(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080022
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】送電可能容量推定装置及び送電可能容量推定方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20240606BHJP
G01W 1/00 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
H02J3/00 170
G01W1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192835
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】520307713
【氏名又は名称】関西電力送配電株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505072638
【氏名又は名称】株式会社 気象工学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】長坂 吉彦
(72)【発明者】
【氏名】岸下 竹志
(72)【発明者】
【氏名】高田 望
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA03
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、送電線の柔軟な運用を図ることができる送電可能容量推定装置を提供する。
【解決手段】送電可能容量推定装置100は、所定時点以前の第一期間及び所定時点以降の第二期間における第一気温予測データ及び第二気温予測データを含む第一気象予測データ211と、第一期間における気温実績データを含む気象観測データ231とを取得する取得部110と、第一気温予測データ及び気温実績データを用いて気温誤差データを算出し、第二気温予測データを補正する補正部120と、第二気温予測データを用いて第二期間における送電可能容量を推定する推定部130とを備え、補正部120は、第二気温予測データを複数の方法で補正することにより、補正された複数の第二気温予測データを算出し、推定部130は、推定する送電可能容量として、複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線の運用可能容量である送電可能容量を推定する送電可能容量推定装置であって、
所定時点以前の第一期間及び前記所定時点以降の第二期間における所定エリアでの気温の予測値を示す第一気温予測データ及び第二気温予測データを含む第一気象予測データと、前記第一期間における前記所定エリアでの気温の実績値を示す気温実績データを含む気象観測データと、を取得する取得部と、
前記第一気温予測データ及び前記気温実績データを用いて、前記所定エリアでの気温の予測誤差を示す気温誤差データを算出し、算出した前記気温誤差データを用いて、前記第二気温予測データを補正する補正部と、
補正された前記第二気温予測データを用いて、前記第二期間における前記所定エリアでの前記送電可能容量を推定する推定部と、を備え、
前記補正部は、前記第二気温予測データを複数の方法で補正することにより、補正された複数の第二気温予測データを算出し、
前記推定部は、推定する前記送電可能容量として、前記複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する
送電可能容量推定装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記第一気象予測データを複数のモデルを用いて更新して、更新された複数の第一気象予測データを算出し、前記複数の第一気象予測データのそれぞれに含まれる前記第一気温予測データ及び前記第二気温予測データを用いて、前記複数の第二気温予測データを算出する
請求項1に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記第一気象予測データに含まれる前記第一気温予測データ及び前記第二気温予測データのうちの異なる大きさのエリアにおけるデータを使用する複数のモデルを用いて、前記第一気象予測データを更新する
請求項2に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項4】
前記補正部は、時刻に応じて、雲の量が多いほど気温が低くなる、または、雲の量が多いほど気温が高くなるように設定されたモデルを含む複数のモデルを用いて、前記第一気象予測データを更新する
請求項2または3に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、推定する前記送電可能容量として、前記複数の送電可能容量のうちの最大の送電可能容量を選定する
請求項1~3のいずれか1項に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項6】
前記推定部は、推定する前記送電可能容量として、推定する日、時刻及びエリアの少なくとも1つに応じて、前記複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する
請求項1~3のいずれか1項に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項7】
前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第一気温予測データで示される気温の予測値の最大値と、前記気温実績データで示される気温の実績値の最大値との差異を前記気温誤差データとして算出する
請求項1~3のいずれか1項に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項8】
前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第一気温予測データで示される気温の予測値が前記気温実績データで示される気温の実績値よりも小さいか否かを判断し、前記気温の予測値が前記気温の実績値よりも小さい場合の前記気温の予測値及び前記気温の実績値を抽出して、前記気温誤差データを算出する
請求項1~3のいずれか1項に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項9】
前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第一気温予測データで示される気温の予測値における、前記第二気温予測データで示される気温の予測値から所定範囲内での値を抽出して、前記気温誤差データを算出する
請求項1~3のいずれか1項に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項10】
前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第一気温予測データで示される気温の予測値と、前記気温実績データで示される気温の実績値との差異における100パーセンタイルでの値を気温の予測誤差として、前記気温誤差データを算出する
請求項1~3のいずれか1項に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項11】
前記取得部は、前記第一気象予測データよりも予測期間が短く、かつ、配信遅延時間が短い第二気象予測データをさらに取得し、
前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第二気象予測データを用いて、前記所定時点以降の前記第二期間よりも短い期間における前記第二気温予測データを補正する
請求項1~3のいずれか1項に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項12】
前記取得部は、前記第一気象予測データよりも予測期間が短く、かつ、更新間隔が短い第二気象予測データをさらに取得し、
前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第二気象予測データを用いて、前記所定時点以降の前記第二期間よりも短い期間における前記第二気温予測データを補正する
請求項1~3のいずれか1項に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項13】
前記取得部は、予測地点の高度を示す第一高度データをさらに含む前記第一気象予測データと、観測地点の高度を示す第二高度データをさらに含む前記気象観測データと、を取得し、
前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第一高度データ及び前記第二高度データをさらに用いて、前記所定エリアにおける前記送電線の高度に応じた前記第二気温予測データに補正する
請求項1~3のいずれか1項に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項14】
前記取得部は、前記所定エリアでの風速、日射量及び降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータをさらに含む前記第一気象予測データを取得し、
前記推定部は、前記第一気象予測データに含まれる前記風速、前記日射量及び前記降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータをさらに用いて、前記送電可能容量を推定する
請求項1~3のいずれか1項に記載の送電可能容量推定装置。
【請求項15】
送電線の運用可能容量である送電可能容量を推定する送電可能容量推定方法であって、
所定時点以前の第一期間及び前記所定時点以降の第二期間における所定エリアでの気温の予測値を示す第一気温予測データ及び第二気温予測データを含む第一気象予測データと、前記第一期間における前記所定エリアでの気温の実績値を示す気温実績データを含む気象観測データと、を取得する取得ステップと、
前記第一気温予測データ及び前記気温実績データを用いて、前記所定エリアでの気温の予測誤差を示す気温誤差データを算出し、算出した前記気温誤差データを用いて、前記第二気温予測データを補正する補正ステップと、
補正された前記第二気温予測データを用いて、前記第二期間における前記所定エリアでの前記送電可能容量を推定する推定ステップと、を含み、
前記補正ステップでは、前記第二気温予測データを複数の方法で補正することにより、補正された複数の第二気温予測データを算出し、
前記推定ステップでは、推定する前記送電可能容量として、前記複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する
送電可能容量推定方法。
【請求項16】
請求項15に記載の送電可能容量推定方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線の運用可能容量を推定する送電可能容量推定装置及び送電可能容量推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送電線の運用可能容量を算出する技術が知られている。例えば、特許文献1には、架空送電線が設置されている送電線ルート上の複数のセンサが測定した気温、風速及び日射量を用いて、個々のセンサ毎に架空送電線の電流容量を算出し、算出した電流容量のうちの最小値を架空送電線の電流容量(送電線の運用可能容量)として出力する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術では、送電線ルート上に複数のセンサを取り付けて気温等を測定し、現地の状況に合わせて、送電線の運用可能容量を算出している。しかしながら、上記従来の技術では、送電線ルート上に複数のセンサを取り付ける必要があるため、構成が煩雑である。また、上記従来の技術では、現時点における気温等の状況に合わせて送電線の運用可能容量を算出しているが、将来の時点における送電線の運用可能容量は分からないため、柔軟な運用ができないおそれがある。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目してなされたものであり、簡易な構成で、送電線の柔軟な運用を図ることができる送電可能容量推定装置及び送電可能容量推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る送電可能容量推定装置は、送電線の運用可能容量である送電可能容量を推定する送電可能容量推定装置であって、所定時点以前の第一期間及び前記所定時点以降の第二期間における所定エリアでの気温の予測値を示す第一気温予測データ及び第二気温予測データを含む第一気象予測データと、前記第一期間における前記所定エリアでの気温の実績値を示す気温実績データを含む気象観測データと、を取得する取得部と、前記第一気温予測データ及び前記気温実績データを用いて、前記所定エリアでの気温の予測誤差を示す気温誤差データを算出し、算出した前記気温誤差データを用いて、前記第二気温予測データを補正する補正部と、補正された前記第二気温予測データを用いて、前記第二期間における前記所定エリアでの前記送電可能容量を推定する推定部と、を備え、前記補正部は、前記第二気温予測データを複数の方法で補正することにより、補正された複数の第二気温予測データを算出し、前記推定部は、推定する前記送電可能容量として、前記複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する。
