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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080038
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】分岐管コネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/04 20060101AFI20240606BHJP
   A61M 39/10 20060101ALI20240606BHJP
   A61M 39/26 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A61M39/04 100
A61M39/10 110
A61M39/26
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192869
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000153823
【氏名又は名称】株式会社八光
(72)【発明者】
【氏名】内山 周
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066JJ02
4C066JJ05
4C066QQ15
(57)【要約】
【課題】輸液ラインの中途に組み込み、輸液ラインに雄テーパー部を接続して用いるコネクタにおいて、小口径の規格に対しても安全かつ確実に適用できる分岐管コネクタを提供すること。
【解決手段】分岐管コネクタ10は、輸液ラインの中途に設け上流から下流に流路を形成する主管21と、該主管21に流路を連通して分岐する側管接続部22よりなる分岐管本体20と、前記側管接続部22の外周面に覆着する側管30とで構成され、前記主管21には、該主管21の内壁面底面から側管30方向に立設され主管通路の上流から下流への直線的な流れを阻害する仕切板214を備え、前記側管30は、雄テーパーの挿着により通孔を形成する開口設定部を備える弾性部材よりなる弁部材31と、該弁部材31と前記側管接続部22を介設する側管ハウジング32とを備え、該弁部材31は、円筒キャップ形状に形成され、該側管ハウジング32に冠着される構成とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液ラインの中途に設け上流から下流に流路を形成する主管と、該主管に流路を連通して分岐する側管接続部よりなる分岐管本体と、
前記側管接続部の外周面に覆着する側管とよりなる分岐管コネクタにおいて、
前記主管には、該主管の内壁面底面から側管方向に立設され主管通路の上流から下流への直線的な流れを阻害する仕切板を備え、
前記側管は、上面中心部に、雄テーパーの挿着により通孔を形成する開口設定部を有する弾性部材よりなる弁部材と、該弁部材と前記側管接続部を介設する側管ハウジングとを備え、該弁部材は、円筒キャップ形状に形成され、該側管ハウジングに冠着することを特徴とする分岐管コネクタ。
【請求項2】
前記弁部材と前記側管ハウジングは二色成形により一体に形成される請求項の分岐管コネクタ。
【請求項3】
前記仕切板の上端部は、前記側管接続部上端面より突出せず、かつ、前記仕切板の上端部と前記側管接続部上端面との距離は1.0mm以内に形成される請求項1の分岐管コネクタ。
【請求項4】
前記仕切板は、前記側管から前記主管への合流部中心より該主管通路の上流側に設けられる請求項1の分岐管コネクタ。
【請求項5】
前記側管から前記主管への合流部にあたる該主管外周の両側面に、該主管軸方向および該側管方向への滑り止め手段を備えた把持部を設ける請求項1の分岐管コネクタ。
【請求項6】
前記把持部の滑り止め手段は、底部側を除く周囲を凸部あるいは段差で囲われて形成される請求項5の分岐管コネクタ。
【請求項7】
前記側管ハウジングの上面の開口部の内径は、3.6mm以上、3.9mm以下に形成される請求項1乃至6のいずれかの分岐管コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液ラインに設けられる分岐管コネクタに関し、詳しくは、輸液ラインの中途に組み込み、輸液ラインにシリンジ等の雄テーパー部を接続するための分岐管コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
