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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080089
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】欠陥画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240606BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240606BHJP
   G01N 21/956 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G06T7/00 610Z
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192982
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 勇太
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB01
2G051AB02
2G051AC21
5L096AA06
5L096BA03
5L096DA02
(57)【要約】
【課題】被検査対象に発生する実際の欠陥を仮想欠陥にてリアルに再現する。
【解決手段】欠陥画像処理装置1は、被検査対象2の撮像画像2aを背景20として、背景20に仮想欠陥30が描画された仮想欠陥描画画像10を複数のピクセルPで表示し、複数のピクセルPのうちの仮想欠陥30と背景20との境界11を含むピクセルPを境界ピクセルPaとして、境界ピクセルPaを複数のサブピクセルSにさらに分割し、境界ピクセルPaにおいて、背景20に属するサブピクセルSの数n2と仮想欠陥30に属するサブピクセルSの数n3との割合(n2:n3)を求め、背景20の輝度L2及び仮想欠陥30の輝度L3並びに割合(n2:n3)に基づいて、境界ピクセルPaの輝度L1を求め、分割された複数のサブピクセルSを境界ピクセルPaに圧縮する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象の撮像画像を背景として、前記背景に仮想欠陥が描画された仮想欠陥描画画像を複数のピクセルで表示し、
複数の前記ピクセルのうちの前記仮想欠陥と前記背景との境界を含む前記ピクセルを境界ピクセルとして、前記境界ピクセルを複数のサブピクセルにさらに分割し、
前記境界ピクセルにおいて、前記仮想欠陥に属する前記サブピクセルの数と前記背景に属する前記サブピクセルの数との割合を求め、
前記仮想欠陥の光学情報及び前記背景の光学情報並びに前記割合に基づいて、前記境界ピクセルの光学情報を求め、
分割された複数の前記サブピクセルを前記境界ピクセルに圧縮する、欠陥画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥画像処理装置であって、
前記境界ピクセルの光学情報は、
(前記仮想欠陥に属する前記サブピクセルの数/前記サブピクセルの総数)×前記仮想欠陥の光学情報+(前記背景に属する前記サブピクセルの数/前記サブピクセルの総数)×前記背景の光学情報によって、求められる、欠陥画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の欠陥画像処理装置であって、
前記境界ピクセルが複数の前記サブピクセルに分割された状態で、前記仮想欠陥描画画像を移動可能である、欠陥画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の欠陥画像処理装置であって、
前記仮想欠陥の光学情報は、コンピュータによって生成されており、
前記背景の光学情報は、センサによって測定されている、欠陥画像処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の欠陥画像処理装置であって、
前記光学情報は、輝度を含む、欠陥画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、欠陥画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査対象に発生した欠陥を検出して被検査対象の状態を検査する欠陥検査装置が知られている。例えば、特許文献1に開示の欠陥検査装置は、良品の素子チップの画像と比較することにより素子チップの欠陥を検出する欠陥検出部を、備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-161236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、欠陥検査装置の欠陥検出感度を評価等するために、被検査対象に実際に欠陥を発生させるのではなく、被検査対象の撮像画像を背景として当該背景に仮想欠陥を描画することがある。このように、背景(被検査対象)に仮想欠陥を描画することによって、被検査対象に発生する実際の欠陥を疑似的に再現することができる。