【0007】
これによれば、送電可能容量推定装置は、第一期間及び第二期間における第一気温予測データ及び第二気温予測データを含む第一気象予測データと、第一期間における気温実績データを含む気象観測データと、を取得する。例えば、送電可能容量推定装置は、気象庁のメソモデル(MSM)から予測データを取得し、アメダスから観測データを取得することで、送電線ルート上に複数のセンサを取り付けるような必要がなく、第一気象予測データと気象観測データとを取得できる。また、送電可能容量推定装置は、第一気温予測データ及び気温実績データを用いて気温誤差データを算出し、気温誤差データを用いて第二気温予測データを補正し、補正後の第二気温予測データを用いて第二期間における送電可能容量を推定する。特に、送電可能容量推定装置は、第二気温予測データを複数の方法で補正することにより、補正された複数の第二気温予測データを算出し、複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する。このように、送電可能容量推定装置は、誤差が補正された複数の第二気温予測データを用いて、第二期間における送電可能容量を推定する。これにより、送電可能容量推定装置は、所定時点以降の第二期間における送電線の運用可能容量である送電可能容量を比較的精度良く推定できるため、送電可能容量の推定結果に基づいて、送電線を柔軟に運用できる。したがって、送電可能容量推定装置によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟な運用を図ることができる。
【0008】
また、前記補正部は、前記第一気象予測データを複数のモデルを用いて更新して、更新された複数の第一気象予測データを算出し、前記複数の第一気象予測データのそれぞれに含まれる前記第一気温予測データ及び前記第二気温予測データを用いて、前記複数の第二気温予測データを算出することにしてもよい。
【0009】
これによれば、送電可能容量推定装置は、第一気象予測データを複数のモデルを用いて更新し、更新された複数の第一気象予測データのそれぞれに含まれるデータを用いて、複数の第二気温予測データを算出する。これにより、送電可能容量推定装置は、複数のモデルから算出される複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から、1つの送電可能容量を選定することができる。したがって、送電可能容量推定装置は、比較的推定精度が高いモデルを用いて得られた送電可能容量を選定することで、送電可能容量を比較的精度良く推定できる。
【0010】
また、前記補正部は、前記第一気象予測データに含まれる前記第一気温予測データ及び前記第二気温予測データのうちの異なる大きさのエリアにおけるデータを使用する複数のモデルを用いて、前記第一気象予測データを更新することにしてもよい。
【0011】
これによれば、送電可能容量推定装置は、第一気象予測データに含まれるデータのうちの異なる大きさのエリアにおけるデータを使用する複数のモデルを用いて、第一気象予測データを更新する。これにより、送電可能容量推定装置は、異なるデータを使用する複数のモデルから算出される複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から、1つの送電可能容量を選定することができる。したがって、送電可能容量推定装置は、比較的推定精度が高いモデルを用いて得られた送電可能容量を選定することで、送電可能容量を比較的精度良く推定できる。
【0012】
また、前記補正部は、時刻に応じて、雲の量が多いほど気温が低くなる、または、雲の量が多いほど気温が高くなるように設定されたモデルを含む複数のモデルを用いて、前記第一気象予測データを更新することにしてもよい。
【0013】
例えば、1日のうち、日中は、雲の量が多いほど温度の上昇が抑制され、夜間は、雲の量が多いほど気温の低下が抑制されるというように、雲の量が気温に及ぼす影響は、時刻によっては逆に作用する。このため、送電可能容量推定装置は、時刻に応じて、雲の量が多いほど気温が低くなる、または、雲の量が多いほど気温が高くなるように設定されたモデルを含む複数のモデルを用いて、第一気象予測データを更新する。これにより、送電可能容量推定装置は、比較的推定精度が高いモデルを用いることができるため、送電可能容量を比較的精度良く推定できる。
【0014】
また、前記推定部は、推定する前記送電可能容量として、前記複数の送電可能容量のうちの最大の送電可能容量を選定することにしてもよい。
【0015】
推定した送電可能容量が、実際に送電可能な容量よりも小さすぎると、送電線の柔軟な運用が阻害される。送電可能容量推定装置は、複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量のいずれにおいても、気温の予測誤差を見込んでいるため、複数の送電可能容量のいずれを選択しても問題は生じにくい。このため、送電可能容量推定装置は、推定した送電可能容量が、実際に送電可能な容量よりも小さすぎないように、複数の送電可能容量のうちの最大の送電可能容量を選定する。これにより、送電線の柔軟な運用を図ることができる。
【0016】
また、前記推定部は、推定する前記送電可能容量として、推定する日、時刻及びエリアの少なくとも1つに応じて、前記複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定することにしてもよい。
【0017】
送電可能容量推定装置が用いるモデルにおいては、例えば、夏季等の季節における推定精度が高かったり、日中等の温度の高い時刻における推定精度が高かったり、内陸よりも海に近いエリアにおける推定精度が高かったりする場合がある。このため、送電可能容量推定装置は、推定する日、時刻及びエリアの少なくとも1つに応じて、複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する。これにより、送電可能容量推定装置は、送電可能容量を比較的精度良く推定できる。
【0018】
また、前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第一気温予測データで示される気温の予測値の最大値と、前記気温実績データで示される気温の実績値の最大値との差異を前記気温誤差データとして算出することにしてもよい。
【0019】
これによれば、送電可能容量推定装置は、第一期間における気温の予測値の最大値と気温の実績値の最大値との差異を気温誤差データとして算出する。つまり、気温が最大となる場合に、気温が送電可能容量に与える影響が大きくなるため、送電可能容量推定装置は、気温が最大となる場合での気温誤差データを算出する。これにより、送電可能容量推定装置は、影響の大きい場合を基準にして第二気温予測データを補正して送電可能容量を推定することで、安全サイドで送電可能容量を推定することができる。したがって、送電可能容量推定装置によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ安全な運用を図ることができる。
【0020】
また、前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第一気温予測データで示される気温の予測値が前記気温実績データで示される気温の実績値よりも小さいか否かを判断し、前記気温の予測値が前記気温の実績値よりも小さい場合の前記気温の予測値及び前記気温の実績値を抽出して、前記気温誤差データを算出することにしてもよい。
【0021】
これによれば、送電可能容量推定装置は、第一期間における気温の予測値が気温の実績値よりも小さいか否かを判断し、気温の予測値が気温の実績値よりも小さい場合の当該気温の予測値及び気温の実績値を抽出して、気温誤差データを算出する。つまり、送電可能容量推定装置は、安全サイドで、気温の予測値が気温の実績値よりも小さい場合のデータを使用して、気温誤差データを算出する。これにより、送電可能容量推定装置によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ安全な運用を図ることができる。
【0022】
また、前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第一気温予測データで示される気温の予測値における、前記第二気温予測データで示される気温の予測値から所定範囲内での値を抽出して、前記気温誤差データを算出することにしてもよい。
【0023】
過去の予測値が将来の予測値からあまりにも外れている場合には、そのような過去の予測値を将来の予測値の誤差算出に用いると算出精度が低下するおそれがある。このため、送電可能容量推定装置は、第一期間での気温の予測値における、第二期間での気温の予測値から所定範囲内での値を抽出して、気温誤差データを算出する。これにより、送電可能容量推定装置は、気温誤差データの算出において、過去の第一期間での気温の予測値における、将来の第二期間での気温の予測値から所定範囲外での値を用いないため、気温誤差データの算出精度を向上させることができる。これにより、送電可能容量推定装置によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ精度の良い運用を図ることができる。
【0024】
また、前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第一気温予測データで示される気温の予測値と、前記気温実績データで示される気温の実績値との差異における100パーセンタイルでの値を気温の予測誤差として、前記気温誤差データを算出することにしてもよい。
【0025】
これによれば、送電可能容量推定装置は、第一期間での気温の予測値と気温の実績値との差異における100パーセンタイルでの値を気温の予測誤差として、気温誤差データを算出する。つまり、気温の予測値と気温の実績値との差異がばらつく場合には、送電可能容量推定装置は、安全サイドで、当該差異における100パーセンタイルでの値を気温の予測誤差として採用し、気温誤差データを算出する。これにより、送電可能容量推定装置によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ安全な運用を図ることができる。
【0026】
また、前記取得部は、前記第一気象予測データよりも予測期間が短く、かつ、配信遅延時間が短い第二気象予測データをさらに取得し、前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第二気象予測データを用いて、前記所定時点以降の前記第二期間よりも短い期間における前記第二気温予測データを補正することにしてもよい。
【0027】
送電可能容量推定装置が第一気象予測データを取得する際に、第一気象予測データの配信遅延時間が長い場合、第一気象予測データを用いた第二気温予測データの補正の精度が低下するおそれがある。このため、送電可能容量推定装置は、第一気象予測データよりも予測期間は短いものの、配信遅延時間が短い第二気象予測データを取得し、第二気象予測データを用いて、所定時点以降の第二期間よりも短い期間における第二気温予測データを補正する。これにより、送電可能容量推定装置は、所定時点以降の第二期間よりも短い期間においては、第二気温予測データの補正の精度の向上を図ることができる。また、送電可能容量推定装置は、例えば、気象庁の局地モデル(LFM)から、第二気象予測データを簡易に取得できる。これらにより、送電可能容量推定装置によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ精度の良い運用を図ることができる。
