から増幅回路55に向けて出力される信号も、図5(b)に示すように電圧の変化量が小さい信号となる。
【0033】
また、増幅回路55から出力される吐出検知信号は、図5(c)に示すように、図5(b)の信号が増幅された信号となる。したがって、増幅回路55から吐出検知信号は、ハイパスフィルタ54から増幅回路55に向けて出力される信号よりも電圧の変化が大きいものとなる。例えば、吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されたときの吐出検知信号は、最大値がVh1(>V0)よりも大きく、かつ、最小値がVm1(<V0)よりも小さい信号となる。
【0034】
このように、吐出検知信号は、吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されたか否かを示す信号となる。また、吐出検知号は、増幅回路55によって増幅された信号であるため、吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されたときの電圧の変化量がある程度大きい信号となる。
【0035】
ACリーク信号出力部56は、ハイパスフィルタ54と増幅回路55とを接続する配線から分岐した配線に接続されている。ここで、プリンタ1では、例えば、吸引パージの際にキャップ21に付着したインクを介して、電極26とインクジェットヘッド4とが一時的に導通することにより、電極26とインクジェットヘッド4の間に交流のリーク電流が流れることがある。インクジェットヘッド4と電極26との間に交流のリーク電流が流れると、電極26の電圧が変化し、ハイパスフィルタ54から増幅回路55に向けて出力される電圧も変化する。この信号の変化は、上述の吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されたときにハイパスフィルタ54から増幅回路55に向けて出力される電圧の変化よりも大きい。ACリーク信号出力部56は、ハイパスフィルタ54から増幅回路55に向けて出力される電圧に応じて、インクジェットヘッド4と電極26との間に第2所定値以上の交流のリーク電流が流れているか否かを示すACリーク信号を制御部30に出力する。なお、本実施形態では、ハイパスフィルタ54とACリーク信号出力部56とを合わせたものが、本発明の「第2リーク検出回路」に相当する。
【0036】
<電圧印加回路>
次に、電圧印加回路51の構成について説明する。図6(a)に示すように、電圧印加回路51は、第1電圧入力部61と、第2電圧入力部62と、電圧出力部63と、直列に接続された10個以上の複数のチャージポンプ64と、スイッチ素子65と、PWM信号入力部66とを有する。
【0037】
第1電圧入力部61は、プリンタ1の図示しない電源回路に接続されており、電源電圧が入力される。電源電圧は50V以下の電圧である。第2電圧入力部62はグランド電位に保持されている。電圧出力部63は、電極26に印加するための電圧が出力される部分であり、ローパスフィルタ52(図4参照)を介して電極26(図4参照)と接続されている。
【0038】
各チャージポンプ64は、入力部71a,71bと、出力部72a,72bと、コンデンサ73a,73bと、ダイオード74a,74bとを有する。
【0039】
複数のチャージポンプ64のうち図6(a)の最も左側のチャージポンプ64において、入力部71aが抵抗80を介して第1電圧入力部61と接続され、入力部71bが第2電圧入力部62と接続されている。複数のチャージポンプ64のうち図4の最も左側のチャージポンプ64以外のチャージポンプ64において、入力部71aが、図6(a)の左側に隣接するチャージポンプ64の出力部72aと接続され、入力部71bが、図6(a)の左側に隣接するチャージポンプ64の出力部72bと接続されている。複数のチャージポンプ64のうち図6(a)の最も右側のチャージポンプ64の出力部74bは、電圧出力部63に接続されている。N個のチャージポンプ64のうち図6(a)の最も右側のチャージポンプ64の出力部72aは他の回路等と接続されていない。なお、以下の説明での便宜上、図6(a)では、最も右側のチャージポンプ64の出力部72aを図示しているが、図6(a)の最も右側のチャージポンプ64は、出力部72aに対応する、他の回路等との接続を行うための部分を有していなくてもよい。
【0040】
コンデンサ73a,73bはセラミックコンデンサである。コンデンサ73aは、入力部71aと出力部72aとの間に接続されている。コンデンサ73bは、入力部71bと出力部72bとの間に接続されている。ダイオード74aのカソードは、コンデンサ73aと出力部72aとの間に接続されている。ダイオード74aのアノードは、入力部71bとコンデンサ73bとの間に接続されている。ダイオード74bのカソードは、コンデンサ73bと出力部72bとの間に接続されている。ダイオード74bのアノードは、コンデンサ73aと出力部72aとの間に接続されている。
【0041】
