(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080088
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】回転レーザ受光システム
(51)【国際特許分類】
G01C 5/00 20060101AFI20240606BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G01C5/00 N
G01C15/00 103C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192981
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
(72)【発明者】
【氏名】高野 祐次
(57)【要約】
【課題】 新たな方法により、回転レーザ装置に関する受光器の方向を取得することが出来きる回転レーザ受光システムを提供する。
【解決手段】 回転レーザ受光システム1は、レーザ光を、測定基準点から所定の高さで水平に一定の速度で回転しながら出射する回転レーザ装置100と、測定点でレーザ光を受光して、測定基準点に対する高低差を検出するレーザ受光器200と、を備える。回転レーザ装置100は、回転照射中にレーザ光が指定方向に向いたときに、トリガ信号を発信し、レーザ受光器200は、トリガ信号を受信した時に、方向検出部40が受光した受光信号を、画素毎の受光光量のマトリクスパターンとして検出し、マトリクスパターンに基いて、回転レーザ装置100に対する受光器200の方向角を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を、測定基準点から所定の高さで水平に一定の速度で回転しながら出射する回転レーザ装置と、
測定点で前記レーザ光を受光して、前記測定基準点に対する高低差を検出するレーザ受光器と、を備える回転レーザ受光システムにおいて、
前記回転レーザ装置は、回転照射中に前記レーザ光が指定方向に向いたときに、トリガ信号を発信する信号送信部を備え、
前記レーザ受光器は、受光センサの受光面が前方に向けて配置され、左右方向に延在し、前記受光センサの画素が2次元のマトリクス状に配列された方向検出部と、前記トリガ信号を受信する信号受信部と、前記トリガ信号を受信した時に、前記方向検出部が受光した受光信号を、前記画素毎の受光光量のマトリクスパターンとして検出し、前記マトリクスパターンに基いて、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出する演算処理部と、記憶部とを備え、
前記記憶部は、予め測定した、前記レーザ受光器が前記回転レーザ装置に対して様々な距離および方向にあるときの前記マトリクスパターンと前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角の対応関係を格納しており、
前記演算処理部は、前記トリガ信号を受信した時の前記レーザ光の発光時間と受光時間の時間差に基いて前記回転レーザ装置から前記レーザ受光器までの距離を算出し、検出されたマトリクスパターンと、前記記憶部に記憶された、前記マトリクスパターンと前記回転レーザ装置に関する方向角との対応関係とを対比することにより、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出することを特徴とする回転レーザ受光システム。
【請求項2】
前記マトリクスパターンと前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角との対応関係は、前記マトリクスパターンと、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角の対応テーブルとして格納されており、
前記演算処理部は、前記トリガ信号を受信した時に検出された前記マトリクスパターンを、前記対応テーブルのマトリクスパターンと対比して、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出することを特徴とする請求項1に記載の回転レーザ受光システム。
【請求項3】
前記マトリクスパターンと前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角との対応関係は、前記マトリクスパターンにおいて特定された前記レーザ光のビーム中心に対応する画素と、前記方向検出部の中心との距離と、前記回転レーザ装置に対する前記レーザ受光器の方向角との対応テーブルとして格納されており、
前記演算処理部は、前記トリガ信号を受信した測定時の、前記レーザ光のビーム中心に対応する画素と、前記方向検出部の中心との距離を、算出した前記回転レーザ装置から前記レーザ受光器までの距離における、前記対応テーブルと照合することにより、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出することを特徴とする請求項1に記載の回転レーザ受光システム。
【請求項4】
前記回転レーザ装置は、複数回の回転において、前記指定方向に向かう毎に前記トリガ信号を発信し、
前記レーザ受光器は、前記トリガ信号を受信する毎に、前記受光光量のマトリクスパターンを検出し、
前記回転レーザ装置を複数回回転させて測定した各画素における前記受光光量を累積したマトリクスパターンを用いて、前記マトリクスパターンと前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角の対応関係を作成し、
前記複数回の回転で検出し、累積した前記マトリクスパターンを用いて前記回転レーザ装置から前記レーザ受光器までの距離を算出し、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の回転レーザ受光システム。
【請求項5】
前記方向検出部は、透明受光素子を備えてなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の回転レーザ受光システム。
【請求項6】
前記方向検出部は、複数の透明受光素子が前後方向に積層されて構成され、
前記演算処理部は、前記レーザ光を受光した時の、各層における受光位置の差異に基づいて、前記レーザ光の進行方向に対する前記レーザ受光器の傾きを算出することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の回転レーザ受光システム。
【請求項7】
前記回転レーザ装置は、電子コンパスをさらに備え、
前記レーザ受光器は、表示部および警告装置を備え、
前記レーザ受光器と、前記回転レーザ装置は通信可能に構成され、
前記レーザ受光器は、前記測定点の設計データに従って、前記回転レーザ装置に前記指定方向を設定し、
前記回転レーザ装置は、前記指定方向に前記レーザ光を照射するとともに、前記トリガ信号を発信し、
前記レーザ受光器が、前記測定点に位置するように、前記表示部および前記警告装置により前記レーザ受光器を保持する作業者を誘導することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の回転レーザ受光システム。
【請求項8】
レーザ光を、測定基準点から所定の高さで水平に一定の速度で回転しながら出射する回転レーザ装置と、
測定点で前記レーザ光を受光して、前記測定基準点に対する高低差を検出するレーザ受光器と、を備える回転レーザ受光システムにおいて、
前記回転レーザ装置は、回転照射中において、前記レーザ光を指定方向に出射する時に、トリガ信号を前記指定方向に発信するように構成され、
