(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079995
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】油脂抽出蒸留設備
(51)【国際特許分類】
B01D 3/40 20060101AFI20240606BHJP
C11B 3/12 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B01D3/40
C11B3/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192788
(22)【出願日】2022-12-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】523054023
【氏名又は名称】株式会社建
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 ▲昇▼
【テーマコード(参考)】
4D076
4H059
【Fターム(参考)】
4D076AA16
4D076AA24
4D076BB10
4D076CD22
4D076CD26
4D076DA14
4D076DA36
4D076FA16
4D076GA02
4D076HA11
4D076JA04
4H059AA04
4H059BC13
4H059CA12
4H059CA18
4H059CA72
4H059CA73
4H059CA97
4H059EA21
(57)【要約】
【課題】脱溶剤器から蒸発缶へ供給される複合ガスの温度低下、潜熱不足を防止し、蒸発缶の本来の蒸発機能を発揮し、その後工程でのエネルギー消費を節約することができる油脂抽出蒸留設備を提供する。
【解決手段】本発明の油脂抽出蒸留設備は、溶剤抽出後の油粕に向けて供給される水蒸気によって油粕を加熱して油粕に含まれるノルマルヘキサンを気化させて生成する水蒸気及びノルマルヘキサンガスを複合ガスとして供給する脱溶剤機15と、脱溶剤機15から供給される複合ガスの潜熱を熱源としてミセラを減圧下で蒸発させる第1蒸発缶22と、を備え、脱溶剤機15内の複合ガス中で浮遊する油粕の微粉を油粕に戻すように構成されており、脱溶剤機15にフラッシュタンク17Aを接続し、フラッシュ蒸気によって微粉を油粕に戻すと共にフラッシュ蒸気が合流した複合ガスによってミセラを加熱する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤抽出後の油粕に向けて供給される水蒸気によって上記油粕を加熱して上記油粕に含まれる溶剤を気化させて生成する水蒸気及び気化溶剤を複合ガスとして供給する脱溶剤機と、上記脱溶剤機から供給される上記複合ガスの潜熱を熱源として油脂抽出液を減圧下で加熱してその溶剤を蒸発させる蒸発缶と、を備え、上記脱溶剤機内の上記複合ガス中で浮遊する上記油粕の微粉を上記油粕に戻すように構成された油脂抽出蒸留設備であって、上記脱溶剤機にフラッシュ蒸気を供給するフラッシュ蒸気供給源を接続し、上記フラッシュ蒸気によって上記微粉を上記油粕に戻すと共に上記フラッシュ蒸気が合流した上記複合ガスの潜熱によって上記油脂抽出液を加熱することを特徴とする油脂抽出蒸留設備。
【請求項2】
上記脱溶剤機内の上記複合ガスの流路にエリミネータを設けたことを特徴とする請求項1に記載の油脂抽出蒸留設備。
【請求項3】
上記脱溶剤機内に、上記エリミネータの上方に位置する噴霧ヘッドを設け、上記噴霧ヘッドには上記フラッシュ蒸気供給源を接続したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油脂抽出蒸留設備。
【請求項4】
上記フラッシュ蒸気供給源がフラッシュタンクとして構成されていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の油脂抽出蒸留設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂原料を溶剤抽出した後の油粕に含まれる溶剤を除去する脱溶剤機を備えた油脂抽出蒸留設備に関し、更に詳しくは、脱溶剤機の後段で行われる油脂抽出液の蒸留の消費エネルギーを節約することができる油脂抽出蒸留設備に関する。
