(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080028
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】圧力緩衝装置
(51)【国際特許分類】
F16F 9/58 20060101AFI20240606BHJP
F16F 9/48 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F16F9/58 A
F16F9/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192843
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 幹郎
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC05
3J069EE28
3J069EE54
(57)【要約】
【課題】伸び行程の限界付近において円滑に減衰力を高めることが可能な圧力緩衝装置を提供する。
【解決手段】ロッド51の一端側に固定され、シリンダ21の内部を第一室81と第二室82とに分割する第一のピストン72と、ロッド51に固定され、シリンダ21の内周面を第一のピストン72と共に摺動するように配置され、軸方向に連通路114を有する第二のピストン67と、連通路114の端部に係る位置に貫通孔121を有するバルブ部材66と、貫通孔121を閉塞可能な位置にバルブ部材66から間隔を有して配置されるシャッタ部材64と、シャッタ部材64のバルブ部材66を向く面とは反対側の面に配置される第一のストッパ部材132と、第一のストッパ部材132のシャッタ部材64を向く面とは反対側に一端側が配置されるコイルばね部材134と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状であって開口部側に蓋部材を有するシリンダと、
前記シリンダの内部に一端側の一部が配置される棒状のロッドと、
前記ロッドの一端側に固定され、前記シリンダの内部を前記開口部側の第一室と前記シリンダの底部側の第二室とに分割する第一のピストンと、
前記ロッドの前記第一のピストンよりも前記開口部側に固定され、前記シリンダの内周面を前記第一のピストンと共に摺動するように配置され、軸方向に連通路を有する第二のピストンと、
前記連通路の前記開口部側の端部に係る位置に貫通孔を有すると共に該端部を覆うバルブ部材と、
前記貫通孔を閉塞可能な位置に前記バルブ部材から間隔を有して配置されるシャッタ部材と、
前記シリンダの内部を移動可能であると共に前記シャッタ部材の前記バルブ部材を向く面とは反対側の面に配置される第一のストッパ部材と、
前記第一のストッパ部材の前記シャッタ部材を向く面とは反対側に一端側が配置されるコイルばね部材と、
を有する圧力緩衝装置。
【請求項2】
前記コイルばね部材の他端側は、
前記蓋部材に当接可能に構成される、
請求項1に記載の圧力緩衝装置。
【請求項3】
前記コイルばね部材の他端側は、
前記ロッドに設けられた第二のストッパ部材に当接し、
前記第二のストッパ部材の前記コイルばね部材が当接する面とは反対の面は前記蓋部材に当接する、
請求項1に記載の圧力緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ストロークストッパ構成を備えた油圧ダンパがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧力緩衝装置においては、伸び行程の限界付近で円滑に減衰力を高める要望がある。
【0005】
したがって、本発明は、伸び行程の限界付近において円滑に減衰力を高めることが可能な圧力緩衝装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る圧力緩衝装置の一態様は、有底筒状であって開口部側に蓋部材を有するシリンダと、前記シリンダの内部に一端側の一部が配置される棒状のロッドと、前記ロッドの一端側に固定され、前記シリンダの内部を前記開口部側の第一室と前記シリンダの底部側の第二室とに分割する第一のピストンと、前記ロッドの前記第一のピストンよりも前記開口部側に固定され、前記シリンダの内周面を前記第一のピストンと共に摺動するように配置され、軸方向に連通路を有する第二のピストンと、前記連通路の前記開口部側の端部に係る位置に貫通孔を有すると共に該端部を覆うバルブ部材と、前記貫通孔を閉塞可能な位置に前記バルブ部材から間隔を有して配置されるシャッタ部材と、前記シリンダの内部を移動可能であると共に前記シャッタ部材の前記バルブ部材を向く面とは反対側の面に