前記レーザ受光器は、受光センサの受光面が前方に向けて配置され、左右方向に延在し、前記受光センサの画素が2次元のマトリクス状に配列された方向検出部と、前記トリガ信号を受信する信号受信部と、前記トリガ信号を受信した時に、前記方向検出部が受光した受光信号を、前記画素毎の受光光量のマトリクスパターンとして検出し、前記マトリクスパターンに基いて、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出する演算処理部と、記憶部とを備え、
前記記憶部は、前記マトリクスパターンから前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出する推定モデルを格納しており、
前記演算処理部は、前記トリガ信号を受信した測定時のマトリクスパターンを、前記推定モデルに入力して、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出することを特徴とする回転レーザ受光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転レーザ装置からの水平なレーザ光を受光して高さを計測するための受光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築・土木・内装工事などにおける測量作業において、水平出し(レベリング)のために、回転レーザ装置とレーザ受光器が用いられている。回転レーザ装置は、測定基準点に据え付けられ、レーザ光源を備えた回転ヘッドを、基準とする高さで水平にレーザ光を旋回させる装置である。レーザ受光器は、受光センサを備えた検出体内でレーザ光の入射位置を検出して、レーザ光に対するレーザ受光器の高さ方向(鉛直方向)の位置を検出する。例えば、特許文献1では、受光センサとして複数のフォトダイオードを鉛直な軸線周りに設け、かつ受光センサを鉛直方向に移動可能に構成して、レーザ光を常に受光センサの高さ方向(鉛直方向)中央位置で受光することで、測定基準点からの同じ高さ位置を算出するレーザ受光器が開示されている。
【0003】
また、特許文献2では、回転レーザの回転角度の所定範囲毎に、発光パターンを変え、受光器で検出した際の、パターンに基いて、回転レーザに対する受光器の方向を決定することができる回転レーザ受光システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-27058号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0283397号
【特許文献3】特開2011-100759号公報
【特許文献4】特表平11-505948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の回転レーザ受光システムでは、相対的な方向角がわかるだけであり、回転レーザ装置に関する絶対の方向を検出できないという問題があった。また、特許文献2に記載のシステムによらず、受光器の方向を特定することが可能な回転レーザ受光システムの開発が求められていた。
【0006】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、回転レーザ装置に関する受光器の方向を検出することが可能な新たな回転レーザ受光システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様に係る回転レーザ受光システムは、以下の構成を有する。
1.レーザ光を、測定基準点から所定の高さで水平に一定の速度で回転しながら出射する回転レーザ装置と、測定点で前記レーザ光を受光して、前記測定基準点に対する高低差を検出するレーザ受光器と、を備える回転レーザ受光システムにおいて、前記回転レーザ装置は、回転照射中に前記レーザ光が指定方向に向いたときに、トリガ信号を発信する信号送信部を備え、前記レーザ受光器は、受光センサの受光面が前方に向けて配置され、左右方向に延在し、前記受光センサの画素が2次元のマトリクス状に配列された方向検出部と、前記トリガ信号を受信する信号受信部と、前記トリガ信号を受信した時に、前記方向検出部が受光した受光信号を、前記画素毎の受光光量のマトリクスパターンとして検出し、前記マトリクスパターンに基いて、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出する演算処理部と、記憶部とを備え、前記記憶部は、予め測定した、前記レーザ受光器が前記回転レーザ装置に対して様々な距離および方向にあるときの前記マトリクスパターンと前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角の対応関係を格納しており、前記演算処理部は、前記トリガ信号を受信した時の前記レーザ光の発光時間と受光時間の時間差に基いて前記回転レーザ装置から前記レーザ受光器までの距離を算出し、検出されたマトリクスパターンと、前記記憶部に記憶された、前記マトリクスパターンと前記回転レーザ装置に関する方向角との対応関係とを対比することにより、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出する。
【0008】
2.1の構成において、前記マトリクスパターンと前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角との対応関係は、前記マトリクスパターンと、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角の対応テーブルとして格納されており、前記演算処理部は、前記トリガ信号を受信した測定時のマトリクスパターンを、前記対応テーブルのマトリクスパターンと対比して、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出することも好ましい。
【0009】
3.1または2の構成において、前記マトリクスパターンと前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角との対応関係は、前記マトリクスパターンにおいて特定された前記レーザ光のビーム中心に対応する画素と、前記方向検出部の中心との距離と、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角との対応テーブルとして格納されており、前記演算処理部は、前記トリガ信号を受信した測定時の、前記レーザ光のビーム中心に対応する画素と、前記方向検出部の中心との距離を、算出した前記回転レーザ装置から前記レーザ受光器までの距離における、前記対応テーブルと照合することにより、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出することも好ましい。
【0010】
4.上記1~3の構成において、前記回転レーザ装置は、複数回の回転において、前記指定方向に向かう毎に前記トリガ信号を発信し、前記レーザ受光器は、前記トリガ信号を受信する毎に、前記受光光量のマトリクスパターンを検出し、前記回転レーザ装置を複数回回転させて測定した各画素における前記受光光量を累積したマトリクスパターンを用いて前記マトリクスパターンと前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角の対応関係を作成し、前記複数回の回転における前記トリガ信号を受信した測定時のマトリクスパターンを用いて前記回転レーザ装置から前記レーザ受光器までの距離を算出し、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出することも好ましい。
【0011】
5.上記1~4の構成において、前記方向検出部は、透明受光素子を備えてなることも好ましい。
【0012】
