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特開2024-80050窒化物半導体装置および窒化物半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080050
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置および窒化物半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20240606BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20240606BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20240606BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20240606BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20240606BHJP
   H01L 21/337 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01L29/80 F
H01L29/80 H
H01L29/44 Y
H01L21/28 301B
H01L29/50 J
H01L29/58 Z
H01L29/80 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192909
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西村 勇
【テーマコード(参考)】
4M104
5F102
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104BB02
4M104BB03
4M104BB04
4M104BB14
4M104BB30
4M104CC01
4M104CC03
4M104DD37
4M104DD63
4M104EE06
4M104EE12
4M104EE14
4M104EE16
4M104EE17
4M104FF10
4M104GG11
4M104HH20
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD04
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GQ01
5F102GS04
5F102GT03
5F102GT06
5F102GV06
5F102GV07
5F102GV08
5F102HA01
5F102HB06
5F102HB07
5F102HC01
5F102HC11
5F102HC15
(57)【要約】
【課題】ゲートリーク電流を低減すること。
【解決手段】窒化物半導体装置は、電子供給層上に形成されたゲート層22と、ゲート層22上に形成され、ゲート層22を露出する開口部26Aを含む第1絶縁膜26と、第1絶縁膜26上に形成されたゲートフィールドプレート部24Bを含むゲート電極24と、を含む。第1絶縁膜26の側面26Sは、ゲートフィールドプレート部24Bの側面24Sよりもゲート電極24の内側に位置している。窒化物半導体装置は、ゲート層22、第1絶縁膜26、およびゲート電極24の各々の側面22S,24S,26Sを少なくとも覆う第2絶縁膜28を含む。第2絶縁膜28は、ゲートフィールドプレート部24Bの下面24R、第1絶縁膜26の側面26S、およびゲート層22の上面22Uによって構成された窪み部38に埋め込まれた部分を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体によって構成された電子供給層と、
前記電子供給層上に形成された窒化物半導体によって構成されたゲート層と、
前記ゲート層上に形成され、前記ゲート層を露出する開口部を含む第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に形成されたゲートフィールドプレート部と、前記開口部を介して前記ゲート層に接するゲートコンタクト部とを含むゲート電極と、
前記ゲート層に対して所定方向の両側に配置され、前記電子供給層と接しているソース電極およびドレイン電極と、
を含み、
前記第1絶縁膜は、前記ゲートフィールドプレート部の側面と同じ方向を向く側面を含み、
前記第1絶縁膜の側面は、前記ゲートフィールドプレート部の側面よりも前記ゲート電極の内側に位置しており、
前記ゲート層、前記第1絶縁膜、および前記ゲート電極の各々の側面を少なくとも覆う第2絶縁膜を含み、
前記第2絶縁膜は、前記ゲートフィールドプレート部の下面、前記第1絶縁膜の側面、および前記ゲート層の上面によって構成された窪み部に埋め込まれた部分を含む
窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記窪み部の深さは、前記第1絶縁膜の膜厚よりも小さい
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記窪み部は、湾曲状に形成されている
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記ゲート層に近づくにつれて互いに接近するテーパ状に形成されている
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記第1絶縁膜の側面は、前記ゲート層の側面よりも前記ゲート層の内側に位置している
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート層の側面および前記ゲート電極の側面は、前記所定方向において互いに同じ位置である
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記第1絶縁膜は、SiN、SiO、SiON、Al、AlN、およびAlONのうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記第2絶縁膜は、SiN、SiO、SiON、Al、AlN、およびAlONのうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜は、同一材料によって形成されている
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記第2絶縁膜の外面は、前記窪み部に埋め込まれることによって凹む凹部を含む
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記ソース電極は、
前記電子供給層に接するソースコンタクト部と、
前記第2絶縁膜上に形成されるソースフィールドプレート部と、
を含み、
前記ソースフィールドプレート部は、前記第2絶縁膜の前記凹部に埋め込まれている
請求項10に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート層は、
ゲート層本体部と、
前記ゲート層本体部から前記ソース電極に向けて延在するソース延在部と、
前記ゲート層本体部から前記ドレイン電極に向けて延在するドレイン延在部と、
を含む
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項13】
前記電子供給層は、AlGa1-xNによって構成され、
0.1<x<0.3である
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項14】
前記ゲート層の上面は、前記ゲート電極とショットキー接合を形成している
請求項1~13のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項15】
窒化物半導体によって構成された電子供給層を形成すること、
前記電子供給層上に窒化物半導体層を形成すること、
前記窒化物半導体層上に、前記窒化物半導体層の一部を露出する開口部を有する絶縁膜を形成すること、
前記絶縁膜上に、前記開口部によって前記窒化物半導体層に接続された電極層を形成すること、
前記窒化物半導体層、前記絶縁膜、および前記電極層をエッチングすることによって、前記電子供給層上のゲート層と、前記絶縁膜上のゲートフィールドプレート部と前記開口部によって前記ゲート層に接するゲートコンタクト部とを含むゲート電極を形成すること、
前記ゲート層と前記ゲート電極との間に露出する前記絶縁膜の一部を除去することによって、前記ゲートフィールドプレート部の側面よりも前記ゲート電極の内側に位置する側面を含む第1絶縁膜を形成すること、
前記ゲートフィールドプレート部の下面、前記第1絶縁膜の側面、および前記ゲート層の上面によって構成された窪み部に埋め込まれた部分を含み、前記ゲート層、前記第1絶縁膜、および前記ゲート電極の各々の側面を少なくとも覆う第2絶縁膜を形成すること、
前記ゲート層に対して所定方向の両側に、前記電子供給層に接するソース電極およびドレイン電極を形成すること、
を含む、窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記ゲート層、前記ゲート電極、および前記絶縁膜のエッチングによって前記ゲート層の側面、前記ゲートフィールドプレート部の側面、および前記絶縁膜の側面を面一となるように形成し、
前記絶縁膜を前記所定方向に除去することによって前記第1絶縁膜を形成する
