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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080045
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】車両用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/215 20110101AFI20240606BHJP
【FI】
B60R21/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192897
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】夫馬 真
(72)【発明者】
【氏名】安部 和宏
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA07
3D054AA14
3D054BB04
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】カバーをハウジングに被せて装着する組み付け操作を円滑に行うことが可能な車両用エアバッグ装置を提供する。
【解決手段】周壁部を有するハウジングと、周壁部を包囲する弾性変形可能な環状壁部21を有し、ハウジングに被せられるカバー8と、車幅方向で、互いに向かい合う周壁部の一対の左右壁部部位に、ハウジングの外方へ突出させて設けられた係止突起16と、周壁部の一対の左右壁部部位に、係止突起と併設して突出されたガイド突起17と、環状壁部に設けられ、係止突起が挿入される第1開口部23及びガイド突起が挿入される第2開口部24とを備え、周壁部の高さ方向から見て、係止突起の突出先端16bまでの長さは、ガイド突起の突出先端17bまでの長さよりも短く、ガイド突起には、ハウジングにカバーを被せる装着方向に沿って環状壁部が摺動され、環状壁部を周壁部から離れる方向へ弾性変形させる案内面26が形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグを収納するために少なくとも周壁部を有し、車体側に固定されるハウジングと、
少なくとも上記周壁部を包囲する弾性変形可能な環状壁部を有し、上記ハウジングに被せられ、上記エアバッグを覆うカバーと、
上記周壁部内方の中央部位を横切る上記ハウジングの第1の方向で、互いに向かい合う当該周壁部の一対の第1壁部部位に、該ハウジングの外方へ突出させて設けられた係止突起と、
上記周壁部の一対の上記第1壁部部位に、上記係止突起と併設して突出されたガイド突起と、
上記環状壁部に設けられ、上記係止突起が挿入される第1開口部及び上記ガイド突起が挿入される第2開口部とを備え、
上記周壁部内方の上記中央部位で上記第1の方向と直交するように、当該中央部位を該周壁部の高さ方向に向かって横切る上記ハウジングの第2の方向から見て、上記係止突起の上記第1壁部部位から突出先端までの長さは、上記ガイド突起の該第1壁部部位から突出先端までの長さよりも短く、
上記ガイド突起には、上記第2の方向に沿って上記環状壁部が摺動され、該環状壁部を上記周壁部から離れる方向へ弾性変形させる案内面が形成され、
上記環状壁部が、上記案内面により弾性変形され上記ガイド突起を乗り越えて弾性復元されると、該ガイド突起が上記第2開口部に挿入され、かつ上記係止突起が上記第1開口部に挿入されることを特徴とする車両用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記ガイド突起の前記案内面は、前記第2の方向に沿って傾斜されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記ガイド突起の前記案内面は、前記第2の方向に沿って傾斜され、かつ該第2の方向から見て、前記ハウジングに被せられる前記カバーに向けて凸状に隆起されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記係止突起は、前記ガイド突起の両側に設けられることを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記第2の方向で、前記係止突起は前記第1開口部に対し第1クリアランスが設けられ、前記ガイド突起は前記第2開口部に対し第2クリアランスが設けられ、かつ該第2クリアランスは該第1クリアランスよりも大きく設定されて、当該第1クリアランスが前記ハウジングに対する前記カバーの可動域を規定することを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記周壁部及び前記環状壁部には、前記第1壁部部位を避けた他の壁部部位に、前記ハウジングと前記カバーとを係合する係合部が設けられることを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項7】