6.上記1~5の構成において、前記方向検出部は、複数の透明受光素子が前後方向に積層されて構成され、前記演算処理部は、前記レーザ光を受光した時の、各層における受光位置の差異に基づいて、前記レーザ光の進行方向に対する前記レーザ受光器の傾きを算出することも好ましい。
【0013】
7.上記1~6の構成において、前記回転レーザ装置は、電子コンパスをさらに備え、前記レーザ受光器は、表示部および警告装置を備え、前記レーザ受光器と、前記回転レーザ装置は通信可能に構成され、前記レーザ受光器は、前記測定点の設計データに従って、前記回転レーザ装置に前記指定方向を設定し、前記回転レーザ装置は、前記指定方向に前記レーザ光を照射するとともに、前記トリガ信号を発信し、前記レーザ受光器が、前記測定点に位置するように、前記表示部および前記警告装置により前記レーザ受光器を保持する作業者を誘導することも好ましい。
【0014】
また、本発明の別の態様に係る回転レーザ受光システムは、以下の構成を備える。
8.レーザ光を、測定基準点から所定の高さで水平に一定の速度で回転しながら出射する回転レーザ装置と、測定点で前記レーザ光を受光して、前記測定基準点に対する高低差を検出するレーザ受光器と、を備える回転レーザ受光システムにおいて、前記回転レーザ装置は、回転照射中において、前記レーザ光を指定方向に出射する時に、トリガ信号を前記指定方向に発信するように構成され、前記レーザ受光器は、受光センサの受光面が前方に向けて配置され、左右方向に延在し、前記受光センサの画素が2次元のマトリクス状に配列された方向検出部と、前記トリガ信号を受信する信号受信部と、前記トリガ信号を受信した時に、前記方向検出部が受光した受光信号を、前記画素毎の受光光量のマトリクスパターンとして検出し、前記マトリクスパターンに基いて、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出する演算処理部と、記憶部とを備え、前記記憶部は、前記マトリクスパターンから前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出する推定モデルを格納しており、前記演算処理部は、前記トリガ信号を受信した測定時のマトリクスパターンを、前記推定モデルに入力して、前記回転レーザ装置に関する前記レーザ受光器の方向角を算出する。
【発明の効果】
【0015】
上記態様によれば、回転レーザ装置に関する受光器の方向および高さを検出することが可能な新たな回転レーザ受光システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る回転レーザ受光システムの外観概略図である。
【
図2】同システムを構成するレーザ受光器の正面斜視図である。
【
図5】上記システムを構成する回転レーザ装置のレーザ光の特性を説明する図である。
【
図6】同回転レーザ装置に関する方向角と、同方向検出部で検出される受光光量のマトリクスパターンとの関係を説明する図である。
【
図7】予め記憶する受光光量のマトリクスパターンと、上記回転レーザ装置に関する方向角(基準方向RDからの角度)の対応関係の例を示す図である。
【
図8】複数回の測定による受光光量の累積を説明する図である。
【
図9】同システムの受光器に傾きがある場合の、受光光量のマトリクスパターンの変化を説明する図である。
【
図10】同システムの受光器に傾きがある場合の、受光光量のマトリクスパターンの変化を説明する図である。
【
図11】同システムにおける高さ検出部の受光センサの詳細を説明する図である。
【
図12】同システムの受光器に傾きがない場合の、高さの変化の検出を説明する図である。
【
図13】同高さ検出部による左右への傾きの変化の検出を説明する図である。
【
図14】同高さ検出部による左右傾斜検出テーブルの一例を示す図である。
【
図15】同システムにおいて、受光器に傾きが有る場合の、高さの変化の検出を説明する図である。
【
図17】同システムを用いた方向検出の動作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施の形態および変形例に共通する同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る回転レーザ受光システム(以下、単にシステムという。)1の外観斜視図、
図2は、受光器200の正面斜視図である。回転レーザ受光システム1は、回転レーザ装置100と、レーザ受光器200(以下、単に受光器という。)を備える。また、併せて
図16も参照されたい。
図16は、システム1の構成ブロック図である。
【0019】
回転レーザ装置100は、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、またはSLED(Super Luminescent Diode)などのレーザ光源を有する回転ヘッド11を備える。回転レーザ装置100は、地面上の測定基準点RPに、整準台を介して設置される。回転ヘッド11は、レーザ光Bとして、所定の周波数に強度変調されたパルス光を出射する。回転ヘッド11は、水平方向に旋回し、レーザ光源からの光を偏向して、測定基準点RPからレベリングに用いる高さHとなる水平基準面を形成するように、レーザ光Bを回転照射する。回転ヘッド11は、回転角検出器としてロータリエンコーダを備え、基準方向RDからの回転角度を検出できるようになっている。
【0020】
回転レーザ装置100は、後述するように、回転ヘッド11と、制御部12と、電子コンパス13と、信号送信部14とを備え、レーザ光Bを指定された方向に出射する時に、トリガ信号を発信する。
【0021】
受光器200は、
図1に示すように、測定点Xの真上で、ハンドル22によって作業者Wに支持される。あるいは、ブルドーザ等に既知の固定具を使用して支持されていてもよい。
【0022】
また、受光器200は、ケース21と、ハンドル22と、表示部26と、操作部27と、発光インジケータ28と、高さ検出部20と、方向検出部40とを備える(
図16参照)。
【0023】
図2に示すように、高さ検出部20は、それぞれが同じ構成を有する、第1の鉛直受光管23、水平受光管24、および第2の鉛直受光管25を備える。高さ検出部20および方向検出部40は、ケース21の前面に配置されている。発光インジケータ28は、ケース21の上面など、作業者Wに視認されやすい位置に配置されている。ハンドル22は、ケース21の後面に左右一対に配置されている(
図2では正面視左のハンドルは見えない状態となっている)。同様に、
図2では見えない状態となっているが、表示部26および操作部27は、ケース21の背面に配置されている。
【0024】
第1のおよび第2の鉛直受光管23,25は、軸方向が鉛直方向となるように平行に配置される。水平受光管24は、第1のおよび第2の鉛直受光管23,25と直交して配置される。第1の鉛直受光管23、水平受光管24、および第2の鉛直受光管25は、第1のおよび第2の鉛直受光管23,25の夫々の長さLの中央位置M、Mに水平受光管24の中心軸が通るように配置され、受光器中心Cが水平受光管24の長さLの中央位置Mと合致するように、「H型」に配置されている。
【0025】
一方、方向検出部40は、高さ検出部20の左右方向に延在する細幅の柱状の形状を有し、高さ検出部20の前面に取り付けられている。
【0026】
まず、方向検出部40の構成の詳細および方向検出の仕組みを、
図2~6を参照しながら説明する。方向検出部40は、ポリカーボネートやアクリル等の透明樹脂製の透明カバー41と受光センサ42とを備える。方向検出部40は、
図2に示すように、水平受光管24の軸線方向に沿って、正面視で、中心C
40が受光器中心Cと合致するように、第1の鉛直受光管23、水平受光管24、および第2の鉛直受光管25の前面に設けられている。図示の例では、第1の鉛直受光管23の左側端部から第2の鉛直受光管25の右側端部まで延在しているが、方向検出部40の上下左右方向の長さは特に限定されない。