請求項15に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第2絶縁膜の外面は、前記窪み部に埋め込まれることによって凹む凹部を含み、
前記ソース電極は、
前記電子供給層に接するソースコンタクト部と、
前記第2絶縁膜上に形成されるソースフィールドプレート部と、
を含み、
前記ソースフィールドプレート部は、前記第2絶縁膜の前記凹部に埋め込まれる部分を含む
請求項15に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記ゲート層、前記ゲート電極、および前記絶縁膜を形成するエッチングは、ドライエッチングであり、
前記ドライエッチングよりもダメージが少ないエッチングによって、前記絶縁膜を前記所定方向に除去する
請求項15~17のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記ドライエッチングよりもダメージが少ないエッチングは、ウェットエッチングまたはケミカルドライエッチングを含む
請求項18に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体装置および窒化物半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物半導体(以下、単に「窒化物半導体」という場合がある)を用いた高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)の製品化が進んでいる。特許文献1は、窒化物半導体を用いたノーマリオフ型HEMTの一例が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された窒化物半導体装置は、電子走行層と、電子走行層上に設けられた電子供給層と、電子供給層上に設けられるとともに、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層と、を含む。ゲート層上には、ゲート電極が設けられている。この構造では、電子走行層と電子供給層との間のヘテロ接合界面付近において電子走行層内に二次元電子ガス(2DEG)がソース-ドレイン間の電流経路(チャネル)として発生する。そして、ゲート電極にバイアスが印加されていないゼロバイアス時には、ゲート電極の直下の領域における電子走行層内のチャネルが消失することで、ノーマリオフが実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-73506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ゲート電極に所定の電圧が印加された場合、ゲート電極およびゲート層の側面に沿ってゲートリーク電流が流れる場合がある。このゲートリーク電流は小さいことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する窒化物半導体装置は、窒化物半導体によって構成された電子供給層と、前記電子供給層上に形成された窒化物半導体によって構成されたゲート層と、前記ゲート層上に形成され、前記ゲート層を露出する開口部を含む第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成されたゲートフィールドプレート部と、前記開口部を介して前記ゲート層に接するゲートコンタクト部とを含むゲート電極と、前記ゲート層に対して所定方向の両側に配置され、前記電子供給層と接しているソース電極およびドレイン電極と、を含み、前記第1絶縁膜は、前記ゲートフィールドプレート部の側面と同じ方向を向く側面を含み、前記第1絶縁膜の側面は、前記ゲートフィールドプレート部の側面よりも前記ゲート電極の内側に位置しており、前記ゲート層、前記第1絶縁膜、および前記ゲート電極の各々の側面を少なくとも覆う第2絶縁膜を含み、前記第2絶縁膜は、前記ゲートフィールドプレート部の下面、前記第1絶縁膜の側面、および前記ゲート層の上面によって構成された窪み部に埋め込まれた部分を含む。
【0007】
上記課題を解決する窒化物半導体装置の製造方法は、窒化物半導体によって構成された電子供給層を形成すること、前記電子供給層上に窒化物半導体層を形成すること、前記窒化物半導体層上に、前記窒化物半導体層の一部を露出する開口部を有する絶縁膜を形成すること、前記絶縁膜上に、前記開口部によって前記窒化物半導体層に接続された電極層を形成すること、前記窒化物半導体層、前記絶縁膜、および前記電極層をエッチングすることによって、前記電子供給層上のゲート層と、前記絶縁膜上のゲートフィールドプレート部と前記開口部によって前記ゲート層に接するゲートコンタクト部とを含むゲート電極を形成すること、前記ゲート層と前記ゲート電極との間に露出する前記絶縁膜の一部を除去することによって、前記ゲートフィールドプレート部の側面よりも前記ゲート電極の内側に位置する側面を含む第1絶縁膜を形成すること、前記ゲートフィールドプレート部の下面、前記第1絶縁膜の側面、および前記ゲート層の上面によって構成された窪み部に埋め込まれた部分を含み、前記ゲート層、前記第1絶縁膜、および前記ゲート電極の各々の側面を少なくとも覆う第2絶縁膜を形成すること、前記ゲート層に対して所定方向の両側に、前記電子供給層に接するソース電極およびドレイン電極を形成すること、を含む。
【発明の効果】
【0008】
上記窒化物半導体装置および窒化物半導体装置の製造方法によれば、ゲートリーク電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置の概略断面図である。
図2図2は、図1の窒化物半導体装置の例示的な概略平面図である。
図3図3は、図1の窒化物半導体装置におけるゲート層、ゲート電極、およびその周辺の拡大断面図である。
図4図4は、図3の窒化物半導体装置におけるゲート層の一部、ゲート電極の一部、およびその周辺の拡大断面図である。
図5図5は、図1の窒化物半導体装置の例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図6図6は、図5に続く例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図7図7は、図6に続く例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図8図8は、図7に続く例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図9図9は、図8に続く例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図10図10は、図9に例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図11図11は、図10に続く例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図12図12は、図11に続く例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図13図13は、図12に続く例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図14図14は、図13に続く例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図15図15は、比較例の窒化物半導体装置の概略断面図である。
図16図16は、変更例の窒化物半導体装置におけるゲート層の一部、ゲート電極の一部、およびその周辺の拡大断面図である。
図17図17は、変更例の窒化物半導体装置におけるゲート層の一部、ゲート電極の一部、およびその周辺の拡大断面図である。
図18図18は、変更例の窒化物半導体装置におけるゲート層の一部、ゲート電極の一部、およびその周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の窒化物半導体装置および窒化物半導体装置の製造方法のいくつかの実施形態を説明する。なお、説明を簡単かつ明確にするため、図面に示される構成要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。また、理解を容易にするため、断面図では、ハッチング線が省略されている場合がある。添付の図面は、本開示の実施形態を例示するに過ぎず、本開示を制限するものとみなされるべきではない。
【0011】
以下の詳細な説明は、本開示の例示的な実施形態を具体化する装置、システム、および方法を含む。この詳細な記載は本来説明のためのものに過ぎず、本開示の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を制限することを意図しない。
【0012】
[窒化物半導体装置の断面構造]
図1は、一実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置10の概略断面図である。窒化物半導体装置10は、基板12と、基板12上に形成されたバッファ層14と、バッファ層14上に形成された電子走行層16と、を含んでいてよい。図1に示される互いに直交するXYZ軸のZ軸方向は、基板12の面と直交する方向である。なお、本明細書において使用される「平面視」という用語は、明示的に別段の記載がない限り、Z軸方向に沿って上方から窒化物半導体装置10を視ることをいう。
【0013】
