(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080074
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】触感呈示装置および触感呈示方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240606BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/041 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192965
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】須藤 俊一
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555BA05
5E555BA06
5E555BB05
5E555BB06
5E555BC04
5E555CA13
5E555CA41
5E555CB12
5E555CB21
5E555CB33
5E555CB59
5E555CC05
5E555DA24
5E555DD06
5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】触感フィードバック機能を有する操作部に対する押圧位置に応じて生じる触感のバラツキを低減することが可能な「触感呈示装置および触感呈示方法」を提供する。
【解決手段】操作部の任意の位置が押下されたときに操作部に生じる傾きの状態を検出する傾き検出部11と、当該検出された傾きの状態に応じて、操作部の傾きが大きくなるほど操作部に付与する駆動力を小さくするという相関に基づいて、操作部に付与する駆動力を制御する駆動制御部12とを備え、押下位置に応じて操作部の傾きが大きくなるほど、操作部に付与される駆動力が小さくなるようにすることにより、その駆動力によって操作部に発生する振動(加速度)の鉛直方向の成分が小さくなるようにして、ユーザに伝わる触感が、操作部の傾きがない場合に付与される駆動力によって発生する振動による触感との差が小さなものとなるようにする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにより操作部が押下されたときに当該操作部を振動させることによって上記ユーザに触感を与える触感呈示装置であって、
上記操作部の任意の位置が押下されたときに上記操作部に生じる傾きの状態を検出する傾き検出部と、
上記操作部の傾きが大きくなるほど上記操作部に付与する駆動力を小さくするという相関に基づいて、上記傾き検出部により検出された傾きの状態に応じて上記操作部に付与する駆動力を制御する駆動制御部とを備えた
ことを特徴とする触感呈示装置。
【請求項2】
上記傾き検出部は、
上記操作部の任意の位置が押下されたときに上記操作部の複数の所定位置に生じている変位量をそれぞれ検出する変位量検出部と、
上記変位量検出部により検出された上記複数の所定位置の変位量をもとに、上記操作部に生じている傾きの方向と大きさを表す傾斜値を算出する傾斜値算出部とを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の触感呈示装置。
【請求項3】
上記駆動制御部は、
上記傾斜値算出部により算出された上記傾斜値に基づいて、上記操作部に付与する駆動力を求める駆動力決定部と、
上記駆動力決定部により決定された駆動力を上記操作部に付与する駆動力付与部とを備えた
ことを特徴とする請求項2に記載の触感呈示装置。
【請求項4】
上記駆動力決定部は、
上記傾斜値算出部により算出された上記傾斜値に基づいて補正係数を算出する係数算出部と、
上記操作部の傾きがない場合に付与する規定の大きさの駆動力に対し、上記係数算出部により算出された上記補正係数をかけることにより、上記操作部に付与する駆動力を算出する駆動力算出部とを備えた
ことを特徴とする請求項3に記載の触感呈示装置。
【請求項5】
上記傾き検出部は、上記操作部の任意の位置が押下されて上記操作部の押下量が触感呈示開始の閾値に達したときに、上記操作部に生じる傾きの状態を検出することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の触感呈示装置。
【請求項6】
ユーザにより操作部が押下されたときに当該操作部を振動させることによって上記ユーザに触感を与える触感呈示方法であって、
触感呈示装置の傾き検出部が、上記操作部の任意の位置が押下されたときに上記操作部に生じる傾きの状態を検出する第1のステップと、
上記触感呈示装置の駆動制御部が、上記操作部の傾きが大きくなるほど上記操作部に付与する駆動力を小さくするという相関に基づいて、上記傾き検出部により検出された傾きの状態に応じて上記操作部に付与する駆動力を制御する第2のステップとを有する