前記ハウジングには、前記エアバッグと該エアバッグにインフレータガスを供給するインフレータとを含んで構成されるエアバッグユニットが収納されることを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーをハウジングに被せて装着する組み付け操作を円滑に行うことが可能な車両用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグを収納するハウジング周りの構造について、特許文献1が知られている。特許文献1の「インストルメントパネルの構造」は、車両後方側が開口するエアバッグ収納凹部が形成され、エアバッグ収納凹部にエアバッグハウジングが収納されるとともに、エアバッグハウジングが車両前方に延びるエアバッグ支持ブラケットを介してステアリングサポートメンバに支持されるインストルメントパネルの構造において、エアバッグ収納凹部は、車両前方側に奥壁を備え、奥壁には貫通孔が設けられ、ステアリングサポートメンバは、車両上方へ延びるマウントブラケットを備え、エアバッグ支持ブラケットの前端部を貫通孔より貫通させてマウントブラケットに固定することによって、エアバッグハウジングがマウントブラケットを介してステアリングサポートメンバに支持されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-147530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術では、エアバッグ収納凹部の開口を塞ぐエアバッグリッドを、係合部を介してハウジングに取り付けるようにしている([0010]及び図4参照)。
【0005】
エアバッグリッドなどのカバーをハウジングに係合して取り付ける構造は、基本的に図9に示すように、カバーaをハウジングbに被せるときに、ハウジングbに形成した突起cが、カバーaに形成した穴dに入り込むようにするものである。
【0006】
このとき、ハウジングbに被さる装着方向にカバーaを押圧すると、突起cがカバーaと干渉してしまって、カバーaのハウジングbへの装着を妨げることになる。装着操作が妨げられると、突起cと穴dの係合を確保することができない。
【0007】
突起cと穴dを係合させるには、装着方向で、カバーaが突起cを乗り越えられるように、カバーaをハウジングbから離れる方向へ押し出す作用が必要となる。
【0008】
カバーaを押し出すために、追加の突起をハウジングbに設けるようにすると、今度はこの追加の突起がカバーaの装着を妨げてしまうことになるという課題があった。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、カバーをハウジングに被せて装着する組み付け操作を円滑に行うことが可能な車両用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる車両用エアバッグ装置は、エアバッグを収納するために少なくとも周壁部を有し、車体側に固定されるハウジングと、少なくとも上記周壁部を包囲する弾性変形可能な環状壁部を有し、上記ハウジングに被せられ、上記エアバッグを覆うカバーと、上記周壁部内方の中央部位を横切る上記ハウジングの第1の方向で、互いに向かい合う当該周壁部の一対の第1壁部部位に、該ハウジングの外方へ突出させて設けられた係止突起と、上記周壁部の一対の上記第1壁部部位に、上記係止突起と併設して突出されたガイド突起と、上記環状壁部に設けられ、上記係止突起が挿入される第1開口部及び上記ガイド突起が挿入される第2開口部とを備え、上記周壁部内方の上記中央部位で上記第1の方向と直交するように、当該中央部位を該周壁部の高さ方向に向かって横切る上記ハウジングの第2の方向から見て、上記係止突起の上記第1壁部部位から突出先端までの長さは、上記ガイド突起の該第1壁部部位から突出先端までの長さよりも短く、上記ガイド突起には、上記第2の方向に沿って上記環状壁部が摺動され、該環状壁部を上記周壁部から離れる方向へ弾性変形させる案内面が形成され、上記環状壁部が、上記案内面により弾性変形され上記ガイド突起を乗り越えて弾性復元されると、該ガイド突起が上記第2開口部に挿入され、かつ上記係止突起が上記第1開口部に挿入されることを特徴とする。
【0011】
前記ガイド突起の前記案内面は、前記第2の方向に沿って傾斜されていることが好ましい。
【0012】