【0028】
また、前記取得部は、前記第一気象予測データよりも予測期間が短く、かつ、更新間隔が短い第二気象予測データをさらに取得し、前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第二気象予測データを用いて、前記所定時点以降の前記第二期間よりも短い期間における前記第二気温予測データを補正することにしてもよい。
【0029】
送電可能容量推定装置が第一気象予測データを取得する際に、第一気象予測データの更新間隔が長い場合、第一気象予測データを用いた第二気温予測データの補正の精度が低下するおそれがある。このため、送電可能容量推定装置は、第一気象予測データよりも予測期間は短いものの、更新間隔が短い第二気象予測データを取得し、第二気象予測データを用いて、所定時点以降の第二期間よりも短い期間における第二気温予測データを補正する。これにより、送電可能容量推定装置は、所定時点以降の第二期間よりも短い期間においては、第二気温予測データの補正の精度の向上を図ることができる。また、送電可能容量推定装置は、例えば、気象庁の局地モデル(LFM)から、第二気象予測データを簡易に取得できる。これらにより、送電可能容量推定装置によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ精度の良い運用を図ることができる。
【0030】
また、前記取得部は、予測地点の高度を示す第一高度データをさらに含む前記第一気象予測データと、観測地点の高度を示す第二高度データをさらに含む前記気象観測データと、を取得し、前記補正部は、前記複数の方法のそれぞれについて、前記第一高度データ及び前記第二高度データをさらに用いて、前記所定エリアにおける前記送電線の高度に応じた前記第二気温予測データに補正することにしてもよい。
【0031】
気温は、高度によって変化する。例えば、高度が高くなると気温は下がり、高度が低くなると気温は上がる。このため、送電可能容量推定装置は、予測地点の第一高度データと観測地点の第二高度データとを用いて、送電線の高度に応じた第二気温予測データに補正する。これにより、送電可能容量推定装置は、精度良く第二気温予測データを補正することができるため、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ精度の良い運用を図ることができる。
【0032】
また、前記取得部は、前記所定エリアでの風速、日射量及び降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータをさらに含む前記第一気象予測データを取得し、前記推定部は、前記第一気象予測データに含まれる前記風速、前記日射量及び前記降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータをさらに用いて、前記送電可能容量を推定することにしてもよい。
【0033】
送電可能容量は、風速、日射量または降水量によっても影響を受ける。例えば、送電線周囲の風速が大きいと送電線の温度が低下し、日射量が大きいと送電線の温度が上昇し、降水量が多いと送電線の温度が低下するため、送電可能容量が影響を受ける。このため、送電可能容量推定装置は、風速、日射量及び降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータをさらに含む第一気象予測データを取得し、風速、日射量及び降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータをさらに用いて、送電可能容量を推定する。これにより、送電可能容量推定装置は、精度良く送電可能容量を推定することができるため、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ精度の良い運用を図ることができる。
【0034】
また、本発明は、このような送電可能容量推定装置として実現することができるだけでなく、送電可能容量推定装置に含まれる処理部が行う特徴的な処理をステップとする送電可能容量推定方法としても実現することができる。また、本発明は、送電可能容量推定方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現したり、当該プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体として実現したりすることもできる。そして、当該プログラムは、当該記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができる。また、本発明は、送電可能容量推定装置に含まれる処理部を備える集積回路としても実現することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る送電可能容量推定装置等によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟な運用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施の形態に係る送電可能容量推定装置と気象データ管理装置との接続関係を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る送電可能容量推定装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3A】実施の形態に係る送電可能容量推定装置の記憶部に記憶されている第一気象予測データに含まれる第一気温予測データまたは第二気温予測データの一例を示す図である。
【
図3B】実施の形態に係る送電可能容量推定装置の記憶部に記憶されている気象観測データに含まれる気温実績データの一例を示す図である。
【
図4】実施の形態に係る送電可能容量推定装置が、送電線の運用可能容量である送電可能容量を推定する処理(送電可能容量推定方法)を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態に係る補正部が第二気温予測データを補正する処理を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態に係る補正部が気温誤差データを方法1で算出する処理を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態に係る補正部が気温の予測値の最大値と気温の実績値の最大値とを取得する処理を説明する図である。
【
図8】実施の形態に係る補正部が気温の予測値と気温の実績値との差異における100パーセンタイルでの値を算出する処理を説明する図である。
【
図9】実施の形態に係る補正部が気温誤差データを方法2で算出する処理を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態に係る補正部が気温誤差データを方法3で算出する処理を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態に係る補正部が第二気温予測データを複数の方法で補正する処理を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態に係る補正部が第二気象予測データを用いて第二気温予測データを補正する処理を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態に係る補正部による補正後の第二気温予測データを示す図である。
【
図14】実施の形態に係る推定部が送電可能容量を推定する処理を示すフローチャートである。
【
図15】実施の形態に係る推定部が算出した送電可能容量の推定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る送電可能容量推定装置及び送電可能容量推定方法について、説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0038】
(実施の形態)
[1 送電可能容量推定装置100の構成の説明]
まず、送電可能容量推定装置100の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る送電可能容量推定装置100と気象データ管理装置200との接続関係を示す図である。
図2は、本実施の形態に係る送電可能容量推定装置100の機能的な構成を示すブロック図である。
図3Aは、本実施の形態に係る送電可能容量推定装置100の記憶部150に記憶されている第一気象予測データ151に含まれる第一気温予測データまたは第二気温予測データの一例を示す図である。
図3Bは、本実施の形態に係る送電可能容量推定装置100の記憶部150に記憶されている気象観測データ153に含まれる気温実績データの一例を示す図である。
【0039】
送電可能容量推定装置100は、送電線の運用可能容量である送電可能容量を推定する装置である。送電線とは、発電所等の発電設備で発電された電力を、変電所、配電所または需要家等へ送電するための架空線式の高電圧の電線路(高圧路)であり、例えば電力会社の商用電力系統上に配置される。送電線の運用可能容量(送電可能容量)とは、運用上、当該送電線で供給可能な電力の容量(例えばMW)であり、当該送電線の周囲の気温等によって変動する。例えば、送電線の周囲の気温が高いと、熱による送電線の強度低下等により送電線の運用可能容量(送電可能容量)は減少し、送電線の周囲の気温が低いと、送電線の運用可能容量(送電可能容量)は増加する。
【0040】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、送電可能容量推定装置100は、気象データ管理装置200と通信ネットワーク300を介して接続されており、気象データ管理装置200から情報を取得して、送電可能容量を推定するコンピュータである。なお、送電可能容量推定装置100は、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータシステムがプログラムを実行することによって実現されてもよいし、専用のコンピュータシステムによって実現されてもよい。通信ネットワーク300は、有線または無線のLAN(Local Area Network)等のインターネット等のコンピュータネットワークである。
【0041】
気象データ管理装置200は、所定の時点及び所定の地点における気温、風速、日射量及び降水量等の気象に関する情報を保持する装置である。例えば、気象データ管理装置200は、気象庁に設置されているコンピュータ等の装置、または、気象庁からデータを取得したコンピュータ等の装置である。
図1に示すように、気象データ管理装置200は、メソモデルデータ保持部210と、局地モデルデータ保持部220と、アメダスデータ保持部230と、を備えている。
【0042】
メソモデルデータ保持部210は、気象庁のメソモデル(MSM)で予測されたデータを保持(記憶)しているメモリ等である。メソモデル(MSM)は、水平格子間隔5kmで日本とその近海を計算領域とし、配信遅延時間が約2.5時間、及び、3時間毎の更新(1日8回)で、39時間先までの予測計算を行い、数時間から1日先の気象現象を予測することができるモデルである。具体的には、メソモデルデータ保持部210は、第一気象予測データ211を記憶している。第一気象予測データ211は、気温、風速、日射量、降水量、高度、気圧、湿度、雲量等の気象情報の予測値を含むデータの集まりである。第一気象予測データ211は、これらの気象情報について、水平格子間隔5kmのメッシュの解像度、かつ、更新頻度3時間毎(1日8回)で、正時毎を1断面とし、合計39断面分(毎正時データの39時間分)のデータを有している。
【0043】
局地モデルデータ保持部220は、気象庁の局地モデル(LFM)で予測されたデータを保持(記憶)しているメモリ等である。局地モデル(LFM)は、メソモデルより細かい水平格子間隔(2km)、短い配信遅延時間(約1.5時間)、及び、短い更新間隔(1時間毎の更新(1日24回))で、短い予測期間(10時間先まで)の予測計算を行い、目先数時間程度の気象現象を把握することができるモデルである。具体的には、局地モデルデータ保持部220は、第二気象予測データ221を記憶している。第二気象予測データ221は、気温等の第一気象予測データ211と同様の気象情報の予測値を含むデータの集まりである。第二気象予測データ221は、これらの気象情報について、水平格子間隔2kmのメッシュの高い解像度、かつ、更新頻度1時間毎(1日24回)で、正時毎を1断面とし、合計10断面分(毎正時データの10時間分)のデータを有している。
【0044】
