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特開2024-800ベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000800
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構
(51)【国際特許分類】
   F17D 5/06 20060101AFI20231226BHJP
   F16L 27/12 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F17D5/06
F16L27/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099717
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】511089583
【氏名又は名称】日本ニューロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 尚志
(72)【発明者】
【氏名】金丸 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】西 勇也
(72)【発明者】
【氏名】岩本 泰一
(72)【発明者】
【氏名】小池 武
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝義
【テーマコード(参考)】
3H104
3J071
【Fターム(参考)】
3H104JA07
3H104JA12
3H104JB02
3H104KB11
3H104LB04
3H104LB18
3J071CC05
3J071EE06
3J071EE27
3J071EE29
3J071EE37
(57)【要約】
【課題】ベローズ型伸縮管継手の軸方向変位量、軸直角方向変位量および軸曲げ方向変位量を正確に計測することができる変化量検出機構を提供する。
【解決手段】ベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構は、ベローズ型伸縮管継手と、伸縮管継手の変位量を計測する計測手段とを備える。伸縮管継手は、第1の管路に固定接続される一方端管と、第2の管路に固定接続される他方端管と、一方端管と他方端管との間に位置する中央管と、一方端管と中央管とを伸縮可能に接続する第1ベローズ管と、他方端管と中央管とを伸縮可能に接続する第2ベローズ管とを備える。計測手段は、一方端管の傾斜角度を計測する第1傾斜センサと、他方端管の傾斜角度を計測する第2傾斜センサと、中央管の傾斜角度を計測する第3傾斜センサと、第1ベローズ管の伸縮量を計測する第1距離センサと、第2ベローズ管の伸縮量を計測する第2距離センサとを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側に位置する第1の管路と、他方側に位置する第2の管路とを伸縮可能に接続するベローズ型伸縮管継手と、
前記ベローズ型伸縮管継手の変位量を計測する計測手段とを備え、
前記ベローズ型伸縮管継手は、
前記第1の管路に固定接続される一方端管と、
前記第2の管路に固定接続される他方端管と、
前記一方端管と前記他方端管との間に位置する中央管と、
前記一方端管と前記中央管とを伸縮可能に接続する第1ベローズ管と、
前記他方端管と前記中央管とを伸縮可能に接続する第2ベローズ管とを備え、
前記計測手段は、
前記一方端管の傾斜角度を計測する第1傾斜センサと、
前記他方端管の傾斜角度を計測する第2傾斜センサと、
前記中央管の傾斜角度を計測する第3傾斜センサと、
前記第1ベローズ管の伸縮量を計測する第1距離センサと、
前記第2ベローズ管の伸縮量を計測する第2距離センサとを備える、ベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構。
【請求項2】
前記計測手段で計測した値に基づいて、ベローズ型伸縮管継手における軸方向変位量、軸直角方向変位量および軸曲げ方向変位量を算出する変位量算出手段をさらに備える、請求項1に記載のベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構。
【請求項3】