前記ガイド突起の前記案内面は、前記第2の方向に沿って傾斜され、かつ該第2の方向から見て、前記ハウジングに被せられる前記カバーに向けて凸状に隆起されていることが望ましい。
【0013】
前記係止突起は、前記ガイド突起の両側に設けられることが好ましい。
【0014】
前記第2の方向で、前記係止突起は前記第1開口部に対し第1クリアランスが設けられ、前記ガイド突起は前記第2開口部に対し第2クリアランスが設けられ、かつ該第2クリアランスは該第1クリアランスよりも大きく設定されて、当該第1クリアランスが前記ハウジングに対する前記カバーの可動域を規定することが望ましい。
【0015】
前記周壁部及び前記環状壁部には、前記第1壁部部位を避けた他の壁部部位に、前記ハウジングと前記カバーとを係合する係合部が設けられることが好ましい。
【0016】
前記ハウジングには、前記エアバッグと該エアバッグにインフレータガスを供給するインフレータとを含んで構成されるエアバッグユニットが収納されることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる車両用エアバッグ装置にあっては、カバーをハウジングに被せて装着する組み付け操作を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る車両用エアバッグ装置が適用される車両の一例である、鞍乗型車両の要部を示す説明図である。
図2】本発明に係る車両用エアバッグ装置の好適な一実施形態の説明図である。
図3図2に示した車両用エアバッグ装置のハウジングを示す説明図である。
図4図2に示した車両用エアバッグ装置のカバーを示す説明図である。
図5図2に示した車両用エアバッグ装置の係止突起とガイド突起を上から見下ろした要部拡大図である。
図6図2に示した車両用エアバッグ装置の係止突起及びガイド突起が第1開口部及び第2開口部に挿入された様子を説明する説明図である。
図7図2に示した車両用エアバッグ装置の係止突起及びガイド突起が第1開口部及び第2開口部に挿入される手順を説明する説明図である。
図8】本発明に係る車両用エアバッグ装置が備える案内面を有するガイド突起の変形例を示す説明図である。
図9】課題を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる車両用エアバッグ装置の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1には、本発明にかかる車両用エアバッグ装置が搭載される車両の例として、オートバイやスクーターに代表される2輪もしくは3輪の鞍乗型車両1であって、鞍型のドライバーシート2から走行方向前方へ見たときの車体の外観が示されている。
【0021】
左右のステアリングハンドル3の間を覆うハンドルカバー4の下方には、車体の車幅方向中央に位置させて、左右のレッグシールド5から連なるフロントカバー6が設けられる。
【0022】
鞍乗型車両1では、このフロントカバー6に配置して、乗員を保護するための車両用エアバッグ装置7が設けられる。
【0023】
この種の車両用エアバッグ装置7はよく知られているように、この他にも、背景技術に示されている自動車の助手席インストルメントパネルに設けられたり、乗員の膝周辺を保護する目的で、インストルメントパネルの下に配置して設けられる。
【0024】
以下に説明する本発明にかかる車両用エアバッグ装置7は、以上のように多様な位置に設けられる乗員保護装置として適用できることはもちろんである。
【0025】
図2には、本実施形態にかかる車両用エアバッグ装置7が示されている。以下の説明では、車体に搭載されていない車両用エアバッグ装置7単体について、後述するように、カバー8をハウジング9に被せて装着するために、カバー8をハウジング9に向けて下方へ、あるいはハウジング9をカバー8に向けて上方へ相対的に移動させる方向を上下方向とし、この上下方向と直交する平面において、車両用エアバッグ装置7を車体に取り付けたときの車幅方向を左右方向とし、左右方向と直交する方向を前後方向として説明する。
【0026】
しかしながら、車両用エアバッグ装置7を車体に搭載した状態では、車両用エアバッグ装置7の左右方向のみが車幅方向である他、車両用エアバッグ装置7の上下方向や前後方向は必ずしも、車体の上下方向や前後方向であることを意味するものではない。
【0027】