アメダスデータ保持部230は、気象庁のアメダス(地域気象観測システム)で観測されたデータを保持(記憶)しているメモリ等である。アメダスデータ保持部230は、各アメダスから、1時間毎に、配信遅延時間が数分程度のデータを取得できる。アメダスデータ保持部230は、気象観測データ231を記憶している。気象観測データ231は、気温、風速、風向、日照時間、降水量等の気象情報の観測値を含むデータの集まりである。気象観測データ231は、これらの気象情報について、各アメダス観測地点における1時間毎のデータを有している。
【0045】
送電可能容量推定装置100は、通信ネットワーク300を介して、気象データ管理装置200から、第一気象予測データ211、第二気象予測データ221及び気象観測データ231を取得する。そして、送電可能容量推定装置100は、第一気象予測データ211、第二気象予測データ221及び気象観測データ231を用いて、送電線の運用可能容量である送電可能容量を推定する。この送電可能容量推定装置100の具体的な構成について、以下に詳細に説明する。
【0046】
図2に示すように、送電可能容量推定装置100は、取得部110と、補正部120と、推定部130と、出力部140と、記憶部150と、を備えている。なお、
図1に示したように、送電可能容量推定装置100は、キーボード及びマウス等の入力部、並びに、液晶ディスプレイ等の表示部等も備えているが、これらの詳細な説明は省略する。
【0047】
取得部110は、第一気象予測データ211、第二気象予測データ221及び気象観測データ231を取得する。具体的には、取得部110は、気象データ管理装置200から、通信ネットワーク300を介して、第一気象予測データ211、第二気象予測データ221及び気象観測データ231を取得する。
【0048】
第一気象予測データ211は、上述の通り、気温の予測値を含むデータの集まりである。このため、第一気象予測データ211は、所定時点以前の第一期間(例えば現時点から過去3年間または5年間等)における所定エリアでの気温の予測値、及び、所定時点以降の第二期間(例えば1時間先から39時間先まで)における所定エリアでの気温の予測値を含んでいる。所定エリアとは、どのような大きさの領域でもよいが、例えば、大阪府エリア、兵庫県北部エリア、兵庫県南部エリア等の気象庁の一次細分区域(天気予報の発表区域)単位の領域である。以下についても同様である。このように、第一気象予測データ211は、所定時点以前の第一期間及び所定時点以降の第二期間における所定エリアでの気温の予測値を示す第一気温予測データ及び第二気温予測データを含んでいる。
【0049】
第一気温予測データは、例えば、
図3Aに示すような、メソモデル(MSM)が予測した所定エリアにおける各地点(
図3Aでは、A地点~E地点の5つの地点)での過去の39時間分の気温の予測値を、第一期間(例えば現時点から過去3年間または5年間等)に亘って集めたデータである。同様に、第二気温予測データは、例えば、
図3Aに示すような、メソモデル(MSM)が予測した所定エリアにおける各地点(
図3Aでは、A地点~E地点の5つの地点)での第二期間(例えば1時間先から39時間先まで)の気温の予測値を示すデータである。
【0050】
さらに、第一気象予測データ211は、上述の通り、高度、風速、日射量及び降水量等の予測値も含んでいる。つまり、第一気象予測データ211は、所定エリアにおける予測地点の高度を示す第一高度データをさらに含んでいる。そして、第一気象予測データ211は、第一期間及び第二期間における所定エリアでの風速、日射量及び降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータをさらに含んでいる。第一気象予測データ211に含まれる第一高度データ、並びに、風速、日射量及び降水量の予測値を示すデータ等についても、
図3Aに示したように、各地点及び各時間に応じたデータとなる。
【0051】
第二気象予測データ221についても、第一気象予測データ211と同様に、所定エリアでの気温の予測値を示す第三気温予測データを含んでいる。本実施の形態では、第三気温予測データは、所定エリアにおいて、所定時点(例えば現時点)を予測した所定期間(例えば1時間)前の気温の予測値と、所定時点以降の第二期間よりも短い期間(例えば1時間先から10時間先まで)の気温の予測値と、を示すデータである。さらに、第二気象予測データ221は、第一気象予測データ211と同様に、所定エリアにおける予測地点の高度を示す第三高度データ、並びに、第一期間における所定エリアでの風速、日射量及び降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータを含んでいる。
【0052】
また、第二気象予測データ221は、上述の通り、予測期間(10時間先まで)が第一気象予測データ211の予測期間(39時間先まで)よりも短く、配信遅延時間(約1.5時間)が第一気象予測データ211の配信遅延時間(約2.5時間)よりも短い。さらに、第二気象予測データ221は、上述の通り、更新間隔(1時間毎)が、第一気象予測データ211の更新間隔(3時間毎)よりも短い。このため、第二気象予測データ221は、第一気象予測データ211よりも予測期間が短く、かつ、配信遅延時間が短い。さらに、第二気象予測データ221は、第一気象予測データ211よりも予測期間が短く、かつ、更新間隔が短い。第二気象予測データ221に含まれる各データは、例えば、
図3Aに示した横軸の時間が10時間となったようなデータとなる。
【0053】
気象観測データ231は、上述の通り、気温等の実績値を含むデータの集まりである。このため、気象観測データ231は、所定時点以前の第一期間(例えば現時点から過去3年間または5年間等)における所定エリアでの気温の実績値を示す気温実績データを含んでいる。気象観測データ231は、所定エリアにおける観測地点の高度を示す第二高度データをさらに含んでいる。気温実績データは、例えば、
図3Bに示すような、アメダスで観測された所定エリアにおける各地点(
図3Bでは、A地点~E地点の5つの地点)での過去の39時間分の気温の実績値を、第一期間(例えば現時点から過去3年間または5年間等)に亘って集めたデータである。第二高度データは、各地点の高度を示すデータである。
【0054】
取得部110は、これらの取得した第一気象予測データ211、第二気象予測データ221及び気象観測データ231を、記憶部150に記憶されている第一気象予測データ151、第二気象予測データ152及び気象観測データ153に書き込む。つまり、取得部110は、第一気象予測データ211に含まれる第一気温予測データ、第二気温予測データ、第一高度データ、並びに、風速、日射量及び降水量の予測値を示すデータ等を第一気象予測データ151に書き込んで、第一気象予測データ151を更新する。また、取得部110は、第二気象予測データ221に含まれる第三気温予測データ、第三高度データ、並びに、風速、日射量及び降水量の予測値を示すデータ等を第二気象予測データ152に書き込んで、第二気象予測データ152を更新する。さらに、取得部110は、気象観測データ231に含まれる気温実績データ及び第二高度データ等を気象観測データ153に書き込んで、気象観測データ153を更新する。
【0055】
なお、例えば、アメダス観測地点における温度計は地上1.5mの高度に設置されている等により、事前に、気象観測データ231における第二高度データが分かっている場合がある。この場合、気象観測データ231には、第二高度データが含まれておらず、気象観測データ153に事前に第二高度データが書き込まれており、取得部110は、気象観測データ153から第二高度データを取得することにしてもよい。他のデータについても同様である。
【0056】
補正部120は、第一気温予測データ及び気温実績データを用いて、所定エリアでの気温の予測誤差を示す気温誤差データを算出し、算出した気温誤差データを用いて、第二気温予測データを補正する。気温の予測誤差とは、気温の実績値に対する気温の予測値のずれ量(誤差)である。具体的には、補正部120は、第二気温予測データを複数の方法で補正することにより、補正された複数の第二気温予測データを算出する。本実施の形態では、補正部120は、第一気象予測データ211を複数のモデルを用いて更新して、更新された複数の第一気象予測データ211を算出し、複数の第一気象予測データ211のそれぞれに含まれる第一気温予測データ及び第二気温予測データを用いて、複数の第二気温予測データを算出する。例えば、補正部120は、第一気象予測データ211に含まれる第一気温予測データ及び第二気温予測データのうちの異なる大きさのエリアにおけるデータを使用する複数のモデルを用いて、第一気象予測データ211を更新する。さらに、補正部120は、時刻に応じて、雲の量が多いほど気温が低くなる、または、雲の量が多いほど気温が高くなるように設定されたモデルを含む複数のモデルを用いて、第一気象予測データ211を更新する。
【0057】
具体的には、補正部120は、当該複数の方法のそれぞれについて、第一気温予測データで示される気温の予測値の最大値と、気温実績データで示される気温の実績値の最大値との差異を気温誤差データとして算出する。また、補正部120は、当該複数の方法のそれぞれについて、第一気温予測データで示される気温の予測値が気温実績データで示される気温の実績値よりも小さいか否かを判断し、気温の予測値が気温の実績値よりも小さい場合の気温の予測値及び気温の実績値を抽出して、気温誤差データを算出する。また、補正部120は、当該複数の方法のそれぞれについて、第一気温予測データで示される気温の予測値における、第二気温予測データで示される気温の予測値から所定範囲内での値を抽出して、気温誤差データを算出する。さらに、補正部120は、当該複数の方法のそれぞれについて、第一気温予測データで示される気温の予測値と、気温実績データで示される気温の実績値との差異における100パーセンタイルでの値を気温の予測誤差として、気温誤差データを算出する。
【0058】
また、補正部120は、当該複数の方法のそれぞれについて、算出した気温誤差データを用いて、第二気温予測データを補正する。具体的には、補正部120は、当該複数の方法のそれぞれについて、第一高度データ及び第二高度データをさらに用いて、所定エリアにおける送電線の高度に応じた第二気温予測データに補正する。さらに具体的には、補正部120は、当該複数の方法のそれぞれについて、第二気象予測データ152を用いて、所定時点以降の第二期間よりも短い期間における第二気温予測データを補正する。補正部120が行うこれらの処理のさらに詳細な説明は、後述する。
【0059】
なお、補正部120が行う上記処理においては、まず、取得部110が、記憶部150に記憶されている第一気象予測データ151、第二気象予測データ152及び気象観測データ153を取得する。そして、補正部120は、上記複数の方法のそれぞれについて、取得された第一気象予測データ151に含まれる第一気温予測データ、及び、気象観測データ153に含まれる気温実績データを用いて、気温誤差データを算出する。具体的には、補正部120は、記憶部150に記憶されているモデルデータ155から複数のモデル(後述する第一モデル及び第二モデル等)を読み出して取得し、当該複数のモデルを用いて第一気象予測データ211を更新する。つまり、補正部120は、当該複数のモデルのそれぞれを用いて第一気温予測データ及び第二気温予測データ等をそれぞれ算出し、当該複数のモデルに応じた更新後の複数の第一気象予測データ211(更新後の第一気温予測データ及び第二気温予測データ等を含む)を作成する。そして、補正部120は、当該更新後の複数の第一気象予測データ211を、記憶部150に記憶させる。また、補正部120は、更新前の第一気象予測データ211、及び、更新後の複数の第一気象予測データ211のそれぞれについて、気温誤差データを算出する。これにより、補正部120は、モデルを使用しなかったり、第一モデルを使用したり、第二モデルを使用したりする複数の方法に対応して、複数の気温誤差データを算出する。
【0060】
そして、補正部120は、上記複数の方法のそれぞれについて、算出した気温誤差データ、第一気象予測データ151に含まれる第一高度データ、気象観測データ153に含まれる第二高度データ、及び、第二気象予測データ152に含まれる第三高度データを用いて、第一気象予測データ151に含まれる第二気温予測データを補正する。そして、補正部120は、上記複数の方法のそれぞれについて、補正した第二気温予測データを、記憶部150に記憶されている第一気象予測データ151に書き込んで、第一気象予測データ151の第二気温予測データを更新する。なお、補正部120は、上記複数の方法のそれぞれについて、算出した気温誤差データを、記憶部150に記憶されている推定用データ154に一旦書き込み、記憶部150から気温誤差データを読み出して第二気温予測データを補正してもよい。