【背景技術】
【0002】
植物油の製造では、菜種、とうもろこし胚芽あるいは大豆等の植物油原料から菜種油、とうもろこし油あるいは大豆油などの油脂を採油する。採油方法としては、圧搾法、溶剤抽出法及び圧油法がある。菜種、とうもろこし胚芽等のように油脂成分が多い植物油原料では、原料を圧搾して油脂成分を搾り出す圧搾法が採用されている。大豆等のように油脂成分が20%に満たない油脂成分の少ない植物油原料では、加熱などの前処理後押し潰してフレーク状にした植物油原料(以下、「フレーク」と称す。)から油脂成分を例えば、溶剤(例えばノルマルヘキサン)によって抽出する溶剤抽出法が採用されている。また。菜種、とうもろこし胚芽等の圧搾後の搾り粕にも油脂成分が10数%程度残留しているため、ノルマルヘキサンを用いて搾り粕から油脂成分を抽出する、圧搾法と抽出法を組み合わせた圧抽法が採用されている。溶剤抽出法や圧抽法ではフレークや搾り粕(以下、「油粕」と称す。)から油脂成分を抽出した後、油脂抽出液を例えば350~240torrほどの減圧下で加熱して抽出溶剤であるノルマルヘキサンを蒸発させて油脂を回収する油脂抽出蒸留設備が用いられる。
【0003】
上記油脂抽出蒸留設備は、例えば
図3に示すように、抽出部10及び蒸発蒸留部20を備え、抽出部10において得られた油脂抽出液(以下、「ミセラ」と称す。)が減圧下の蒸発蒸留部20へ供給され、ここでノルマルヘキサンを蒸発させて大豆油等の油脂を回収している。
【0004】
抽出部10は、固定床コンベア式抽出機(以下、単に「抽出機」と称す。)11と、その上流側と下流側にそれぞれ付設された、抽出前後の油粕を搬送する第1、第2搬送機11A、11Bと、抽出機11内にノルマルヘキサンを供給する溶剤ポンプ12と、抽出機11からのミセラ(例えば油脂20%、ノルマルヘキサン80%)を貯留するミセラタンク13と、後述する蒸発蒸留部20内の溶剤セパレータから供給される液状のノルマルヘキサンを加熱する溶剤加熱機14と、抽出機11から搬入される油粕内に含まれるノルマルヘキサンを除去する脱溶剤機15と、を備えている。以下ではノルマルヘキサンに含まれる油脂の含有率をミセラ濃度と称する。例えばノルマルヘキサン中の油脂含有率が20%であれば、ミセラ濃度20%と称する。
【0005】
また、脱溶剤機15の上部と下部にはそれぞれ第3、第4搬送機15A、15Bが付設されている。この脱溶剤機15には第2、第3搬送機11B、15Aを介して抽出機11からノルマルヘキサンを含んだ油粕が搬入される。脱溶剤機15には、油粕の下方から上方に向けて水蒸気を供給する水蒸気供給体15Cが設けられ、水蒸気供給体15Cに接続された水蒸気管からの水蒸気によって油粕全体が流動化して満遍なく加熱されて油粕に含まれるノルマルヘキサンが気化されるようになっている。油粕は、脱溶剤機15内において水蒸気で加熱されてノルマルヘキサンが除去され、トーストされた後、第4搬送機15Bを介して例えば飼料用として搬出される。水蒸気と気化したノルマルヘキサン(以下、「ノルマルヘキサンガス」と称す。)は複合ガスとして油粕の微粉を含んで脱溶剤機15の上部空間へ上昇する。
【0006】
脱溶剤機15の上部空間のガス出口にはサイクロン型スクラバー15Dが取り付けられ、このサイクロン型スクラバー15Dは溶剤加熱機14から供給されるノルマルヘキサンを用いて油粕から舞い上がる油粕の微粉を除去した後、微粉を含まない油粕から上昇する複合ガス(水蒸気及びノルマルヘキサンガス)を蒸発蒸留部20側へ供給する。
【0007】
蒸発蒸留部20は、第1、第2蒸発缶21、22及び油脂塔23を備え、減圧下で第1、第2蒸発缶21、22においてミセラのノルマルヘキサンを順次蒸発させ、真空度が徐々に高くなる油脂塔23においてミセラの残存ノルマルヘキサンを除去し、ミセラは最終的にはノルマルヘキサンが殆ど除去された油脂として回収される。第1蒸発缶21は、脱溶剤機15から供給される水蒸気及びノルマルヘキサンガスからなる複合ガスの潜熱によってミセラタンク13から受給するミセラを減圧下で加熱してノルマルヘキサンを蒸発させてミセラ濃度を高める。このミセラから蒸発したノルマルヘキサンは第1コンデンサ24によって凝縮され、溶剤セパレータ25において回収される。第1蒸発缶21から流出するミセラは第2蒸発缶22へ供給される。第2蒸発缶22では第1蒸発缶21より真空度の高い減圧下でミセラが水蒸気によって加熱されてノルマルヘキサンが蒸発し、ミセラを蒸留して油脂成分の濃度が96%の濃縮ミセラを生成し、ここで蒸発したノルマルヘキサンガスが第1コンデンサ24によって凝縮され溶剤セパレータ25で回収される。このようにミセラは第2蒸発缶22において大半のノルマルヘキサンが除去される。残りのノルマルヘキサンは油脂塔23において除去される。