【0027】
図3は、方向検出部40の模式拡大図であり、
図4は、受光センサ42を構成する透明受光素子43の一部の拡大図である。受光センサ42は、透明受光素子43が前後方向に多層(図示の例では4層)積層されて構成されている。透明受光素子43としては、例えば特許文献3、特許文献4に記載されているような、既知の透明受光素子を用いることができる。本例では、
図4に示すように、透明基板411上に設けられた透明電極412に、電子伝達タンパク質層413を固定化し、この電子伝達タンパク質層413と電解質層414を介して対向するように透明対極415を設けたタンパク質透明受光素子を用いている。
【0028】
透明基板411の材料としては、例えば、ガラス、雲母(マイカ)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの各種の無機または有機の透明材料を用いることができる。
透明電極412の材料としては、例えば、ITO(インジウム-スズ複合酸化物)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ネサガラス(SnO2ガラス)などの透明金属酸化物のほか、光の透過が可能な極薄い金属膜、例えばAu膜などを用いることができる。
【0029】
電子伝達タンパク質層413の電子伝達タンパク質としては、具体的には、例えば、シトクロム類、鉄-硫黄タンパク質類、ブルー銅タンパク質類などを用いることができる。シトクロム類としては、シトクロムc(亜鉛置換シトクロムc、金属フリーシトクロムcなど)、シトクロムb、シトクロムb5、シトクロムc1、シトクロムa、シトクロムa3、シトクロムf、シトクロムb6などが挙げられる。
【0030】
透明対極415の材料としては、例えば、ITO、FTO、ネサガラスなどの透明金属酸化物のほか、光の透過が可能な極薄い金属膜、例えばAu膜などを用いることができる。
【0031】
電解質層414の電解質としては、電子伝達タンパク質層413が透明電極412で酸化反応が起こり、透明対極415で還元反応が起こるもの、または、透明電極412で還元反応が起こり、透明対極415で酸化反応が起こるものが用いられる。具体的には、例えば、K4[Fe(CN)6]や[Co(NH3)6]Cl3などが用いられる。
【0032】
図4は、透明受光素子43のN(Nは自然数)番目の層とN+1番目の層の透明基板411を部分的に表している。
図4に示すように、透明受光素子43のN番目の層の透明基板411と(N+1)番目の層の透明基板411との間には、透明基板と同様の素材で構成される透明なスペーサ416が設けられており、スペーサ416により画素44が区画されている。
図3に示すように、透明受光素子43の各層に、画素44が2次元のマトリクス状に配列されており、各画素の位置が特定できるようになっている。
【0033】
透明受光素子43では、入射したレーザ光Bの受光光量が、受光信号として検出され、信号の取り出しや処理は、従来公知の技術を用いることができる。受光光量が電気信号として取り出される。
【0034】
次に、方向検出部40を用いた方向の検出について説明するが、それに先立って、回転レーザ装置100のレーザ光Bの特性について説明する。レーザ光Bのビームは、
図5(A)に示すように、中央が強く外側に向かって弱くなる強度分布を有する。また、
図5(B)に示すように、レーザ光Bのビームは、光源(回転レーザ装置100)から遠ざかるほど大きくなる。また、
図5(C)に示すように、レーザ光Bのビームの照度は、光源(回転レーザ装置100)からの距離の2乗に反比例して小さくなる。
【0035】
図6は、回転レーザ装置100の回転と、方向検出部40で検出される受光光量のマトリクスパターンとの関係を、模式的なマトリクスパターンを用いて説明する図である。以下、マトリクスパターンの図において、色の濃淡は、受光光量の大小を示す。回転レーザ装置100は、回転ヘッド11を、例えば
図6(A)の矢印Aの方向に旋回させながら、レーザ光Bを出射して全周方向に照射する。回転レーザ装置100は、電子コンパス13を備え、例えば北を基準方向RD(0°)とする方位角を把握できるようになっている。以下、回転レーザ装置100の方向とは、回転中の回転ヘッド11の出射口の向かう方向、すなわち、レーザ光Bの照射方向を言う。回転レーザ装置100が、基準方向RDから角度θxの方向Dxを向いているとき、
図6(B)に示すように、回転レーザ装置100から所定距離d離れた円周上での全周方向の光量は、Dx方向とその周囲のみが大きく、その他の方向は小さくなる。
【0036】
回転レーザ受光システム1では、回転レーザ装置100が、レーザ光Bを回転照射している回転ヘッド11の出射口が指定方向に向いたときに、トリガ信号を発信する。指定方向は、方位角として指定される方向であり、回転レーザ装置100に関する測定点Xの方向である。回転レーザ装置100は、電子コンパス13により、回転ヘッド11の出射口の向く方向(レーザ光Bの出射方向)が検出可能となっており、指定方向に向いたときを把握することができる。一方、受光器200では、トリガ信号を受信した時に、測定が行われるようになっている。仮に、Dx方向を指定方向に設定した場合、回転レーザ装置100がDx方向に向いたときにトリガ信号が発信される。受光器200が回転レーザ装置100に正対していると仮定すると、
図6(A)のDx方向周辺の角度位置P1、P2、P3(すなわち、Dx方向)、P4、P5それぞれで、作業者Wが、受光器200(方向検出部40)を回転レーザ装置100に向けて配置したと仮定すると、トリガ信号を受信した時の、各角度位置におけるマトリクスパターンは、
図6(C)に示す通りである。
【0037】
トリガ信号とレーザ光Bは共に電磁波であり、速度は等しい。トリガ信号受信時に検出される光は、指定方向に出射されたレーザ光Bである。したがって、トリガ信号が発信された時の方向検出部40の受光センサ42の受光面におけるマトリクスパターンは、回転レーザ装置100に対する方向角に応じて変化する。また、トリガ信号の発信時間(すなわち、回転レーザ装置100の発光時間)と方向検出部40の受光時間との時間差から回転レーザ装置100から受光器200まで距離を算出することが可能になっている。また、予め、工場出荷時または初期設定時に、様々な方向(例えば、指定方向の)および距離(例えば、回転レーザ装置100からの距離が、10m,20m、30m・・・)についてのマトリクスパターンを測定し、マトリクスパターンと、受光器の回転レーザ装置100に対する方向角との対応関係に基づいて、測定して得られるマトリクスパターンから回転レーザ装置100に対する方向角を算出できるようになっている。
【0038】
具体的には、例えば、
図7(A)の様な、マトリクスパターンと、回転レーザ装置100に関する受光器200の方向角(基準方向RDからの角度)との対応関係を、様々な距離について測定し、マトリクスパターンと、方向角の対応テーブルとして、受光器200の記憶部33に記憶させておく。そして、受光器200が、トリガ信号を受信した時に、演算処理部31で、発光時間と受光時間との時間差に基づいて、回転レーザ装置100から受光器200までの距離を算出する。また、トリガ信号を受信した時に検出したマトリクスパターンと、記憶部33に記憶されたマトリクスパターンとを、パターンマッチング等の手法により照合し、回転レーザ装置100に関する受光器200の方向角を算出する。
【0039】
あるいは、マトリクスパターンと基準方向RDからの角度との対応関係を、
図7(B)に示すような対応表として記憶部33に記憶してもよい。具体的には、