配置される第一のストッパ部材と、前記第一のストッパ部材の前記シャッタ部材を向く面とは反対側に一端側が配置されるコイルばね部材と、を有する、構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、伸び行程の限界付近において円滑に減衰力を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る一実施形態の圧力緩衝装置を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る一実施形態の圧力緩衝装置の要部を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る一実施形態の圧力緩衝装置のストロークに対する減衰力のリサージュ波形を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る実施形態を図面を参照して以下に説明する。
【0010】
図1に示す実施形態の圧力緩衝装置11は、自動車や鉄道車両等の車両のサスペンション装置に用いられる緩衝器(Shock absorber)である。圧力緩衝装置11は、具体的には自動車のサスペンション装置に用いられる緩衝器である。圧力緩衝装置11は、車体と車輪との間に配置されて、これらの相対振動を減衰させるものである。
【0011】
圧力緩衝装置11は、シリンダ21を備えている。圧力緩衝装置11は、単筒のシリンダ21を有する単筒型、いわゆるモノチューブタイプの緩衝器である。なお、実施の形態ではモノチューブタイプの緩衝器を示し説明するが、ツインチューブタイプに適用してもよい。
【0012】
シリンダ21は、有底筒状である。シリンダ21は、円筒状の胴部22と、胴部22の軸方向の一端部を閉塞する略円板状の底部23とを有している。胴部22の軸方向における底部23とは反対側の他端部は開口部24となっている。シリンダ21は、金属材料から継ぎ目なく一体成形された一体成形品である。
【0013】
胴部22は、その軸方向において、底部23側から順に、第1円筒部31と、中間係止部32と、第2円筒部33と、端部係止部34と、を有している。
【0014】
第1円筒部31と第2円筒部33とは、同軸同径の円筒状である。
【0015】
中間係止部32は、第1円筒部31および第2円筒部33よりも、これらの径方向における内側に突出している。中間係止部32は、第1円筒部31および第2円筒部33の中心軸線を中心とする円環状である。
【0016】
端部係止部34は、第2円筒部33から、第2円筒部33の径方向における内側に突出している。端部係止部34は、第2円筒部33の中心軸線を中心とする円環状である。端部係止部34の径方向における内側が開口部24となっている。
【0017】
圧力緩衝装置11は、ロッドガイド41(蓋部材)を備えている。ロッドガイド41は、円環状であり、シリンダ21の第2円筒部33に嵌合している。ロッドガイド41は、その軸方向の底部23側が中間係止部32に当接している。ロッドガイド41は、シリンダ21の開口部24側に設けられており、開口部24を蓋する蓋部材となっている。
【0018】
圧力緩衝装置11は、シール部材42を備えている。シール部材42は、円環状であり、ロッドガイド41よりもシリンダ21の開口部24側に設けられている。シール部材42も、ロッドガイド41と同様にシリンダ21の第2円筒部33に嵌合している。シール部材42は、端部係止部34とロッドガイド41とに挟持されている。シール部材42は、シリンダ21の開口部24を閉塞する。
【0019】
圧力緩衝装置11は、ロッド51を備えている。ロッド51は、棒状であり、シリンダ21の内部に開口部24を介して挿入されている。これにより、ロッド51は、シリンダ21の内部に一端側の一部が配置され、シリンダ21の外部に他端側の一部が配置されている。
【0020】
ロッド51は、主軸部52と、取付軸部53とを有している。
【0021】
主軸部52は、ロッドガイド41およびシール部材42の内周部に摺動可能に嵌合しており、シリンダ21の開口部24内を貫通している。
【0022】
取付軸部53は、主軸部52のシリンダ21内に配置される一端から延出している。取付軸部53は、ロッド51におけるシリンダ21内に配置される一端側に設けられている。取付軸部53は、その外径が主軸部52の外径よりも小径である。取付軸部53には、その軸方向における主軸部52とは反対側の端部の外周にオネジ54が形成されている。
【0023】
