IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アサヒ飲料株式会社の特許一覧

特開2024-80079グアガム分解物および着色料含有飲食品、およびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080079
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】グアガム分解物および着色料含有飲食品、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/238 20160101AFI20240606BHJP
   A23L 29/25 20160101ALI20240606BHJP
   A23L 5/44 20160101ALI20240606BHJP
   A23L 5/43 20160101ALI20240606BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20240606BHJP
   A23L 2/58 20060101ALI20240606BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A23L29/238
A23L29/25
A23L5/44
A23L5/43
A23L33/21
A23L2/00 M
A23L2/58
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192970
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 彩子
(72)【発明者】
【氏名】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】岡 慶太
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE05
4B018MA01
4B018MA02
4B018MA06
4B018MA07
4B018MC01
4B018MD09
4B018MD37
4B018MD38
4B018ME14
4B041LC02
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH07
4B041LH09
4B041LK07
4B041LK33
4B041LK50
4B117LC01
4B117LK08
4B117LK13
4B117LL03
(57)【要約】
【課題】 グアガム分解物と着色料とを混合して飲食品を製造する場合にあっても当該着色料に含まれる色素の分散安定性を改善できる新規な技術を提供する。
【解決手段】 グアガム分解物および着色料の添加を含んで製造される飲食品の製造方法であって、前記グアガム分解物と前記着色料とを混合することを含み、前記着色料が、水溶性色素、およびアラビアガムおよび/またはガティガムを乳化剤とする脂溶性色素の乳化色素製剤のうち少なくともいずれか一つを含む、前記飲食品の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアガム分解物および着色料の添加を含んで製造される飲食品の製造方法であって、
前記グアガム分解物と前記着色料とを混合することを含み、
前記着色料が、水溶性色素、およびアラビアガムおよび/またはガティガムを乳化剤とする脂溶性色素の乳化色素製剤のうち少なくともいずれか一つを含む、前記飲食品の製造方法。
【請求項2】
前記脂溶性色素がパプリカ色素、マリーゴールド色素、およびカロチン色素からなる群から選択される1種以上の脂溶性色素である請求項1に記載の飲食品の製造方法。
【請求項3】
前記水溶性色素がベニバナ色素、アントシアニン色素、およびカラメル色素からなる群から選択される1種以上の水溶性色素である請求項1に記載の飲食品の製造方法。
【請求項4】
グアガム分解物および水溶性色素、およびアラビアガムおよび/またはガティガムを乳化剤とする脂溶性色素の乳化色素製剤のうち少なくともいずれか一つを含む着色料を含有する、飲食品。
【請求項5】
前記脂溶性色素がパプリカ色素、マリーゴールド色素、およびカロチン色素からなる群から選択される1種以上の脂溶性色素である請求項4に記載の飲食品。
【請求項6】
前記水溶性色素がベニバナ色素、アントシアニン色素、およびカラメル色素からなる群から選択される1種以上の水溶性色素である請求項4に記載の飲食品。
【請求項7】
前記飲食品が飲料である、請求項4から6のいずれか一つに記載の飲食品。
【請求項8】
グアガム分解物および着色料を含む飲食品における前記着色料に含まれる色素の分散安定性の改善方法であって、
水溶性色素、およびアラビアガムおよび/またはガティガムを乳化剤とする脂溶性色素の乳化色素製剤のうち少なくともいずれか一つを含む前記着色料を前記飲食品に含有させることを含む、前記改善方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グアガム分解物を含む飲食品に関し、特に着色料の添加を含んで製造されるグアガム分解物含有飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
摂取者の健康に対するニーズに応える飲食品として食物繊維であるグアガム分解物を含む飲食品が提案されている。
【0003】
一方、飲食品において外観を鮮やかにすることなどを目的として着色料を添加して製造する態様が従来から多く採用されている。当該着色料の使用について、例えば特許文献1が知られている。
【0004】
また、グアガム分解物と着色料とを含む飲料としては、例えば特許文献2、3に記載の飲料が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-70261号公報
【特許文献2】特開2007-29081号公報