スイッチ素子65は、トランジスタ81と、抵抗82,83とを有する。トランジスタ81は、NPN型のトランジスタである。トランジスタ81のコレクタ81Cは、抵抗80を介して第1電圧入力部61に接続されている。トランジスタ81のベース81Bは、抵抗82を介して、PWN信号入力部66と接続されている。トランジスタ81のエミッタ81Eは、グランド電位に保持されている。また、トランジスタ81のベース81Bとエミッタ81Eとは抵抗83を介して接続されている。
【0042】
PWM信号入力部66には、制御部30から、図6(b)に示すようなパルス信号であるPWM信号が入力される。PWM信号がHIGHレベルのときに、トランジスタ81がオンとなり、トランジスタ81のコレクタ81Cとエミッタ81Eとが導通する。PWM信号がLOWレベルのときに、トランジスタ81がオフとなり、トランジスタ81のコレクタ81Cとエミッタ81Eとが絶縁される。ここで、制御部30は、PWM信号の周期Tに対するHIGHレベルの期間Thの比率(Th/T)であるデューティ比、および、PWM信号の周波数(1/T)を変更することができる。
【0043】
なお、スイッチ素子65は、NPN型のトランジスタ81を有するものであることには限られない。スイッチ素子65は、PNP型のトランジスタ、MOS-FETなど、PWM信号によってオンとオフとを切り換えることが可能な別のトランジスタを有するものであってもよい。
【0044】
<電圧印加回路の動作>
次に、電圧印加回路51の動作について説明する。電圧印加回路51では、PWM信号入力部66にPWM信号が入力されると、電圧入力部61,62に入力された電圧が複数のチャージポンプ64により昇圧される。そして、昇圧された電圧が、電圧出力部63から出力される。
【0045】
このときの各チャージポンプ64での昇圧について説明する。ここで、図7(a)に示すように、電圧印加回路51において、第1電圧入力部61に入力される電圧をVaとし、あるチャージポンプ64の入力部71bに入力される電圧をVbとし、このチャージポンプ64の入力部71aに入力される電圧をVcとし、このチャージポンプ64の出力部72aから出力される電圧をVdとし、このチャージポンプ64の出力部72bから出力される電圧をVeとする。
【0046】
この場合、図7(b)に示すように、PWM信号入力部66に入力されるPWM信号のHIGHとLOWとが繰り返し切り換わると、コンデンサ73a,73bへの充電およびコンデンサ73a,73bからの放電の状態が切り換わる。また、PWM信号がHIGHからLOWに切り換わるときに電圧Vc,Vd,Veが上昇する。PWM信号がLOWからHIGHに切り換わるときに電圧Vc,Vdが低下する。一方で、ダイオード74bが接続されていることにより、PWM信号がLOWからHIGHに切り換わって電圧Vdが低下するときに電圧Veは低下せずほぼ一定に維持される。
【0047】
これにより、PWM信号のHIGHとLOWとが繰り返し切り換わると、電圧Vc,Vdが低下と上昇とを交互に繰り返し、上昇したときの電圧が徐々に大きくなる。一方、電圧Veは上昇と維持とを交互に繰り返すことにより徐々に上昇する。最終的な電圧VeはPWM信号のデューティ比によって変わるが、その最大値は(Vb+Va)程度である。より厳密には、最終的な電圧Veの最大値は、(Vb+Va)よりもダイオード74a,74bでの電圧降下の分だけ低い電圧である。
【0048】
このように、1つのチャージポンプ64では、入力部71bに入力された電圧Vbを最大、(Vb+Va)程度まで昇圧して出力部72bから出力することができる。したがって、例えば、電圧印加回路51がN個のチャージポンプ64を有し、図6(a)の最も左側のチャージポンプ64の入力部71bに入力される電圧Vbを電圧Vb1とした場合、N個のチャージポンプ64において、それぞれ、電圧Va程度昇圧されることから、電圧出力部63から出力される電圧は最大(Vb1+N×Va)程度である。本実施形態では、電圧Vb1が0Vであるため、電圧出力部63から出力される電圧は最大(N×Va)程度である。また、本実施形態では、電圧印加回路51が10個以上のチャージポンプ64を有するため、電圧印加回路51において、第1電圧入力部61に入力された電源電圧Vaが、これらのチャージポンプ64によって10倍以上の電圧まで昇圧されることになる。また、本実施形態では、第1電圧入力部61に入力される電圧Vaおよび第2電圧入力部62に入力される電圧(グランド電位)がいずれも50V以下であり、電圧出力部63から出力される電圧(N×Va程度)は、300V以上である。
【0049】
<電圧調整のための処理>
次に、PWM信号を制御することによって、電極26に印加される電圧を調整するための処理について説明する。本実施形態では、電極26に印加される電圧を調整するために、制御部30が図8のフローチャートに沿って処理を行うことによって、PWM信号を制御する。図8のフローチャートは、電圧印加回路51により電極26に電圧が印加され始めたときに開始される。電圧印加回路51により電極26に電圧が印加され始めたときのPWM信号のデューティ比および周波数は、電圧印加回路51から出力される電圧が、出力可能な最大の電圧(例えば、上述のN×Va)よりも低い電圧となるようなデューティ比および周波数である。これにより、PWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更することで、電圧印加回路51から出力される電圧を高くすることも低くすることもできる。
