(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080026
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】溶剤回収システム
(51)【国際特許分類】
F26B 25/00 20060101AFI20240606BHJP
F26B 5/00 20060101ALI20240606BHJP
F26B 9/06 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F26B25/00 F
F26B5/00
F26B9/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192841
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西森 豊
(72)【発明者】
【氏名】元井 昌司
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA03
3L113AB01
3L113AC21
3L113AC27
3L113AC46
3L113AC49
3L113AC67
3L113AC86
3L113BA34
3L113CA09
3L113CA12
3L113CB13
3L113CB18
3L113CB32
3L113DA02
3L113DA25
(57)【要約】
【課題】回収する溶剤を従来よりも正確に希釈することができる溶剤回収システムを提供することを目的としている。
【解決手段】溶剤を含むガスを冷却部に供給する供給路と、前記供給路から供給された前記溶剤を含むガスを冷却し、前記溶剤を液化させる前記冷却部と、液化した前記溶剤を回収する回収部と、前記回収部により回収される前記溶剤を希釈するための水分を加える水分付与手段と、を備える溶剤回収システムであって、前記供給路内の湿度を測定する湿度測定手段と、前記水分付与手段により付与する水分の量を制御する制御部と、をさらに備えており、前記制御部は、前記湿度測定手段による測定結果に基づいて、前記水分付与手段により加える水分の量を制御する構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤を含むガスを冷却部に供給する供給路と、
前記供給路から供給された前記溶剤を含むガスを冷却し、前記溶剤を液化させる前記冷却部と、
液化した前記溶剤を回収する回収部と、
前記回収部に回収される前記溶剤を希釈するための水分を加える水分付与手段と、を備える溶剤回収システムであって、
前記供給路内の湿度を測定する湿度測定手段と、
前記水分付与手段により付与する水分の量を制御する制御部と、をさらに備えており、
前記制御部は、前記湿度測定手段による測定結果に基づいて、前記水分付与手段により加える水分の量を制御することを特徴とする溶剤回収システム。
【請求項2】
前記湿度測定手段は、前記溶剤の流れる方向において前記水分付与手段により水分を加える位置よりも上流側で前記供給路内の湿度を測定するよう配置されることを特徴とする請求項1に記載の溶剤回収システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記湿度測定手段による測定結果に基づいてガスに含まれる水分のうち前記冷却部により液化する水分の量を算出し、算出した水分の量を加味したうえで、回収する前記溶剤の濃度が所定の値になるように希釈するよう前記水分付与手段により加える水分の量を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶剤回収システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記溶剤の濃度を、希釈された状態の前記溶剤が非危険物となる濃度よりも0~10%低い値になるよう前記水分付与手段により加える水分の量を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶剤回収システム。
【請求項5】
前記水分付与手段は、前記湿度測定手段による測定位置よりも下流側の前記供給路内に水分を加えるように設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶剤回収システム。
【請求項6】
前記供給路内の前記溶剤の濃度を測定する濃度測定手段をさらに備え、
前記制御部は、前記濃度測定手段による測定結果に基づいて前記水分付与手段により加える水分の量を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶剤回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産設備から排出される溶剤を回収する溶剤回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染や安全性の問題により、生産設備から排出される有機溶剤(以下、溶剤と呼ぶ)を回収する溶剤回収システムの需要が高まっている。この溶剤回収システムは、たとえば、下記特許文献1のように生産設備に設けられており、生産設備から排出される溶剤を含むガスを冷却することによって溶剤を液化させて回収している。
