(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080014
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240606BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192820
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健一
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770BA01
5H770CA01
5H770CA06
5H770PA12
5H770PA22
5H770QA02
5H770QA06
5H770QA12
5H770QA21
5H770QA28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】樹脂製の筐体を使用することで軽量化が可能で、かつ、バスバーの冷却性を向上可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】インテリジェントパワーモジュールと、コンデンサと、リアクトルと、DCDCコンバータと、本体ケースと、を備える電力変換装置において、電力変換を行う機器本体部5bを有し、リアクトルの側方で、インテリジェントパワーモジュールの下方に配置されているDCDCコンバータ5と、機器本体部5bを収容すると共に冷媒流路Rを形成する樹脂製の筐体30と、筐体30にモールドされた部位を有するバスバー31と、を備える。バスバー31は、筐体30にモールドされた部位の少なくとも一部を、冷媒流路R中の冷媒Xに伝熱可能な位置に設けることで、冷却性を向上させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換を行う電子部品と、
前記電子部品を収容すると共に冷媒流路を形成する樹脂製の筐体と、
前記筐体にモールドされた部位を有するバスバーと
を備え、
前記バスバーは、前記筐体にモールドされた部位の少なくとも一部が前記冷媒流路中の冷媒に伝熱可能な位置に設けられている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記冷媒流路中に突出する突出部を有し、
前記バスバーの少なくとも一部は、前記突出部の内部にモールドされている
ことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記冷媒流路の内壁面から前記冷媒流路中に帯状に突出するフィン状に形成されており、
前記バスバーの少なくとも一部は、帯状に形成されており、幅方向が前記突出部の突出方向に沿うように前記突出部の内部にモールドされている
ことを特徴とする請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
複数の前記バスバーを備え、
各々の前記バスバーごとにフィン状の前記突出部が設けられている
ことを特徴とする請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記バスバーと前記電子部品との間に位置する金属製のシールド板を備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記シールド板は、前記電子部品が搭載されるベースプレートである
ことを特徴とする請求項5記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記筐体は、前記冷媒流路中に突出する前記突出部を有し、
前記バスバーの少なくとも一部は、前記突出部の内部にモールドされ、
前記シールド板は、前記突出部を間に挟むように位置する複数の突出フィンを有する
ことを特徴とする請求項5記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記筐体は、前記突出部を複数有し、
前記筐体は、隣り合う前記突出部の間に位置する前記突出フィンを有する