ことを特徴とする触感呈示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触感呈示装置および触感呈示方法に関し、特に、操作部が押下されたときに当該操作部を振動させることによってユーザに触感を与える触感呈示装置および触感呈示方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器のHMI(Human Machine Interface)において、物理的なキー素子を押下する手法に代えて、タッチパネル上のキー表示部を押下することでユーザ操作を検出する手法が増加している。また、タッチパネル上のキー表示部が押下されたときに、タッチパネルを振動させることによってユーザに触感を与える触感フィードバックと呼ばれる技術も広く使われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の触感呈示装置では、タッチ面に対するタッチによる押圧荷重を検出し、その検出荷重が所定の閾値に達した際に、タッチ面を振動させて指等の押圧対象に触感を呈示する。
【0003】
また、特許文献1に記載の触感呈示装置では、触感が呈示されるべき一律の押圧力をタッチ面が受けた場合に、タッチ面上の位置に応じたサイズのエリア毎に設定された調整情報に基づいて、タッチ面の押圧位置に応じた制御を行う。これにより、タッチ面が受ける押圧荷重が押圧位置に応じて異なる値になることに起因して、ユーザがタッチ面に対して一律の押圧力で入力を行っても、入力位置によっては検出荷重が閾値に達しないため触感が呈示されない場合が生じるという問題を解消し、ユーザのタッチ位置にかかわらず押圧対象に対して触感が呈示されるようにしている。
【0004】
ところで、触感フィードバック機能を有するタッチパネル等の操作部を押下すると、タッチパネルに傾きが発生する。これは、可動部であるタッチパネルを支える構造に依存する物理的特性である。タッチパネルに傾きが生じると、タッチパネルに駆動力を与えたときに振動する方向(発生する加速度の方向)が変わるため、ユーザの指に伝わる触感が変わってしまう。
図8は、このことを説明するための模式図である。
【0005】
図8は、タッチパネル付きディスプレイ100の概略構成を示す図である。
図8は、水平状態にある固定用の取り付け部200に対してタッチパネル付きディスプレイ100が水平に取り付けられた状態を示している。
図8に示すように、タッチパネル付きディスプレイ100は、表示パネルを含む非変位部103に立設された支柱104に対して、可動性を有する支持部102を介してタッチパネル101が支持されている。
図8において、非変位部103の平面をXY平面とし、当該XY平面に平行な方向を水平方向とする。また、非変位部103の平面に垂直なZ方向を鉛直方向とする。
【0006】
図8(a)に示すように、タッチパネル101の中央付近が押下された場合には、タッチパネル101に生じる傾きは小さくなる。この場合、タッチパネル101をタッチ面に沿った方向(以下、タッチ面方向という。傾きがない場合はタッチ面方向=水平方向)に振動させるための駆動力301を与えると、タッチパネル101に発生する加速度302もほぼ水平方向のみとなる。タッチパネル101をタッチ面方向に振動させるのは、非変位部103に対してなるべく振動が伝わらないようにするためである。
【0007】
これに対し、
図8(b)に示すように、タッチパネル101の端付近が押下された場合には、タッチパネル101に生じる傾きは大きくなる。この場合、傾いた状態のタッチパネル101に対してタッチ面方向に振動させるための駆動力301を与えると、タッチパネル101には回転方向に動きが生じるため、発生する加速度303は、水平方向、鉛直方向およびタッチ面に対して垂直な方向の各成分を有するものとなる。この場合、加速度303に鉛直方向の成分が含まれるため、ユーザの指に伝わる触感は、
図8(a)の場合よりも大きなものとなる。
【0008】
このように、触感フィードバック機能を有する操作部に対してユーザが押下操作を行ったときに、押圧位置に応じて変わる操作部の傾きに起因して、ユーザの指に伝わる触感の大きさが変わってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、触感フィードバック機能を有する操作部に対する押圧位置に応じて生じる触感のバラツキを低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、操作部の任意の位置が押下されたときに操作部に生じる傾きの状態を検出し、当該検出された傾きの状態に応じて、操作部の傾きが大きくなるほど操作部に付与する駆動力を小さくするという相関に基づいて、操作部に付与する駆動力を制御するようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、押下位置に応じて操作部の傾きが大きくなるほど、操作部に付与される駆動力が小さくなるため、その駆動力によって操作部に発生する振動(加速度)の鉛直方向の成分が小さくなる。そのため、ユーザに伝わる触感は、操作部の傾きがない場合に付与される駆動力によって発生する振動による触感との差が小さなものとなる。これにより、本発明によれば、押圧位置に応じて変わる操作部の傾きに起因してユーザに伝わる触感のバラツキを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態による触感呈示装置が適用されるタッチパネル付きディスプレイの概略構成を示す模式図である。