【0003】
溶剤回収システムにより回収する溶剤は、NMP(N‐メチル‐ピロリドン)のような危険物である場合がある。この場合、液化した溶剤に水分を加えて溶剤を希釈した状態で回収している。ここで、従来の溶剤回収システムでは、少なくとも水分により希釈された状態の溶剤が非危険物となるように加える水分の量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の溶剤回収システムでは、回収する溶剤を正確に希釈することができない場合があった。
【0006】
具体的に説明する。従来の溶剤回収システムでは、ガスにもとから含まれていた水分の存在を加味せずに、液化した溶剤に水分を加えていた。この場合、ガスにもとから含まれていた水分の一部が液化し、その液化した分だけ溶剤を余計に希釈することになるため、溶剤の濃度に誤差が生じてしまう。そのため、回収する溶剤を正確に希釈することができなかった。これにより、水分により溶剤を希釈しすぎてしまった場合、溶剤を再利用するための処理において消費するエネルギーが多くなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みてされたものであり、回収する溶剤を従来よりも正確に希釈することができる溶剤回収システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の溶剤回収システムは、溶剤を含むガスを冷却部に供給する供給路と、前記供給路から供給された前記溶剤を含むガスを冷却し、前記溶剤を液化させる前記冷却部と、液化した前記溶剤を回収する回収部と、前記回収部により回収される前記溶剤を希釈するための水分を加える水分付与手段と、を備える溶剤回収システムであって、前記供給路内の湿度を測定する湿度測定手段と、前記水分付与手段により付与する水分の量を制御する制御部と、をさらに備えており、前記制御部は、前記湿度測定手段による測定結果に基づいて、前記水分付与手段により加える水分の量を制御することを特徴としている。
【0009】
上記溶剤回収システムによれば、湿度測定手段が、供給路内の湿度を測定し、この測定結果に基づいて制御部が水分付与手段により加える水分の量を制御している。そのため、供給路22内のガスに含まれる水分の量を加味したうえで、水分付与手段により加える水分の量を制御することができる。これにより、回収する溶剤を従来よりも正確に希釈することができる。
【0010】
また、前記湿度測定手段は、前記溶剤の流れる方向において前記水分付与手段により水分を加える位置よりも上流側で前記供給路内の湿度を測定するよう配置される構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、湿度測定手段が、溶剤の流れる方向において水分付与手段により水分を加える位置よりも上流側で供給路内の湿度を測定するため、制御部は水分付与手段により水分を加える前から供給路内のガスに含まれていた水分の量を加味したうえで、水分付与手段により加える水分の量を制御することができる。これにより、回収する溶剤を従来よりも正確に希釈することができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記湿度測定手段による測定結果に基づいてガスに含まれる水分のうち前記冷却部により液化する水分の量を算出し、算出した水分の量を加味したうえで、回収する前記溶剤の濃度が所定の値になるように希釈するよう前記水分付与手段により加える水分の量を制御する構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、ガスに含まれる水分のうち冷却部により液化する水分の量を算出し、算出した水分の量を加味して、水分付与手段により水分を加えることができるため、回収する溶剤をより正確に希釈することができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記溶剤の濃度を、希釈された状態の前記溶剤が非危険物となる濃度よりも0~10%低い値になるよう前記水分付与手段により加える水分の量を制御する構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、溶剤の濃度を、希釈された状態の溶剤が非危険物となる濃度に近い値になるよう希釈することができるため、混合液の安全性を維持しつつ溶剤と水分を分離するときに消費するエネルギーをより削減することができる。
【0016】