ことを特徴とする請求項7記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バスバーを備える電力変換装置が開示されている。特許文献1に開示された電力変換装置は、冷媒流路部を備える箱体を備え、箱体の内部空間にバスバーを収容する。また、特許文献1に開示された電力変換装置は、箱体と別体の樹脂によってバスバーをモールドしており、放熱樹脂を介してバスバーの熱を冷媒流路部に伝えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された電力変換装置では、箱体の一部を樹脂で形成してもよいことが記載されている。箱体の一部を樹脂で形成することで、箱体の全体を金属で形成する場合よりも、電力変換装置を軽量化することができる。しかしながら、特許文献1に開示された電力変換装置は、バスバーが樹脂によってモールドされているものの、バスバーをモールドする樹脂が、冷媒流路部を備える箱体とは別体である。このため、特許文献1に開示された電力変換装置は、バスバーの熱が冷媒流路部に伝わり難い。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、軽量化が可能でかつバスバーの冷却性を向上可能な電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の一態様は、電力変換装置であって、電力変換を行う電子部品と、上記電子部品を収容すると共に冷媒流路を形成する樹脂製の筐体と、上記筐体にモールドされた部位を有するバスバーとを備え、上記バスバーは、上記筐体にモールドされた部位の少なくとも一部が上記冷媒流路中の冷媒に伝熱可能な位置に設けられているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、電子部品を収容する筐体が樹脂で形成されている。このため、筐体が金属で形成されている場合と比較して電力変換装置を軽量化することができる。また、さらに、本発明の一態様によれば、冷媒流路を形成する筐体にバスバーがモールドされている。このため、筐体と別体の樹脂によってバスバーをモールドする場合と比較して、バスバーを冷媒流路に近づけることができ、バスバーを冷媒に伝熱可能な位置に設けることができる。したがって、本発明の一態様によれば、軽量化が可能でかつバスバーの冷却性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態における電力変換装置の概略的な構成を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における電力変換装置が備えるバスバーの冷却部位を含む模式的な断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における電力変換装置が備えるバスバーを模式的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の第2実施形態における電力変換装置が備えるバスバーの冷却部位を含む模式的な断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態における電力変換装置が備えるバスバーを模式的に示す斜視図である。
【
図6】本発明の第3実施形態における電力変換装置が備えるバスバーの冷却部位を含む模式的な断面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態における電力変換装置が備えるバスバーの冷却部位を含む模式的な断面図である。
【
図8】本発明の第5実施形態における電力変換装置が備えるバスバーの冷却部位を含む模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る電力変換装置の一実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の電力変換装置1の概略的な構成を示す分解斜視図である。電力変換装置1は、電気自動車等の車両に搭載され、不図示のモータ(負荷)とバッテリとの間に設けられている。このような電力変換装置1は、
図1に示すように、インテリジェントパワーモジュール2と、コンデンサ3と、リアクトル4と、DCDCコンバータ5と、本体ケース6とを備えている。
【0012】
インテリジェントパワーモジュール2は、パワーモジュール20、ゲートドライバ基板21、ECU基板22等を備えている。パワーモジュール20は、パワー半導体素子を有する複数のパワーデバイス20aと、これらのパワーデバイス20aを収容する樹脂製のパワーモジュールケース20bと、パワーデバイス20aと接続されたパワーモジュール用バスバー20cとを備えている。また、パワーモジュール20は、パワーモジュール用バスバー20cの短絡を防ぐ絶縁樹脂部材、及び、冷却用のウォータジャケット等を備えている。
【0013】
ゲートドライバ基板21は、パワーデバイス20aによって形成される昇降圧コンバータやインバータの駆動信号を生成するゲートドライバが設けられた基板である。このようなゲートドライバ基板21は、パワーモジュール20に積層されている。ECU基板22は、ゲートドライバ基板21の制御を行うECU(Electronic Control Unit)が設けられた基板である。このECU基板22は、ゲートドライバ基板21に積層されている。
