(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080000
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ピペットケース
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192798
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】500362442
【氏名又は名称】プライムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100194342
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】安田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】高山 径子
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029AA25
4B029BB11
4B029BB12
4B029DG10
4B029GA06
4B029GB10
4B029HA07
(57)【要約】
【課題】シリンジの先端の注入針のマイクロピペットの開口部への挿入を容易にし、シリンジ内の薬液のマイクロピペット内への注入作業にかかる時間を短縮し、薬液注入作業効率の向上を図ることができるピペットケースを提供することにある。
【解決手段】ピペットケース1は、シリンジからの薬液が注入される開口部を有するピペット20を収容する収容部2を備える。収容部2には、シリンジの注入針を載置するための第1のガイド部5と、第1のガイド部5に隣接配置されピペット20の開口部20aを含む先端部の一部を載置するための第2のガイド部7が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジからの薬液が注入される開口部を有するピペットを収容するための収容部を備えたピペットケースであって、
前記シリンジの注入針を載置するための第1のガイド部と、
前記第1のガイド部に隣接配置され前記ピペットの開口部を含む先端部の一部を載置するための第2のガイド部と、を有する、
ことを特徴とするピペットケース。
【請求項2】
前記第1のガイド部および前記第2のガイド部は、前記第2のガイド部に載置された前記ピペットと前記シリンジの注入針とが水平に維持され、前記シリンジの注入針が前記ピペットの前記開口部に挿入可能なように形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のピペットケース。
【請求項3】
前記第1のガイド部の上端部には前記シリンジの注入針を載置するための溝が形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のピペットケース。
【請求項4】
前記第2のガイド部に所定間隔をおいて形成され、前記ピペットの前記開口部から前記ピペットの先端側に向かって所定距離離れたところに位置する前記ピペットの第1の保持部分を保持するための切り欠きが形成された第1の保持部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のピペットケース。
【請求項5】
前記第1の保持部に所定間隔をおいて形成され、前記ピペットの前記開口部から前記ピペットの先端側に向かって所定距離離れたところに位置する前記ピペットの第2の保持部分を保持するための切り欠きが形成された第2の保持部を有する、
ことを特徴とする請求項4記載のピペットケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペットケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遺伝子・細胞等に人工的操作を加え、新しい遺伝情報体、受精卵を作成することが行われている。光学顕微鏡で観察することできる細胞、核、受精胚等に対して、物理的・機械的操作を加えるマニピュレータが用いられている。マニピュレータは、体外受精をはじめとする細胞等の人工的操作に不可欠なものとなっている。
【0003】
マニピュレータとして、圧電素子を使用して先端がフラットな微小器具(以下、「マイクロピペット」と呼ぶ。)で卵子を穿刺する圧電微小駆動装置(ピエゾマイクロマニピュレータ(「PMM」ともいう))が知られている(以下の特許文献1参照)。尚、マイクロピペットは、インジェクションピペットともいい、内部が中空構造になっており一端が中空部に薬液(比重が水より大きい液体、例えば不活性液体)を注入するための開口部が形成され、他端側はフラットな形状である。
【0004】