前記計測手段は、内部流体の漏洩を検知するために前記中央管に取り付けられた漏洩センサをさらに備える、請求項1に記載のベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構。
【請求項4】
前記一方端管は、径方向外方に延びる一方端管フランジと、前記一方端管フランジから軸方向に延びて前記第1ベローズ管の周囲を取り囲む一方端管外筒とを備え、
前記他方端管は、径方向外方に延びる他方端管フランジと、前記他方端管フランジから軸方向に延びて前記第2ベローズ管の周囲を取り囲む他方端管外筒とを備え、
前記第1距離センサは、前記一方端管外筒と前記第1ベローズ管との間の軸方向距離の変化を計測し、
前記第2距離センサは、前記他方端管外筒と前記第2ベローズ管との間の軸方向距離の変化を計測する、請求項1に記載のベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構。
【請求項5】
前記計測手段は、前記ベローズ型伸縮管継手の近傍位置における温度を計測する温度センサをさらに備え、
前記変位量算出手段は、前記温度センサで計測した温度に基づいて前記各センサで計測した値を常温時の値に補正する温度補正手段を含む、請求項1に記載のベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構。
【請求項6】
前記変位量算出手段は、ベローズ型伸縮管継手から離れた位置にあり、
前記計測手段は、計測したデータを無線で前記変位量算出手段に送信する、請求項1に記載のベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地震や沈下から配管路を保護することを目的として設置される伸縮管継手に関し、特に伸縮管継手の変化量を検出する検出機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伸縮管継手として、典型的には、内管と外管とを軸方向に摺動可能に嵌め合わせたスリーブ型伸縮管継手と、ステンレス等のパイプを蛇腹状に成形したベローズ部分を持つベローズ型伸縮管継手とがある。
【0003】
スリーブ型伸縮管継手は、例えば特許第6639423号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1に開示された伸縮管継手は、一方側に位置する一方の管路に固定される一方端管と、他方側に位置する他方の管路に固定される他方端管と、一方端管および他方端管に対して管軸方向に相対移動可能に嵌め合わされたスリーブとを備える。
【0004】
特許文献1は、上記構造の伸縮管継手の挙動を探査する挙動探査装置も開示している。挙動探査装置は、スリーブと一方端管との間の距離の変化を測定し、測定したデータを送信する第1センサと、スリーブと他方端管との間の距離の変化を測定し、測定したデータを送信する第2センサとを備え、第1センサによる測定データと第2センサによる測定データとから第1管路および第2管路の伸縮管継手に対する変位位置を演算する。
【0005】
スリーブ型伸縮管継手は、管軸方向(以後、「軸方向」という)の変位および軸を中心とする回転、すなわち軸回転方向の変位を効果的に吸収するが、軸直角方向の変位や軸曲げ方向の変位に関してはその吸収性能はあまりよくない。そのため、地震等の影響によって配管路に軸直角方向や軸曲げ方向に大きな変位が加わったとき、スリーブ型伸縮管継手の場合には脱管のおそれ、ひいては流体の漏出のおそれが生じる。
【0006】
ベローズ型伸縮管継手は、例えば特許第6960128号公報(特許文献2)に開示されている。ベローズ型伸縮管継手は、ステンレス等のパイプを蛇腹状に成形したベローズ管を備えており、気密性および液密性を保ちつつ変形することで配管路に生じた変位を吸収する役割を担う。
【0007】
図1は、ベローズ管の軸方向変位、軸直角方向変位および軸曲げ方向変位の様子を示している。ベローズ管を備えるベローズ型伸縮管継手は、軸方向変位、軸直角方向変位および軸曲げ方向変位の3つを複合的に吸収することができるが、軸回転方向変位に関してはその吸収性能はあまりよくない。地震等の影響によって配管路に大きな変位が加わったとき、スリーブ型伸縮管継手では脱管のおそれがあるが、ベローズ型伸縮管継手では異常な変形をするものの脱管せずに流体を通過させる状態を保つ。