【0014】
コンデンサ3は、インテリジェントパワーモジュール2と接続されており、パワーモジュール20の側方に配置されている。リアクトル4は、インテリジェントパワーモジュール2の下方に配置されている。
【0015】
DCDCコンバータ5は、リアクトル4の側方であって、インテリジェントパワーモジュール2の下方に配置されている。なお、DCDCコンバータ5は、バッテリ電力を周囲の機器(ゲートドライバ基板21やECU基板22に実装された電子部品等)に適した電圧に変換する。
【0016】
本実施形態においてDCDCコンバータ5は、ベースプレート5a(シールド板)と、機器本体部5b(電子部品)とを備えている。ベースプレート5aは、機器本体部5bが固定される金属製のプレートである。
【0017】
本実施形態においてベースプレート5aは、後述の冷媒流路Rの一部を形成する。また、本実施形態においてベースプレート5aは、機器本体部5bで生じた電磁波を遮蔽するシールド板として機能する。ベースプレート5aは、機器本体部5bと後述するバスバー31との間に位置する。つまり、ベースプレート5aは、機器本体部5bで発生した電磁波がバスバー31に入射することを抑止することができる。
【0018】
機器本体部5bは、例えば不図示の高電圧バッテリから出力されるバッテリ電力を、ゲートドライバ基板21やECU基板22に実装された電子部品等に適した電圧に変換する。また、機器本体部5bは、例えば高電圧バッテリから出力されるバッテリ電力を、不図示の空調装置やヘッドライト等の機器に適した電圧に変換する。この機器本体部5bには、例えばトランジスタ等の半導体素子等が設けられている。
【0019】
本体ケース6は、インテリジェントパワーモジュール2、コンデンサ3、リアクトル4及びDCDCコンバータ5を収容するケースであり、上部ケース6aと、中央ケース6bと、下部ケース6cとを備えている。これらの上部ケース6a、中央ケース6b及び下部ケース6cは、パワーモジュール20とゲートドライバ基板21とECU基板22の積層方向に分割可能に接続されている。上部ケース6aは、ECU基板22側からインテリジェントパワーモジュール2を覆っており、中央ケース6bと締結されている。中央ケース6bは、インテリジェントパワーモジュール2、コンデンサ3、リアクトル4及びDCDCコンバータ5の周囲を覆っている。下部ケース6cは、リアクトル4及びDCDCコンバータ5を下方から覆っており、インテリジェントパワーモジュール2と不図示のモータとを接続するための接続コネクタが設けられ、中央ケース6bに締結されている。
【0020】
本実施形態において中央ケース6bは、筐体30と、バスバー31と、コネクタ32とを有している。本実施形態において筐体30は、樹脂によって形成されており、バスバー31及びコネクタ32をモールドしている。つまり、本実施形態においては、バスバー31及びコネクタ32が中央ケース6bに一体化されている。なお、中央ケース6bは、バスバー31やコネクタ32の他に、筐体30にモールドされた端子等を有することもできる。
【0021】
筐体30は、上述のように樹脂によって形成されており、隔壁部30aと、周壁部30bとを有している。隔壁部30aは、本体ケース6の内部を上部空間と下部空間とに区画する壁部である。本実施形態では、インテリジェントパワーモジュール2とコンデンサ3とは、隔壁部30aの上方に位置する。つまり、インテリジェントパワーモジュール2及びコンデンサ3は、本体ケース6の内部空間の上部である上部空間に収容されている。
【0022】
また、リアクトル4とDCDCコンバータ5とは、隔壁部30aの下方に位置する。つまり、リアクトル4及びDCDCコンバータ5は、本体ケース6の内部空間の下部である下部空間に収容されている。
【0023】
隔壁部30aは、配管7(
図1参照)によって案内される冷媒Xを流すための冷媒流路Rを形成する。
図2は、後述するバスバー31の冷却部位31cを含む模式的な断面図である。この図に示すように、本実施形態においては、冷媒流路Rは、隔壁部30aとDCDCコンバータ5のベースプレート5aとの間に形成されている。つまり、冷媒流路Rの少なくとも一部は、隔壁部30aとベースプレート5aとによって形成されている。
【0024】
また、隔壁部30aは、ベースプレート5aよりも上方に位置し、ベースプレート5aに上方から対向配置されている。この隔壁部30aは、冷媒流路Rの上部を形成している。ベースプレート5aは、隔壁部30aよりも下方に位置し、隔壁部30aに下方から対向配置されている。このベースプレート5aは、冷媒流路Rの下部を形成している。