また、前記水分付与手段は、前記湿度測定手段による測定位置よりも下流側の前記供給路内に水分を加えるように設けられている構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、冷却部よりも上流側で、水分を加えることができるため、冷却部よりも上流側でガスの温度を下げることができ、冷却部によりガスに含まれる溶剤を液化させる際の効率を良くすることができる。
【0018】
また、前記供給路内の前記溶剤の濃度を測定する濃度測定手段をさらに備え、前記制御部は、前記濃度測定手段による測定結果に基づいて前記水分付与手段により加える水分の量を制御する構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、制御部は、湿度測定手段による測定結果に加えて濃度測定手段による測定結果に基づいて水分付与手段により加える水分の量を制御するため、回収する溶剤をより正確に希釈することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の溶剤回収システムによれば、回収する溶剤を従来よりも正確に希釈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態における溶剤回収システムを概略的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態における溶剤回収システムの一部を拡大して示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態における溶剤回収システムの1つのバリエーションを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態における溶剤回収システムの1つのバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態における溶剤回収システム100について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0023】
図1は、本実施形態における溶剤回収システム100を概略的に示す図である。
図2は、本実施形態における溶剤回収システム100の一部を拡大して示した図である。
【0024】
本発明の溶剤回収システム100は、生産設備から排出された溶剤を回収するためのものであり、本実施形態では生産設備が備える乾燥設備1から排出されたガスに含まれる溶剤を回収する。本実施形態における溶剤回収システム100は、
図1に示すように乾燥設備1から排出された溶剤を回収する溶剤回収ユニット2と、乾燥設備1と溶剤回収ユニット2間でガスを循環させる循環路3と、を備えている。なお、循環路3には、乾燥設備1から溶剤回収ユニット2に溶剤を含むガスを供給する供給路22が含まれている。
【0025】
本実施形態における生産設備は、リチウムイオン電池の正極を生産するためのものであり、基材Wを搬送する図示しない搬送機構と、搬送される基材W上にスラリーを塗布して塗膜を形成する図示しない塗布機構と、形成された塗膜を乾燥させる乾燥設備1と、を備えている。この生産設備は、アルミ箔などの金属箔を一方向に長いシート状に形成した基材Wを搬送機構により搬送し、搬送される基材W上に活物質、バインダー、導電助剤をNMP(N‐メチル‐ピロリドン)などの溶剤により混合させたスラリーを塗布機構により塗布することによって、基材W上に塗膜を形成している。この基材W上に形成した塗膜を乾燥設備1により加熱して乾燥させることによって、リチウムイオン電池の正極が形成される。なお、本実施形態における溶剤回収システム100により回収する溶剤は、スラリーに含まれるNMPのことである。
【0026】
本実施形態におけるガスは、特に制限されず、たとえば、空気であってもよいし、N2ガスやHeガス、Arガスのような不活性ガスであってもよい。このガスは、供給部4により供給されて塗膜の乾燥に用いられる。
【0027】
本実施形態における循環路3は、乾燥設備1と溶剤回収ユニット2間でガスを循環させるためのものである。本実施形態における循環路3は、
図1に示すように加熱部12から筐体部11にガスを送るよう接続された循環路31、筐体部11から熱交換ユニット5にガスを送るよう接続された循環路32、熱交換ユニット5から冷却部21にガスを送るよう接続された循環路33、冷却部21から熱交換ユニット5にガスを送るよう接続された循環路34、熱交換ユニット5から加熱部12にガスを送るよう接続された循環路35により構成されている。ここで、循環路32および循環路33が、後述する供給路22を形成する。
【0028】
そして、循環路3の各所には、ガスを循環させるための図示しないファンが設けられている。このファンにより、ガスが循環路3を介して加熱部12から筐体部11、熱交換ユニット5、冷却部21、熱交換ユニット5、加熱部12へ、というように循環する。
【0029】
