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特開2024-80071電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080071
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/26 20190101AFI20240606BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240606BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240606BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20240606BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B60L58/26
B60L50/60
B60L15/20 J
B60L58/27
G01C21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192961
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越島 将史
【テーマコード(参考)】
2F129
5H125
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129DD13
2F129DD15
2F129DD19
2F129DD21
2F129DD49
2F129EE02
2F129EE52
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE81
2F129GG25
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC06
5H125BC19
5H125CA01
5H125CA18
5H125CD05
5H125CD09
5H125DD18
5H125EE25
5H125EE42
5H125EE51
5H125EE55
5H125EE61
5H125EE62
(57)【要約】
【課題】車両の走行抵抗に応じてバッテリの温度制御を過不足なく実行し、高負荷時のバッテリの出力制限の頻度を低減可能な電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両100が登坂路を走行中にバッテリ1の温度が上限温度(Tmax)に到達することが予測される場合に車両100が登坂路に進入する前にバッテリを冷却手段により冷却し、車両100が登坂路に進入する際にバッテリ1の温度が所定温度(第2目標バッテリ温度(Tbat4))よりも低くなることが予測される場合に車両100が登坂路に進入する前にバッテリ1を加熱手段により加熱し、登坂路における要求駆動力をその大きさに応じて段階的に分類し、冷却手段の出力の総量及び加熱手段の出力の総量をそれぞれ要求駆動力の分類に基づいて段階的に設定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの出力により駆動モータに駆動力を発生させて走行し、前記バッテリの温度が所定の上限温度に到達する場合、又は前記上限温度よりも低い所定温度よりも低くなる場合に前記バッテリの出力を制限する電動車両の制御方法であって、
車両の現在地から目的地までの走行経路から、前記バッテリに対する負荷が低負荷となる低負荷走行経路と、前記負荷が前記低負荷よりも大きな高負荷となる高負荷走行経路と、を推定し、
前記車両が前記低負荷走行経路を走行しているときの低負荷走行抵抗に基づいて前記車両が前記高負荷走行経路を走行する際の高負荷走行抵抗を算出し、
前記高負荷走行経路における要求車速と前記高負荷走行抵抗に基づいて前記高負荷走行経路における前記車両の要求駆動力を算出し、
前記低負荷走行経路を走行中の前記車両の前記駆動力と、前記要求駆動力と、現在の前記バッテリの温度に基づいて前記車両が前記低負荷走行経路から前記高負荷走行経路を走行する際の前記バッテリの温度推移を算出し、
前記車両が前記高負荷走行経路を走行中に前記バッテリの温度が前記上限温度に到達することが予測される場合に前記車両が前記高負荷走行経路に進入する前に前記バッテリを冷却手段により冷却し、
前記車両が前記高負荷走行経路に進入する際に前記バッテリの温度が前記所定温度よりも低く前記バッテリの出力が前記要求駆動力に相当する要求出力よりも低くなるように制限されることが予測される場合に前記車両が前記高負荷走行経路に進入する前に前記バッテリを加熱手段により加熱し、
前記要求駆動力をその大きさに応じて段階的に分類し、
前記冷却手段の出力の総量及び前記加熱手段の出力の総量をそれぞれ前記要求駆動力の分類に基づいて段階的に設定する電動車両の制御方法。
【請求項2】
バッテリの出力により駆動モータに駆動力を発生させて走行し、前記バッテリの温度が所定の上限温度に到達する場合、又は前記上限温度よりも低い所定の温度よりも低くなる場合に前記バッテリの出力を制限する電動車両の制御方法であって、
車両の現在地から目的地までの走行経路から、前記バッテリに対する負荷が低負荷となる低負荷走行経路と、前記負荷が前記低負荷よりも大きな高負荷となる高負荷走行経路と、を推定し、
前記車両が前記低負荷走行経路を走行しているときの低負荷走行抵抗に基づいて前記車両が前記高負荷走行経路を走行する際の高負荷走行抵抗を算出し、
前記高負荷走行経路における要求車速と前記高負荷走行抵抗に基づいて前記高負荷走行経路における前記車両の要求駆動力を算出し、
前記車両が前記低負荷走行経路を走行しているときの前記駆動力と、現在の前記バッテリの温度に基づいて前記車両が前記高負荷走行経路に進入する際の前記バッテリの温度となる高負荷開始温度を算出し、
前記高負荷開始温度と前記要求駆動力に基づいて前記車両の前記高負荷走行経路の通過直後の前記バッテリの温度となる高負荷終了温度を算出し、
前記車両の前記高負荷走行経路の走行中の前記バッテリの温度が前記上限温度以下となる場合の前記車両の前記高負荷走行経路の進入時の前記バッテリの温度となる第1目標バッテリ温度を前記要求駆動力及び前記上限温度に基づいて算出し、
前記車両の前記高負荷走行経路の進入時の前記バッテリの温度であって前記車両の前記高負荷走行経路の進入時の前記バッテリの出力の制限を回避可能な第2目標バッテリ温度を前記要求駆動力に基づいて算出し、
前記高負荷終了温度が前記上限温度以上であり、且つ前記高負荷開始温度が前記第1目標バッテリ温度以上の場合に前記車両が前記高負荷走行経路に進入する前に前記バッテリを冷却手段により冷却し、
前記高負荷終了温度が前記上限温度以上であり、且つ前記高負荷開始温度が前記第1目標バッテリ温度及び前記第2目標バッテリ温度よりも低い場合に前記車両が前記高負荷走行経路に進入する前に前記バッテリを加熱手段により加熱し、
前記要求駆動力をその大きさに応じて段階的に分類し、
前記冷却手段の出力の総量及び前記加熱手段の出力の総量をそれぞれ前記要求駆動力の分類に基づいて段階的に設定する電動車両の制御方法。
【請求項3】
前記冷却手段の出力の総量が略一定となる条件で前記冷却手段の出力とその継続時間を可変とし、前記加熱手段の出力の総量が略一定となる条件で前記加熱手段の出力とその継続時間を可変とする請求項1又は請求項2に記載の電動車両の制御方法。
【請求項4】
前記車両がトレーラを牽引して走行する場合において、
前記トレーラの識別情報を検出することで前記高負荷走行抵抗を推定する請求項1又は請求項2に記載の電動車両の制御方法。
【請求項5】
前記低負荷走行経路及び前記高負荷走行経路は、前記走行経路を包含する地図情報と前記地図情報における前記車両の位置を示す位置情報から推定し、
前記車両に前記トレーラが取り付けられたことを検知し、且つ前記車両が前記高負荷走行経路を走行すると推定した場合に、前記車両が前記高負荷走行経路に進入する前の前記冷却手段を用いた前記バッテリの冷却及び前記車両が前記高負荷走行経路に進入する前の前記加熱手段を用いた前記バッテリの加熱を実行可能とする請求項4に記載の電動車両の制御方法。
【請求項6】
前記高負荷走行経路が登坂路である場合において、
前記要求駆動力を、前記低負荷走行抵抗から算出される前記車両及び前記トレーラを足し合わせた重量と、前記登坂路の勾配と、に基づいて算出する請求項4に記載の電動車両の制御方法。
【請求項7】
バッテリの出力により駆動モータに駆動力を発生させて走行し、前記バッテリの温度が所定の上限温度に到達する場合、又は前記上限温度よりも低い所定温度よりも低くなる場合に前記バッテリの出力を制限する電動車両の制御装置であって、