輸液ラインに別の薬液を混注するさい、注入針や活栓を用いずに、シリンジ等注入器具の雄テーパー部を接続して用いるゴム弾性部材の弁を備えた分岐管コネクタがある。このコネクタは、弁に雄テーパー部を挿入することで弁に設けるスリットなどの開口部が押し広げられ輸液ラインへの流体通路が確保され、テーパー部を抜くことで弁の開口部が元の閉じた状態となり通路が閉塞されるものとなっている。
【0003】
従来このようなコネクタとしては、例えば、特許文献1のような中央部にスリットを有するディスク状の弁部材を、ハウジングの内周面に内方向に突出して設けられた台座上に載置し、該弁部材の上面辺縁部にハウジングと接合したリング部材を設けて、リング部材とハウジングで弁部材の周囲を挟持してなる分岐管コネクタや、前記同様にハウジング内に設ける弁部材の辺縁部をハウジングで上下から挟持してなるコネクタであって、弁部材に設けるスリットを放射状に形成することで、雄テーパー部の外周面とスリットの内面の摩擦抵抗が低減し、ハウジングからの弁部材の脱落が防止され、安定保持できるとした特許文献2のような分岐管コネクタ等々が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-011820号公報
【特許文献2】WO2014/046271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、医療器具業界では、医療用コネクタの誤接続による医療事故の事例が国内外で報告されている。これは、これまで利便性が優先され、輸液等のすべての用途で同一のコネクタ規格(ルアーテーパーによる接続)が用いられたことに由来することから、用途により、例えば、経腸栄養ラインと輸液ラインに用いるコネクタが物理的に接続できないように基準を改正するなどの安全性を優先した対応がなされている。そして、近年、このコネクタの誤接続を防止するため神経麻酔分野、経腸栄養分野等において国際規格の制定が進められ、段階的な誤接続防止コネクタの導入が決定された。特に、神経麻酔分野においては、既に新規格(ISO80369-6)への切り替えが行われており、新規格に適合する各種コネクタの提供が急務となっている。
【0006】
この神経麻酔分野の新規格は、旧規格のルアーテーパーに比較して小口径のテーパーが採用されており、また、雄コネクタのテーパー部の周囲にはカラーを設けることが必須要件とされることから、この規格に適合する雌側のコネクタにおいても適合する小口径の構造が求められているが、単に、従来構造のコネクタのテーパー嵌合部を小さくしたものでは、強度等の構造面や製造上の問題があり、そのまま適用することが難しい。
【0007】
例えば、従来の特許文献1、2のコネクタは、弁部材をハウジングで保持するのに周面の辺縁部で上下あるいは内外から挟持する構成であり、この構成を新規格のコネクタに採用すると、テーパーのサイズが小さくなることで弁部材とハウジングの接続部も小さくせざるをえないため、製造が難しくなったり、接続部の強度が弱まったりすることが懸念される。
【0008】
そこで本発明は、輸液ラインの中途に組み込み、輸液ラインにシリンジ等の雄テーパー部を接続するのに用いられるコネクタにおいて、新たな小口径の規格に対しても安全かつ確実に適用できる分岐管コネクタを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の分岐管コネクタは、輸液ラインの中途に設け上流から下流に流路を形成する主管と、該主管に流路を連通して分岐する側管接続部よりなる分岐管本体と、前記側管接続部の外周面に覆着する側管とよりなる分岐管コネクタであって、前記主管には、該主管の内壁面底面から側管方向に立設され主管通路の上流から下流への直線的な流れを阻害する仕切板を備え、前記側管は、上面中心部に、雄テーパーの挿着により通孔を形成する開口設定部を備える弾性部材よりなる弁部材と、該弁部材と前記側管接続部を介設する側管ハウジングとを備え、該弁部材は、円筒キャップ形状に形成され、該側管ハウジングに冠着される。
【0010】
次の各部は、次の通り形成されることが望ましい。
・前記弁部材と前記側管ハウジングは二色成形により一体に形成される。
・前記仕切板の上端部は前記側管接続部上端面より突出せず、かつ、前記仕切板の上端部と前記側管接続部上端面との距離は1.0mm以内に形成される。
・前記仕切板は前記側管から前記主管への合流部中心より主管通路の上流側に設けられる。