【0008】
油脂塔23は、上下に分割され、下部23Bが上部23Aより高真空になっている。上下の各部23A、23Bには、それぞれ複数の棚段が設けられ、濃縮されたミセラが各棚段を流下する間に水蒸気で加熱されて徐々に蒸留される。油脂塔23において除去されたノルマルヘキサンガスは第2コンデンサ26で凝縮され溶剤セパレータ25で回収される。この液化したノルマルヘキサンには水蒸気蒸留で利用された水分が少量含まれているため、溶剤セパレータ25においてノルマルヘキサンから水が分離されて、水回収部27において水が回収される。溶剤セパレータ25で回収されたノルマルヘキサンは配管を介して溶剤加熱機14へ戻され、溶剤加熱機14から脱溶剤機15のサイクロン型スクラバー15Dに供給されるようになっている。
【0009】
従来の油脂抽出蒸留設備では、
図3に示すように、抽出部10において油粕を溶剤抽出してミセラを得る。溶剤抽出後の油粕は脱溶剤機15へ搬送され、ミセラはミセラタンク13に一時的に溜められる。その後、ミセラは第1蒸発缶21へ供給され、ここで脱溶剤機15から供給される複合ガスの潜熱を熱源として減圧下でミセラを加熱してノルマルヘキサンを蒸発させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、
図3に示す従来の油脂抽出蒸留設備の場合には、第1蒸発缶21では脱溶剤機15から供給される複合ガスの潜熱によってミセラを加熱して濃縮しているが、複合ガスの温度が必要温度よりも低く、第1蒸発缶21で必要とされる潜熱を得ることができず、第1蒸発缶21が本来の蒸発機能が発揮できず、それだけ後工程である蒸発蒸留工程での蒸発蒸留負担が大きくなり、余分のエネルギーが消費されるという課題があった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、脱溶剤機から蒸発缶へ供給される複合ガスの温度低下、潜熱不足を防止し、蒸発缶が本来の蒸発機能を発揮し、その後工程でのエネルギー消費を節約することができる油脂抽出蒸留設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、脱溶剤機15から第1蒸発缶21へ供給する複合ガス、即ち、水蒸気及びノルマルヘキサンガスの温度低下について種々検討した結果、従来の油脂抽出蒸留設備の場合にはサイクロン型スクラバー15Cへ65℃前後のノルマルヘキサンを脱溶剤機15内に供給して噴霧し、脱溶剤機15内の複合ガス中で浮遊する油粕の微粉を除去しているが、その供給されたノルマルヘキサンにより複合ガスの温度が例えば74℃が65℃前後の温度に低下する。その結果、複合ガスのノルマルヘキサンガスと水蒸気との分圧関係で水蒸気の絶対湿度が低下するため、第1蒸発缶21での複合ガスの必要熱量が不足して第1蒸発缶21が本来の蒸発機能を発揮できないことが判った。
【0013】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、請求項1の油脂抽出蒸留設備は、溶剤抽出後の油粕に向けて供給される水蒸気によって上記油粕を加熱して上記油粕に含まれる溶剤を気化させて生成する水蒸気及び気化溶剤を複合ガスとして供給する脱溶剤機と、上記脱溶剤機から供給される上記複合ガスの潜熱を熱源として油脂抽出液を減圧下で加熱してその溶剤を蒸発させる蒸発缶と、を備え、上記脱溶剤機内の上記複合ガス中で浮遊する上記油粕の微粉を上記油粕に戻すように構成された油脂抽出蒸留設備であって、上記脱溶剤機にフラッシュ蒸気を供給するフラッシュ蒸気供給源を接続し、上記フラッシュ蒸気によって上記微粉を上記油粕に戻すと共に上記フラッシュ蒸気が合流した上記複合ガスの潜熱によって上記油脂抽出液を加熱することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載の油脂抽出蒸留設備は、請求項1に記載の発明において、上記脱溶剤機内の上記複合ガスの流路にエリミネータを設けたことを特徴とするものである。
