(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080017
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】スカム除去装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/40 20230101AFI20240606BHJP
【FI】
C02F1/40 F
C02F1/40 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192828
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】593093858
【氏名又は名称】西日本高速道路エンジニアリング関西株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊良波 修
【テーマコード(参考)】
4D051
【Fターム(参考)】
4D051AA04
4D051AB03
4D051CA18
4D051CA23
4D051DD07
4D051DD30
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で処理槽の液面に浮上したスカムを沈降させるスカム除去装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るスカム除去装置1は、処理槽9の液面Wに浮かぶ浮力を有する浮体2と、浮体2に設けられ、浮体2を推進させる推力が発生する推力発生部3と、を備える。スカム除去装置1は、推力発生部3によって発生した推力により、処理槽9の液面Wを自在に自走し、液面W上に浮上したスカムSに衝突してスカムSを槽底部に沈降させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面に浮かぶ浮力を有する浮体と、
前記浮体に設けられ、前記浮体を推進させる推力が発生する推力発生部と、を備える、スカム除去装置。
【請求項2】
前記浮体は、水平方向の横断面が円形である、請求項1に記載のスカム除去装置。
【請求項3】
前記推力発生部は、ファンと、前記ファンを回転させる駆動部とを有し、
前記ファンは、液面上に露出する前記浮体の上面に設けられる、請求項1又は2に記載のスカム除去装置。
【請求項4】
前記スカム除去装置は、前記推力発生部に電気接続して電力を供給する電力供給部をさらに備え、
前記電力供給部は、太陽電池パネルを有する、請求項3に記載のスカム除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理槽の液面に浮かぶスカムを除去するスカム除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以前より、浄化槽などの処理槽の液面に発生したスカムを掻き寄せ具が掻き寄せ、破砕具が掻き寄せられたスカムを破砕し、汚泥として沈降させるスカム除去装置が存在している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のスカム除去装置を備えた処理槽へ改装したり、従来のスカム除去装置を処理槽に設置したりするためには多額の費用が必要となるため、スカムを除去するための装置が備えられていない処理槽が存在する。そのような処理槽では、人力による水散布等でスカムを沈降させるスカム除去作業を所定の期間ごとに行わなければならず、多くの時間と労力をスカム除去作業に費やさなければならないという課題があった。
【0005】
本発明は、簡便な構成で処理槽の液面に浮上したスカムを沈降させるスカム除去装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスカム除去装置は、液面に浮かぶ浮力を有する浮体と、前記浮体に設けられ、前記浮体を推進させる推力が発生する推力発生部と、を備える。
【0007】
この構成によれば、本発明に係るスカム除去装置は、推力発生部によって発生した推力により、処理槽の液面を自在に自走し、液面上に浮上したスカムに衝突してスカムを槽底部に沈降させることができる。
【0008】
また、前記浮体は、水平方向の横断面が円形であることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、浮体は、スカム以外の障害物に衝突しても浮体の曲線がスカム除去装置の推進方向をずらし、障害物で止まることなく、自在に自走させることができる。
【0010】
また、前記推力発生部は、ファンと、前記ファンを回転させる駆動部とを有し、前記ファンは、液面上に露出する前記浮体の上面に設けられることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、スカム除去装置は、ファンが液面上に露出する浮体の上面に設けられることから、液中のゴミなどに絡まらなくなる。
【0012】
また、前記スカム除去装置は、前記推力発生部に電気接続して電力を供給する電力供給部をさらに備え、前記電力供給部は、太陽電池パネルを有することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、推力発生部が必要な電力を電力供給部が太陽電池パネルによって発電することで、スカム除去装置は、太陽光の照射がある限り、スカム除去装置を液面上で継続的に自走させる電力を供給することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスカム除去装置は、簡便な構成で処理槽の液面に浮上したスカムを沈降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るスカム除去装置を示す斜視図である。
【
図2】処理槽の液面上に浮かぶ
図1に示したスカム除去装置を示す模式図である。
【
図3】
