(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079997
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/16 20060101AFI20240606BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H02J7/16 A
H02J7/04 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192792
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】村上 太朗
【テーマコード(参考)】
5G060
5G503
【Fターム(参考)】
5G060AA05
5G060CA04
5G060CA10
5G060CA16
5G060DB01
5G060DB03
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CB11
5G503CB13
(57)【要約】
【課題】想定される温度環境下の充電池部に対して、常に適切な電流値の充電電流を出力する充電システムを得る。
【解決手段】充電システム100は充電制御回路5を有する。充電制御回路5内において、電池温度TS61及びTS62に基づき、充電池部6における許容交流電流値AI1が決定され、選択定格電流値I46に基づき、発電側指令電流値AI2が得られる。選択定格電流値I46は短時間定格電流値I44及び連続定格電流値I45のうち一方の電流値である。充電制御回路5内において、許容交流電流値AI1及び発電側指令電流値AI2のうち小さい方が決定充電電流値DCIとして選択される。充電制御回路5は、充電池部6に出力される充電電流が決定充電電流値DCIとなるように、電力発電部80の発電動作を制御するための充電電流指令値C5を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電が可能な充電池部と、
前記充電池部の温度を検出して検出電池温度を得る電池用温度センサと、
発電動作を実行し、前記発電動作によって得られる発電電力に基づく充電電流を前記充電池部に出力する電力発電部と、
前記検出電池温度を受け、前記電力発電部の前記発電動作を制御する充電制御回路とを備え、
前記充電制御回路は、
前記検出電池温度に基づき、前記充電池部における許容充電電流値を算出する許容充電電流値算出回路と、
前記発電動作における選択定格電流値に基づき、発電側指令電流値を出力する発電側電流指令値出力回路とを含み、前記選択定格電流値は、連続定格電流値及び前記連続定格電流値を超える短時間定格電流値のうち一方の電流値であり、
前記充電制御回路は、
前記許容充電電流値及び前記発電側指令電流値のうち小さい方を決定充電電流値として決定する充電電流値決定回路をさらに含み、
前記充電制御回路は、前記充電池部に出力される前記充電電流が前記決定充電電流値となるように前記電力発電部の前記発電動作を制御する、
充電システム。
【請求項2】
請求項1記載の充電システムであって、
前記電力発電部の発電電流を検出する発電側電流センサをさらに備え、
前記発電側電流指令値出力回路は、
前記発電電流の電流2乗時間積を計算し、前記電流2乗時間積である累積結果が、累積許容値を超えた場合に累積超過を指示する許容値比較信号を出力する累積値判定回路をさらに含み、
前記充電池部への充電動作の開始時において、前記短時間定格電流値を前記選択定格電流値とし、
前記許容値比較信号が前記累積超過を指示したとき、前記連続定格電流値を前記選択定格電流値とする、
充電システム。
【請求項3】
請求項2記載の充電システムであって、
前記充電池部を加熱する加熱動作を実行するヒータと、
前記充電池部を冷却する冷却動作を実行する冷却装置とをさらに備え、
前記充電池部における前記許容充電電流値は、充電ピーク温度のとき最大値となり、前記充電ピーク温度以下の第1の温度区間において前記許容充電電流値は上昇し、前記充電ピーク温度以上の第2の温度区間において前記許容充電電流値は下降する温度特性を有し、
前記充電制御回路は、
前記検出電池温度が加熱基準温度以下のとき、前記ヒータに前記加熱動作を実行させる加熱制御動作と、前記検出電池温度が冷却基準温度以上のとき、前記冷却装置に前記冷却動作を実行させる冷却制御動作とをさらに行い、
前記加熱基準温度は前記充電ピーク温度よりも低く、前記冷却基準温度は前記充電ピーク温度よりも高い、
充電システム。
【請求項4】
請求項3記載の充電システムであって、
前記充電池部は複数の電池セルを含み、
前記電池用温度センサは複数の電池用温度センサを含み、前記検出電池温度は前記複数の電池用温度センサで検出される複数の検出電池温度を含み、
前記加熱制御動作は、前記複数の検出電池温度の最小値が前記加熱基準温度以下のとき、前記ヒータに前記加熱動作を実行させる動作であり、
前記冷却制御動作は、前記複数の検出電池温度の最大値が前記冷却基準温度以上のとき、前記冷却装置に前記冷却動作を実行させる動作である、
充電システム。
【請求項5】
請求項4記載の充電システムであって、
前記加熱基準温度は第1の加熱基準温度及び第2の加熱基準温度を含み、前記第2の加熱基準温度は前記第1の加熱基準温度より高く、
前記選択定格電流値が前記連続定格電流値のとき、前記加熱基準温度は前記第1の加熱基準温度に設定され、
前記選択定格電流値が前記短時間定格電流値のとき、前記加熱基準温度は前記第2の加熱基準温度に設定される、
充電システム。
【請求項6】
請求項3から請求項5のうち、いずれか1項に記載の充電システムであって、
前記電力発電部の発電電力によって、前記ヒータの前記加熱動作及び前記冷却装置の前記冷却動作が実行され、
前記充電システムは、
前記ヒータへの供給電流を検出してヒータ電流を得るヒータ用電流センサと、
前記冷却装置への供給電流を検出して冷却装置電流を得る冷却装置用電流センサとさらに備え、
前記充電制御回路は、
前記ヒータ電流及び前記冷却装置電流をさらに受け、
前記ヒータの前記加熱動作の実行期間中において、前記発電側指令電流値は、前記選択定格電流値から前記ヒータ電流の電流値を差し引いた電流値となり、
前記冷却装置の前記冷却動作の実行期間中において、前記発電側指令電流値は、前記選択定格電流値から前記冷却装置電流の電流値を差し引いた電流値となる、
充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、充電池部に対して充電を行うことができる充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
充電池は、多くの電気機器及び電気装置などに使用されている。また、充電池に対する高速充電が要求されており、充電池に対する高速充電を可能とする先行文献として、例えば特許文献1で開示された高速充電システムが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示された従来の高速充電システムでは、充電池部への高速充電を目的として一時的に大きな値の充電電流で充電池部を充電する制御方法を採用している。
【0005】
一般的に、充電池部を構成する電池セルは低温時には内部抵抗が大きくなり充電効率が低下する傾向があり、また、充電値部は、電池温度に基づき許容充電電流値が変化する特性を有している。
【0006】
従来の高速充電システムは、充電池部の電池温度を考慮していないため、許容充電電流値を超える充電電流を充電値部に出力してしまう恐れがあるという問題点があった。
【0007】
本開示は上記問題点を解決するためになされたもので、想定される温度環境下の充電池部に対して、常に適切な電流値の充電電流を充電値部に出力する充電システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る充電システムは、充電が可能な充電池部と、前記充電池部の温度を検出して検出電池温度を得る電池用温度センサと、発電動作を実行し、前記発電動作によって得られる発電電力に基づく充電電流を前記充電池部に出力する電力発電部と、前記検出電池温度を受け、前記電力発電部の前記発電動作を制御する充電制御回路とを備え、前記充電制御回路は、前記検出電池温度に基づき、前記充電池部における許容充電電流値を算出する許容充電電流値算出回路と、前記発電動作における選択定格電流値に基づき、発電側指令電流値を出力する発電側電流指令値出力回路とを含み、前記選択定格電流値は、連続定格電流値及び前記連続定格電流値を超える短時間定格電流値のうち一方の電流値であり、前記充電制御回路は、前記許容充電電流値及び前記発電側指令電流値のうち小さい方を決定充電電流値として決定する充電電流値決定回路をさらに含み、前記充電制御回路は、前記充電池部に出力される前記充電電流が前記決定充電電流値となるように前記電力発電部の前記発電動作を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の充電システムにおける充電制御回路は、充電池部に出力される充電電流が決定充電電流値となるように電力発電部の発電動作を制御している。決定充電電流値は、検出電池温度に基づき算出された許容充電電流値を超えることはない。