図2に示すように、圧力緩衝装置11は、取付軸部53に、取付軸部53の軸方向において主軸部52側から順に取り付けられる、環状部材61と、ディスク62と、ディスク63と、シャッタ部材64(第一のストッパ部材)と、ディスク65と、バルブ部材66と、開口側ピストン67(第二のピストン)と、複数枚のディスクからなるディスクバルブ68と、複数枚のディスク69と、複数枚のディスクからなるディスクバルブ70と、複数枚のディスク71と、底側ピストン72(第一のピストン)と、複数枚のディスク73と、複数枚のディスクからなるディスクバルブ74と、ディスク75と、ディスク76と、環状部材77と、ナット78と、を備えている。
【0024】
環状部材61,77、ディスク62,63,65,69,71,73,75,76、シャッタ部材64、バルブ部材66、開口側ピストン67、ディスクバルブ68,70,74および底側ピストン72は、いずれも円環状であり、内側に取付軸部53が嵌合されている。この状態で、取付軸部53のオネジ54にナット78が螺合される。これにより、環状部材61,77、ディスク62,63,65,69,71,73,75,76、シャッタ部材64、バルブ部材66、開口側ピストン67、ディスクバルブ68,70,74および底側ピストン72が、主軸部52の取付軸部53側の端部とナット78とに挟持される。これにより、環状部材61,77、ディスク62,63,65,69,71,73,75,76、シャッタ部材64、バルブ部材66、開口側ピストン67、ディスクバルブ68,70,74および底側ピストン72は、少なくとも内周側がロッド51に固定される。環状部材61,77、ディスク62,63,65,69,71,73,75,76、シャッタ部材64、バルブ部材66、開口側ピストン67、ディスクバルブ68,70,74および底側ピストン72は、ロッド51の一端側に固定される。
【0025】
底側ピストン72は、焼結金属製の底側ピストン本体88と、底側ピストン本体88の外周に装着された合成樹脂製の摺動部材89とを有している。底側ピストン72は、摺動部材89においてシリンダ21の第1円筒部31内に摺動可能に嵌合している。言い換えれば、底側ピストン72は、ロッド51に固定され、シリンダ21の内周面を摺動するように配置されている。底側ピストン72は、シリンダ21の内部を
図1に示す開口部24側の第一室81と底部23側の第二室82とに分割する。第一室81内と第二室82内とには作動流体としての油液Lが充填されている。
【0026】
図2に示すように、底側ピストン72の底側ピストン本体88には、軸方向の第二室82側の端部に円環状のシート部91が形成されており、軸方向の第一室81側の端部に円環状のシート部92が形成されている。底側ピストン本体88には、いずれも底側ピストン本体88を軸方向に貫通するピストン通路93とピストン通路94とが形成されている。
【0027】
ピストン通路93は、底側ピストン72の周方向に間隔をあけて複数形成された通路穴95と、シート部91の径方向内側に形成されて複数の通路穴95を繋ぐ円環状の通路溝96とを有している。よって、ピストン通路93は、底側ピストン72の軸方向におけるシート部91側の端部の通路溝96が、底側ピストン72の径方向においてシート部91よりも内側に開口している。ピストン通路93は、底側ピストン72の軸方向におけるシート部92側の端部が、底側ピストン72の径方向においてシート部92よりも外側に開口している。
【0028】
ピストン通路94は、底側ピストン72の周方向に間隔をあけて複数形成された通路穴97と、シート部92の径方向内側に形成されて複数の通路穴97を繋ぐ円環状の通路溝98とを有している。よって、ピストン通路94は、底側ピストン72の軸方向におけるシート部92側の端部の通路溝98が、底側ピストン72の径方向においてシート部92よりも内側に開口している。ピストン通路94は、底側ピストン72の軸方向におけるシート部91側の端部が、底側ピストン72の径方向においてシート部91よりも外側に開口している。
【0029】
ディスクバルブ74は、底側ピストン72のシート部91に当接してピストン通路93を閉塞する。ディスクバルブ74は、底側ピストン72のシート部91から離間してピストン通路93を開放する。ディスクバルブ74は、ロッド51がシリンダ21からの延出量を増やす伸び行程において開弁して第一室81から第二室82へピストン通路93を介して油液Lを流すことになり、その際に、その流れを抑制して減衰力を発生させる。
【0030】
底側ピストン72のシート部91およびディスクバルブ74のうちの少なくとも一方には図示略の固定オリフィスが形成されている。この固定オリフィスは、ディスクバルブ74がピストン通路93を最も閉塞した状態でもピストン通路93を介して第一室81と第二室82とを連通させる。
【0031】
