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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080053
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20240606BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H02K1/278
H02K21/16 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192912
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621GA04
5H621GA16
5H621HH01
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA13
5H622PP03
5H622PP18
(57)【要約】
【課題】永久磁石におけるオーバーハング部の磁束を有効活用でき、効率よく高トルク化できる回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機は、回転軸線Cr回りに回転自在に設けられたロータ9と、ロータの外周を取り囲むステータ8と、を備える。ステータ8は、コイル24が巻回されるステータコア20を有する。ロータ9は、回転軸線Crを軸心とするシャフト31と、シャフト31に嵌合固定されるロータコア32と、ロータコア32の外周面に配置された永久磁石33と、を有する。永久磁石33は、軸方向でステータコア20の軸方向の両端面20a,20bよりも外側に突出したオーバーハング部33eを有する。オーバーハング部33eの径方向内側の内周面に、磁性体である円筒部72を設けた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線回りに回転自在に設けられたロータと、
前記ロータの外周を取り囲むステータと、
を備え、
前記ステータは、コイルが巻回されるステータコアを有し、
前記ロータは、
前記回転軸線を軸心とするシャフトと、
前記シャフトに嵌合固定されるロータコアと、
前記ロータコアの外周面に配置された永久磁石と、
を有し、
前記永久磁石は、前記回転軸線方向で前記ステータコアの前記回転軸線の両端面よりも外側に突出したオーバーハング部を有し、
前記オーバーハング部の径方向内側の内周面に、磁性体を設けた、
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記磁性体は前記永久磁石を保持する磁石ホルダであり、
前記磁石ホルダは、
前記オーバーハング部の前記内周面に配置されるとともに、前記ロータコアに当接される筒部と、
前記筒部の前記ロータコアとは反対側の端部から径方向外側に張り出す端部壁と、
を備え、
前記端部壁は、前記オーバーハング部における前記回転軸線方向の端部に当接している、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ロータコアは、鋼板を積層して形成されており、
前記磁石ホルダは、軟磁性粉を加圧成形して形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記磁石ホルダは、
前記筒部に形成されるとともに、前記ロータコアに係合される係合爪と、
前記端部壁に形成され、前記磁石ホルダの他の装置に対する位置決めを行うための位置決め部と、
を備える、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記位置決め部は、前記端部壁に形成された開口部である、
ことを特徴とする請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記回転軸線を中心として、前記オーバーハング部の径方向外側の外周面のうち、最も径方向外側を通る円を前記オーバーハング部の最外円とし、前記最外円と前記内周面との間の中央を前記オーバーハング部の中央部としたとき、
前記端部壁の外周縁は、前記オーバーハング部の前記内周面と前記中央部との間に位置している、
ことを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機として、例えば電動モータが挙げられる。電動モータは、ステータと、ステータに対して回転軸線回りに回転自在に設けられたロータと、を備える。ステータは、コイルが巻回されるステータコアを備える。ロータは、回転軸線を軸心とするシャフトと、シャフトに嵌合固定されたロータコアと、ロータコアに設けられた界磁用の複数の永久磁石と、を備えたものがある。このような構成のもと、コイルに給電を行うとステータコアに鎖交磁束が形成される。この鎖交磁束と永久磁石との間に磁気的な吸引力や反発力が生じ、ロータが継続的に回転される。
【0003】
ロータの中には、ロータコアの外周面に永久磁石を配置する、いわゆる表面磁石(SPM:Surface Permanent Magnet)型のロータがある。この表面磁石型のロータにおいて有効磁束を増大させて高トルク化を図るために、ステータコア及びロータコアにおける回転軸線方向の長さよりも永久磁石における回転軸線方向の長さを長くする場合がある。
【0004】