【0010】
したがって、本開示の充電システムは、充電池部の検出電池温度の変化を考慮することにより、想定される温度環境下の充電池部に対して、常に適切な決定充電電流値の充電電流を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態である充電システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1で示した電力発電部における連続定格及び短時間定格を説明するための説明図である。
【
図3】
図1で示した充電池部における許容充電電流の電池温度変化を示すグラフである。
【
図4】
図1で示した充電池部内の電池セルの内部抵抗の電池温度変化を示すグラフである。
【
図5】
図1で示した充電制御回路の内部構成を示すブロック図(その1)である。
【
図6】
図1で示した充電制御回路の内部構成を示すブロック図(その2)である。
【
図7】実施の形態の充電システムの充電動作の実行中における電池温度の経時変化を示すグラフである。
【
図8】上記充電動作の実行中における3つの開閉器の開閉状態を示すグラフである。
【
図9】上記充電動作の実行中における最終充電電流値の経時変化を示すグラフである。
【
図10】上記充電動作の実行中における充電電流及び発電機出力電流の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(全体構成)
図1は本開示の実施の形態である充電システム100の構成を示すブロック図である。
【0013】
同図に示すように、充電システム100は、電力発電部80、充電制御回路5、充電池部6、ヒータ7、冷却装置8、温度センサ61及び62、開閉器SW1~SW3、電流センサIS2~IS4、電圧センサVS1及びVS2、配線L2a及びL2b、配線L3及びL4、並びに抵抗R1及びR2を主要構成要素として含んでいる。
【0014】
電力発電部80は、発動機(EG)1、発電機2、整流器3、及び励磁制御装置4、冷媒温度センサ15、配線L1及び電流センサIS1を主要構成要素として含んでいる。
【0015】
充電池部6は充電可能な複数の電池セルを内部に有している。充電池部6に対し温度センサ61及び62が設けられる。各々が電池用温度センサである温度センサ61及び62により検出電池温度TS61及びTS62が検出される。温度センサ61及び62のうち、一方は可能なかぎり最も高温になりやすい電池セルを測定対象とし、他方は可能なかぎり最も低温になりやすい電池セルを測定対象とすることが望ましい。また、温度センサは2つに限らず“3”を超える多数設けてもよい。
【0016】
発電機2に冷媒温度センサ15が設けられる。発電側温度センサである冷媒温度センサ15により発電機2を冷却する冷媒の温度である検出冷媒温度TS1が検出される。
【0017】
冷媒温度センサ15は、発電機2に配設されている発電側温度センサである。なお、発電機2が冷媒用配管を有する場合、発電機2外の冷媒用配管部分に冷媒温度センサ15を設けても良い。
【0018】
上述したように、電力発電部80は、原動機1(EG1)、発電機2、整流器3及び励磁制御装置4を含んで構成される。原動機1は機械的エネルギーを回転軸やギア等を通じ、発電機2の回転子に伝達する様に構成される。原動機1として例えば内燃機関がある。原動機1として、蒸気タービン、ガスタービン、水車、または風車等であってもよい。
【0019】
電力発電部80は、発電機2にて発電動作を実行し、この発電動作によって得られる発電電力に基づく充電電流I6を充電池部6に対し出力する。
【0020】
発電機2は、機械エネルギーから電気エネルギーへの変換を利用して、交流電力を起こす発電動作を実行する。ここで、発電機2の発電電圧は、励磁制御装置4における励磁電流を調整することにより、変化する。
【0021】
励磁制御装置4は、充電制御回路5からの充電電流指令値C5に基づき励磁電流を出力することにより、発電機2の発電動作によって得られる出力電圧を制御することができる。発電機2と整流器3とは配線L1を介して接続され、発電機2の発電動作によって得られる交流電力の発電電流は配線L1を介して整流器3に伝達される。
【0022】
整流器3は、発電機2から出力される交流電力を直流電力に変換する。整流器3は、電力配線となる配線L2a及びL2bを介して充電池部6に接続されている。したがって、整流器3は、変換後の直流電力に含まれる電流を充電電流として、充電池部6に対し出力する。この際、整流器3のアノードが接続される配線L2bが負側となり、整流器3のカソードが接続される配線L2aが正側となる。
【0023】
本実施の形態の充電システム100は補助回路としてヒータ7及び冷却装置8を有している。ヒータ7及び冷却装置8は充電池部6の近くに配置される。ヒータ7は充電池部6に対し加熱動作を行い、冷却装置8は充電池部6に対し冷却動作を行う。ヒータ7による加熱動作及び冷却装置8による冷却動作は充電制御回路5の制御下で行われる。
【0024】
各々が電池用温度センサである温度センサ61及び62は、充電池部6と比較してヒータ7の加熱動作及び冷却装置8の冷却動作の影響を受けないように、ヒータ7及び冷却装置8から所定距離隔てた位置に設けられる。
【0025】
配線L2a及びL2b間に抵抗R1及びR2が直列に接続され、抵抗R1及びR2間のノードN1が基準電位である接地電位に設定される。また、配線L2a上に開閉器SW1が設けられており、開閉器SW1が「閉状態」(ON状態)になると配線L2aに充電電流が流れ、開閉器SW1が「開状態」(OFF状態)になると配線L2aに充電電流は流れない。
【0026】
開閉器SW1を基準として整流器3側の配線L2a及びL2b間に電圧センサVS1が設けられる。電圧センサVS1より直流出力電圧V2が検出される。開閉器SW1を基準として充電池部6側の配線L2a及びL2b間に電圧センサVS2が設けられる。電圧センサVS2より充電池部6の充電電圧V6が検出される。さらに、開閉器SW1を基準として充電池部6側の配線L2aに電流センサIS2が設けられる。電流センサIS2により充電電流I6が検出される。
【0027】
配線L1に発電側電流センサである電流センサIS1が設けられ、電流センサIS1より、発電電流となる発電機出力電流I2が検出される。
【0028】
配線L1は開閉器SW2を介して配線L3に接続される。したがって、開閉器SW2が「閉状態」になると配線L1と配線L3とが電気的に接続され、開閉器SW2が「開状態」になると配線L1と配線L3とが電気的に遮断される。
【0029】
配線L3を流れる電流が冷却装置8の冷却装置が冷却動作を実行するための電流となる。配線L3に電流センサIS3が設けられ、電流センサIS3により冷却装置電流I8が検出される。電流センサIS3が冷却装置用電流センサとなる。
【0030】
すなわち、電力発電部80の発電電力に基づく供給電流が冷却装置8に供給されることにより、冷却装置8は冷却動作を実行することができる。
【0031】
配線L1は開閉器SW3を介して配線L4に接続される。したがって、開閉器SW3が「閉状態」になると配線L1と配線L4とが電気的に接続され、開閉器SW3が「開状態」になると配線L1と配線L4とが電気的に遮断される。
【0032】
配線L4を流れる電流はヒータ7が加熱動作を実行するための電流となる。配線L4に電流センサIS4が設けられ、電流センサIS4によりヒータ電流I7が検出される。電流センサIS4がヒータ用電流センサとなる。
【0033】
すなわち、電力発電部80の発電電力に基づく供給電流がヒータ7に供給されることにより、ヒータ7は加熱動作を実行することができる。
【0034】
電力発電部80に対する発電動作の使用態様として、連続定格範囲内での使用と、連続定格を超える範囲での短期間使用とがある。すなわち、電力発電部80は、通常充電モードでは、連続定格の範囲内での運転を行い、高速充電モードでは、連続定格を超える範囲での運転を行う。具体的には、高速充電モード時には、連続定格を超え、短時間定格の範囲内での運転を行う。
【0035】
ここで、電力発電部80を連続的に使用し続けることを前提とした定格が、連続定格である。これに対して、電力発電部80を短時間(例えば、30分や1時間)だけ使用することを前提とした定格が、短時間定格である。
【0036】