また、循環路3は、大量のガスを循環させることができるよう、十分な開口面積を有している。この循環路3に、供給部4によりガスを供給することによって、乾燥設備1により加熱されて塗膜から気化した溶剤を含むガス中の溶剤の濃度が基準値を超えないように希釈している。ここでいう基準値とは、溶剤を含むガスが危険物化して爆発する限界値のことである。
【0030】
ここで、溶剤回収システム100には、循環路3により循環させられるガスを供給する供給部4が設けられている。供給部4は、
図1に示すようにガスの供給源であり、配管を介して循環路3に接続されている。そして、図示しないファンにより供給部4から循環路3にガスを送っている。なお、供給部4は、溶剤回収システム100を構成する各部を流れるガスに含まれる溶剤の濃度が基準値を超えることがないように、溶剤回収システム100の動作中は循環路3にガスを送り続けるようになっている。
【0031】
また、循環路3の途中には、熱交換ユニット5が設けられている。熱交換ユニット5は、循環路3を介して乾燥設備1から溶剤回収ユニット2に向かうガスと、循環路3を介して溶剤回収ユニット2から乾燥設備1に向かうガスとの間で熱交換を行うための熱交換器である。具体的には、熱交換ユニット5は、
図1に示すように筐体部11から冷却部21に向かうガスが通過するように循環路32と循環路33に接続され、冷却部21から筐体部11に向かうガスが通過するように循環路34と循環路35に接続されるように配置されている。
【0032】
そして、熱交換ユニット5は、その内部を筐体部11から冷却部21に向かうよう循環路32を通る高温のガスと冷却部21から加熱部12に向かうよう循環路34を通る低温のガスが通過することで、高温のガスと低温のガスとで熱交換を行う。これにより、筐体部11から冷却部21に向かうガスは、循環路32を通るガスよりも熱交換ユニット5を通過後の循環路33を通るガスの方が低温になり、冷却部21から加熱部12に向かうガスは、循環路34を通るガスよりも熱交換ユニット5を通過後の循環路35を通るガスの方が高温になる。すなわち、筐体部11から冷却部21に向かうガスが冷却部21に到達するまでに冷却され、冷却部21から加熱部12に向かうガスが加熱部12に到達するまでに加熱されている。
【0033】
本実施形態における乾燥設備1は、塗布機構により基材W上に形成された塗膜を加熱して乾燥させるためのものであり、搬送機構による基材Wの搬送経路上において塗布機構よりも下流側に設けられている。この乾燥設備1は、
図1に示すように塗膜をその内部で加熱するための筐体部11と、筐体部11に向かうガスを加熱する加熱部12と、を有している。
【0034】
筐体部11は、
図1に示すように基材Wの搬送方向に長く形成された箱体であり、搬送機構による基材Wの搬送経路上に設けられている。この筐体部11は、内部に基材Wが通過する空間と、この空間に基材Wが出入りするための入口および出口を有している。これにより、搬送機構により搬送される基材Wが筐体部11内を通過するようになっている。
【0035】
加熱部12は、
図1に示すように循環路3を介して循環するガスの循環方向において筐体部11の上流側に設けられ、循環路3を介して冷却部21から筐体部11に向かうガス、および循環路3を介して供給部4から筐体部11に向かうガスを加熱するためのものである。この加熱部12は、循環路31により筐体部11に接続され、筐体部11に向かうガスを塗膜を加熱するために必要な温度になるまで加熱する。なお、加熱部12は、たとえば、電気ヒータや熱媒ヒータなどのヒータであるとよい。
【0036】
そして、加熱部12により加熱されて高温になったガスが循環路31を通じて図示しないノズルから筐体部11内に導入される。これにより、筐体部11内を搬送される基材W上の塗膜を高温環境にさらして加熱する。このとき、塗膜から溶剤が気化する。この塗膜から気化した溶剤は、筐体部11内のガスとともに循環路32に排出される。
【0037】
これら構成により乾燥設備1は、搬送される基材W上の塗膜を加熱して塗膜から溶剤を気化させることによって、塗膜を乾燥させることができる。
【0038】
本実施形態における溶剤回収ユニット2は、乾燥設備1により塗膜から気化した溶剤を回収するためのものであり、
図1に示すように溶剤を含むガスを冷却する冷却部21と、冷却部21に溶剤を含むガスを供給する供給路22と、溶剤を希釈するための水分を加える水分付与手段6と、溶剤を回収する回収部23と、冷却部21と回収部23を接続する回収路24と、溶剤が回収されたあとのガスを排気する排出部7と、を有している。
【0039】
冷却部21は、溶剤を含むガスを冷却して溶剤を液化させるためのものである。本実施形態では、冷却部21が水冷方式を用いる冷却器であることを例に説明する。この冷却部21は、
図2に示すようにガスが流れる空洞を有する本体部25と、冷媒である水が流れる冷媒流路26と、を有している。
【0040】