【0050】
図8のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部30は、吐出検知が完了したか否かを判断する(S101)。吐出検知とは、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について、インクジェットヘッド4に吐出駆動を行わせ、このときに増幅回路55から出力される吐出検知信号に基づいて、ノズル10の吐出状態に異常があるか否かを判定する動作のことである。
【0051】
吐出検知が完了していないときには(S101:NO)、DCリーク信号出力部53から出力されるDCリーク信号に基づいて、直流のリーク電流が検出されたか否かを判断する(S102)。直流のリーク電流が検出されていない場合には(S102:NO)、処理がS105に進む。直流のリーク電流が検出された場合には(S102:YES)、制御部30は、DCリーク信号に基づいて、第1所定値以上の直流のリーク電流が検出されたか否かを判断する(S103)。
【0052】
第1所定値以上の直流のリーク電流が検出されなかった場合には(S103:NO)、制御部30は、直流のリーク電流の大きさに応じてPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を調整することによって、電圧印加回路51から出力される電圧を、直流のリーク電流が検出されていないときの電圧よりも高くし(S104)、S105に進む。
【0053】
第1所定値以上の直流のリーク電流が検出された場合には(S103:YES)、制御部30は、PWM信号のデューティ比を0に設定して(S106)、処理を終了する。PWM信号のデューティ比が0になると、電圧印加回路51において電圧の昇圧が行われなくなり、電極26への高電圧の印加が停止される。
【0054】
S105において、制御部30は、ACリーク信号出力部56から出力されるACリーク信号に基づいて、第2所定値以上の交流のリーク電流が検出されたか否かを判断する。第2所定値以上の交流のリーク電流が検出されていない場合には(S105:NO)、処理がS101に戻る。第2所定値以上の交流のリーク電流が検出された場合には(S105:YES)、制御部30は、PWM信号のデューティ比を0に設定して(S106)、処理を終了する。
【0055】
なお、第1所定値以上の直流のリーク電流が検出されたこと、または、第2所定値以上の交流のリーク電流が検出されたことに基づいて、PWM信号のデューティ比が0に設定されたときには、吐出検知が中断される。
【0056】
また、吐出検知が完了したときにも(S101:YES)、制御部30は、PWM信号のデューティ比を0に設定して(S106)、処理を終了する。
【0057】
<効果>
本実施形態では、電圧印加回路51を、複数のチャージポンプ64によって昇圧を行うものとすることにより、変圧器によって昇圧を行うものとするよりも、回路を小型化することができる。具体的には、複数のチャージポンプ64を用いて電圧印加回路51を形成するほうが、変圧器を用いて電圧印加回路を形成するよりも、回路基板の面積を小さくすることができる。また、コンデンサ73a,73bおよびダイオード74a,74bによって形成されるチャージポンプ64のほうが、変圧器よりも、回路基板上に配置される部品の体積を小さくできるため回路基板からの突出する量を小さくすることができる。
【0058】
また、本実施形態では、電圧印加回路51において、入力された50V以下の電圧を、300V以上の電圧まで大きく昇圧させる。また、本実施形態では、電圧印加回路51において、入力された電圧を10倍以上の電圧まで大きく昇圧させる。このような電圧印加回路51では、複数のチャージポンプ64を用いて形成することによる回路を小型化することができる効果が高い。
【0059】
また、本実施形態では、電圧印加回路51において、直列に接続された10個以上のチャージポンプ64を用いて入力された電圧を大きく昇圧させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、スイッチ素子65のオンとオフとを切り換えるPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更することによって、電圧印加回路51から出力される電圧を調整することができる。
【0061】
また、本実施形態のように複数のチャージポンプ64を用いて電圧印加回路51を形成する場合には、直列に接続されるチャージポンプ64の数が多くなるほど、電圧印加回路51から出力される電圧が大きくなり、電圧印加回路51から出力される電流が小さい。したがって、複数のチャージポンプ64により入力された電圧を大きく昇圧する電圧印加回路51により電極26に電圧を印加する場合には、別途抵抗など接続しなくても、電極26に流れる電流を小さくして100μA以下とすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、チャージポンプ64を構成するコンデンサ73a,73bをセラミックコンデンサとすることにより、電圧印加回路51をより小型化することができる。なお、コンデンサ73a,73bを、電解コンデンサ、タンタルコンデンサなど、セラミックコンデンサ以外のコンデンサとしてもよい。この場合でも、コンデンサ73a,73bは変圧器よりも小型であるため、電圧印加回路51を小型化することができる。