連続定格の範囲内で電力発電部80を使用した場合には、電力発電部80を比較的長時間に亘り使用し続けることができる。一方、短時間定格の範囲内で電力発電部80を使用した場合には、想定される短時間なら異常なく電力発電部80の使用が可能となる。
【0037】
図2は、電力発電部80の性能つまり、電力発電部80における連続定格及び短時間定格を説明するための説明図である。
【0038】
図2における、電圧V100以下電圧V200以上の範囲において、充電池部6が使用される。したがって、充電池部6に対して、発電・出力電圧が電圧V100以下電圧V200以上の範囲において、電力発電部80が使用される。
【0039】
図2における実線が、連続定格特性を示しており、当該実線より左側の範囲以内おいて、電力発電部80を異常なく長時間連続的使用することができる。また、
図2における一点鎖線が、短時間定格特性を示しており、前記実線から一点鎖線までの範囲おいて、電力発電部80を指定された短時間だけ異常なく使用することができる。
【0040】
図2に示すように、連続定格特性を示す実線は、電圧と電流との積が一定の電力W1となるように変化する。また、短時間定格特性を示す一点鎖線は、電圧と電流との積が一定の電力W2となるように変化する。
【0041】
充電制御回路5は図示しない上位装置より充電指令C1を受け、発電側温度センサである冷媒温度センサ15より検出冷媒温度TS1を受け、各々が電池用温度センサである温度センサ61及び62より検出電池温度TS61及びTS62を受ける。充電制御回路5はさらに、電圧センサVS1より直流出力電圧V2を受け、電圧センサVS2より充電電圧V6を受ける。
【0042】
充電制御回路5は、さらに、発電側電流センサである電流センサIS1より発電電流である発電機出力電流I2を受け、電流センサIS2より充電電流I6を受け、冷却装置用電流センサである電流センサIS3より冷却装置電流I8を受け、ヒータ用電流センサである電流センサIS4よりヒータ電流I7を受ける。
【0043】
そして、充電制御回路5は、励磁制御装置4に充電電流指令値C5を出力し、開閉器SW1~SW3に開閉器操作信号S1~S3を出力する。さらに、上位装置に充電完了信号S5を出力する。なお、上位装置として例えば、充電システム100の操作監視盤が考えられる。
【0044】
充電制御回路5は、PLC(programmable Logic Controller)等で構成されており、充電電流指令値C5を電力発電部80の励磁制御装置4に付与することにより、電力発電部80から出力される充電電流の制御を行う。すなわち、充電制御回路5は、充電電流指令値C5を付与して、励磁制御装置4による励磁電流を制御することにより、電力発電部80から出力される発電電流を変化させる。その結果、充電池部6に対する充電電流I6も変化する。
【0045】
また、充電制御回路5は、電圧センサVS2からの充電電圧V6を監視することができる。さらに、充電制御回路5は、電圧センサVS1からの直流出力電圧V2を監視することができる。
【0046】
加えて、充電制御回路5は、電流センサIS2からの充電電流I6を監視することができる。また、充電制御回路5は冷媒温度センサ15からの検出冷媒温度TS1と、温度センサ61及び62からの検出電池温度TS61及びTS62を監視することができる。
【0047】
なお、充電制御回路5内における構成及び動作については後述する。
【0048】
充電池部6は、各々が充電可能な複数の電池セルにより構成されている。電力発電部80から出力される発電電力に基づく充電電流を受けることにより、充電池部6は充電される。また、
図1には図示が省略されているが、充電池部6には負荷が接続されている。充電池部6は、当該負荷に対して充電電力を出力(放電)することにより、負荷を電気駆動させている。
【0049】
このような構成の本実施の形態の充電システム100において、発電機2を含む電力発電部80は、発電動作を実行する。この発電動作によって得られる発電電力(直流出力電圧V2を含む)に基づく充電電流I6が充電池部6に対して出力される。
【0050】
(充電池部6の許容充電電流IcL)
図3は充電池部6における許容充電電流IcLの電池温度変化を模式的に示すグラフである。同図に示すように、許容充電電流IcLは電池温度Tによって変化する。すなわち、許容充電電流IcLは電池温度Tを引数とした関数IcL(T)で表される。充電池部6の関数IcL(T)は実験あるいは理論的に求めることができる。
【0051】
図3に示すように、充電池部6における許容充電電流IcLは、電池温度T5のとき最大値の許容充電電流値IcLT5となる。以下、本説明では許容充電電流IcLが最大となる蓄電池部6の温度を充電ピーク温度と称する。関数IcL(T)は、充電ピーク温度である電池温度T5以下の第1の温度区間(T1~T5)において許容充電電流IcLは上昇し、電池温度T5以上の第2の温度区間(T5~T8)において許容充電電流IcLは下降する温度特性を有している。なお、電池温度T1以下の区間及び電池温度T8以上の区間では関数IcL(T)は“0”となる。
【0052】
なお、ここで電池温度T1は電池温度T2より低く、電池温度T2は電池温度T3より低く、電池温度T3は電池温度T4より低く、電池温度T4は電池温度T5より低く、電池温度T5は電池温度T6より低く、電池温度T6は電池温度T7より低い。
【0053】
上述した第1の温度区間(T1~T5)において電池温度T2の際の充電池部6の許容充電電流IcLは許容充電電流値IcLT2となる。同様に、電池温度T3及び電池温度T4の際の充電池部6の許容充電電流IcLは許容充電電流値IcLT3及び許容充電電流値IcLT4となる。許容充電電流値IcLT2~IcLT5は、{IcLT2<IcLT3<IcLT4<IcLT5}の大小関係を有している。
【0054】
上述した第2の温度区間(T5~T8)において電池温度T6の際の充電池部6の許容充電電流IcLは許容充電電流値IcLT6となる。同様に、電池温度T7の際の充電池部6の許容充電電流IcLは許容充電電流値IcLT7となる。許容充電電流値IcLT5~IcLT7は、{IcLT5>IcLT6>IcLT7}の大小関係を有している。
【0055】
また、本実施の形態では、直流連続定格電流値DI45は許容充電電流値IcLT2より大きく、許容充電電流値IcLT3や許容充電電流値IcLT7より小さい電流値としている。なお、発電機2の連続定格電流値I45を直流換算した電流値が直流連続定格電流値DI45となる。
【0056】
電池温度T1以下で充電池部6を充電すると、充電池部6は急速に劣化してSOC(State Of Charge)が低下する。このため、電池温度T1以下は充電禁止温度区間となる。同様な理由で、電池温度T8以上も充電禁止温度区間となる。
【0057】
また、電池温度T1~T2の区間も充電池部6に対する充電は行わない。その理由として、以下の第1及び第2の理由等が考えられる。
【0058】
第1の理由は、電池温度T1とのマージンをとるため、温度計測ばらつきや測定誤差等を原因として電池温度T1で誤って充電池部6の充電が行われるのを防止するためである。
【0059】
第2の理由は、発電機2の連続定格電流値より極端に小さい電流値(例えば、直流連続定格電流値DI45の0.1%)に設定するための発電機2を含む電力発電部80の制御が困難となり、電力発電部80に対する電流制御の精度を考慮して、制御可能な電流値で充電を行う必要があるためである。
【0060】
電池温度T1~T2区間と同様な理由で、電池温度T7~T8の区間も充電池部6に対する充電は行わない。したがって、電池温度T2~T7区間が充電池部6に対する充電可能区間に設定される。
【0061】
そして、電池温度T2~T3の区間を通常充電モード時におけるヒータ7の加熱動作区間とし、電池温度T2~T4の区間を高速充電モード時におけるヒータ7の加熱動作区間としている。
【0062】
ヒータ7は発電機2を含む電力発電部80から電力を得ているため、ヒータ7に加熱動作を実行させる分、充電池部6への充電電流が減少することになる。このため、ヒータ7は使わない方が望ましい。しかし、ヒータ7に加熱動作を実行させない場合、関数IcL(T)の温度特性の観点から、直流連続定格電流値DI45に余裕があるにもかかわらず、許容充電電流IcLを下回る必要性から充電電流を意図的に小さくする必要がある。このように、発電機2の許容出力電流やヒータ7の消費電流と関数IcL(T)の温度特性とのトレードオフを考慮して、ヒータ7の加熱動作区間が設定される。
【0063】
なお、高速充電モード時における加熱動作区間の上限温度を電池温度T4(>T3)に設定しているのは、直流短時間定格電流値DI44は直流連続定格電流値DI45より大きく電流量に余裕があることから、充電完了までの時間を早めるため、より早期に最大値の許容充電電流値IcLT5に到達させることを優先したためである。なお、発電機2の短時間定格電流値I44を直流換算した電流値が直流短時間定格電流値DI44となる。