【0061】
推定部130は、補正された第二気温予測データを用いて、第二期間における所定エリアでの送電可能容量を推定する。具体的には、推定部130は、推定する送電可能容量として、補正部120が算出した複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する。例えば、推定部130は、推定する送電可能容量として、複数の送電可能容量のうちの最大の送電可能容量を選定する。または、推定部130は、推定する送電可能容量として、推定する日、時刻及びエリアの少なくとも1つに応じて、複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する。
【0062】
さらに具体的には、推定部130は、第一気象予測データ151に含まれる風速、日射量及び降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータをさらに用いて、送電可能容量を推定する。例えば、取得部110が、上記複数の方法のそれぞれについて、記憶部150に記憶されている補正後の第一気象予測データ151を取得する。そして、推定部130は、当該複数の方法のそれぞれについて、取得された第一気象予測データ151に含まれる第二気温予測データ、並びに、風速、日射量及び降水量の予測値を示すデータを用いて、送電線の運用可能容量である送電可能容量の推定値を算出する。つまり、推定部130は、補正部120が算出した複数の第二気温予測データを用いて、複数の送電可能容量の推定値を算出する。そして、推定部130は、算出した複数の送電可能容量の推定値から1つの送電可能容量の推定値を選定し、選定した送電可能容量の推定値を、記憶部150に記憶されている推定用データ154に書き込んで、推定用データ154を更新する。推定部130が行う上記処理のさらに詳細な説明は、後述する。
【0063】
出力部140は、推定部130が推定した送電可能容量を出力する。例えば、取得部110が、記憶部150に記憶されている推定用データ154を取得する。そして、出力部140は、取得された推定用データ154に含まれる送電可能容量の推定値を読み出して、外部の装置に送信する。または、出力部140は、送電可能容量の推定値を、送電可能容量推定装置100が備える液晶ディスプレイ等の表示部に出力して、送電可能容量の推定値を表示させる。
【0064】
記憶部150は、送電線の運用可能容量である送電可能容量を推定するためのデータ等を記憶しているメモリである。具体的には、記憶部150は、上述の第一気象予測データ151、第二気象予測データ152、気象観測データ153、推定用データ154、及び、モデルデータ155等を記憶している。モデルデータ155は、第一モデル及び第二モデル等を含むデータの集まりである。第一モデルは、ニューラルネットワーク等の数理モデルであり、第二モデルは、WRF(Weather Research and Forecasting model)等の気象モデルである。なお、第一気象予測データ151、第二気象予測データ152、気象観測データ153、及び、推定用データ154は、データ更新の都度、データが書き換えられることにしてもよいし、データが蓄積されていくことにしてもよい。
【0065】
[2 送電可能容量推定装置100の処理フローの説明]
次に、送電可能容量推定装置100が、送電線の運用可能容量である送電可能容量を推定する処理について、説明する。
図4は、本実施の形態に係る送電可能容量推定装置100が、送電線の運用可能容量である送電可能容量を推定する処理(送電可能容量推定方法)を示すフローチャートである。
図5は、本実施の形態に係る補正部120が第二気温予測データを補正する処理(
図4のS104)を示すフローチャートである。
【0066】
図4に示すように、まず、取得部110は、第一気象予測データ211(151)、第二気象予測データ221(152)、及び、気象観測データ231(153)を取得する(S102、取得ステップ)。具体的には、取得部110は、所定エリアにおける、第一期間の第一気温予測データ、第二期間の第二気温予測データ、予測地点の第一高度データ、並びに、風速、日射量及び降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータ等を含む第一気象予測データ211(151)を取得する。また、取得部110は、所定エリアにおける第一期間の気温実績データ、及び、観測地点の第二高度データ等を含む気象観測データ231(153)を取得する。さらに、取得部110は、第一気象予測データ211(151)よりも予測期間が短く、配信遅延時間が短く、更新間隔が短い第二気象予測データ221(152)を取得する。
【0067】
例えば、取得部110は、第一気象予測データ211(151)では、メソモデル(MSM)から、気温を予測したい所定エリア内の各地点における、現時点から過去3年間(第一期間)のうちの各時点について、8760個(=8回/日×365日×3年)の気温の予測値を取得できる。
図3Aで示した例であれば、取得部110は、当該所定エリア内のA地点~E地点における過去3年間の各時点のそれぞれについて、8760個の気温の予測値が含まれる第一気温予測データを取得する。取得部110は、現時点から過去5年間(第一期間)のデータを取得してもよいし、3時間毎(8回/日)ではなく、1時間毎(24回/日)のデータを取得してもよい。取得部110は、3時間毎のデータに対して線形内挿処理を実施することにより、1時間毎のデータへ変換してもよい。このように、取得部110は、現時点から過去5年間(第一期間)のうちの各時点について、43824個(=24時間×365日×4年+24時間×366日(うるう年))の気温の予測値を取得してもよい。また、取得部110は、当該所定エリア内のA地点~E地点における1時間先から39時間先までの気温の予測値が含まれる第二気温予測データを取得する。
【0068】
取得部110は、第二気象予測データ221(152)では、局地モデル(LFM)から、当該所定エリア内の各地点における、例えば1時間前に予測した1時間先(現時点)の気温の予測値と、現時点の1時間先から10時間先までの気温の予測値とが含まれる第三気温予測データを取得する。また、取得部110は、気象観測データ231(153)では、アメダスから、当該所定エリア内の各地点における、現時点から過去3年間または5年間等(第一期間)のうちの各時点について、気温の実績値を取得する。
【0069】
そして、補正部120は、取得部110が取得した第一気温予測データ及び気温実績データを用いて、所定エリアでの気温の予測誤差を示す気温誤差データを算出し、算出した気温誤差データを用いて、第二気温予測データを補正する(S104)(補正ステップ)。具体的には、補正部120は、第二気温予測データを複数の方法で補正することにより、補正された複数の第二気温予測データを算出する。つまり、
図5に示すように、補正部120は、取得部110が取得した第一気温予測データ及び気温実績データを用いて、複数の気温誤差データを複数の方法で算出し(S105)、算出した複数の気温誤差データを用いて、第二気温予測データを複数の方法で補正する(S106)。この補正部120が気温誤差データを複数の方法で算出する処理(S105)、及び、補正部120が第二気温予測データを複数の方法で補正する処理(S106)の詳細な説明については、後述する。
【0070】
そして、推定部130は、補正部120が補正した第二気温予測データを含む第一気象予測データ151を用いて、第二期間における所定エリアでの送電可能容量を推定する(S108、推定ステップ)。具体的には、推定部130は、推定する送電可能容量として、補正部120が算出した複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する。この推定部130が送電可能容量を推定する処理(S108)の詳細な説明については、後述する。
【0071】
そして、出力部140は、推定部130が推定した送電可能容量を出力する(S110、出力ステップ)。例えば、出力部140は、送電可能容量を外部の装置に送信する、または、送電可能容量推定装置100の液晶ディスプレイ等の表示部に出力して、送電可能容量の推定値を表示させる。具体的には、出力部140は、後述の
図15に示される送電可能容量の推定値等のグラフ、または、当該送電可能容量の推定値等を示す数値等を出力する。なお、出力部140は、補正部120が算出した気温誤差データ、または、補正部120が補正した第二気温予測データを出力してもよい。例えば、出力部140は、後述の
図13に示される第二気温予測データ等のグラフ、または、当該第二気温予測データ等を示す数値等を出力してもよい。
【0072】
送電可能容量推定装置100は、以上の処理を、送電可能容量を推定したい全てのエリアについて実行し、全てのエリアについての送電可能容量を推定する。以上のようにして、送電可能容量推定装置100が送電線の運用可能容量である送電可能容量を推定する処理は、終了する。
【0073】
次に、補正部120が気温誤差データを複数の方法で算出する処理(
図5のS105)について、詳細に説明する。
図6は、本実施の形態に係る補正部120が気温誤差データを方法1で算出する処理を示すフローチャートである。
図7は、本実施の形態に係る補正部120が気温の予測値の最大値と気温の実績値の最大値とを取得する処理(
図6のS206)を説明する図である。
図8は、本実施の形態に係る補正部120が気温の予測値と気温の実績値との差異における100パーセンタイルでの値を算出する処理(
図6のS216)を説明する図である。
図9は、本実施の形態に係る補正部120が気温誤差データを方法2で算出する処理を示すフローチャートである。
図10は、本実施の形態に係る補正部120が気温誤差データを方法3で算出する処理を示すフローチャートである。
【0074】
まず、補正部120が気温誤差データを方法1で算出する処理について説明する。
図6に示すように、補正部120は、第一気象予測データ151及び気象観測データ153から、第一気温予測データ及び気温実績データを取得する(S202)。具体的には、補正部120は、取得部110が取得した第一気象予測データ151から第一気温予測データを取得し、取得部110が取得した気象観測データ153から気温実績データを取得する。
【0075】
そして、補正部120は、第一気温予測データの気温の予測値と、気温実績データの気温の実績値との高度を合わせる補正を行う(S204)。具体的には、補正部120は、第一気象予測データ151から第一高度データを取得し、気象観測データ153から第二高度データを取得する。そして、補正部120は、第一高度データ及び第二高度データを用いて、第一気温予測データと気温実績データとの高度を合わせる補正を行う。例えば、補正部120は、第二高度データでの気温実績データが第一高度データでのデータになるように、0.65℃/100mの補正率で気温実績データを補正する。
【0076】
そして、補正部120は、第一気温予測データで示される気温の予測値の最大値と、気温実績データで示される気温の実績値の最大値とを取得する(S206)。具体的には、補正部120は、上記処理(S204)で高度を合わせる補正を行った第一気温予測データ及び気温実績データについて、気温の予測値の最大値と気温の実績値の最大値とを取得する。例えば、
図7に示すように、補正部120は、気温の予測値の最大値であるA地点における38時間先の気温の予測値TA38=34.0℃と、気温の実績値の最大値であるD地点における39時間先の気温の実績値TD39=36.0℃とを取得する。つまり、補正部120は、所定エリアにおける、第一期間のうちの第二期間に対応する期間ごとに、気温の予測値の最大値と気温の実績値の最大値とを取得する。第一期間のうちの第二期間に対応する期間とは、第一期間のうちの第二期間と同じ季節または同じ月における第二期間と同じ長さの期間である。
【0077】
そして、補正部120は、第一気温予測データで示される気温の予測値が、気温実績データで示される気温の実績値よりも小さいか否かを判断する(S208)。具体的には、補正部120は、上記処理(S206)で取得した気温の予測値の最大値及び気温の実績値の最大値ごとに、気温の予測値の最大値が気温の実績値の最大値よりも小さいか否かを判断する。
【0078】