【0025】
図2に示すように、本実施形態において隔壁部30aは、冷媒流路Rに向けて上方から下方に向けて突出する複数の冷却フィン30cを有している。これらの冷却フィン30cは、冷却フィン30cが設けられていない場合と比較して、隔壁部30aの表面を増大させるものである。冷却フィン30cが設けられることで隔壁部30aと冷媒Xとの接触面積が増大し、隔壁部30aと冷媒Xとの熱交換効率が向上される。
【0026】
また、本実施形態において隔壁部30aは、冷媒流路Rに向けて上方から下方に向けて突出する突出ブロック30d(突出部)を有している。この突出ブロック30dは、バスバー31の一部(後述する冷却部位31c)をモールドする。本実施形態においては、
図2に示すように、一方のバスバー31の冷却部位31cと他方のバスバー31の冷却部位31cとの両方が、1つの突出ブロック30dにモールドされている。
【0027】
一方のバスバー31の冷却部位31cと他方のバスバー31の冷却部位31cとは、各々が帯状に形成されている。これらの冷却部位31cは、表裏面を上下方向に向けて互いに平行となるように配置されている。つまり、突出ブロック30dは、帯状に形成されて互いに平行となるように上下に配列された2つのバスバー31の冷却部位31cを内部に含むようにモールドしている。
【0028】
本実施形態においては、突出ブロック30dは、下端がベースプレート5aに接触しない突出量で形成されている。つまり、突出ブロック30dとベースプレート5aとの間には隙間が設けられている。このように、突出ブロック30dとベースプレート5aとの間に隙間が設けられることで、車両の走行振動等によって突出ブロック30dがベースプレート5aに接触することを抑止し、異音の発生を抑止できる。
【0029】
ただし、突出ブロック30dの突出量は、下端がベースプレート5aに当接するように設定してもよい。このような突出ブロック30dの突出量は、例えば冷却フィン30cと同一に設定できる。
【0030】
このように本実施形態では、突出ブロック30dが冷媒流路R中に突出して設けられており、突出ブロック30dの内部にバスバー31の一部である冷却部位31cが位置する。つまり、本実施形態においてバスバー31の一部は、冷媒流路R中に位置している。このようなバスバー31の冷却部位31cは、冷媒流路Rを流れる冷媒Xの極めて近くに位置する。つまり、バスバー31の冷却部位31cは、冷媒Xに伝熱可能な位置に設けられている。
【0031】
例えば、バスバー31は、冷媒Xまでの距離がバスバー31の幅寸法よりも小さいと、筐体30にモールドされた状態で冷媒Xに伝熱可能である。このため、バスバー31の冷却部位31cをモールドする突出ブロック30dは、外表面の少なくとも一部からバスバー31の表面位置までの距離寸法がバスバー31の幅寸法よりも小さくなるように形成されている。
【0032】
上述のように筐体30の隔壁部30aとベースプレート5aとの間に設けられた冷媒流路Rには、入口開口と出口開口が設けられている。入口開口と出口開口との各々には、配管7が接続されている。入口開口に接続された配管7から冷媒Xが冷媒流路Rに供給され、出口開口に接続された配管7から冷媒Xが冷媒流路Rから排出される。
【0033】
このような冷媒Xは、インテリジェントパワーモジュール2、コンデンサ3、リアクトル4及びDCDCコンバータ5から熱を受け取り、受け取った熱を電力変換装置1の外部に排出する。冷媒Xは、例えばクーラントや水を用いることができる。
【0034】
図1に示すように、周壁部30bは、上下方向から見て、隔壁部30aを囲むように設けられた壁部である。周壁部30bは、上部が隔壁部30aよりも上方に突出し、下部が隔壁部30aよりも下方に突出している。周壁部30bの上部は、上部ケース6aに接続されている。また、周壁部30bの下部は、下部ケース6cに接続されている。
【0035】
図3は、バスバー31を模式的に示す斜視図である。バスバー31は、コネクタ32を介して外部の高電圧バッテリと接続される配線部であり、インテリジェントパワーモジュール2、コンデンサ3、リアクトル4及びDCDCコンバータ5と電気的に接続される。バスバー31は、高電圧バッテリの正極に接続されるものと、高電圧バッテリの負極に接続されるものとの2つ設けられている。
【0036】
各々のバスバー31は、帯状に形成されている。各々のバスバー31の一端部は、コネクタ32と接続される端子部31aである。また、各々のバスバー31の他端部は、本体ケース6の内部機器(インテリジェントパワーモジュール2、コンデンサ3、リアクトル4及びDCDCコンバータ5)と接続される端子部31bである。