【0064】
さらに、電池温度T6~T7の区間を冷却装置8の冷却動作区間としている。冷却動作区間を設定する理由として以下の第1~第4の理由が考えられる。
【0065】
第1の理由は、許容充電電流IcLが許容充電電流値IcLT5付近の大きな電流値となる温度環境下で充電池部6を充電することにより、充電電流を大きくして早期に充電池部6への充電を行うためである。
【0066】
第2の理由は、電池温度T6を超える高温度領域で充電池部6を充電すると充電池部6内の電池セルの寿命が短くなるため、高温度領域での充電池部6の充電を可能な限り回避するためである。
【0067】
第3の理由は、電池温度T5と電池温度T6との差が小さいと、充電池部6内の複数の電池セル間の温度アンバランスのために、冷却装置8の冷却動作が必要以上に行われる結果、充電池部6の電池温度が電池温度T5より大きく低下してしまい、許容充電電流値IcLT5付近で充電池部6に対する充電が行えない可能性があるからである。
【0068】
第4の理由は、並列に接続される複数の電池セル間で、温度差に伴う抵抗差が生じ、複数の電池セル間の電流アンバランスが助長され、複数の電池セル間における温度差拡大現象と抵抗差拡大現象とが繰り返す悪循環を防止するためである。
【0069】
電力損失は電流の2乗に比例するため、上述した複数の電池セル間の電流のアンバランスは好ましくない。なお、一般に充電池部6は並列に接続された複数の電池セルから構成される。
【0070】
(電池セルの内部抵抗Rb)
図4は電池セルの内部抵抗Rbの電池温度変化を模式的に示すグラフである。すなわち、
図4は充電池部6内の複数の電池セルそれぞれの内部抵抗Rbの電池温度変化を示している。同図に示すように、電池セルの内部抵抗Rbは電池温度Tによって変化する。したがって、内部抵抗Rbは電池温度Tを引数とした関数Rb(T)で表される。
【0071】
図4に示すように、電池セルの内部抵抗Rbは電池温度Tが高くなるに従い低くなる温度特性を有している。電池セルの内部抵抗Rbは電池温度T1の時に内部抵抗値RbT1を示し、電池温度T2の時に内部抵抗値RbT2を示し、電池温度T3の時に内部抵抗値RbT4を示し、電池温度T4の時に内部抵抗値RbT4を示す。さらに、電池セルの内部抵抗Rbは電池温度T5の時に内部抵抗値RbT5を示し、電池温度T6の時に内部抵抗値RbT6を示し、電池温度T7の時に内部抵抗値RbT7を示す。
【0072】
そして、内部抵抗値RbT1~RbT7間において、{RbT1>RbT2>RbT3>RbT4>RbT5>RbT6>RbT7}の大小関係を有する。
【0073】
このように、電池セルの内部抵抗Rbの抵抗値は温度上昇と共に減少する温度特性を有しており、充電池部6は並列に接続された複数の電池セルにより構成されるのが一般的であるため、複数の電池セル間に温度差が生じると抵抗差が生じることがわかる。
【0074】
すなわち、複数の電池セルのうち局所的に一部の電池セル(以下、「電池セルX」と略記する)の電池温度が上昇すると、電池セルXの内部抵抗Rbが低下する結果、電池セルXを流れる電流量が増加する。電流増加に伴い電池セルXの電池温度がさらに上昇する。以降、電池セルXに関し、内部抵抗Rbの低下、電流量の増加、及び温度上昇が循環することにより、電池セルXを含む複数の電池セル間で電流アンバランスが増大する。
【0075】
本開示の充電システム100では、電池温度T7以上では充電池部6に対する充電を行わないため、上述した電流アンバランスを必要最小限に抑制することができる。
【0076】
(充電制御回路5)
図5及び
図6は充電制御回路5の内部構成を示すブロック図である。
図5及び
図6は切断線LCで分割されており、
図5は切断線LCより上方の回路構成を示し、
図6は切断線LCより下方の回路構成を示している。以下、
図5及び
図6を参照して、充電制御回路5の構成及び動作について説明する。
【0077】
平均値演算回路11、最大値選択回路12及び最小値選択回路13はそれぞれ検出電池温度TS61及びTS62を受ける。
【0078】
平均値演算回路11は検出電池温度TS61及びTS62を演算して平均値を求め、平均値を示す平均値信号S11を出力する。最大値選択回路12は検出電池温度TS61及びTS62間の最大値を選択し、最大値である電池温度最大値Tmaxを示す最大値信号S12を出力する。最小値選択回路13は検出電池温度TS61及びTS62間の最小値を選択し、最小値である電池温度最小値Tminを示す最小値信号S13を出力する。
【0079】
充電量判定回路10は外部より充電電圧V6及び充電電流I6を受け、内部の平均値演算回路11より平均値信号S11を受ける。充電量判定回路10は充電電圧V6が充電判定電圧に達する満充電時に充電完了と判定し“H”の充電完了信号S5を出力する。充電量判定回路10は充電完了を判定しない場合は“L”の充電完了信号S5を出力する。充電完了信号S5は外部の上位装置に向けて出力される。
【0080】
充電量判定回路10は、平均値信号S11で示す電池温度の平均値に基づき充電判定電圧を増減させることができる。また、充電量判定回路10は、充電電圧V6に代えて充電電流I6の積分値(充電電荷量)に基づき、充電完了の有無を判定することができる。
【0081】
コンパレータ群20はコンパレータ22~26を含んで構成される。コンパレータ22は最大値信号S12を受け、最大値信号S12が示す電池温度最大値Tmaxと電池温度T7とを比較し、{Tmax>T7}の場合に“H”、{Tmax≦T7}の場合に“L”の比較結果信号S22を出力する。コンパレータ22が最大値信号S12を受ける理由は、充電池部6内の少なくとも一つの電池セルが電池温度T7を超えた場合、何らかの異常が発生した可能性が高いため、充電システム100の拡大故障を防止するためである。
【0082】
コンパレータ23は最小値信号S13を受け、最小値信号S13が示す電池温度最小値Tminと電池温度T2とを比較し、{Tmin<T2}の場合に“H”、{Tmin≧T2}の場合に“L”の比較結果信号S23を出力する。
【0083】
コンパレータ24は最大値信号S12を受け、最大値信号S12が示す電池温度最大値Tmaxと電池温度T6とを比較し、{Tmax>T6}の場合に“H”、{Tmax≦T6}の場合に“L”の比較結果信号S24を出力する。コンパレータ24が最大値信号S12を受ける理由は、充電池部6内の少なくとも一つの電池セルが電池温度T6に達すると、許容充電電流IcLが許容充電電流値IcLT5より下がることを考慮したことによる。したがって、比較結果信号S24が“H”になると、直ちに冷却装置8に冷却動作を実行させ、充電池部6の電池温度Tを下げて許容充電電流IcLを許容充電電流値IcLT5に近づけることができる。
【0084】
コンパレータ25は最小値信号S13を受け、最小値信号S13が示す電池温度最小値Tminと電池温度T3とを比較し、{Tmin<T3}の場合に“H”、{Tmin≧T3}の場合に“L”の比較結果信号S25を出力する。
【0085】
コンパレータ26は最小値信号S13を受け、最小値信号S13が示す電池温度最小値Tminと電池温度T4とを比較し、{Tmin<T4}の場合に“H”、{Tmin≧T4}の場合に“L”の比較結果信号S26を出力する。
【0086】
NOTゲートG1は、充電完了信号S5を受け、充電完了信号S5のNOT演算結果を“H”,“L”で示す論理信号SG1を出力する。なお、NOT演算とは論理値(“H”,“L”)を論理的に反転させる演算である。
【0087】
ORゲートG2は、比較結果信号S22及びS23を受け、比較結果信号S22及びS23のOR演算結果をH”,“L”で示す論理信号SG2を出力する。なお、OR演算とは複数の入力信号の論理和を得る演算である。
【0088】
NOTゲートG3は、論理信号SG2を受け、論理信号SG2のNOT演算結果を“H”,“L”で示す論理信号SG3を出力する。
【0089】
ANDゲートG4は、論理信号SG1、論理信号SG3及び充電指令C1を受ける。充電指令C1は“H”/“L”で充電指令の有効/無効を指示している。ANDゲートG4は、論理信号SG1、論理信号SG3及び充電指令C1のAND演算結果を“H”,“L”で示す開閉器操作信号S1を外部の開閉器SW1に出力する。なお、AND演算とは複数の入力信号の論理積を得る演算である。
【0090】
ANDゲートG4から出力される開閉器操作信号S1は“H”で開閉器SW1に対する「閉状態」(ON状態)を示し、“L”で開閉器SW1に対する「開状態」(OFF状態)を示している。
【0091】
開閉器操作信号S1が“H”となるのは、論理信号SG1が“H”で充電未完了を指示し、論理信号SG3が“H”で電池温度Tが{T2≦T≦T7}であることを指示し、充電指令C1が“H”で充電指令が有効なことを指示する場合である。
【0092】
