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特開2024-8000タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008000
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20240112BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240112BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240112BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240112BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C08L7/00
C08K3/36
C08K3/04
C08K3/22
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109473
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】広田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】相武 慶介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 瑞哉
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA01
3D131BA05
3D131BA08
3D131BA12
3D131BA20
3D131BB03
3D131BC33
4J002AC011
4J002AC032
4J002AC061
4J002DA037
4J002DA040
4J002DE108
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD208
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】重荷重用タイヤは、耐摩耗性に優れタイヤ寿命が長いことが重要視され、また低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させることが求められている。
【解決手段】イソプレン系ゴムを60質量部以上を含むゴム100質量部に対し、下記式(A)および式(B)を満たすシリカを30~70質量部、窒素吸着比表面積(NSA)が50~300m/gのカーボンブラックを0~20質量部、および酸化亜鉛を0.5~5.0質量部配合してなるタイヤ用ゴム組成物。式(A):y ≦ 0.38 x + 120 、式(B):210 ≦ x ≦ 250(xは前記シリカのCTAB比表面積(m/g)を示し、yは前記シリカのDBP吸油量(ml/100g)を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴムを60質量部以上を含むゴム100質量部に対し、下記式(A)および式(B)を満たすシリカを30~70質量部、窒素吸着比表面積(NSA)が50~300m/gのカーボンブラックを0~20質量部(ただし前記シリカおよび前記カーボンブラックの配合量の合計は40~70質量部である)、および酸化亜鉛を0.5~5.0質量部配合してなる
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
式(A):y ≦ 0.38 x + 120
式(B):210 ≦ x ≦ 250
(前記式(A)および式(B)中、xは前記シリカのCTAB比表面積(m/g)を示し、yは前記シリカのDBP吸油量(ml/100g)を示す。)
【請求項2】
前記シリカが、下記式式(A-2)および式(B-2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
式(A-2):y ≦ 0.38 x + 110
式(B-2):210 ≦ x ≦ 250
【請求項3】
20℃における硬度が63以上であり、かつ60℃における損失コンプライアンスが35.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドゴムに用いてなるタイヤ。
【請求項5】
請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドゴムに用いてなる重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものであり、詳しくは、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させ得るゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックおよびバス用タイヤとして使用される重荷重用タイヤは、耐摩耗性に優れタイヤ寿命が長いことが重要視される。一方、タイヤは国連欧州経済委員会(UN/ECE)のR-117での国際基準強化や、米国環境保護庁(EPA)による温室効果ガス(GHG)規制強化などにより低転がり抵抗化が求められている。低転がり抵抗化には、シリカの配合が効果的であるが、耐摩耗性が低下する問題点がある。また、耐摩耗性を向上させるには、小粒径のシリカを配合する手法があるが、これでは発熱性が悪化してしまう。以上から、両者は背反性能の関係にあり、両立は困難である。
また、重荷重用タイヤに求められる別の性能としては、耐チッピング性が挙げられる。耐チッピング性を向上するには、トレッドゴムを柔らかくする手法があるが、一方で耐摩耗性および発熱性が悪化してしまう。