・前記側管から前記主管への合流部にあたる主管外周の両側面に、主管軸方向および側管方向への滑り止め手段として、底部側を除く周囲を凸部あるいは段差で囲まれた把持部が形成される。
・前記ハウジングの上面の開口部の内径は、3.6mm以上、3.9mm以下に形成される。
【0011】
(作用)
本手段によると、弁部材に備える開口設定部が雄テーパー部挿着時のみ開口される通孔であることにより、輸液ラインへの通路が必要以上に大きく開口されることがなく、弁部材の損傷のリスクが低減されるため、雄テーパー部を抜去した後に輸液ラインの薬液が開口設定部から漏れることを防止できる。
また、弁部材を側管ハウジングに冠着する構造により、ハウジング内に弁部材を保持する機構を必要とせず、小口径のコネクタの形成を容易なものとすることができる。
【0012】
加えて、弁部材と側管ハウジングを二色成形で一体に形成することで、側管ハウジングの上面及び外周面の一部が確実に弁部材の対応接続部位と固定することができ、雄テーパー部による弁部材への押圧によっても接続部が外れる懸念がない。さらに、構造がシンプルとなることで小口径なコネクタとしても製造が容易となる。
【0013】
主管の両側面に、底部側を除く周囲が凸部あるいは段差で囲まれた把持部を設けることで、本願発明の通孔を形成する開口設定部の構造によって従来のスリット等に比べて雄テーパー挿入操作のための押圧力が大きくなっても、該把持部を保持する手指が滑ることを抑制できる。
【0014】
側管ハウジングの上面の開口部の内径を3.6mm以上、3.9mm以下とすることで、新規格の神経麻酔分野のコネクタを接続保持可能で、また、ルアーテーパー規格のコネクタ及び他の規格のコネクタの雄テーパー部等の接続を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、輸液ラインの中途に組み込み、輸液ラインにシリンジ等の雄テーパー部を接続するのに用いられるコネクタにおいて、新たな小口径の規格に対しても安全かつ確実に適用できる分岐管コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態の一例を示す分岐管コネクタの全体構成図。
図2】前記実施の形態の分岐管コネクタの上面及び正面断面を示す構成図。
図3】前記実施の形態の分岐管コネクタの側管の構成を示す断面図。
図4】前記実施の形態の分岐管コネクタへの雄テーパー部の挿着の様子を示す模式図。(接続前)
図5】前記実施の形態の分岐管コネクタへの雄テーパー部の挿着の様子を示す模式図。(接続中)
図6】前記実施の形態の分岐管コネクタへの雄テーパー部の挿着の様子を示す模式図。(接続後)
図7】神経麻酔分野の小口径コネクタの国際規格(ISO80369-6規格)の雄テーパーの規格サイズを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の分岐管コネクタの実施の形態について図面を参考に詳細に説明する。
本例の分岐管コネクタは、例えば、長時間連続して薬液等を注入する輸液ラインに別の薬液をワンショットで注入する混注に用いられるコネクタで、輸液ラインの主管ルートの中途に、シリンジ等の雄テーパー部を接続するため分岐ラインを備えたコネクタとして構成される。使用される薬液や用途は特定するものではないが、本例では、麻酔薬の混注に特に好適で、サイズや構造は、神経麻酔分野の小口径コネクタの国際規格ISO80369-6に適合した雄テーパー部を挿抜可能な雌コネクタを備えて形成された。
【0018】
本発明の実施の形態を説明する前に、本例のコネクタと接続可能なISO80369-6に規定する雄テーパー部のサイズについて簡単に説明する。本規格の雄テーパー部には、周囲に雌テーパー部との接続をネジにより確実にするロック機構(ロックリング)を備えたロック式コネクタと、雄テーパー部の周囲にロック機構を持たないカラーを設けるスリップ式コネクタが規格されているが、ここでは、代表例としてスリップ式コネクタの例についてのみ記載する。なお、本発明のコネクタが、ロック式コネクタを除外するものではない。
【0019】
図7は、小口径(スモールボア)コネクタのひとつとして規定される神経麻酔分野のコネクタに関する国際規格ISO80369-6のスリップ式雄コネクタを示している。本規格のコネクタ(雄テーパー)40は、雄テーパー部41と、該テーパー部41の周囲に設けるカラー42とからなり、雄テーパー40の各部のサイズは次の通りである。
・テーパー角度5/100。
(以下、単位はmm、ミニマム値(公称値)マキシマム値の順で記載)