ディスクバルブ70は、底側ピストン72のシート部92に当接してピストン通路94を閉塞する。ディスクバルブ70は、底側ピストン72のシート部92から離間してピストン通路94を開放する。ディスクバルブ70は、ロッド51がシリンダ21からの延出量を減らす縮み行程において開弁して第二室82から第一室81へピストン通路94を介して油液Lを流すことになり、その際に、その流れを抑制して減衰力を発生させる。
【0032】
底側ピストン72のシート部92およびディスクバルブ70のうちの少なくとも一方には図示略の固定オリフィスが形成されている。この固定オリフィスは、ディスクバルブ70がピストン通路94を最も閉塞した状態でもピストン通路94を介して第二室82と第一室81とを連通させる。
【0033】
開口側ピストン67は、焼結金属製の開口側ピストン本体108と、開口側ピストン本体108の外周に装着された合成樹脂製の摺動部材109とを有している。開口側ピストン67は、摺動部材109において、シリンダ21の第1円筒部31内に摺動可能に嵌合している。開口側ピストン67は、底側ピストン72よりも
図1に示す開口部24側にある。開口側ピストン67は、第一室81を開口部24側の開口側室101と底部23側の底側室102とに分割する。開口側ピストン67は、ロッド51の底側ピストン72よりも開口部24側に固定されており、シリンダ21の内周面を底側ピストン72と共に摺動するように配置されている。底側ピストン72は、第一室81の底側室102と第二室82とを区画する。
【0034】
開口側ピストン67の開口側ピストン本体108には、軸方向の底側室102側の端部に円環状のシート部111が形成されており、軸方向の開口側室101側の端部に円環状のシート部112が形成されている。開口側ピストン67の開口側ピストン本体108には、いずれも開口側ピストン本体108を軸方向に貫通するピストン通路113とピストン通路114(連通路)とが形成されている。
【0035】
ピストン通路113は、開口側ピストン67の周方向に間隔をあけて複数形成された通路穴115と、シート部111の径方向内側に形成されて複数の通路穴115を繋ぐ円環状の通路溝116とを有している。よって、ピストン通路113は、開口側ピストン67の軸方向におけるシート部111側の端部の通路溝116が、開口側ピストン67の径方向においてシート部111よりも内側に開口している。ピストン通路113は、開口側ピストン67の軸方向におけるシート部112側の端部が、開口側ピストン67の径方向においてシート部112よりも外側に開口している。
【0036】
ピストン通路114は、開口側ピストン67の周方向に間隔をあけて複数形成された通路穴117と、シート部112の径方向内側に形成されて複数の通路穴117を繋ぐ円環状の通路溝118とを有している。よって、ピストン通路114は、開口側ピストン67の軸方向におけるシート部112側の端部の通路溝118が、開口側ピストン67の径方向においてシート部112よりも内側に開口している。ピストン通路114は、開口側ピストン67の軸方向におけるシート部111側の端部が、開口側ピストン67の径方向においてシート部111よりも外側に開口している。
【0037】
通路溝118には、通路溝118の溝底からバルブ部材66側に突出する島部119が形成されている。島部119は、通路溝118の溝底からの突出高さが、シート部112の通路溝118の溝底からの突出高さよりも低くなっている。通路溝118には、その周方向に間隔をあけて複数の島部119が形成されている。
【0038】
ディスクバルブ68は、開口側ピストン67のシート部111に当接してピストン通路113を閉塞する。ディスクバルブ68は、開口側ピストン67のシート部111から離間してピストン通路113を開放する。ディスクバルブ68は、ロッド51がシリンダ21からの延出量を増やす伸び行程において開弁して開口側室101から底側室102へピストン通路113を介して油液Lを流すことになり、その際に、その流れを抑制して減衰力を発生させる。ディスクバルブ68は、同じ伸び側のディスクバルブ74よりも剛性および開弁圧が高く、ディスクバルブ74よりも高い減衰力を発生させる。ディスクバルブ68は、開口側ピストン67のシート部111に全周にわたって当接可能であり、これにより、ピストン通路113を完全に閉塞する。言い換えれば、ディスクバルブ68およびシート部111には、いずれにも固定オリフィスは設けられていない。
【0039】
バルブ部材66は、開口側ピストン67のシート部112に全周にわたって当接する。バルブ部材66には、軸方向に貫通する貫通孔121が形成されている。貫通孔121は、バルブ部材66および開口側ピストン67の径方向における位置をピストン通路114の通路溝118に重ね合わせている。バルブ部材66には、バルブ部材66の周方向に間隔をあけて複数の貫通孔121が形成されている。バルブ部材66の貫通孔121は、ピストン通路114の