本体部25は、内部にガスが流れる空洞を有する筐体であり、循環路3により筐体部11と接続されている。これにより、本体部25と筐体部11の間でガスが循環する。ここで、循環路32および循環路33により形成される筐体部11から冷却部21に溶剤を含むガスを供給するためのガスの流路を供給路22とする。すなわち、溶剤を含むガスが、供給路22を介して筐体部11から冷却部21に供給される。
【0041】
また、冷媒流路26は、冷媒が流れる流路であり、
図2に示すように本体部25内に設けられている。この冷媒流路26に冷媒を流すことによって、供給路22から供給された本体部25内のガスを冷却する。これにより、ガスに含まれる溶剤および水分が液化する。ここでいう液化する水分は、ガス中にもとから存在していた水分と、水分付与手段6により加えられた水分のことをいう。そして、液化した溶剤と水分が混ざり合うことによって、水分により希釈された液状の溶剤(以下、混合液と呼ぶ)が生成される。この混合液は回収部23に回収される。
【0042】
回収部23は、冷却部21で液化した溶剤を回収するためのものであり、回収路24により冷却部21と接続されている。そして、回収路24には、冷却部21から回収部23に混合液を送る図示しないポンプが設けられており、このポンプによって混合液を回収部23に送っている。これにより、混合液が回収部23に回収される。すなわち、溶剤が回収される。
【0043】
排出部7は、溶剤が回収されたあとのガスを冷却部21から排出するためのものであり、本実施形態では
図1に示すように冷却部21から熱交換ユニット5にガスを送る循環路34に配管を介して接続されている。そして、排出部7は、図示しないファンにより排気量を調節しながら、溶剤が回収された後のガスの一部を排出している。これにより、溶剤が回収された後のガスが冷却部21内で滞留しない。また、排出部7により排出されなかった残りのガスは、循環路3により冷却部21と筐体部11間を循環する。
【0044】
そして、排出部7は、少なくとも供給部4により供給する量と同等の量のガスを排出するようになっている。これにより、筐体部11内の圧力が所定の値を維持するよう制御することができ、筐体部11内を筐体部11外に対して負圧にして筐体部11からガスが漏れ出ることを防ぐことができる。
【0045】
水分付与手段6は、回収部23に回収される溶剤を希釈するための水分を供給するためのものであり、本実施形態では、
図1に示すように供給路22内に水分を加えるよう配置されている。ここで、水分付与手段6は、熱交換ユニット5と冷却部21とを接続する循環路33に水分を加えるよう配置されている。これにより、水分付与手段6により加えた水分により循環路32を介して筐体部11から熱交換ユニット5に向かって流れるガスが冷却されることを防ぐことができる。また、水分付与手段6は、
図1に示すように水分を供給する給水部61と、供給路22と給水部61を接続する給水路62と、を有している。
【0046】
ここで、水分付与手段6により供給路22内に供給する水分は、水(液体)であってもよいし、水蒸気(気体)であってもよい。水分が水の場合、給水路62にポンプを設けることによって、ポンプにより給水路62を介して給水部61から供給路22内に水分を加える。一方、水分が水蒸気の場合、給水路62にファンを設けることによって、ファンにより給水路62を介して給水部61から供給路22内に水分を加える。これらポンプまたはファンにより供給路22内に加える水分の量が調節可能になっている。そして、水分付与手段6により水分を加えられた供給路22内の溶剤を含むガスは、冷却部21に送られて冷却される。これにより、ガスに含まれる溶剤および水分が液化して、混合液が生成される。
【0047】
これら構成により溶剤回収ユニット2は、筐体部11から供給路22を介して送られてきたガスに含まれる溶剤および水分を液化させて混合液を生成、回収することによって、溶剤を回収することができる。
【0048】
また、本実施形態における溶剤回収ユニット2は、
図1に示すように供給路22内の湿度を測定する湿度測定手段8と、水分付与手段6により加える水分の量を制御する図示しない制御部と、をさらに備えている。
【0049】
湿度測定手段8は、供給路22内の湿度を測定するための湿度計であり、本実施形態では
図1に示すように溶剤の流れる方向において水分付与手段6により水分を加える位置よりも上流側で供給路22内の湿度を測定するよう配置されている。これにより、湿度測定手段8は、水分付与手段6により水分を加えられる前のガスに含まれる水分の量を測定することができる。ここで、湿度測定手段8を乾燥設備1の近傍で供給路22内の湿度を測定するよう配置してもよい。これにより、湿度測定手段8は、比較的温度が高いガスが流れる位置で供給路22内の湿度を測定するようになっている。そして、湿度測定手段8による測定結果は制御部に出力される。
【0050】