基板12は、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、サファイア、または他の基板材料によって形成することができる。基板12は、半導体基板であってよい。一例では、基板12は、Si基板であってよい。基板12の厚さは、例えば200μm以上1500μm以下とすることができる。
【0014】
バッファ層14は、1つまたは複数の窒化物半導体層を含んでいてよい。バッファ層14は、例えば基板12と電子走行層16との間の熱膨張係数の不整合に起因する基板12の反りおよび窒化物半導体装置10におけるクラックの発生を抑制することができる任意の材料によって構成することができる。例えば、バッファ層14は、窒化アルミニウム(AlN)層、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層、および異なるアルミニウム(Al)組成を有するグレーテッドAlGaN層のうち少なくとも1つを含むことができる。例えば、バッファ層14は、単一のAlN層、単一のAlGaN層、AlGaN/GaN超格子構造を有する層、AlN/AlGaN超格子構造を有する層、またはAlN/GaN超格子構造を有する層によって構成されていてよい。
【0015】
一例では、バッファ層14は、基板12上に形成されたAlN層である第1バッファ層と、AlN層(第1バッファ層)上に形成されたAlGaN層である第2バッファ層と、を含むことができる。第1バッファ層は、例えば100nm以上300nm以下の厚さを有するAlN層であってよい。一方、第2バッファ層は、例えば100nm以上300nm以下の厚さを有するグレーテッドAlGaN層を複数回積層することによって形成されていてよい。なお、バッファ層14におけるリーク電流を抑制するため、バッファ層14の一部に不純物を導入してバッファ層14を半絶縁性にしてもよい。この場合、不純物は、例えば炭素(C)または鉄(Fe)であり、不純物の濃度は、例えば4×1016cm-3以上とすることができる。
【0016】
電子走行層16は、窒化物半導体によって構成されている。電子走行層16は、例えばGaN層であってよい。電子走行層16は、例えば0.5μm以上2μm以下の厚さを有する。なお、電子走行層16におけるリーク電流を抑制するため、電子走行層16の一部に不純物を導入することによって電子走行層16の表層領域以外を半絶縁性にしてよい。この場合、不純物は、例えばCであり、電子走行層16中の不純物のピーク濃度は、例えば1×1019cm-3以上であってよい。
【0017】
窒化物半導体装置10は、窒化物半導体によって構成された電子供給層18を含む。電子供給層18は、電子走行層16上に形成されている。電子供給層18は、電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されており、例えばAlGaN層であってよい。この場合、Al組成が大きくなるほどバンドギャップが大きくなるため、AlGaN層である電子供給層18は、GaN層である電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する。一例では、電子供給層18は、AlGa1-xNによって構成され、xは0.1<x<0.4であり、より好ましくは、0.1<x<0.3である。電子供給層18は、5nm以上20nm以下の厚さを有してよい。一例では、電子供給層18は、8nm以上の厚さを有してよい。
【0018】
電子走行層16と電子供給層18とは、互いに異なる格子定数を有する窒化物半導体によって構成されている。したがって、電子走行層16を構成する窒化物半導体(例えばGaN)と電子供給層18を構成する窒化物半導体(例えばAlGaN)とは、格子不整合系のヘテロ接合を形成する。電子走行層16および電子供給層18の自発電極と、ヘテロ接合界面付近の電子供給層18が受ける応力に起因するピエゾ分極とによって、ヘテロ接合界面付近における電子走行層16の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも低くなる。これにより、電子走行層16と電子供給層18とのヘテロ接合界面に近い位置(例えば界面から数nm程度の範囲内)において電子走行層16内には二次元電子ガス(2DEG)20が広がっている。
【0019】
窒化物半導体装置10は、電子供給層18上に形成されたゲート層22と、ゲート層22上に形成された第1絶縁膜26と、第1絶縁膜26上に形成されたゲート電極24と、をさらに含む。
【0020】
ゲート層22は、電子供給層18の一部の上に形成されていてよい。ゲート層22は、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されている。ゲート層22は、電子供給層18(例えばAlGaN層)よりも小さなバンドギャップを有する任意の材料によって構成されていてよい。一例では、ゲート層22は、アクセプタ型不純物を含むGaN(p型GaN)層であってよい。アクセプタ型不純物は、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、およびCのうち少なくとも1つを含むことができる。ゲート層22のアクセプタ型不純物のピーク濃度は、7×1018cm-3以上1×1020cm-3以下とすることができる。一例では、ゲート層22は、MgおよびZnのうち少なくとも一方を不純物として含むGaN層であってよい。
【0021】
ゲート電極24は、電子供給層18の上方に位置している。ゲート電極24は、1つまたは複数の金属層によって構成されていてよい。一例では、ゲート電極24は、窒化チタン(TiN)層によって構成されていてよい。別の例では、ゲート電極24は、チタン(Ti)によって形成された第1金属層と、第1金属層上に設けられたTiNによって形成された第2金属層と、によって構成されていてもよい。ゲート電極24は、ゲート層22とショットキー接合を形成することができる。なお、ゲート層22およびゲート電極24の断面形状等の構成の詳細な説明については後述する。
【0022】
第1絶縁膜26は、ゲート層22の一部の上に形成されていてよい。第1絶縁膜26は、ゲート層22とゲート電極24とによって挟み込まれていてよい。第1絶縁膜26は、窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al)、AlN、および酸窒化アルミニウム(AlON)のうち少なくとも1つによって形成されていてよい。一例では、第1絶縁膜26は、Siによって形成されていてよい。
【0023】
窒化物半導体装置10は、電子供給層18、ゲート層22、第1絶縁膜26、およびゲート電極24を覆う第2絶縁膜28をさらに含む。第2絶縁膜28は、電子供給層18の表面を露出させる第1開口部28Aおよび第2開口部28Bを含む。第1開口部28Aおよび第2開口部28Bは、所定方向(図1ではX軸方向)において離隔されていてよい。ゲート層22は、第2絶縁膜28の第1開口部28Aと第2開口部28Bとの間に位置しており、第1開口部28Aおよび第2開口部28Bの各々から離隔している。換言すると、第1開口部28Aおよび第2開口部28Bは、ゲート層22に対して所定方向(図1ではX軸方向)の両側に配置されている。より詳細には、ゲート層22は、第2開口部28Bよりも第1開口部28Aの近くに位置している。
【0024】
第2絶縁膜28は、例えばパッシベーション膜であり、SiN、SiO、SiON、Al、AlN、およびAlONのうち少なくとも1つによって形成されていてよい。一例では、第2絶縁膜28は、Siによって形成されていてよい。つまり、第1絶縁膜26および第2絶縁膜28は、同一材料によって形成されていてよい。第2絶縁膜28は、例えば80nm以上200nm以下の厚さを有してよい。第1絶縁膜26および第2絶縁膜28の詳細な構成については後述する。
【0025】
窒化物半導体装置10は、第1開口部28Aを介して電子供給層18に接するソース電極30と、第2開口部28Bを介して電子供給層18に接するドレイン電極32と、をさらに含む。ソース電極30およびドレイン電極32は、ゲート層22に対して所定方向(図1ではX軸方向)の両側に配置されているともいえる。ソース電極30およびドレイン電極32は、1つまたは複数の金属層(例えばTi層、TiN層、Al層、AlSiCu層、およびAlCu層などの任意の組み合わせ)によって構成することができる。
【0026】
ソース電極30は、第1開口部28A内に充填されており、第1開口部28Aを介して電子供給層18直下の2DEG20とオーミック接触している。一例では、ソース電極30は、第1開口部28Aに充填されたソースコンタクト部30Aと、第2絶縁膜28を覆うソースフィールドプレート部30Bと、を含んでよい。ソースフィールドプレート部30Bは、ソースコンタクト部30Aと連続しており、ソースコンタクト部30Aと一体に形成されている。ソースフィールドプレート部30Bは、平面視において第2開口部28Bとゲート層22との間に位置する端部30Cを含む。ソースフィールドプレート部30Bは、ゲート電極24にゲート電圧が印加されていないゼロバイアス状態でドレイン電極32にドレイン電圧が印加された場合にゲート電極24の端部近傍およびゲート層22の端部近傍の電界集中を緩和する役割を果たす。
【0027】
ドレイン電極32は、ソースフィールドプレート部30Bに対してX軸方向に離隔している。ドレイン電極32は、第2開口部28B内に充填されており、第2開口部28Bを介して電子供給層18直下の2DEG20とオーミック接触している。
【0028】
[窒化物半導体装置の平面構造]