補正部120は、第一気温予測データで示される気温の予測値が、気温実績データで示される気温の実績値よりも小さい場合(S208でYES)、当該気温の予測値及び当該気温の実績値を抽出する(S210)。補正部120は、第一気温予測データで示される気温の予測値が、気温実績データで示される気温の実績値以上の場合(S208でNO)には、当該気温の予測値及び当該気温の実績値を抽出しない(S212)。つまり、補正部120は、気温の予測値の最大値が気温の実績値の最大値よりも小さい場合にのみ、当該気温の予測値の最大値及び当該気温の実績値の最大値を抽出する。
【0079】
そして、補正部120は、第一気温予測データで示される気温の予測値における、第二気温予測データで示される気温の予測値から所定範囲内での値を抽出する(S214)。具体的には、補正部120は、上記処理(S210)で抽出した気温の予測値の最大値が、第二気温予測データで示される気温の予測値の最大値から所定範囲内か否かを判断し、当該気温の予測値の最大値が当該所定範囲内である場合に、当該気温の予測値の最大値を抽出する。なお、補正部120は、上記の第一気温予測データで示される気温の予測値の最大値を取得した処理(S206)と同様の手法により、第二気温予測データで示される気温の予測値の最大値を取得する。例えば、補正部120は、第二気温予測データで示される気温の予測値の最大値が25℃の場合には、第一気温予測データで示される気温の予測値の最大値のうち、25℃±2℃(23℃~27℃)の範囲内での値を抽出する。
【0080】
そして、補正部120は、第一気温予測データで示される気温の予測値と、気温実績データで示される気温の実績値との差異における100パーセンタイルでの値を気温の予測誤差として、気温誤差データを算出する(S216)。具体的には、補正部120は、上記処理(S214)で抽出した気温の予測値の最大値と、それに対応する気温の実績値の最大値との差異における100パーセンタイルでの値を算出する。例えば、補正部120は、第二気温予測データで示される気温の予測値の最大値が25℃の場合に、第一気温予測データで示される気温の予測値の最大値と気温の実績値の最大値との差異における100パーセンタイルでの値が5.7℃であれば、気温誤差データが5.7℃であると算出する。
【0081】
本実施の形態では、上記処理(S214及びS216)において、補正部120は、以下の処理を行う。
図8に示すように、補正部120は、-10~40℃の範囲のうち、第一気温予測データで示される気温の予測値の最大値が存在する区間を対象として、1℃刻みで、当該気温の予測値の最大値が該当気温±2℃のケースの予測誤差(差異)をサンプリングし、当該予測誤差のパーセンタイル値を算出する。次に、補正部120は、第二気温予測データで示される気温の予測値の最大値を取得する。例えば、第二気温予測データで示される気温の予測値の最大値が25℃の場合、補正部120は、
図8に示されるようなデータから、気温の予測値が25℃の場合での予測誤差における100パーセンタイルでの値が、5.7℃であると算出する。これにより、補正部120は、気温誤差データが5.7℃であると算出する。
【0082】
以上のようにして、補正部120が気温誤差データを方法1で算出する処理は、終了する。
【0083】
次に、補正部120が気温誤差データを方法2で算出する処理について説明する。
図9に示すように、まず、補正部120は、第一モデルを用いて、第一気象予測データ211を更新する(
図9のS201)。つまり、補正部120は、第一気象予測データ211に第一モデルを適用して、第一気象予測データ211に含まれる第一気温予測データ及び第二気温予測データを更新する。本実施の形態では、第一モデルは、ニューラルネットワークモデルである。ニューラルネットワークモデルにおいては、目的関数を気温実績データとし、説明変数を第一気温予測データ及び第二気温予測データとして、機械学習モデル(アルゴリズムはニューラルネットワーク)を構築する。なお、上記所定エリアにおける各地点に1モデルを構築する。モデル作成においては、データの標準化を行う、ホールドアウト法により学習を行う(3年を学習データ、2年をテストデータとする)、過学習防止のため交差検証(クロスバリデーション)を行う(データを100分割し、その1%を検証データとする)、等の処理が実行される。モデル作成においては、その他、ニューラルネットワークにおいて一般的に行われる処理が実行される。
【0084】
また、ニューラルネットワークモデルにおいては、時刻に応じて、雲の量が多いほど気温が低くなる、または、雲の量が多いほど気温が高くなるように設定する。つまり、補正部120は、時刻に応じて、雲の量が多いほど気温が低くなる、または、雲の量が多いほど気温が高くなるように設定されたモデルを用いて、第一気象予測データ211を更新する。具体的には、以下の通りである。雲の量が地上気温に及ぼす影響は、日中と夜間とでは逆に作用する。つまり、日中は、雲の量が多いと温度の上昇が抑制されるが、その一方、夜間では、雲の量が多いと気温の低下が抑制される。このため、ニューラルネットワークモデルにおいては、以下の手順でデータ変換を実施する。まず、上記所定エリアにおける各地点の緯度経度から、ある年の日の出時刻及び日の入り時刻を算出する。そして、日の出から日の入りまでを日中と設定し、日の入りから日の出までを夜間と設定する。そして、日中と夜間において、時刻別に係数を設定する。変換式は以下の通りである。
【0085】
日中:変換後の値=(100-雲量)×時間毎に設定した係数×1
夜間:変換後の値=(100-雲量)×時間毎に設定した係数×(-1)
【0086】
そして、補正部120は、第一モデルを適用して更新された第一気象予測データ211を用いて、気温誤差データを算出する(
図9のS202~S216)。この気温誤差データを算出する処理(
図9のS202~S216)は、上述した方法1における処理(
図6のS202~S216)と同様の処理によって行われる。なお、方法1における高度を合わせる処理(
図6のS204)は、ニューラルネットワークモデルにおける気温誤差データの更新処理(
図9のS201)の中で行われる。
【0087】
次に、補正部120が気温誤差データを方法3で算出する処理について説明する。
図10に示すように、まず、補正部120は、第二モデルを用いて、第一気象予測データ211を更新する(
図10のS201)。つまり、補正部120は、第一気象予測データ211に第二モデルを適用して、第一気象予測データ211に含まれる第一気温予測データ及び第二気温予測データを更新する。本実施の形態では、第二モデルは、WRFモデルである。WRFモデルにおいては、計算負荷を低減するために、送電可能容量を推定する対象のエリアのみ高解像度で計算し、その外側のエリアは粗く計算する(ネスティング手法)。モデル作成においては、その他、WRFにおいて一般的に行われる処理が実行される。
【0088】
WRFモデル(第二モデル)では、送電可能容量を推定する対象のエリアよりも大きなエリアでのデータが使用される。これに対し、ニューラルネットワークモデル(第一モデル)では、送電可能容量を推定する対象のエリアでのデータが使用される。つまり、ニューラルネットワークモデル(第一モデル)とWRFモデル(第二モデル)とは、異なる大きさのエリアにおけるデータを使用するモデルである。このため、補正部120は、第一気象予測データ211に含まれる第一気温予測データ及び第二気温予測データのうちの異なる大きさのエリアにおけるデータを使用する複数のモデルを用いて、第一気象予測データ211を更新する。
【0089】
そして、補正部120は、第二モデルを適用して更新された第一気象予測データ211を用いて、気温誤差データを算出する(
図10のS202~S216)。この気温誤差データを算出する処理(
図10のS202~S216)は、上述した方法1における処理(
図6のS202~S216)と同様の処理によって行われる。
【0090】
以上のようにして、補正部120が気温誤差データを複数の方法(方法1~3)で算出する処理(
図5のS105)は、終了する。つまり、本実施の形態では、補正部120は、気温誤差データを複数の方法として方法1~3で算出する。方法1は、モデルを用いない方法である。方法2は、第一モデルを用いる方法である。方法3は、第二モデルを用いる方法である。
【0091】
次に、補正部120が第二気温予測データを複数の方法で補正する処理(
図5のS106)について、詳細に説明する。
図11は、本実施の形態に係る補正部120が第二気温予測データを複数の方法で補正する処理(
図5のS106)を示すフローチャートである。
図12は、本実施の形態に係る補正部120が第二気象予測データ152を用いて第二気温予測データを補正する処理(
図11のS304)を示すフローチャートである。
図13は、本実施の形態に係る補正部120による補正後の第二気温予測データを示す図である。
【0092】
図11に示すように、まず、補正部120は、上記複数の方法(方法1~3)のそれぞれについて、気温誤差データを用いて、第二気温予測データを補正する(S302)。具体的には、補正部120は、上記複数の方法(方法1~3)のそれぞれについて、第一気象予測データ151から第二気温予測データを取得し、上記処理(
図5のS105)で算出した気温誤差データを、第二気温予測データに加算して、第二気温予測データを補正する。例えば、補正部120は、気温誤差データが5.7℃であると算出した場合には、1時間先から39時間先までの第二気温予測データの各時間での気温の予測値に5.7℃を加算して、第二気温予測データを補正する。
【0093】
そして、補正部120は、上記複数の方法(方法1~3)のそれぞれについて、第二気象予測データ152を用いて、第二気温予測データをさらに補正する(S304)。具体的には、補正部120は、第二気象予測データ152を用いて、所定時点以降の第二期間よりも短い期間における第二気温予測データを補正する。この補正部120が第二気温予測データをさらに補正する処理について、以下に詳細に説明する。
【0094】
図12に示すように、補正部120は、第二気象予測データ152及び気象観測データ153から、第三気温予測データ及び気温実績データを取得する(S402)。具体的には、補正部120は、第二気象予測データ152から第三気温予測データを取得し、気象観測データ153から気温実績データを取得する。本実施の形態では、第三気温予測データは、例えば、所定エリアにおいて、現時点を予測した1時間前の気温の予測値と、1時間先から10時間先までの時点を予測した気温の予測値と、を示すデータである。
【0095】
そして、補正部120は、第三気温予測データの気温の予測値と、気温実績データの気温の実績値との高度を合わせる補正を行う(S404)。具体的には、補正部120は、上記の第一気温予測データと気温実績データとの高度を合わせる補正(
図6のS204)と同様の手法により、第三気温予測データと気温実績データとの高度を合わせる補正を行う。
【0096】
そして、補正部120は、第三気温予測データで示される気温の予測値の最大値と、気温実績データで示される気温の実績値の最大値とを取得する(S406)。具体的には、補正部120は、上記処理(S404)で高度を合わせる補正を行った第三気温予測データ及び気温実績データについて、気温の予測値の最大値と気温の実績値の最大値とを取得する。例えば、補正部120は、所定エリアにおける、現時点を予測した1時間前の気温の予測値の最大値と、現時点での気温の実績値の最大値とを取得する。
【0097】
そして、補正部120は、第三気温予測データで示される気温の予測値が、気温実績データで示される気温の実績値よりも小さいか否かを判断する(S408)。具体的には、補正部120は、上記処理(S406)で取得した気温の予測値の最大値が、気温の実績値の最大値よりも小さいか否かを判断する。
【0098】
補正部120は、気温の予測値が気温の実績値よりも小さい場合(S408でYES)、気温の実績値から気温の予測値を差し引いた値を、気温誤差データとして算出する(S410)。補正部120は、気温の予測値が気温の実績値以上の場合(S408でNO)には、気温誤差データは0であると算出する(S412)。
【0099】
そして、補正部120は、所定時点以降の第二期間よりも短い期間における第二気温予測データを補正する(S414)。具体的には、補正部120は、上記処理(S410及びS412)で算出した気温誤差データを、第三気温予測データのうちの所定時点以降の第二期間よりも短い期間における気温の予測値に加算して、第三気温予測データの当該短い期間における気温の予測値を補正する。そして、補正部120は、第二気温予測データの当該短い期間における気温の予測値を、補正した第三気温予測データの当該短い期間における気温の予測値に書き換えることで、第二気温予測データを補正する。例えば、補正部120は、第三気温予測データの1時間先から2時間先までの気温の予測値に気温誤差データを加算して、第三気温予測データの1時間先から2時間先までの気温の予測値を補正する。そして、補正部120は、第二気温予測データの1時間先から2時間先までの気温の予測値を、補正した第三気温予測データの1時間先から2時間先までの気温の予測値に書き換えることで、第二気温予測データを補正する。