制御部は、湿度測定手段8による測定結果に基づいて水分付与手段6により加える水分の量を制御するためのものである。ここでいう制御部は、汎用のコンピューター装置により構成されている。
【0051】
この制御部は、湿度測定手段8による測定結果に基づいてガスに含まれる水分のうち冷却部21により液化される水分の量を算出する。すなわち、水分付与手段6により水分を加えられる前からガスに含まれていた水分のうち冷却部21で液化する水分の量が算出される。そして、制御部は、算出した水分の量を加味したうえで、回収する混合液中の溶剤の濃度が所定の値になるように水分付与手段6により加える水分の量を制御する。つまり、制御部は、回収する混合液中の溶剤の濃度を所定の値にするために溶剤に加えるべき水分の量から、算出した水分の量を差し引いた量の水分を水分付与手段6により加えるよう制御している。これにより、回収する溶剤の濃度が所定の値になるよう制御することができる。すなわち、回収する溶剤の濃度が所定の値になるよう希釈することができる。
【0052】
ここで、冷却部21に供給されるガスに含まれる水分の量に応じた冷却部21で液化する水分の量をデータとして制御部に予め格納しておいてもよい。この場合、制御部は、ガスに含まれる水分のうち冷却部21により液化される水分の量を毎回算出せずとも、湿度測定手段8による測定結果に基づいて回収する溶剤の濃度が所定の値になるように水分付与手段6により水分を加える水分の量を制御することができる。
【0053】
また、制御部は、ガスに含まれる水分のうち冷却部21により液化される水分の量を算出するためのデータとして、湿度測定手段8による測定結果に加えて冷媒流路26に流れる冷媒の温度や、冷却部21に供給されるガスの温度、冷却部21におけるガスの流速などのデータを用いてもよい。この場合、算出結果の精度が向上するため、回収する溶剤をより正確に希釈することができる。
【0054】
なお、回収する溶剤の濃度が所定の値になるとは、混合液が非危険物となる濃度よりも0~10%低い値になるということである。すなわち、制御部は、安全性を保ちつつ、溶剤の濃度を混合液が非危険物となる濃度に近い値になるように水分付与手段6により加える水分の量を制御している。
【0055】
また、本実施形態における溶剤回収ユニット2には、溶剤の濃度を測定する図示しない濃度測定手段を設けてもよい。濃度測定手段は、濃度計であり、湿度測定手段8と同じ位置に配置される。すなわち、濃度測定手段は、湿度測定手段8による測定位置と同じ位置における供給路22内のガス中の溶剤の濃度を測定する。この濃度測定手段による測定結果は制御部に出力される。
【0056】
そして、制御部は、湿度測定手段8による測定結果に加えて、濃度測定手段による測定結果に基づいて、ガスに含まれる水分と溶剤のうち冷却部21で液化する水分の量と溶剤の量を算出し、この算出した水分の量と溶剤の量を加味したうえで、水分付与手段6により加える水分の量を制御する。
【0057】
上記実施形態における溶剤回収システム100により回収する溶剤を従来よりも正確に希釈することができる。
【0058】
具体的に説明する。従来の溶剤回収システムでは、ガスにもとから含まれていた水分の存在を加味せずに、液化した溶剤に水分を加えていた。この場合、ガスにもとから含まれていた水分の一部が液化し、その液化した分だけ余計に溶剤を希釈してしまうため、溶剤の濃度に誤差が生じてしまう。そのため、回収する溶剤を正確に希釈することができなかった。
【0059】
これに対して、本実施形態における溶剤回収システム100では、制御部が、水分付与手段6により水分を加える位置よりも上流側で湿度測定手段8により測定された供給路22内の湿度に基づいてガスに含まれる水分のうち冷却部21により液化する水分の量を算出し、この算出した水分の量を加味したうえで、回収する混合液中の溶剤の濃度が所定の値になるように水分付与手段6により加える水分の量を制御している。このように本実施形態では、水分付与手段6により水分を加える前から供給路22内のガスに含まれていた水分の量を加味したうえで、水分付与手段6により加える水分の量を制御しているため、従来のように溶剤の濃度に誤差が生じにくくなる。したがって、回収する溶剤を従来よりも正確に希釈することができる。
【0060】
また、冷却部21に供給されるガスに含まれる水分の量は、装置外の湿度によって変化する。そのため、その時々によってばらつきが生じる。本実施形態では、水分付与手段6により水分を加える前に湿度測定手段8により供給路22内の湿度を測定し、この測定結果に基づいて制御部が水分付与手段6により加える水分の量を制御しているため、冷却部21に供給されるガスに含まれる水分の量にバラつきがあったとしても、回収する溶剤の濃度が一定になるよう希釈することができる。
【0061】