以上の前提の下で、車体に搭載されていない車両用エアバッグ装置7の、後述する周壁部11を有するハウジング9について、本実施形態では、当該ハウジング9の底面部12を基準平面として3次元座標系で方向を特定すると、図3に示すように、周壁部11内方の中央部位Cに原点をとって、当該中央部位(原点)Cを左右方向に横切る方向がハウジング9における第1の方向(X軸方向;上記左右方向)であり、中央部位(原点)Cで第1の方向と直交するように、当該中央部位(原点)Cを周壁部11の高さ方向に向かって上下方向に横切る方向がハウジング9における第2の方向(Z軸方向;上記上下方向)であり、その他、中央部位(原点)Cで第1及び第2の方向と直交するように、当該中央部位(原点)Cを前後方向に横切る方向がハウジング9における第3の方向(Y軸方向;上記前後方向)である。
【0028】
図2(A)は、車両用エアバッグ装置7単体を斜め上方から見た斜視図、図2(B)は、車両用エアバッグ装置7単体の側面図である。
【0029】
車両用エアバッグ装置7は、図示しないエアバッグと、少なくともエアバッグを収納する空間を区画形成するハウジング9と、ハウジング9内のエアバッグを覆うために、当該ハウジング9に上方から被せて設けられるカバー8とを含んで構成される。
【0030】
図3には、ハウジング9が示されている。図3(A)は、ハウジング9を斜め上方から見た斜視図、図3(B)は、ハウジング9を上方から見下ろした平面図、図3(C)は、ハウジング9の側面図である。
【0031】
本実施形態では、ハウジング9には、エアバッグと、エアバッグにインフレータガスを供給してエアバッグを展開膨張させるインフレータとを含んで構成されるエアバッグユニット10が収納される。ハウジング9は、剛性を有する材料で形成することが好ましい。
【0032】
ハウジング9は、エアバッグを含むエアバッグユニット10を収納するために、周壁部11と周壁部11で取り囲まれる底面部12とから、カバー8側となる上方に向けて開口された直方体状の容器形態で形成される。
【0033】
ハウジング9の底面部12には、インフレータを装着するための挿着穴13と、挿着穴13周りに配列され、インフレータをハウジング9に固定するための複数のボルトが挿通されるボルト孔14とが設けられる。
【0034】
図示例のハウジング9は、直方体状であって、周壁部11は、前後左右の4つの平坦な壁部部位11a,11bから、平面外形輪郭が長方形状の形態で形成されている。
【0035】
ハウジング9の周壁部11の平面外形輪郭については、図示例に限ることなく、エアバッグを収納することができ、かつ周壁部11内方の中央部位Cを横切る左右方向及び前後方向で、互いに向かい合う対の壁部部位11a,11bがある限り、どのような形態であってもよい。
【0036】
例えば、周壁部11の平面外形輪郭は、長方形以外の四角形状やその他の多角形状であっても、曲面からなる円形状や楕円形状であっても、また、曲面と平坦面からなるオーバル形状などであってもよい。
【0037】
ハウジング9の底面部12の平面外形輪郭は、周壁部11の平面外形輪郭に合わせた形状であることが望ましい。
【0038】
ハウジング9の底面部12の左右両端側には、車体側へハウジング9を、ひいては車両用エアバッグ装置7を取り付け固定するために、左右一対で取付ブラケット15が設けられる。
【0039】
ハウジング9には、周壁部11内方の中央部位Cを横切る当該ハウジング9の左右方向で、互いに向かい合う一対の左右壁部部位11aそれぞれに、板片状の係止突起16及びガイド突起17を有する係止パーツ18が設けられる。
【0040】
ハウジング9には、周壁部11内方の中央部位Cを横切る当該ハウジング9の前後方向で、互いに向かい合う一対の前後壁部部位11bそれぞれに、係合突起19を有する係合パーツ20が設けられる。
【0041】
係止パーツ18のガイド突起17は、ハウジング9の外方へ向けて突出形成されると共に、係止突起16は、ガイド突起17に併設されて、ガイド突起17の両側に一対で、ハウジング9の外方へ向けて突出形成される。
【0042】
これらガイド突起17及び係止突起16は、係止パーツ18がハウジング9に設けられることで、ハウジング9側となる基端16a,17aに対し、突出先端16b,17bがハウジング9外方に位置される。
【0043】
突出形成されるこれらガイド突起17及び係止突起16は、周壁部11の高さ方向であるハウジング9の上記第2の方向から見て、ガイド突起17の突出先端17bが、係止突起16の突出先端16bよりもハウジング9の外方へ達するように、ガイド突起17が係止突起16よりもハウジング9外方へ迫り出すように形成される(図5中、破線Dは、突出程度の差異を示している)。
【0044】
言い換えれば、第2の方向から見て、左右壁部部位11aそれぞれの各係止突起16の当該左右壁部部位11aから突出先端16bまでの長さは、同様に左右壁部部位11aそれぞれの各ガイド突起17の当該左右壁部部位11aから突出先端17bまでの長さよりも短く設定される。
【0045】