【
図2】本実施形態のタッチパネルにおいて変位センサが設置される位置の例を示す図である。
【
図3】本実施形態による触感呈示装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】タッチパネルの押下位置に応じた変位量の例を示す図である。
【
図5】上下方向の補正係数および左右方向の補正係数を示す図である。
【
図6】タッチパネルに付与される駆動力およびそれによって生じる振動(加速度)を模式的に示す図である。
【
図7】本実施形態による触感呈示装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による触感呈示装置が適用されるタッチパネル付きディスプレイ1の概略構成を示す模式図である。
図1は、水平状態にある固定用の取り付け部200に対してタッチパネル付きディスプレイ1が水平に取り付けられた状態を示している。ただし、これは説明用であり、タッチパネル付きディスプレイ1を固定する取り付け部200の面が水平な状態となっていることを必須とするものではない。例えば、水平方向に対して所定の角度を有して存在する壁面を取り付け部200とする構成であってもよい。また、本実施形態のタッチパネル付きディスプレイ1がスマートフォンやタブレットなどの携帯端末に搭載され、当該携帯端末の筐体またはそれに固定された部材を取り付け部200とする構成であってもよい。
【0015】
図1に示すように、タッチパネル付きディスプレイ1は、非変位部103に立設された支柱104に対して、可動性を有する支持部102を介してタッチパネル101が支持されている。
図1において、非変位部103の平面をXY平面とし、当該XY平面に平行な方向を水平方向とする。XY平面において、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とする。また、非変位部103の平面に垂直なZ方向を鉛直方向とする。
【0016】
タッチパネル101は、ユーザが触れた位置を検知し、その接触位置を示す接触位置情報を出力する。このタッチパネル101は、可動性を有する支持部102に支持されることにより、所定の駆動力が付与されて振動可能な状態となっている。タッチパネル101は、特許請求の範囲の操作部に相当する。
【0017】
非変位部103は、ユーザによるタッチパネル101の押下操作によって変位を起こさない部位であり、表示パネルおよび押下量検出センサなどを含む。表示パネルは、図示しない演算処理装置により生成される画像を表示するものであり、例えば液晶パネルまたは有機ELパネル等により構成される。表示パネルに対してHMIの押下ボタンが表示され、その押下ボタンが表示された位置においてユーザによりタッチパネル101に対する押下操作が行われる。押下ボタンが表示される位置は、演算処理装置により生成される画像に応じて変動する。
【0018】
押下量検出センサは、ユーザがタッチパネル101を押圧したときの押下量を検出するものであり、押下量を示す押下量情報を本実施形態の触感呈示装置10(
図1では図示せず)に出力する。ユーザがタッチパネル101を強く押下すると、その押下力がタッチパネル101から押下量検出センサに伝達され、接触位置がタッチパネル101により検出されるとともに、押下力に応じたタッチパネル101の押下量が押下量検出センサにより検出される。
【0019】
本実施形態の触感呈示装置10は、押下量検出センサにより検出されたタッチパネル101の押下量が触感呈示開始の閾値に達したことを検知すると、タッチパネル101に対し、タッチパネル101をタッチ面方向に振動させるための駆動力を与える。すなわち、本実施形態の触感呈示装置10は、ユーザによりタッチパネル101が閾値以上の押下量で押下されたときに、当該タッチパネル101に駆動力を付与してタッチパネル101を振動させることにより、ユーザに触感を与える。
【0020】
本実施形態において、タッチパネル101の所定位置には複数の変位センサ105が設けられている。変位センサ105は、例えばレーザ変位センサであり、非変位部103に向けてレーザ光を照射し、当該非変位部103で反射して返ってくる反射光の受光状態の変化を検出することにより、タッチパネル101と非変位部103との間の距離の変動量を検出する。ここで、変位センサ105は、タッチパネル101に対して押下力が全く加えられていないときの距離を基準として、その基準距離からの変動量を検出する。
【0021】
なお、変位センサ105はレーザ変位センサに限定されない。例えば、接触式変位センサや渦電流式変位センサなどの他のタイプの変位センサを用いるようにしてもよい。