・カラー42からのコネクタ先端(雄テーパー部41)の陥凹又は突出-4(0)+4。
・雄テーパー先端部から0.5mm(基準寸法)位置における雄テーパー先端外径(a)3.17(3.21)3.25。
・雄テーパー先端内径(b)-(1.15)2.3。
・雄テーパー先端部から6.5mm(基準寸法)位置における雄テーパー大端外径(c)3.45(3.51)3.57。
・内側カラー径(d)6.75(6.875)7.0。
・雄テーパー先端からのコネクタ長(g)8.0(8.3)―。
・コネクタの流体ルーメンの内径(f)―(1.15)2.3。
・カラー外側形体の外周面を包囲する最小円筒体の径(e)9.8(10.5)11.5。
【0020】
対して、ルアーテーパーの規格(ISO80369-7)の各部のサイズは次の通りである。
・テーパー角度6/100。
・雄テーパー先端部から0.75mm(基準寸法)位置における雄テーパー先端外径3.97(4.021)4.07。
・雄テーパー先端内径―(2.1)、2.9。
・雄テーパー先端部から7.5mm(基準寸法)位置における雄テーパー大端外径4.376(4.426)4.476。
・雄テーパー長7.5(8.4)10.5。
となっており、新たな神経麻酔分野の規格(ISO80369-6)のテーパーは、ルアーテーパーと比較して、雄テーパー部41の外径が先端で約0.8mm、大端で約0.9mm細径となり、ロック機構を備えていない雄テーパーであってもテーパー部とほぼ同じ高さ(0±0.4mm以内)のカラーが設けられる規格となっている。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態の一例を示す分岐管コネクタの全体構成図、図2は、該分岐管コネクタの上面図(A)、及び、正面断面図(B)、図3は、該分岐管コネクタの側管の構成を示す断面図を示している。
本発明の分岐管コネクタ10は、輸液ラインの流路を分岐して混注ルートと合流させる分岐管本体20と、混注口となる雌コネクタを形成する側管30により構成される。
【0022】
前記分岐管本体20は、形状を保持可能な硬質樹脂、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリアセタールなど熱可塑性樹脂(本例においては、ポリプロピレン)で、輸液ラインに接続されて輸液ラインの上流から下流に流路を形成する主管21と、該主管21に流路を連通して分岐し、混注ルートを形成する側管接続部22により構成される。
【0023】
前記主管21は、輸液ラインの上流側に接続する雌テーパーを有する輸液ライン流入部211と、下流側に接続する雄テーパーを有する輸液ライン流出部212を備え、いずれのテーパー形状も前記した神経麻酔分野の小口径コネクタの規格(ISO80369-6)に適用して形成される。輸液ライン流入部211と輸液ライン流出部212は、同軸上に配置され、一連の通路が形成される。さらに、輸液ライン流出部212には対応する輸液ラインの雌テーパー部を固定するロックリング213が取り付けられる。
【0024】
前記側管接続部22は、前記主管21の流路の中途を垂直方向に分岐する円筒形状に形成され、端部には前記側管30が覆着される。前記側管接続部22は覆着される側管の形態に適合したサイズに形成されれば良いが、本例においては、外径を9.0mm、内径を6.0mm、主管21から突出する高さを2.7mmとした。
【0025】
また、前記主管21には、該主管21の内壁面底面から前記側管30の方向に立設され、主管21の通路の上流から下流への直線的な流れを阻害する仕切板214が形成される。該仕切板214は、主管21の通路軸方向に直交する平面体で、両側面は主管内壁面に接続され、該仕切板214の上端部は、側管接続部22の上端面と一致する高さに形成される。該仕切板214と後述する側管30の構造とを組み合わせることにより、雄テーパー部41を後述する弁部材31に押し込んで挿着するさい、分岐管コネクタ10の内部に混注薬液が滞留する余分な空間を無くすことができる。
なお、仕切板214の上端部は前記側管接続部22の上端面より突出せず、該仕切板の上端部と該側管接続部上端面との距離が1.0mm以内であれば、本例と同等の効果を得ることができる。
【0026】
さらに、該仕切板214は、主管21と側管接続部22の合流部の中心に対し主管通路の上流側寄りに設けられる。本例においては、仕切板214の厚さを3.0mmとし、内径6.0mmに設定された前記主管21と側管接続部22の合流部の通路幅を、上流側1.2mm、下流側1.8mmに区画するよう配置された。これにより、混注された薬液は、より広い輸液ライン流出側へ優先的に流れるため、輸液ライン流入側への混注薬液の逆流を抑制することができる。