車両の現在地から目的地までの走行経路から、前記バッテリに対する負荷が低負荷となる低負荷走行経路と、前記負荷が前記低負荷よりも大きな高負荷となる高負荷走行経路と、を推定する走行経路推定手段と、
前記車両が前記低負荷走行経路を走行しているときの低負荷走行抵抗に基づいて前記車両が前記高負荷走行経路を走行する際の高負荷走行抵抗を算出する走行負荷算出手段と、
前記高負荷走行経路における要求車速と前記高負荷走行抵抗に基づいて前記高負荷走行経路における前記車両の要求駆動力を算出する要求駆動力算出手段と、
前記低負荷走行経路を走行中の前記車両の前記駆動力と、前記要求駆動力と、現在の前記バッテリの温度に基づいて前記車両が前記低負荷走行経路から前記高負荷走行経路を走行する際の前記バッテリの温度推移を算出する温度推移算出手段と、
前記バッテリを冷却する冷却手段と、
前記バッテリを加熱する加熱手段と、
前記車両が前記高負荷走行経路を走行中に前記バッテリの温度が前記上限温度に到達することが予測される場合に前記車両が前記高負荷走行経路に進入する前に前記冷却手段を起動し、
前記車両が前記高負荷走行経路に進入する際に前記バッテリの温度が前記所定温度よりも低く前記バッテリの出力が前記要求駆動力に相当する出力よりも低くなるように制限されることが予測される場合に前記車両が前記高負荷走行経路に進入する前に前記加熱手段を起動する制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記要求駆動力をその大きさに応じて段階的に分類し、
前記冷却手段の出力の総量及び前記加熱手段の出力の総量をそれぞれ前記要求駆動力の分類に基づいて段階的に設定する電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両の走行経路に関する走行経路情報に基づいてバッテリ温度が所定温度以上に上昇すると予測された場合に冷却手段を駆動して予めバッテリを冷却する内容を開示している。特許文献1の構成によれば、バッテリの温度が所定温度以上となる場合に実行されるバッテリの出力制限の頻度を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4765298号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、車両の走行抵抗に関わらず一律にバッテリの温度制御を実行している。一方、車両の走行抵抗は車両に搭乗する人数により変化するが、特許文献1のように一律に温度制御を実行する場合、所望の温度にまで冷却できない場合、又は必要以上の温度制御を実行して消費電力を必要以上に消費する場合が発生する。
【0005】
本発明は、車両の走行抵抗に応じてバッテリの温度制御を過不足なく実行し、高負荷時のバッテリの出力制限の頻度を低減可能な電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電動車両の制御方法は、バッテリの出力により駆動モータに駆動力を発生させて走行し、バッテリの温度が所定の上限温度に到達する場合、又は上限温度よりも低い所定温度よりも低くなる場合にバッテリの出力を制限する電動車両の制御方法である。この制御方法は、車両の現在地から目的地までの走行経路から、バッテリに対する負荷が低負荷となる低負荷走行経路と、負荷が低負荷よりも大きな高負荷となる高負荷走行経路と、を推定し、車両が低負荷走行経路を走行しているときの低負荷走行抵抗に基づいて車両が高負荷走行経路を走行する際の高負荷走行抵抗を算出し、高負荷走行経路における要求車速と高負荷走行抵抗に基づいて高負荷走行経路における車両の要求駆動力を算出し、低負荷走行経路を走行中の車両の駆動力と、要求駆動力と、現在のバッテリの温度に基づいて車両が低負荷走行経路から高負荷走行経路を走行する際のバッテリの温度推移を算出する。そして、車両が高負荷走行経路を走行中にバッテリの温度が上限温度に到達することが予測される場合に車両が高負荷走行経路に進入する前にバッテリを冷却手段により冷却し、車両が高負荷走行経路に進入する際にバッテリの温度が所定温度よりも低くバッテリの出力が要求駆動力に相当する要求出力よりも低くなるように制限されることが予測される場合に車両が高負荷走行経路に進入する前にバッテリを加熱手段により加熱する。さらに、要求駆動力をその大きさに応じて段階的に分類し、冷却手段の出力の総量及び加熱手段の出力の総量をそれぞれ要求駆動力の分類に基づいて段階的に設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両が高負荷走行経路を走行する際のバッテリの出力制限の頻度を低減できる。また、冷却手段の出力の総量及び加熱手段の出力の総量を要求駆動力の分類、すなわち車両の走行抵抗の大きさにより段階的に設定するので、バッテリの出力制限の頻度を低減できる。以上より、車両の走行抵抗に応じてバッテリの温度制御を過不足なく実行し、高負荷時のバッテリの出力制限の頻度を低減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)が適用される車両の構成を説明するブロック図である。
図2図2は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)のブロック図である。
図3図3は、バッテリの温度と、バッテリの出力と、バッテリの熱容量と、の関係を示す図である。
図4図4は、登坂路の平均勾配が変化した場合の車速と要求駆動量との関係を示す図である。
図5図5は、駆動モータに対する走行抵抗が変化した場合の車速と要求駆動量との関係を示す図である。
図6図6は、バッテリを事前に冷却する際の冷却手段の出力の総量を要求駆動量の大きさの基づく分類に応じて段階的に設定する内容を示す図である。
図7図7は、バッテリを事前に加熱する際の加熱手段の出力の総量を要求駆動量の大きさに基づく分類に応じて段階的に設定する内容を示す図である。
図8図8は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)の制御フロー(S01-S11)である。
図9図9は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)の制御フロー(S11-S23)である。
図10図10は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)においてバッテリを事前に冷却する場合のタイムチャートである。
図11図11は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)においてバッテリを事前に加熱する場合のタイムチャートである。
図12図12は、バッテリを冷却する場合の冷媒の回路図であって、図12(a)はチラーにより冷却された冷媒によりバッテリを冷却する場合の回路図、図12(b)はラジエータにより冷却された冷媒によりバッテリを冷却する場合の回路図である。
図13図13は、バッテリを加熱する場合の冷媒の回路図であって、図13(a)はヒータにより加熱された冷媒によりバッテリを加熱する場合の回路図、図13(b)は駆動モータ及びインバータにより加熱された冷媒によりバッテリを加熱する場合の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[車両100の構成]
図1は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)が適用される車両100の構成を説明するブロック図である。車両100は電動車両である。電動車両とは駆動源として駆動モータ4(フロント駆動モータ4f、リア駆動モータ4r)を備え、前輪9f及び後輪9rに駆動モータ4が発生するトルクに起因した駆動力を発生させることによって走行する車両をいう。
【0011】
図1に示すように、車両100は、フロント駆動システムfdsと、リア駆動システムrdsと、バッテリ1と、コントローラ2(制御部)とを備える。
【0012】
フロント駆動システムfdsはバッテリ1から電力の供給を受け、コントローラ2による制御の下で前輪9fを駆動する。フロント駆動システムfdsは、フロントインバータ3f、フロント駆動モータ4f、フロントギアボックス5f、フロント回転センサ6f、フロント駆動軸8f、前輪9f等を備える。添字のfはフロント側の構成であることを示す。前輪9fは車両100が備える4つの駆動輪9のうち、相対的に車両100の前方向にある一対の駆動輪9である。車両100の前方向とは、運転者の搭乗席の向き等に応じて形式的に定める所定の方向である。フロント駆動システムfdsにより、前輪9fは車両100の駆動力を発生する駆動輪9として機能する。
【0013】