【0015】
また。本発明の請求項3に記載の油脂抽出蒸留設備は、請求項1または請求項2に記載の発明において、上記脱溶剤機内に、上記エリミネータの上方に位置する噴霧ヘッドを設け、上記噴霧ヘッドには上記フラッシュ蒸気供給源を接続したことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項4に記載の油脂抽出蒸留設備は、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の発明において、上記フラッシュ蒸気供給源がフラッシュタンクとして構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、脱溶剤機から蒸発缶へ供給される複合ガスの温度低下、潜熱不足を防止し、蒸発缶が本来の蒸発機能を発揮し、その後工程でのエネルギー消費を節約することができる000油脂抽出蒸留設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の油脂抽出蒸留設備の一実施形態を示す構成図である。
【
図2】
図1に示す油脂抽出蒸留設備の要部を示す構成図である。
【
図3】従来の油脂抽出蒸留設備を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1、
図2に示す実施形態に基づいて従来と同一部分または相当部分には同一符号を付して本発明の油脂抽出蒸留設備について説明する。
【0020】
本実施形態の油脂抽出蒸留設備は、例えば
図1に示すように、油粕を溶剤抽出してミセラを生成する抽出部10と、抽出部10から供給されるミセラを蒸留する蒸発蒸留部20と、を備え、油粕に残存する油脂を回収するように構成されている。
【0021】
抽出部10は、
図1に示すように、ノルマルヘキサンを用いて油粕の油脂成分を抽出する抽出機11と、その上流側、下流側それぞれに付設された第1、第2搬送機11A、11Bと、抽出機11内でコンベアにより搬送される油粕にノルマルヘキサンを供給する溶剤ポンプ12と、抽出機11から排出されるミセラを一時的に貯留するミセラタンク13と、抽出機11から排出される油粕中に残存するノルマルヘキサンをノルマルヘキサンガスとして気化させて除去する脱溶剤機15と、を備えている。
【0022】
図1に示すように、脱溶剤機15は、例えば通気性のあるトレイ上に油粕が堆積して収納された本体と、本体の上端中央に突出して形成された筒状の上部空間と、本体の下側に本体より小径に形成されたトースト部と、を有している。脱溶剤機15の上部と下部にはそれぞれ第3、第4搬送機15A、15Bが付設されている。また、本体内のトースト部の上側には水蒸気供給体15Cが配置され、この水蒸気供給体15Cが水蒸気管から供給される水蒸気をトレイ上の油粕に向けて吹き上げるようにしてある。トレイ上の油粕は水蒸気供給体15Cからの水蒸気によって流動化し、油粕全体を満遍なく加熱されて油粕に含まれるノルマルヘキサンがノルマルヘキサンガスとして気化する。
【0023】
本実施形態では、
図1、
図2の(a)、(b)に示すように、上部空間内の水蒸気及びノルマルヘキサンガスの流路にはエリミネータ16が設置され、このエリミネータ16が
図2の(a)に矢印Xで示すように油粕から上昇する水蒸気の一部を水滴として除去すると共に油粕の微粉の多くを遮って油粕に戻すようにしている。以下では油粕から吹き上げる水蒸気及びノルマルヘキサンガスを複合ガスと称して説明する。このエリミネータ16は、
図2の(a)、(b)に拡大して示すように矩形状の容器内に複数のジグザグ板が複数配列された構造になっており、大きめの微粉を複数のジグザグ板で捕捉し、小さめの微粉が複数のジグザグ板の隙間をすり抜ける。すり抜けた小さめの微粉は上部空間内の複合ガス中で浮遊する。
【0024】
そこで、本実施形態では、
図1.