“H”の開閉器操作信号S1が開閉器SW1に出力されると、開閉器SW1は「閉状態」となる。開閉器SW1が「閉状態」になると、電力発電部80と充電池部6とが電気的に接続されるため、充電池部6に対する充電動作が実行される。
【0093】
一方、“L”の開閉器操作信号S1を受けて開閉器SW1が「開状態」となる場合、電力発電部80と充電池部6とが電気的に接続遮断されるため、充電池部6に対する充電動作は実行されない。
【0094】
ANDゲートG5は論理信号SG1及び充電指令C1を受け、論理信号SG1及び充電指令C1のAND演算結果を“H”,“L”で示す論理信号SG5を出力する。
【0095】
ANDゲートG6は比較結果信号S24及び充電指令C1を受け、比較結果信号S24及び充電指令C1のAND演算結果を“H”,“L”で示す開閉器操作信号S2を外部の開閉器SW2に出力する。
【0096】
開閉器操作信号S2が“H”となるのは、比較結果信号S24が“H”で電池温度が電池温度T6より高いことを指示し、充電指令C1が“H”で充電指令が有効であることを指示する場合である。
【0097】
“H”の開閉器操作信号S2が開閉器SW2に出力されると、開閉器SW2は「閉状態」となる。開閉器SW2が「閉状態」になると、電力発電部80と冷却装置8とが電気的に接続されるため、冷却装置8は冷却動作を実行することができる。一方、開閉器SW2が「開状態」の場合、電力発電部80と冷却装置8とが電気的に接続遮断されるため、冷却装置8が冷却動作を実行することはない。
【0098】
このように、充電制御回路5は、ANDゲートG6から開閉器操作信号S2を出力することにより、充電池部6の電池温度Tが冷却基準温度となる電池温度T6以上のとき、冷却装置8に冷却動作を実行させる冷却制御動作を実行している。冷却基準温度である電池温度T6は充電ピーク温度である電池温度T5よりも高い。
【0099】
また、充電システム100は、複数の電池用温度センサである温度センサ61及び62を有しており、温度センサ61及び62で検出される検出電池温度TS61及びTS62が複数の検出電池温度となる。なお、
図1では電池用温度センサは2つであるが、2つに限定されるものではなく、2つ以上の電池用温度センサを設けてもよい。
【0100】
充電制御回路5による冷却装置8の冷却制御動作は、検出電池温度TS61及びTS62の最大値である電池温度最大値Tmaxが冷却基準温度(電池温度T6)以上のとき、冷却装置8に冷却動作を実行させる動作となる。
【0101】
ANDゲートG9は比較結果信号S26及び比較結果信号S21を受ける。比較結果信号S21は“H”で高速充電モードを示し、“L”で通常充電モードを示している。ANDゲートG9は比較結果信号S26及び比較結果信号S21のAND演算結果を“H”,“L”で示す論理信号SG9を出力する。
【0102】
ORゲートG7は比較結果信号S25及び論理信号SG9を受け、比較結果信号S25及び論理信号SG9のOR演算結果を“H”,“L”で示す論理信号SG7を出力する。
【0103】
ANDゲートG8は論理信号SG7及び充電指令C1を受け、論理信号SG7及び充電指令C1のAND演算結果を“H”,“L”で示す開閉器操作信号S3を外部の開閉器SW3に出力する。
【0104】
開閉器操作信号S3が“H”となるのは、論理信号SG7“H”で電池温度が電池温度T3より低い、あるいは高速充電モードで電池温度T4より電池温度が低いことを指示し、充電指令C1が“H”で充電指令が有効であることを指示する場合である。
【0105】
“H”の開閉器操作信号S3が開閉器SW3に出力されると、開閉器SW3が「閉状態」となる。開閉器SW3が「閉状態」になると、電力発電部80とヒータ7とが電気的に接続されるため、ヒータ7は加熱動作を実行することができる。一方、開閉器SW3が「開状態」の場合、電力発電部80とヒータ7とが電気的に接続遮断されるため、ヒータ7が加熱動作を実行することはない。
【0106】
このように、充電制御回路5は、ANDゲートG8から開閉器操作信号S3を出力することにより、充電池部6の電池温度Tが加熱基準温度となる電池温度T3または電池温度T4以下のとき、ヒータ7に加熱動作を実行させる加熱制御動作を実行している。加熱基準温度である電池温度T3及び電池温度T4は充電ピーク温度である電池温度T5よりも低い。
【0107】
充電制御回路5によるヒータ7の加熱制御動作は、検出電池温度TS61及びTS62の最小値である電池温度最小値Tminが加熱基準温度(電池温度T3または電池温度T4)以下のとき、ヒータ7に加熱動作を実行させる動作となる。
【0108】
上記加熱基準温度は第1の加熱基準温度である電池温度T3と第2の加熱基準温度である電池温度T4とを含んでいる。電池温度T4は電池温度T3よりも高い温度である。
【0109】
充電制御回路5は、選択定格電流値I46が連続定格電流値I45となる通常充電モードのとき、加熱基準温度として第1の加熱基準温度である電池温度T3を設定する。また、充電制御回路5は、選択定格電流値I46が短時間定格電流値I44となる高速充電モードのとき、加熱基準温度として第2の加熱基準温度である電池温度T4に設定する。
【0110】
許容充電電流演算回路31(IcL(T)演算31)は最大値信号S12を受け、最大値信号S12が示す電池温度最大値Tmaxを引数として、
図3で示した関数IcL(T)を適用して、許容充電電流値IXを出力する。
【0111】
許容充電電流演算回路32(IcL(T)演算32)は最小値信号S13を受け、最小値信号S13が示す電池温度最小値Tminを引数として、
図3で示した関数IcL(T)を適用して、許容充電電流値IZを出力する。
【0112】
最小値選択回路33は許容充電電流値IX及びIZを受け、許容充電電流値IX及びIZのうち最小値となる許容充電電流最小値Iminを出力する。
【0113】
換算回路34は許容充電電流最小値Iminを受け、許容充電電流最小値Iminを3相交流電流値に換算した電流値を許容交流電流値AI1として出力する。許容交流電流値AI1が最終的に決定される許容充電電流値となる。
【0114】
上述した最大値選択回路12、最小値選択回路13、許容充電電流演算回路31、許容充電電流演算回路32、最小値選択回路33及び換算回路34を含んで許容充電電流値算出回路が構成される。
【0115】
上記許容充電電流値算出回路は、検出電池温度TS61及びTS62に基づき、充電池部6における3相交流値換算の許容交流電流値AI1を許容充電電流値として算出している。
【0116】
(充電制御回路5内の発電側電流指令値出力回路40)
以下、
図6を参照して、発電側電流指令値出力回路40の構成及び動作について説明する。なお、発電側電流指令値出力回路40内で扱う電流値は3相交流電流値である。
【0117】
短時間定格電流設定回路44は予め設定された短時間定格電流値I44を選択スイッチ46の入力端子Aに出力する。
【0118】
短時間定格電流値I44は、たとえば
図2に例示するグラフを利用して、電力発電部80の連続定格電流値を超える値が選定される。例えば、電力発電部80の使用発電範囲(V100~V200)において、電流値I200を超える値を、短時間定格電流値I44として選定したとする。この場合には、短時間定格電流値I44は、上記使用発電範囲(V100~V200)において必ず、電力発電部80の連続定格電流値を超える値となる。
【0119】
電流値I200を超える値の選定として、ユーザは、たとえば
図2を参照して、使用発電範囲(V100~V200)における最大の短時間定格電流である電流値I100を、短時間定格電流値I44として選定しても良い。または、当該電流値I100を超える電流値を、短時間定格電流値I44として選定することも可能である。この場合、使用可能時間が短くなるのは言うまでもない。高速充電の観点からは、大きな値の短時間定格電流値I44を選定することが望ましい。
【0120】
一方、連続定格電流演算回路45は検出冷媒温度TS1を受け、検出冷媒温度TS1に基づき演算処理を行って連続定格電流値I45を算出し、連続定格電流値I45を連続定格電流演算回路45の入力端子Bに出力する。
【0121】
連続定格電流演算回路45は以下のようにして連続定格電流値I45を得る。発電機2が基準温度TR1の際における累積許容値を基準連続定格電流値I45(0)とすると、連続定格電流値I45は以下の式(1)により算出される。
【0122】
I45=I45(0)-K1×(TS1―TR1)…(1)
なお、「K1」は比例乗数(正の値)となる。
【0123】
式(1)に示すように、検出冷媒温度TS1が高いほど連続定格電流値I45は小さくなり、検出冷媒温度TS1が低いほど連続定格電流値I45は大きくなる。なお、発電機2の冷媒の温度変化が無視できる場合や、回路の単純化のために、連続定格電流値I45を式(1)ではなく固定値としてもよい。
【0124】