【0063】
また、本実施形態では、インクジェットヘッド4と電極26との間にリーク電流が流れていても、リーク電流が小さければ、吐出検知を継続することは可能である。一方で、インクジェットヘッド4と電極26との間に直流のリーク電流が流れると、電極26の電圧が低下した状態が継続する。そこで、本実施形態では、DCリーク信号出力部53から出力されるDCリーク信号が示す直流のリーク電流の大きさに応じて電圧印加回路51から出力される電圧を高くする。より詳細には、リークした電流に応じた電圧降下を補う分だけ電圧印加回路51から出力される電圧を高くする。これにより、インクジェットヘッド4と電極26との間にリーク電流が流れたときの電極26の電圧の低下を抑えることができる。
【0064】
また、本実施形態では、インクジェットヘッド4と電極26との間に大きなリーク電流が流れるとプリンタ1の故障の原因となる。そこで、第1所定値以上の直流のリーク電流、または、第2所定値以上の交流のリーク電流が検出されたときに、PWM信号のデューティ比を0にすることにより、電圧印加回路51において昇圧が行われないようにして、電極26への高電圧の印加を停止させる。これにより、プリンタ1を故障しにくくすることができる。
【0065】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0066】
上述の実施形態では、PWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更することによって、電圧印加回路51から出力される電圧を調整したが、これには限られない。
【0067】
変形例1では、図9に示すように、電圧印加回路51の第1電圧入力部61と図示しない電源回路との間に変圧器101が接続されている。変圧器101は、電源回路から入力された電圧を昇圧して第1電圧入力部61に出力する。また、変圧器101は、このときの電圧の昇圧率を変更可能である。すなわち、変形例1では、変圧器101での昇圧率を変更することにより第1電圧入力部61に入力される電圧を変更することができる。なお、変形例1では、変圧器101が、本発明の「入力電圧変更部」に相当する。
【0068】
そして、変形例1では、制御部30が変圧器101を制御して、変圧器101における上記昇圧率を変更することによって、電圧出力部63から出力される電圧を調整することができる。より詳細に説明すると、変圧器101における上記昇圧率を大きくすると、第1電圧入力部61に入力される電圧が上昇する。これにより、各チャージポンプ64での電圧の昇圧量が大きくなり、電圧出力部63から出力される電圧が高くなる。一方、変圧器101における上記昇圧率を小さくすると、第1電圧入力部61に入力される電圧が低下する。これにより、各チャージポンプ64での電圧の昇圧量が小さくなり、電圧出力部63から出力される電圧が低くなる。
【0069】
なお、変形例1の変圧器101は、電源電圧を第1電圧入力部61に入力する電圧に昇圧するものであり、第1電圧入力部61に入力する電圧は、電圧出力部63から出力される電圧よりも低い。したがって、変圧器101は、電源電圧を電圧出力部63から出力される電圧まで昇圧させることのできる変圧器と比較して小型のものとすることができる。したがって、変形例1において、変圧器101によって回路が大幅に大型化することがない。
【0070】
また、変形例1では、変圧器101における昇圧率を変更するとともに、上述の実施形態と同様に、PWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更することによって、電圧出力部63から出力される電圧を調整してもよい。あるいは、変形例1では、変圧器101により電圧出力部63からの出力電圧を調整できるため、PWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数を一定にしてもよい。
【0071】
変形例2では、図10に示すように、電圧印加回路51の第1電圧入力部61に電圧調整回路111が接続されている。電圧調整回路111は、電圧印加回路51と同様の回路構成を有する。ただし、電圧調整回路111を構成するチャージポンプ64の個数は、電圧印加回路51を構成するチャージポンプ64の個数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
そして、電圧調整回路111の電圧出力部63が、電圧印加回路51の第1電圧入力部61に接続されている。また、電圧調整回路111の第1電圧入力部61は、図示しない電源回路が接続され、電源電圧が入力される。なお、変形例2では、電圧調整回路111が、本発明の「入力電圧変更部」に相当する。
【0073】