【0008】
配管路は、地表にあるものだけでなく、地中を通るものも存在する。ベローズ型伸縮管継手も地中に埋設される場合がある。その場合、地震や不同沈下などによってベローズ型伸縮管継手に大きな変位が加わっても、地上から伸縮管継手の変形状況を視認できない。そのため、交換要否の判断がつかず、変位がほぼ無く取替不要な状態であっても状況確認のために不要な掘削工事を実施することもあり得る。
【0009】
また、ベローズ型伸縮管継手に想定外の過大な変位が発生した場合には、管継手が破損し、内部流体が漏洩する可能性があるが、その場合についても掘削工事をしなければ現状把握が困難な実情がある。
【0010】
特許文献2は、ベローズ型伸縮管継手に関する情報を採取する管路情報採取装置も開示している。管路情報採取装置は、管路に設けられて変形可能なベローズ部と、ベローズ部に設けられてベローズ部の変形動作に応じて発電する発電部と、管路の情報である管路情報を取得する情報採取部と、管路情報を無線で送信する送信部と、送信部から送信された信号を受信する外部の受信手段とを備える。
【0011】
上記の管路情報採取装置等を備える遠隔監視システムを活用すれば、状態確認が困難な環境下にある管路の監視を遠隔地から容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第6639423号公報
【特許文献2】特許第6960128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献2に開示されたような遠隔監視システムには、以下に記載するような課題が存在する。
【0014】
第1の課題は、次の通りである。ベローズ型伸縮管継手は、「軸方向変位」、「軸直角方向変位」および「軸曲げ方向変位」の変位性能を有する。地震などが発生した場合に、ベローズ部に軸方向変位だけでなく、軸直角方向変位や軸曲げ方向変位も複合的に作用することがある。その場合、ベローズ部の伸縮量を計測したとしても、その伸縮量には軸直角方向変位や軸曲げ方向変位による変位成分も足されてしまっているので、正確な計測結果を把握できない。
【0015】
第2の課題は、次の通りである。ベローズ型伸縮管継手の両端に接続された一方側管路と他方側管路とが角度的な変位を発生している場合もあるが、特許文献2に開示されたような装置では、ベローズ型伸縮管継手としての角度変位を正確に計測できない。
【0016】
第3の課題は、次の通りである。地中に埋設された管路の場合でも、四季や敷設場所の違いでセンサ付近の温度が変わるために、センサの計測結果に温度変化の影響も含まれてしまう。
【0017】
第4の課題は、次の通りである。ベローズ型伸縮管継手から多量の漏洩があればその漏洩を発見することは容易であろうが、少量の漏洩であればその発見が遅れることもあり、最悪の事態ではライフラインが断たれることも起こり得る。内部流体の漏洩の早期発見が必要である。
【0018】
本発明の目的は、ベローズ型伸縮管継手の軸方向変位量、軸直角方向変位量および軸曲げ方向変位量を正確に計測することができるベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構を提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、センサ近傍における温度変化の影響も考慮した計測データを採取できるようにすることである。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、想定外変位や老朽化に伴う流体の漏洩を検知して、ベローズ型伸縮管継手の早急な修復や交換に対応できるようにすることである。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、ベローズ型伸縮管継手から離れた位置から、ベローズ型伸縮管継手の軸方向変位量、軸直角方向変位量および軸曲げ方向変位量を遠隔監視することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構は、一方側に位置する第1の管路と他方側に位置する第2の管路とを伸縮可能に接続するベローズ型伸縮管継手と、ベローズ型伸縮管継手の変位量を計測する計測手段とを備える。
【0023】