連続定格電流値I45として、
図2に例示するグラフにおける電力発電部80の連続定格電流値以内となる値が該当する。例えば、電力発電部80の使用発電範囲(V100~V200)において、電流値I300以下の値を、連続定格電流値I45として算出したとする。この場合には、連続定格電流値I45は、上記使用発電範囲(V100~V200)において必ず、電力発電部80の連続定格電流値以内の値となる。なお、充電の高速化の観点からは、より大きな値の連続定格電流値I45を算出することが望ましい。
【0125】
また、発電側電流指令値出力回路40は内部に電流2乗時間積演算回路42を有している。
【0126】
電流2乗時間積演算回路42は内部に2乗演算回路55(2乗演算55)及び積分演算回路56を有している。2乗演算回路55は電流センサIS1で検出された発電機出力電流I2を受け、発電機出力電流I2の2乗値を求めその出力II2を積分演算回路56に出力する。
【0127】
積分演算回路56は入力信号である電流I2の2乗値II2を例えば数値積分し、累積結果ΣII2を得る、数値積分としては、演算周期を「Δt」とすると積分回路演算回路56は2乗演算回路55の出力に、演算周期Δt毎に「Δt」を乗算し、その値を累積加算する。なお、単純な積の加算ではなく、台形公式による数値積分でもよい。積分演算回路56は充電指令C1が“L”から“H”になった時刻を起点として、2乗演算回路55から2乗値II2を受ける毎に、2乗値II2を積算(累積加算)して累積結果ΣII2を得る。このようにして、電流2乗時間積演算回路42は発電機2の出力電流の電流2乗時間積である累積結果ΣII2を演算する。この累積結果ΣII2がコンパレータ21に出力される。
【0128】
コンパレータ21は累積結果ΣII2と累積許容値RΣとを比較し、比較結果に基づき比較結果信号S21を出力する。比較結果信号S21は{ΣII2≦RΣ}の場合は“H”となり、{ΣII2>RΣ}の場合は“L”となる。
【0129】
このように、電流2乗時間積演算回路42とコンパレータ21により累積値判定回路を構成している。上記累積値判定回路は、所定時間Δt間隔で発電電流である発電機出力電流I2の電流2乗時間積を計算し、電流2乗時間積の累積値である累積結果ΣII2が、累積許容値RΣを超えた場合に累積超過(“L”)を指示する比較結果信号S21を出力している。比較結果信号S21が許容値比較信号となる。
【0130】
コンパレータ21から出力される比較結果信号S21は選択スイッチ46の制御端子Cに出力され、かつ、ANDゲートG9の入力信号として出力される。
【0131】
コンパレータ21が用いる累積許容値RΣは、許容値演算回路43から出力される設定許容値信号S43によって示される。
【0132】
許容値演算回路43は検出冷媒温度TS1を受け、検出冷媒温度TS1に基づき累積許容値RΣを求め、求めた累積許容値RΣを示す設定許容値信号S43をコンパレータ21に出力する。
【0133】
許容値演算回路43は以下のようにして累積許容値RΣを得る。発電機2が基準温度TR2の際における基準累積許容値RΣ(0)とすると、累積許容値RΣは以下の式(2)により算出される。
【0134】
RΣ=RΣ(0)-K2×(TS1―TR2)…(2)
なお、「K2」は比例乗数(正の値)となる。
【0135】
式(2)に示すように、検出冷媒温度TS1が高いほど累積許容値RΣは小さくなり、検出冷媒温度TS1が低いほど累積許容値RΣは大きくなる。基準累積許容値RΣ(0)は発電機2の電流2乗時間積耐量から決まる値である。なお、発電機の冷媒の温度変化が無視できる場合や、回路の単純化のために、累積許容値RΣを式(2)ではなく固定値としてもよい。
【0136】
2乗値II2の累積結果ΣII2が累積許容値RΣに達するまでは、発電機2に発熱による異常が生じることなく、電力発電部80の使用が可能となる。
【0137】
選択スイッチ46は制御端子Cが受ける比較結果信号S21が“H”の時、入力端子Aを出力端子Dに接続して、選択定格電流値I46として短時間定格電流値I44を出力する。すなわち、選択スイッチ46は、比較結果信号S21が“H”の時、高速充電モードに設定する。
【0138】
選択スイッチ46は制御端子Cが受ける比較結果信号S21が“L”の時、入力端子Bを出力端子Dに接続して、選択定格電流値I46として連続定格電流値I45を出力する。すなわち、選択スイッチ46は、比較結果信号S21が“L”の時、通常充電モードに設定する。
【0139】
このように、発電側電流指令値出力回路40は、コンパレータ21の比較結果信号S21が“L”(累積超過)を指示したとき、連続定格電流値I45を選択定格電流値I46に設定している。
【0140】
加算部49はヒータ電流I7及び冷却装置電流I8を受け、ヒータ電流I7の電流値と冷却装置電流I8の電流値との加算結果を補助回路電流値I49として出力する。
【0141】
減算部48は選択定格電流値I46及び補助回路電流値I49を受け、選択定格電流値I46から補助回路電流値I49を差し引いた電流値を発電側指令電流値AI2として出出力する。
【0142】
上述したように、発電側電流指令値出力回路40は、電力発電部80の発電動作における選択定格電流値I46に基づき、発電側指令電流値AI2を出力している。そして、選択定格電流値I46は、連続定格電流値I45及び短時間定格電流値I44のうち一方の電流値となる。
【0143】
補助回路電流値I49は、ヒータ7の加熱動作の実行期間中は、ヒータ電流I7の電流値となり、冷却装置8の冷却動作の実行期間中は冷却装置電流I8の電流値となる。なお、ヒータ7の加熱動作と冷却装置8の冷却動作とが同時に実行されることはない。
【0144】
したがって、ヒータ7の加熱動作の実行期間中において、発電側指令電流値AI2は、選択定格電流値I46からヒータ電流I7の電流値を差し引いた電流値となる。また、冷却装置8の冷却動作の実行期間中において、発電側指令電流値AI2は、選択定格電流値I46から冷却装置電流I8の電流値を差し引いた電流値となる。
【0145】
発電側電流指令値出力回路40はさらに高速充電回復回路41を有している。高速充電回復回路41はNOTゲートG11、タイマ回路51、時間判定回路52及びワンショット回路53を主要構成要素として含んでいる。以下、高速充電回復回路41の構成及び動作について説明する。
【0146】
NOTゲートG11は比較結果信号S21を受け、比較結果信号S21のNOT演算結果を示す論理信号SG11を出力する。
【0147】
タイマ回路51(タイマ51)は論理信号SG11の“L”から“H”への立ち上がりをトリガとして時間をカウントしてカウント時間CT51を時間判定回路52に出力する。
【0148】
時間判定回路52はカウント時間CT51と想定冷却期間Toとを比較し、カウント時間CT51が想定冷却期間Toを超えるとワンショット回路53を駆動して、ワンショット回路53から出力する高速充電再開信号S41に“H”のワンショットパルスを発生させる。
【0149】
一方、高速充電回復回路41外のワンショット回路47は充電指令C1を受け、充電指令C1の“L”から“H”への立ち上がり時に、出力信号である充電開始信号S47に“H”のワンショットパルスを発生させる。
【0150】
ORゲートG10は高速充電再開信号S41及び充電開始信号S47を受け、高速充電再開信号S41及び充電開始信号S47のOR演算結果を論理信号SG10として出力する。
【0151】
積分演算回路56は論理信号SG10を受け、論理信号SG10が“H”のとき、累積結果ΣII2を“0”にリセットする。論理信号SG10が“H”となるのは、高速充電再開信号S41及び充電開始信号S47のうち少なくとも一つに“H”のワンショットパルスが発生した場合である。
【0152】
したがって、“H”の充電開始信号S47によって充電開始が指示された場合と、“H”の高速充電再開信号S41によって高速充電の再開が指示された場合に、積分演算回路56の累積結果ΣII2が“0”にリセットされる。
【0153】
累積結果ΣII2がリセットされると、コンパレータ21から出力される比較結果信号S21は“H”となるため、選択定格電流値I46として短時間定格電流値I44が選択される。
【0154】
図5に戻って、充電電流値決定回路である最小値選択回路35は許容交流電流値AI1及び発電側指令電流値AI2を受け、許容交流電流値AI1及び発電側指令電流値AI2のうち最小値となる電流値を決定充電電流値DCIとして出力する。
【0155】
このように、最小値選択回路35は、許容交流電流値AI1及び発電側指令電流値AI2のうち小さい方を決定充電電流値DCIとして決定する充電電流値決定回路として機能する。
【0156】
選択スイッチ36は入力端子Aに決定充電電流値DCIを受け、入力端子Bに“0”を受け、制御端子Cに論理信号SG5を受ける。選択スイッチ36は論理信号SG5が“H”の場合に入力端子Aを出力端子Dに接続し、論理信号SG5が“L”の場合に入力端子Bを出力端子Dに接続する。