変形例2では、電圧調整回路111において、PWM信号入力部66にPWM信号を入力することによって、上述の実施形態で説明したのと同様に複数のチャージポンプ64により入力された電圧を昇圧し、昇圧された電圧を電圧出力部63から出力する。そして、電圧調整回路111で昇圧された電圧が、電圧印加回路51の第1電圧入力部61に入力される。
【0074】
そして、変形例2では、電圧調整回路111のPWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更して、電圧調整回路111における昇圧率を変更することによって、電圧調整回路111の電圧出力部63から出力される電圧、つまり、電圧印加回路51の第1電圧入力部61に入力される電圧を変更することができる。そして、電圧印加回路51の第1電圧入力部61に入力される電圧を変更することによって、変形例1で説明したのと同様に、電圧印加回路51の電圧出力部63から出力される電圧を調整することができる。
【0075】
また、変形例2では、電圧調整回路111のPWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更するとともに、上述の実施形態と同様に、PWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更することによって、電圧出力部63から出力される電圧を調整してもよい。あるいは、変形例2では、電圧調整回路111のPWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更することによって電圧出力部63からの出力電圧を調整できるため、PWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数を一定にしてもよい。
【0076】
変形例3では、図11に示すように、電圧印加回路51の第2電圧入力部62に電圧調整回路121が接続されている。電圧調整回路121は、電圧印加回路51と同様の回路構成を有する。ただし、電圧調整回路121を構成するチャージポンプ64の個数は、電圧印加回路51を構成するチャージポンプ64の個数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。そして、電圧調整回路121の電圧出力部63が、電圧印加回路51の第2電圧入力部62に接続されている。
【0077】
変形例3では、電圧調整回路121において、PWM信号入力部66にPWM信号を入力することによって、上述の実施形態で説明したのと同様、入力された電圧を昇圧し、昇圧された電圧を電圧出力部63から出力する。そして、電圧調整回路121で昇圧された電圧が、電圧印加回路51の第2電圧入力部62に入力される。なお、変形例3では、電圧調整回路121が、本発明の「入力電圧変更部」に相当する。
【0078】
そして、変形例3では、制御部30が、電圧調整回路121のPWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更して、電圧調整回路121における昇圧率を変更することによって、電圧調整回路121の電圧出力部63から出力される電圧、つまり、電圧印加回路51の第2電圧入力部62に入力される電圧を変更することができる。そして、電圧印加回路51の第2電圧入力部62に入力される電圧を変更することによって、電圧印加回路51の電圧出力部63から出力される電圧を調整することができる。より詳細に説明すると、電圧印加回路51の第2電圧入力部62に入力される電圧を高くすることにより、電圧印加回路51の電圧出力部63から出力される電圧を高くすることができる。また、電圧印加回路51の第2電圧入力部62に入力される電圧を低くすることにより、電圧印加回路51の電圧出力部63から出力される電圧を低くすることができる。
【0079】
また、変形例3では、電圧調整回路121のPWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更するとともに、上述の実施形態と同様に、PWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更することによって、電圧出力部63から出力される電圧を調整してもよい。あるいは、変形例3では、電圧調整回路121のPWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更することによって電圧出力部63からの出力電圧を調整できるため、PWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数を一定にしてもよい。
【0080】
また、変形例1,2では、電圧印加回路51の第2電圧入力部62に入力される電圧を変更せずに、電圧印加回路51の第1電圧入力部61に入力される電圧を変更することによって、電圧印加回路51の電圧出力部63から出力される電圧を調整した。また、変形例3では、電圧印加回路51の第1電圧入力部61に入力される電圧を変更せずに、電圧印加回路51の第2電圧入力部62に入力される電圧を変更することによって、電圧印加回路51の電圧出力部63から出力される電圧を調整した。しかしながら、これには限られない。電圧印加回路51の第1電圧入力部61に入力される電圧と、電圧印加回路51の第2電圧入力部62に入力される電圧の両方を変更することによって、電圧印加回路51の電圧出力部63から出力される電圧を調整してもよい。