ベローズ型伸縮管継手は、第1の管路に固定接続される一方端管と、第2の管路に固定接続される他方端管と、一方端管と他方端管との間に位置する中央管と、一方端管と中央管とを伸縮可能に接続する第1ベローズ管と、他方端管と中央管とを伸縮可能に接続する第2のベローズ管とを備える。
【0024】
計測手段は、一方端管の傾斜角度を計測する第1傾斜センサと、他方端管の傾斜角度を計測する第2傾斜センサと、中央管の傾斜角度を計測する第3傾斜センサと、第1ベローズ管の伸縮量を計測する第1距離センサと、第2ベローズ管の伸縮量を計測する第2距離センサとを備える。
【0025】
好ましくは、ベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構は、計測手段で計測した値に基づいて、ベローズ型伸縮管継手における軸方向変位量、軸直角方向変位量および軸曲げ方向変位量を算出する変位量算出手段をさらに備える。
【0026】
好ましくは、計測手段は、内部流体の漏洩を検知するために中央管に取り付けられた漏洩センサをさらに備える。
【0027】
本発明の一実施形態では、一方端管は、径方向外方に延びる一方端管フランジと、一方端管フランジから軸方向に延びて第1ベローズ管の周囲を取り囲む一方端管外筒とを備える。他方端管は、径方向外方に延びる他方端管フランジと、他方端管フランジから軸方向に延びて第2ベローズ管の周囲を取り囲む他方端管外筒とを備える。第1距離センサは、一方端管外筒と第1ベローズ管との間の軸方向距離の変化を計測し、第2距離センサは、他方端管外筒と第2ベローズ管との間の軸方向距離の変化を計測する。
【0028】
好ましくは、計測手段は、ベローズ型伸縮管継手の近傍位置における温度を計測する温度センサをさらに備え、変位量算出手段は、温度センサで計測した温度に基づいて各センサで計測した値を常温時の値に補正する温度補正手段を含む。
【0029】
好ましくは、変位量算出手段は、ベローズ型伸縮管継手から離れた位置にあり、計測手段は、計測したデータを無線で変位量算出手段に送信する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、計測手段が、第1傾斜センサ、第2傾斜センサ、第3傾斜センサ、第1距離センサおよび第2距離センサを備えるので、ベローズ型伸縮管継手の軸方向変位量、軸直角方向変位量および軸曲げ方向変位量を正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ベローズ管の軸方向変位、軸直角方向変位および軸曲げ方向変位の様子を示す図である。
図2】本発明に係るベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構の全体構成を説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態に係るベローズ型伸縮管継手の構造を説明するための図である。
図4】伸縮管継手の各部の傾斜角度の記号および中央管の長さの記号を示すための図である。
図5】ベローズ管単体の軸方向変位量を示すための図である。
図6】伸縮管継手全体の軸方向変位量の算出を説明するための図である。
図7】伸縮管継手の全体の軸直角方向変位量の算出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[全体の構成]
【0033】
ベローズ型伸縮管継手には、軸方向変位、軸直角方向変位および軸曲げ方向変位が複合的に作用するが、本発明に係る変化量検出機構によれば、ベローズ型伸縮管継手に発生する変化量を軸方向、軸直角方向および軸曲げ方向の各変位成分に正確に分解することができる。
【0034】
図2を参照して、本発明に係るベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構の全体構成を説明する。ベローズ型伸縮管継手の変化量検出機構は、一方側に位置する第1の管路1と、他方側に位置する第2の管路2とを伸縮可能に接続するベローズ型伸縮管継手10と、ベローズ型伸縮管継手10の変位量を計測する計測手段30とを備える。好ましい実施形態では、変化量検出機構は、さらに、計測手段30で計測した値に基づいて、ベローズ型伸縮管継手における軸方向変位量、軸直角方向変位量および軸曲げ方向変位量を算出する変位量算出手段40を含む。
【0035】