図6(C)に示す、マトリクスパターンにおいて、ビーム中心と推定される、強度が最大となる画素の位置N(強度が最大となる領域が複数の画素を含む場合は、複数の画素の中心)と方向検出部40の受光センサ42の中心C
40との間の距離D
NCと、発光時間と受光時間との時間差に基づいて求められる回転レーザ装置100から受光器200までの距離から、基準方向RDからの角度を求めて、NC間の距離D
NCと、基準方向RDからの角度との対応表として記憶部33に記憶しておいてもよい。ビーム中心の画素44
Bは、回転レーザ装置100と受光器200との距離と、回転レーザ装置100の出力とから推定される受光光量とから推定することができる。この場合、受光器200がトリガ信号を受信して、マトリクスパターンを測定したときに、演算処理部31は、強度が最大となる画素Nと方向検出部40の受光センサ42の中心C
40との水平距離D
NCを算出し、検出された対応する角度を算出する。
【0040】
あるいは、様々な距離および方向で測定したマトリクスパターンの画像と、その場合の基準方向RDからの角度と距離を教師データとして、ロジスティック回帰、サポートベクタ―マシン等のアルゴリズムにより機械学習をおこない、回転レーザ装置100に関する受光器200の方向角および回転レーザ装置100から受光器200の距離を推定する推定モデルを作成し、これを記憶部33に記憶しておいてもよい。そして、受光器200がトリガ信号を受信して、マトリクスパターンを測定したときに、演算処理部31は、得られたマトリクスパターンを推定モデルに入力して、回転レーザ装置100に関する受光器200の方向角を演算するようにしてもよい。
【0041】
図8は、複数回回転させて、測定を行った場合の、受光光量を累積した状態を説明する図である。
図8より、回転数を重ねる毎に、受光光量が累積され大きくなることがわかる。上記のように、最初のトリガ信号に合わせた1回の測定だけでも、指定方向からのずれを算出することが可能である。しかし、回転レーザ装置100を複数回回転させ、指定方向を向くたびに、測定を行い、受光光量を累積して、マトリクスパターンを再構築し、これを用いて角度(方向)の算出を行ってもよい。このようにすることで、誤差を平均化し、算出精度を高めることができる。また、光量を累積することで、距離が遠く、1回の測定では光量が不足する場合でも、十分な光量を検出することができるので、測定可能範囲が増大する。
【0042】
また、方向検出部40は、透明受光素子43を奥行方向に複数層備えているため、受光器の回転レーザ装置100に対する方向のみならず、レーザ光Bの進行方向に対する受光面の傾き、具体的には、上下の前後方向の傾き、および、左右の前後方向の傾きを検出することが可能である。
【0043】
以下、詳細について述べる、
図9は、方向検出部40の検出状態を側面から見た図である。
図9(A)は、レーザ光Bに対して傾きがない場合(すなわち、受光器200が、回転レーザ装置100と正対する場合)の、方向検出部40の検出状態を示す図であり、
図9(B)は、レーザ光Bに対して、受光器200が前傾している場合、
図9(C)は、レーザ光Bに対して、受光器200が後傾している場合の、方向検出部40の受光状態を示す。また、
図9(D),(E)はそれぞれ
図9(B),(C)の状態の傾きを説明する図である。
図10は、方向検出部40の検出状態を上から見た図である。
図10(A)は、レーザ光Bの進行方向に対して傾きがない場合(すなわち、受光器200が、回転レーザ装置100と正対する場合)の、方向検出部40の検出状態を示す図であり、
図10(B)は、レーザ光Bの進行方向に対して、受光器200の右側が前傾している場合、
図10(C)は、レーザ光Bに対して、受光器200の左側が前傾している場合の、方向検出部40の受光状態を示す。また、
図10(D),(E)はそれぞれ
図10(B),(C)の状態の傾きを説明する図である。
【0044】
図9(A)に示すように、受光器200が鉛直に保持されて、方向検出部40が回転レーザ装置100に正対している場合、レーザ光Bは、各層の同じ位置を進行するが、光量は透明受光素子43の層を通過するにしたがって減衰される。光が通過する位置は、各層において同じであるため、全体のパターンとしては、透明受光素子43の全ての層で、最前層の透明受光素子43と同等のマトリクスパターンを示す。
【0045】
一方、
図9(B)に示すように、受光器200(すなわち方向検出部40)が、回転レーザ装置100に向かって前傾している場合、レーザ光Bは、透明受光素子43の層を通過するにしたがって、下方のマスを通るようにずれる。また、光量は、透明受光素子43の層を通過するにしたがって減衰される。この結果、各層のマトリクスパターンは、前方の層から後方の層に向かうにしたがって、全体の光量が小さくなると共に、全体のパターンが下方へとずれたマトリクスパターンを示す。
【0046】
ここで、各透明受光素子43の画素の位置は把握できるようになっているため最前層の入射位置A1と最後層の入射位置A2の位置は算出することができる。また、A3A2の距離(すなわち受光センサ42の厚み)を既知としておけば、A1A3/A2A3が、鉛直方向の傾斜角βに等しい角∠A1A2A3の正接となり、傾斜角βを求めることが可能である。求めた傾斜角と、三角関数および行列等の公知の方法用いて、各画素の受光光量を補正することにより、算出する回転レーザ装置100に対する受光器200の方向角を補正することができる。
【0047】
また、
図9(C),
図9(E)からも同様にして、受光器200が後傾した場合の傾斜角γを求めることができる。上記方法により、受光器200が、レーザ光Bの照射方向に対して鉛直方向に傾いている場合にも、その傾斜角を求め、該傾斜角を用いて検出したマトリクスパターンを正対している状態に補正することが可能となる。この結果、方向の検出精度が向上する。
【0048】
図9では、レーザ光Bの進行方向に対して、受光器200の受光面が、水平軸まわりに前後に傾斜した場合を説明したが、
図10(A)~(E)に示す、受光器200の受光面が、鉛直軸周りに前後に傾斜した場合についても同様にして傾斜角ε,ζを求めることが可能である。
【0049】
このように、本実施の形態に係る受光器200では、受光センサ42が、複数の層の透明受光素子43が積層されて構成されているため、受光センサ42の表面(最前面)からの奥行き方向の受光パターンを把握できる。各層における受光パターン、すなわち、各層における受光位置に基づいて方向検出部40(すなわち受光器200)レーザ光Bの進行方向に対する傾斜角を求めることができる。これにより、位置・方向算出部315で算出する回転レーザ装置100に関する受光器200の方向角における誤差を補正することが可能である。また、このようにして得られる受光器200の傾きを、高さ検出部20による高さの検出値を補正するために用いてもよい。
【0050】
次に、高さ検出部20について説明する。
第1の鉛直受光管23、水平受光管24、第2の鉛直受光管25は、上述した通り、全て同一の構成を有するため、第1の鉛直受光管23を用いて高さ検出部20の機構を説明する。
図11は、第1の鉛直受光管の側面を示す図である。
図11において、左がケース21の前面であり、レーザ光Bを受光する側である。第1の鉛直受光管23および第2の鉛直受光管25の中央位置M、水平受光管24の中央位置M、および水平受光管24にある受光器中心Cの位置関係は、予め計測され、既知の数値として記憶部33に記憶されている。
【0051】
第1の鉛直受光管23は、円柱状の導光体231と、導光体231の両端部に配置された一対の受光部232,233とを備える。受光部232,233は、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード(APD)等の光電変換素子である。受光部232,233が検出した各受光信号は、後述する演算処理部31で処理される。導光体231は、軸方向の長さLを有する、円柱、楕円柱、その他の内面を全反射することによる導光を可能な柱状体である。導光体231を構成する材料は、例えば、ガラスや石英、または、アクリルやポリカーボネート等の樹脂等の透明材料である。