図2は、図1の窒化物半導体装置10の概略的な部分拡大平面図である。なお、図示を簡略化して図面の理解を容易にするため、図2では、ゲート電極24、第2絶縁膜28、およびソース電極30のソースフィールドプレート部30Bの図示は省略されている。一方、ソースフィールドプレート部30Bの端部30Cは二点鎖線で描かれている。また、ドレイン電極32のうち電子供給層18と接する部分は実線で描かれている一方、第2絶縁膜28上に設けられた部分は二点鎖線で描かれている。
【0029】
図2に示すように、窒化物半導体装置10は、トランジスタ動作に寄与するアクティブ領域34と、トランジスタ動作に寄与しない非アクティブ領域36と、を含む。図2の例では、アクティブ領域34と非アクティブ領域36とはY軸方向に交互に配置されている。ドレイン電極32は、アクティブ領域34に形成されている。一例では、アクティブ領域34は、Y軸方向においてドレイン電極32と略同じ範囲に広がっていてよい。非アクティブ領域36は、Y軸方向においてドレイン電極32が存在しない範囲に広がっていてよい。したがって、非アクティブ領域36は、アクティブ領域34とY軸方向に隣り合っている。
【0030】
アクティブ領域34において、ソース電極30と、ゲート電極24(図1参照)が位置するゲート層22と、ドレイン電極32とは電子供給層18上でX軸方向に隣り合って配置されている。X軸方向に隣り合うソース電極30、ゲート層22(ゲート電極24)、およびドレイン電極32の組み合わせは、1つのHEMTセル10HCを構成する。図2の例では、各アクティブ領域34においてX軸方向に4つのHEMTセル10HCが配置されている。なお、実際はより多くのHEMTセル10HCが各アクティブ領域34に配置され得る。
【0031】
[ゲート電極およびその周辺の詳細な構成]
図3は、ゲート層22、ゲート電極24、第1絶縁膜26、第2絶縁膜28、およびその周辺の概略的な部分拡大断面図である。図4は、図3における第1絶縁膜26のうちソース電極30寄りの一部およびその周辺の概略的な部分拡大断面図である。
【0032】
図3に示すように、ゲート層22は、リッジ状の断面形状を有する。ゲート層22は、電子供給層18と接する下面22Rと、下面22Rとは反対側を向く上面22Uと、下面22Rと上面22Uとを繋ぐ側面22Sと、を含む。側面22Sは、上面22Uおよび下面22Rの双方と交差する面である。図3に示す例では、側面22Sは、Z軸方向に沿って延びている。つまり、側面22Sは、上面22Uおよび下面22Rの双方と直交する面であるともいえる。図3の例では、側面22Sは、ソース電極30(図1参照)に近い側に設けられた側面22SAと、ドレイン電極32(図1参照)に近い側に設けられた側面22SBと、を含む。
【0033】
第1絶縁膜26は、ゲート層22の上面22Uに接している。第1絶縁膜26の膜厚は、ゲート層22の厚さよりも薄い。また第1絶縁膜26の膜厚は、ゲート電極24の厚さよりも薄い。一例では、第1絶縁膜26の膜厚は、50nm以上100nm以下である。
【0034】
第1絶縁膜26は、ゲート層22の上面22Uと接する下面26Rと、下面26Rとは反対側を向く上面26Uと、下面26Rと上面26Uとを繋ぐ側面26Sと、を含む。側面26Sは、上面26Uおよび下面26Rの双方と交差する面である。図3の例では、側面26Sは、ソース電極30に近い側に設けられた側面26SAと、ドレイン電極32に近い側に設けられた側面26SBと、を含む。
【0035】
第1絶縁膜26は、ゲート層22の上面22Uを露出させる開口部26Aを含む。開口部26Aは、ゲート層22の上面22UのうちX軸方向の中央部を露出している。第1絶縁膜26は、開口部26Aを構成する内側面26AAを含む。図3の例では、内側面26AAは、Z軸方向に沿って延びている。
【0036】
ゲート電極24は、ゲート層22の上面22Uおよび第1絶縁膜26の上面26Uの双方と接している。ゲート電極24は、第1絶縁膜26の開口部26Aを介してゲート層22に接するゲートコンタクト部24Aと、第1絶縁膜26上に形成されたゲートフィールドプレート部24Bと、を含む。ゲートフィールドプレート部24Bは、ゲートコンタクト部24Aと連続しており、ゲートコンタクト部24Aと一体に形成されている。
【0037】
ゲートコンタクト部24Aは、第1絶縁膜26の開口部26Aに充填されており、ゲート層22の上面22Uと接している。ゲートコンタクト部24Aは、第1絶縁膜26の内側面26AAと接している。
【0038】
ゲートフィールドプレート部24Bは、第1絶縁膜26の上面26Uと接している。ゲートフィールドプレート部24Bは、ゲートコンタクト部24Aに対してX軸方向の両側に向けて延びている。
【0039】
ゲート電極24は、第1絶縁膜26の上面26Uと接する下面24Rと、下面24Rとは反対側を向く上面24Uと、下面24Rと上面24Uとを繋ぐ側面24Sと、を含む。側面24Sは、上面24Uおよび下面24Rの双方と交差する面である。ここで、側面24Sは、ゲートフィールドプレート部24Bの側面を意味する。図3の例では、側面24Sは、上面24Uおよび下面24Rの双方と直交する面である。
【0040】
図3の例では、側面24Sは、ソース電極30に近い側に設けられた側面24SAと、ドレイン電極32に近い側に設けられた側面24SBと、を含む。ゲート電極24の側面24Sは、第1絶縁膜26の側面26Sと同じ側を向いている。より詳細には、ゲート電極24の側面24SAは第1絶縁膜26の側面26SAと同じ側を向いており、ゲート電極24の側面24SBは第1絶縁膜26の側面26SBと同じ側を向いている。このため、第1絶縁膜26は、ゲート電極24(ゲートフィールドプレート部24B)の側面24S(24SA,24SB)と同じ方向を向く側面26S(26SA,26SB)を含むともいえる。
【0041】
図3の例では、ゲート電極24の側面24SAおよびゲート層22の側面22SAは、X軸方向において互いに同じ位置であり、ゲート電極24の側面24SBおよびゲート層22の側面22SBは、X軸方向において互いに同じ位置である。
【0042】
ゲート電極24の上端部には、凹部24Cが形成されている。凹部24Cは、ゲート電極24の上面24Uから下面24Rに向けて凹んでいる。平面視において、凹部24Cは、ゲートコンタクト部24Aと重なる位置に設けられている。
【0043】
第2絶縁膜28は、ゲート層22の側面22SA,22SB、第1絶縁膜26の側面26SA,26SB、およびゲート電極24の側面24SA,24SAを少なくとも覆っている。より詳細には、第2絶縁膜28は、ゲート層22の側面22SA,22SB、第1絶縁膜26の側面26SA,26SB、およびゲート電極24の側面24SA,24SAの各々と接している。第2絶縁膜28は、ゲート層22の側面22SA,22SB、第1絶縁膜26の側面26SA,26SB、およびゲート電極24の側面24SA,24SAの各々の全面にわたり接しているともいえる。第2絶縁膜28は、ゲート層22の側面22SA,22SB、第1絶縁膜26の側面26SA,26SB、およびゲート電極24の側面24SA,24SAを覆う側面カバー部28Cを含むといえる。側面カバー部28Cは、ゲート層22の側面22SA、第1絶縁膜26の側面26SA、およびゲート電極24の側面24SAを覆う側面カバー部28CAと、ゲート層22の側面22SB、第1絶縁膜26の側面26SB、およびゲート電極24の側面24SBを覆う側面カバー部28CBと、を含む。
【0044】
図3の例では、第2絶縁膜28は、ゲート電極24の上面24Uおよび凹部24Cを覆っている。第2絶縁膜28は、ゲート電極24の上面24Uおよび凹部24Cの各々と接している。第2絶縁膜28は、ゲート電極24の上面24Uおよび凹部24Cを覆う上面カバー部28Dを含むといえる。図3の例では、側面カバー部28Cおよび上面カバー部28Dは一体に形成されている。
【0045】
図4に示すように、第1絶縁膜26の側面26SAは、第1絶縁膜26の上面26Uおよび下面26Rから第1絶縁膜26の厚さ方向の中央に向かうにつれて第1絶縁膜26の内側に向けて湾曲状に凹んでいる。つまり、側面26SAは、図4の断面視において湾曲状に形成されている。このように、第1絶縁膜26の側面26SAの形状は、ゲート電極24の側面24SAおよびゲート層22の側面22SAの形状とは異なる。
【0046】
第1絶縁膜26の側面26SAは、ゲート電極24(ゲートフィールドプレート部24B)の側面24SAよりもゲート電極24の内側に位置している。また、第1絶縁膜26の側面26SAは、ゲート層22の側面22SAよりもゲート層22の内側に位置している。これにより、ゲートフィールドプレート部24Bの下面24R、第1絶縁膜26の側面26SA、およびゲート層22の上面22Uによって窪み部38が構成されている。第1絶縁膜26の側面26SAが湾曲状に形成されており、側面26SAが窪み部38の底面を構成しているため、窪み部38は湾曲状に形成されているともいえる。
【0047】
図4の例では、窪み部38の深さは、第1絶縁膜26の膜厚よりも小さい。ここで、窪み部38の深さは、例えばゲート電極24のゲートフィールドプレート部24Bの側面24SAと第1絶縁膜26の側面26SAのうち第1絶縁膜26の厚さ方向の中央とのX軸方向の間の距離によって定義できる。また、窪み部38の深さは、第2絶縁膜28の膜厚よりも小さい。
【0048】
第2絶縁膜28は、窪み部38に埋め込まれた部分である埋込部28Eを含む。埋込部28Eは、ゲートフィールドプレート部24Bの下面24R、第1絶縁膜26の側面26SA、およびゲート層22の上面22Uの各々と接している。このため、埋込部28Eの先端面は湾曲凸状に形成されている。