他方、係合パーツ20には、ハウジング9から下向きL字状に折曲される形態で、板片状の複数の係合突起19が突出形成される。折曲部19aは、ハウジング9に被せられるカバー8に向かって丸みを帯びるように形成される。
【0046】
係合パーツ20がハウジング9に設けられることで、係合突起19は、周壁部11の左右壁部部位11aを避けた他の壁部部位である前後壁部部位11bに設けられる。
【0047】
これらガイド突起17、係止突起16及び係合突起19は、ハウジング9の上下高さ方向のほぼ同じ位置からハウジング9外方へ突出される。
【0048】
本実施形態では、係止パーツ18及び係合パーツ20をハウジング9に設けることで、当該ハウジング9に、ガイド突起17、係止突起16及び係合突起19を備えるようにしているが、これらガイド突起17等は、直接ハウジング9の周壁部に一体形成してもよいことはもちろんである。
【0049】
図4には、カバー8が示されている。図4(A)は、カバー8を斜め上方から見た斜視図、図3(B)は、カバー8の側面図、図4(C)は、カバー8を下方から見上げた平面図である。
【0050】
カバー8は、ハウジング9の周壁部11を外側から包囲する環状壁部21と、環状壁部21を上方から覆う頂面部22とから形成され、少なくとも環状壁部21は弾性変形自在に形成される。
【0051】
図示例にあっては、カバー8は、環状壁部21と頂面部22とが弾性変形自在な材料で一体成形されている。
【0052】
環状壁部21は、ハウジング9の周壁部11の平面外形輪郭に合わせて、当該周壁部11よりも一回り大きな平面外形輪郭で形成される。
【0053】
環状壁部21の内方には、周壁部11内方に収納されたエアバッグユニット10が配置される。
【0054】
本実施形態では、ハウジング9の周壁部11の平面外形輪郭が長方形状であることから、環状壁部21の平面外形輪郭も長方形状に形成され、環状壁部21は、周壁部11の一対の左右壁部部位11aに面する一対の左右壁部部位21aと、周壁部11の一対の前後壁部部位11bに面する一対の前後壁部部位21bとを備える。
【0055】
環状壁部21の左右壁部部位21aにはそれぞれ、一対の係止突起16それぞれが挿入されるように一対の第1開口部23が貫通形成されると共に、ガイド突起17が挿入されるように1つの第2開口部24が貫通形成される。
【0056】
環状壁部21の前後壁部部位21bにはそれぞれ、複数の係合突起19それぞれが挿入されるように複数の係合穴25が貫通形成される。
【0057】
係合穴25と係合突起19は、ハウジング9にカバー8を保持するために、左右壁部部位11a,21aを避けた前後壁部部位11b,21bでハウジング9とカバー8とを係合する係合部を構成する。係合穴25は、係合突起19が通過可能な大きさで形成される。
【0058】
カバー8を上方から下方へ向けてハウジング9に被せるとき、環状壁部21の前後壁部部位21bは、その下縁が係合突起19の丸みを帯びた折曲部19aに案内されて滑り降りていき、滑り降りていく過程でハウジング9から離れる方向へ弾性変形され、その後、係合穴25が係合突起19に到達すると、当該係合突起19が係合穴25に挿入され係合されると同時に、弾性復元される(図2参照)。
【0059】
次に、係止突起16及びガイド突起17と、第1及び第2開口部23,24について説明すると、係止突起16はいずれも、ハウジング9から右方向及び左方向へ水平に突出形成される。
【0060】
ガイド突起17は、ハウジング9から右方向及び左方向へ突出形成され、かつガイド突起17には、環状壁部21の左右壁部部位21aの移動を案内する案内面26が備えられる。
【0061】
案内面26は、ガイド突起17の上面に形成され、カバー8をハウジング9に被せる装着方向となる第2の方向(以下、単に、装着方向という)、すなわち下方に向かって押し下げられる環状壁部21の左右壁部部位21aの下縁に当接して摺動を生じさせ、当該左右壁部部位21aに周壁部11(の左右壁部部位11a)から離れる方向への弾性変形が生じるように案内する作用を奏する。
【0062】
案内面21と係止突起16との関係は、図3及び図5に示すように、案内面21が、ガイド突起17の突出先端17b側、具体的には、少なくとも係止突起16の突出先端16bよりもハウジング9外方に達するように迫り出した当該突出先端17b側に設けられる。
【0063】
案内面21は、係止突起16を経て押し下げられていく環状壁部21に対し、当該環状壁部21(の左右壁部部位21a)をハウジング9外方へ押し出すように弾性変形させる。
【0064】
案内面26は好ましくは、図3及び図6に示すように、カバー8の装着方向である下方へ向けて、ガイド突起17の基端17aから突出先端17bへ向かって次第に下っていく傾斜面であることが好ましい。
【0065】