リア駆動システムrdsはバッテリ1から電力の供給を受け、コントローラ2による制御の下で後輪9rを駆動する。リア駆動システムrdsはフロント駆動システムfdsと対称に、リアインバータ3r、リア駆動モータ4r、リアギアボックス5r、リア回転センサ6r、リア駆動軸8r、後輪9rを備える。添字のrはリア側の構成であることを示す。後輪9rは車両100が備える4つの駆動輪9のうち、相対的に車両100の後方向にある一対の駆動輪9である。車両100の後方向とは、車両100の前方向に対して逆向きの方向をいう。リア駆動システムrdsにより、後輪9rは車両100の駆動力を発生する駆動輪9として機能する。
【0014】
バッテリ1はインバータ3を介して駆動モータ4に接続し、放電することによって駆動モータ4に駆動電力を供給する。また、バッテリ1は駆動モータ4から回生電力の供給を受けることによって充電できる。フロント駆動システムfdsにおいて、バッテリ1はフロントインバータ3fを介してフロント駆動モータ4fに接続する。同様に、リア駆動システムrdsにおいて、バッテリ1はリアインバータ3rを介してリア駆動モータ4rに接続する。
【0015】
コントローラ2は車両100の制御装置であり、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等から構成されるコンピュータである。コントローラ2は車両100の車両変数に基づいて、フロント駆動モータ4f及びリア駆動モータ4rを制御するための制御信号を生成する。車両変数とは、車両100の全体又は車両100を構成する各部の動作状態又は制御状態を示す情報であり、検出、計測、又は演算等により得ることができる。車両変数は例えば、アクセル開度APO、前後G及び横G、車速V、勾配値、操舵角、車輪速のほか、フロント駆動モータ4fの回転数Nmf、リア駆動モータ4rの回転数Nmr、三相交流電流等を含む。コントローラ2はこれらの車両変数を用いて、フロント駆動モータ4f及びリア駆動モータ4rをそれぞれ制御する。
【0016】
フロントインバータ3fは、コントローラ2が生成する駆動信号に応じてスイッチング素子をオン/オフすることで、バッテリ1から供給される直流電流を交流電流に変換し、フロント駆動モータ4fに供給する電流を調節する。同様に、リアインバータ3rは、コントローラ2が生成する駆動信号に応じてスイッチング素子をオン/オフすることで、バッテリ1から供給される直流電流を交流電流に変換し、リア駆動モータ4rに供給する電流を調節する。また、フロントインバータ3fは回生制動力によってフロント駆動モータ4fで発生する交流電流を直流電流に逆変換し、バッテリ1に供給する電流を調節する。同様に、リアインバータ3rは回生制動力によってリア駆動モータ4rで発生する交流電流を直流電流に逆変換し、バッテリ1に供給する電流を調節する。
【0017】
フロント駆動モータ4f及びリア駆動モータ4rは例えば三相交流モータであり、接続するインバータ3から供給される交流電流により駆動力(トルクと回転数Nmとの積)を発生する。フロント駆動モータ4fが発生した駆動力はフロントギアボックス5f及びフロント駆動軸8fを介して前輪9fに伝達する。同様に、リア駆動モータ4rが発生した駆動力はリアギアボックス5r及びリア駆動軸8rを介して後輪9rに伝達する。フロント駆動モータ4f及びリア駆動モータ4rはそれぞれ前輪9f及び後輪9rに連れ回されて回転する場合に回生制動力を発生し、車両100の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0018】
ギアボックス5(フロントギアボックス5f、リアギアボックス5r)は、例えば複数の歯車から構成され、駆動モータ4の回転数Nmを減じて駆動軸8に伝達する減速機(不図示)と、車両100の操舵時に左右の駆動輪9の回転数に差を発生させるデファレンシャルギア(不図示)を含む。
【0019】
図示は省略するが、車両100には駆動力を有しないトレーラ(不図示)を接続するための被接続部(不図示)が配置され、トレーラにも車両100に接続するための接続部(不図示)が配置されている。そして、被接続部及び接続部を互いに結合することにより、トレーラが車両100に係留され、車両100に牽引される。
【0020】
フロント回転センサ6f及びリア回転センサ6rは、各々が接続する駆動モータ4の回転子位相を検出し、コントローラ2に出力する。コントローラ2では、フロント回転センサ6fの出力に基づきフロント駆動モータ4fの回転数Nmfが検出され、リア回転センサ6rの出力に基づきリア駆動モータ4rの回転数Nmrが検出される。フロント電流センサ7f及びリア電流センサ7rは、各々が接続する駆動モータ4に流れる電流を検出し、コントローラ2に出力する。本実施形態では、フロント電流センサ7fは、フロント駆動モータ4fの三相交流電流を検出し、リア電流センサ7rは、リア駆動モータ4rの三相交流電流を検出する。
【0021】
車両100は、上記したフロント回転センサ6f及びフロント電流センサ7f、リア回転センサ6r及びリア電流センサ7rの他に各種センサ15を備える。各種センサ15は、例えばアクセル開度センサ15a、温度センサ15b、車速センサ15c、加速度センサ15d、トレーラセンサ15eを備える。
【0022】
アクセル開度センサ15aはアクセルペダルの操作量であるアクセル開度APOを検出する。温度センサ15bは、外気温度又はバッテリ1の温度を検出する。車速センサ15cは車両100の車速Vを検出する。加速度センサ15dは、車両100の前後方向の加速度(及び左右方向の加速度)を検出する。
【0023】
トレーラセンサ15eは、車両100の被接続部(不図示)に取り付けられトレーラが取り付けられたことを検知し、さらにトレーラの接続部(不図示)からトレーラの識別情報(種類の情報、重量の情報)を取得してコントローラ2に出力する。
【0024】
その他の各種センサ15として、ブレーキセンサ、勾配センサ、操舵角センサを備える。ブレーキセンサは、ブレーキペダルの操作の有無を検知する。勾配センサは車両100の走行路勾配である勾配値を検出する。操舵角センサは、ステアリングホイールの操舵角を検出する。
【0025】
コントローラ2は、ドライバが要求する要求駆動力(要求トルクと回転数Nmとの積)を車両100の車両変数に基づいてフロント駆動モータ4fとリア駆動モータ4rに配分する。
【0026】
[制御装置の構成]
図2は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)のブロック図である。図3は、バッテリ1の温度と、バッテリ1の出力と、バッテリ1の熱容量と、の関係を示す図である。図4は、登坂路の平均勾配が変化した場合の車速と要求駆動量との関係を示す図である。図5は、駆動モータ4(車両100)に対する走行抵抗が変化した場合の車速と要求駆動量との関係を示す図である。図6は、バッテリ1を事前に冷却する際の冷却手段の出力の総量を要求駆動量の大きさの基づく分類に応じて段階的に設定する内容を示す図である。図7は、バッテリ1を事前に加熱する際の加熱手段の出力の総量を要求駆動量の大きさに基づく分類に応じて段階的に設定する内容を示す図である。
【0027】
本実施形態の電動車両の制御装置は、ナビゲーション装置20、EVコントローラ21、バッテリコントローラ22、空調装置23(HVAC:Heating Ventilation Air Conditioning)、冷却手段(チラー25、ラジエータ24)、加熱手段(ヒータ26、駆動モータ4及びインバータ3の排熱)により構成される。
【0028】
空調装置23は、車室内の空調を行う空調機と熱交換を行う冷媒(例えばHFC134a等の代替フロン)を循環させる空調機熱交換回路231(図12図13)を備え、チラー25が組み込まれている。
【0029】
バッテリ1は、後述のように、ラジエータ24に冷却された冷媒(水)又はチラー25により冷却された冷媒(水)により冷却される。またバッテリ1は、ヒータ26により加熱された冷媒(水)又は駆動モータ4及びインバータ3の排熱に加熱された冷媒(水)により加熱される。
【0030】
チラー25は、空調機熱交換回路231(図12図13)を流通する冷媒(代替フロン)とバッテリ1を流通する冷媒(水)との熱交換を行うものである。
【0031】
ラジエータ24は、後述のように駆動モータ4及びインバータ3を冷却する冷媒(水)及びバッテリ1を冷却する冷媒(水)と外気との熱交換を行う。
【0032】
ヒータ26は、例えばPTC(Positive Temperature Coefficinet )ヒータであり、バッテリ1に供給される冷媒(水)を加熱することでバッテリ1を加熱する。
【0033】