以上から、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させることは、当業界では極めて困難な事項であると認識されている。
【0003】
なお、例えば下記特許文献1には、ゴム成分と、下記3式を満たす平均一次粒子径X(nm)及び窒素吸着比表面積Y(m/g)を有するシリカとを含有するタイヤ用ゴム組成物が開示されている。
Y≧370-9.0X
10.0≦X≦28.0
30≦Y≦500
しかし、従来技術には、CTAB比表面積とDBP吸油量との間に特定の関係を有するシリカを用い、耐摩耗性、低発熱性および耐チッピング性を両立しようとする技術思想は何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5840971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させ得るゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、イソプレン系ゴムを含むゴムに対し、CTAB比表面積とDBP吸油量との間に特定の関係を有するシリカおよび酸化亜鉛を特定量でもって配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0007】
すなわち本発明は、イソプレン系ゴムを60質量部以上を含むゴム100質量部に対し、下記式(A)および式(B)を満たすシリカを30~70質量部、窒素吸着比表面積(NSA)が50~300m/gのカーボンブラックを0~20質量部(ただし前記シリカおよび前記カーボンブラックの配合量の合計は40~70質量部である)、および酸化亜鉛を0.5~5.0質量部配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
式(A):y ≦ 0.38 x + 120
式(B):210 ≦ x ≦ 250
(前記式(A)および式(B)中、xは前記シリカのCTAB比表面積(m/g)を示し、yは前記シリカのDBP吸油量(ml/100g)を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴムを60質量部以上を含むゴム100質量部に対し、上記式(A)および式(B)を満たすシリカを30~70質量部、窒素吸着比表面積(NSA)が50~300m/gのカーボンブラックを0~20質量部(ただし前記シリカおよび前記カーボンブラックの配合量の合計は40~70質量部である)、および酸化亜鉛を0.5~5.0質量部配合してなることを特徴としているので、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させ得るゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明で使用されるゴムは、その全体を100質量部としたときに、イソプレン系ゴムを60質量部以上含む必要がある。イソプレン系ゴムの前記配合量が60質量部未満では、本発明の効果を奏することができない。
イソプレン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)またはこれらの組み合わせが挙げられる。
なお、NRおよびIR以外にも他のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0011】
本発明で使用されるシリカは、下記式(A)および式(B)を満たす必要がある。
【0012】
式(A):y ≦ 0.38 x + 120
式(B):210 ≦ x ≦ 250
(前記式(A)および式(B)中、xは前記シリカのCTAB比表面積(m/g)を示し、yは前記シリカのDBP吸油量(ml/100g)を示す。)
【0013】
上述のように、当業界において低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させることは極めて困難な事項であると認識されていたが、本発明者らの検討によれば、特定のコロイダル特性を有するシリカを使用することにより、当該課題を解決できることが見出された。
【0014】
前記課題を解決できる特定のコロイダル特性を有するシリカは、本発明者らの数多くの試行錯誤を経て見出したものである。
すなわち、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させるには、まず、シリカのCTAB比表面積(m/g)およびDBP吸油量(ml/100g)の範囲の設定が有効であることを見出し、さらに、どのようなCTAB比表面積(m/g)およびDBP吸油量(ml/100g)範囲をシリカに持たせればよいのかを、約100点のシリカについて検討し、最小二乗法の直線回帰により、上記式(A)および式(B)を導き出したものである。
【0015】
本発明において、前記式(A)および式(B)は、下記式(A-2)および式(B-2)であることがさらに好ましい。
式(A-2):y ≦ 0.38 x + 110
式(B-2):210 ≦ x ≦ 250
【0016】
また本発明において、前記式(A)および式(B)並びに下記式(C)を満たすことがさらに好ましい。
式(C):y ≧ 0.38 x + 70
【0017】
本発明で使用されるシリカは、例えば特開2020-26363号公報に記載のように、下記のi)~vi)の工程を有する方法により製造することができる。
【0018】
i)ケイ酸アルカリ水溶液を、例えばpH9.5~12に調整し、反応槽に仕込む工程。
ii)ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を同時に滴下する工程、およびケイ酸アルカリ水溶液を添加せず鉱酸のみを滴下する工程を含む中和反応工程、