【0100】
図11に戻り、補正部120は、上記複数の方法(方法1~3)のそれぞれについて、第一高度データを用いて、第二気温予測データを補正する(S306)。具体的には、補正部120は、上記複数の方法(方法1~3)のそれぞれについて、第二気温予測データを、所定エリアにおける送電線の高度に応じた第二気温予測データに補正する。つまり、補正部120は、第一高度データでの第二気温予測データが、所定エリアに配置されている送電線と同じ高さでのデータになるように、0.65℃/100mの補正率で第二気温予測データを補正する。
【0101】
このように、補正部120は、上記複数の方法(方法1~3)のそれぞれについて、第二気温予測データを補正して、
図13に示すような補正後の第二気温予測データを取得する。
図13に示すように、補正後の第二気温予測データは、最過酷断面で検討していた従来の検討値よりも小さい値となる。
【0102】
以上のようにして、補正部120が第二気温予測データを複数の方法で補正する処理(
図5のS106)は、終了する。補正部120が当該複数の方法(方法1~3)での補正を実行するタイミングは特に限定されず、当該複数の方法(方法1~3)での補正を、並行して(同じタイミングで)実行してもよいし、連続して(異なるタイミングで)実行してもよい。このように、補正部120は、更新された複数(本実施の形態では3つ)の第一気象予測データ211のそれぞれに含まれる第一気温予測データ及び第二気温予測データを用いて、複数(本実施の形態では3つ)の第二気温予測データを算出する。
【0103】
次に、推定部130が送電可能容量を推定する処理(
図4のS108)について、詳細に説明する。
図14は、本実施の形態に係る推定部130が送電可能容量を推定する処理(
図4のS108)を示すフローチャートである。
図15は、本実施の形態に係る推定部130が算出した送電可能容量の推定値を示す図である。
【0104】
図14に示すように、まず、推定部130は、複数の第二気温予測データを用いて、複数の送電可能容量を算出する(S502)。具体的には、推定部130は、上記複数の方法(方法1~3)のそれぞれについて、補正部120が補正した第二気温予測データを含む第一気象予測データ151を用いて、第二期間における所定エリアでの送電可能容量を算出する。例えば、推定部130は、第二気温予測データと送電可能容量との関係を示す関係式に、第二期間における所定エリアでの第二気温予測データを代入することにより、第二期間における所定エリアでの送電可能容量を算出する。当該関係式としては、どのような関係式が使用されてもよいが、例えば、第二気温予測データで示される気温の予測値が高くなるほど送電可能容量が小さくなるような数式である。
【0105】
そして、推定部130は、第一気象予測データ151に含まれる風速、日射量及び降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータをさらに用いて、複数の送電可能容量を補正する(S504)。つまり、推定部130は、第二期間における所定エリアでの風速、日射量及び降水量等の気温以外の気象情報の予測値を示すデータをさらに用いて、上記処理(S502)で算出した複数(本実施の形態では3つ)の送電可能容量を補正する。例えば、推定部130は、風速、日射量及び降水量と送電可能容量との関係を示す関係式に、第二期間における所定エリアでの風速、日射量及び降水量のデータを代入することにより、第二期間における所定エリアでの送電可能容量を補正する。当該関係式としては、どのような関係式が使用されてもよいが、例えば、風速が大きいほど送電可能容量が大きくなり、日射量が大きいほど送電可能容量が小さくなり、降水量が多いほど送電可能容量が大きくなるような数式である。
【0106】
なお、推定部130は、第二気温予測データ、風速、日射量及び降水量と送電可能容量との関係を示す関係式に、第二期間における所定エリアでの第二気温予測データ、風速、日射量及び降水量のデータを代入することにより、第二期間における所定エリアでの送電可能容量を算出することにしてもよい。
【0107】
そして、推定部130は、複数(本実施の形態では3つ)の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する(S506)。つまり、推定部130は、推定する送電可能容量として、補正部120が算出した複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する。本実施の形態では、推定部130は、推定する送電可能容量として、複数の送電可能容量のうちの最大の送電可能容量を選定する。
【0108】
推定部130は、推定する送電可能容量として、推定する日、時刻及びエリアの少なくとも1つに応じて、複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定してもよい。例えば、モデルを使用しない方法1の場合には、夏季または暑い日中における推定精度が低い傾向にある。このため、推定部130は、夏の日または暑い時刻においては、ニューラルネットワークモデル(第一モデル)またはWRFモデル(第二モデル)に基づいて算出された送電可能容量を選定してもよい。また、WRFモデル(第二モデル)においては、夏季の推定精度が高い傾向にある。このため、推定部130は、夏の日においては、WRFモデル(第二モデル)に基づいて算出された送電可能容量を選定してもよい。また、ニューラルネットワークモデル(第一モデル)においては、内陸よりも海に近いエリアの推定精度が高い傾向にある。このため、推定部130は、海に近いエリアにおいては、ニューラルネットワークモデル(第一モデル)に基づいて算出された送電可能容量を選定してもよい。推定部130は、上記以外の判断基準によって、複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定してもよい。
【0109】
このように、推定部130は、送電可能容量を推定(選定)して、
図15に示すような送電可能容量の推定値を取得する。
図15に示すように、送電可能容量の推定値は、従来推定していた送電可能容量よりも大きい。このため、送電可能容量を考慮しない場合の予想潮流が、従来の送電可能容量を超える場合でも、当該予想潮流は、送電可能容量の推定値を超えないため、当該予想潮流を制限せずに運用できる。
【0110】
以上のようにして、推定部130が送電可能容量を推定する処理(
図4のS108)は、終了する。
【0111】
[3 効果の説明]
本発明の実施の形態に係る送電可能容量推定装置100は、第一期間及び第二期間における第一気温予測データ及び第二気温予測データを含む第一気象予測データ211と、第一期間における気温実績データを含む気象観測データ231と、を取得する。例えば、送電可能容量推定装置100は、気象庁のメソモデル(MSM)から予測データを取得し、アメダスから観測データを取得することで、送電線ルート上に複数のセンサを取り付けるような必要がなく、第一気象予測データ211と気象観測データ231とを取得できる。また、送電可能容量推定装置100は、第一気温予測データ及び気温実績データを用いて気温誤差データを算出し、気温誤差データを用いて第二気温予測データを補正し、補正後の第二気温予測データを用いて第二期間における送電可能容量を推定する。特に、送電可能容量推定装置100は、第二気温予測データを複数の方法で補正することにより、補正された複数の第二気温予測データを算出し、複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定する。このように、送電可能容量推定装置100は、誤差が補正された複数の第二気温予測データを用いて、第二期間における送電可能容量を推定する。これにより、送電可能容量推定装置100は、所定時点以降の第二期間における送電線の運用可能容量である送電可能容量を比較的精度良く推定できるため、送電可能容量の推定結果に基づいて、送電線を柔軟に運用できる。したがって、送電可能容量推定装置100によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟な運用を図ることができる。
【0112】
また、送電線ルート上に複数のセンサを取り付けるような必要がないため、コスト低減を図ることができる。また、送電線は、所定エリア内で複数地点にまたがって配置されているが、地点ごとに気温誤差データを算出すると誤差が大きくなり過ぎることがある。地点ごとに気温誤差データを算出して地点ごとに送電可能容量を推定すると、送電可能容量の制御も複雑になる。このため、送電可能容量推定装置100は、エリアごとに気温誤差データを算出することで、送電可能容量が小さくなり過ぎず、実態に合った送電可能容量で、送電線の柔軟な運用を図ることができる。
【0113】
また、送電可能容量推定装置100は、第一気象予測データ211を複数のモデルを用いて更新し、更新された複数の第一気象予測データ211のそれぞれに含まれるデータを用いて、複数の第二気温予測データを算出する。これにより、送電可能容量推定装置100は、複数のモデルから算出される複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から、1つの送電可能容量を選定することができる。したがって、送電可能容量推定装置100は、比較的推定精度が高いモデルを用いて得られた送電可能容量を選定することで、送電可能容量を比較的精度良く推定できる。
【0114】
また、送電可能容量推定装置100は、第一気象予測データ211に含まれるデータのうちの異なる大きさのエリアにおけるデータを使用する複数のモデルを用いて、第一気象予測データ211を更新する。これにより、送電可能容量推定装置100は、異なるデータを使用する複数のモデルから算出される複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量から、1つの送電可能容量を選定することができる。したがって、送電可能容量推定装置100は、比較的推定精度が高いモデルを用いて得られた送電可能容量を選定することで、送電可能容量を比較的精度良く推定できる。
【0115】
また、例えば、1日のうち、日中は、雲の量が多いほど温度の上昇が抑制され、夜間は、雲の量が多いほど気温の低下が抑制されるというように、雲の量が気温に及ぼす影響は、時刻によっては逆に作用する。このため、送電可能容量推定装置100は、時刻に応じて、雲の量が多いほど気温が低くなる、または、雲の量が多いほど気温が高くなるように設定されたモデルを含む複数のモデルを用いて、第一気象予測データ211を更新する。これにより、送電可能容量推定装置100は、比較的推定精度が高いモデルを用いることができるため、送電可能容量を比較的精度良く推定できる。
【0116】
また、推定した送電可能容量が、実際に送電可能な容量よりも小さすぎると、送電線の柔軟な運用が阻害される。送電可能容量推定装置100は、複数の第二気温予測データを用いて得られる複数の送電可能容量のいずれにおいても、気温の予測誤差を見込んでいるため、複数の送電可能容量のいずれを選択しても問題は生じにくい。このため、送電可能容量推定装置100は、推定した送電可能容量が、実際に送電可能な容量よりも小さすぎないように、複数の送電可能容量のうちの最大の送電可能容量を選定する。これにより、送電線の柔軟な運用を図ることができる。
【0117】
また、送電可能容量推定装置100が用いるモデルにおいては、例えば、夏季等の季節における推定精度が高かったり、日中等の温度の高い時刻における推定精度が高かったり、内陸よりも海に近いエリアにおける推定精度が高かったりする場合がある。このため、送電可能容量推定装置100は、推定する日、時刻及びエリアの少なくとも1つに応じて、複数の送電可能容量から1つの送電可能容量を選定してもよい。これにより、送電可能容量推定装置100は、送電可能容量を比較的精度良く推定できる。
【0118】