ステータコアにおける回転軸線方向の両端面よりも外側に永久磁石における回転軸線方向の両端を突出させることにより、ロータの有効磁束量を増大できる。このため、ステータコアに形成された鎖交磁束を、ロータの回転力に効率的に寄与させることができ、電動モータを高トルク化できる。以下、永久磁石のうち、ステータコアにおける回転軸線方向の両端面よりも外側に突出した箇所をオーバーハング部と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-168575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上述の従来技術では、永久磁石のオーバーハング部のうち、径方向外側の外周面の磁束は、ロータの回転力に寄与する。これに対し、永久磁石のオーバーハング部のうち、径方向内側の内周面の磁束は、単なる漏れ磁束となってしまう。結果的に、永久磁石の有効磁束が減少してしまい、電動モータを効率よく高トルク化しにくいという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、永久磁石におけるオーバーハング部の磁束を有効活用でき、効率よく高トルク化できる回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の第1態様では、回転電機は、回転軸線回りに回転自在に設けられたロータと、前記ロータの外周を取り囲むステータと、を備え、前記ステータは、コイルが巻回されるステータコアを有し、前記ロータは、前記回転軸線を軸心とするシャフトと、前記シャフトに嵌合固定されるロータコアと、前記ロータコアの外周面に配置された永久磁石と、を有し、前記永久磁石は、前記回転軸線方向で前記ステータコアの前記回転軸線の両端面よりも外側に突出したオーバーハング部を有し、前記オーバーハング部の径方向内側の内周面に、磁性体を設けた。
【0009】
このように構成することで、オーバーハング部における内周面側に、磁性体を介してロータコアへと磁束が流れる磁路を形成できる。このため、オーバーハング部において空気中に漏れる磁束を低減でき、オーバーハング部の磁束を有効活用できる。よって、永久磁石全体の有効磁束を増大でき、回転電機を効率よく高トルク化できる。
【0010】
本発明の第2態様では、第1態様の回転電機において、前記磁性体は前記永久磁石を保持する磁石ホルダであり、前記磁石ホルダは、前記オーバーハング部の前記内周面に配置されるとともに、前記ロータコアに当接される筒部と、前記筒部の前記ロータコアとは反対側の端部から径方向外側に張り出す端部壁と、を備え、前記端部壁は、前記オーバーハング部における前記回転軸線方向の端部に当接している。
【0011】
このように構成することで、ロータコアに永久磁石を固定できるとともに、ロータコアに対する永久磁石の位置決めを確実に行うことができる。また、オーバーハング部における内周面側の磁束を、筒部を介してロータコアに確実に流すことができる。
【0012】
本発明の第3態様では、第2態様の回転電機において、前記ロータコアは、鋼板を積層して形成されており、前記磁石ホルダは、軟磁性粉を加圧成形して形成されている。
【0013】
このように構成することで、ロータコアの透磁率を高めつつ、磁石ホルダを形成しやすくできる。
【0014】
本発明の第4態様では、第2態様又は第3態様の回転電機において、前記磁石ホルダは、前記筒部に形成されるとともに、前記ロータコアに係合される係合爪と、前記端部壁に形成され、前記磁石ホルダの他の装置に対する位置決めを行うための位置決め部と、を備える。
【0015】
このように構成することで、例えば永久磁石を着磁する際、着磁装置に対する永久磁石の位置決めを容易に行うことができる。この分、ロータを製造しやすくできる。
【0016】
本発明の第5態様では、第4態様の回転電機において、前記位置決め部は、前記端部壁に形成された開口部である。
【0017】
このように構成することで、端部壁に位置決め部を容易に形成できる。例えば他の装置にピンを設け、このピンに開口部を嵌め合わせるだけで他の装置に対するロータの位置決めを行うことができる。
【0018】
本発明の第6態様では、第2態様から第5態様のいずれか1つの態様の回転電機において、前記回転軸線を中心として、前記オーバーハング部の径方向外側の外周面のうち、最も径方向外側を通る円を前記オーバーハング部の最外円とし、前記最外円と前記内周面との間の中央を前記オーバーハング部の中央部としたとき、前記端部壁の外周縁は、前記オーバーハング部の前記内周面と前記中央部との間に位置している。
【0019】
このように構成することで、オーバーハング部における回転軸線方向の端部において、端部壁を介してショートカットされた磁束の流れが形成されてしまうことを防止できる。この流れは、ロータのトルクに寄与しない漏れ磁束となる。漏れ磁束を減少させることにより、永久磁石全体の有効磁束を増大でき、回転電機を効率よく高トルク化できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、永久磁石におけるオーバーハング部の磁束を有効活用でき、回転電機を効率よく高トルク化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態における減速機付きモータの斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】本発明の実施形態におけるロータの分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態における磁石カバーを取り去ったロータの斜視図である。
図5】本発明の実施形態における磁石ホルダをロータコアとは反対側からみた斜視図である。
図6】本発明の実施形態における磁石ホルダをロータコア側からみた斜視図である。
図7】本発明の実施形態におけるロータの軸方向に沿う断面を一部拡大した図である。
図8】本発明の実施形態における磁石ホルダの作用説明図である。
図9】本発明の実施形態におけるオーバーハング部の突出長さを変化させた場合の永久磁石の全体の有効磁束の変化を示し、円筒部がある場合とない場合とを比較したグラフである。
図10】本発明の実施形態における端部壁における外周縁の外径を変化させた場合の永久磁石の全体の有効磁束の変化を示すグラフである。
図11】本発明の実施形態の変形例におけるロータの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
<減速機付きモータ>
図1は、減速機付きモータ1の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。