【0157】
論理信号SG5が“H”となるのは、充電完了信号S5が充電未完了の“L”を指示し、かつ、充電指令C1が“H”の充電動作の有効を指示する場合である。すなわち、充電動作の実行中において論理信号SG5は“H”となる。
【0158】
出力端子Dより得られる信号が最終充電電流値SDCとなる。したがって、充電動作中は最終充電電流値SDCとして決定充電電流値DCIが出力される。
【0159】
最終充電電流値SDCは、加算部37によって補助回路電流値I49が加算され、その出力である発電機電流指令値S37が、減算部38によって発電機出力電流I2で減算された後、制御電流値I38として励磁電流指令値演算回路39に出力される。制御電流値I38は、発電機電流指令値S37と発電機電流帰還値I2との差分となる。
【0160】
励磁電流指令値演算回路39は、制御電流値I38に基づき充電電流指令値C5を励磁制御装置4に出力する。励磁電流指令値演算回路39は例えばPI回路として動作するため、充電電流指令値C5は、制御電流値I38に基づき、発電機出力電流I2が発電機電流指令値S37に追従するための指示内容となる。
【0161】
したがって、充電制御回路5は充電電流指令値C5を励磁制御装置4に出力することにより、充電池部6に出力される充電電流が決定充電電流値DCIとなるように電力発電部80の発電動作を制御することができる。
【0162】
(充電システム100による充電動作)
図7は充電システム100の充電動作の実行中における電池温度の経時変化を模式的に示すグラフである。
図8は充電システム100の上記充電動作の実行中における3つの開閉器SW1~SW3の開閉状態(ON,OFF)を模式的に示すグラフである。
図9は上記充電動作の実行中における最終充電電流値SDCの経時変化を模式的に示すグラフである。
図10は上記充電動作の実行中における充電電流I6及び発電機出力電流I2の経時変化を模式的に示すグラフである。
【0163】
以下、
図7~
図10を参照しつつ、
図1~
図6で示した充電システム100における充電池部6に対する充電動作を説明する。なお、以下の説明において、電池温度最小値Tmin及び電池温度最大値Tmaxを総称する場合、単に「電池温度T」と称する。
【0164】
以下で示す充電動作の説明においては、直流短時間定格電流値DI44は許容充電電流値IcLT5及び直流補助回路電流値DI49それぞれより大きな値に設定されている。なお、補助回路電流値I49を直流換算した電流値が直流補助回路電流値DI49となる。
【0165】
一方、直流連続定格電流値DI45は許容充電電流値IcLT3より小さい値に設定されている。また、ヒータ7及び冷却装置8は定電流負荷とし、ヒータ電流I7及び冷却装置電流I8それぞれの電流値は連続定格電流値I45よりも小さい値に設定されている。
【0166】
時刻t1以前は、充電指令C1が充電動作無効の“L”を指示しており、充電池部6の電池温度Tは電池温度T2と電池温度T3との間であり、充電池部6内の複数の電池セル間において電池温度のバラツキは生じていない。
【0167】
すなわち、時刻t1は前回の充電や放電から十分時間が経過しているものとしている。また、開閉器SW1~SW3は全て「開状態」(OFF状態)である。
【0168】
冷却装置用電流センサである電流センサIS3より検出される冷却装置電流I8の電流値及びヒータ用電流センサである電流センサIS4より検出されるヒータ電流I7の電流値は共に“0”である。
【0169】
時刻t1において、充電指令C1が充電動作の有効を指示する“H”への立ち上がりをトリガとして充電システム100による充電動作が開始する。
【0170】
充電指令C1の“H”立ち上がりによって、充電制御回路5の発電側電流指令値出力回路40内のワンショット回路47の充電開始信号S47に“H”のワンショットパルスが発生する。
【0171】
その結果、ORゲートG10から“H”の論理信号SG10が積分演算回路56に出力されるため、積分演算回路56は累積結果ΣII2を“0”にリセットする。
【0172】
したがって、選択スイッチ46は入力端子Aに付与される短時間定格電流値I44を選択定格電流値I46として選択する。すなわち、時刻t1において、高速充電モードとなる。
【0173】
このように、発電側電流指令値出力回路40は、充電池部6への充電動作の開始時において、短時間定格電流値I44を選択定格電流値I46としている。すなわち、充電動作の開始時は高速充電モードとなる。
【0174】
一方、充電池部6の電池温度Tは電池温度T4以下であるため、ANDゲートG9の論理信号SG9が“H”となり、ANDゲートG8から出力される開閉器操作信号S3が“H”となる結果、
図8に示すように、開閉器SW3が「閉状態」(ON状態)となる。その結果、時刻t1からヒータ7は加熱動作を実行する。
【0175】
図7に示すように、時刻t1から時刻t2にかけて、電池温度Tが上昇する。
図9及び
図10に示すように、時刻t1から時刻t2にかけて、最終充電電流値SDC(決定充電電流値DCI)及び発電機出力電流I2も上昇する。発電機出力電流I2の一部がヒータ電流I7となるため、充電電流I6は発電機出力電流I2より少し低くなる。
【0176】
時刻t2以降は、電池温度最小値Tminが電池温度T4を超える。すると、論理信号SG9が“H”から“L”となり、開閉器操作信号S3が“H”から“L”となる結果、
図8に示すように、開閉器SW3が「開状態」(OFF状態)となる。その結果、ヒータ7は加熱動作を終了する。
【0177】
時刻t3において、電池温度Tが電池温度T5付近となるため、
図9及び
図10に示すように、時刻t3において、最終充電電流値SDC及び発電機出力電流I2がほぼ最大値となる。一方、ヒータ電流I7の電流値が“0”となるため、充電電流I6は発電機出力電流I2と電流値が等しくなる。
【0178】
時刻t4において、電池温度最大値Tmaxが電池温度T6を超える。すると、ANDゲートG6の出力である開閉器操作信号S2が“H”となる結果、
図8に示すように、開閉器SW2が「閉状態」となる。その結果、冷却装置8は冷却動作を実行する。なお、本説明では、時刻t5にかけて、充電池部6の熱容量あるいは冷却装置8の応答の関係で電池温度Tは温度上昇を維持するものとしている。
【0179】
時刻t5において、電池温度Tがほぼ最大値となり、時刻t5以降は冷却装置8の冷却動作によって電池温度Tは下降する。
【0180】
時刻t6以降は電池温度最大値Tmaxが電池温度T6を下回る。すると、開閉器操作信号S2が“H”から“L”となる結果、
図8に示すように、開閉器SW2が「開状態」となる。その結果、冷却装置8は冷却動作を終了する。なお、時刻t4~t6の期間は、発電機出力電流I2の一部が冷却装置電流I8となり、冷却装置電流I8が消費される分、発電機出力電流I2と充電電流I6との間に差分が生じる。
【0181】
その後、時刻t7において電池温度最小値Tminが電池温度T5まで低下し、時刻t8において電池温度最大値Tmaxが電池温度T5まで低下する。
【0182】
図9に示すように、時刻t8以降も最終充電電流値SDCが比較的大きいため、電池温度Tは再び上昇する。
【0183】
時刻t9において、積分演算回路56の累積結果ΣII2が累積許容値RΣを超える。すると、比較結果信号S21が“H”から“L”に変化する。したがって、選択スイッチ46は入力端子Bに付与される連続定格電流値I45を選択定格電流値I46として選択する。
【0184】
すなわち、時刻t9を起点として高速充電モードから通常充電モードに切り替わる。したがって、
図9及び
図10に示すように、時刻t9において最終充電電流値SDC及び発電機出力電流I2(充電電流I6)は急激に低下する。一方、
図7に示すように、時刻t9以降は電池温度Tも低下する。以上のように、時刻t1から時刻t9までの期間は、充電池部6に設けられた温度センサ61または温度センサ62の検出温度(TS61またはTS62)から決定される充電許容電流に従って充電池部6が充電されたこととなる。
【0185】
時刻t10において、電池温度最小値Tminが電池温度T3を下回ったため、比較結果信号S25が“L”から“H”となり、ANDゲートG8の出力信号である開閉器操作信号S3が“L”から“H”となる。その結果、
図8に示すように、開閉器SW3が再び「閉状態」となり、ヒータ7は加熱動作を再度実行する。
【0186】
したがって、時刻t10以降は、発電機出力電流I2の一部がヒータ電流I7となり、ヒータ電流I7が消費される分、発電機出力電流I2と充電電流I6との間に差分が生じる。
【0187】