水平な係止突起16に対し、左右壁部部位21aの下縁が装着方向に向かって摺動する上記案内面26を有するガイド突起17は、カバー8の装着方向で、係止突起16よりも長い寸法で現れる。
【0066】
従って、これら係止突起16及びガイド突起17がそれぞれ挿入される第1開口部23及び第2開口部24は、図4及び図6に示すように、カバー8の装着方向で、第1開口部23よりも第2開口部24の方が大きく形成される。
【0067】
板片状の係止突起16が挿入される第1開口部23には、ハウジング9に対するカバー8の可動域を規定するために、図6に示すように、カバー8の装着方向で係止突起16の上側及び下側に、当該係止突起16に対して第1クリアランス(c1とc2)が設けられる。
【0068】
すなわち、第1クリアランスの範囲で、ハウジング9に対してカバー8を上下方向に動かすことができると共に、その範囲でカバー8の動きを制限できるように構成される。
【0069】
他方、板片状のガイド突起17が挿入される第2開口部24には、図6に示すように、カバー8の装着方向でガイド突起17の上側及び下側に、当該ガイド突起17に対して第2クリアランス(c3とc4)が設けられる。
【0070】
第2開口部24は、上述したようにカバー8の装着方向である上下方向に、第1開口部23よりも大きく設定され、これにより、第2クリアランスは、第1クリアランスよりも大きいため、当該第1クリアランスによるカバー8の可動域を制限することがないように構成される。
【0071】
具体的には、係止突起16に対する第1開口部23の第1クリアランスは、係止突起16の上下両側(c1及びc2)に設けられ、これにより、カバー8はハウジング9に対して可動とされる。
【0072】
ガイド突起17に対する第2開口部24の第2クリアランスも、ガイド突起17の上下両側(c3及びc4)に設けられる。
【0073】
第2クリアランスは、ガイド突起17の上側及び下側いずれであっても、係止突起16の上側及び下側の第1クリアランスよりも大きく(c1<c3かつc2<c4)設定され、従って、第2開口部24に挿入されたガイド突起17が、ハウジング9に対するカバー8の動きを妨げることがないように構成される。
【0074】
図示例にあっては、ガイド突起17は板片状であるが、第1クリアランスよりも大きな寸法の第2クリアランスを得ることができれば、案内面26を備えるガイド突起17は、板片状でなく、ボリュームを有するブロック状であってもよい。
【0075】
図示例のように、案内面26が傾斜面である板片状のガイド突起17である場合には、第2開口部24の下縁24aは、当該ガイド突起17がスムーズに入り込むように、ガイド突起17の傾斜に沿った斜め傾斜で形成することが好ましい(図7(A)中、拡大図示参照)。
【0076】
次に、本実施形態に係る車両用エアバッグ装置7の作用について説明する。ハウジング9にカバー8を被せると、左右壁部部位11a,21aで、係止突起16が第1開口部23に、ガイド突起17が第2開口部24に挿入されるのとほぼ同時に、前後壁部部位11b,21bで、係合突起19が係合穴25に挿入される。
【0077】
これにより、第1クリアランスによるカバー8の可動域が得られた状態で、エアバッグユニット10を収納しているハウジング9に、エアバッグを覆うカバー8が保持される。
【0078】
図7には、カバー8をハウジング9に被せる操作過程における係止突起16及びガイド突起17と第1及び第2開口部23,24の相対的な動き・位置関係が順次示されている。
【0079】
カバー8をハウジング9に上から被せていくと、まず図7(A)に示すように、カバー8の環状壁部21の左右壁部部位21aの下縁が、ハウジング9側の係止突起16に突き当たる。
【0080】
なお、図中、第1開口部23と第2開口部24の大きさと位置が拡大して示されていて、前後方向から見ると、第2開口部24の奥に第1開口部23が位置している。
【0081】
カバー8を装着方向である下方へ押圧すると、図7(B)に示すように、環状壁部21の左右壁部部位21aは、弾性変形によりハウジング9の周壁部11から離れる方向へ膨出し、係止突起16を乗り越えてガイド突起17の上の案内面26に乗り移る。
【0082】
カバー8をさらに下方へ押圧すると、図7(C)に示すように、ガイド突起17に乗り移った左右壁部部位21aの下縁は、案内面26に案内されて、ガイド突起17上でその突出先端17bまで摺動を生じ、これにより、環状壁部21の左右壁部部位21aは、ハウジング9の周壁部11からさらに離れる方向へ膨出する弾性変形を生じる。
【0083】
カバー8をさらに下方へ押圧すると、図7(D)に示すように、ガイド突起17の突出先端17bまで案内面26で案内されて摺動移動した左右壁部部位21aの下縁は、ガイド突起17を乗り越える。