減速機付きモータ1は、例えば、車両のワイパー装置の駆動源として用いられる。
図1図2に示すように、減速機付きモータ1は、電動モータ2と、電動モータ2の回転を減速して出力する減速部3と、電動モータ2の駆動制御を行うコントローラ部4と、を備える。
【0024】
以下の説明において、単に「軸方向」という場合は、電動モータ2のシャフト31における中心軸(電動モータ2の回転軸線Cr)と平行な方向を意味するものとする。単に「周方向」という場合は、シャフト31の周方向(回転方向)を意味するものとする。単に「径方向」という場合は、軸方向及び周方向に直交するシャフト31の径方向を意味するものとする。
【0025】
<電動モータ>
電動モータ2は、モータケース5と、モータケース5内に収納されている円筒状のステータ8と、ステータ8における径方向の内側に設けられ、ステータ8に対して回転自在に設けられたロータ9と、を備える。電動モータ2は、ステータ8に電力を供給する際にブラシを必要としない、いわゆるブラシレスモータである。
【0026】
<モータケース>
モータケース5は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料に形成されている。モータケース5は、軸方向に分割可能に構成された第1モータケース6と、第2モータケース7と、からなる。第1モータケース6及び第2モータケース7は、それぞれ有底筒状に形成されている。
第1モータケース6は、底部10が減速部3のギアケース40と接合されるように、このギアケース40と一体成形されている。底部10における径方向の中央には、ロータ9のシャフト31が挿通される貫通孔10aが形成されている。
【0027】
第1モータケース6の開口部6aに、径方向の外側に向かって張り出す外フランジ部16が形成されている。第2モータケース7の開口部7aに、径方向の外側に向かって張り出す外フランジ部17が形成されている。これら外フランジ部16,17同士を突き合わせて内部空間を有するモータケース5を形成している。モータケース5の内部空間に、第1モータケース6及び第2モータケース7に嵌合されるようにステータ8が配置される。
【0028】
<ステータ>
ステータ8は、ステータコア20を有している。ステータコア20は、径方向に沿う断面形状が円形となる筒状のバックヨーク部21と、バックヨーク部21から径方向の内側に向かって突出する複数(例えば、本実施形態では6つ)のティース部22と、が一体成形されている。ステータコア20は、複数の鋼板20pを軸方向に積層することにより形成されている。鋼板20pとしては、例えば電磁鋼板が用いられる。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな鋼板を用いることができる。また、ステータコア20は、複数の鋼板20pを軸方向に積層して形成する場合に限られるものではなく、例えば、圧延鋼板を用いて軸方向に積層して成形したり、軟磁性粉を加圧成形することにより形成したりしてもよい。
【0029】
バックヨーク部21の内周面及びティース部22は、絶縁性を有する樹脂製のインシュレータ23によって覆われている。このインシュレータ23の上から各ティース部22にコイル24が巻回されている。各コイル24は、コントローラ部4からの給電により、ロータ9を回転させるための鎖交磁束を生成する。
【0030】
<ロータ>
図3は、ロータ9の分解斜視図である。図4は、磁石カバー71を取り去ったロータ9の斜視図である。
図2から図4に示すように、ロータ9は、ステータ8の径方向の内側に微小隙間を介して回転自在に配置されている。ロータ9は、ロータ9は、減速部3を構成するウォーム軸44と一体成形されたシャフト31と、シャフト31に嵌合固定されたロータコア32と、ロータコア32の外周面32aに設けられた4つの永久磁石33と、ロータコア32における軸方向の両端面(シャフト固定部37における軸方向の両端面)32b,32cに設けられた磁石ホルダ70と、永久磁石33や磁石ホルダ70を覆う磁石カバー71と、を備える。
【0031】
<ロータコア>
ロータコア32は、複数の鋼板32pを軸方向に積層することにより形成されている。鋼板32pとしては、例えば電磁鋼板が用いられる。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな鋼板を用いることができる。ロータコア32の軸方向の厚さは、ステータコア20の軸方向の厚さと同一である。
ロータコア32は、シャフト31の軸心(回転軸線Cr)を径方向の中心とする円柱状のシャフト固定部37と、シャフト固定部37の外周面37aから径方向の外側に向かって突出形成された4つの突極部35と、が一体成形されたものである。シャフト固定部37の外周面37aが、ロータコア32の外周面32aである。
【0032】
シャフト固定部37における径方向の中央には、軸方向に貫通するシャフト挿通孔37bが形成されている。シャフト挿通孔37bに、シャフト31が圧入されている。シャフト挿通孔37bに対してシャフト31を挿入とし、接着剤等を用いてシャフト31にロータコア32を固定してもよい。シャフト挿通孔37bには、径方向の外側に向かって延びる4つの逃げ溝37cが形成されている。
【0033】
各逃げ溝37cは、シャフト固定部37を軸方向に貫通するように形成されており、シャフト挿通孔37bに連通されている。各逃げ溝37cは、周方向に等間隔で配置されている。逃げ溝37cにおける径方向の外側端は、半円状に形成されている。逃げ溝37cの周方向で対向する両側面は、平行となるように平坦に形成されている。つまり、逃げ溝37cは、周方向の幅寸法が径方向で均一になるように形成されている。各逃げ溝37cは、シャフト挿通孔37bへのシャフト31の圧入強度を調整する役割を有するとともに、磁石ホルダ70の位置決めを行う役割を有する(詳細は後述する)。
【0034】
4つの突極部35は、周方向に等間隔で配置されている。各突極部35は、径方向で各逃げ溝37cと同一直線上に配置されている。換言すれば、各突極部35は、対応する逃げ溝37cと径方向で対向している。