ナビゲーション装置20は、車両100の現在地(又は出発地)から目的地(又は経由地)までの走行経路の情報を包含する地図情報を生成してEVコントローラ21に出力する。車両100の現在地(出発地)を示す位置情報は例えばGPS(Global Postioning System)により取得し、ナビゲーション装置20が有する地図情報上の道路にマッチングさせることにより得られる。目的地の情報は、ドライバの入力操作により地図情報上の目的地を特定することにより得られる。ここで、目的地とは、例えばナビゲーションの最終地点であり、車両100が最終的に停止する位置である。走行経路の情報はナビゲーション装置20が、地図情報において現在地(出発地)と目的地を結ぶ経路を選択することにより得られる。地図情報(走行経路の情報)には、目的地までの距離の情報、走行経路を構成する道路の位置の情報、道路の勾配の情報、標高差の情報、交通情報等が含まれる。交通情報とは、例えば、道路の属性(一般道路、高速道路)の情報、道路の予測車速(法定の制限車速、統計平均車速)の情報、渋滞情報等が含まれる。
【0034】
バッテリコントローラ22は、前記のフロントインバータ3f及びリアインバータ3rを含み、バッテリ1と駆動モータ4との電力の授受の制御を行うものである。また、バッテリコントローラ22は、バッテリ1の充電率(SOC:State Of Charge)と温度を検出し、その情報をEVコントローラ21に出力する。
【0035】
バッテリコントローラ22は、バッテリ1の温度を監視し、図3に示すように、バッテリ1の温度が所定の上限温度(Tmax:バッテリ1の耐熱上限温度)よりも高くなる、又は下限温度(Tmin:バッテリ1の出力(入力)が低下し始める温度)よりも低くなるとバッテリ1の出力(入力)[kW]を制限してバッテリ1の劣化保護を行っている。
【0036】
図3に示すように、バッテリ1の出力(入力)は、下限温度(Tmin)から上限温度(Tmax)に向かうにつれて増加する。一方、バッテリ1の熱容量はバッテリ1の温度が低下する程増加する。
【0037】
EVコントローラ21は、前記のコントローラ2を含む。EVコントローラ21は、通常温度制御として、バッテリ1の温度が上限温度(Tmax)と下限温度(Tmin)の間となる中間温度(Tmid)以上となると、冷却手段(チラー25、ラジエータ24)によるバッテリ1の冷却を開始し、バッテリ1の温度が中間温度よりも低くなると冷却手段(チラー25、ラジエータ24)によるバッテリ1の冷却を停止する。
【0038】
なお、冷却手段は外気温度が所定温度以上となるとチラー25によりバッテリ1を冷却し、外気温度が当該所定温度よりも低くなるとラジエータ24によりバッテリ1を冷却する。
【0039】
EVコントローラ21は、現在地(又は出発地)から目的地までの走行経路の情報を包含する地図情報がナビゲーション装置20から入力され、地図情報から低負荷走行経路、高負荷走行経路を推定し、これらの情報を算出する。本実施形態では、低負荷走行経路を走行したのち高負荷走行経路を走行することを前提とする。
【0040】
低負荷走行経路とは、例えば道路勾配(上り坂、下り坂)が所定の傾斜角度よりも低くほぼ平坦な道路(例えば一般道路)を車両100が低車速で走行することで、バッテリ1に対する負荷が低負荷な状態で車両100が走行可能な経路である。
【0041】
高負荷走行経路とは、バッテリ1が駆動モータ4に電力を供給する場合であって、例えば道路勾配が所定の傾斜角度よりも高く且つ所定距離(例えば1キロ)以上続く登坂路、又は制限速度又は平均車速が所定の速度(例えば100[km/s])以上に設定され且つ所定距離(例えば1キロ)以上の長さに及ぶ道路(特に高速道路)のように、バッテリ1に対する負荷が高負荷の状態で車両100が走行可能な経路が該当する。
【0042】
EVコントローラ21は、トレーラセンサ15eがトレーラを検出している場合において、走行経路に沿って配置された低負荷走行経路の情報、高負荷出力走行経路の情報に基づいて車両100が走行経路を走行するときの車両100に対する走行抵抗を算出する。
【0043】
より具体的には、EVコントローラ21は、車両100が低負荷走行経路を走行しているときの車両100とトレーラを足し合わせた重量(M)を算出する。重量(M)の算出手順としては、まず車両100が低負荷走行経路を走行中のアクセル開度と車速(V)(終端速度)との関係、又はアクセル開度と加速度の関係に基づいて車両100及びトレーラが低負荷走行経路を走行する際の低負荷走行抵抗(N)を算出し、当該低負荷走行抵抗(N)を路面の摩擦及び駆動系のフリクショントルクを包含する摩擦係数(μ)、及び重力加速度(g)で除算することにより得られ、M=N/(μ・g)となる。なお、EVコントローラ21は、トレーラの識別情報(種類の情報、重量の情報)が得られない場合であっても、トレーラを牽引する車両100全体の低負荷走行抵抗を算出することが可能である。この場合、車両100のアクセル開度、車速(V)(終端速度)(又は加速度)、及び低負荷走行抵抗との関係を表すマップを用意する。そして、EVコントローラ21は、車両100がトレーラを牽引して走行する際に当該マップにアクセル開度及び車速(V)(又は加速度)を入力することで低負荷走行経路を算出する。
【0044】
EVコントローラ21は、車両100が高負荷走行経路を走行するときの高負荷走行抵抗(N)を算出する。高負荷走行経路が例えば上記の高速道路の場合、高負荷走行抵抗(N)は、N=N(V/V)により算出される。また高負荷走行経路が登坂路の場合、登坂路の平均勾配をθとすると、高負荷走行抵抗(N)は、N=N+μ・M・g・sinθにより算出される。
【0045】
EVコントローラ21は、高負荷走行抵抗(N)と、高負荷走行経路における要求車速(V)に基づいて、高負荷走行経路において要求される要求駆動力(P)を算出する。要求駆動力(P)は、例えばP=N・Vにより算出される。
【0046】
ここで、要求駆動力は、車速(V)が一定であっても、図4に示すように、登坂路の平均勾配(θ)が大きくなるほど高くなり、図5に示すように走行抵抗(高負荷走行抵抗)が大きくなるほど大きくなる。
【0047】
EVコントローラ21は、車両100が低負荷走行経路を走行している場合において、現在のバッテリ1の温度(T)、車速(V)、車両100の駆動力(P=トルク×回転数)、車両100の現在地から高負荷走行経路に進入するまで距離(L)に基づいて、車両100が低負荷走行経路に進入するときの高負荷開始温度(Tbat1)を算出する。高負荷開始温度(Tbat1)は、バッテリ1からの放熱成分を除外すると、近似的にTbat1=T+(1/C)・P・(L/V)により算出される。ここで、Cは、バッテリ1の熱容量(比熱)である。
【0048】
EVコントローラ21は、バッテリ1の温度制御を前記の通常温度制御により実行する場合において、車両100の高負荷走行経路の距離(L)、要求駆動力(P)、要求車速(V)に基づいて、車両100が高負荷走行経路を通過直後の高負荷終了温度(Tbat2)を算出する。高負荷終了温度(Tbat2)は、Tbat2=Tbat1+(1/C)・P・(L21/V)+(1/C)・(P(L22/V)-W)となる。ここでL21は、バッテリ1の温度が中間温度(Tmid)になるときまで車両100が高負荷走行経路を走行した距離、L22は、バッテリ1の温度が中間温度(Tmid)になった後から高負荷走行経路を通過するまでの距離でありL=L21+L22となる。またWは冷却手段(チラー25、ラジエータ24)の冷却能力である。
【0049】
EVコントローラ21は、車両100の高負荷走行経路の走行中のバッテリ1の温度(T)が上限温度(Tmax)以下となる場合の車両100の高負荷走行経路の進入時のバッテリ1の温度となる第1目標バッテリ温度(Tbat3)を算出する。
【0050】
このとき、第1目標バッテリ温度(Tbat3)は、Tbat3=Tmax-(1/C)・(P(L/V)-W)により算出される。すなわち、第1目標バッテリ温度(Tbat3)は、車両100が高負荷走行経路を通過直後のバッテリ1の温度が上限温度(Tmax)以下となる温度の最大値として算出される。
【0051】
EVコントローラ21は、図3に示すように、駆動モータ4が要求駆動力(P)により駆動するためのバッテリ1の要求出力を出力可能な最低温度となる第2目標バッテリ温度(Tbat4)を算出する。なお、通常、第2目標バッテリ温度(Tbat4)は、第1目標バッテリ温度(Tbat3)よりも低い温度となる。
【0052】
EVコントローラ21は、車両100が高負荷走行経路を走行中にバッテリ1の温度が上限温度(Tmax)に到達することが予測される場合に、前記の通常温度制御に関わらず車両100が高負荷走行経路に進入する前にバッテリ1を冷却手段(チラー25、ラジエータ24)により冷却する。
【0053】
より詳細には、EVコントローラ21は、高負荷終了温度(Tbat2)が上限温度(Tmax)以上であり、且つ高負荷開始温度(Tbat1)が第1目標バッテリ温度(Tbat3)以上の場合に、前記の通常温度制御に関わらず車両100が高負荷走行経路に進入する前にバッテリ1を冷却手段(チラー25、ラジエータ24)により冷却する。