図1に示す開口部24側の端部に係る位置に設けられており、
図2に示すように、バルブ部材66は、ピストン通路114のこの端部を覆う。貫通孔121は、開口側ピストン67のピストン通路114に常時連通する。
【0040】
ディスク65は、その半径が、バルブ部材66の中心から貫通孔121までの最小距離よりも短い。よって、ディスク65は、バルブ部材66の径方向における貫通孔121よりも内側で広がっている。
【0041】
シャッタ部材64は、その半径が、バルブ部材66の中心から貫通孔121までの最大距離よりも長い。よって、シャッタ部材64は、バルブ部材66の径方向における貫通孔121よりも外側まで広がっている。シャッタ部材64は、バルブ部材66との間にディスク65が設けられていることから、その全体がバルブ部材66から離間している。この状態では、開口側室101と底側室102とが、シャッタ部材64およびバルブ部材66の間の通路と、貫通孔121と、ピストン通路114とを介して連通する。
【0042】
シャッタ部材64は、弾性変形可能であり、ロッド51の軸方向において外周側がバルブ部材66に近づくように変形する。すると、シャッタ部材64は、バルブ部材66の径方向における貫通孔121よりも外側に当接する。シャッタ部材64は、その外周縁部が全周にわたってバルブ部材66に当接すると、開口側室101と底側室102との貫通孔121およびピストン通路114を介しての連通を遮断する。シャッタ部材64は、貫通孔121を閉塞可能な位置に、バルブ部材66から間隔を有して配置される。
【0043】
圧力緩衝装置11は、主軸部52に固定されるロッド固定ストッパ131を備えている。ロッド固定ストッパ131は、円環状であり、その内側に嵌合された状態の主軸部52の環状部材61と
図1に示すロッドガイド41との間位置に固定されている。
【0044】
圧力緩衝装置11は、
図2に示すように、ロッド固定ストッパ131と環状部材61との間に設けられる底側ストッパ部材132(第一のストッパ部材)と、ロッド固定ストッパ131と
図1に示すロッドガイド41との間に設けられる開口側ストッパ部材133(第二のストッパ部材)と、これら底側ストッパ部材132と開口側ストッパ部材133との間に介装されるコイルばね部材134と、を備えている。
【0045】
底側ストッパ部材132は、円環状であり、その内側にロッド51の主軸部52が嵌合されている。底側ストッパ部材132は、十分に硬度および強度が高い合成樹脂製または金属製である。底側ストッパ部材132は、主軸部52上を主軸部52の軸方向に摺動可能であり、シリンダ21の内部を移動可能である。
図2に示すように、底側ストッパ部材132には、軸方向のロッド固定ストッパ131側の外周部に円環状の切欠部141が形成されている。底側ストッパ部材132には、軸方向のロッド固定ストッパ131とは反対側の内周部に凹状部142が形成されている。底側ストッパ部材132は、凹状部142の周囲が円環状の当接部144となっている。底側ストッパ部材132は、内周面に、底側ストッパ部材132の軸方向に貫通する溝部143が形成されている。底側ストッパ部材132の内周面には、底側ストッパ部材132の周方向に間隔をあけて複数の溝部143が形成されている。
【0046】
底側ストッパ部材132は、凹状部142内に、環状部材61とディスク62,63とを収容可能であり、これにより、シャッタ部材64の外周部に、シャッタ部材64側の先端の当接部144が当接可能である。底側ストッパ部材132は、変形前のシャッタ部材64に当接した状態で、凹状部142の底位置が、環状部材61との間に軸方向の隙間を有している。これにより、底側ストッパ部材132は、この隙間を狭めるように、ロッド51の主軸部52上を移動することで、当接部144において、シャッタ部材64の外周側をバルブ部材66に近づけるように変形させることができる。すなわち、底側ストッパ部材132は、シャッタ部材64を押圧することによってシャッタ部材64の外周縁部をバルブ部材66に当接させて、開口側室101と底側室102との貫通孔121およびピストン通路114を介しての連通を遮断する。底側ストッパ部材132は、シリンダ21の内部を移動可能であると共にシャッタ部材64のバルブ部材66を向く面とは反対側の面に配置される。
【0047】
開口側ストッパ部材133は、円環状であり、その内側にロッド51の主軸部52が嵌合されている。開口側ストッパ部材133は、合成樹脂製である。開口側ストッパ部材133は、主軸部52上を主軸部52の軸方向に摺動可能である。開口側ストッパ部材133には、軸方向のロッド固定ストッパ131側の外周部に円環状の切欠部151が形成されている。