【0052】
導光体231の表面には、光結合層234が形成されている。光結合層234は、例えば、蛍光粒子を液体に分散させた塗料を導光体231の表面に塗布するか、または、蛍光粒子を含有する樹脂層を導光体231の表面に設けることで、形成される。
【0053】
図11に示すように、レーザ光Bが導光体231に衝突すると、衝突位置235において、レーザ光Bは、光結合層234によって導光体231に結合され、第1の受光部232へ向かうレーザ光B1と、第2の受光部233に向かうレーザ光B2に分割される。衝突位置235が中央位置Mである場合、レーザ光B1が進行した距離L1と、レーザ光B2が進行した距離は同じであるため、受光部232,233の受光信号の波形は一致する。一方、衝突位置235が、中央位置Mからずれると、レーザ光B1、B2の進行する距離L1,L2は異なるため、受光部232,233の受光信号の波形にズレが生じる。
【0054】
例えば、
図11では、衝突位置235が中央位置Mより上で、距離L1が距離L2よりも短いため、受光部232の受光信号に対して、受光部233の受光信号に遅れが生じる。演算処理部31では、これらの受光信号の時間差または位相差と、長さLと、導光体231の光伝播速度から、距離L1、L2を算出して、衝突位置を特定する。また衝突位置235は、中央位置Mを境としてどちら側にあるかと、衝突位置の中央位置からの差分距離Dを長さLと距離L1又はL2から算出する。例えば、
図9であれば、L/2-1又はL2-L/2からDを求める。
【0055】
図12は、受光器200に傾きがない場合の、高さの変化の検出を説明する図である。受光器に傾きがない場合、
図12の(1)に示すように、受光器中心Cの高さがレーザ光Bより上になった場合、第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25は共に、衝突位置235が中央位置Mより下にずれ、それぞれの受光部232,233、受光部252、253での受光信号にずれが生じ、中央位置Mに対して下の受光部233(253)側にマイナスの差分距離D23,D25が検出される。
【0056】
一方、
図12の(2)に示すように、受光器中心Cの高さがレーザ光Bより下になった場合、第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25は共に、衝突位置235が中央位置Mより上にずれ、中央位置Mに対して下の受光部233(253)側にプラスの差分距離D23,D25が検出される。
【0057】
すなわち、第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25の差分距離D23,D25が、同じ値で、ともにマイナス値の場合は、レーザ光Bの高さHを基準として、受光器中心Cの高さが差分距離D23(D25)だけ上に移動しているので、測定点Xが、測定基準点RPに対してD23(D25)と同量の差分距離だけ高くなったことが分かる。第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25の差分距離D23が,25が共にプラス値の場合、受光器中心Cの高さが差分距離D23(D25)だけ下に移動しているので、測定点Xも、測定基準点RPに対してD23(D25)と同量のDだけ低くなったことが分かる。
【0058】
図13~15は、受光器200に傾きが有る場合の、高さの変化の検出を説明する図である。まず、
図13は受光器200による左右への傾きの変化の検出を説明する図である。
図13の(1)に示すように受光器200が左へ傾いた場合、第1の鉛直受光管23では衝突位置235が中央位置Mより上にずれ、中央位置Mに対して上の受光部232側にプラスの差分距離D23が検出され、第2の鉛直受光管25では衝突位置235が中央位置Mより下にずれ、中央位置Mに対して下の受光部253側にマイナスの差分距離D25が検出される。
図13の(2)に示すように受光器200が右へ傾いた場合、第1の鉛直受光管23では衝突位置235が中央位置Mより下にずれ、中央位置Mに対して下の受光部233側にマイナスの差分距離D23が検出され、第2の鉛直受光管25では衝突位置235が中央位置Mより上にずれ、中央位置Mに対して上の受光部252側にプラスの差分距離D25が検出される。
【0059】
すなわち、第1の鉛直受光管23の差分距離D23がプラス値、第2の鉛直受光管25の差分距離D25がマイナス値の場合は、受光器200は左に傾いていると分かる。第1の鉛直受光管23の差分距離D23がマイナス値、第2の鉛直受光管25の差分距離D25がプラス値の場合は、受光器200は右に傾いていること分かる。
【0060】
このとき、差分距離D23(D25)は、左右傾斜が大きくなるほど長くなり、差分距離D23(D25)と傾斜角δの値は一対一で対応することが分かる。このため、差分距離D23(D25)と左右の傾斜角δの対応関係を記憶した左右傾斜検出テーブル342を作成しておくことで、左右の傾斜角δは、差分距離の値に応じて算出することができる。
図14は分解能0.5mm単位とした場合の左右傾斜検出テーブル342を例示している。左右傾斜検出テーブル342では、鉛直受光管23(25)の中央位置Mを0[mm]とし、中央位置Mを境に上の受光部232(252)側で検出された差分距離D23(D25)をプラス、中央位置Mを境に下の受光部233(253)側で検出された差分距離D23(D25)をマイナスとし、各差分距離D23(D25)に対応する傾斜角δが記憶されている。
【0061】
以上により左右の傾斜角δが分かると、受光器200に傾きが有る場合の、高さの変化の検出ができる。
図13は受光器200に傾きが有る場合の、高さの変化の検出を説明する図である。受光器200が左右に傾いた状態で、受光器200高さが変わった場合は、水平受光管24のレーザ光Bの衝突位置235が中央位置Mからずれ、水平受光管24の受光部242,243での受光信号にズレが生じ、中央位置Mからの差分距離D24が検出される。受光器中心Cの高さ変化hは、三角関数を用いて下記の数式から求められる。
【0062】
【数1】
但し、 h:高さ変化、
D:水平受光管が検出した差分距離、
δ:レーザ受光器の左右方向の傾斜角、
である。
【0063】
さらに、水平受光管24の中央位置Mを境に左の受光部242側をマイナス、右の受光部243側をプラスとすると、
図15の(1)に示すように、受光器200が左に傾き、衝突位置235が受光器中心Cより上にずれた場合、受光部243側に差分距離D24はプラスの値が出る。
図15の(2)に示すように、受光器200が左に傾き、衝突位置235が受光器中心Cより下にずれた場合、受光部242側に差分距離D24はマイナスの値が出る。
図15の(3)に示すように、受光器200が、右に傾き、衝突位置235が受光器中心Cより上にずれた場合、受光部242側に差分距離D24はマイナスの値が出る。
図15の(4)に示すように、受光器200が、右に傾き、衝突位置235が受光器中心Cより下にずれた場合、受光部243側に差分距離D24はプラスの値が出る。
【0064】
すなわち、左への傾きか右への傾きかは第1の鉛直受光管23および第2の鉛直受光管
25の差分距離のプラスマイナスから検出できるから、
図15の(1):左へ傾き水平受光管24でプラスの差分距離D24が出た時および
図15の(3):右へ傾き水平受光管24でマイナスの差分距離D24が出た時は、レーザ光Bの高さHを基準にして、受光器200(の受光器中心C)の高さが、数式1で求まる高さ変化hだけ下に移動しているので、測定点Xも測定基準点RPに対して高さ変化hだけ低くなったことが分かる。