【0049】
第2絶縁膜28の外面28Fのうち埋込部28Eに対応する部分には、凹部28Gが形成されている。つまり、第2絶縁膜28の外面28Fは、窪み部38に埋め込まれることによって凹む凹部28Gを含む。凹部28Gは、図4の断面視において湾曲状に形成されている。凹部28Gの深さは、窪み部38の深さ以下である。
【0050】
凹部28Gは、例えばゲート電極24(ゲートフィールドプレート部24B)の側面24SAよりも外側に位置している。凹部28Gの底面28GAは、例えばゲート電極24の側面24SAよりも外側に位置しているといえる。また、凹部28Gは、例えばゲート層22の側面22SAよりも外側に位置している。凹部28Gの底面28GAは、例えばゲート層22の側面22SAよりも外側に位置しているといえる。
【0051】
なお、図示していないが、第1絶縁膜26の側面26SBの形状は側面26SAの形状と同様に湾曲状である。側面26SBは、第1絶縁膜26のX軸方向の中央に対してZ軸方向に沿う仮想線に対して側面26SAと対称形状である。また、第1絶縁膜26の側面26SB、ゲート電極24の側面24SB、およびゲート層22の側面22SBによっても同様に窪み部38が構成されている。また、第2絶縁膜28は、第1絶縁膜26の側面26SB、ゲート電極24の側面24SB、およびゲート層22の側面22SBによって構成された窪み部38に埋め込まれた埋込部28Eを含む。第2絶縁膜28は、この埋込部28Eに対応する凹部28Gを含む。
【0052】
ソース電極30のうち第2絶縁膜28を覆うソースフィールドプレート部30Bは、第2絶縁膜28の凹部28Gに埋め込まれる埋込部30Dを含む。ソースフィールドプレート部30Bは、埋込部30Dとして、第2絶縁膜28のうちソース電極30寄りの凹部28Gに埋め込まれる埋込部と、ドレイン電極32寄りの凹部28Gに埋め込まれる埋込部と、を含む。
【0053】
[窒化物半導体装置の製造方法]
次に、図1に示す窒化物半導体装置10の製造方法の一例を説明する。図5図14は、窒化物半導体装置10の例示的な製造工程を示す概略断面図である。なお、理解を容易にするため、図5図14では、図1の構成要素と同様な構成要素には同一の符号が付されている。
【0054】
窒化物半導体装置10の製造方法は、窒化物半導体によって構成された電子走行層16を形成することを含む。
図5に示すように、例えばSi基板である基板12上に、バッファ層14が形成され、次いで、バッファ層14上に電子走行層16が形成されてよい。バッファ層14および電子走行層16は、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法を用いてエピタキシャル成長させることができる。
【0055】
詳細な図示は省略するが、一例では、バッファ層14は多層バッファ層であってよい。多層バッファ層は、基板12上に形成されたAlN層(第1バッファ層)と、AlN層上に形成されたグレーテッドAlGaN層(第2バッファ層)とを含んでよい。グレーテッドAlGaN層は、例えばAlN層に近い側から順にAl組成を75%、50%、25%とした3つのAlGaN層を積層することによって形成することができる。バッファ層14上に形成される電子走行層16は、GaN層であってよい。
【0056】
窒化物半導体装置10の製造方法は、窒化物半導体によって構成された電子供給層18を形成すること、および、電子供給層18上に窒化物半導体層40を形成すること、を含む。
【0057】
図6に示すように、電子走行層16上に、電子供給層18が形成され、次いで、電子供給層18上に窒化物半導体層40が形成されてよい。電子供給層18および窒化物半導体層40は、MOCVD法を用いてエピタキシャル成長させることができる。
【0058】
電子走行層16がGaN層である一方、電子供給層18はAlGaN層であってよい。したがって、電子供給層18を構成する窒化物半導体は、電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する。
【0059】
窒化物半導体層40は、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されていてよい。一例では、窒化物半導体層40を成長させる間にMgをドーピングすることによって、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体層40を形成することができる。窒化物半導体層40は、例えばGaNによって形成されていてよい。したがって、窒化物半導体層40は、電子供給層18よりも小さなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されている。窒化物半導体層40は、ゲート層22(図1参照)を構成する半導体層である。
【0060】
図7および図8に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、窒化物半導体層40の一部を露出する開口部26Aを有する絶縁膜42を形成することを含む。
図7に示すように、例えば減圧化学的蒸着(Low-Pressure Chemical Vapor Deposition:LPCVD)法によって窒化物半導体層40上に絶縁膜42が形成される。絶縁膜42は、例えば窒化物半導体層40の上面の全面にわたり形成されている。絶縁膜42は、第1絶縁膜26(図1参照)を構成する絶縁膜であり、例えばSiN、SiO、SiON、Al、AlN、およびAlONのうち少なくとも1つによって形成されていてよい。一例では、絶縁膜42は、Siによって形成されている。
【0061】
次いで、絶縁膜42上にフォトレジストマスク44が形成される。フォトレジストマスク44は、絶縁膜42の上面の一部を露出させる開口部44Aを含む。開口部44Aは、リソグラフィおよびエッチングによってフォトレジストマスク44を選択的に除去することによって形成される。
【0062】
次いで、図8に示すように、フォトレジストマスク44を使用したエッチングによって、開口部44A内に露出した絶縁膜42が除去される。これにより、絶縁膜42に開口部26Aが形成される。エッチングには、例えばドライエッチングが使用される。
【0063】
図9に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、開口部26Aによって窒化物半導体層40に接続された電極層46を形成することを含む。電極層46は、ゲート電極24を構成する電極層であり、例えばTiN層である。電極層46は、例えばスパッタ法によって形成される。電極層46は、開口部26A内に充填されるとともに絶縁膜42の上面の全面にわたり形成されている。電極層46の上端部のうち開口部26Aに対応する部分には凹部24Cが形成されている。
【0064】
図10および図11に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、窒化物半導体層40、絶縁膜42、および電極層46をエッチングすることによって、電子供給層18上のゲート層22と、ゲート層22の一部を露出する開口部26Aを有する第1絶縁膜26と、第1絶縁膜26上のゲートフィールドプレート部24Bと開口部26Aによってゲート層22に接するゲートコンタクト部24Aとを含むゲート電極24を形成することを含む。
【0065】
図10に示すように、電極層46上にレジストマスク48が形成される。レジストマスク48は、電極層46の上面の一部に形成されている。より詳細には、レジストマスク48は、電極層46の凹部24Cおよびその周辺に形成されている。
【0066】
次いで、図11に示すように、レジストマスク48を使用したエッチングによって、窒化物半導体層40、絶縁膜42、および電極層46が除去される。これにより、窒化物半導体層40からゲート層22が形成され、電極層46からゲート電極24が形成される。エッチングには、例えばドライエッチングが使用される。
【0067】
ゲート層22の側面22SA,22SB、ゲート電極24(ゲートフィールドプレート部24B)の側面24SA,24SB、および絶縁膜42の側面42SA,42SBが面一となる。
【0068】
図12に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、ゲート層22とゲート電極24との間に露出する絶縁膜42の一部を除去することによって、ゲートフィールドプレート部24Bの側面24SA,24SBよりもゲート電極24の内側に位置する側面26SA,26SBを含む第1絶縁膜26を形成することを含む。
【0069】
絶縁膜42を所定方向(X軸方向)に除去することによって第1絶縁膜26が形成される。より詳細には、絶縁膜42の側面42SA,42SBを含む絶縁膜42のX軸方向の両端部が除去されることによって第1絶縁膜26が形成される。これにより、第1絶縁膜26の側面26SA,26SBは、ゲート層22の側面22SA,22SBよりもゲート層22の内側、かつゲートフィールドプレート部24Bの側面24SA,24SBよりもゲート電極24の内側に位置している。
【0070】
ここで、ドライエッチングよりもダメージが少ないエッチングによって、絶縁膜42が所定方向(X軸方向)に除去される。ドライエッチングよりもダメージが少ないエッチングは、ウェットエッチングまたはケミカルドライエッチングを含む。一例では、エッチングには、ウェットエッチングが使用される。
【0071】