マニピュレータとして例えば液圧式インジェクタを用いる場合に、マイクロピペットを装着して卵細胞質内注入法を実行するにあたり、マイクロピペットを液圧式インジェクタに装着する前の段階で、吸引・吐出圧力を向上させるためマイクロピペットの内部にあらかじめ薬液を注入する必要がある。この薬液注入作業は、シリンジ(薬液注入装置)を用いて、シリンジの先端に形成された注入針をマイクロピペットの開口部に挿入させた後にシリンジ内の薬液がマイクロピペット内に注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したシリンジ内の薬液のマイクロピペットへの注入作業については、マイクロピペットを手に持って、シリンジの先端に形成された針をマイクロピペットの開口部に挿入させた後にシリンジ内の薬液を注入する方法が知られている。近年では蓋部と収容部からなるケース内にあらかじめマイクロピペットを収容・保持し、薬液のマイクロピペット内への注入作業の際に、ケースの蓋部を開けてそのケースを手に持った状態でシリンジの先端に形成された注入針をマイクロピペットの開口部に挿入させた後にシリンジ内の薬液を注入する方法も知られている。
【0007】
しかしながら、マイクロピペットの開口部の径(先端内径)は極めて小さい。
【0008】
上記のようにマイクロピペットもしくはピペットケースを手に持った状態で、極めて内径が小さい開口部にシリンジの先端の注入針を挿入するのは、作業者の熟練度や技術に左右され挿入時間が必要以上にかかってしまい、シリンジ内の薬液のマイクロピペット内への注入作業の効率が低下してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、シリンジの先端の注入針のマイクロピペットの開口部への挿入を容易にし、シリンジ内の薬液のマイクロピペット内への注入作業にかかる時間を短縮し、薬液注入作業効率の向上を図ることができるピペットケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態に係るピペットケースは、シリンジからの薬液が注入される開口部を有するピペットを収容する収容部を備えたピペットケースであって、シリンジの注入針を載置するための第1のガイド部と、第1のガイド部に隣接配置されピペットの開口部を含む先端部の一部を載置するための第2のガイド部とを有することを特徴とする。
【0011】
前述の実施形態に係るピペットケースにおいて、前記第1のガイド部および前記第2のガイド部は、第2のガイド部に載置されたピペットとシリンジの注入針とが水平に維持され、シリンジの注入針がピペットの開口部に挿入可能なように形成されていることが好ましい。
【0012】
前述の実施形態に係るピペットケースにおいて、第1のガイド部の上端部にはシリンジの注入針を載置するための溝が形成されていることが好ましい。
【0013】
前述の実施形態に係るピペットケースにおいて、第2のガイド部に所定間隔をおいて形成され、ピペットの開口部からピペットの先端側に向かって所定距離離れたところに位置するピペットの第1の保持部分を保持するための切り欠きが形成された第1の保持部を有することが好ましい。
【0014】
前述の実施形態に係るピペットケースにおいて、第1の保持部に所定間隔をおいて形成され、ピペットの開口部からピペットの先端側に向かって所定距離離れたところに位置するピペットの第2の保持部分を保持するための切り欠きが形成された第2の保持部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シリンジの先端の注入針のマイクロピペットの開口部への挿入を容易にし、シリンジ内の薬液のマイクロピペット内への注入作業にかかる時間を短縮し、薬液注入作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るピペットケースの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るピペットケースの平面図である。
【
図4】ピペットケースの収納部にピペットが保持された状態を示すである。
【
図5】ピペットケースの収納部に保持されたピペットの開口部へのシリンジの注入針の挿入を説明するための図である。
【
図6】第1のガイド部の溝位置の上限下限について説明するための図である。
【
図7】第1のガイド部の溝角度が90度である場合の溝位置の上限下限について説明するための図である。
【
図8】第1のガイド部の溝角度が150度である場合の溝位置の上限下限について説明するための図である。
【
図9】第1のガイド部の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るピペットケースの実施形態(実施例)の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
以下、本実施形態にかかるピペットケース1の構成について
図1~
図9を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る概略構成図を示す。