突極部35は、ロータコア32の軸方向全体に延びるように形成されている。突極部35は、周方向で対向する両側面が平行となるように形成されている。つまり、突極部35は、周方向の幅寸法が径方向で均一になるように形成されている。
突極部35における径方向の外側端部35bには、1つの溝部91が軸方向全体に渡って形成されている。溝部91は、外側端部35bのうちの周方向の中央に配置されている。
【0035】
溝部91は、径方向の内側に向かうに従って周方向の溝幅が徐々に狭くなるように、V溝状に形成されている。このように形成されたロータコア32の外周面32a(シャフト固定部37の外周面37a)で、かつ周方向で隣り合う2つの突極部35の間は、それぞれ磁石収納部36として構成される。
【0036】
<永久磁石>
各磁石収納部36の全体にそれぞれ永久磁石33が配置され、例えば接着剤等によりロータコア32に固定される。
永久磁石33は、軸方向からみて円弧状に形成されている。換言すれば、永久磁石33は、瓦状に形成されている。より具体的には、例えば永久磁石33の内周面33aは、回転軸線Crを中心とした円弧形状(シャフト固定部37の外周面37aとほぼ一致する円弧形状)に形成されている。これに対し、永久磁石33の外周面33bは、例えば内周面33aよりも曲率半径の小さい円弧形状に形成されている。
【0037】
これにより、永久磁石33の外周面33bは、周方向の中心位置33pが最も径方向の外側に膨出する。永久磁石33の外周面33bのうち、周方向の中心位置33pと回転軸線Crとの間の距離は、各突極部35の外側端部35bと回転軸線Crとの間の距離とほぼ同じである。永久磁石33の外周面33bは、周方向の中央から周方向の両側に向かうにしたがって、漸次ティース部22から離間する。
【0038】
永久磁石33における周方向の両側は、径方向の内側に位置する内側面33cと、内側面33cよりも径方向の外側に位置する外側面33dと、を有する。内側面33cは、突極部35の側面35aに沿うように形成されている。換言すれば、内側面33cと突極部35の側面35aとは、ほぼ平行である。
外側面33dは、内側面33cとの接続部から径方向の外側に向かうに従って突極部35の側面35aから漸次周方向に離間するように斜めで、かつ平坦に形成されている。1つの永久磁石33において、周方向の両側の2つの外側面33d同士は平行である。
【0039】
各永久磁石33の軸方向の長さは、ロータコア32の軸方向の長さよりも長い。このため、各永久磁石33は、ロータコア32に組付けられた状態において、ロータコア32における軸方向の両端面32b,32cから軸方向の外側に突出したオーバーハング部33eを有する。ロータコア32における軸方向の両端面32b,32cからのそれぞれのオーバーハング部33eの突出長さは、ほぼ同一である。ロータコア32の軸方向の厚さは、ステータコア20の軸方向の厚さと同一であるので、オーバーハング部33eは、ステータコア20における軸方向の両端面20a,20bから軸方向の外側に突出しているといえる。
【0040】
永久磁石33は、着磁(磁界)の配向が径方向(厚み方向)に沿ってパラレル配向となるように着磁されていることが望ましい。各永久磁石33は、周方向に磁極が互い違いになるように配置されている。このため、ロータコア32の突極部35は、磁極の境界(極境界)に位置している。
永久磁石33としては、例えば、フェライトボンド磁石が用いられる。しかしながら、これに限られるものではなく、永久磁石33として、フェライトボンド磁石に代わってフェライト焼結磁石、ネオジムボンド磁石、ネオジム焼結磁石等を適用することも可能である。
【0041】
<磁石カバー>
磁石カバー71は、金属板にプレス加工を施して形成されている。磁石カバー71は、ロータコア32及び永久磁石33の外周面を覆う筒状部71aと、筒状部71aにおける軸方向の一端(図3における上端)に一体成形された張り出し部71bと、張り出し部71bにおける径方向の内側端に一体成形された内フランジ部71cと、筒状部71aにおける軸方向の他端(図3における下端)に一体成形されたかしめ部71dと、を備える。
【0042】
張り出し部71bは、筒状部71aにおける軸方向の一端から軸方向の外側に向かって凸となるように、かつ径方向の内側に向かって折り返すように形成されている。張り出し部71bは、筒状部71aの全周に渡って形成されている。
張り出し部71bの折り返された径方向の内側端から内フランジ部71cが延出されている。内フランジ部71cの延出方向は、径方向に沿っている。
かしめ部71dは、筒状部71aの内側にロータコア32及び永久磁石33を一対の磁石ホルダ70とともに配置した状態で、かしめによって塑性変形させられることで形成される。
【0043】
<磁石ホルダ>
図5は、磁石ホルダ70をロータコア32とは反対側からみた斜視図である。図6は、磁石ホルダ70をロータコア32側からみた斜視図である。
図3から図6に示すように、ロータコア32の両端面32b,32cに設けられた各磁石ホルダ70は同一構成である。両者は、上下を反転させた状態でロータコア32に組付けられている。
【0044】
磁石ホルダ70は、磁性体により形成されている。磁石ホルダ70は、例えば軟磁性粉を加圧成形することにより形成されている。
磁石ホルダ70は、永久磁石33におけるオーバーハング部33eの内周面33aに配置される円筒部72と、円筒部72の外周面72aから径方向の外側に突出する4つの脚部73と、円筒部72及び脚部73においてそれぞれロータコア32の両端面32b,32cとは反対側の端部から径方向の外側に張り出す円板状の端部壁74と、を備える。
【0045】
円筒部72の外周面72aは、永久磁石33におけるオーバーハング部33eの内周面33aに接触している。各円筒部72におけるロータコア32側の端部72bは、それぞれロータコア32の両端面32b,32cに当接されている。円筒部72の端部72bには、4つの凹部76が形成されている。4つの凹部76は周方向に等間隔で配置されている。凹部76を形成することにより、ロータコア32の両端面32b,32cに対する円筒部72(端部72b)の接触面積が減少される。このため、ロータコア32の両端面32b,32cに円筒部72の端部72bを正確に当接させるための成形型の調整を容易に行うことができる。