【0081】
変形例4では、図12に示すように、電圧印加回路131が、上述の実施形態の電圧印加回路51と同様の構成に加えて、切換回路132を有している。切換回路132は、図12の最も右側のチャージポンプ64X2の出力部72bX2、および、図12の右から2番目のチャージポンプ64X1の出力部72bX1、および、電圧出力部63と接続されている。そして、切換回路132は、制御部30の制御により、チャージポンプ64X2の出力部72bX2と電圧出力部63とを接続させるか、チャージポンプ64X1の出力部72bX1と電圧出力部63とを接続させるかを切り換える。なお、変形例4では、チャージポンプ64X1が本発明の「第1チャージポンプ」に相当し、チャージポンプ64X2が、本発明の「第2チャージポンプ」に相当する。
【0082】
各チャージポンプ64の出力部72bから出力される電圧は異なる。変形例4では、チャージポンプ64X2から出力される電圧を電圧出力部63から出力するか、チャージポンプ64X1から出力される電圧を電圧出力部63から出力するかを切り換えることによって、電圧出力部63から出力される電圧を調整することができる。
【0083】
また、変形例4では、チャージポンプ64X1の出力部72bX1、および、チャージポンプ64X2の出力部72bX2を切換回路132に接続したが、これには限られない。チャージポンプ64X1の出力部72bX1の代わりに、これよりも図12の左側のチャージポンプ64の出力部72bを切換回路132に接続してもよい。また、チャージポンプ64X2の出力部72bX2を含む3以上のチャージポンプ64の出力部72bを切換回路132に接続してもよい。そして、切換回路132において、これら3以上のチャージポンプ64の出力部72bのうちのどの出力部72bを電圧出力部63に接続させるかを切り換えてもよい。なお、この場合には、これら3以上のチャージポンプ64の中の任意の2つのチャージポンプ64のうち、図12の左側に位置するチャージポンプ64が、本発明の「第1チャージポンプ」に相当し、図12の右側に位置するチャージポンプ64が、本発明の「第2チャージポンプ」に相当する。
【0084】
また、変形例4では、切換回路132により電圧出力部63の接続先を切り換えるとともに、上述の実施形態と同様に、PWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更することによって、電圧出力部63から出力される電圧を調整してもよい。あるいは、変形例4では、切換回路132により電圧出力部63の接続先を切り換えることによって電圧出力部63からの出力電圧を調整できるため、PWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数を一定にしてもよい。
【0085】
あるいは、変形例4では、切換回路132により電圧出力部63の接続先を切り換えるとともに、変形例1~3のいずれかと同様に、第1電圧入力部61および第2電圧入力部62の少なくとも一方に入力される電圧を変更することによって、電圧出力部63から出力される電圧を調整してもよい。
【0086】
変形例5では、図13に示すように、電圧印加回路141が、電源入力部142a,142bと、グランド接続部143と、電圧出力部144と、2つのチャージポンプユニット145,146と切換回路147とを有する。電源入力部142a,142bは、図示しない電源回路と接続され、電源電圧が入力される。グランド接続部143は、グランド電位に保持されている。電圧出力部144は、上述の実施形態の電圧印加回路51の電圧出力部63と同様、ローパスフィルタ52を介して電極26に接続されている。
【0087】
チャージポンプユニット145,146は、上述の実施形態の電圧印加回路51と同様の構成を有する。ただし、チャージポンプユニット145,146におけるチャージポンプ64の数は、上述の実施形態の電圧印加回路51におけるチャージポンプ64の数と異なっていてもよい。また、チャージポンプユニット145におけるチャージポンプ64の数と、チャージポンプユニット146におけるチャージポンプ64の数とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、チャージポンプユニット145におけるチャージポンプ64の数が、チャージポンプユニット146におけるチャージポンプ64の数よりも少なくてもよい。
【0088】
また、チャージポンプユニット145の電圧出力部63と、チャージポンプユニット146の第2電圧入力部62とが接続されている。また、チャージポンプユニット145,146の第1電圧入力部61は、それぞれ、電源入力部142a,142bに接続され、電源電圧が入力される。チャージポンプユニット145の第2電圧入力部62は、グランド接続部143に接続され、グランド電位に保持されている。
【0089】