【0037】
各々のバスバー31は、端子部31aと端子部31bとの間に、冷却部位31cを有する。つまり、冷却部位31cは、端子部31aと端子部31bとの間に位置するバスバー31の一部である。
【0038】
各々の冷却部位31cは、上下方向から見て、バスバー31の冷媒流路Rと重なる部位である。各々の冷却部位31cは、上下方向から見て、冷媒流路Rを跨ぐように配設されている。これらの冷却部位31cは、上述のように冷媒流路Rに突出して設けられた筐体30の突出ブロック30dに内包されている。
【0039】
図3に示すように、本実施形態においては、一方のバスバー31の冷却部位31cと、他方のバスバー31の冷却部位31cとは、各々が表裏面を上下方向に向けるようにして、平行に配置されている。つまり、一方のバスバー31の冷却部位31cと他方のバスバー31の冷却部位31cとは、上下方向に配列されている。
【0040】
このような本実施形態の電力変換装置1においては、冷媒流路Rの内部に供給された冷媒Xによって、インテリジェントパワーモジュール2、コンデンサ3、リアクトル4及びDCDCコンバータ5が冷却される。さらに、バスバー31は、本体ケース6が備える筐体30にモールドされ、冷却部位31cが突出ブロック30dに埋設されている。このため、バスバー31が冷媒Xによって冷却される。
【0041】
以上のような本実施形態の電力変換装置1は、DCDCコンバータ5の機器本体部5bと、本体ケース6の筐体30と、バスバー31とを備えている。DCDCコンバータ5の機器本体部5bは、電力変換を行う。筐体30は、機器本体部5bを収容すると共に冷媒流路Rを形成する。バスバー31は、筐体30にモールドされた部位を有する。また、本実施形態の電力変換装置1において、バスバー31は、筐体30にモールドされた部位の少なくとも一部(本実施形態では冷却部位31c)が冷媒流路R中の冷媒Xに伝熱可能な位置に設けられている。
【0042】
このような本実施形態の電力変換装置1によれば、機器本体部5bを収容する筐体30が樹脂で形成されている。このため、筐体30が金属で形成されている場合と比較して電力変換装置1を軽量化することができる。また、本実施形態の電力変換装置1によれば、冷媒流路Rを形成する筐体30にバスバー31がモールドされている。
【0043】
このため、筐体30と別体の樹脂によってバスバー31をモールドする場合と比較して、バスバー31を冷媒流路Rに近づけることができ、バスバー31を冷媒Xに伝熱可能な位置に設けることができる。したがって、本実施形態の電力変換装置1によれば、軽量化が可能でかつバスバー31の冷却性能を向上させることができる。
【0044】
このようにバスバー31の冷却性能が向上されることで、バスバー31の断面積を小さくすることが可能となる。このため、例えばバスバー31の幅を小さくすることが可能となる。したがって、さらに電力変換装置1を軽量化することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態の電力変換装置1においては、バスバー31が樹脂製の筐体30にモールドされている。このような電力変換装置1によれば、例えば、インサート成形によってバスバー31を筐体30に一体化することができる。したがって、本実施形態の電力変換装置1によれば、電力変換装置1の組立工程において、バスバー31を本体ケース6に接続する工程を別途行わなくてもよい。よって、電力変換装置1の組立作業を簡素化することができる。また、バスバー31が筐体30に一体化されるため、部品点数を削減することが可能である。
【0046】
また、バスバー31が筐体30にモールドされることで、バスバー31を本体ケース6の外側に配設する必要がなくなる。このため、本実施形態の電力変換装置1によれば、本体ケース6の外側にバスバー31やバスバー31をモールドする別体の樹脂カバーを設ける必要がなくなる。このため、本実施形態の電力変換装置1によれば、バスバー31を本体ケース6の外側に配設する場合と比較して、装置を薄型化することができる。また、電力変換装置1の剛性を向上させることも可能である。
【0047】
また、バスバー31は、筐体30の内部を通過させるように配設することができる。このため、バスバー31を筐体30にモールドすることによって、バスバー31の配設の自由度が向上する。
【0048】
また、本実施形態においては、筐体30が樹脂によって形成されているため、バスバー31の他にも、コネクタ32や不図示の端子を筐体30に一体化することができる。このため、本実施形態の電力変換装置1によれば、さらに部品点数の削減や組立工程の簡素化が可能となる。
【0049】