図1に示したスカム除去装置が槽壁に接触する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るスカム除去装置を示す斜視図である。
図1で示すスカム除去装置1には、浮体2と、推力発生部3と、電力供給部4とが備えられる。
【0018】
浮体2は、押出発泡ポリスチレンで構成され、処理槽9の液面Wに浮かぶ浮力を有するとともに、水平方向の横断面が円形である形状を有する。液面Wに露出する浮体2の上面20には、推力発生部3が設けられる第1の台座21と、電力供給部4が設けられる第2の台座22とが形成される。
【0019】
推力発生部3は、ファン31と、ファン31を回転させる駆動部32と、プラスチックで構成されファン31の回転方向に囲うケーシング33とを有する。ファン31は、ポリプロピレン(polypropylene、PP)など軽量なプラスチックで構成される。駆動部32は、DCモータなど一方向に回転するモータである。ケーシング33は、ファン31に等しいプラスチックで構成され、ファン31が空気を吸い込む吸込み口331及びファン31が空気を吹き出す吹出し口332が形成される。
【0020】
電力供給部4は、ファン31を回転させるために必要な電力を発電する第1、第2の太陽電池パネル41,42と、駆動部32に電気接続して第1,2の太陽電池パネル41,42からの電力を供給する電力ケーブル43とを有する。第1、第2の太陽電池パネル41,42は、並列に接続され、駆動部32に対する電圧を一定にしている。
【0021】
第1の台座21は、駆動部台211と、ケーシング台212とで構成され、駆動部32が駆動部第211に設けられ、ケーシング33がケーシング台212に設けられる。ファン31は、駆動部32から外部に伸びる回転軸(図示されていない)に取付けられ、浮体2の上面20に設けられる。これにより、スカム除去装置1は、液面W上を自走中にファン31が水中に発生した藻や液面表層に漂うゴミなどに絡まらなくなる。
【0022】
第2の台座22は、第1のパネル台221と、第2のパネル台222とで構成され、第1の太陽電池パネル41が第1のパネル台221に設けられ、第2の太陽電池パネル42が第2のパネル台222に設けられる。
【0023】
図2は、処理槽の液面上に浮かぶ
図1に示したスカム除去装置を示す模式図である。
図2で示すスカム除去装置1は、ファン31の回転によって吹出し口332から空気Bが吹出される。スカム除去装置1は、空気Bが吹出される吹出し口332の開口方向に対向する吸込み口331の開口方向に推力Dが発生し、液面W上を自走する。液面W上を自走するスカム除去装置1は、液面W上に浮上したスカムSに衝突してスカムSを処理槽9の底部に沈降させる。
【0024】
図3は、
図1に示したスカム除去装置1が槽壁90に接触する様子を示す模式図である。スカム除去装置1が推力Dによって液面W上を自走していると、厚く積層したスカムや槽壁、障害物などと接触することがある。
図3で示す処理槽9内には、内側が平坦な槽壁90以外にも、液面Wを自走するスカム除去装置1を妨げる様々な障害物91が存在する。障害物91としては、例えば、水の流れを均一にし、沈殿分離した上澄水を均等に流出させるための越流堰や、ポンプなどに連結する配管(図示されていない)などがある。
【0025】
水平方向の横断面が円形でない、例えば四角いプレート形状の浮体2の場合、浮体2の側面が槽壁90の内側に接触すると、たとえ推力Dがあったとしても、スカム除去装置1は、槽壁90で自走が停止してしまう。これに対して、
図3で示す浮体2は、水平方向の横断面が円形である、例えば円盤形状であることから、槽壁90の内側に接触しても、側面に形成された曲線形状及び推力発生部3による推力Dによってスカム除去装置1の推進方向が転換される。従って、スカム除去装置1は、浮体2が水平方向の横断面が円形であることから、槽壁90で停止することなく、処理槽9内を自在に自走させることができる。
【0026】
たとえ、厚く積層したスカムSや処理槽9内に配置された障害物91、又は障害物91などで狭隘となった箇所などでスカム除去装置1が引っ掛かっても、引っ掛かる前の推力発生部3の推進によって引き起こされた液面Wのうねりや風などで、スカム除去装置1が回転し、引っ掛かりから抜け出すことができる。
【0027】
なお、浮体2は、押出発泡ポリスチレンで構成されることが好ましいが、液面に浮かぶことが可能な浮力を有するものであれば、押出発泡ポリスチレンに限定しない。また、浮体2は、円盤形状を形成しているが、扁平な円錐台形状など、水平方向の横断面が円形となる形状であればよい。
【0028】
また、ファン31及びケーシング33は、ポリプロピレン(polypropylene、PP)などの軽量なプラスチックが用いられるが、プラスチックに限らず同等の軽量な素材であればよい。また、駆動部32は、ファン31を回転させることが可能な駆動源であればよく、モータに限らない。また、電力供給部4は、スカム除去装置1上に設けず、外部に設けられた外部電源装置から電力ケーブル43でスカム除去装置1に電力を供給してもよい。
【0029】
また、電力供給部4は、第1、第2の太陽電池パネル41,42で発電した電力を駆動部32に直接供給しているが、蓄電可能な二次電池をさらに有して太陽電池パネルで発電した電力を充電してもよい。これにより、電力供給部4は、二次電池に充電された電力が駆動部32に供給されることから、曇天や夜間など日照が不足な場合であっても、スカム除去装置1が液面W上を自走することができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 スカム除去装置
2 浮体
3 推力発生部
4 電力供給部
9 処理槽
20 上面
21 第1の台座
22 第2の台座
31 ファン
32 駆動部
33 ケーシング
41 第1の太陽電池パネル
42 第2の太陽電池パネル
43 電力ケーブル
90 槽壁
91 障害物
211 駆動部台
212 ケーシング台
221 第1のパネル台
222 第2のパネル台
331 吸込み口
332 吹出し口
B 空気
D 推力
S スカム
W 液面