切換回路147は、チャージポンプユニット145の電圧出力部63、チャージポンプユニット146の電圧出力部63、および、電圧出力部144と接続されている。そして、切換回路147は、制御部30の制御により、チャージポンプユニット145の電圧出力部63と電圧出力部144とを接続させるか、チャージポンプユニット146の電圧出力部63と電圧出力部63とを接続させるかを切り換える。これにより、チャージポンプユニット145の図13の最も右側のチャージポンプ64の出力部72bと電圧出力部144とを接続させるか、チャージポンプユニット146の図13の最も右側のチャージポンプ64の出力部72bとを接続させるかを切り換えることができる。
【0090】
なお、変形例5では、チャージポンプユニット145の図13の最も右側のチャージポンプ64が本発明の「第1チャージポンプ」に相当し、チャージポンプユニット146の図13の最も右側のチャージポンプ64が、本発明の「第2チャージポンプ」に相当する。
【0091】
変形例5では、チャージポンプユニット145の電圧出力部63から出力される電圧が、チャージポンプユニット146の第2電圧入力部62に入力される。そして、チャージポンプユニット146において、第2電圧入力部62に入力された電圧が昇圧される。したがって、チャージポンプユニット145の電圧出力部63から出力される電圧と、チャージポンプユニット146の電圧出力部63から出力される電圧とは異なる。したがって、変形例5では、チャージポンプユニット145の図13の最も右側のチャージポンプ64の出力部72bと電圧出力部144とを接続させるか、チャージポンプユニット146の図13の最も右側のチャージポンプ64の出力部72bとを接続させるかを切り換えることによって、電圧出力部144から出力される電圧を調整することができる。
【0092】
また、変形例5では、切換回路147により電圧出力部144の接続先を切り換えるとともに、上述の実施形態と同様に、チャージポンプユニット145,146の少なくとも一方においてPWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数の少なくとも一方を変更することによって、電圧出力部63から出力される電圧を調整してもよい。あるいは、変形例5では、切換回路147により電圧出力部144の接続先を切り換えることによって電圧出力部63からの出力電圧を調整できるため、PWM信号入力部66に入力するPWM信号のデューティ比および周波数を一定にしてもよい。
【0093】
あるいは、変形例5では、切換回路147により電圧出力部144の接続先を切り換えるとともに、変形例1,2のいずれかと同様に、チャージポンプユニット145,146の少なくとも一方の第1電圧入力部61に入力される電圧を変更することによって、電圧出力部144から出力される電圧を調整してもよい。
【0094】
あるいは、変形例5では、切換回路147により電圧出力部144の接続先を切り換えるとともに、変形例3と同様に、チャージポンプユニット146の第2電圧入力部62に入力される電圧を変更することによって、電圧出力部144から出力される電圧を調整してもよい。
【0095】
また、上述の実施形態では、第1所定値未満の直流のリーク電流が検出されたときには、電圧印加回路51から出力される電圧を調整して、吐出検知を継続できるようにする。一方で、第1所定値以上の直流のリーク電流または第2所定値以上の交流のリーク電流が検出されたときにPWM信号のデューティ比を0にして、電極26への高電圧の印加を停止させたが、これには限られない。
【0096】
例えば、DCリーク信号出力部53を、第1所定値以上の直流のリーク電流が流れている否かを示すDCリーク信号を出力するもの、すなわち、第1所定値以上の直流のリーク電流は検出するが、第1所定値未満の直流のリーク電流を検出しないものとしてもよい。そして、第1所定値未満の直流のリーク電流が流れているときに、電圧印加回路51から出力される電圧を調整しないようにしてもよい。
【0097】
また、DCリーク信号出力部53およびACリーク信号出力部56のうち片方がなくてもよい。すなわち、直流のリーク電流および交流のリーク電流のうち片方のリーク電流のみを検出してもよい。
【0098】
さらには、DCリーク信号出力部53およびACリーク信号出力部56の両方がなくてもよい。すなわち、直流のリーク電流および交流のリーク電流のどちらも検出しなくてもよい。
【0099】
また、上述の実施形態では、電圧印加回路51により電圧が印加されたときに電極26に流れる電流は100μAよりも小さいことには限られず、100μA以上であってもよい。
【0100】
また、上述の実施形態では、電圧印加回路51によって入力された50V未満電圧が、300V以上の電圧に昇圧される。また、上述の実施形態では、電圧印加回路51によって、入力された電圧が10倍以上の電圧に昇圧される。また、上述の実施形態では、直列に接続された10個以上のチャージポンプ64によって、電圧印加回路51に入力された電圧が昇圧される。しかしながら、これには限られない。
【0101】
例えば、電圧印加回路51によって入力される電圧は50V以上の電圧であってもよいし、電圧印可回路51から出力される電圧は300V未満の電圧であってもよい。あるいは、電圧印加回路51は、入力された電圧を10倍未満の電圧に昇圧するものであってもよい。あるいは、電圧印加回路51は、9個以下の複数の直列に接続されたチャージポンプ64を有するものであってもよい。