図1に示すように、開口側ストッパ部材133は、その軸方向のロッドガイド41側の端部が、ロッドガイド41に対向しており、ロッドガイド41に当接可能となっている。
【0048】
コイルばね部材134は、金属製であり、螺旋状に巻かれて全体として円筒状をなしている。コイルばね部材134は、その内側にロッド51の主軸部52が挿通されており、その内側にロッド固定ストッパ131が配置されている。
図2に示すように、コイルばね部材134は、その軸方向の一端部が底側ストッパ部材132の切欠部141に嵌合し固定されており、その軸方向の他端部が、開口側ストッパ部材133の切欠部151に嵌合し固定されている。コイルばね部材134は、底側ストッパ部材132のシャッタ部材64を向く面とは反対側に一端側が配置されており、コイルばね部材134の他端側は、ロッド51に設けられた開口側ストッパ部材133に当接する。開口側ストッパ部材133は、そのコイルばね134が当接する面とは反対の面が
図1に示すロッドガイド41に当接する。
【0049】
ここで、環状部材61,77、ディスク62,63,65,69,71,73,75,76、シャッタ部材64、バルブ部材66、開口側ピストン67、ディスクバルブ68,70,74および底側ピストン72がロッド51の取付軸部53にナット78により取り付けられた状態で、例えば、底側ストッパ部材132がロッド51の主軸部52に嵌合された後、ロッド固定ストッパ131が主軸部52に加締めにより固定され、その後、コイルばね部材134の一端が底側ストッパ部材132に嵌合され、開口側ストッパ部材133がロッド51の主軸部52に嵌合されてコイルばね部材134の他端に嵌合させられる。これにより、ロッド固定ストッパ131、底側ストッパ部材132、開口側ストッパ部材133およびコイルばね部材134がロッド51に取り付けられる。
【0050】
図1に示すように、圧力緩衝装置11は、ロッド51よりも底部23側にフリーピストン161を備えている。フリーピストン161は、シリンダ21の第1円筒部31内に摺動可能に嵌合されている。言い換えれば、フリーピストン161は、シリンダ21の内周面を摺動するように配置されている。フリーピストン161は、底側ピストン72との間に第二室82を形成しており、シリンダ21の底部23との間にガス室162を形成している。ガス室162にはガスGが充填されている。
【0051】
フリーピストン161は、ロッド51の第一室81内への進入量の変化に応じてシリンダ21に対して軸方向に移動する。すなわち、フリーピストン161は、ロッド51が第一室81内への進入量を増やすと、その体積に応じて底部23側に移動し、ロッド51が第一室81内への進入量を減らすと、その体積に応じて底部23とは反対側に移動する。
【0052】
圧力緩衝装置11は、ロッド51が上部に配置されて車両の車体側に連結され、シリンダ21が下部に配置されて車両の車輪側に連結される。あるいは、圧力緩衝装置11は、ロッド51が下部に配置されて車両の車輪側に連結され、シリンダ21が上部に配置されて車両の車体側に連結される。圧力緩衝装置11は、車輪の車体に対する相対移動に対して減衰力を発生させる。
【0053】
次に、圧力緩衝装置11の作動について説明する。
圧力緩衝装置11は、縮み行程において、ピストン速度が所定値よりも遅い状態では、底部23側の第二室82の圧力が開口部24側の第一室81側の圧力よりも高くなると、ディスクバルブ70は開弁せずに、第二室82の油液Lを、底側ピストン72のピストン通路94と、図示略の固定オリフィスと、第一室81の底側室102と、開口側ピストン67のピストン通路114と、バルブ部材66の貫通孔121と、バルブ部材66およびシャッタ部材64の間の通路と、を介して第一室81の開口側室101に流すことになる。その際に、図示略の固定オリフィスによって、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。その際のピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率は比較的高くなる。
【0054】