【0054】
EVコントローラ21は、車両100が高負荷走行経路に進入する際にバッテリ1の温度が所定温度(第2目標バッテリ温度(Tbat4))よりも低くバッテリ1の出力が要求駆動力(P)に相当する要求出力よりも低くなるように制限されることが予測される場合に車両100が高負荷走行経路に進入する前にバッテリ1を加熱手段(ヒータ26、駆動モータ4及びインバータ3の排熱)により加熱する。
【0055】
より詳細には、EVコントローラ21は、高負荷終了温度(Tbat2)が上限温度(Tmax)以上であり、且つ高負荷開始温度(Tbat1)が第1目標バッテリ温度(Tbat3)及び第2目標バッテリ温度(Tbat4)よりも低い場合に、車両100が高負荷走行経路に進入する前にバッテリ1を加熱手段(ヒータ26)により加熱し、車両100が高負荷走行経路に進入すると前記の通常温度制御に関わらずバッテリ1を冷却手段(チラー25、ラジエータ24)により加熱する。
【0056】
EVコントローラ21は、車両100が高負荷走行経路に進入する前にバッテリ1を事前に冷却する場合において、要求駆動力の大きさを図6に示すように大きさに応じて分類する。例えば要求駆動力がゼロ以上で第1所定値(P21A)未満となる第1分類、第1所定値(P21A)以上で第2所定値(P22A)未満となる第2分類、第2所定値(P22A)以上から第3所定値(P23A)未満となる第3分類、第3所定値(P23A)以上となる第4分類に分類する。
【0057】
EVコントローラ21は、第1分類において、冷却手段の出力の総量(Q)[kWh]をゼロに設定する。すなわち、事前にバッテリ1を冷却することなく、車両100が高負荷走行経路に進入後に通常温度制御によりバッテリ1を冷却する。
【0058】
EVコントローラ21は、第2分類において、冷却手段の出力の総量(Q)をQ1(小)に設定し、第3分類において、冷却手段の出力の総量(Q)をQ2(中)に設定し、第4分類において、冷却手段の出力の総量(Q)をQ3(大)に設定する(Q1<Q2<Q3)。
【0059】
EVコントローラ21は、車両100が高負荷走行経路に進入する前にバッテリ1を事前に加熱する場合において、要求駆動力の大きさを図7に示すように大きさに応じて分類する。例えば要求駆動力がゼロ以上で第1所定値(P21B)未満となる第1分類、第1所定値(P21B)以上で第2所定値(P22B)未満となる第2分類、第2所定値(P22B)以上から第3所定値(P23B)未満となる第3分類、第3所定値(P23B)以上となる第4分類に分類する。
【0060】
EVコントローラ21は、第1分類において、加熱手段の出力の総量(Q)[kWh]をゼロに設定する。すなわち、事前にバッテリ1を加熱することなく、車両100が高負荷走行経路に進入後に通常温度制御によりバッテリ1を冷却する。
【0061】
EVコントローラ21は、第2分類において、加熱手段の出力の総量(Q)をQ1(小)に設定し、第3分類において、加熱手段の出力の総量(Q)をQ2(中)に設定し、第4分類において、加熱手段の出力の総量(Q)をQ3(大)に設定する(Q1<Q2<Q3)。
【0062】
図6図7において、P21A>P21B、P22A>P22B、P23A>P23Bの関係を有する。これはバッテリ1を事前に加熱する際のバッテリ1の温度はバッテリ1を事前に冷却する場合のバッテリ1の温度よりも低く、図3に示すように温度が低くなるほどバッテリ1の熱容量が大きくなるため、バッテリ1を事前に加熱する際の熱量(加熱手段の出力の総量)がバッテリ1を事前に冷却する際の熱量(冷却手段の出力の総量)よりも多く必要となることに起因する。
【0063】
なおEVコントローラ21は、要求駆動力の大きさを上記のように分類せず、その大きさの相似形(連続量)となるように加熱手段の出力の総量及び冷却手段の出力の総量を算出してもよい。
【0064】
EVコントローラ21は、冷却出段(及び加熱手段)の出力とその継続時間の積が総量(Q)と略一致するように、冷却出段(及び加熱手段)の出力とその継続時間を可変とすることができる。EVコントローラ21は、例えばバッテリ1が車両100の駆動モータ4(インバータ3)以外の他の部分に電力を供給している場合は、冷却手段の出力を低下させ、その分継続時間を長くすることによりバッテリ1の負担を軽減できる。
【0065】
[制御フロー]
図8は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)の制御フロー(S01-S11)である。図9は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)の制御フロー(S11-S23)である。前記のように、本実施形態では車両100は低負荷走行経路を走行したのち登坂路(高負荷走行経路)を走行することを前提とする。
【0066】
ステップS01において、EVコントローラ21は、ドライバにより目的地が設定されたか否かを判断し、YESであればステップS02に移行し、NOであればステップS11に移行する。
【0067】
ステップS02において、EVコントローラ21は、ナビゲーション装置20から入力される地図情報に基づいて、車両100の進行先に登坂路(高負荷走行経路)があるか否かを判断し、YESであればステップS03に移行し、NOであればステップS11に移行する。
【0068】
ステップS03において、EVコントローラ21は、トレーラを検知した否か、トレーラの識別情報を取得したか否かを判断し、YESであればステップS04に移行し、NOであればステップS11に移行する。なお、ステップS03において、EVコントローラ21は、トレーラを検知しない場合であっても、ステップS04以降の制御を実行することが可能である。この場合、ステップS04においてトレーラの重量をゼロとして以後の制御を実行すればよい。
【0069】
ステップS04において、EVコントローラ21は、低負荷走行経路を走行中の走行抵抗から、車両100とトレーラとを足し合わせた重量を算出する。
【0070】
ステップS05において、EVコントローラ21は、地図情報から登坂路の情報、登坂路の平均勾配(θ)、登坂路の距離(L)を入手する。
【0071】
ステップS06において、EVコントローラ21は、登坂路における要求駆動力(P)を算出する。
【0072】
ステップS07において、EVコントローラ21は、地図情報から登坂路までの低負荷走行経路に関する情報、例えば登坂路までの距離(L)、車速(V)、交通情報(一時的な制限速度)等を取得する。なお、前記の要求車速(V)は車速(V)と同じ速度とする。
【0073】
ステップS08において、EVコントローラ21は、登坂路進入時のバッテリ1の温度である高負荷開始温度(Tbat1)を算出する。
【0074】
ステップS09において、EVコントローラ21は、登坂路通過直後のバッテリ1の温度である高負荷終了温度(Tbat2)を算出する。
【0075】
ステップS10において、EVコントローラ21は、高負荷終了温度(Tbat2)が上限温度(Tmax)以上となるか否かを判断し、NOであればステップS11に移行し、NOであればステップS12に移行する。
【0076】
ステップS11において、EVコントローラ21は、前記の通常温度制御でバッテリ1の温度制御を実行する。
【0077】
ステップS12において、EVコントローラ21は、車両100の登坂路進入時のバッテリ1の温度であって登坂路の走行途中のバッテリ1の出力制限を回避するための(登坂路におけるバッテリ1の最高温度が上限温度(Tmax)となる)な第1目標バッテリ温度(Tbat3)を算出する。
【0078】
ステップS13において、EVコントローラ21は、車両100の登坂路進入時のバッテリ1の温度であって登坂路への進入時のバッテリ1の出力制限を回避するための第2目標バッテリ温度(Tbat4)を算出する。
【0079】
ステップS14において、EVコントローラ21は、高負荷開始温度(Tbat1)が第1目標バッテリ温度(Tbat3)以上であるか否かを判断し、YESであればステップS15に移行し、NOであればステップS19に移行する。
【0080】
ステップS15において、EVコントローラ21は、事前冷却制御のフラグを設定する。これにより、EVコントローラ21は、車両100が登坂路に進入する前に冷却手段によるバッテリ1の冷却を開始し車両100が登坂路に進入後も引き続きバッテリ1を冷却する。
【0081】
ステップS16において、EVコントローラ21は、要求駆動力(P)(図6)に基づいて冷却手段の出力の総量(Q)を算出する。
【0082】