図15の(2):左へ傾き水平受光管24でマイナスの差分距離D24が出た時および
図15の(4):右へ傾き水平受光管24でプラスの差分距離D24が出た時、レーザ光Bの高さHを基準にして、受光器200(の受光器中心C)の高さが、数式1で求まる高さ変化hだけ上に移動しているので、測定点Xも測定基準点RPに対して高さ変化hだけ高くなったことが分かる。
【0065】
以上を踏まえて、
図16は回転レーザ受光システム1の構成ブロック図である。回転レーザ装置100は、前述の通り、レーザ光Bを出射する回転ヘッド11と、制御部12と、電子コンパス13と、クロック15と、通信部16と、信号送信部14とを備える。
回転ヘッド11は、レーザ光源と、モータ(図示せず)により回転駆動される偏向ミラーとを備え、旋回しながら出射口からレーザ光Bを全周へ出射する。上述したように、回転ヘッド11は、回転角検出器としてのロータリエンコーダを備え、基準方向RDからの回転角を検出できるようになっている。制御部12は、例えば、少なくとも1つのプロセッサ(例えばCPU)と、少なくとも1つのメモリ(例えばSRAM,DRAM)を備える演算処理ユニットである。プロセッサは、図示しない記憶装置に格納された回転レーザ装置100を制御するための種々のプログラムをメモリに読み出して実行することで回転レーザ装置100を制御する。
【0066】
制御部12は、回転ヘッド11のモータによる回転と、光源の発光とを制御する。回転ヘッドを指定方向で停止して、レーザ光Bを出射するとともに、指定方向に向けてトリガ信号を発信させるように、信号送信部14を制御する。また、回転ヘッド11が設定された指定方向に向いたときに、トリガ信号を発信するように信号送信部14を制御する。指定方向は、通信部16を介して、受光器200又は他の端末から指定できるようになっている。
【0067】
電子コンパス13は、いわゆる磁気コンパスであり、地磁気を利用して、方位を検出する。電子コンパス13は、回転ヘッド11に取り付けられており、出射口の向きを検出する。制御部12は、電子コンパス13の検出結果に基づいて、回転ヘッド11が指定方向に向けられたときにトリガ信号を発信する。
【0068】
信号送信部14は、制御部12の制御により、トリガ信号を発信する。トリガ信号は、受光器200の方向検出部40の測定をトリガする信号であり、発信時間の情報を含む信号である。また、レーザ光Bのパルスは、トリガ信号と同期して出射されるようになっている。
【0069】
クロック15は、例えば水晶発振子である。通信部16は、いわゆる通信制御装置であり、WiFiやBluetooth(登録商標)等により、受光器200とのトリガ信号以外の情報の送受信を可能とする。
【0070】
一方、受光器200は、演算処理部31と、記憶部33と、高さ検出部20と、方向検出部40と、記憶部33と、発光インジケータ28と、ブザー32と、表示部26と,操作部27と、信号受信部34と、クロック35と、通信部36とを備える。
【0071】
上述した通り、高さ検出部20は、(第1の鉛直受光管23の)受光部232,233と、(第2の鉛直受光管25の)受光部252,253と、(水平受光管24の)受光部242,243とを備える。
【0072】
演算処理部31は、少なくとも1つのプロセッサおよびメモリ(RAM(Random・Access・Memory),ROM(Read・Only・Memory)等)を備える。演算処理部31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を集積回路に実装した集積回路、集積回路の集合、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサを含むものである。また、プロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)などの電子回路により構成されていてもよい。
【0073】
演算処理部31は、機能部として、位置合わせ部311、傾斜・高さ変化算出部312、クロック同期部313、測定点誘導部314、方向・位置算出部315を備える。
【0074】
傾斜・高さ変化算出部312は、第1の鉛直受光管23、水平受光管24、第2の鉛直受光管25のそれぞれの受光部232.233,242,243,252,253から受光信号を受け取り、それぞれの差分距離D23,D24,D25を、プラス値かマイナス値かも含めて検出して、測定点Xの高低差を測定する。
【0075】
位置合わせ部311は、傾斜・高さ変化算出部312が上記の検出を行えるように、高低差の測定開始時に、回転レーザ装置10の直近に受光器200を配置して、回転レーザ装置10と受光器200の位置合わせを、すなわちレーザ光Bと受光器中心Cの位置合わせを行う。作業者Wは、図示しない水平気泡管などをガイドに受光器200を直立水平に保ち、操作部27から位置合わせを指示する。位置合わせ部311は、レーザ光Bが受光器中心Cに衝突しない場合、表示部26に受光器中心Cとの差(鉛直方向の差は鉛直受光管23,水平方向の差は水平受光管24で検出できる)を矢印などを用いて測定が可能な範囲に上下・左右に誘導し、また、発光インジケータ28を点滅および/またはブザー32の信号音を鳴らし、作業者Wに通知する。
【0076】
位置合わせ後、位置合わせ部311は、傾斜・高さ変化算出部312が上記の検出パターン7の1~検出パターン7の4を行えるように、水平受光管24の受光部242,243から受光信号が届いているかを常に検出する。受光信号が届かない場合は、上記の検出パターン7の1~検出パターン7の4を行えないので、発光インジケータ28を点滅および/またはブザー32の信号音を鳴らす。
【0077】
クロック同期部313は、回転レーザ装置100のクロックと、レーザ受光器200のクロック35を同期させる。クロック同期の方法は、公知の手法を用いることができる。
【0078】
測定点誘導部314は、測定に先だって測定点Xまで作業者を誘導する。具体的には、記憶部33に記憶した、または、通信部36を介して外部(例えば、作業者の事務所のサーバ)から取得した、設計データに含まれる測定点データに基づいて、回転レーザ装置100に指定方向を設定し、回転レーザ装置100に、レーザ光Bを指定方向へ出射するように指示する。
【0079】
方向・位置算出部315は、トリガ信号を受信した時に受光信号を測定して、受光光量のマトリクスパターンを取得し、マトリクスパターンに基づいて、回転レーザ装置100に関する受光器200の方向角を算出する。また、トリガ信号には、トリガ信号送信時のクロック35の時刻情報が含まれており、トリガ信号を受信したときに、レーザ光Bの発光時間(トリガ信号の送信時刻)と受光時間(トリガ信号の受信時刻)の時間差から回転レーザ装置100から受光器200の距離を算出する。また、算出した回転レーザ装置100に関する受光器200の方向角、回転レーザ装置100から受光器200まで距離、および回転レーザ装置100の設置点(3次元座標が既知の測定基準点RP)の座標から受光器200の座標を算出する。
【0080】
記憶部33は、例えば、HDD(Hard・Disc・Drive)等を備える。記憶部33は、演算処理部31の行う各処理プログラムおよび受光光量のマトリクスパターンと、回転レーザ装置100に対する受光器200の方向角(基準方向RDからの角度)との対応関係を格納している。
【0081】
発光インジケータ28およびブザー32は、演算処理部31(後述する位置合わせ部311)に制御されて、点滅発光および/または信号音を鳴らし、回転レーザ装置10と受光器200の位置合わせを行うよう誘導する。また、方向検出時に、測定点誘導部314に制御されて、受光器200が測定可能位置にない場合に、点滅発光および/または信号音を鳴らし、測定可能位置に配置されるように作業者Wを誘導する。発光インジケータ28およびブザー32は、特許請求の範囲における警告装置に相当する。