iii)ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を同時に滴下する工程、但し、それぞれの流量は、独立に、工程ii)の同時に滴下する工程における流量の20~80%の範囲とする中和反応工程、
iv)ケイ酸アルカリ水溶液を添加せず、鉱酸のみを滴下し、pH<7にして中和反応を停止する工程。
ただし、工程i)~iv)は反応スラリーを攪拌または/および循環を行いながら、70~90℃の範囲を維持しながら実施し、工程ii)~iii)はpH9.5~12の範囲を維持しながら実施する。
v)得られた含水ケイ酸スラリーの濾過を行い、かつ得られた含水ケイ酸のケーキと同量以上の水で水洗を行う工程、
vi)乾燥工程、並びに必要に応じて粒度を調整する工程。
【0019】
ケイ酸アルカリ水溶液は、市販のケイ酸ソーダを使用することができ、鉱酸としては硫酸が挙げられる。
【0020】
工程ii)及び工程iii)は、合計で80~140分程度で完了するのがよい。
【0021】
工程v)の含水ケイ酸の濾過、水洗は例えば、フィルタープレス等を用いて行うことができる。
【0022】
工程vi)における工程は、公知の手段により行うことができ、例えば乾燥工程は、スプレードライヤー等を用いて行うことができ、粒度を調整する工程は圧縮ロール等を用いて行うことができる。
【0023】
なお、本明細書で言うCTAB比表面積はJIS K6217-3に準拠して、DBP吸油量はJIS K6217-4吸油量A法に準拠して求めた値である。
【0024】
(カーボンブラック)
本発明で使用するカーボンブラックは、本発明の効果向上の観点から、窒素吸着比表面積(NSA)が50~300m/gであることが好ましく、80~250m/gであることがさらに好ましい。なお、窒素吸着比表面積(NSA)はJIS K6217-2に準拠して求めた値である。
【0025】
(タイヤ用ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ゴム100質量部に対し、前記式(A)および式(B)を満たすシリカを30~70質量部、窒素吸着比表面積(NSA)が50~300m/gのカーボンブラックを0~20質量部(ただし前記シリカおよび前記カーボンブラックの配合量の合計は40~70質量部である)、および酸化亜鉛を0.5~5.0質量部配合してなることを特徴とする。
シリカの配合量が30質量部未満であると耐摩耗性が悪化し、70質量部を超えると発熱性が悪化する。
前記カーボンブラックの配合量が20質量部を超えると発熱性が悪化する。
前記カーボンブラックのNSAが50m/g未満であると耐摩耗性が悪化し、300m/gを超えると発熱性が悪化する。
また、前記シリカおよび前記カーボンブラックの配合量の合計が40質量部未満であると耐摩耗性が悪化し、70質量部を超えると発熱性が悪化する。
また、前記酸化亜鉛の合計量が0.5~5.0質量部の範囲外であると発熱性、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させることができない。
【0026】
本発明のゴム組成物において、前記式(A)および式(B)を満たすシリカの配合量は、ゴム100質量部に対し、35~65質量部がさらに好ましい。
前記窒素吸着比表面積(NSA)が50~300m/gのカーボンブラックの配合量は、ゴム100質量部に対し、1~15質量部がさらに好ましい。
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、80~250m/gであるのがさらに好ましい。
【0027】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0028】
本発明のゴム組成物は、20℃における硬度が63以上であり、かつ60℃における損失コンプライアンスが35.0以下であることが好ましい。この条件を満たすことにより、耐摩耗性、低発熱性および耐チッピング性をさらに向上させることができる。前記硬度は65以上75以下がさらに好ましく、前記損失コンプライアンスは5.0以上30.0以下がさらに好ましい。
なお、硬度はJIS K6253に準拠して測定され、損失コンプライアンスは、岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを使用し、温度60℃、振動数20Hz、振幅2%、初期歪み10%の条件下に測定した値(N/PA)である。
【0029】
本発明のゴム組成物は、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させ得ることから、タイヤ、とくに重荷重用タイヤのトレッドゴムに好適に用いられ得る。また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0031】
基準例、実施例1~2および比較例1~7
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で148℃、30分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0032】
発熱性:株式会社東洋精機製作所製、粘弾性スペクトロメーターを用い、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。結果は、基準例の値を100として指数で示した。この値が大きいほど、低発熱性であることを示し、95以上であれば十分に低い発熱性であると判定できる。
【0033】
耐摩耗性:ランボーン摩耗試験機(株式会社A&D社製)を使用して、荷重30N、スリップ率10%、時間15分、室温の条件でランボーン摩耗指数を測定した。結果は、基準例の値を100として指数表示した。この指数が大きいほど、耐摩耗性が良好であることを示し、105以上であれば優れた耐摩耗性を有すると判定できる。