また、本実施形態の電力変換装置1において、筐体30は、冷媒流路R中に突出する突出ブロック30dを有する。また、バスバー31の一部である冷却部位31cは、突出ブロック30dの内部にモールドされている。このような本実施形態の電力変換装置1によれば、バスバー31をより冷媒Xに近づけて配置できると共に、バスバー31の周囲の広い範囲に冷媒Xが存在することなり、バスバー31の冷却性能がさらに向上されることになる。
【0050】
また、本実施形態の電力変換装置1は、バスバー31と機器本体部5bとの間に位置する金属製のベースプレート5aを備える。このため、高圧バッテリから出力される電力を扱う機器本体部5bから発生される電磁波をベースプレート5aで遮蔽することができる。したがって、バスバー31を流れる電流が機器本体部5bにて発生した電磁波の影響を受けることを抑止し、バスバー31にノイズ成分がのることを抑止することができる。
【0051】
また、本実施形態の電力変換装置1は、DCDCコンバータ5のベースプレート5aが機器本体部5bで発生する電磁波を遮蔽する。このため、電磁波を遮蔽するシールド板をベースプレート5aと別に設ける必要がない。このため、DCDCコンバータ5と別体のシールド板を備える場合と比較して、電力変換装置1を小型化することが可能となる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の構成については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0053】
図4は、本実施形態のバスバー31の冷却部位31cを含む模式的な断面図である。また、
図5は、本実施形態のバスバー31を模式的に示す斜視図である。これらの図に示すように、本実施形態においてバスバー31は、幅方向を上下方向とした部位を有している。本実施形態では、このバスバー31の幅方向を上下方向とした部位の一部が冷却部位31cである。
【0054】
図4に示すように、筐体30は、上記第1実施形態の突出ブロック30dに換えてバスバー用冷却フィン30eを有している。バスバー用冷却フィン30eは、冷媒流路R中に突出する突出部である。
【0055】
バスバー用冷却フィン30eは、バスバー31の冷却部位31cをモールドする。本実施形態において、バスバー用冷却フィン30eは、各々のバスバー31ごとに設けられている。つまり、バスバー用冷却フィン30eは、本実施形態において2つ設けられている。
【0056】
各々のバスバー用冷却フィン30eは、冷媒流路R中に突出する突出部であり、冷媒流路Rの内壁面から冷媒流路R中に帯状に突出するフィン状に形成されている。このような各々のバスバー用冷却フィン30eは、同様に帯状に形成されたバスバー31の冷却部位31cをモールドしている。一方のバスバー用冷却フィン30eには、一方のバスバー31の冷却部位31cがモールドされている。また、他方のバスバー用冷却フィン30eには、他方のバスバー31の冷却部位31cがモールドされている。
【0057】
本実施形態では、バスバー31の一部である冷却部位31cは、帯状に形成されており、幅方向がバスバー用冷却フィン30eの突出方向(上下方向)に沿うように、バスバー用冷却フィン30eの内部にモールドされている。
【0058】
なお、各々のバスバー用冷却フィン30eは、下端がベースプレート5aに接触しない突出量で形成されている。つまり、バスバー用冷却フィン30eとベースプレート5aとの間には隙間が設けられている。このように、バスバー用冷却フィン30eとベースプレート5aとの間に隙間が設けられることで、車両の走行振動等によってバスバー用冷却フィン30eがベースプレート5aに接触することを抑止し、異音の発生を抑止できる。
【0059】
このような本実施形態の電力変換装置においても、上記第1実施形態と同様に、バスバー31は、筐体30にモールドされた部位を有する。また、本実施形態の電力変換装置において、バスバー31は、筐体30にモールドされた部位の少なくとも一部(本実施形態では冷却部位31c)が冷媒流路R中の冷媒Xに伝熱可能な位置に設けられている。このような本実施形態の電力変換装置によれば、筐体30と別体の樹脂によってバスバー31をモールドする場合と比較して、バスバー31を冷媒流路Rに近づけることができ、バスバー31を冷媒Xに伝熱可能な位置に設けることができる。したがって、本実施形態の電力変換装置によれば、軽量化が可能でかつバスバー31の冷却性能を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態の電力変換装置において、バスバー用冷却フィン30eは、冷媒流路Rの内壁面から冷媒流路R中に帯状に突出するフィン状に形成されている。また、バスバー31の一部である冷却部位31cは、帯状に形成されており、幅方向が突出ブロック30dの突出方向に沿うように突出ブロック30dの内部にモールドされている。