図2は、本発明の実施形態に係るピペットケースの平面図である。
図3は、
図2のA-A線断面図である。
図4は、ピペットケースの収納部にピペットが保持された状態を示すである。
図5は、ピペットケースの収納部に保持されたピペットの開口部へのシリンジの注入針の挿入を説明するための図である。
【0019】
ピペットケース1は、
図5に示すように、シリンジ30の先端の注入針30aのマイクロピペット20の開口部20aへの挿入を容易にし、シリンジ30内に収容されている薬液(不活性液体)のマイクロピペット20内への注入作業において使用される。ピペットケース1は、
図1に示すように、マイクロピペット収容部2と、接続部10を介してマイクロピペット収容部2に接続されている蓋部3とを備えて構成されている。なお、接続部10は、蓋部3がマイクロピペット収容部2に対して揺動(収納部2の開口4を蓋部3によって開閉する動作)するための揺動支点となっている。本実施の形態では、接続部10として折り曲げ自在の平板状弾性部材を用いている。なお、接続部10は平板状弾性部材に限定されることはなく、例えば軸受けステーと軸受けステーに挿入されるピンで構成され蝶番(ヒンジ)等を収容部2側に形成させてピンの両端部を嵌合させるための凹部を蓋部3側に形成させるようにしてもよい。
【0020】
[マイクロピペット収容部2の構成]
マイクロピペット収容部2は、長手方向端部に蓋部3の係合爪17を係合させる係合凹部15を備えている。ピペットケース1は、シリンジ30内に収容されている薬液のマイクロピペット20内への注入作業を行う前においては、ピペットケース1にマイクロピペット20が収容・保持されている状態である。注入作業は、ピペットケース1の蓋部3を開けた状態でシリンジ30内に収容されている薬液のマイクロピペット20内へ薬液を注入する作業である。この注入作業が終了すると、シリンジ30の注入針30aをマイクロピペット20から抜いて、薬液の入ったマイクロピペット20がピペットケース1から取り出され、マイクロピペット20がマニュピレータ(図示せず)に装着される。なお、マイクロピペット20のマイクロピペット収容部2への収容・保持方法のより詳細な説明は後述する。
【0021】
マイクロピペット収容部2は、さらに、第1のガイド部5、第2のガイド部7、第1の保持部9および第2の保持部11を備えている。第1のガイド部5、第2のガイド部7、第1の保持部9および第2の保持部11は、それぞれ所定間隔をおいて接続部10に向かって順に形成されている。
【0022】
第1のガイド部5は、断面略四角形状の柱状部材(突起)であり、その上端部に
図5に示すようにシリンジ30の注入針30aを載置するための略U字形状の溝(凹部)5aが形成されている。溝5aは、溝底5bに向かって溝幅が徐々に狭くなるように形成され、具体的にはU字形状のものとV字形状(
図7、
図8参照)のものが考えられる。
【0023】
以下に、溝5aがV字形状である場合において、溝5aが、マイクロピペット20とシリンジ30の注入針30aとが水平に維持され、注入針30aがマイクロピペット20の開口部20aに挿入可能なように形成される場合について
図6~
図8を参照して説明する。
図6は、第1のガイド部5の溝位置の上限下限について説明するための図である。
図7は、第1のガイド部5の溝角度が90度である場合の溝位置の上限下限について説明するための図である。
図8は、第1のガイド部5の溝角度が150度である場合の溝位置の上限下限について説明するための図である。
【0024】
以下の説明では、マイクロピペット20の開口部20a内の上限位置に溝5aがある場合には対応する注射針は30aであり、下限位置に溝5a´がある場合には対応する注射針は30a´であるとして説明する。
【0025】
図6に示すように、マイクロピペット20とシリンジ30の注入針30a(30a´)とが水平に維持された状態であれば、第2のガイド部7に保持されたマイクロピペット20の開口部20aの中心軸と、第1のガイド部5の溝5a(5a´)に載置された注入針30a(30a´)の中心軸が概ね一致するため、注入針30a(30a´)をマイクロピペット20の開口部20aに挿入可能になる(
図6参照)。このように溝5a(5a´)は、溝5a(5a´)に注入針30a(30a´)が載置された状態において、第2のガイド部7に載置されたマイクロピペット20と注入針30a(30a´)とが水平に維持され、注入針30a(30a´)が開口部20aに挿入可能になるような位置に形成されている。注入針30a(30a´)を開口部20aに挿入可能とするには、少なくとも注入針30a(30a´)の内径は開口部20aの内径よりも小さいことが必要であるが、注入針30a(30a´)の外径に対しての開口部20aの内径の範囲は適宜設計される。
【0026】