【0034】
耐チッピング性:JIS K6251に準拠して破断伸びを100℃で測定した。結果は、基準例の値を100として指数表示した。指数が大きいほど高温での破断伸びが高く、耐チッピング性に優れることを示し、105以上であれば優れた耐チッピング性を有すると判定できる。
【0035】
硬度および損失コンプライアンス:上記の測定方法により測定した。
【0036】
結果を表1に併せて示す。
【0037】
【表1】
【0038】
*1:NR(STR20)
*2:BR(日本ゼオン株式会社製NIPOL BR1220)
*3:カーボンブラック(キャボットジャパン社製商品名ショウブラックN220、窒素吸着比表面積(NSA)=110m/g)
*4:シリカA(Solvay社製ZEOSIL 1165MP、CTAB比表面積=160m/g、DBP吸油量=195ml/100g)
*5:シリカB(Solvay社製ZEOSIL Premiun 200MP、CTAB比表面積=203m/g、DBP吸油量=209ml/100g)
*6:シリカC(Solvay社製VHSA、CTAB比表面積=270m/g、DBP吸油量=230ml/100g)
*7:シリカD(Solvay社製ZEOSIL HRS 200MP、CTAB比表面積=199m/g、DBP吸油量=182ml/100g)
*8:シリカE(上記i)~vi)の工程に基づき調製されたシリカ。CTAB比表面積=241m/g、DBP吸油量=203ml/100g)
*9:シリカF(上記i)~vi)の工程に基づき調製されたシリカ。CTAB比表面積=223m/g、DBP吸油量=184ml/100g)
*10:シランカップリング剤(エボニックデグッサ社製Si69、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
*11:オイル(昭和シェル石油株式会社製エキストラクト4号S)
*12:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*13:老化防止剤6C(フレキシス製サントフレックス6PPD)
*14:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*15:加硫促進剤NS(大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS-F)
*16:硫黄(鶴見化学工業株式会社製金華印油入微粉硫黄)
【0039】
表1の結果から、実施例1~2のゴム組成物は、イソプレン系ゴムを60質量部以上を含むゴム100質量部に対し、前記式(A)および式(B)を満たすシリカを30~70質量部、窒素吸着比表面積(NSA)が50~300m/gのカーボンブラックを0~20質量部(ただし前記シリカおよび前記カーボンブラックの配合量の合計は40~70質量部である)、および酸化亜鉛を0.5~5.0質量部配合してなるものであるので、基準例に比べて、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させ得る結果となった。
これに対し、比較例1~3は、使用したシリカが前記式(A)および式(B)を満たすものではないので、発熱性、耐摩耗性および耐チッピングを共に満足させることができない。
比較例4は、シリカの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、発熱性が悪化した。
比較例5は、シリカおよびカーボンブラックの配合量の合計が本発明で規定する上限を超えているので、発熱性が悪化した。
比較例6は、酸化亜鉛の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、十分な耐摩耗性および耐チッピング性が得られなかった。
比較例7は、イソプレン系ゴムの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、耐チッピング性が悪化した。
【0040】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1]:イソプレン系ゴムを60質量部以上を含むゴム100質量部に対し、下記式(A)および式(B)を満たすシリカを30~70質量部、窒素吸着比表面積(NSA)が50~300m/gのカーボンブラックを0~20質量部(ただし前記シリカおよび前記カーボンブラックの配合量の合計は40~70質量部である)、および酸化亜鉛を0.5~5.0質量部配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
式(A):y ≦ 0.38 x + 120
式(B):210 ≦ x ≦ 250
(前記式(A)および式(B)中、xは前記シリカのCTAB比表面積(m/g)を示し、yは前記シリカのDBP吸油量(ml/100g)を示す。)
発明[2]:前記シリカが、下記式式(A-2)および式(B-2)を満たすことを特徴とする発明1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
式(A-2):y ≦ 0.38 x + 110
式(B-2):210 ≦ x ≦ 250
発明[3]:20℃における硬度が63以上であり、かつ60℃における損失コンプライアンスが35.0以下であることを特徴とする発明1または2に記載のゴム組成物。
発明[4]:発明1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドゴムに用いてなるタイヤ。
発明[5]:発明1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドゴムに用いてなる重荷重用タイヤ。