【0102】
また、電圧印加回路は、複数のチャージポンプ64を有するものであることにも限られない。変形例6では、図14に示すように、電圧印加回路151がチャージポンプ64を1つだけ備えている。また、変形例6では、第1電圧入力部61と図示しない電源回路との間に変圧器152が接続されている。変圧器152は、電源回路から入力された電源電圧を昇圧して第1電圧入力部61に出力する。
【0103】
変形例6では、電源電圧を電極26に印加するのに必要な電圧まで昇圧させるための回路を小型化にすることができる。より詳細に説明すると、チャージポンプ64を構成する回路は変圧器よりも小型にすることができる。また、変圧器152は、電源電圧を第1電圧入力部61に入力する電圧に昇圧するものであり、第1電圧入力部61に入力する電圧は、電圧出力部63から出力される電圧よりも低い。したがって、変圧器152は、電源電圧を電圧出力部63から出力される電圧まで昇圧させることができるような変圧器と比較して小型のものとすることができる。これらのことから、変形例6の電圧印加回路151と変圧器152とを合わせた回路を、変圧器によってのみ電源電圧を電圧出力部63から出力される電圧まで昇圧させる回路よりも小型にすることができる。
【0104】
また、以上の例では、電圧印加回路によって電極26に電圧を印加し、インクジェットヘッド4をグランド電位に保持することによって、電極26とインクジェットヘッド4との間に電位差を生じさせ、電極26の電圧に応じた信号を制御部30に出力するようにしたが、これには限られない。電極26をグランド電位に保持し、電圧印加回路によってインクジェットヘッド4に電圧を印加することによって、電極26とインクジェットヘッド4との間に電位差を生じさせ、インクジェットヘッド4の電圧に応じた信号を制御部30に出力するようにしてもよい。
【0105】
また、以上の例では、インクジェットヘッド4に吐出駆動を行わせたときの、ノズル10からキャップ21内に配置された電極26における電圧の変化に応じて増幅回路55から出力される信号に基づいて、ノズル10に異常があるか否かを判定したが、これには限られない。
【0106】
例えば、電極26の代わりに、鉛直方向に延びており、キャリッジ2がメンテナンス位置に位置している状態でノズル10の下方の空間と対向する電極を設けてもよい。そして、増幅回路55から、キャリッジ2をメンテナンス位置に位置させた状態で吐出駆動を行ったときの上記電極の電圧の変化に応じた信号を出力するようにしてもよい。そして、この信号に基づいて、ノズル10に異常があるか否かを判定してもよい。
【0107】
また、以上の例では、増幅回路55から出力された信号に基づいて、ノズル10からインクが吐出されたか否かを判定したが、これには限られない。増幅回路55から出力された信号に基づいて、例えばインクの吐出方向の異常等、別の異常があるか否かを判定してもよい。
【0108】
また、以上の例では、インクジェットヘッド4の全てのノズル10について、吐出駆動を行わせて、ノズル10に異常があるか否かを判定したが、これには限られない。例えば、各ノズル列9における1つおきのノズル10等、インクジェットヘッド4の一部のノズル10についてのみ、吐出駆動を行わせてノズル10に異常があるか否かを判定してもよい。そして、それ以外のノズル10については、上記一部のノズル10についての判定結果に基づいてノズル10に異常があるか否かを推定してもよい。
【0109】
また、上述の実施形態では、キャリッジとともに走査方向に移動しつつ複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、走査方向に記録用紙の全長にわたって延び、走査方向に配列された複数のノズルを有する、いわゆるラインヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。
【0110】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Sに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録するプリンタにも適用され得る。また、インク滴以外の液滴、例えば、液体状にした樹脂や金属の液滴を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0111】
1:プリンタ
4:インクジェットヘッド
10:ノズル
26:電極
30:制御部
51:電圧印加回路
52:ローパスフィルタ
53:DCリーク信号出力部
54:ハイパスフィルタ
56:ACリーク信号出力部
64:チャージポンプ
73a,73b:コンデンサ
74a,74b:ダイオード
101:変圧器
111,121:電圧調整回路
131:電圧印加回路
141:電圧印加回路
145,146:チャージポンプユニット
151:電圧印加回路
152:変圧器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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