【0005】
しかしながら、背景(被検査対象)に仮想欠陥を単に描画しただけの場合、仮想欠陥と背景との境界部分にグラデーションが無く、仮想欠陥と背景とが明確に区別されて不自然となるので、被検査対象に実際に欠陥を発生させた場合に比較して、欠陥検査装置の欠陥検出感度の評価等を十分に行えなかった。
【0006】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被検査対象に発生する実際の欠陥を仮想欠陥にてリアルに再現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る欠陥画像処理装置は、被検査対象の撮像画像を背景として、前記背景に仮想欠陥が描画された仮想欠陥描画画像を複数のピクセルで表示し、複数の前記ピクセルのうちの前記仮想欠陥と前記背景との境界を含む前記ピクセルを境界ピクセルとして、前記境界ピクセルを複数のサブピクセルにさらに分割し、前記境界ピクセルにおいて、前記仮想欠陥に属する前記サブピクセルの数と前記背景に属する前記サブピクセルの数との割合を求め、前記仮想欠陥の光学情報及び前記背景の光学情報並びに前記割合に基づいて、前記境界ピクセルの光学情報を求め、分割された複数の前記サブピクセルを前記境界ピクセルに圧縮する。
【0008】
かかる構成によれば、仮想欠陥と背景(被検査対象)との境界部分において光学情報のグラデーションができるので、仮想欠陥の光学情報と背景の光学情報とが明確に区別されずにリアルな状態となる。すなわち、被検査対象に発生する実際の欠陥を仮想欠陥にてリアルに再現することができる。
【0009】
一実施形態では、前記境界ピクセルの光学情報は、(前記仮想欠陥に属する前記サブピクセルの数/前記サブピクセルの総数)×前記仮想欠陥の光学情報+(前記背景に属する前記サブピクセルの数/前記サブピクセルの総数)×前記背景の光学情報によって、求められる。
【0010】
かかる構成によれば、境界ピクセルの光学情報を簡単に算出することができる。
【0011】
一実施形態では、前記境界ピクセルが複数の前記サブピクセルに分割された状態で、前記仮想欠陥描画画像を移動可能である。
【0012】
かかる構成によれば、境界ピクセルの光学情報を変化させるなどの微調整を行うことができる。
【0013】
一実施形態では、前記仮想欠陥の光学情報は、コンピュータによって生成されており、前記背景の光学情報は、センサによって測定されている。
【0014】
かかる構成によれば、被検査対象(背景)の光学情報の実際の測定値と仮想欠陥の光学情報の疑似的な設定値とを適宜に組み合わせることによって、好適な仮想欠陥描画画像を、適宜に取得することができる。
【0015】
一実施形態では、前記光学情報は、輝度を含む。
【0016】
かかる構成によれば、仮想欠陥の輝度と背景(被検査対象)の輝度とが明確に区別されないので、被検査対象に発生する実際の欠陥の(人間が感じる)見え方を、仮想欠陥にてよりリアルに再現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、被検査対象に発生する実際の欠陥を仮想欠陥にてリアルに再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1実施形態に係る欠陥画像処理装置において被検査対象の撮像画像を背景として当該背景に仮想欠陥が描画された仮想欠陥描画画像を示す。
図2図2は、仮想欠陥描画画像のピクセル表示及びサブピクセル表示を示す。
図3図3は、仮想欠陥描画画像の圧縮表示を示す。
図4図4は、画像処理後における仮想欠陥描画画像を示す。
図5図5は、第1実施形態の第1変形例に係る図2相当図である。
図6図6は、第2実施形態に係る欠陥画像処理装置において被検査対象の撮像画像を背景として当該背景に仮想欠陥が描画された仮想欠陥描画画像を示す。
図7図7は、仮想欠陥描画画像のピクセル表示を示す。
図8図8は、ボケの影響を定めたフィルタを示す。
図9図9は、仮想欠陥描画画像におけるピクセルの輝度を示す。
図10図10は、仮想欠陥描画画像におけるピクセルの輝度のフィルタを通じた補正を示す。
図11図11は、画像処理後における仮想欠陥描画画像を示す。