【0046】
また、円筒部72の端部72bには、4つの係合爪75が突出形成されている。4つの係合爪75は、それぞれ凹部76を避けるように、周方向に等間隔で配置されている。さらに、4つの係合爪75は、円筒部72の内周縁側に配置されている。係合爪75は、径方向に沿う断面が半円形状となるように形成されている。係合爪75は、ロータコア32の両端面32b,32cに磁石ホルダ70を配置したとき、ロータコア32の逃げ溝37cのうち、径方向の外側に嵌め合わされる。これにより、ロータコア32に対する磁石ホルダ70の位置決めが行われる。
【0047】
4つの脚部73は、周方向に等間隔で配置されている。各脚部73は、径方向で各係合爪75と同一直線状に配置されている。換言すれば、各脚部73は、対応する係合爪75と径方向で対向している。各脚部73におけるロータコア32側の端部73aは、それぞれロータコア32の両端面32b,32cに当接されている。
【0048】
円筒部72及び各脚部73の軸方向の長さは、永久磁石33におけるオーバーハング部33eの軸方向の長さよりも若干長い。このため、端部壁74の位置は、オーバーハング部33eにおける軸方向の端部33fよりも若干軸方向の外側の位置となる。この結果、磁石カバー71におけるかしめ部71d側の磁石ホルダ70は、かしめ部71dのかしめ作業時のかしめ荷重を受ける。
【0049】
図7は、ロータ9の軸方向に沿う断面を一部拡大した図である。
図4から図7に示すように、端部壁74の径方向中央には、開口部74aが形成されている。開口部74aの内径と円筒部72の内径とは一致している。すなわち、端部壁74の開口部74aと円筒部72の内周面とは滑らかに接続されている。
端部壁74の半径は、回転軸線Crから脚部73における径方向外側の端部73bに至る間の距離と一致している。すなわち、端部壁74の外周縁74bと脚部73における径方向外側の端部73bとは滑らかに接続されている。
【0050】
ここで、図7に詳示するように、回転軸線Crを中心として、オーバーハング部33eにおける外周面33bのうち、最も径方向外側、つまり中心位置33pを通る円を最外円Coとする。この最外円Coとオーバーハング部33eの内周面33aとの間の中央を、中央部33gとする。このとき、端部壁74の外周縁74b及び脚部73における径方向外側の端部73bの位置は、オーバーハング部33eの内周面33aと中央部33gとの間の位置となる。
【0051】
また、端部壁74の外周縁74bには、4つの開口部77が形成されている。開口部77は、周方向で隣り合う脚部73の間の中央に配置されている。開口部77は、軸方向からみて円形状に近似した形状になっている。開口部77は、径方向外側が開口されて蟻溝状に形成されている。
【0052】
開口部77は、例えば図示しない着磁装置に対するロータ9の位置決めに用いられる。例えば着磁装置に位置決めピンを設け、このピンに開口部77を嵌め合わせる。これにより、着磁装置に対する磁石ホルダ70の位置決めが行われる。磁石ホルダ70は、係合爪75によってロータコア32との位置決めが行われている。この結果、開口部77によって、ロータ9の位置決めが可能である。また、着磁装置に対する永久磁石33の位置決めも行われる。このため、永久磁石33に精度よく着磁することが可能になる。
【0053】
端部壁74におけるロータコア32側の内面74cには、複数の補強リブ78が突出形成されている。補強リブ78は、端部壁74の内面74cに径方向に沿って、かつ内面74cの径方向全体に渡って形成されている。補強リブ78は、周方向で隣り合う脚部73の間に、それぞれ2つずつ配置されている。これら2つの補強リブ78は、対応する開口部77を挟んで周方向の両側に配置されている。
【0054】
補強リブ78は、磁石ホルダ70の成形時に端部壁74の周域に凹みや波うち等の変形が生じるのを抑制する機能を有するとともに、端部壁74の機械的強度を高める機能を有する。また、補強リブ78は、磁石ホルダ70が、永久磁石33を保持したロータコア32とともに磁石カバー71内に組付けられたときに、オーバーハング部33eの端部33fに当接する。これにより、永久磁石33に軸方向に過大な荷重が作用したときに、補強リブ78(端部壁74)によって永久磁石33の軸方向の変位が制限される。
【0055】
<減速部>
図1図2に戻り、減速部3は、モータケース5が取り付けられているギアケース40と、ギアケース40内に収納されるウォーム減速機構41と、を備える。ギアケース40は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料により形成されている。ギアケース40は、一面に開口部40aを有する箱状に形成されている。ギアケース40は、ウォーム減速機構41を収容するギア収容部42を有する。ギアケース40の側壁40bには、第1モータケース6が一体成形されている箇所に、この第1モータケース6の貫通孔10aとギア収容部42とを連通する開口部43が形成されている。
【0056】
ギアケース40の底壁40cには、円筒状の軸受ボス49が突設されている。軸受ボス49は、ウォーム減速機構41の出力軸48を回転自在に支持するためのものである。軸受ボス49には、内周面に図示しない滑り軸受が設けられている。軸受ボス49の先端内周縁には、図示しないOリングが装着されている。これにより、軸受ボス49を介して外部から内部に塵埃や水が侵入してしまうことが防止される。軸受ボス49の外周面には、複数のリブ52が設けられている。これにより、軸受ボス49の剛性が確保されている。
【0057】