【0027】
また、前記主管21には、該主管21の側管30からの合流部に当たる両側面に滑り止め手段を備えた把持部215が設けられる。該把持部215は、分岐管コネクタ10に雄テーパー部41を挿入するさい手指により支持される部位で、底部側を除く周囲を前記滑り止め手段となる凸部216及び段差で囲まれた陥凹部として形成される。なお、本例における滑り止め手段は、主管軸方向の滑り止めとして、該主管21の外周より立設する凸部216が把持部215を挟んで片面に2カ所ずつ突設され、また、側管30方向の滑り止めは、側管接続部22に該側管接続部22より外径の大きな側管30を覆着することで生じる段差として形成される。これにより、本分岐管コネクタ10を固定して側管30に雄テーパー部41を挿着するさい、該把持部215が手指の収まる陥凹部となり主管軸方向および側管方向への手指の滑脱を抑制することができる。
【0028】
前記側管30は、前記分岐管接続部22に覆着され、前記分岐管本体20と接続される。前記側管30は、上面中心部に雄テーパー41の挿着により通孔を形成する開口設定部を備える弁部材31と、該弁部材31と側管接続部22を介設する側管ハウジング32とにより構成される。
【0029】
弁部材31は、イソプレンゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマー等の伸縮性に富んだゴム弾性を備えた材質(本例においては、スチレン系エラストマー)から選択され、ほぼ平面状に形成される弁部材31の上面と、弁周面312により円筒キャップ形状に形成される。そして、前記上面の中心部分を雄テーパー部41との当接部となる被押圧部311として上面辺縁部より厚く形成され、その中心には雄テーパー部41を挿着したさいに通孔を形成する針孔痕33が設けられる。そして、被押圧部311より薄く形成される辺縁部は円形の溝形状に形成され、後記する側管ハウジング32の先端側と嵌合し、側管ハウジング上面323との固接部となる。一方、弁周面312は、前記上面辺縁部の溝部分とほぼ同じ厚さで筒状に形成され、その内面が側管ハウジング32との固接部となる。
【0030】
前記被押圧部311の中心部に設ける開口設定部となる針孔痕33は、円筒状に形成される貫通孔痕で、自然状態では弁部材31の弾性により閉塞され、輸液ラインの気密を保持しており、被押圧部311への雄テーパー部41の押圧、挿着により弁部材31が伸びて変形し、針孔痕33が開口して輸液ラインへの通路となる。弁部材31への針孔痕33の形成は、先端が円錐の針管を被押圧部311の中心に貫通させることで形成され、本例においては、径0.76mmの円錐ポイントの針管が用いられた。
【0031】
側管ハウジング32は、形状を保持可能な硬質樹脂、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリアセタールなど熱可塑性樹脂等(本例においては、ポリプロピレン)により複数の段差を設けた円筒状に形成される。側管ハウジング32の先端側筒部321は、弁部材31が冠着される細径側で、弁冠着部322は、弁部材31の弁周面312の厚さの分だけ肉薄に形成され、弁部材31が冠着されると段差の無い同じ外径の円筒となるように形成される。また、先端の辺縁部分が僅かに内側に突出してハウジング上面323が形成される。該先端側筒部321は、挿着される雄テーパーの形態に適合したサイズに形成されれば良いが、本例においては、前記小口径の雄テーパー41の規格に適合して側管ハウジング32の先端部分の内径を、該規格の雄テーパー部41の外径のMax寸法となる3.570mmが通過可能な3.6mm以上、雄ルアーテーパー規格のMin寸法となる3.97mmが挿入できない3.9mm以下の範囲に形成される。(本例における具体的な先端部内径3.6mm、先端部以外の内径4.0mm)また、側管ハウジング32の先端側筒部321外径(弁冠着部322は、弁部材31を冠着したときの外径)を小口径の雄テーパー41の規格のカラー42内に収まるように、該規格のカラー42内径のMin値となる6.75mmより小さく形成する。(本例における具体的な外径6.2mm)更に、細径内筒部の内腔空間34の深さは、小口径の雄テーパー規格のテーパーの挿着長のMax値6.5mm程度より大きく設定される。(本例における具体的な深さ7.5mm)