ベローズ型伸縮管継手10が地中に埋設される場合には、好ましくは、変位量算出手段40は、ベローズ型伸縮管継手10から離れた位置にあり、計測手段30は、計測したデータを無線で変位量算出手段40に送信する。
【0036】
[ベローズ型伸縮管継手の構成]
【0037】
図3を参照して、本発明の一実施形態に係るベローズ型伸縮管継手10の構造を説明する。ベローズ型伸縮管継手10は、端フランジ11aの部分で第1の管路1に固定接続される一方端管11と、端フランジ12aの部分で第2の管路2に固定接続される他方端管12と、一方端管11と他方端管12との間に位置する中央管13と、一方端管11と中央管13とを伸縮可能に接続する第1ベローズ管14と、他方端管12と中央管13とを伸縮可能に接続する第2のベローズ管15とを備える。
【0038】
一方端管11は、径方向外方に延びる一方端管フランジ11bと、一方端管フランジ11bの途中位置から軸方向に延びる一方端管外筒11cとを備える。第1ベローズ管14の一方端は、一方端管フランジ11bに固定され、他方端は、中央管13の一方の端フランジ13aに固定されている。
【0039】
他方端管12は、径方向外方に延びる他方端管フランジ12bと、他方端管フランジ12bの途中位置から軸方向に延びる他方端管外筒12cとを備える。第2ベローズ管15の一方端は、中央管13の他方の端フランジ13bに固定され、他方端は、他方端管フランジ12bに固定されている。
【0040】
一方端管外筒11cは、第1ベローズ管14の蛇腹状成形部分に土砂等が入り込まないようにするために、第1ベローズ管14の周囲を取り囲んでいる。同様に、他方端管外筒12cは、第2ベローズ管15の蛇腹状成形部分に土砂等が入り込まないようにするために、第2ベローズ管15の周囲を取り囲んでいる。
【0041】
地震や沈下等により第1ベローズ管14および第2ベローズ管15が伸縮動作または曲がり動作を行うと、中央管13は、一方端管11および他方端管12に対して軸方向、軸直角方向または傾斜方向に変位する。
【0042】
[計測手段の構成]
【0043】
図3を参照して、計測手段30の構成を説明する。計測手段30は、一方端管11の傾斜角度を計測するために、例えば一方端管11の外周面に取り付けられる第1傾斜センサ31と、他方端管12の傾斜角度を計測するために、例えば他方端管12の外周面に取り付けられた第2傾斜センサ32と、中央管13の傾斜角度を計測するために、例えば中央管13の外周面に取り付けられた第3傾斜センサ33と、第1ベローズ管14の伸縮量を計測する第1距離センサ34と、第2ベローズ管15の伸縮量を計測する第2距離センサ35とを備える。
【0044】
図示した実施形態では、第1距離センサ34は、一方端管外筒11cと第1ベローズ管14との間の軸方向距離の変化を計測し、第2距離センサ35は、他方端管外筒12cと第2ベローズ管15との間の軸方向距離の変化を計測する。具体的には、第1距離センサ34は、一方端管外筒11cの内向きフランジと中央管13の一方の端フランジ13aとの間の距離を計測し、第2距離センサ35は、他方端管外筒12cの内向きフランジと中央管13の他方の端フランジ13bとの間の距離を計測する。
【0045】
図3に示した距離センサ34および35は例示的なものであり、他の構造および配置であってもよい。要するに、第1距離センサおよび第2距離センサは、第1ベローズ管および第2ベローズ管の伸縮量を計測することができれば、どのような構造および配置であってもよい。
【0046】
好ましくは、計測手段30は、さらに内部流体の漏洩を検知するために中央管13の外周面に取り付けられた漏洩センサ36と、ベローズ型伸縮管継手10の近傍位置における温度を計測する温度センサ37とを備える。漏洩センサ36は、中心管13の振動や流体漏れの音を検出する。図示した実施形態では、温度センサ37は、傾斜センサ31,32,33および距離センサ34,35の近傍位置に配置され、各センサの温度を計測する。他の実施形態として、温度センサをベローズ型伸縮管継手の近傍位置に1個だけ配置するものであってもよい。
【0047】
[変位量算出手段の構成および動作]
【0048】
変位量算出手段40は、計測手段30で計測した値に基づいて、ベローズ型伸縮管継手10における軸方向変位量、軸直角方向変位量および軸曲げ方向変位量を算出するものである。本発明の実施形態では、変位量算出手段40は、さらに、温度センサで計測した温度に基づいて傾斜センサ31,32,33および距離センサ34,35で計測した値を常温時の値に補正する温度補正手段41を含む。