ステップS17において、EVコントローラ21は、冷却開始タイミング及び冷却手段の出力を設定する。冷却手段の出力は、バッテリ1が車両100の他の部分に大きな電力を供給している場合に低い値に設定され、その分冷却手段の出力の継続時間が長く設定され、総量(Q)が略一定となるように設定される。冷却開始タイミングは、車両100が登坂路に進入する時刻から前記の継続時間だけ前の時刻に設定する。
【0083】
ステップS18において、EVコントローラ21は、時刻が冷却開始タイミングとなると、設定した出力により冷却手段を起動しバッテリ1を事前に冷却する。
【0084】
ステップS19において、EVコントローラ21は、高負荷開始温度(Tbat1)が第2目標バッテリ温度(Tbat4)以上であるか否かを判断し、YESであればステップS11に移行し、NOであればステップS20に移行する。
【0085】
ステップS20において、EVコントローラ21は、事前加熱制御のフラグを設定する。これにより、EVコントローラ21は、車両100が登坂路に進入する前に加熱手段によりバッテリ1の加熱を開始し、車両100が登坂路に進入すると加熱手段によるバッテリ1の加熱を停止し冷却手段によるバッテリ1の冷却を開始する。
【0086】
ステップS21において、EVコントローラ21は、要求駆動力(P)(図7)に基づいて冷却手段の出力の総量(Q)を算出する。
【0087】
ステップS22において、EVコントローラ21は、加熱開始タイミング及び加熱手段の出力を設定する。加熱手段の出力は、バッテリ1が車両100の他の部分に大きな電力を供給している場合に低い値に設定され、その分加熱手段の出力の継続時間が長く設定され、総量(Q)が略一定となるように制御される。加熱開始タイミングは、車両100が登坂路に進入する時刻から前記の継続時間だけ前の時刻に設定する。
【0088】
ステップS23において、EVコントローラ21は、時刻が加熱開始タイミングとなると、設定した出力により加熱手段を起動しバッテリ1を事前に加熱する。
【0089】
[タイムチャート]
図10は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)においてバッテリ1を事前に冷却する場合のタイムチャートである。図10図11も同様)では、車両100は傾斜が実質的にない道路である通常走行経路を走行したのち登坂路を走行し、その後再び通常走行経路を走行する場合を前提とし、ドライバが要求する車速は通常走行経路及び登坂路において同一であることを前提とする。
【0090】
時刻t0から時刻t1の間において、EVコントローラ21は、高負荷開始温度(Tbat1)、高負荷終了温度(Tbat2)、第2目標バッテリ温度(Tbat4)を算出する。このとき、EVコントローラ21は、例えば時刻t2おいて、バッテリ1の温度(破線)は第2目標バッテリ温度(Tbat4)よりも高い温度であるが、車両100が登坂路に進入するとバッテリ1の温度(破線)が上昇し、時刻t3においてバッテリ1の温度(破線)が中間温度(Tmid)に到達すると冷却手段によるバッテリ1の冷却が開始するがバッテリ1に対する負荷が高負荷のため引き続き温度(破線)が上昇すると判断する。
【0091】
そして、EVコントローラ21は、バッテリ1の出力制限を実行しない場合に、時刻t5において車両100の登坂路の通過直後のバッテリ1の高負荷終了温度(Tbat2)(一点鎖線)が上限温度(Tmax)よりも高くなると予測する。またEVコントローラ21は、バッテリ1の出力制限を実行する場合、時刻t4でバッテリ1の温度(破線)が上限温度(Tmax)に到達し、バッテリ1の出力(破線)が時刻t5を経過するまで制限され、車速(破線)も時刻t4から時刻t5の間で低下すると予測する。
【0092】
そこで、EVコントローラ21は、車両100の登坂路の走行中のバッテリ1の温度が上限温度(Tmax)以下となる場合の車両100の登坂路の進入時(時刻t2)のバッテリ1の温度となる第1目標バッテリ温度(Tbat3)を算出する。
【0093】
EVコントローラ21は、高負荷開始温度(Tbat1)が第1目標バッテリ温度(Tbat3)以上と判断し、時刻t1においてバッテリ1の冷却を開始する。このときの冷却手段の出力の総量(Q)は、要求駆動力(P)の分類に基づき設定されるが、時刻t2においてバッテリ1の温度が第1目標バッテリ温度(Tbat3)より低くなる(第2目標バッテリ温度(Tbat4)よりも高くなる)ように設定される。
【0094】
時刻t2においてバッテリ1の温度(実線)は、少なくとも第1目標バッテリ温度(Tbat3)より低い温度にまで低下する。その後車両100が登坂路に進入するためバッテリ1が高負荷となるためバッテリ1の温度(実線)が上昇するが冷却手段による冷却は引き続き行われる。
【0095】
そして、車両100の登坂路の通過直後となる時刻t5においてもバッテリ1の温度(実線)は上下温度(Tmax)よりも低い温度となっており、登坂路においてバッテリ1の出力(実線)の制限が回避され、車速(実線)の低下も回避される。
【0096】
図11は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)においてバッテリ1を事前に加熱する場合のタイムチャートである。
【0097】
時刻t0から時刻t1の間において、EVコントローラ21は、高負荷開始温度(Tbat1)、高負荷終了温度(Tbat2)、第2目標バッテリ温度(Tbat4)を算出する。
【0098】
このとき、EVコントローラ21は、例えば時刻t2おいて、バッテリ1の温度(破線)は第2目標バッテリ温度(Tbat4)よりも低い温度であり、車両100が登坂路に進入するとバッテリ1の温度(破線)が第2目標バッテリ温度(Tbat4)となる時刻t3まで制限され、車速も時刻2から時刻t3の間で減少すると予測する。
【0099】
EVコントローラ21は、時刻t3以降においてバッテリ1の出力の制限が解除され、これによりバッテリ1の出力及びバッテリ1の温度(破線)の上昇速度が増加し、車速(破線)も回復すると判断する。
【0100】
EVコントローラ21は、時刻t4でバッテリ1の温度(破線)が中間温度(Tmid)に到達すると冷却手段の冷却が開始するが、その後バッテリ1の出力制限を実行しない場合、時刻t6において車両100の登坂路の通過直後のバッテリ1の温度(一点鎖線)が上限温度(Tmax)よりも高くなると予測する。
【0101】
EVコントローラ21は、車両100が登坂路を走行中のバッテリ1の出力制限を実行する場合、時刻t5でバッテリ1の温度(破線)が上限温度(Tmax)に到達し、バッテリ1の出力(破線)が時刻t6まで制限され、車速(破線)も時刻t5から時刻t5の間で低下すると予測する。
【0102】
そこで、EVコントローラ21は、車両100の登坂路の走行中のバッテリ1の温度が上限温度(Tmax)以下となる場合の車両100の登坂路の進入時(時刻t2)のバッテリ1の温度となる第1目標バッテリ温度(Tbat3)を算出する。
【0103】
EVコントローラ21は、高負荷開始温度(Tbat1)が第1目標バッテリ温度(Tbat3)、及び第2目標バッテリ温度(Tbat4)よりも低いと判断し、時刻t1においてバッテリ1の加熱を開始する。このときの加熱手段の出力の総量(Q)は、要求駆動力(P)の分類に基づき設定されるが、時刻t2においてバッテリ1の温度が第2目標バッテリ温度(Tbat4)以上となる(第1目標バッテリ温度(Tbat3)よりも低くなる)ように設定される。
【0104】
時刻t2においてバッテリ1の温度(実線)は、少なくとも第2目標バッテリ温度(Tbat4)以上の温度にまで上昇する。時刻t2において車両100が登坂路に進入しバッテリ1が高負荷となるためバッテリ1の加熱を停止し、冷却手段による冷却を開始する。
【0105】
そして、車両100の登坂路の通過直後となる時刻t6においてもバッテリ1の温度(実線)は上下温度(Tmax)よりも低い温度となっており、登坂路においてバッテリ1の出力(実線)の制限が回避され、車速(実線)の低下も回避される。
【0106】
[冷媒循環系]
図12は、バッテリ1を冷却する場合の冷媒の回路図であって、図12(a)はチラー25により冷却された冷媒によりバッテリ1を冷却する場合の回路図、図12(b)はラジエータ24により冷却された冷媒によりバッテリ1を冷却する場合の回路図である。図13は、バッテリ1を加熱する場合の冷媒の回路図であって、図13(a)はヒータ26により加熱された冷媒によりバッテリ1を加熱する場合の回路図、図13(b)は駆動モータ4及びインバータ3により加熱された冷媒によりバッテリ1を加熱する場合の回路図である。
【0107】