【0061】
このような本実施形態の電力変換装置においては、2つのバスバー31から冷媒Xまでの距離を均等にすることができる。したがって、2つのバスバー31を均等に冷却するkとが可能となる。
【0062】
また、本実施形態の電力変換装置は、複数のバスバー31を備えている。また、各々のバスバー31ごとにバスバー用冷却フィン30eが設けられている。このため、バスバー用冷却フィン30e同士の間にも冷媒Xが流入し、バスバー31の冷却効率をさらに向上させることができる。
【0063】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第2実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0064】
図6は、本実施形態のバスバー31の冷却部位31cを含む模式的な断面図である。この図に示すように、本実施形態の電力変換装置において、ベースプレート5aは、2つのバスバー用冷却フィン30eを水平方向にて挟むように位置する複数の突出フィン5a1を有する。
【0065】
つまり、ベースプレート5aは、2つのバスバー用冷却フィン30eの水平方向の一方側に位置する突出フィン5a1と、2つのバスバー用冷却フィン30eの水平方向の他方側に位置する突出フィン5a1とを有する。
【0066】
各々の突出フィン5a1は、下方から上方に向けてフィン状に突出して形成された部位であり、バスバー用冷却フィン30eと平行に延びるように形成されている。なお、各々の突出フィン5a1は、上端が筐体30に接触しない突出量で形成されている。
【0067】
つまり、突出フィン5a1と筐体30との間には隙間が設けられている。このように、突出フィン5a1と筐体30との間に隙間が設けられることで、車両の走行振動等によって突出フィン5a1が筐体30に接触することを抑止し、異音の発生を抑止できる。
【0068】
各々の突出フィン5a1は、金属製のベースプレート5aの一部である。このため、各々の突出フィン5a1は、金属によって形成されている。これらの突出フィン5a1は、バスバー31の冷却部位31cに対して側方から電磁波が入射することを抑制する。
【0069】
このように、本実施形態の電力変換装置において、筐体30は、冷媒流路R中に突出するバスバー用冷却フィン30eを有している。また、バスバー31の一部である冷却部位31cは、バスバー用冷却フィン30eの内部にモールドされている。さらに、ベースプレート5aは、バスバー用冷却フィン30eを間に挟むように位置する複数の突出フィン5a1を有している。
【0070】
このような本実施形態の電力変換装置によれば、DCDCコンバータ5の機器本体部5bで発生した電磁波は、突出フィン5a1によって遮蔽される。したがって、バスバー31に流れる電流が、DCDCコンバータ5の機器本体部5bで発生した電磁波の影響を受けることをさらに抑止することができる。
【0071】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第3実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0072】
図7は、本実施形態のバスバー31の冷却部位31cを含む模式的な断面図である。この図に示すように、本実施形態の電力変換装置においては、ベースプレート5aが、一方のバスバー用冷却フィン30eと他方のバスバー用冷却フィン30eとの間に位置する突出フィン5a1を備えている。つまり、本実施形態において、筐体30は、隣り合うバスバー用冷却フィン30eの間に位置する突出フィン5a1を有する。
【0073】
このような本実施形態の電力変換装置によれば、一方のバスバー用冷却フィン30eと他方のバスバー用冷却フィン30eとの間に位置する突出フィン5a1を備えない場合と比較して、バスバー31への電磁波の入射をより抑制することができる。したがって、バスバー31に流れる電流が、DCDCコンバータ5の機器本体部5bで発生した電磁波の影響を受けることをさらに抑止することができる。
【0074】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0075】
図8は、本実施形態のバスバー31の冷却部位31cを含む模式的な断面図である。この図に示すように、本実施形態の電力変換装置においては、バスバー31の冷却部位31cが、冷媒流路Rの内壁面と平行になるように、筐体30にモールドされている。例えば、バスバー31の冷却部位31cは、冷媒流路Rまでの距離寸法がバスバー31の幅寸法よりも小さくなるように配置されている。