時刻t11において、充電池部6の充電電圧V6が充電判定電圧に達する満充電状態となり、充電量判定回路10から“H”の充電完了信号S5が出力されることにより、充電動作が完了する。すなわち、時刻t9以降は充電池部6に設けられた温度センサ61または温度センサ62の検出温度から決定される充電許容電流より、発電機2の連続定格から決まる充電電流の方が小さいため、発電機2の連続定格から決まる電流以内の範囲で充電池部6が充電されたこととなる。
【0188】
このように、充電制御回路5の制御下で充電システム100における充電池部6への充電動作が実行される。
【0189】
なお、時刻t10から想定冷却期間To経過後の時刻t20が時刻t11より早く到達した場合、高速充電回復回路41の高速充電再開信号S41に“H”のワンショットパルスが発生するため、積分演算回路56の累積結果ΣII2が“0”にリセットされる。
【0190】
その結果、比較結果信号S21が“L”から“H”に変化し、選択スイッチ46によって短時間定格電流値I44が選択定格電流値I46として選択される。すなわち、時刻t20を起点として通常充電モードが再び高速充電モードに切り換えられる。
【0191】
また、時刻t1の充電動作開始時に充電池部6の充電状態が既に80%程度と比較的高い場合、時刻t9までに充電池部6の充電が完了することも考えられる。この場合は、高速充電モードのみで充電池部6に対する充電動作が完了することになる。
【0192】
上述した想定冷却期間Toは、累積結果ΣII2が累積許容値RΣに達する使用を行った電力発電部80が、再度、高速充電モードでの運転が可能な温度まで冷えて、再び短時間定格電流設定回路44で設定された所定の短時間定格で、許容値演算回路43で設定された電流2乗時間積での許容値まで運転可能となることが想定される時間である。想定冷却期間Toは、電力発電部80の放熱・冷却特性及び電力発電部80に配設される冷却機構(
図1では図示せず)や発電機2の熱容量等を考慮して選定される。
【0193】
なお、タイマ回路51及び時間判定回路52に代えて、発電機2の巻線温度や鉄心温度等を直接測定し判定する温度判定回路を用いても良い。上記温度判定回路は、発電機2の巻線温度や鉄心温度が所定の再開可能温度まで低下した場合に、ワンショット回路53から出力される高速充電再開信号S41に“H”のワンショットパルスを発生させる回路である。
【0194】
(効果)
本実施の形態の充電システム100における充電制御回路5は、充電池部6に出力される充電電流I6が決定充電電流値DCI(=最終充電電流値SDC)となるように電力発電部80の発電動作を制御している。最小値選択回路35によって選択される決定充電電流値DCIは、電池温度Tに基づき算出された許容充電電流値である許容交流電流値AI1を超えることはない。
【0195】
このため、本実施の形態の充電システム100は、充電池部6の電池温度Tの変化を考慮し、常に決定充電電流値DCIが許容交流電流値AI1以下になるように充電池部6に充電電流I6を出力することができる。
【0196】
その結果、本実施の形態の充電システム100は、想定される温度環境下の充電池部6に対して、常に適切な決定充電電流値DCIの充電電流I6を充電池部6に出力することができる。
【0197】
本実施の形態の充電システム100において発電側電流指令値出力回路40は、充電池部6への充電動作開始時において、選択定格電流値I46を短時間定格電流値I44とする高速充電モードに設定することにより、充電池部6に対して高速に充電することができる。
【0198】
さらに、発電側電流指令値出力回路40は、許容値比較信号である比較結果信号S21が累積超過(“L”)を指示したとき、高速充電モードから、選択定格電流値I46を連続定格電流値I45とする通常充電モードに切り換えることにより、電力発電部80に発熱による異常が生じる現象を回避することができる。
【0199】
本実施の形態の充電システム100における充電制御回路5は、電池温度Tが加熱基準温度(電池温度T3または電池温度T4)以下のとき、ヒータ7に加熱動作を実行させることにより、充電池部6の電池温度Tを早期に充電ピーク温度である電池温度T5に向けて上昇させることができる。
【0200】
その結果、本実施の形態の充電システム100は、早期に許容充電電流IcLの電流値を高めることができる分、決定充電電流値DCIを増加させて高速に充電池部6を充電することができる。
【0201】
本実施の形態の充電システム100における充電制御回路5は、充電池部6の電池温度Tが冷却基準温度である電池温度T6以上のとき、冷却装置8に冷却動作を実行させることにより、電池温度Tが冷却基準温度である電池温度T6を超える現象を抑制することができる。
【0202】
その結果、本実施の形態の充電システム100は、電池温度Tが電池温度T6を超える時間帯を最小限に抑えて、比較的穏やかな温度環境下で充電池部6を充電することができる。
【0203】
本実施の形態の充電システム100における充電制御回路5は、複数の電池温度である検出電池温度TS61及びTS62の最小値が加熱基準温度(電池温度T3または電池温度T4)以下のとき、ヒータ7に加熱動作を実行させている。したがって、充電制御回路5は、検出電池温度TS61及びTS62が全て加熱基準温度に達することを優先して、ヒータ7の加熱動作を制御することができる。
【0204】
本実施の形態の充電システム100における充電制御回路5は、複数の電池温度である検出電池温度TS61及びTS62の最大値が冷却基準温度である電池温度T6以上のとき、冷却装置8に冷却動作を実行させている。したがって、充電制御回路5は、検出電池温度TS61及びTS62のうち少なくとも一つが電池温度T6に達することを優先して、冷却装置8の冷却動作を制御することができる。
【0205】
その結果、本実施の形態の充電システム100は、検出電池温度TS61及びTS62を充電ピーク温度である電池温度T5の近くで維持させて、充電池部6の許容充電電流IcLの電流値を高く維持することができる。
【0206】
本実施の形態の充電システム100の充電制御回路5は、選択定格電流値I46が短時間定格電流値I44となる高速充電モードのとき、加熱基準温度は第1の加熱基準温度である電池温度T3より高い第2の加熱基準温度である電池温度T4に設定している。
【0207】
このため、本実施の形態の充電システム100は、高速充電モードで充電池部6を高速に充電する際、電池温度T4に達するまでヒータ7による加熱動作を実行させることにより、充電池部6の許容充電電流IcLを早期に高くして、より高速に充電池部6を充電することができる。
【0208】
本実施の形態の充電システム100における充電制御回路5はヒータ7の加熱動作及び冷却装置8の冷却動作を制御し、発電側指令電流値AI2を以下のように設定している。ヒータ7の加熱動作の実行期間中において、発電側指令電流値AI2は、選択定格電流値I46からヒータ電流I7の電流値を差し引いた電流値に設定され、冷却装置8の冷却動作の実行期間中において、発電側指令電流値AI2は、選択定格電流値I46から冷却装置電流I8の電流値を差し引いた電流値に設定される。
【0209】
したがって、本実施の形態の充電システム100は、電力発電部80の発電電力によって、ヒータ7の加熱動作及び冷却装置8の冷却動作を実行させ、かつ、充電池部6に対し適切な決定充電電流値DCIの充電電流I6を出力することができる。
【0210】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。なお、本実施の形態ではヒータ7及び冷却装置8の電源を発電機2から供給する構成としたが、ヒータ7及び冷却装置8の電源を発電機2以外から供給する変形構成も考えられる。変形構成の場合、
図5及び
図6で示す充電制御回路5において、減算部48、加算部37及び加算部49を省略し、発電側指令電流値AI2の代わりに選択定格電流値I46を使用し、発電機電流指令値S37の代わりに最終充電電流値SDCを使用することができる。
【符号の説明】
【0211】
1 原動機
2 発電機
3 整流器
4 励磁制御装置
5 充電制御回路
6 充電池部
7 ヒータ
8 冷却装置
10 充電量判定回路
11 平均値演算回路
12 最大値選択回路
13 最小値選択回路
15 冷媒温度センサ
20 コンパレータ群
21~26 コンパレータ
31,32 許容充電電流演算回路
33,35 最小値選択回路
34 換算回路
36,46 選択スイッチ
37,49 加算部
38,48 減算部
39 励磁電流指令値演算回路
40 発電側電流指令値出力回路
41 高速充電回復回路
42 電流2乗時間積演算回路
43 許容値演算回路
44 短時間定格電流設定回路
45 連続定格電流演算回路
61,62 温度センサ
G1,G3 NOTゲート
G2,G7,G10 ORゲート
G4~G6,G8,G9 ANDゲート
IS1~IS4 電流センサ
SW1~SW3 開閉器
VS1,VS2 電圧センサ