図12に示すように、空調装置23(図2)は、車室内の空調を行う空調機と熱交換を行う冷媒(例えばHFC134a等の代替フロン)を循環させる空調機熱交換回路231を備える。空調機熱交換回路231には、冷媒ガスを圧縮して高温高圧の圧縮冷媒ガスを吐出するコンプレッサ232と、圧縮冷媒ガスと外気との間で熱交換を行って、圧縮冷媒ガスの熱を外気に放熱することで圧縮冷媒ガスを冷却・凝縮させて液体冷媒にするコンデンサ233と、高圧の液体冷媒を膨張させて低圧・低温の液体冷媒とする第1膨張弁234、第2膨張弁235と、液体冷媒と車室内空気との熱交換を行って車室内空気の熱を吸収することで車室内空気を冷却し液体冷媒を蒸発させて冷媒ガスとするエバポレータ236と、チラー25を含む。
【0108】
空調機熱交換回路231において、第1膨張弁234とエバポレータ236との直列回路と、第2膨張弁235とチラー25の直列回路はコンプレッサ232及びコンデンサ233に対して並列に接続されている。
【0109】
図12に示すように、車両100は駆動モータ4及びインバータ3を冷却するための駆動系循環回路241を備える。
【0110】
駆動系循環回路241には、ラジエータ24と、第1三方弁243と、ヒータ26と、第1循環ポンプ244と、バッテリ1と、第2三方弁245と、第3三方弁246が配置されている。
【0111】
駆動系循環回路241には、第1分岐回路247が配置され、第1分岐回路247の一端が第3三方弁246に接続され他端が駆動系循環回路241のラジエータ24と第1三方弁243の間となる位置に接続されている。第1分岐回路247には、第2循環ポンプ248と駆動モータ4及びインバータ3が配置されている。
【0112】
駆動系循環回路241には、チラー25を経由し、第1三方弁243と第21三方弁とを接続する第2分岐回路249が接続されている。
【0113】
なお、冷却ファン242は、ラジエータ24及びコンデンサ233に隣接して配置され、各冷媒と外気との熱交換を行う。
【0114】
図12(A)に示すように、バッテリ1をチラー25により冷却する場合は、コンプレッサ232を起動し第2膨張弁235を解放することでチラー25を運転させ、第1三方弁243の駆動系循環回路241のラジエータ24側を閉止して第1三方弁243の第2分岐回路249側を解放し、第2三方弁245の駆動系循環回路241の第3三方弁246側を閉止し第2三方弁245の第2分岐回路249側を解放し、ヒータ26を停止させた状態で、第1循環ポンプ244を起動する。
【0115】
このときの冷却手段の出力、すなわちチラー25の冷却能力は、コンプレッサ232の出力と第1循環ポンプ244の出力に依存する。
【0116】
図12(A)において、車室内の空調を行う場合は、第1膨張弁234を解放してエバポレータ236に冷媒を供給する。また、駆動モータ4及びインバータ3を冷却する場合は、第3三方弁246の駆動系循環回路241のラジエータ24側及び第1分岐回路247側を解放し、第2循環ポンプ248を起動する。
【0117】
図12(B)に示すように、バッテリ1をラジエータ24により冷却する場合は、第1三方弁243の第2分岐回路249側を閉止して第1三方弁243の駆動系循環回路241のラジエータ24側を解放し、第2三方弁245の第2分岐回路249側を閉止して第2三方弁245の駆動系循環回路241の第3三方弁246側を解放し、第1循環ポンプ244を起動する。
【0118】
このときの冷却手段の出力、すなわちラジエータ24の冷却能力は、ラジエータ24を流れる冷媒と外気との温度差及び第1循環ポンプ244の出力に依存する。
【0119】
図12(B)において、車室内の空調を行う場合は、コンプレッサ232を起動して第1膨張弁234を解放してエバポレータ236に冷媒を供給する。また、駆動モータ4及びインバータ3を冷却する場合は、第3三方弁246の駆動系循環回路241のラジエータ24側及び第1分岐回路247側を解放し、第2循環ポンプ248を起動する。
【0120】
図13(A)に示すように、バッテリ1をヒータ26により冷却する場合は、第1三方弁243の駆動系循環回路241のラジエータ24側を閉止して第1三方弁243の第2分岐回路249側を解放し、第2三方弁245の駆動系循環回路241の第3三方弁246側を閉止し第2三方弁245の第2分岐回路249側を解放し、ヒータ26を起動させて第1循環ポンプ244を起動する。
【0121】
このときの加熱手段の出力、すなわちヒータ26の出力は、ヒータ26に供給する電力に依存する。
【0122】
図13(B)に示すように、バッテリ1を駆動モータ4及びインバータ3の排熱により加熱する場合は、第1三方弁243の第2分岐回路249側を閉止して第1三方弁243の駆動系循環回路241のラジエータ24側を解放し、第2三方弁245の第2分岐回路249側を閉止して第2三方弁245の駆動系循環回路241の第3三方弁246側を解放し、第3三方弁246の駆動系循環回路241のラジエータ24側を閉止し、第2循環ポンプ248を停止して第1循環ポンプ244を起動する。
【0123】
このときの加熱手段の出力は、駆動モータ4及びインバータ3に対する負荷の大きさ及び第1循環ポンプ244の出力に依存する。
【0124】
バッテリ1は、前記のように駆動モータ4に電力を供給するものであるが、コンプレッサ232、第1膨張弁234、第2膨張弁235、第1循環ポンプ244、第2循環ポンプ248、第1三方弁243、第2三方弁245、第3三方弁246、ヒータ26、冷却ファン242にも電力供給可能である。
【0125】
[本実施形態の効果]
本実施形態の電動車両の制御方法によれば、バッテリ1の出力により駆動モータ4に駆動力を発生させて走行し、バッテリ1の温度が所定の上限温度(Tmax)に到達する場合、又は上限温度(Tmax)よりも低い所定温度(第2目標バッテリ温度(Tbat4))よりも低くなる場合にバッテリ1の出力を制限する電動車両の制御方法であって、車両100の現在地から目的地までの走行経路から、バッテリ1に対する負荷が低負荷となる低負荷走行経路と、負荷が低負荷よりも大きな高負荷となる高負荷走行経路(登坂路)と、を推定し、車両100が低負荷走行経路を走行しているときの低負荷走行負荷(N)に基づいて車両100が高負荷走行経路を走行する際の高負荷走行抵抗(N)を算出し、高負荷走行経路における要求車速(V)と高負荷走行抵抗(N)に基づいて高負荷走行経路における車両100の要求駆動力(P)を算出し、低負荷走行経路を走行中の車両100の駆動力(P)と、要求駆動力(P)と、現在のバッテリ1の温度(T)に基づいて車両100が低負荷走行経路から高負荷走行経路を走行する際のバッテリ1の温度推移(高負荷開始温度(Tbat1)、高負荷終了温度(Tbat2))を算出し、車両100が高負荷走行経路を走行中にバッテリ1の温度が上限温度(Tmax)に到達することが予測される場合に車両100が高負荷走行経路に進入する前にバッテリ1を冷却手段(チラー25、ラジエータ24)により冷却し、車両100が高負荷走行経路に進入する際にバッテリ1の温度が所定温度(第2目標バッテリ温度(Tbat4))よりも低くバッテリ1の出力が要求駆動力(P)に相当する要求出力よりも低くなるように制限されることが予測される場合に車両100が高負荷走行経路に進入する前にバッテリ1を加熱手段(ヒータ26、駆動モータ4及びインバータ3の排熱)により加熱し、要求駆動力(P)をその大きさに応じて段階的に分類し、冷却手段(チラー25、ラジエータ24)の出力の総量(Q)及び加熱手段(ヒータ26、駆動モータ4及びインバータ3の排熱)の出力の総量(Q)をそれぞれ要求駆動力(P)に基づいて段階的に設定する。
【0126】
上記方法により、車両100が高負荷走行経路を走行する際のバッテリ1の出力制限の頻度を低減できる。また、冷却手段の出力の総量及び加熱手段の出力の総量を要求駆動力の分類、すなわち車両100の走行抵抗の大きさにより段階的に設定するので、バッテリ1の出力制限の頻度を低減できる。以上より、車両100の走行抵抗に応じてバッテリ1の温度制御を過不足なく実行し、高負荷時のバッテリ1の出力制限の頻度を低減可能となる。
【0127】