また、送電可能容量推定装置100は、第一期間における気温の予測値の最大値と気温の実績値の最大値との差異を気温誤差データとして算出する。つまり、気温が最大となる場合に、気温が送電可能容量に与える影響が大きくなるため、送電可能容量推定装置100は、気温が最大となる場合での気温誤差データを算出する。これにより、送電可能容量推定装置100は、影響の大きい場合を基準にして第二気温予測データを補正して送電可能容量を推定することで、安全サイドで送電可能容量を推定することができる。したがって、送電可能容量推定装置100によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ安全な運用を図ることができる。
【0119】
また、送電可能容量推定装置100は、第一期間における気温の予測値が気温の実績値よりも小さいか否かを判断し、気温の予測値が気温の実績値よりも小さい場合の当該気温の予測値及び気温の実績値を抽出して、気温誤差データを算出する。つまり、送電可能容量推定装置100は、安全サイドで、気温の予測値が気温の実績値よりも小さい場合のデータを使用して、気温誤差データを算出する。これにより、送電可能容量推定装置100によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ安全な運用を図ることができる。
【0120】
また、過去の予測値が将来の予測値からあまりにも外れている場合には、そのような過去の予測値を将来の予測値の誤差算出に用いると算出精度が低下するおそれがある。このため、送電可能容量推定装置100は、第一期間での気温の予測値における、第二期間での気温の予測値から所定範囲内での値を抽出して、気温誤差データを算出する。これにより、送電可能容量推定装置100は、気温誤差データの算出において、過去の第一期間での気温の予測値における、将来の第二期間での気温の予測値から所定範囲外での値を用いないため、気温誤差データの算出精度を向上させることができる。また、気温の予測値の誤差は、気温の予測値によって異なると想定される(予測気温25℃であれば誤差5℃発生する可能性はあるが、予測気温38℃で誤差5℃発生は考えにくい)。このため、送電可能容量推定装置100は、第二期間での気温の予測値から所定範囲内での値を抽出して、予測値の誤差を算出する。これにより、送電可能容量推定装置100は、気温誤差データの算出精度を向上させることができる。これらにより、送電可能容量推定装置100によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ精度の良い運用を図ることができる。
【0121】
また、送電可能容量推定装置100は、第一期間での気温の予測値と気温の実績値との差異における100パーセンタイルでの値を気温の予測誤差として、気温誤差データを算出する。つまり、気温の予測値と気温の実績値との差異がばらつく場合には、送電可能容量推定装置100は、安全サイドで、当該差異における100パーセンタイルでの値を気温の予測誤差として採用し、気温誤差データを算出する。これにより、送電可能容量推定装置100によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ安全な運用を図ることができる。
【0122】
また、送電可能容量推定装置100が第一気象予測データ211を取得する際に、第一気象予測データ211の配信遅延時間が長い場合、第一気象予測データ211を用いた第二気温予測データの補正の精度が低下するおそれがある。このため、送電可能容量推定装置100は、第一気象予測データ211よりも予測期間は短いものの、配信遅延時間が短い第二気象予測データ221を取得し、第二気象予測データ221(152)を用いて、所定時点以降の第二期間よりも短い期間における第二気温予測データを補正する。これにより、送電可能容量推定装置100は、所定時点以降の第二期間よりも短い期間においては、第二気温予測データの補正の精度の向上を図ることができる。また、送電可能容量推定装置100は、例えば、気象庁の局地モデル(LFM)から、第二気象予測データ221を簡易に取得できる。これらにより、送電可能容量推定装置100によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ精度の良い運用を図ることができる。
【0123】
また、送電可能容量推定装置100が第一気象予測データ211を取得する際に、第一気象予測データ211の更新間隔が長い場合、第一気象予測データ211を用いた第二気温予測データの補正の精度が低下するおそれがある。このため、送電可能容量推定装置100は、第一気象予測データ211よりも予測期間は短いものの、更新間隔が短い第二気象予測データ221を取得し、第二気象予測データ221(152)を用いて、所定時点以降の第二期間よりも短い期間における第二気温予測データを補正する。これにより、送電可能容量推定装置100は、所定時点以降の第二期間よりも短い期間においては、第二気温予測データの補正の精度の向上を図ることができる。また、送電可能容量推定装置100は、例えば、気象庁の局地モデル(LFM)から、第二気象予測データ221を簡易に取得できる。これらにより、送電可能容量推定装置100によれば、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ精度の良い運用を図ることができる。
【0124】
また、気温は、高度によって変化する。例えば、高度が高くなると気温は下がり、高度が低くなると気温は上がる。このため、送電可能容量推定装置100は、予測地点の第一高度データと観測地点の第二高度データとを用いて、送電線の高度に応じた第二気温予測データに補正する。これにより、送電可能容量推定装置100は、精度良く第二気温予測データを補正することができるため、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ精度の良い運用を図ることができる。
【0125】
また、送電可能容量は、風速、日射量または降水量によっても影響を受ける。例えば、送電線周囲の風速が大きいと送電線の温度が低下し、日射量が大きいと送電線の温度が上昇し、降水量が多いと送電線の温度が低下するため、送電可能容量が影響を受ける。このため、送電可能容量推定装置100は、風速、日射量及び降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータをさらに含む第一気象予測データ211を取得し、風速、日射量及び降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータをさらに用いて、送電可能容量を推定する。これにより、送電可能容量推定装置100は、精度良く送電可能容量を推定することができるため、簡易な構成で、送電線の柔軟かつ精度の良い運用を図ることができる。
【0126】
[4 変形例の説明]
以上、本実施の形態に係る送電可能容量推定装置100について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0127】
例えば、上記実施の形態では、所定時点以前の第一期間は、現時点から過去3年間または5年間等とし、所定時点以降の第二期間は、1時間先から39時間先までとした。しかし、第一期間は、過去の期間であればどのような時期及び長さの期間でもよく、第二期間は、将来の期間であればどのような時期及び長さの期間でもよい。
【0128】
また、上記実施の形態では、補正部120が使用する複数の方法として、モデルを用いない方法1、第一モデル(ニューラルネットワークモデル)を用いる方法2、及び、第二モデル(WRFモデル)を用いる方法3の3つの方法を例示した。しかし、当該複数の方法は、方法1~3に他の方法も加えた4つ以上の方法でもよいし、方法1~3のうちのいずれか2つの方法でもよい。当該2つの方法としては、2つのモデルを用いる2つの方法でもよいし、モデルを用いない方法1と1つのモデルを用いる1つの方法とからなる2つの方法でもよい。または、第一モデルは、ニューラルネットワークモデル以外のモデルでもよいし、第二モデルは、WRFモデル以外のモデルでもよい。当該複数の方法は、ユーザによって適宜決定されればよい。
【0129】
また、上記実施の形態では、補正部120は、第一気温予測データで示される気温の予測値の最大値と、気温実績データで示される気温の実績値の最大値との差異を気温誤差データとして算出することとした。しかし、補正部120は、気温誤差データを算出する際に採用する数値は、上記最大値でなくてもよく、どのような断面での数値を採用してもよい。
【0130】
また、上記実施の形態では、補正部120は、第一気温予測データで示される気温の予測値が気温実績データで示される気温の実績値よりも小さい場合の気温の予測値及び気温の実績値を抽出することとした。しかし、補正部120は、当該気温の予測値が気温の実績値よりも小さいか否かを判断することなく、全ての場合のデータを抽出することにしてもよい。
【0131】
また、上記実施の形態では、補正部120は、第一気温予測データで示される気温の予測値における、第二気温予測データで示される気温の予測値から所定範囲内での値を抽出することとした。しかし、補正部120は、当該所定範囲外の値も抽出することにしてもよい。
【0132】
また、上記実施の形態では、補正部120は、第一気温予測データで示される気温の予測値と、気温実績データで示される気温の実績値との差異における100パーセンタイルでの値を気温の予測誤差として、気温誤差データを算出することとした。しかし、補正部120は、100パーセンタイルでの値ではなく、98、95、90または80パーセンタイルでの値を気温の予測誤差として、気温誤差データを算出することにしてもよい。
【0133】
また、上記実施の形態では、取得部110が第二気象予測データを取得し、補正部120は、第二気象予測データを用いて第二気温予測データを補正することとした。しかし、取得部110は第二気象予測データを取得せず、補正部120は、第二気象予測データを用いた第二気温予測データの補正を行わないことにしてもよい。
【0134】
また、上記実施の形態では、取得部110が高度データを取得し、補正部120は、高度データを用いて第二気温予測データを補正することとした。しかし、取得部110は高度データを取得せず、補正部120は、高度データを用いた第二気温予測データの補正を行わないことにしてもよい。
【0135】
また、上記実施の形態では、取得部110が風速、日射量及び降水量の少なくとも1つの予測値を示すデータを取得し、推定部130は、当該データを用いて送電可能容量を推定することとした。しかし、取得部110は風速、日射量及び降水量を取得せず、推定部130は、当該データを用いた送電可能容量の推定を行わないことにしてもよい。
【0136】
また、本発明は、送電可能容量推定装置100及び送電可能容量推定方法として実現することができるだけでなく、当該送電可能容量推定方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとしても実現することができる。つまり、送電可能容量推定装置100が備える各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。さらに、本発明は、当該プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリとしても実現することができる。そして、当該プログラムは、当該記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができる。また、本発明は、送電可能容量推定装置100に含まれる処理部を備える集積回路としても実現することができる。つまり、
図2に示した送電可能容量推定装置100の各機能ブロックは、集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。このように、送電可能容量推定装置100は、各構成要素が、専用のハードウェアで構成されてもよいし、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0137】
また、上記実施の形態及びその変形例における任意の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、送電線の運用可能容量である送電可能容量を推定する送電可能容量推定装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0139】
100 送電可能容量推定装置
110 取得部
120 補正部
130 推定部
140 出力部
150 記憶部
151、211 第一気象予測データ
152、221 第二気象予測データ
153、231 気象観測データ
154 推定用データ
155 モデルデータ
200 気象データ管理装置
210 メソモデルデータ保持部
220 局地モデルデータ保持部
230 アメダスデータ保持部
300 通信ネットワーク