ここで、注入針30a(30a´)が開口部20aの内径の範囲内に挿入されれば注入針30a(30a´)はマイクロピペット20の開口部20aに挿入された状態となる。この挿入状態は、上記したように、マイクロピペット20の開口部20aの上端近傍に注入針30a(
図7、
図8の上側の注入針)が挿入される場合と、開口部20aの下端近傍に注入針30a´(
図7、
図8の下側の注入針)が挿入される場合が考えられる。そして両者では、マイクロピペット収納部2の底部2aから第1のガイド部の溝の溝底までの高さが異なる。すなわち、開口部20aの内径の範囲内に、溝5a(5a´)に載置された状態における注入針30a(30a´)の径方向上端部(径方向下端部)が位置すればよい。なお、溝の角度は概ね90度~150度の間で設計されることが好ましい。
【0027】
なお、溝5a(5a´)の深さはそれぞれ注入針30a(30a´)を載置した後に注入針30a(30a´)のそれぞれが溝5a(5a´)から外れない程度の深さであればよい。また、溝5a(5a´)の断面形状は注入針30a(30a´)を載置可能な形状であればU字形状、V字形状に限定されず、例えば略コの字形状のようなものであってもよい。
【0028】
(第1のガイド部の変形例)
また、第1のガイド部5に溝5aを形成しない構造としてもよい。
図9はこの変形例を説明するための図であり、以下に注射針が上限位置に載置された場合と下限位置に載置された場合のそれぞれのケースについて説明する。なお、上限位置に載置された注射針の符号を30aとし、対応する第1のガイド部の符号を5とし、下限位置に載置された注射針の符号を30a´とし、対応する第1のガイド部の符号を5´とする。
【0029】
マイクロピペット収容部2の底部2aから第1のガイド部5(5´)の上端部5c(5c´)までの高さをHa(Ha´)とし、マイクロピペット収容部2の底部2aから第2のガイド部7の頂頭部7aまでの高さをHbとすると、マイクロピペット20の開口部20aの中心軸と第1のガイド部5(5´)の上端部に載置された注入針30a(30a´)の中心軸を概ね一致させるためにはHa(Ha´)とHbの関係は以下の関係となることが必要となる。
【0030】
(HaとHbの関係)
高さHaは、高さHbにマイクロピペット20の外径D3を加算した高さ(Hb+D3)からマイクロピペット20の肉厚Tと注入針30aの外径D2を減じた高さとすることが好ましく、その高さHaが上限値となる。
【0031】
(Ha´とHbの関係)
高さHa´は、高さHbにマイクロピペット20の肉厚Tを加算した高さ(Hb+T)が好ましく、その高さHa´が下限値となる。
【0032】
第2のガイド部7は、断面長方形状の柱状部材(突起)である。薬液のマイクロピペット20内への注入作業時において頭頂部(上端面)7aにはマイクロピペット20の開口部20aを含む先端部が載置される(
図4、
図5参照)。また、断面形状はマイクロピペット20の開口部20aを載置可能な形状であれば断面略長方形状に限定されず、例えば断面円形状、断面楕円形状のようなものであってもよい。
【0033】
第1の保持部9は、断面U字状の突起であり、
図3に示すようにマイクロピペット20の開口部20aより針の先端部20b側に向かって所定距離離れた部分(第1の保持部分20d)を載置するための略U字形状の溝9aが形成されている。また、溝9aの底部から鉛直下方向に向かって切り欠き9bが形成されている。第1の保持部9の高さは少なくとも第2のガイド部7の高さ(底部2aから頂頭部7aまでの高さ)より高く、切り欠き9bの最下部9cの高さ(マイクロピペット収納部2の底面から切り欠き9bの最下部9cまでの距離)は少なくとも第2のガイド部7の高さ(上記と同様)よりも低くする必要がある。この理由は、切り欠きの最下部9cの高さが第2のガイド部7の高さよりも高いとマイクロピペット20を第2のガイド部7に載置し、第1の保持部9および第2の保持部11に保持する場合にマイクロピペット20が水平にならなくなるからである。
【0034】
第1の保持部分20dの保持は、マイクロピペット20の第1の保持部分20dを溝9aの底部まで移動させた後に鉛直下方向にわずかな力を加えて切り欠き9bに沿って下方向に移動させ、第2のガイド部7の頂頭部7aの高さと同じ高さになったときに第1の保持部分20dの下降が停止する。これは載置部分20cが第2のガイド部7の上端面にあるためマイクロピペット20の下方向への移動が規制されるからである。
【0035】
したがって、第1の保持部9を設けることによって、マイクロピペット20が第2のガイド部7の頂頭部7aの高さと同じ高さに維持され、かつ、水平に維持されるので、注入針30aの先端を通る水平線がマイクロピペット20の開口部20a内を通過するため、注入針30aの先端を開口部20a側へ移動させた場合に確実に注入針30aの先端を開口部20a内に挿入させることができる。
【0036】
第2の保持部11は、断面U字状の突起であり、