このように第1絶縁膜26が形成されるため、ゲートフィールドプレート部24Bの下面24R、第1絶縁膜26の側面26S、およびゲート層22の上面22Uによって窪み部38が構成される。
【0072】
図13に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、ゲート層22の側面22SA,22SB、第1絶縁膜26の側面26SA,26SB、およびゲート電極24(ゲートフィールドプレート部24B)の側面24SA,24SBを少なくとも覆う第2絶縁膜28を形成することを含む。
【0073】
第2絶縁膜28は、電子供給層18の露出した上面およびゲート電極24の上面24Uを覆うように形成されている。第2絶縁膜28は、例えばLPVCDによって形成されている。第2絶縁膜28は、SiN、SiO、SiON、Al、AlN、およびAlONのうち少なくとも1つによって形成されていてよい。一例では、第2絶縁膜28は、Siによって形成されている。つまり、第2絶縁膜28は、第1絶縁膜26と同じ材料によって形成されている。なお、第2絶縁膜28は、第1絶縁膜26と異なる材料によって形成されていてもよい。
【0074】
第2絶縁膜28は、窪み部38に埋め込まれる埋込部28Eが形成されるとともに第2絶縁膜28の外面28Fに凹部28Gが形成される。凹部28Gは、第2絶縁膜28の外面28Fのうち埋込部28Eに対応する部分に形成されている。
【0075】
次いで、第2絶縁膜28を貫通して電子供給層18を露出させる第1開口部28Aおよび第2開口部28Bが形成される。第1開口部28Aおよび第2開口部28Bは、ゲート層22が第1開口部28Aと第2開口部28Bとの間に位置するように形成される。ゲート層22は、第2開口部28Bよりも第1開口部28Aの近くに位置していてよい。第1開口部28Aおよび第2開口部28Bは例えばエッチングによって形成される。
【0076】
図14に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、電子供給層18に接するようにソース電極30およびドレイン電極32(ともに図1参照)を形成することを含む。
この工程では、まず第2絶縁膜28上に金属層50が形成される。金属層50は、第2絶縁膜28の表面全体にわたり形成される。金属層50は、第1開口部28Aおよび第2開口部28Bを充填し、第1開口部28Aおよび第2開口部28Bを介して電子供給層18と接するように形成される。一例では、金属層50は、Ti層、TiN層、Al層、AlSiCu層、およびAlCu層のうち少なくとも1つを含んでよい。
【0077】
次いで、金属層50をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去する。これにより、図1に示すソース電極30およびドレイン電極32を形成することができる。つまり、ソース電極30は、電子供給層18に接するソースコンタクト部30Aと、第2絶縁膜28上に形成されるソースフィールドプレート部30Bと、を含む。ソースフィールドプレート部30Bは、第2絶縁膜28の凹部28Gに埋め込まれる部分である埋込部30D(図4参照)を含む。以上の工程を経て、図1に示される窒化物半導体装置10が製造される。
【0078】
[作用]
本実施形態の窒化物半導体装置10の作用について説明する。
図15は、比較例の窒化物半導体装置10Xの概略断面構造を示す断面図である。比較例の窒化物半導体装置10Xは、本実施形態の窒化物半導体装置10と比較して、第1絶縁膜の構成が異なる。このため、比較例の窒化物半導体装置10Xの第1絶縁膜を「第1絶縁膜26X」とし、その側面を「側面26XS」とする。それ以外の構成要素は、窒化物半導体装置10の構成要素と共通のため、同一符号を付している。
【0079】
図15に示すように、第1絶縁膜26Xの側面26XSは、ゲート層22の側面22Sおよびゲート電極24(ゲートフィールドプレート部24B)の側面24Sと面一となる。つまり、比較例の窒化物半導体装置10Xでは、例えばドライエッチングによってゲート層22、ゲート電極24、および第1絶縁膜26Xが形成されており、その後に第1絶縁膜26Xの側面26XSを除去していない。このため、図15の「×」印で示すように、ゲート電極24の側面24S、第1絶縁膜26Xの側面26XS、およびゲート層22の側面22Sの各々には、ドライエッチングによるダメージが残っている。
【0080】
第1絶縁膜26Xの側面26XSのダメージは、ゲート電極24とゲート層22との間の電流経路を形成し得る。このため、ゲート電極24の側面24S、第1絶縁膜26Xの側面26XS、およびゲート層22の側面22Sの各々に沿ったゲートリーク電流の経路が生じてしまう。これにより、比較例の窒化物半導体装置10Xのゲート電極24に電圧が印加された場合、上記経路を介してゲートリーク電流が流れてしまう。
【0081】
図3に示すように、本実施形態の窒化物半導体装置10では、第1絶縁膜26の側面26Sがゲート電極24(ゲートフィールドプレート部24B)の側面24Sよりもゲート電極24の内側に位置している。つまり、例えばドライエッチングによって生じたダメージが残る絶縁膜42の側面42SA,42SBは、ドライエッチングよりもダメージの少ないエッチングによって除去され、側面26SA,26SBを含む第1絶縁膜26が形成されている。このため、第1絶縁膜26の側面26SA,26SBには、ドライエッチングによるダメージは生じていない。これにより、第1絶縁膜26の側面26SA,26SBには、電流経路は生じ難い。さらに、図4に示すように、ゲートフィールドプレート部24Bの下面24R、第1絶縁膜26の側面26SA,26SB、およびゲート層22の上面22Uによって構成された窪み部38に第2絶縁膜28が埋め込まれている。したがって、窒化物半導体装置10のゲート電極24に電圧が印加された場合、ゲート電極24からゲート層22にゲートリーク電流が流れることが抑制される。
【0082】
[効果]
本実施形態の窒化物半導体装置10によれば、以下の効果が得られる。
(1)窒化物半導体装置10は、窒化物半導体によって構成された電子供給層18と、電子供給層18上に形成された窒化物半導体によって構成されたゲート層22と、ゲート層22上に形成され、ゲート層22を露出する開口部26Aを含む第1絶縁膜26と、第1絶縁膜26上に形成されたゲートフィールドプレート部24Bと、開口部26Aを介してゲート層22に接するゲートコンタクト部24Aとを含むゲート電極24と、ゲート層22に対して所定方向の両側に配置され、電子供給層18と接しているソース電極30およびドレイン電極32と、を含む。第1絶縁膜26は、ゲートフィールドプレート部24Bの側面24Sと同じ方向を向く側面26Sを含む。第1絶縁膜26の側面26Sは、ゲートフィールドプレート部24Bの側面24Sよりもゲート電極24の内側に位置している。窒化物半導体装置10は、ゲート層22、第1絶縁膜26、およびゲート電極24の各々の側面22S,24S,26Sを少なくとも覆う第2絶縁膜28を含む。第2絶縁膜28は、ゲートフィールドプレート部24Bの下面24R、第1絶縁膜26の側面26S、およびゲート層22の上面22Uによって構成された窪み部38に埋め込まれた部分を含む。
【0083】
この構成によれば、第1絶縁膜26の側面26SA,26SBには電流経路が生じ難いため、ゲート電極24の側面24Sからゲート層22の側面22Sまでの電流経路が第1絶縁膜26において分断されている。これにより、ゲート電極24の側面24Sからゲート層22の側面22Sにゲートリーク電流が流れることを抑制することができる。
【0084】
(2)窪み部38の深さは、第1絶縁膜26の膜厚よりも小さい。
この構成によれば、窪み部38の底面を構成する第1絶縁膜26の側面26Sに第2絶縁膜28が接しやすくなる。このため、第1絶縁膜26の側面26Sと第2絶縁膜28との間に空隙が形成されることを抑制できる。
【0085】
(3)窒化物半導体装置10の製造方法は、窒化物半導体によって構成された電子供給層18を形成すること、電子供給層18上に窒化物半導体層40を形成すること、窒化物半導体層40上に、窒化物半導体層40の一部を露出する開口部26Aを有する絶縁膜42を形成すること、絶縁膜42上に、開口部26Aによって窒化物半導体層40に接続された電極層46を形成すること、窒化物半導体層40、絶縁膜42、および電極層46をエッチングすることによって、電子供給層18上のゲート層22と、絶縁膜42上のゲートフィールドプレート部24Bと開口部26Aによってゲート層22に接するゲートコンタクト部24Aとを含むゲート電極24を形成すること、ゲート層22とゲート電極24との間に露出する絶縁膜42の一部を除去することによって、ゲートフィールドプレート部24Bの側面24Sよりもゲート電極24の内側に位置する側面26Sを含む第1絶縁膜26を形成すること、ゲートフィールドプレート部24Bの下面24R、第1絶縁膜26の側面26S、およびゲート層22の上面22Uによって構成された窪み部38に埋め込まれた部分を含み、ゲート層22、第1絶縁膜26、およびゲート電極24の各々の側面22S,26S,24Sを少なくとも覆う第2絶縁膜28を形成すること、ゲート層22に対して所定方向(X軸方向)の両側に、電子供給層18に接するソース電極30およびドレイン電極32を形成すること、を含む。
【0086】