【0049】
第1距離センサ34および第2距離センサ35は、それぞれ第1ベローズ管14および第2ベローズ管15の軸方向変位量を計測する。この際、第1傾斜センサ31、第2傾斜センサ32および第3傾斜センサ33で計測した傾斜角度の計測結果に基づいて、ベローズ型伸縮管継手10の軸方向変位量を補正する。
【0050】
一方端管11,他方端管12および中央管13に取り付けた第1、第2、第3傾斜センサ31,32,33による傾斜角度の計測結果と、第1、第2距離センサ34,35による伸縮量の計測結果とにより、伸縮管継手10の軸直角方向変位量を算出する。その際に、伸縮管継手10が接続された第1管路1又は第2管路2が角度変位を起こしている可能性もあるので、一方端管11、他方端管12、中央管13の傾斜角度計測結果により、伸縮管継手10の傾斜角度(軸曲げ方向変位量)を補正する。
【0051】
傾斜センサ31,32,33および距離センサ34,35の近傍位置に配置された温度センサ37の計測結果に基づいて、温度補正手段41が伸縮管継手10の軸方向変位量、軸直角方向変位量および軸曲げ方向変位量を補正する。
【0052】
ベローズ型伸縮管継手10に想定外の変位が生じて流体の漏れが発生することがある。また、変位とは無関係に、伸縮管継手の構成要素の老朽化に伴って流体の漏れが発生することがある。漏洩センサ36は、中央管13の振動や流体漏れの音を検知するので、少量の流体の漏洩でも見逃すことなく検出する。
【0053】
[ベローズ管単体の変位]
【0054】
ベローズ管14,15の単体の変位は、下記の2種類である。
【0055】
-軸方向変位
【0056】
-軸曲げ方向変位
【0057】
複数のベローズ管を有する伸縮管継手では、ベローズ管単体に軸直角方向変位が発生する前に軸曲げ方向変位が発生し、中央管13を含む伸縮管継手全体として軸直角方向変位を吸収することになる。したがって、ベローズ管単体には、軸直角方向変位はないものとする。
【0058】
[伸縮管継手全体の変位]
【0059】
伸縮管継手10全体の変位は、下記の3種類である。
【0060】
-軸方向変位
【0061】
-軸直角方向変位
【0062】
-軸曲げ方向変位
【0063】
[傾斜角度の正負の規定]
【0064】
図4は、伸縮管継手10の各部の傾斜角度の記号および中央管13の長さの記号を示すための図である。図4に示す傾斜角度の記号は、以下の通りである。
【0065】
θ:一方端管11の傾斜角度
【0066】
θ:他方端管12の傾斜角度
【0067】
θ:中央管13の傾斜角度
【0068】
θ:第1ベローズ管14の軸曲げ変位角度
【0069】
θ:第2ベローズ管15の軸曲げ変位角度
【0070】
θ:伸縮管継手10の全体の軸曲げ変位角度
【0071】
L:中央管13の軸方向長さ
【0072】
なお、各傾斜センサ31,32,33は、水平状態からの傾斜角度を計測する。θおよびθについては、天側(鉛直方向上側)のベローズ部分が伸びる変位の時は負とし、縮む変位の時は正とする。
【0073】
[ベローズ単体の軸曲げ方向変位量の算出]
【0074】
第1ベローズ管14の軸曲げ変位量(変位角度)θは、下記の式よって算出する。
【0075】
θ=θ-θ
【0076】
第2ベローズ管15の軸曲げ変位量(変位角度)θは、下記の式によって算出する。
【0077】
θ=θ-θ
【0078】
[ベローズ管単体の軸方向変位量の算出]
【0079】
図5は、ベローズ管単体の軸方向変位量を示すための図である。
【0080】
第1ベローズ管14および第2ベローズ管15の単体の軸方向変位量(伸縮量)は、距離センサ34,35によって測定される距離の変化量である。図5において、第1ベローズ管14の軸方向変位量をΔXとして示している。図示していないが、第2ベローズ管15の軸方向変位量をΔXとする。
【0081】
[伸縮管継手全体の軸曲げ方向変位量の算出]
【0082】
伸縮管継手10全体の軸曲げ方向変位量(変位角度)θは、下記の式によって算出する。
【0083】
θ=θ-θ
【0084】
[伸縮管継手全体の軸方向変位量の算出]
【0085】
図6は、伸縮管継手全体の軸方向変位量の算出を説明するための図である。