【特許文献3】特開2007-29086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、グアガム分解物と着色料とを混合して飲食品を製造する場合にあっても当該着色料に含まれる色素の分散安定性を改善できる新規な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はグアガム分解物を含む飲食品について着色料を添加して製造することを着想し、ポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤とした脂溶性色素の色素製剤を着色料として使用して飲食品の調製を試みた。しかしながらその結果、液面に色素の析出が発生し、色素の分散状態が不安定となっていることがわかった。
なお、本明細書において、色素の析出とは、飲食品の表面において、色素の固体または油膜(オイル浮き)が確認できる状態となっていることをいう。色素の析出についての確認は例えば目視により行うことができる。
色素の析出が生じると飲食品の商品価値が削がれることがあり、好ましくない。
【0008】
鋭意研究の結果、本発明者は、グアガム分解物とともに飲食品に含有される着色料として水溶性色素、およびアラビアガムおよび/またはガティガムを乳化剤とする脂溶性色素の乳化色素製剤のうち少なくともいずれか一つを含む着色料を用いることで、グアガム分解物と着色料とを含む飲食品において色素の分散安定性を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
グアガム分解物および着色料の添加を含んで製造される飲食品の製造方法であって、
前記グアガム分解物と前記着色料とを混合することを含み、
前記着色料が、水溶性色素、およびアラビアガムおよび/またはガティガムを乳化剤とする脂溶性色素の乳化色素製剤のうち少なくともいずれか一つを含む、前記飲食品の製造方法。
[2]
前記脂溶性色素がパプリカ色素、マリーゴールド色素、およびカロチン色素からなる群から選択される1種以上の脂溶性色素である[1]に記載の飲食品の製造方法。
[3]
前記水溶性色素がベニバナ色素、アントシアニン色素、およびカラメル色素からなる群から選択される1種以上の水溶性色素である[1]に記載の飲食品の製造方法。
[4]
グアガム分解物および水溶性色素、およびアラビアガムおよび/またはガティガムを乳化剤とする脂溶性色素の乳化色素製剤のうち少なくともいずれか一つを含む着色料を含有する、飲食品。
[5]
前記脂溶性色素がパプリカ色素、マリーゴールド色素、およびカロチン色素からなる群から選択される1種以上の脂溶性色素である[4]に記載の飲食品。
[6]
前記水溶性色素がベニバナ色素、アントシアニン色素、およびカラメル色素からなる群から選択される1種以上の水溶性色素である[4]に記載の飲食品。
[7]
前記飲食品が飲料である、[4]から[6]のいずれか一つに記載の飲食品。
[8]
グアガム分解物および着色料を含む飲食品における前記着色料に含まれる色素の分散安定性の改善方法であって、
水溶性色素、およびアラビアガムおよび/またはガティガムを乳化剤とする脂溶性色素の乳化色素製剤のうち少なくともいずれか一つを含む前記着色料を前記飲食品に含有させることを含む、前記改善方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、グアガム分解物と着色料とを混合して飲食品を製造する場合にあっても当該着色料に含まれる色素の分散安定性を改善できる新規な技術を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態はグアガム分解物および着色料の添加を含んで製造される飲食品の製造方法に関する。該製造方法においては、グアガム分解物と着色料とを混合することを含み、着色料が、水溶性色素、およびアラビアガムおよび/またはガティガムを乳化剤とする脂溶性色素の乳化色素製剤のうち少なくともいずれか一つを含む。
【0012】
本明細書において、グアガム分解物とは、一年生豆科植物であるグアー豆(Cyanopsis tetragoloba)を原料とし、その胚乳に含まれるガラクトマンナン多糖を加水分解して低分子化することにより得られる水溶性食物繊維をいう。加水分解する方法は特に限定されず、例えば酵素分解法、酸分解法などを挙げることができる。
本実施形態に係るグアガム分解物の平均分子量などは特に限定されず当業者が適宜設定でき、例えば平均分子量1.0×103~1.0×105のものを用いることができる。なお、分子量分布の測定方法は、例えば分子量マーカーとしてポリエチレングリコール(平均分子量:2×10,2×10,2×10および1×10)を使用する高速液体クロマトグラフ法とすることができる。
【0013】
また、本明細書において、着色料とは、対象(飲食品)の外観に色を付与することを目的として添加される物質または組成物をいう。なお、他の目的のために添加され原料に含まれる色素については本明細書でいうところの着色料には含まれない。
本実施形態に係る着色料は、水溶性色素、およびアラビアガムおよび/またはガティガムを乳化剤とする脂溶性色素の乳化色素製剤のうち1種または2種類以上を含む。
【0014】
水溶性色素は、天然由来および化学合成由来のいずれであってもよく、例えば、ベニバナ色素、アントシアニン色素、カラメル色素、クチナシ色素、コチニール色素、トマト色素、ビート色素、などを挙げることができる。
【0015】
脂溶性色素の乳化色素製剤とは、脂溶性色素が乳化剤の作用により粒子(乳化粒子)に含まれて水中に分散することによりエマルジョンの状態を呈している、水中油型組成物をいう。
また、アラビアガムとは、ネムノキ科アカシア属アラビアゴムノキ(Acacia senegal)の樹皮の分泌物を乾燥させたものであり、食品用の乳化剤等として公知の成分である。
また、ガティガムとは、シクシン科ガティノキ(Anogeissus latifolia)の幹から抽出した樹液を乾燥させたものであり、アラビアガムと同じく食品用の乳化剤等として公知の成分である。