圧力緩衝装置11は、縮み行程において、ピストン速度が所定値以上の状態では、底部23側の第二室82の圧力が開口部24側の第一室81側の圧力よりも高くなると、ディスクバルブ70が開弁することになり、第二室82の油液Lを、底側ピストン72のピストン通路94と、開弁するディスクバルブ70およびシート部92の間の通路と、第一室81の底側室102と、開口側ピストン67のピストン通路114と、バルブ部材66の貫通孔121と、バルブ部材66およびシャッタ部材64の間の通路と、を介して第一室81の開口側室101に流すことになる。その際に、ディスクバルブ70によって、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。その際のピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率は、縮み行程の上記したピストン速度が所定値よりも遅い状態よりも低くなる。
【0055】
圧力緩衝装置11は、開口側ストッパ部材133がロッドガイド41に当接しない状態での伸び行程において、ピストン速度が所定値よりも遅い状態では、開口部24側の第一室81の圧力が底部23側の第二室82の圧力よりも高くなると、ディスクバルブ68,74は開弁せずに、第一室81の開口側室101の油液Lを、バルブ部材66およびシャッタ部材64の間の通路と、バルブ部材66の貫通孔121と、開口側ピストン67のピストン通路114と、第一室81の底側室102と、底側ピストン72のピストン通路93と、図示略の固定オリフィスと、を介して第二室82に流すことになる。その際に、図示略の固定オリフィスによって、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。その際には、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が比較的高くなる。
【0056】
圧力緩衝装置11は、開口側ストッパ部材133がロッドガイド41に当接しない状態での伸び行程において、ピストン速度が所定値以上の状態では、開口部24側の第一室81側の圧力が底部23側の第二室82の圧力よりも高くなると、ディスクバルブ74が開弁することになり、第一室81の開口側室101の油液Lを、バルブ部材66およびシャッタ部材64の間の通路と、バルブ部材66の貫通孔121と、開口側ピストン67のピストン通路114と、第一室81の底側室102と、底側ピストン72のピストン通路93と、開弁するディスクバルブ74およびシート部91の間の通路と、を介して第二室82に流すことになる。その際に、ディスクバルブ74によって、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。その際のピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率は、伸び行程の上記したピストン速度が所定値よりも遅い状態よりも低くなる。
【0057】
圧力緩衝装置11は、伸び行程において、開口側ストッパ部材133がロッドガイド41に当接すると、開口側ストッパ部材133が伸び側に移動するロッド51に対して停止するため、ロッド51と共に移動する底側ストッパ部材132がコイルばね部材134を縮長させることになる。これにより、コイルばね部材134による底側ストッパ部材132への荷重が高くなり、よって、底側ストッパ部材132が、当接部144においてシャッタ部材64をバルブ部材66側に弾性変形させる。すると、第一室81の開口側室101と底側室102との間にあるシャッタ部材64とバルブ部材66との間の通路が徐々に狭められることになって減衰力が上記よりも高くなる。さらに伸び行程が進んで、コイルばね部材134による底側ストッパ部材132への荷重がさらに高くなると、底側ストッパ部材132がシャッタ部材64をバルブ部材66に全周にわたって当接させる。すると、バルブ部材66の貫通孔121と、開口側ピストン67のピストン通路114とを介する開口側室101から底側室102への油液Lの流れが遮断される。このため、開弁圧がディスクバルブ74よりも高いディスクバルブ68が開弁し、第一室81の開口側室101側から底側室102への油液Lを、開口側ピストン67のピストン通路113と、開弁するディスクバルブ68とシート部111との隙間と、を介して、第一室81の底側室102に流し、底側室102から、底側ピストン72のピストン通路93と、開弁するディスクバルブ74およびシート部91の間の通路と、を介して第二室82に流すことになる。これにより、高い減衰力が発生する。
【0058】
圧力緩衝装置11は、開口側ストッパ部材133がロッドガイド41に当接する状態での伸び行程において、上記よりもさらにロッド51が伸び側に移動すると、開口側ストッパ部材133がロッド固定ストッパ131に当接する。すると、コイルばね部材134からロッド固定ストッパ131に、この時点での荷重を超える荷重が入力されることはなくなる。これにより、底側ストッパ部材132の当接部144にかかる負荷が過大となることを抑制する。
【0059】