この構成によれば、ゲート層22とゲート電極24との間に露出する絶縁膜42の一部を除去することによって、側面26SA,26SBを含む第1絶縁膜26が形成される。これにより、第1絶縁膜26の側面26SA,26SBには、ドライエッチングによるダメージは生じていない。これにより、第1絶縁膜26の側面26SA,26SBには、電流経路は生じ難い。したがって、ゲート電極24の側面24Sからゲート層22の側面22Sにゲートリーク電流が流れることを抑制することができる。
【0087】
(4)窒化物半導体装置10の製造方法では、ゲート層22、ゲート電極24、および絶縁膜42のエッチングによってゲート層22の側面22SA,22SB、ゲートフィールドプレート部24Bの側面24SA,24SB、および絶縁膜42の側面42SA,42SBを面一となるように形成する。そして、絶縁膜42を所定方向(X軸方向)に除去することによって第1絶縁膜26を形成する。
【0088】
この構成によれば、同一の工程でゲート層22およびゲート電極24を形成することによって、窒化物半導体装置10の製造工程を簡略化することができる。そして、ゲート層22の側面22SA,22SB、ゲートフィールドプレート部24Bの側面24SA,24SB、および絶縁膜42の側面42SA,42SBを面一となる状態で絶縁膜42が所定方向(X軸方向)に除去されるため、第1絶縁膜26を容易に形成することができる。
【0089】
(5)ドライエッチングよりもダメージが少ないエッチングによって、絶縁膜42を所定方向(X軸方向)に除去する。
この構成によれば、絶縁膜42を所定方向(X軸方向)に除去することによって形成された第1絶縁膜26の側面26Sへのダメージが低減される。したがって、ゲート電極24の側面24Sからゲート層22の側面22Sにゲートリーク電流が流れることを抑制することができる。
【0090】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・窒化物半導体は、GaNに限定されない。窒化物半導体の代表例としては、GaNの他に、窒化アルミニウム、窒化インジウム(InN)が挙げられる。これらは、一般には、AlInGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表すことができる。
【0091】
・窪み部38の深さは、任意に変更可能である。一例では、窪み部38の深さは、第1絶縁膜26の膜厚以上であってもよい。一例では、窪み部38の深さは、第2絶縁膜28の膜厚以上であってもよい。
【0092】
・窪み部38の形状は、任意に変更可能である。一例では、窪み部38は、矩形凹状であってもよい。
・第1絶縁膜26の側面26S(26SA,26SB)の形状は任意に変更可能である。一例では、第1絶縁膜26の湾曲状となる側面26Sのうち最も第1絶縁膜26の内側に位置する部分は、第1絶縁膜26の厚さ方向の中央よりも第1絶縁膜26の上面26U寄り、または第1絶縁膜26の下面26R寄りであってもよい。第1絶縁膜26の側面26Sは、Z軸方向に沿って延びる平面状に形成されていてもよい。また別の例では、第1絶縁膜26の側面26Sは湾曲状ではなく、Z軸方向に沿った平面状に形成されていてもよい。
【0093】
・ゲート電極24(ゲートフィールドプレート部24B)の側面24S(24SA,24SB)のX軸方向の位置は任意に変更可能である。一例では、ゲート電極24の側面24Sは、ゲート層22の側面22Sよりもゲート層22の内側に位置していてもよい。この場合においても第1絶縁膜26の側面26Sは、ゲート電極24の側面24Sよりもゲート電極24の内側に位置している。
【0094】
・ソース電極30の構成は任意に変更可能である。一例では、ソースフィールドプレート部30Bは、第2絶縁膜28からZ軸方向に離隔した位置に形成されていてもよい。ソースフィールドプレート部30Bは、平面視においてゲート電極24を覆うように形成されていればよい。別の例では、ソース電極30からソースフィールドプレート部30Bを省略してもよい。
【0095】
・第1絶縁膜26の開口部26Aの形状は任意に変更可能である。一例では、図16に示すように、開口部26Aは、ゲート層22に近づくにつれて互いに接近するテーパ状に形成されていてもよい。これにより、ゲート電極24のゲートコンタクト部24Aは、ゲート層22に近づくにつれて先細る台形状に形成されている。また、ゲート電極24の凹部24Cは、第1絶縁膜26の開口部26Aの形状に対応して、ゲート層22に近づくにつれて互いに接近する側面を含む。
【0096】
・ゲート層22の構成は任意に変更可能である。一例では、図17に示すように、ゲート層22は、ゲート層本体部22Aと、ゲート層本体部22Aからソース電極30に向けて延在するソース延在部22Bと、ゲート層本体部22Aからドレイン電極32に向けて延在するドレイン延在部22Cと、を含む。ゲート層本体部22Aは、ゲート層22の上面22Uおよび側面22SA,22SBを含む。ゲート層22の下面22Rは、ゲート層本体部22Aの下面、ソース延在部22Bの下面、およびドレイン延在部22Cの下面によって構成されている。このため、ゲート層22の下面22Rは、上面22Uよりも大きな面積を有する。
【0097】
ゲート層本体部22Aは、ソース延在部22Bとドレイン延在部22Cとの間にあり、ソース延在部22Bおよびドレイン延在部22Cと一体に形成されている。ゲート層本体部22Aは、ゲート層22の比較的厚い部分に相当する。
【0098】
ソース延在部22Bおよびドレイン延在部22Cの双方は、ゲート層本体部22Aよりも薄い。ソース延在部22Bおよびドレイン延在部22Cの双方は、ゲート層本体部22Aの厚さの半分以下の厚さを有してもよい。ドレイン延在部22Cは、平面視においてソース延在部22Bよりもゲート層本体部22Aの外側に向けて長く延びていてよい。すなわち、ドレイン延在部22Cは、ソース延在部22Bよりも大きいX軸方向の寸法を有してよい。ソース延在部22Bは、X軸方向において、例えば0.2μm以上0.3μm以下の寸法を有してよい。一方、ドレイン延在部22Cは、X軸方向において、例えば0.2μm以上0.6μm以下の寸法を有してよい。
【0099】
また、図18に示すように、ソース延在部22Bおよびドレイン延在部22Cを含むゲート層22において、第1絶縁膜26の開口部26Aがゲート層22に近づくにつれて互いに接近するテーパ状に形成されていてもよい。
【0100】
なお、図17および図18に示す変更例において、ゲート層22からソース延在部22Bおよびドレイン延在部22Cの一方を省略してもよい。ゲート層22がソース延在部22Bおよびドレイン延在部22Cの一方を含むことによって、ゲート層22内の局所的な電界集中を抑制することができる。
【0101】
本明細書に記載の様々な例のうち1つまたは複数を、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
本明細書において、「AおよびBのうち少なくとも1つ」とは、「Aのみ、または、Bのみ、またはAおよびBの両方」を意味するものとして理解されるべきである。
【0102】
本開示で使用される「~上に」という用語は、文脈によって明らかにそうでないことが示されない限り、「~上に」と「~の上方に」の意味を含む。したがって、例えば「第1要素が第2要素上に実装される」という表現は、或る実施形態では第1要素が第2要素に接触して第2要素上に直接配置され得るが、他の実施形態では第1要素が第2要素に接触することなく第2要素の上方に配置され得ることが意図される。すなわち、「~上に」という用語は、第1要素と第2要素との間に他の要素が形成される構造を排除しない。
【0103】
本開示で使用されるZ軸方向は必ずしも鉛直方向である必要はなく、鉛直方向に完全に一致している必要もない。したがって、本開示による種々の構造は、本明細書で説明されるZ軸方向の「上」および「下」が鉛直方向の「上」および「下」であることに限定されない。例えばX軸方向が鉛直方向であってもよく、またはY軸方向が鉛直方向であってもよい。
【0104】
<付記>
上記実施形態および各変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、各付記に記載された構成要素に対応する実施形態の構成要素の符号を括弧書きで示す。符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0105】
[付記1]
窒化物半導体によって構成された電子供給層(18)と、
前記電子供給層(18)上に形成された窒化物半導体によって構成されたゲート層(22)と、
前記ゲート層(22)上に形成され、前記ゲート層(22)を露出する開口部(26A)を含む第1絶縁膜(26)と、
前記第1絶縁膜(26)上に形成されたゲートフィールドプレート部(24B)と、前記開口部(26A)を介して前記ゲート層(22)に接するゲートコンタクト部(24A)とを含むゲート電極(24)と、
前記ゲート層(22)に対して所定方向(X軸方向)の両側に配置され、前記電子供給層(18)と接しているソース電極(30)およびドレイン電極(32)と、
を含み、
前記第1絶縁膜(26)は、前記ゲートフィールドプレート部(24B)の側面(24S)と同じ方向を向く側面(26S)を含み、
前記第1絶縁膜(26)の側面(26S)は、前記ゲートフィールドプレート部(24B)の側面(24S)よりも前記ゲート電極(24)の内側に位置しており、
前記ゲート層(22)、前記第1絶縁膜(26)、および前記ゲート電極(24)の各々の側面(22S,26S,24S)を少なくとも覆う第2絶縁膜(28)を含み、
前記第2絶縁膜(28)は、前記ゲートフィールドプレート部(24B)の下面(24R)、前記第1絶縁膜(26)の側面(26S)、および前記ゲート層(22)の上面(22U)によって構成された窪み部(38)に埋め込まれた部分を含む