【0032】
一方、側管ハウジング32の基側筒部324は、側管接続部22に覆着する太径側で、端部の辺縁部が僅かに内側に突出してハウジング下面が形成される。該基側筒部324は、覆着する側管の形態に適合したサイズに形成されれば良いが、本例においては、側管接続部22に適合して、内径を9.1mm、外径10.5mm、内腔の深さ5.4mmとした。前記先端側筒部321と基側筒部324に段差を設けることにより、雄テーパー部41を挿着するさいに、深く挿入すると該段差の肩部325とテーパー部のカラー42が当たることによりテーパー部の過剰な挿入を防止することができる。
【0033】
そして、前記弁部材31は、側管ハウジング32に冠着されるが、側管ハウジング32の先端部となる側管ハウジング上面323と、弁部材31の肉厚に形成された被押圧部311の周囲には、僅かに隙間35が設けられており、雄テーパー部41による押圧に対し、弁部材31がわずかに周面側にも伸びることができる逃げ空間となっている。また、弁部材31と側管ハウジング32は接着等により冠着することもできるが、前記弁部材31を形成するスチレン系エラストマーと側管ハウジング32を形成するポロプロピレンを二色成形により一体となるように形成することで、前記弁部材31の上面辺縁部の裏面とハウジング上面323、及び、弁部材周面312の内面とハウジングの弁冠着部322が、雄テーパー部41の押圧によってもずれたり破損したりすることがない固着された構造となる。
【0034】
図4図6は、本発明の分岐管コネクタに神経麻酔分野の小口径コネクタ規格(ISO80369-6)に適合する雄テーパー部を挿着する様子を示す模式図で、図4が挿着前の状態、図5が挿着中の様子、図6が挿着された状態を示している。
【0035】
本分岐管コネクタ10の側管30にシリンジ50の雄テーパー部41を接続する前、弁部材31に設ける開口設定部となる針孔痕33は閉塞された状態にあり、輸液ラインを確実に気密状態に維持している。
【0036】
把持部215を手指で把持し、被押圧部311に雄テーパー部41の先端を押し込むと、弁部材31が弾性により伸び、側管ハウジング32の内腔空間34に押し下げられ、被押圧部311の中心部に設けられた針孔痕33が徐々に押し広げられ開口していく。
【0037】
側管30に、更に雄テーパー部41を押し込み、雄テーパーのカラー42が側管ハウジング32の肩部325に接触するまで押し込まれ完全に挿着されると、弁部材31の被押圧部311は、更に伸びて側管ハウジング32の内腔空間34に押し込まれ、針孔痕33が周囲に引っ張られ開口し、開口部331として輸液ラインとの通路が形成される。その時、雄テーパー部41の先端開口部が、開口した針孔痕33の開口部331より大きく形成されていることで、テーパーの先端面は弁部材31の被押圧部311の上面を押圧するのみで輸液ラインと接触することがない。
【0038】
また、この雄テーパー部41が完全に押し込まれたとき、弁部材31の底面となる部位と、仕切板214の上端部との間に0.5mmから1.5mm(本例においては0.5mm)の隙間が生じるように予め設定されている。これにより、分岐管コネクタ10の内部に混注薬液が滞留する余分な空間を無くし、かつ、弁部材31が仕切板214と接触することによる混注通路の閉塞を防ぐことができる。
さらに、凸部および段差により囲まれた把持部215により、従来のスリット等の開口設定部に比べて雄テーパー部挿入時の押圧力が増しても、把持している手指が滑らない。
【0039】
本実施の形態の分岐管コネクタ10によると、弁部材31に備える開口設定部が雄テーパー部挿着時のみ開口される針孔痕のような通孔であることにより、輸液ラインへの通路が必要以上に大きく開口されることがなく、弁部材31の損傷のリスクが低減されるため、雄テーパー部を抜去した後に輸液ラインの薬液が開口設定部から漏れることを防止できる。
また、円筒キャップ形状の弁部材31を側管ハウジング32に冠着するよう形成することで、側管ハウジング32内に弁部材31を保持する機構を必要としないため、ハウジング内に弁部材を保持する機構を必要とせず、小口径のコネクタの形成を容易なものとすることができる。
加えて、弁部材31と側管ハウジング32を二色成形で一体に形成することで、側管ハウジング上面323及び外周面の一部が確実に弁部材31の対応接続部位と固定することができ、雄テーパー部による弁部材31への押圧によっても接続部が外れる懸念がない。さらに、構造がシンプルとなることで小口径なコネクタとしても、製造が容易となる。