図2の(a)に示すように、脱溶剤機15の上部空間に噴霧ヘッド17が配置され、この噴霧ヘッド17にはフラッシュ蒸気供給源(以下、「フラッシュタンク」と称す。)17Aが配管17Bを介して接続されている。フラッシュタンク17Aには高温ドレン水が供給され、フラッシュタンク17A内で例えば100℃以上のフラッシュ蒸気になり、このフラッシュ蒸気が配管17B及び噴霧ヘッド17を介して常圧空間である上部空間内に噴霧されるようになっている。このフラッシュ蒸気は上部空間内の複合ガスに混入する。この時フラッシュ蒸気が露点に達しその一部が湯気になり、この湯気が上部空間内で浮遊する微粉を捕捉してエリミネータ16の複数のジグザグ板の隙間を介して元の油粕に戻すと共に油粕に適度の水分を付与する。大部分のフラッシュ蒸気は上部空間内で複合ガスに混入する。これによって複合ガス中のノルマルヘキサンガスに対する水蒸気の分圧が高くなり、水蒸気が従来のように液化することなくそのまま配管15Eを介して蒸発蒸留部20側へ供給される。この複合ガスは、油粕から上昇する時の温度、例えば74℃を維持したまま蒸発部蒸留20の第1蒸発缶21へ供給される。また、温度を74℃にすることにより潜熱が増し第1蒸発缶21の効率が上がることになり、後段の第2蒸発缶22の負荷が軽減されるため更なる省エネルギーを実現することができる。
【0025】
第1蒸発缶21では脱溶剤機15からの複合ガスの潜熱によってミセラタンク13からのミセラを加熱して濃縮する。この複合ガスはフラッシュ蒸気の混入により油粕から上昇した時の温度を維持したまま第1蒸発缶21へ供給されるため、第1蒸発缶21は本来の蒸発機能を発揮することができる。従って、第1蒸発缶21の後工程では余分なエネルギーを消費することがなく、省エネルギーを図ることができる。第1蒸発缶21内で油脂抽出液から蒸発するノルマルヘキサンガスは第1コンデンサ24において冷却された後、溶剤セパレータ25で溶剤として回収される。
【0026】
また、本実施形態では、例えば
図1に示すように、第2蒸発缶22の構造が改善され、第2蒸発缶22でのエネルギー消費を削減できるようにしてある。即ち、第2蒸発缶22は、
図1に示すように、予熱部22Aと加熱部22Bとに分割され、予熱部22Aが加熱部22Bの上流側に位置し、互いに配管で接続されている。予熱部22Aの下端には第1蒸発缶21からのミセラが流入する配管が接続されている。加熱部22Bの濃縮ミセラの出口には油脂塔23の上部のミセラの入口が配管を介して接続されている。
【0027】
図1に示すように予熱部22Aのシェル側上部にフラッシュタンク28が接続されている。このフラッシュタンク28には高温ドレン水が供給されて、フラッシュタンク28内で高温ドレン水からフラッシュ蒸気が発生するようになっている。つまり、予熱部22Aにおいてフラッシュ蒸気が熱源として再利用され、予熱部22A内で予めノルマルヘキサンの一部を蒸発させ、加熱部22Bではノルマルヘキサンの気泡を含まない状態でミセラを効率よく加熱し、第2蒸発缶22B全体における水蒸気の使用量を削減するようにしている。
【0028】