【0022】
図2は、タッチパネル101において変位センサ105が設置される位置の例を示す図である。
図2に示すように、本実施形態では、4つの変位センサ105a~105dがタッチパネル101の四隅付近に設けられている。4つの変位センサ105a~105dは、それぞれが設置されている位置における距離の変動量を検出し、変動量を示す変動量情報を本実施形態の触感呈示装置10に出力する。触感呈示装置10は、変位センサ105a~105dにより検出された変動量に応じて、タッチパネル101に付与する駆動力を制御する。
【0023】
図3は、本実施形態による触感呈示装置10の機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態の触感呈示装置10は、機能構成として、傾き検出部11および駆動制御部12を備えている。傾き検出部11は、具体的な機能構成として、変位量検出部11Aおよび傾斜値算出部11Bを備えている。また、駆動制御部12は、具体的な機能構成として、駆動力決定部12Aおよび駆動力付与部12Bを備えている。駆動力決定部12Aは、より具体的な機能構成として、係数算出部12A
-1および駆動力算出部12A
-2を備えている。
【0024】
上記機能ブロック11,12は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記機能ブロック11,12は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0025】
傾き検出部11は、タッチパネル101の任意の位置(表示パネルに押下ボタンが表示されている位置)が押下されたときにタッチパネル101に生じる傾きの状態を検出する。ここで、傾き検出部11は、タッチパネル101の任意の位置が押下されてタッチパネル101の押下量が触感呈示開始の閾値に達したときに、タッチパネル101に生じる傾きの状態を検出する。
【0026】
具体的に、傾き検出部11の変位量検出部11Aは、タッチパネル101の任意の位置が押下されたときにタッチパネル101の複数の所定位置に生じている変位量をそれぞれ検出する。ここで、複数の所定位置とは、4つの変位センサ105a~105dが設けられている位置である。すなわち、変位量検出部11Aは、押下量検出センサから入力される押下量情報に基づいてタッチパネル101の押下量が閾値に達したことを検知したときに、4つの変位センサ105a~105dから入力されるそれぞれの設置位置における変動量情報に基づいて、4つの位置に生じているタッチパネル101の変位量をそれぞれ検出する。
【0027】
図4は、タッチパネル101の押下位置に応じた変位量の例を示す図である。
図4(a)は、タッチパネル101の中央付近の位置41が押下されたときに変位量検出部11Aにより検出される4つの位置の変位量の例を示している。変位量は、タッチパネル101に対して押下力が全く加えられていないときのタッチパネル101の状態を基準状態とし、その基準状態から鉛直下方向(非変位部103に向かう方向)に対する変位量を正の値とし、基準状態から鉛直上方向(非変位部103から遠ざかる方向)に対する変位量を負の値としている。
【0028】
図4(a)に示すように中央付近の位置41が押下された場合、4つの変位センサ105a~105dの検出値に基づいて変位量検出部11Aにより検出されるタッチパネル101の各位置の変位量は、何れも正の値で同値となる。つまり、この場合にタッチパネル101は非変位部103の方向に垂直に変動し、タッチパネル101に傾きは生じない。
【0029】
図4(b)はタッチパネル101の左上の隅付近の位置42が押下されたときに変位量検出部11Aにより検出される4つの位置の変位量の例を示している。
図4(b)に示すように、タッチパネル101の中央付近以外の位置42が押下された場合、タッチパネル101には傾きが生じ、4つの変位センサ105a~105dの検出値に基づいて変位量検出部11Aにより検出されるタッチパネル101の各位置の変位量は、それぞれ異なる値となる。
【0030】
このとき、左上の押下位置42の付近に設置されている第1の変位センサ105aの検出値に基づく変位量は正の値で最も大きくなる。また、残り3つの変位センサ105b~105dのうち、押下位置42に近い方の支持部102に近い位置に設置されている第2の変位センサ105bの検出値に基づく変位量は、第1の変位センサ105aの検出値に基づく変位量よりも小さい値であるが、正の値となる。一方、押下位置42から遠い方の支持部102に近い位置に設置されている残り2つの変位センサ105c,105dの変位量は何れも負の値となり、押下位置42の対角位置にある第4の変位センサ105dの検出値に基づく変位量が、第3の変位センサ105cの検出値に基づく変位量よりも絶対値として大きくなる。
【0031】