また、本実施形態では、制御部が、溶剤の濃度を、混合液が非危険物となる濃度よりも0~10%低くなるように、水分付与手段6により溶剤に加える水分の量を制御しているため、混合液の安全性を維持しつつ溶剤と水分を分離するときに消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【0062】
具体的に説明する。一般的に液化した状態で水分により希釈されて回収された混合液中の溶剤は、蒸留法により水分を分離することによって再利用される。ここで、回収時に混合液中の溶剤の濃度が低くなるほど、溶剤から分離する水分の量が多くなるため、溶剤と水分を分離するときに消費するエネルギーが多くなる。
【0063】
これに対して、本実施形態では、安全性の維持が可能な範囲内で、溶剤の濃度を混合液が危険物化する濃度に近い値になるよう水分付与手段6により加える水分の量を制御している。そのため、溶剤から分離する水分の量を最小限に抑えることができる。これにより、安全性を維持しつつ溶剤と水分を分離するときに消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【0064】
また、本実施形態では、水分付与手段6が湿度測定手段8による測定位置よりも下流側の供給路22内に水分を加えるよう配置されているため、冷却部21よりも上流側で溶剤に水分を加えることができる。これにより、冷却部21よりも上流側でガスの温度を下げることができるため、冷却部21によりガスを冷却するために溶剤を液化させる際の効率を良くすることができる。
【0065】
なお、生産設備によってガス中の溶剤の濃度をデータとして得ることが可能であれば、溶剤回収システム100に濃度測定手段を設けなくてもよい。具体的には、乾燥設備1において塗膜から気化して排出される溶剤の量は、搬送機構による基材Wの搬送速度や、塗布機構により塗布されるスラリーの量、スラリーに含まれる成分の比率、乾燥設備1による塗膜の加熱温度などの生産設備による生産条件により決まっている。この生産条件は、生産設備により設定されるため、生産設備により塗膜から気化して排出される溶剤の量を算出することは可能である。この算出結果をデータとして制御部に出力することによって、制御部は濃度測定手段により供給路22内のガス中の溶剤の濃度を測定せずとも、ガス中の溶剤の濃度と湿度測定手段8による測定結果に基づいて水分付与手段6により加える水分の量を制御することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、湿度測定手段8を、溶剤の流れる方向において水分付与手段6より水分を加える位置よりも上流側で供給路22内の湿度を測定するよう配置される例について説明したが、溶剤の流れる方向において水分付与手段6より水分を加える位置よりも下流側で供給路22内の湿度を測定するよう配置してもよい。この場合、制御部は、湿度測定手段8によって測定された水分付与手段6により供給路22内に水分を加えられた後のガスに含まれる水分の量を加味したうえで、水分付与手段6により加える水分の量を制御する。
【0067】
上記実施形態では、溶剤回収システム100がガスの流路として循環路3を備えている例について説明したが、
図3に示すように循環路3を備えていなくてもよい。具体的には、溶剤回収システム100は、少なくとも乾燥設備1から冷却部21に溶剤を含むガスを送る供給路22と、冷却部21内のガスを排出する排出部7を備えていればよい。
【0068】
また、上記実施形態では、生産設備を乾燥設備1とする例について説明したが、これに限らず、溶剤を排出するものであれば特に限定しない。
【0069】
また、上記実施形態では、乾燥設備1の近傍に湿度測定手段8を配置する例について説明したが、冷却部21よりも上流側で供給路22内の湿度を測定するよう配置すればよい。
【0070】
また、上記実施形態では、供給路22内に水分を加えるように水分付与手段6を配置する例について説明したが、これに限らず、たとえば、
図4に示すように回収路24内に水分を加えるように水分付与手段6を配置してもよい。
【0071】
また、回収する混合液中の溶剤の濃度は、必ずしも一定にしなくてもよい。たとえば、湿度測定手段8により測定した供給路22内の湿度がある一定の値を超えた場合に、制御部は水分付与手段6により加える水分の量を減らすように制御してもよい。具体的には、湿度測定手段8により測定された時点でガスに含まれる水分の量が、回収する混合液中の溶剤の濃度が所定の値または所定の値よりも溶剤の濃度が低くなるように溶剤を希釈する量であった場合、制御部は水分付与手段6により水分を加えないように制御してもよい。
【符号の説明】
【0072】
100 溶剤回収システム
1 乾燥設備
11 筐体部
12 加熱部
2 溶剤回収ユニット
21 冷却部
22 供給路
23 回収部
24 回収路
25 本体部
26 冷媒流路
3 循環路
31 循環路
32 循環路
33 循環路
34 循環路
35 循環路
4 供給部
5 熱交換ユニット
6 水分付与手段
61 給水部
62 給水路
7 排出部
8 湿度測定手段