特許文献1には、ストロークストッパ構成を備えた油圧ダンパが開示されている。ところで、圧力緩衝装置においては、伸び行程の限界付近で円滑に減衰力を高める要望がある。
【0060】
圧力緩衝装置11は、ロッド51の一端側に固定され、シリンダ21の内部を開口部24側の第一室81と底部23側の第二室82とに分割する底側ピストン72と、ロッド51の底側ピストン72よりも開口部24側に固定され、シリンダ21の内周面を底側ピストン72と共に摺動するように配置され、軸方向にピストン通路114を有する開口側ピストン67と、ピストン通路114の開口部24側の端部に係る位置に貫通孔121を有すると共にこの端部を覆うバルブ部材66と、貫通孔121を閉塞可能な位置にバルブ部材66から間隔を有して配置されるシャッタ部材64と、シリンダ21の内部を移動可能であると共にシャッタ部材64のバルブ部材66を向く面とは反対側の面に配置される底側ストッパ部材132と、底側ストッパ部材132のシャッタ部材64を向く面とは反対側に一端側が配置されるコイルばね部材134と、を有している。
【0061】
この圧力緩衝装置11は、伸び行程の限界付近において、ロッドガイド41によってコイルばね部材134が縮められ、コイルばね部材134による底側ストッパ部材132への荷重が高くなる。すると、底側ストッパ部材132がシャッタ部材64を変形させて、シャッタ部材64とバルブ部材66との間の通路を、徐々に狭めることになり、最終的に閉塞させることになる。これにより、第一室81において、バルブ部材66の貫通孔121および開口側ピストン67のピストン通路114を介する油液Lの流れを徐々に抑制することになり、最終的に閉塞させることになる。これにより、
図3に実線で示すシャッタ部材64、ディスク65、バルブ部材66および開口側ピストン67がない構造の場合と比べて、
図3に一点鎖線Xで示すように、伸び行程においてコイルばね部材134が縮んで高減衰力に切り替わる際の減衰力の急変を緩和することができる。すなわち、伸び行程の限界付近において円滑に減衰力を高めることが可能となり、突き上げ感を伝えてしまうことを抑制することができる。しかも、シャッタ部材64、ディスク65、バルブ部材66および開口側ピストン67を追加すれば済むため、例えば、シリンダ21を部分的に拡径させて同様の効果を得る場合と比べてコスト増を抑制することができる。
【0062】
また、圧力緩衝装置11は、伸び行程においてコイルばね部材134が縮んで高減衰力に切り替わる際の減衰力の急変を緩和する際の減衰力特性は、シャッタ部材64の板厚や枚数などによる剛性の変更と、ディスク65の厚さによって決まるシャッタ部材64とバルブ部材66との間のクリアランスの変更とによって、容易に調整することができる。
【0063】
また、圧力緩衝装置11は、ディスクバルブ68の板厚や枚数などの剛性の設定によって、
図3に破線Yで示すように、伸び行程での伸び切り時(リバウンド高荷重時)に発生する高減衰力を容易に調整することができる。
【0064】
また、圧力緩衝装置11は、ピストン通路114の通路溝118に複数の島部119が形成されているため、開口側室101の圧力が底側室102の圧力より高くなった際のバルブ部材66の変形を、複数の島部119で抑制することができる。よって、バルブ部材66の耐久性を向上させることができる。
【0065】
また、圧力緩衝装置11は、一端側が底側ストッパ部材132に配置されるコイルばね部材134の他端側が、ロッド51に設けられた開口側ストッパ部材133に当接し、開口側ストッパ部材133のコイルばね部材134が当接する面とは反対の面が、ロッドガイド41に当接する。よって、コイルばね部材134がロッドガイド41に直接当接する場合と比べてロッドガイド41の耐久性を向上させることができる。
【0066】
なお、圧力緩衝装置11において、開口側ストッパ部材133をなくし、一端側が底側ストッパ部材132に配置されるコイルばね部材134の他端側が、ロッドガイド41に直接当接するようにしても良い。このように構成すれば、開口側ストッパ部材133をなくすことができるため、圧力緩衝装置11の部品点数、重量およびコストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0067】
11…圧力緩衝装置、21…シリンダ、23…底部、24…開口部、41…ロッドガイド(蓋部材)、51…ロッド、64…シャッタ部材、66…バルブ部材、67…開口側ピストン(第二のピストン)、72…底側ピストン(第一のピストン)、81…第一室、82…第二室、114…ピストン通路(連通路)、121…貫通孔、132…底側ストッパ部材(第一のストッパ部材)、133…開口側ストッパ部材(第二のストッパ部材)、134…コイルばね部材。