【0086】
伸縮管継手10全体の軸方向変位量ΔX’は、各ベローズ管14,15の軸曲げ変位を除いた水平方向成分となる。図6を参照して、第1ベローズ管14の軸方向変位の考え方を説明する。
【0087】
第1ベローズ管14の水平方向成分ΔX’は、下記の式によって算出する。
【0088】
ΔX’=ΔX×cosθ
【0089】
第2ベローズ管15の水平方向成分ΔX’は、下記の式によって算出する。
【0090】
ΔX’=ΔX×cosθ
【0091】
伸縮管継手10の全体としての軸方向変位量ΔX’は、上記の2つの変位量の合計となる。
【0092】
ΔX’=ΔX’+ΔX’
【0093】
[伸縮管継手全体の軸直角方向変位量の算出]
【0094】
図7は、伸縮管継手10の全体の軸直角方向変位量の算出を説明するための図である。
【0095】
ベローズ管単体の寸法をBとし、距離センサの測定値をΔXとする。
【0096】
第1ベローズ管14の軸直角方向変位量ΔYは、下記の式によって算出する。
【0097】
ΔY={(B/2)+ΔX}×sinθ
【0098】
第2ベローズ管15の軸直角方向変位量ΔYは、下記の式によって算出する。
【0099】
ΔY={(B/2)+ΔX}×sin(θ-θ)
【0100】
中央管13の傾斜による移動量ΔYは、下記の式によって算出する。
【0101】
ΔY=L×sinθ
【0102】
伸縮管継手10の全体としての軸直角方向変位ΔYは、上記の3つの変位量を合計したものとなる。
【0103】
ΔY=ΔY+ΔY+ΔY
【0104】
[第1ベローズ管の軸曲げ方向変位量の温度補正]
【0105】
第1ベローズ管14に、計測時の実際温度と、設計時の基準温度(例えば20℃)の差があった場合の補正式を例示的に以下に説明する。
【0106】
仮定条件は、以下の通りである。
【0107】
基準温度(設計時の温度):20℃
【0108】
測定時の温度:10℃
【0109】
温度特性:±0.02°/℃
【0110】
上記条件の傾斜センサを使用した場合の補正式を考える。
【0111】
第1ベローズ管14の軸曲げ方向変位量θを例に挙げる。θ=5°、θ=-2°の時、θのみに誤差が発生した場合、下記のようになる。
【0112】
補正ありの場合、下記の変位角度となる。
【0113】
θ=θ-θ=7°
【0114】
補正なしの場合、下記の変位角度となる。
【0115】
θ=(θ+0.02×t)-θ=5.2-(-2)=7.2°
【0116】
温度補正をしない計測データだと、実際の計測結果に対して0.2°の誤差が発生する。
【0117】
[本発明の範囲および好ましい実施形態のメリット]
【0118】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、図示した実施形態は例示的なものであり、本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【0119】
本発明によれば、ベローズ型伸縮管継手の変位量を正確に検出できる。好ましい実施形態として説明したように遠隔で監視するシステムを搭載すれば、下記に記載のメリットを期待することができる。
a)伸縮管継手の修復/交換の計画立案が可能になること。
b)想定外変位や老朽化に伴う漏洩検知で、伸縮管継手の早急な修復/交換の対応が可能になること。
c)地震後の変位確認により、伸縮管継手の耐震性能設計のためのデータの取得が可能になること。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、ベローズ型伸縮管継手の変化量を正確に検出できる機構として、有利に利用され得る。
【符号の説明】
【0121】
1 第1管路、2 第2管路、10 ベローズ型伸縮管継手、11 一方端管、11a 端フランジ、11b 一方端管フランジ、11c 一方端管外筒、12 他方端管、12a 端フランジ、12b 他方端管フランジ、12c 他方端管外筒、13 中央管、14 第1ベローズ管、15 第2ベローズ管、30 計測手段、31 第1傾斜センサ、32 第2傾斜センサ、33 第3傾斜センサ、34 第1距離センサ、35 第2距離センサ、36 漏洩センサ、37 温度センサ、40 変位量算出手段、41 温度補正手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7