ギア収容部42に収容されたウォーム減速機構41は、ウォーム軸44と、ウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45と、により構成されている。ウォーム軸44は、電動モータ2のシャフト31と同軸上に配置されている。ウォーム軸44は、両端がギアケース40に設けられた軸受46,47によって回転自在に支持されている。ウォーム軸44の電動モータ2側の端部は、軸受46を介してギアケース40の開口部43に至るまで突出している。この突出したウォーム軸44の端部と電動モータ2のシャフト31との端部が接合され、ウォーム軸44とシャフト31とが一体化されている。ウォーム軸44とシャフト31は、1つの母材からウォーム軸部分とシャフト部分とを成形することにより一体として形成してもよい。
【0058】
ウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45には、このウォームホイール45における径方向の中央に出力軸48が設けられている。出力軸48は、ウォームホイール45の回転軸線方向と同軸上に配置されている。出力軸48は、ギアケース40の軸受ボス49を介してギアケース40の外部に突出している。出力軸48の突出した先端には、図示しない電装品と接続されるスプライン48aが形成されている。
【0059】
ウォームホイール45における径方向の中央には、出力軸48が突出されている側とは反対側に、図示しないセンサ磁石が設けられている。センサ磁石は、ウォームホイール45の回転位置を検出する回転位置検出部60の一方を構成している。回転位置検出部60の他方を構成する磁気検出素子61は、ウォームホイール45のセンサ磁石側(ギアケース40の開口部40a側)でウォームホイール45と対向配置されているコントローラ部4に設けられている。
【0060】
<コントローラ部>
電動モータ2の駆動制御を行うコントローラ部4は、磁気検出素子61が実装されたコントローラ基板62と、ギアケース40の開口部40aを閉塞するように設けられたカバー63と、を有している。コントローラ基板62が、ウォームホイール45のセンサ磁石側(ギアケース40の開口部40a側)に対向配置されている。
【0061】
コントローラ基板62は、いわゆるエポキシ基板に複数の導電性のパターン(不図示)が形成されたものである。コントローラ基板62には、電動モータ2のステータコア20から引き出されたコイル24の端末部が接続されているとともに、カバー63に設けられたコネクタ11の端子(不図示)が電気的に接続されている。
【0062】
コントローラ基板62には、磁気検出素子61の他に、コイル24に供給する電流を制御するFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子からなるパワーモジュール(不図示)が実装されている。コントローラ基板62には、このコントローラ基板62に印加される電圧の平滑化を行うコンデンサ(不図示)等が実装されている。
【0063】
このように構成されたコントローラ基板62を覆うカバー63は、樹脂により形成されている。カバー63は、若干外側に膨出するように形成されている。カバー63の内面側は、コントローラ基板62等を収容するコントローラ収容部56として構成される。
カバー63の外周部に、コネクタ11が一体成形されている。コネクタ11は、図示しない外部電源から延びるコネクタが嵌着される。コネクタ11の端子に、コントローラ基板62が電気的に接続されている。これにより、外部電源の電力がコントローラ基板62に供給される。
【0064】
カバー63の開口縁には、ギアケース40の側壁40bの端部と嵌め合わされる嵌合部81が突出形成されている。嵌合部81は、カバー63の開口縁に沿う2つの壁81a,81bにより構成されている。これら2つの壁81a,81bの間に、ギアケース40の側壁40bの端部が挿入(嵌め合い)される。これにより、ギアケース40とカバー63との間にラビリンス部83が形成される。ラビリンス部83によって、ギアケース40とカバー63との間から塵埃や水が浸入してしまうことが防止される。ギアケース40とカバー63との固定は、図示しないボルトを締結することにより行われる。
【0065】
<減速機付きモータの動作>
次に、減速機付きモータ1の動作について説明する。
減速機付きモータ1は、コネクタ11を介してコントローラ基板62に供給された電力が、図示しないパワーモジュールを介して電動モータ2の各コイル24に選択的に供給される。すると、ステータ8(ティース部22)に所定の鎖交磁束が形成され、この鎖交磁束とロータ9の永久磁石33により形成される有効磁束との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。
【0066】
ここで、ロータ9は、ロータコア32の外周面32aに、永久磁石33を配置した、いわゆるSPM(Surface Permanent Magnet)方式のロータである。このため、d軸方向のインダクタンス値が小さくなる。
これに加え、ロータ9は、周方向で隣り合う永久磁石33間に突極部35が設けられている。このため、ステータ8の鎖交磁束Jが突極部35に流れる。
【0067】
この鎖交磁束Jは、1つの突極部35からシャフト固定部37を介して周方向で隣の突極部35へと流れる。この結果、ステータ8の鎖交磁束J1によるq軸方向のインダクタンス値は、突極部35が無い場合と比較して大きくなる。このように、d軸方向とq軸方向とのリラクタンストルクの差も利用してロータ9が回転される。リラクタンストルクは、鎖交磁束Jの磁路の磁気抵抗(リラクタンス)を小さくするようにロータ9を回転させる。
このように、ロータ9は、永久磁石33に起因する磁気的な吸引力や反発力による磁石トルクや上述のリラクタンストルクにより、継続的に回転する。
【0068】
ロータ9が回転すると、シャフト31と一体化されているウォーム軸44が回転し、さらにウォーム軸44に噛合されているウォームホイール45が回転する。そして、ウォームホイール45に連結されている出力軸48が回転し、所望の電装品(例えば、車両に搭載されるワイパ駆動装置)が駆動する。
【0069】