図3に示すようにマイクロピペット20の開口部20aより針側に向かって所定距離離れた部分(第2の保持部分20e)を載置するための略U字形状の溝11aが形成されている。第2の保持部11の高さは第2のガイド部7の高さ(上記と同様)より高く、切り欠き11bの最下部11cの高さ(マイクロピペット収納部2の底面から切り欠き11bの最下部11cまでの距離)は少なくとも第2のガイド部7の高さよりも低くする必要がある。この理由は、切り欠きの最下部11cの高さが第2のガイド部7の高さよりも高いとマイクロピペット20を第2のガイド部7に載置し、第1の保持部9および第2の保持部11に保持する場合にマイクロピペット20が水平にならなくなるからである。
【0037】
第2の保持部分20eの保持は、マイクロピペット20の第2の保持部分20eを溝11aの底部まで移動させた後に鉛直下方向にわずかな力を加えて切り欠き11bに沿って下方向に移動させ、第2のガイド部7の頂頭部7aの高さと同じ高さになったときに第2の保持部分20eの下降が停止する。これは載置部分20cが第2のガイド部7の上端面にあるためマイクロピペット20の下方向への移動が規制されるからである。
【0038】
したがって、第1の保持部9に加えてさらに第2の保持部11を設けることによって、マイクロピペット20が第2のガイド部7の頂頭部7aの高さと同じ高さに確実に維持され、かつ、水平に確実に維持されるので、注入針30aの先端を通る水平線がマイクロピペット20の開口部20a内を通過するため、注入針30aの先端を開口部20a側へ移動させた場合により一層確実に注入針30aの先端を開口部20a内に挿入させることができる。
【0039】
[シリンジ30内の薬液のマイクロピペット20内への注入作業]
シリンジ30内に収容されている薬液のマイクロピペット20内への注入作業が開始される前においては、ピペットケース1にはマイクロピペット20が収容・保持されている状態である。より詳細にはマイクロピペット収容部2の係合凹部15に蓋部3の係合爪17が係合されマイクロピペット収容部2の開口が塞がっている状態である。
【0040】
注入作業は、以下のステップで行われる。
(第1ステップ)
まずピペットケース1の蓋部3を開けた状態でシリンジ30の注入針30aの先端を第1のガイド部5の略U字形状の溝5aに載置する。このときマイクロピペット20の開口部20a側(例えば載置部分20c)は第2のガイド部7の上端面に載置され、マイクロピペット20の第1の保持部分20dは第1の保持部9に保持され、第2の保持部分20eは第2の保持部11に保持され、マイクロピペット20は水平状態となっている。
【0041】
(第2ステップ)
シリンジ30の注入針30aの先端をマイクロピペット20の開口部20aに向けて略U字形状の溝5aを沿わせて移動させ、注入針30aの先端を開口部20aに挿入させる。注入針30aの先端がある程度開口部20a内に挿入された後に、シリンジ30内の薬液をマイクロピペット20内に注入する。
【0042】
(第3ステップ)
薬液注入作業が終了すると、シリンジ30の注入針30aをマイクロピペット20から引き抜いて、薬液の入ったマイクロピペット20をピペットケース1から取り出して、マイクロピペット20をマニュピレータ(図示せず)に装着する。
【0043】
<作用・効果>
本実施の形態では、シリンジ30の注入針30aの先端は、第1のガイド部5の略U字形状の溝5aに載置される。一方、マイクロピペット20の開口部20a側は、第2のガイド部7の上端面に載置される。ここで、第2のガイド部7の頂頭部7aにマイクロピペット20の開口部20a側が載置された状態において第1のガイド部5の略U字形状の溝5aに挟持(保持)させたまま注入針30aの先端を開口部20a側に移動させた場合、注入針30aの先端を通る水平線とマイクロピペット20の開口部20aを通る水平線が概ね重なっている(注入針30aの先端を通る水平線が開口部20a内を通過する)ので、確実に注入針30aの先端は開口部20a内に挿入される。したがって、シリンジ30の先端の注入針30aのマイクロピペット20の開口部への挿入は容易になる。この結果、シリンジ30内の薬液のマイクロピペット20内への注入作業にかかる時間を短縮し、薬液注入作業効率の向上を図ることができる
【0044】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 ピペットケース
2 マイクロピペット収容部
2a 底面
3 蓋部
4 開口
5 第1のガイド部
5a 溝(凹部)
5b 溝底
5c 上端部
7 第2のガイド部
7a 頭頂部
9 第1の保持部
9a 溝(凹部)
9b 切り欠き(スリット)
9c 最下部
10 接続部
11 第2の保持部
11a 溝(凹部)
11b 切り欠き(スリット)
11c 最下部
15 係合凹部
17 係合爪
20 マイクロピペット
20a 開口部
20b 針の先端部
20c 載置部分
20d 第1の保持部分
20e 第2の保持部分
30 シリンジ
30a 注入針