【0084】
ガイド突起17を乗り越えた左右壁部部位21aがガイド突起17の突出先端で滑り降りるように移動することで、第1開口部23が係止突起16に接近すると同時に、第2開口部24がガイド突起17に接近する。
【0085】
第2開口部24がガイド突起17の突出先端17bまで達すると、図7(E)に示すように、第1開口部23が係止突起16の突出先端16bに掛かるようになり、そして、ガイド突起17が第2開口部24に挿入されると同時に、環状壁部21の左右壁部部位21aが周壁部11に近づくように弾性復元される。
【0086】
次に、カバー8を上方へ引き上げると、図7(F)に示すように、第1開口部23に突出先端16bが掛かった係止突起16が、当該第1開口部23へ挿入される。
【0087】
図7に示した動きの間に、環状壁部21の前後壁部部位21bでは、ハウジング9の係合突起19とカバー8の係合穴25とが係合される。
【0088】
係合部では、係合突起19の折曲部19aを介して前後壁部部位21bが滑り降りて、係合穴25が係合突起19と係合される。
【0089】
以上の作用によって、カバー8の可動域を確保しつつ、当該カバー8をハウジング9に被せて装着することができる。
【0090】
以上説明した本実施形態に係る車両用エアバッグ装置7にあっては、カバー8をハウジング9に係止する係止突起16、特にカバー8の可動域が得られるように係止する係止突起16に対し、ハウジング9にカバー8を被せる装着方向(第2の方向)に向かって環状壁部21が摺動され、環状壁部21を周壁部11から離れる方向へ弾性変形させる案内面26が形成されたガイド突起17を備えて、環状壁部21が、案内面26により弾性変形されガイド突起17を乗り越えて弾性復元されると、ガイド突起17が第2開口部24に挿入され、そしてまた係止突起16が第1開口部23に挿入されるようになっている。
【0091】
ガイド突起17により、係止突起16にカバー8が引っ掛かることなく、カバー8をハウジング9に被せて装着する組み付け操作を円滑に行うことができる。
【0092】
ガイド突起17の案内面26は、カバー8の装着方向に沿って傾斜されているので、係止突起16を避けた環状壁部21(左右壁部部位21a)を案内面26でスムーズに案内して、円滑にハウジング9とカバー8との組み付け操作を行うことができる。
【0093】
装着方向で、係止突起16は第1開口部23に対し第1クリアランスが設けられ、ガイド突起17は第2開口部24に対し第2クリアランスが設けられ、かつ第2クリアランスは第1クリアランスよりも大きく設定されて、当該第1クリアランスがハウジング9に対するカバー8の可動域を規定している。これにより、ガイド突起17を備えても、カバー8をハウジング9に対して確実に可動状態とすることができる。
【0094】
図8には、ガイド突起17の変形例が示されている。上記実施形態では、ガイド突起17の案内面26は、平坦面であって、装着方向に沿って傾斜形成されている。
【0095】
しかしながら、このような形態に限らず、ガイド突起17の案内面26は、装着方向に沿って傾斜され、かつハウジング9に被せられるカバー8に向けて凸状に隆起されていてもよい。
【0096】
言い換えれば、上記実施形態の傾斜している平坦面でなる案内面26の当該平坦面を、凸状の隆起面26aとし、この隆起面26aが、上方から下方に向かって被せられるカバー8に向けて迫り上がる形態としてもよい。
【0097】
このように形成することで、案内面26上で生じる左右壁部部位21aの摺動作用を円滑化ができ、カバー8をハウジング9にさらに円滑に組み付けることができる。
【0098】
以上に述べた車両用エアバッグ装置は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施形態例も、各種の方法で実施または遂行できる。特に、本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさおよび構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0099】
7 車両用エアバッグ装置
8 カバー
9 ハウジング
10 エアバッグユニット
11 周壁部
11a 左右壁部部位
16 係止突起
16b 係止突起の突出先端
17 ガイド突起
17b ガイド突起の突出先端
19 係合突起
21 環状壁部
23 第1開口部
24 第2開口部
25 係合穴
26 案内面
26a 隆起面
C 周壁部内方の中央部位
c1,c2 第1クリアランス
c3,c4 第2クリアランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9