コントローラ基板62に実装されている磁気検出素子61によって検出されたウォームホイール45の回転位置検出結果は、信号として図示しない外部機器に出力される。図示しない外部機器は、ウォームホイール45の回転位置検出信号に基づいて、図示しないパワーモジュールのスイッチング素子等の切替えタイミングが制御され、電動モータ2の駆動制御が行われる。パワーモジュールの駆動信号の出力や電動モータ2の駆動制御は、コントローラ部4で行われていてもよい。
【0070】
<磁石ホルダの作用>
次に、図8から図10に基づいて、磁石ホルダ70の作用について説明する。
図8は、磁石ホルダ70の作用説明図である。
前述したように、ロータ9はオーバーハング部33eを有する。これにより、永久磁石33の有効磁束を増大できる。
ここで、例えばオーバーハング部33eの内周面33a側に磁性体が配置されていないとした場合、この内周面33a側の磁束が空気中に漏れて漏れ磁束となる。このため、オーバーハング部33eの磁束を有効活用できない。
【0071】
これに対し、本実施形態ではオーバーハング部33eに、軟磁性粉を加圧成形して形成された磁石ホルダ70が設けられている。磁石ホルダ70の円筒部72は、オーバーハング部33eの内周面33aに配置されている。
このため、図8に示すように、円筒部72は、オーバーハング部33eのうち、内周面33a側の磁束がロータコア32側へと流れるように磁路として機能する(図8における矢印J1参照)。よって、オーバーハング部33eの磁束を有効活用でき、永久磁石33の全体の有効磁束を増大できる。
【0072】
図9は、縦軸を永久磁石33の全体の有効磁束[μWb]とし、横軸をオーバーハング部33eにおけるロータコア32の両端面32b,32cからの突出長さ[mm](以下、単にオーバーハング部33eの突出長さという)としたときの有効磁束の変化を示し、円筒部72がある場合とない場合とを比較したグラフである。
図9に示すように、円筒部72がある場合、円筒部72がない場合と比較して、オーバーハング部33eの突出長さが長いほど永久磁石33の全体の有効磁束が増大することが確認できる。
【0073】
また、磁石ホルダ70は、端部壁74を有する。端部壁74は、永久磁石33の軸方向の変位を制限する役割や磁石カバー71におけるかしめ部71dのかしめ作業時の荷重を受ける役割を有する。一方、端部壁74は、オーバーハング部33eの外周面33b側の磁束が流れ込んでしまい、オーバーハング部33eの端部33fにおいてショートカットされた磁路を形成してしまう可能性があった(図8における矢印J2参照)。
【0074】
しかしながら、端部壁74の外周縁74b及び脚部73の端部73bの位置は、オーバーハング部33eの内周面33aと中央部33gとの間の位置となる。このため、端部壁74を介したショートカットの磁路が形成されてしまうことを防止できる(図8における×印)。この結果、オーバーハング部33eの磁束を有効活用でき、永久磁石33の全体の有効磁束を増大できる。
【0075】
図10は、縦軸を永久磁石33の全体の有効磁束[μWb]とし、横軸を最外円Coの外径と端部壁74における外周縁74bの外径との比(外径比)としたときの有効磁束の変化を示すグラフである。
図10に示すように、端部壁74の外周縁74bの位置が、中央部33gよりも径方向の外側の位置の場合、永久磁石33の全体の有効磁束が急激に減少してしまうことが確認できる。
【0076】
このように、上述の実施形態では、永久磁石33は、ステータコア20における軸方向の両端面20a,20bから軸方向の外側に突出したオーバーハング部33eを有する。オーバーハング部33eの内周面33aに、磁性体である磁石ホルダ70の円筒部72を設けた。このため、オーバーハング部33eの内周面33a側に、ロータコア32へとオーバーハング部33eの磁束が流れる磁路を形成できる。したがって、オーバーハング部33eにおいて空気中に漏れる磁束を低減でき、オーバーハング部33eの磁束を有効活用できる。よって、永久磁石33の全体の有効磁束を増大でき、電動モータ2を効率よく高トルク化できる。
【0077】
オーバーハング部33eの内周面33aに磁性体を設けるために、磁石ホルダ70を磁性体により形成した。磁石ホルダ70の端部壁74は、オーバーハング部33eの端部33fに当接している。このように、磁石ホルダ70によって、ロータコア32に永久磁石33を位置決め固定できる。また、オーバーハング部33eの内周面33aに別途磁性体を設ける必要がなく、オーバーハング部33eの内周面33aにおける内周面33aの磁束を、円筒部72を介してロータコア32に確実に流すことができる。なお、磁石ホルダ70の端部壁74は、オーバーハング部33eの各端部33f,33fに当接させず、いずれか一方の端部33fに当接させるものでもよい。
【0078】
ロータコア32は、複数の鋼板32pを軸方向に積層することにより形成されている。磁石ホルダ70は、軟磁性粉を加圧成形することにより形成されている。このため、ロータコア32の透磁率を高めつつ、磁石ホルダ70を形成しやすくできる。
磁石ホルダ70の円筒部72には、係合爪75が形成されている。係合爪75により、ロータコア32に対して磁石ホルダ70の位置決めを行うことができる。また、端部壁74に開口部77を形成している。この開口部77を利用して例えば図示しない着磁装置に対する磁石ホルダ70の位置決めを行い、結果的に図示しない着磁装置に対するロータ9の位置決めを行っている。このように構成することで、着磁装置等の他の装置に対するロータ9(永久磁石33)の位置決めを容易に行うことができる。この分、ロータ9を製造しやすくできる。
【0079】
磁石ホルダ70における端部壁74の外周縁74b及び脚部73の端部73bの位置を、オーバーハング部33eの内周面33aと中央部33gとの間の位置とした。このため、端部壁74を介したオーバーハング部33eのショートカットの磁路が形成されてしまうことを防止できる。この結果、オーバーハング部33eの磁束を有効活用でき、永久磁石33の全体の有効磁束を増大できる。よって、電動モータ2を効率よく高トルク化できる。