傾斜値算出部11Bは、変位量検出部11Aにより検出された複数の所定位置の変位量をもとに、タッチパネル101に生じている傾きの方向と大きさを表す傾斜値を算出する。例えば、傾斜値算出部11Bは、上下方向の傾斜値および左右方向の傾斜値を算出する。すなわち、傾斜値算出部11Bは、4つの変位センサ105a~105dの設置位置におけるタッチパネル101の変位量をそれぞれΔa~Δdとし、次の(式1)および(式2)により上下方向の傾斜値TV-UPおよび左右方向の傾斜値TV-LRを算出する。
TV-UP=(Δa+Δb)-(Δc+Δd) ・・・(式1)
TV-LR=(Δa+Δc)-(Δb+Δd) ・・・(式2)
【0032】
例えば、
図4(a)に示した押下位置41の場合、上下方向の傾斜値TV
-UPおよび左右方向の傾斜値TV
-LRは以下のようになる。
TV
-UP=(20+20)-(20+20)=0
TV
-LR=(20+20)-(20+20)=0
これにより、タッチパネル101は上下方向にも左右方向にも傾斜していないことが示される。
【0033】
一方、
図4(b)に示した押下位置42の場合、上下方向の傾斜値TV
-UPおよび左右方向の傾斜値TV
-LRは以下のようになる。
TV
-UP=(100+20)-(-10-30)=160
TV
-LR=(100-10)-(20-30)=100
これにより、タッチパネル101は上下方向および左右方向に傾斜しており、それぞれの傾斜の大きさが上記の数値で示される。
【0034】
駆動制御部12は、タッチパネル101の傾きが大きくなるほどタッチパネル101に付与する駆動力を小さくするという相関に基づいて、傾き検出部11により検出された傾きの状態に応じてタッチパネル101に付与する駆動力を制御する。具体的には、駆動力決定部12Aにより、傾斜値算出部11Bにより算出された傾斜値TV-UP,TV-LRに基づいて、タッチパネル101に付与する駆動力を求める。
【0035】
ここで、駆動力決定部12Aの係数算出部12A-1は、傾斜値算出部11Bにより算出された傾斜値TV-UP,TV-LRに基づいて補正係数を算出する。係数算出部12A-1は、次の(式3)により上下方向の傾斜値TV-UPから上下方向の補正係数CF-UPを算出するとともに、(式4)により左右方向の傾斜値TV-LRから左右方向の補正係数CF-LRを算出し、これらの補正係数CF-UP,CF-LRから(式5)により補正係数CFを算出する。
CF-UP=α×|TV-UP|+1 ・・・(式3)
CF-LR=β×|TV-LR|+1 ・・・(式4)
CF=CF-UP×CF-LR ・・・(式5)
【0036】
|
図5は、上記(式3)の関数で表される上下方向の補正係数CF
-UPおよび上記(式4)の関数で表される左右方向の補正係数CF
-LRを示す図である。α,βは、タッチパネル101の構造の特性に基づいて設定される値であり、例えばα=-0.002、β=-0.0015である。
【0037】
図4(a)に示した押下位置41の場合、すなわち、タッチパネル101に傾きが生じていない場合には、上下方向の傾斜値TV
-UPおよび左右方向の傾斜値TV
-LRが何れも“0”であるから、補正係数CFは“1”となる。一方、
図4(b)に示した押下位置42の場合、補正係数CFは以下のように計算される。
CF
-UP=α×|TV
-UP|+1
=-0.002×160+1=0.68
CF
-LR=β×|TV
-LR|+1
=-0.0015×100+1=0.85
CF=CF
-UP×CF
-LR =0.68×0.85=0.578
【0038】
駆動力算出部12A
-2は、タッチパネル101の傾きがない基準状態の場合に付与する規定の大きさの駆動力に対し、係数算出部12A
-1により算出された補正係数CFをかけることにより、タッチパネル101に付与する駆動力を算出する。
図4(a)に示した押下位置41の場合、上述したように補正係数CFは“1”であるから、駆動力算出部12A
-2により算出される駆動力は、規定の大きさの駆動力と同値となる。一方、
図4(b)に示した押下位置42のように、タッチパネル101に傾きが生じる場合には、補正係数CFは必ず1未満の値となるから、駆動力算出部12A
-2により算出される駆動力は、規定の大きさの駆動力よりも小さい値となる。タッチパネル101の傾きが大きくなるほど、算出される駆動力は小さくなる。
【0039】
駆動力付与部12Bは、以上のようにして駆動力決定部12Aにより決定された駆動力(駆動力算出部12A
-2により算出された駆動力)をタッチパネル101に付与する。駆動力を付与する方向はタッチ面方向である。
図6は、タッチパネル101に付与されるタッチ面方向の駆動力およびそれによって生じるタッチパネル101の振動(加速度)を模式的に示す図である。
【0040】
図6(a)は、
図4(a)のようにタッチパネル101の中央付近の位置41が押下された場合の状態を示す。この場合、タッチパネル101に傾きは生じないので、タッチパネル101のタッチ面方向に規定の大きさの駆動力61が付与される。この場合、タッチパネル101に発生する加速度62はほぼタッチ面方向の成分のみとなる。
【0041】
図6(b)は、