予熱部22A内で蒸発したノルマルヘキサンガスは上述したように蒸気放出管22Cから放出され、加熱部22Bへはミセラ濃度84%まで濃縮された蒸気を含まないミセラが流入するようになっている。加熱部22Bへ流入するミセラの様子は覗き窓22Dから確認することができる。加熱部22Bではノルマルヘキサンガスを含まない状態の濃縮ミセラが通過するため、予熱部22A内と相俟ってノルマルヘキサンを効率的に蒸発させ、従来よりも少ない水蒸気使用量で高濃度に濃縮された例えば濃度96%のミセラを生成させることができる。
【0029】
油脂塔23は、
図1に示すように上下に分割され、下部23Aが上部23Bより高真空になっている。上下の分割部には、それぞれ複数の棚段が設けられ、濃縮ミセラが各棚段を流下する間に水蒸気で加熱されてノルマルヘキサンが蒸発して徐々に除去される。また、下部23A内の棚段の下方に蒸気配管23Cに接続された蒸気吹き込み部が配置され、高真空下で棚段から流下する油脂内に蒸気をバブリングさせ、バブリング時の気泡表面から油脂中の微量の残留ノルマルヘキサンがガス化して完全に除去され、実質的にノルマルヘキサンを含まない高純度の油脂が得られる。油脂塔23において除去されたノルマルヘキサンが第2コンデンサ26で凝縮され溶剤セパレータ25で回収する。尚、27は溶剤セパレータ25に付帯する水回収部である。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、溶剤抽出後の油粕に向けて供給される水蒸気によって油粕を加熱し、油粕に含まれるノルマルヘキサンを気化させて複合ガスとして供給する脱溶剤機15と、脱溶剤機15から供給される複合ガスの潜熱によってミセラを減圧下で加熱してノルマルヘキサンを蒸発させる第1蒸発缶21と、を備え、脱溶剤機15内にフラッシュ蒸気を供給するフラッシュタンク17Aを脱溶剤機15に接続し、脱溶剤機15内ではフラッシュ蒸気によって複合ガス中に浮遊する微粉を元に戻すと共に第1蒸発缶21ではフラッシュ蒸気を含む複合ガスの潜熱によってミセラのノルマルヘキサンを蒸発させるようにしてあるため、脱溶剤機15から第1蒸発缶21へ供給される複合ガスの温度低下、潜熱不足を防止し、もって第1蒸発缶21本来の蒸発機能を維持し、その後工程での余分なエネルギー消費をなくしエネルギーを節約することができる。
【0031】
尚、本発明は上記実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の構成要素を必要に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0032】
15 脱溶剤機
15C 水蒸気供給体
16 エリミネータ
17 噴霧ヘッド
17A フラッシュタンク(フラッシュ蒸気供給源)
21 第1蒸発缶
【手続補正書】
【提出日】2023-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
上記脱溶剤機内に、上記エリミネータの上方に位置する噴霧ヘッドを設け、上記噴霧ヘッドには上記フラッシュ蒸気供給源を接続したことを特徴とする請求項2に記載の油脂抽出蒸留設備。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
また。本発明の請求項3に記載の油脂抽出蒸留設備は、請求項2に記載の発明において、上記脱溶剤機内に、上記エリミネータの上方に位置する噴霧ヘッドを設け、上記噴霧ヘッドには上記フラッシュ蒸気供給源を接続したことを特徴とするものである。