【0080】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、減速機付きモータ1は、車両のワイパー装置の駆動源として用いられる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、減速機付きモータ1は、ワイパー装置以外にも、車両に搭載される電装品(例えば、パワーウインドウ、サンルーフ、電動シート等)の駆動源となるものや、その他のさまざまな用途に使用することができる。
【0081】
上述の実施形態では、回転電機としての電動モータ2に、ロータ9の構成を用いた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな回転電機にロータ9の構成を採用できる。例えば電動モータ2に代わって発電機にロータ9の構成を採用することも可能である。
【0082】
上述の実施形態では、永久磁石33の外周面33bは、例えば内周面33aよりも曲率半径の小さい円弧形状に形成されている場合について説明した。永久磁石33の外周面33bは、周方向の中央が最も径方向の外側に膨出する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、永久磁石33の外周面33bは、回転軸線Crを中心とする円上に沿うように形成されていてもよい。永久磁石33の外周面33bの曲率半径と内周面33aの曲率半径とを同一としてもよい。永久磁石33の内周面33aの曲率半径を外周面33bの曲率半径よりも小さくしてもよい。
【0083】
永久磁石33の内周面33aの曲率半径が外周面33bの曲率半径よりも小さい場合、最外円Co(図7参照)と内周面33aとの間の中央部33gは、内周面33aのうちの最も内径が小さくなる箇所と最外円Coとの間の中央となる。これは、磁石ホルダ70の端部壁74が円形状に形成されているからである。
【0084】
端部壁74の外周縁74bの形状を、永久磁石33の内周面33a及び外周面33bの形状に対応して変形させてもよい。また、端部壁74の外周縁74bの形状に対応して脚部73における径方向外側の端部73bの位置を変化させてもよい。このように構成することで、永久磁石33の内周面33aの円弧形状(曲率半径)や外周面33bの円弧形状(曲率半径)に関わらず、端部壁74の外周縁74b及び脚部73における径方向外側の端部73bの位置を、オーバーハング部33eの内周面33aと中央部33gとの間の位置となるようにしてもよい。
【0085】
上述の実施形態では、永久磁石33の内周面33aに設ける磁性体として磁石ホルダ70の円筒部72を配置した場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、永久磁石33の内周面33aに磁性体を設ければよい。例えばロータコア32の軸方向の厚さをステータコア20の軸方向の厚さよりも厚くしてもよい。これにより、永久磁石33の内周面33aに磁性体としてロータコア32を配置してもよい。
【0086】
上述の実施形態では、磁石ホルダ70における端部壁74の外周縁74bに開口部77を形成した場合について説明した。この開口部77を用いて、例えば図示しない着磁装置にロータ9を位置決めする場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、端部壁74に他の装置に対して位置決めを行うための位置決め部が形成されていればよい。例えば端部壁74に開口部77に代わって凸部を形成してもよい。この凸部を利用して、他の装置に対してロータ9の位置決めを行ってもよい。
【0087】
図11は、変形例におけるロータ9の分解斜視図である。
上述の実施形態では、ロータコア32は、複数の鋼板32pを軸方向に積層することにより形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく図11に示すように、ロータコア32を、圧延鋼板を用いて軸方向に積層して成形したり、軟磁性粉を加圧成形することにより形成したりしてもよい。このように構成することで、ロータコア32と磁石ホルダ70とを一体化できる。この分、ロータ9の部品点数を低減できる。
【符号の説明】
【0088】
1…減速機付きモータ、2…電動モータ(回転電機)、3…減速部、4…コントローラ部、5…モータケース、6…第1モータケース、6a…開口部、7…第2モータケース、7a…開口部、8…ステータ、9…ロータ、10…底部、10a…貫通孔、11…コネクタ、16…外フランジ部、17…外フランジ部、20…ステータコア、20a…端面、20b…端面、20p…鋼板、21…バックヨーク部、22…ティース部、23…インシュレータ、24…コイル、31…シャフト、32…ロータコア、32a…外周面、32b…端面、32c…端面、32p…鋼板、33…永久磁石、33a…内周面、33b…外周面、33c…内側面、33d…外側面、33e…オーバーハング部、33f…端部、33g…中央部、33p…中心位置、35…突極部、35a…側面、35b…外側端部、36…磁石収納部、37…シャフト固定部、37a…外周面、37b…シャフト挿通孔、37c…溝、40…ギアケース、40a…開口部、40b…側壁、40c…底壁、41…ウォーム減速機構、42…ギア収容部、43…開口部、44…ウォーム軸、45…ウォームホイール、46…軸受、47…軸受、48…出力軸、48a…スプライン、49…軸受ボス、52…リブ、56…コントローラ収容部、60…回転位置検出部、61…磁気検出素子、62…コントローラ基板、63…カバー、70…磁石ホルダ、71…磁石カバー、71a…筒状部、71b…張り出し部、71c…内フランジ部、71d…かしめ部、72…円筒部、72a…外周面、72b…端部、73…脚部、73a…端部、73b…端部、74…端部壁、74a…開口部、74b…外周縁、74c…内面、75…係合爪、76…凹部、77…開口部、78…補強リブ、81…嵌合部、81a…壁、81b…壁、83…ラビリンス部、91…溝部、Cr…回転軸線、Co…最外円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11