窒化物半導体装置(10)。
【0106】
[付記2]
前記窪み部(38)の深さは、前記第1絶縁膜(26)の膜厚よりも小さい
付記1に記載の窒化物半導体装置。
【0107】
[付記3]
前記窪み部(38)は、湾曲状に形成されている
付記1または2に記載の窒化物半導体装置。
【0108】
[付記4]
前記開口部(26A)は、前記ゲート層(22)に近づくにつれて互いに接近するテーパ状に形成されている
付記1~3のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0109】
[付記5]
前記第1絶縁膜(26)の側面(26S)は、前記ゲート層(22)の側面(22S)よりも前記ゲート層(22)の内側に位置している
付記1~4のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0110】
[付記6]
前記ゲート層(22)の側面(22S)および前記ゲート電極(24)の側面(24S)は、前記所定方向(X軸方向)において互いに同じ位置である
付記1~5のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0111】
[付記7]
前記第1絶縁膜(26)は、SiN、SiO、SiON、Al、AlN、およびAlONのうち少なくとも1つを含む
付記1~6のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0112】
[付記8]
前記第2絶縁膜(28)は、SiN、SiO、SiON、Al、AlN、およびAlONのうち少なくとも1つを含む
付記1~7のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0113】
[付記9]
前記第1絶縁膜(26)および前記第2絶縁膜(28)は、同一材料によって形成されている
付記1~8のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0114】
[付記10]
前記第2絶縁膜(28)の外面(28F)は、前記窪み部(38)に埋め込まれることによって凹む凹部(28G)を含む
付記1~9のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0115】
[付記11]
前記ソース電極(30)は、
前記電子供給層(18)に接するソースコンタクト部(30A)と、
前記第2絶縁膜(28)上に形成されるソースフィールドプレート部(30B)と、
を含み、
前記ソースフィールドプレート部(30B)は、前記第2絶縁膜(28)の前記凹部(28G)に埋め込まれている
付記10に記載の窒化物半導体装置。
【0116】
[付記12]
前記ゲート層(22)は、
ゲート層本体部(22A)と、
前記ゲート層本体部(22A)から前記ソース電極(30)に向けて延在するソース延在部(22B)と、
前記ゲート層本体部(22A)から前記ドレイン電極(32)に向けて延在するドレイン延在部(22C)と、
を含む
付記1~11のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0117】
[付記13]
前記電子供給層(18)は、AlGa1-xNによって構成され、
0.1<x<0.3である
付記1~12のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0118】
[付記14]
前記ゲート層(22)の上面(22U)は、前記ゲート電極(24)とショットキー接合を形成している
付記1~13のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0119】
[付記15]
窒化物半導体によって構成された電子供給層(18)を形成すること、
前記電子供給層(18)上に窒化物半導体層(40)を形成すること、
前記窒化物半導体層(40)上に、前記窒化物半導体層(40)の一部を露出する開口部(26A)を有する絶縁膜(42)を形成すること、
前記絶縁膜(42)上に、前記開口部(26A)によって前記窒化物半導体層(40)に接続された電極層(46)を形成すること、
前記窒化物半導体層(40)、前記絶縁膜(42)、および前記電極層(46)をエッチングすることによって、前記電子供給層(18)上のゲート層(22)と、前記絶縁膜(42)上のゲートフィールドプレート部(24B)と前記開口部(26A)によって前記ゲート層(22)に接するゲートコンタクト部(24A)とを含むゲート電極(24)を形成すること、
前記ゲート層(22)と前記ゲート電極(24)との間に露出する前記絶縁膜(42)の一部を除去することによって、前記ゲートフィールドプレート部(24B)の側面(24S)よりも前記ゲート電極(24)の内側に位置する側面を含む第1絶縁膜(26)を形成すること、
前記ゲートフィールドプレート部(24B)の下面(24R)、前記第1絶縁膜(26)の側面(26S)、および前記ゲート層(22)の上面(22U)によって構成された窪み部(38)に埋め込まれた部分を含み、前記ゲート層(22)、前記第1絶縁膜(42)、および前記ゲート電極(24)の各々の側面(22S,42S,24S)を少なくとも覆う第2絶縁膜(28)を形成すること、
前記ゲート層(22)に対して所定方向(X軸方向)の両側に、前記電子供給層(18)に接するソース電極(30)およびドレイン電極(32)を形成すること、
を含む、窒化物半導体装置(10)の製造方法。
【0120】
[付記16]
前記ゲート層(22)、前記ゲート電極(24)、および前記絶縁膜(42)のエッチングによって前記ゲート層(22)の側面(22SA,22SB)、前記ゲートフィールドプレート部(24B)の側面(24SA,24SB)、および前記絶縁膜(42)の側面(42SA,42SB)を面一となるように形成し、
前記絶縁膜(42)を前記所定方向(X軸方向)に除去することによって前記第1絶縁膜(26)を形成する
付記15に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0121】
[付記17]
前記第2絶縁膜(28)の外面(28F)は、前記窪み部(38)に埋め込まれることによって凹む凹部(28G)を含み、
前記ソース電極(30)は、
前記電子供給層(18)に接するソースコンタクト部(30A)と、
前記第2絶縁膜(28)上に形成されるソースフィールドプレート部(30B)と、
を含み、
前記ソースフィールドプレート部(30B)は、前記第2絶縁膜(28)の前記凹部(28G)に埋め込まれる部分を含む
付記15または16に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0122】
[付記18]
前記ゲート層(22)、前記ゲート電極(24)、および前記絶縁膜(42)を形成するエッチングは、ドライエッチングであり、
前記ドライエッチングよりもダメージが少ないエッチングによって、前記絶縁膜(42)を前記所定方向(X軸方向)に除去する
付記15~17のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0123】
[付記19]
前記ドライエッチングよりもダメージが少ないエッチングは、ウェットエッチングまたはケミカルドライエッチングを含む
付記18に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0124】
以上の説明は単に例示である。本開示の技術を説明する目的のために列挙された構成要素および方法(製造プロセス)以外に、より多くの考えられる組み合わせおよび置換が可能であることを当業者は認識し得る。本開示は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲内に含まれるすべての代替、変形、および変更を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0125】
10…窒化物半導体装置
10HC…HEMTセル
10X…比較例の窒化物半導体装置
12…基板
14…バッファ層
16…電子走行層
18…電子供給層
20…二次元電子ガス(2DEG)
22…ゲート層
22A…ゲート層本体部
22B…ソース延在部
22C…ドレイン延在部
22R…下面
22U…上面
22S,22SA,22SB…側面
24…ゲート電極
24A…ゲートコンタクト部
24B…ゲートフィールドプレート部
24C…凹部
24R…下面
24U…上面
24S,24SA,24SB…側面
26…第1絶縁膜
26A…開口部
26R…下面
26U…上面
26S,26SA,26SB…側面
26X…比較例の第1絶縁膜
26XS…側面
28…第2絶縁膜
28A…第1開口部
28B…第2開口部
28C,28CA,28CB…側面カバー部
28D…上面カバー部
28E…埋込部
28F…外面
28G…凹部
28GA…底面
30…ソース電極
30A…ソースコンタクト部
30B…ソースフィールドプレート部
30C…端部
30D…埋込部
32…ドレイン電極
34…アクティブ領域
36…非アクティブ領域
38…窪み部
40…窒化物半導体層
42…絶縁膜
42SA,42SB…側面
44…フォトレジストマスク
44A…開口部
46…電極層
48…レジストマスク
50…金属層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18