【0076】
このような本実施形態の電力変換装置においても、バスバー31は、筐体30にモールドされた部位を有する。また、本実施形態の電力変換装置において、バスバー31は、筐体30にモールドされた部位の一部(本実施形態では冷却部位31c)が冷媒流路R中の冷媒Xに伝熱可能な位置に設けられている。
【0077】
このような本実施形態の電力変換装置によれば、筐体30と別体の樹脂によってバスバー31をモールドする場合と比較して、バスバー31を冷媒流路Rに近づけることができ、バスバー31を冷媒Xに伝熱可能な位置に設けることができる。したがって、本実施形態の電力変換装置によれば、軽量化が可能でかつバスバー31の冷却性能を向上させることができる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態においては、バスバー31が帯状(板状)である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、バスバーは、断面が円形や正方形の形状であってもよい。
【0080】
また、上記実施形態においては、本体ケース6が備える中央ケース6bの筐体30が樹脂によって形成された構成について説明した。例えば、本体ケース6の上部ケース6a及び下部ケース6cのいずれかあるいは両方が樹脂によって形成される構成を採用することも可能である。
【0081】
また、上記実施形態においては、DCDCコンバータ5のベースプレート5aをシールド板として用いる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明は、DCDCコンバータ5と別体のシールド板を設置する構成を採用することも可能である。また、本発明は、シールド板を設置しない構成を採用することも可能である。
【0082】
なお、上記実施形態については、例えば以下の付記のようにも記載できる。
【0083】
(付記1)
電力変換を行う電子部品と、
前記電子部品を収容すると共に冷媒流路を形成する樹脂製の筐体と、
前記筐体にモールドされた部位を有するバスバーと
を備え、
前記バスバーは、前記筐体にモールドされた部位の少なくとも一部が前記冷媒流路中の冷媒に伝熱可能な位置に設けられている
ことを特徴とする電力変換装置。
【0084】
(付記2)
前記筐体は、前記冷媒流路中に突出する突出部を有し、
前記バスバーの少なくとも一部は、前記突出部の内部にモールドされている
ことを特徴とする付記1記載の電力変換装置。
【0085】
(付記3)
前記突出部は、前記冷媒流路の内壁面から前記冷媒流路中に帯状に突出するフィン状に形成されており、
前記バスバーの少なくとも一部は、帯状に形成されており、幅方向が前記突出部の突出方向に沿うように前記突出部の内部にモールドされている
ことを特徴とする付記2記載の電力変換装置。
【0086】
(付記4)
複数の前記バスバーを備え、
各々の前記バスバーごとにフィン状の前記突出部が設けられている
ことを特徴とする付記3記載の電力変換装置。
【0087】
(付記5)
前記バスバーと前記電子部品との間に位置する金属製のシールド板を備える
ことを特徴とする付記1~4のいずれか一つに記載の電力変換装置。
【0088】
(付記6)
前記シールド板は、前記電子部品が搭載されるベースプレートである
ことを特徴とする付記5記載の電力変換装置。
【0089】
(付記7)
前記筐体は、前記冷媒流路中に突出する前記突出部を有し、
前記バスバーの少なくとも一部は、前記突出部の内部にモールドされ、
前記シールド板は、前記突出部を間に挟むように位置する複数の突出フィンを有する
ことを特徴とする付記5または6記載の電力変換装置。
【0090】
(付記8)
前記筐体は、前記突出部を複数有し、
前記筐体は、隣り合う前記突出部の間に位置する前記突出フィンを有する
ことを特徴とする付記7記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0091】
1……電力変換装置、2……インテリジェントパワーモジュール、3……コンデンサ、4……リアクトル、5……DCDCコンバータ、5a……ベースプレート(シールド板)、5a1……突出フィン、5b……機器本体部(電子部品)、6……本体ケース、6a……上部ケース、6b……中央ケース、6c……下部ケース、7……配管、30……筐体、30a……隔壁部、30b……周壁部、30c……冷却フィン、30d……突出ブロック(突出部)、30e……バスバー用冷却フィン(突出部)、31……バスバー、31a……端子部、31b……端子部、31c……冷却部位、32……コネクタ、R……冷媒流路、X……冷媒