本実施形態の電動車両の制御方法によれば、バッテリ1の出力により駆動モータ4に駆動力を発生させて走行し、バッテリ1の温度が所定の上限温度(Tmax)に到達する場合、又は上限温度(Tmax)よりも低い所定の温度(第2目標バッテリ温度(Tbat4))よりも低くなる場合にバッテリ1の出力を制限する電動車両の制御方法であって、車両100の現在地から目的地までの走行経路から、バッテリ1に対する負荷が低負荷となる低負荷走行経路と、負荷が低負荷よりも大きな高負荷となる高負荷走行経路(登坂路)と、を推定し、車両100が低負荷走行経路を走行しているときの低負荷走行抵抗(N)に基づいて車両100が高負荷走行経路を走行する際の高負荷走行抵抗(N)を算出し、高負荷走行経路(登坂路)における要求車速(V)と高負荷走行抵抗(N)に基づいて高負荷走行経路(登坂路)における車両100の要求駆動力(P)を算出し、車両100が低負荷走行経路を走行しているときの駆動力(P)と、現在のバッテリ1の温度(T)に基づいて車両100が高負荷走行経路(登坂路)に進入する際のバッテリ1の温度となる高負荷開始温度(Tbat1)を算出し、高負荷開始温度(Tbat1)と要求駆動力(P)に基づいて車両100の高負荷走行経路(登坂路)の通過直後のバッテリ1の温度となる高負荷終了温度(Tbat2)を算出し、車両100の高負荷走行経路(登坂路)の走行中のバッテリ1の温度が上限温度(Tmax)以下となる場合の車両100の高負荷走行経路(登坂路)の進入時のバッテリ1の温度となる第1目標バッテリ温度(Tbat3)を要求駆動力(P)及び上限温度(Tmax)に基づいて算出し、車両100の高負荷走行経路(登坂路)の進入時のバッテリ1の温度であって車両100の高負荷走行経路(登坂路)の進入時のバッテリ1の出力の制限を回避可能な第2目標バッテリ温度(Tbat4)を要求駆動力(P)に基づいて算出し、高負荷終了温度(Tbat2)が上限温度(Tmax)以上であり、且つ高負荷開始温度(Tbat1)が第1目標バッテリ温度(Tbat3)以上の場合に車両100が高負荷走行経路(登坂路)に進入する前にバッテリ1を冷却手段(チラー25、ラジエータ24)により冷却し、高負荷終了温度(Tbat2)が上限温度(Tmax)以上であり、且つ高負荷開始温度(Tbat1)が第1目標バッテリ温度(Tbat3)及び第2目標バッテリ温度(Tbat4)よりも低い場合に車両100が高負荷走行経路(登坂路)に進入する前にバッテリ1を加熱手段(ヒータ26、駆動モータ4及びインバータ3の排熱)により加熱し、要求駆動力(P)をその大きさに応じて段階的に分類し、冷却手段(チラー25、ラジエータ24)の出力の総量(Q)及び加熱手段(ヒータ26、駆動モータ4及びインバータ3の排熱)の出力の総量(Q)をそれぞれ要求駆動力の分類に基づいて段階的に設定する。
【0128】
上記方法により、車両100が高負荷走行経路を走行する際のバッテリ1の出力制限の頻度を低減できる。また、冷却手段の出力の総量及び加熱手段の出力の総量を要求駆動力の分類、すなわち車両100の走行抵抗の大きさにより段階的に設定するので、バッテリ1の出力制限の頻度を低減できる。以上より、車両100の走行抵抗に応じてバッテリ1の温度制御を過不足なく実行し、高負荷時のバッテリ1の出力制限を低減可能となる。
【0129】
本実施形態において、冷却手段(チラー25、ラジエータ24)の出力の総量が略一定となる条件で冷却手段の出力とその継続時間を可変とし、加熱手段(ヒータ26、駆動モータ4及びインバータ3の排熱)の出力の総量が略一定となる条件で加熱手段の出力とその継続時間を可変とする。
【0130】
上記方法により、バッテリ1が車両100の他の部分に大きな電力を供給している場合には冷却手段及び加熱手段の出力を低下させ、その分継続時間を長くすることで、他の部分への電力供給に干渉することなく冷却手段による事前の冷却及び加熱手段による事前の加熱を行うことができる。
【0131】
本実施形態において、車両100がトレーラを牽引して走行する場合において、トレーラの識別情報(種類の情報、重量の情報)を検出することで(前記のように高負荷走行抵抗(N)を算出する代わりに)高負荷走行抵抗(N)を推定する。
【0132】
上記方法により、トレーラを牽引しないときの車両100の走行抵抗(又は重量)が既知の場合、トレーラの識別情報(種類の情報、重量の情報)を用いて要求駆動力を推定できる。また、冷却手段の出力の総量及び加熱手段の出力の総量を要求駆動力の分類、すなわちトレーラの特性(種類、重量)により段階的に設定するので、処理負担を低減しつつバッテリ1の出力制限の頻度を低減できる。以上より、処理負担を軽減しつつトレーラを牽引する車両全体の走行抵抗に応じてバッテリ1の温度制御を過不足なく実行し、高負荷時のバッテリ1の出力制限の頻度を低減可能となる。
【0133】
本実施形態において、低負荷走行経路及び高負荷走行経路は、走行経路を包含する地図情報と地図情報における車両100の位置を示す位置情報から推定し、車両100にトレーラが取り付けられたことを検知し、且つ車両100が高負荷走行経路を走行すると推定した場合に、車両100が高負荷走行経路に進入する前の冷却手段(チラー25、ラジエータ24)を用いたバッテリ1の冷却及び車両100が高負荷走行経路に進入する前の加熱手段(ヒータ26、駆動モータ4及びインバータ3の排熱)を用いたバッテリ1の加熱を実行可能とする。
【0134】
上記方法により、車両100にトレーラが取り付けられたことを検知し、且つ車両100が高負荷走行経路を走行すると推定した場合に、車両100が高負荷走行経路に進入する前の冷却手段(チラー25、ラジエータ24)を用いたバッテリ1の冷却及び車両100が高負荷走行経路に進入する前の加熱手段(ヒータ26、駆動モータ4及びインバータ3の排熱)を用いたバッテリ1の加熱を実行し、車両100にトレーラが取り付けられたことを検知しない、又は車両100が高負荷走行経路を走行すると推定しない場合に、上記の事前のバッテリ1の冷却又は加熱を実行しないので、車両100全体の電力消費を削減できる。
【0135】
本実施形態において、高負荷走行経路が登坂路である場合において、要求駆動力(P)を、低負荷走行抵抗(N)から算出される車両100及びトレーラを足し合わせた重量(M)と、登坂路の勾配(平均勾配(θ))と、に基づいて算出する。
【0136】
上記方法により、要求駆動力(P)の分類を正確かつ容易に実行でき、バッテリ1の事前の冷却及び加熱を効率的に実行できる。
【0137】
本実施形態の電動車両の制御装置によれば、バッテリ1の出力により駆動モータ4に駆動力を発生させて走行し、バッテリ1の温度が所定の上限温度(Tmax)に到達する場合、又は上限温度(Tmax)よりも低い所定温度(第2目標バッテリ温度(Tbat4))よりも低くなる場合にバッテリ1の出力を制限する電動車両の制御装置であって、車両100の現在地から目的地までの走行経路から、バッテリ1に対する負荷が低負荷となる低負荷走行経路と、負荷が低負荷よりも大きな高負荷となる高負荷走行経路(登坂路)と、を推定する走行経路推定手段(EVコントローラ21)と、車両100が低負荷走行経路を走行しているときの低負荷走行抵抗(N)に基づいて車両100が高負荷走行経路を走行する際の高負荷走行抵抗(N)を算出する走行負荷算出手段(EVコントローラ21)と、高負荷走行経路における要求車速(V)と高負荷走行抵抗(N)に基づいて高負荷走行経路における車両100の要求駆動力(P)を算出する要求駆動力算出手段(EVコントローラ21)と、低負荷走行経路を走行中の車両100の駆動力(P)と、要求駆動力(P)と、現在のバッテリ1の温度(T)に基づいて車両100が低負荷走行経路から高負荷走行経路を走行する際のバッテリ1の温度推移(高負荷開始温度(Tbat1)、高負荷終了温度(Tbat2))を算出する温度推移算出手段(EVコントローラ21)と、バッテリ1を冷却する冷却手段(チラー25、ラジエータ24)と、バッテリ1を加熱する加熱手段(ヒータ26、駆動モータ4及びインバータ3の排熱)と、車両100が高負荷走行経路を走行中にバッテリ1の温度が上限温度(Tmax)に到達することが予測される場合に車両100が高負荷走行経路に進入する前に冷却手段(チラー25、ラジエータ24)を起動し、車両100が高負荷走行経路に進入する際にバッテリ1の温度が所定温度(第2目標バッテリ温度(Tbat4))よりも低くバッテリ1の出力が要求駆動力(P)に相当する出力よりも低くなるように制限されることが予測される場合に車両100が高負荷走行経路に進入する前に加熱手段を起動する制御部(EVコントローラ21)と、を含み、制御部(EVコントローラ21)は、要求駆動力(P)をその大きさに応じて段階的に分類し、冷却手段(チラー25、ラジエータ24)の出力の総量(Q)及び加熱手段(ヒータ26、駆動モータ4及びインバータ3の排熱)の出力の総量(Q)をそれぞれ要求駆動力(P)の分類に基づいて段階的に設定する。
【0138】
上記構成により、車両100が高負荷走行経路を走行する際のバッテリ1の出力制限の頻度を低減できる。また、冷却手段の出力の総量及び加熱手段の出力の総量を要求駆動力の分類、すなわち車両100の走行抵抗の大きさにより段階的に設定するので、バッテリ1の出力制限の頻度を低減できる。以上より、車両100の走行抵抗に応じてバッテリ1の温度制御を過不足なく実行し、高負荷時のバッテリ1の出力制限を低減可能となる。
【0139】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0140】
1 バッテリ、4 駆動モータ、21 EVコントローラ、24 ラジエータ、25 チラー、26 ヒータ、100 車両
図1
図2
図3
図4
図5
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