これらにより、従来よりも小口径のテーパー規格となる、神経麻酔分野のコネクタ規格(ISO80369-6)の雄テーパー部に安全に、かつ、確実に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10. 分岐管コネクタ
20. 分岐管本体
21. 主管
211.輸液ライン流入部
212.輸液ライン流出部
213.ロックリング
214.仕切板
215.把持部
216.凸部
22. 側管接続部
30. 側管
31. 弁部材
311.被押圧部
312.弁周面
32. 側管ハウジング
321.先端側筒部
322.弁冠着部
323.側管ハウジング上面
324.基側筒部
325.肩部
33. 針孔痕
331.開口部
34. 内腔空間
35. 隙間
40. 規格の雄コネクタ(ISO80369-6)
41. 雄テーパー部
42. カラー
5. シリンジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液ラインの中途に設け上流から下流に流路を形成する主管と、該主管に流路を連通して分岐する側管接続部よりなる分岐管本体と、
前記側管接続部の外周面に覆着する側管とよりなる分岐管コネクタにおいて、
前記主管には、該主管の内壁面底面から側管方向に立設され主管通路の上流から下流への直線的な流れを阻害する仕切板を備え、
前記側管は、上面中心部に、雄テーパーの挿着により通孔を形成する開口設定部を有する弾性部材よりなる弁部材と、該弁部材と前記側管接続部を介設する側管ハウジングとを備え、
該弁部材は、円筒キャップ形状に形成され、該側管ハウジングに冠着し、
前記仕切板は、前記側管から前記主管への合流部中心より主管通路の上流側に配置され、前記仕切板の頂部には、前記通孔と対向する平面が形成されることを特徴とする分岐管コネクタ。
【請求項2】
前記仕切板の上端部は、下流側に面取り部を備える請求項1の分岐管コネクタ。
【請求項3】
前記弁部材と前記側管ハウジングは二色成形により一体に形成される請求項の分岐管コネクタ。
【請求項4】
前記仕切板の上端部は、前記側管接続部上端面より突出せず、かつ、前記仕切板の上端部と前記側管接続部上端面との距離は1.0mm以内に形成される請求項1の分岐管コネクタ。
【請求項5】
前記側管から前記主管への合流部にあたる該主管外周の両側面に、該主管軸方向および該側管方向への滑り止め手段を備えた把持部を設ける請求項1の分岐管コネクタ。
【請求項6】
前記把持部の滑り止め手段は、底部側を除く周囲を凸部あるいは段差で囲われて形成される請求項5の分岐管コネクタ。
【請求項7】
前記側管ハウジングの上面の開口部の内径は、3.6mm以上、3.9mm以下に形成される請求項1から6のいずれか一項の分岐管コネクタ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の分岐管コネクタは、輸液ラインの中途に設け上流から下流に流路を形成する主管と、該主管に流路を連通して分岐する側管接続部よりなる分岐管本体と、前記側管接続部の外周面に覆着する側管とよりなる分岐管コネクタであって、前記主管には、該主管の内壁面底面から側管方向に立設され主管通路の上流から下流への直線的な流れを阻害する仕切板を備え、前記側管は、上面中心部に、雄テーパーの挿着により通孔を形成する開口設定部を備える弾性部材よりなる弁部材と、該弁部材と前記側管接続部を介設する側管ハウジングとを備え、該弁部材は、円筒キャップ形状に形成され、該側管ハウジングに冠着され、前記仕切板は、前記側管から前記主管への合流部中心より主管通路の上流側に配置され、前記仕切板の頂部には、前記通孔と対向する平面が形成される
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
次の各部は、次の通り形成されることが望ましい。
・前記仕切板の上端部は、下流側に面取り部を備える。
・前記弁部材と前記側管ハウジングは二色成形により一体に形成される。
・前記仕切板の上端部は前記側管接続部上端面より突出せず、かつ、前記仕切板の上端部と前記側管接続部上端面との距離は1.0mm以内に形成される
前記側管から前記主管への合流部にあたる主管外周の両側面に、主管軸方向および側管方向への滑り止め手段として、底部側を除く周囲を凸部あるいは段差で囲まれた把持部が形成される。
・前記ハウジングの上面の開口部の内径は、3.6mm以上、3.9mm以下に形成される。