アラビアガム、ガティガムまたはその両方を乳化剤とする乳化色素製剤に含まれる脂溶性色素としては、例えば、パプリカ色素、マリーゴールド色素、カロチン色素などを挙げることができる。
ここで、着色料としてアラビアガムおよび/またはガティガムを乳化剤とする脂溶性色素の乳化色素製剤をグアガム分解物とともに含有させる場合には飲食品に色素の析出が発生することなく濁りも生じさせることもでき、好ましい。
【0016】
本実施形態に係る乳化色素製剤は通常の方法により製造されたものを用いることができ、特に限定されない。例えば、アラビアガムまたはガティガムおよび水を含む水相成分と脂溶性色素を含む油相成分とを混合した後、撹拌などの均質化処理を行うことにより乳化色素製剤を得ることができる。
本実施形態に係る乳化色素製剤を製造するときの乳化剤、脂溶性色素および水の割合や乳化粒子の大きさなどは特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。また、本実施形態に係る乳化色素製剤は、乳化剤、脂溶性色素、水に加えて他の成分を含んで構成されていてもよい。
【0017】
なお、本実施形態において飲食品中における着色料の含有量は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。また、飲食品中におけるグアガム分解物の含有量も特に限定されず、その上限値については例えば18.0g/L以下とすることができる。
【0018】
本実施形態の飲食品は本発明の効果を得ることができる範囲で必要に応じて他の成分を適宜、飲食品中に含ませることができ、特に限定されない。
具体的には、糖類や高甘味度甘味料などの甘味料、果汁、野菜汁、ミネラル、酸味料、香料、ビタミン、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤、増粘剤などの、飲食品に通常配合される成分を含有することができる。
また、本実施形態の飲食品において糖度や酸度、pHは特に限定されず、当業者は適宜設定できる。
【0019】
本実施形態において具体的な飲食品の形態はグアガム分解物と上述の着色料との混合を経て製造される限り特に限定されず、種々の飲食品の形態とすることができる。本実施形態の飲食品が飲料である場合、特に限定されないが、水または他の成分の溶液中にグアガム分解物、着色料を添加、混合して飲料としてもよい。また、グアガム分解物、着色料、および必要に応じて含有されるその他の成分を混合した後、該混合物を水などで希釈して飲料としてもよい。
また、本実施形態においてはこれら飲料を例えば容器に封入し、容器詰飲料とすることができる。容器への封入方法などは特に限定されず、例えば常法に従って行うことができる。容器も公知のものを適宜選択して用いることができ、素材や形状など特に限定されない。容器の具体例としては、例えば、紙容器、透明又は半透明のビン、PETボトル等の透明又は半透明のプラスチック容器、スチール缶やアルミニウム缶等の金属缶等が挙げられる。
また、本実施形態の飲食品が飲料である場合、炭酸ガスが圧入された発泡性の飲料であってもよい。また、例えばアルコールの添加を行うことにより、アルコール飲料として製造することもできる。
【0020】
また、本実施形態においては、グアガム分解物と着色料が混合されて製造される限り、飲料に限らず、他の形態の飲食品であってもよい。飲料以外の飲食品としては、一定の形を有する食品(固形食品)や、固形食品よりも液分を多く含有し流動性を有するが、一般に咀嚼される食品(半固形食品)であってもよい。具体的には、ゼリー、ゼリー飲料、ムース、プリン、濃厚流動食などを挙げることができる。
【0021】
以上、本実施形態によれば、グアガム分解物と着色料とを混合して飲食品を製造する場合にあっても当該着色料に含まれる色素の分散安定性を改善できることができる。そのため、グアガム分解物および添加された着色剤を含み、着色剤に含まれる色素が析出していない飲食品を得ることが可能である。
【実施例0022】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0023】
[参考試験]
参考例では食物繊維としてポリデキストロースを使用した。また、比較例1では食物繊維としてグアガム分解物を使用した。また、着色料は、パプリカ色素(ポリグリセリン脂肪酸エステル製剤)を使用した。
表1に食物繊維と着色料をシロップ液中で表1に示す含有量となる量で他の成分とともに水に溶解し、さらにクエン酸酸度が1.54g/100ml、pH3.2、甘味度66.5、Brixは参考例は15.6°Bx、比較例1は10.9°Bx となるよう加水してシロップ液を調製した。
なお、参考例、比較例1ともに、シロップ液のクエン酸酸度は1.54g/100ml、pHは3.2、甘味度は66.5であった。
【0024】
【表1】
【0025】
調製したシロップ液を目視観察した結果、食物繊維としてポリデキストロースを使用した参考例は、色素の安定性に問題は無かった。一方、グアガム分解物を使用した比較例1では、色素の析出が確認され、安定性が損なわれてしまうことが判明した。
また、比較例1のシロップを飲用濃度(1.55°Bx)まで希釈した状態でも、色素が析出していることが確認された。
【0026】
[試験1]
グアガム分解物を含有量10.8 g/L(実施例7については13.5 g/L)、着色料を表2に示す含有量として他の成分とともに水に添加し、表2に示すクエン酸酸度、pH、甘味度、Brixとなるように加水して実施例1~7と比較例2のシロップ液を調製した。
【0027】
【表2】
【0028】
各シロップ液を目視観察した結果、比較例2では、比較例1と同様に色素の析出が確認された。一方で、実施例1~7では、色素の析出は確認されず、安定性に問題は無かった。なお、実施例1~7のシロップ液を水で7倍希釈した状態でも色素の析出は確認できなかった。また、実施例4~6のシロップ液においては色素の析出が発生することなく濁りも生じさせることができた。