【0082】
表示部26は液晶または有機ELディスプレイであり、傾斜検知、高さ変化検知および方向検出の表示をする。操作部27はボタンやスイッチであり、傾斜検知、高さ変化および方向検知の際の操作が行える。受光部232,233(第1の鉛直受光管23のもの)、受光部252,253(第2の鉛直受光管25のもの)および受光部242,243(水平受光管のもの)は前述の通りであり、それぞれ、受光信号を演算処理部31に送る。
【0083】
信号受信部34は、回転レーザ装置100からのトリガ信号を受信する。信号受信部34に代えて、または加えて、回転レーザ装置100との種々の情報の送受信を可能とする、通信部として、ネットワークアダプタ、ネットワークインタフェースカード、LANカード,Bluetooth(登録商標)アダプタ等の通信制御装置を備えていてもよい。
【0084】
図17は、方向検出時の回転レーザ装置100および受光器200の動作のフローチャートである。それぞれの動作は、回転レーザ装置100の制御部12および受光器200の演算処理部31の制御により実行される。また、高さ検出のための位置合わせは、方向検出の開始に先立って行っているものとする。
【0085】
方向検出を開始すると、ステップS01で、回転レーザ装置100では、測定方向(真北からの指定角度)の指定を行う。測定方向は、測定点Xの設計データから求められる、測定点Xの回転レーザ装置100に対する基準方向からの方向角である。測定方向の指定は、受光器200の表示部26および操作部27を介してできるようになっていてもよく、受光器200の通信部36を介して、他の端末装置等から指定できるようになっていてもよい。ここで指定される方向が、回転レーザ装置100におけるトリガ信号を発する指定方向となる。
【0086】
次に、ステップS02で、回転レーザ装置100は、指定方向に向けて回転ヘッド11を回転させ、指定方向に回転ヘッド11を停止させ、指定方向にレーザ光Bを照射する。同時に、トリガ信号を所定の間隔で指定方向に発信する。
【0087】
一方、受光器200を持つ作業者Wは、レーザ光Bをガイドとして、受光器200の方向検出部40を回転レーザ装置100に向けて保持し、方向検出部40でレーザ光Bを受光するようにしながら測定点Xの近傍へ移動する。受光器200は、ステップS11でトリガ信号を受信したかどうかを判定し、受信すると(Yes)、ステップS12で、測定点誘導部314が測定点Xへの誘導を開始する。
【0088】
具体的には、トリガ信号を受信すると、測定点誘導部314が、方向検出部40で受光したレーザ光Bの発光時間(トリガ信号発信時間)および受光時間(トリガ信号受信時間)の時間差から距離を算出し、マトリクスパターンに基づいて方向を検出する。これにより、測定点誘導部314は、受光器200の位置座標を算出して、設計データ上の測定点Xと算出された現在位置の差を算出し、これを表示部26に表示することにより、作業者Wが測定点Xに向かうようにする。あるいは発光インジケータ28の点灯、点滅や色の変化により、誘導を行うようになっていてもよい。または、選択的に、または同時に、測定点Xから離れるほど、ブザー32の音量が上がるなど、ブザー32の周波数や音量などにより作業者Wを誘導する。また、方向検出部40が、レーザ光B受光していない場合も、発光インジケータ28を赤で点滅させる、および/またはブザー32で警告音を発する等により警告を発する等して、作業者Wが、方向検出部40がレーザ光Bを、状態を保持しながら測定点X近傍の方向検出可能範囲に誘導する。作業者Wは、受光器200が方向検出可能範囲に入ると、ステップS13に進み、方向検出準備完了の旨を回転レーザ装置に報知する。
【0089】
これを受けて、回転レーザ装置100は、レーザ光Bの回転照射を開始するとともに、指定方向毎にトリガ信号を発信する。
【0090】
そして、ステップS14で、受光器200がトリガ信号を受信した時にレーザ光Bの受光している(受光信号が検出される)場合(Yes)、ステップS16で測定を実行する。この時、測定の実行を作業者Wに知らせるために、発光インジケータ28が青に発光するようになっていてもよい。一方、受光器200がトリガ信号を受信した時にレーザ光Bの受光信号が検出されない場合(No)、ステップS15で、発光インジケータ28を赤で点滅させる、および/またはブザー32で警告音を発する等により警告を発する。警告を受けた作業者は、受光信号が検出されるまで、受光器200を保持して移動して位置を調整し、受光信号を検出できるようにする。
【0091】
ステップS16の測定が終わると、ステップS17で、方向・位置算出部315は、受光器200の回転レーザ装置100に関する方向角を算出すると同時に、レーザ光B方向に対する受光器200の傾きを補正値として算出する。また、得られる受光器200の傾きを用いて受光器200の方向角を補正して正確な方向角を算出する。
【0092】
次に、ステップS18で、高さ検出部20を用いて、レーザ光Bの入射位置の高さを検出し、ステップS19で、高さを算出する。高さの検出および算出方法の詳細は上記した通りであるためここでは説明を省略する。ステップS16の方向の測定と、ステップS18の高さの測定は同時に実行されてもよい。
【0093】
高さの算出が終わると、ステップS20で、測定を終了し、測定の終了を回転レーザ装置100へ報知する信号を送信し、その後処理は終了する。
【0094】
このように、本実施の形態に係る回転レーザ受光システム1では、受光器200の前面に、左右方向に延在し、2次元のマトリクス状の画素を備える方向検出部40を備え、受光器200を回転レーザ装置100に向けた状態で、回転レーザ装置100が指定された方向を向いたときに発信するトリガ信号を受信して、受光光量のマトリクスパターンを測定することにより、予め測定し、記憶部33に記憶した、受光器200のマトリクスパターンと、回転レーザ装置100に関する受光器200の方向角との対応関係に基づいて、回転レーザ装置100に対する受光器200の方向を取得することが可能となる。
【0095】
また、回転レーザ装置100に関する受光器200の方向角を取得するにあたり、方向検出部40左右方向の寸法を大とすると、検出可能な範囲が大となり有利である。本形態に係る回転レーザ受光システム1では、方向検出部40の受光センサ42を透明受光素子43で構成したため、高さを検出するための受光センサを阻害することなく、方向検出部40を受光器200の前面に配置することができ、十分な左右方向の寸法を確保することができる。
【0096】
また、回転レーザ受光システム1では、方向検出部40の受光センサ42を、透明受光素子43を用いて、複数層積層して構成したので、レーザ光Bの進行方向に対する、受光面(すなわち受光器200)の左右方向および前後方向の傾きを検出することが可能である。このようにして、検出される左右方向および前後方向の傾きを、補正値として用いることができるので、高さの検出の精度が向上する。
【0097】
また、回転レーザ受光システム1では、方向検出にあたり、回転レーザ装置100にレーザ光Bで指定方向を照射させ、設計データにおける測定点Xの位置座標と受光器200が取得する受光器の位置座標に基いて、作業者を測定点Xまで誘導するように構成したので、方向および高さの測定において作業者は、容易に測定点Xに到達することが可能となり、作業が簡便になる。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1 回転レーザ受光システム
100 回転レーザ装置
200 レーザ受光器
14 信号送信部
31 演算処理部
33 記憶部
34 信号受信部