図4(b)のようにタッチパネル101の中央付近以外の位置42が押下された場合の状態を示す。この場合、タッチパネル101に傾きが生じるため、タッチパネル101のタッチ面方向に付与される駆動力63の大きさは、規定の大きさの駆動力61より小さいものとされる。この場合にタッチパネル101に発生する加速度64は、水平方向、鉛直方向およびタッチ面に対して垂直な方向の各成分を有するものとなる。ただし、鉛直方向の成分は
図8(b)に示した従来技術の場合に比べて小さくなる。
【0042】
図7は、以上のように構成した本実施形態による触感呈示装置10の動作例を示すフローチャートである。まず、傾き検出部11は、タッチパネル101の押下量が触感呈示開始の閾値に達したか否かを判定する(ステップS1)。押下量が閾値に達していない場合は、ステップS1の判定が繰り返される。一方、押下量が閾値に達したことを検知すると、傾き検出部11は、4つの変位センサ105a~105dから入力される変動量情報に基づいて、タッチパネル101に生じる傾きの状態(傾斜の方向および大きさ)を検出する(ステップS2)。
【0043】
次に、駆動制御部12は、タッチパネル101の傾きが大きくなるほどタッチパネル101に付与する駆動力を小さくするという相関に基づいて、傾き検出部11により検出された傾きの状態に応じてタッチパネル101に付与する駆動力を算出する(ステップS3)。そして、算出された駆動力をタッチパネル101に対してタッチ面方向に沿って付与する(ステップS4)。これにより、
図7に示すフローチャートの処理を終了する。
【0044】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、タッチパネル101の任意の位置が押下されたときにタッチパネル101に生じる傾きの状態を検出し、当該検出された傾きの状態に応じて、タッチパネル101の傾きが大きくなるほど操作部に付与する駆動力を小さくするという相関に基づいて、タッチパネル101に付与する駆動力を制御するようにしている。
【0045】
このように構成した本実施形態によれば、押下位置に応じてタッチパネル101の傾きが大きくなるほど、タッチパネル101に付与される駆動力が小さくなるため、その駆動力によってタッチパネル101に発生する振動(加速度)の鉛直方向の成分が小さくなる。そのため、ユーザに伝わる触感は、タッチパネル101の傾きがない場合に付与される規定の大きさの駆動力によって発生する振動による触感との差が小さなものとなる。これにより、本実施形態によれば、押圧位置に応じて変わるタッチパネル101の傾きに起因してユーザに伝わる触感のバラツキを低減することができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、タッチパネル101の傾きの状態を検出するための手段として変位センサ105を用いる例について説明したが、これに限定されない。例えば、加速度センサ、圧力センサ、角度センサなどを用い、これらの検出値から傾斜値を換算するようにしてもよい。あるいは、重力加速度の出力の変化により傾斜角を計算する傾斜センサを用いてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、変位センサ105により検出されるタッチパネル101の変位量Δa~Δdから傾斜値TV-UP,TV-LRを算出する関数の一例として(式1)および(式2)を示したが、この関数に限定されるものではない。また、傾斜値TV-UP,TV-LRから補正係数CFを算出する関数の一例として(式3)~(式5)を示したが、この関数に限定されるものではない。
【0048】
また、上記実施形態では、(式1)~(式5)に示す関数によって変位量Δa~Δdから補正係数CFを算出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、傾斜センサ等により検出される傾斜値と補正係数CFとを関連付けて記憶したテーブル情報を記憶しておき、このテーブル情報に基づいて傾斜値から補正係数CFを特定するようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、タッチパネル101の任意の位置が押下されてその押下量が触感呈示開始の閾値に達したときにおけるタッチパネル101の傾きの状態を検出する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、押下量が触感呈示開始の閾値に達した後も更にタッチパネル101が押し込まれている場合に、押し込み量が最大となったときのタッチパネル101の傾きの状態を検出するようにしてもよい。
【0050】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 タッチパネル付きディスプレイ
10 触感呈示装置
11 傾き検出部
11A 変位量検出部
11B 傾斜値算出部
12 駆動制御部
12A 駆動力決定部
12A-1 係数算出部
12A-2 駆動力算出部
12B 駆動力付与部
101 タッチパネル(操作部)
105a~105d 変位センサ