図12図12は、第2実施形態の第1変形例に係る図8相当図であって、像流れの影響を定めたフィルタを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0020】
<第1実施形態>
(第1実施形態に係る欠陥画像処理装置)
第1実施形態に係る欠陥画像処理装置1について説明する。図1は、欠陥画像処理装置1における仮想欠陥描画画像10を示す。仮想欠陥描画画像10は、被検査対象2の撮像画像2aを背景20として、背景20に仮想欠陥30を描画してなる。
【0021】
欠陥画像処理装置1は、例えば、マイコン及びプログラムで構成されている。欠陥画像処理装置1は、例えば、欠陥検査装置(図示せず)に内蔵されてもよい。背景20(被検査対象2)として、例えば、半導体ウエハ(基板)やガラスや金属や樹脂などがある。仮想欠陥30として、例えば、異物、傷、エッジリンス不良、スルーホール異常、塗膜ムラ、剥がれ、スクラッチ、ボンディングパッド異常、色ムラ、パターン異常、染み、変色、変形、などがある。
【0022】
欠陥画像処理装置1は、仮想欠陥描画画像10において、背景20(被検査対象2)に仮想欠陥30を描画することによって、被検査対象2に発生する実際の欠陥を疑似的に再現する。
【0023】
背景20(被検査対象2)に仮想欠陥30を描画してなる仮想欠陥描画画像10を欠陥検査装置(図示せず)に通すことによって、欠陥検査装置の欠陥検出感度の評価などを、被検査対象2に実際に欠陥を発生させることなく、行うことができる。
【0024】
ここで、欠陥検査装置の欠陥検出感度の評価を十分に精度よく行うためには、被検査対象2に発生する実際の欠陥を仮想欠陥30にてリアルに再現することが重要である。
【0025】
図1に示すように、背景20(被検査対象2)に仮想欠陥30を単に描画しただけでは、仮想欠陥30と背景20との境界部分にグラデーションが無く、仮想欠陥30と背景20とが明確に区別されて不自然となる。この場合、被検査対象2に実際に欠陥を発生させた場合に比較して、欠陥検査装置の欠陥検出感度の評価を十分に精度よく行うことができない。
【0026】
そこで、欠陥画像処理装置1は、以下の画像処理を行う。
【0027】
図2は、仮想欠陥描画画像10のピクセル(Pixel)表示及びサブピクセル(Subpixel)表示を示す。欠陥画像処理装置1は、仮想欠陥描画画像10を、複数のピクセルPで表示する。図2では、複数のピクセルPで表示された仮想欠陥描画画像10のうちの仮想欠陥30及びその周囲の領域を、3×3の9分割で示す。なお、ピクセルPの分割数は、任意に設定可能である。
【0028】
欠陥画像処理装置1は、複数(9つ)のピクセルPのうちの仮想欠陥30と背景20との境界11を含むピクセルPを、境界ピクセルPaとする。欠陥画像処理装置1は、複数(9つ)のピクセルPのうちの仮想欠陥30と背景20との境界11を含まないピクセルPを、非境界ピクセルPbとする。本例では、中央に1つの非境界ピクセルPbが配置され、非境界ピクセルPbの周囲に8つの境界ピクセルPaが配置されている。
【0029】
欠陥画像処理装置1は、境界ピクセルPaを、複数のサブピクセルSに、10×10の100分割で、さらに分割する。同様に、欠陥画像処理装置1は、非境界ピクセルPbを、複数のサブピクセルSに、10×10の100分割で、さらに分割してもよい。なお、サブピクセルSの分割数は、任意に設定可能である。
【0030】
欠陥画像処理装置1は、境界ピクセルPaにおけるサブピクセルSの総数n1を、求める。欠陥画像処理装置1は、境界ピクセルPaにおいて、背景20に属するサブピクセルSの数n2と仮想欠陥30に属するサブピクセルSの数n3との割合(n2:n3)を、求める。例えば左上の境界ピクセルPaでは、サブピクセルの総数n1=100、背景20に属するサブピクセルSの数n2=76、仮想欠陥30に属するサブピクセルSの数n3=24である。
【0031】
欠陥画像処理装置1は、背景20の光学情報及L2及び仮想欠陥30の光学情報L3並びに割合(n2:n3=76:24)に基づいて、境界ピクセルPaの光学情報L1を求める。ここで、光学情報L1,L2,L3として、色相、明度、暗度、彩度、光度、輝度、照度などがある。本例では、光学情報L1,L2,L3は、輝度を含む(以下、「輝度L1,L2,L3」という場合がある)。
【0032】
背景(被検査対象2)の輝度L2は、センサによって測定されている。背景20の輝度L2は、実物の被検査対象2の輝度L2に一致する。仮想欠陥30の輝度L3は、コンピュータによって人工的に生成されている。仮想欠陥30の輝度L3は、ユーザが任意に設定可能である。
【0033】
本例では、背景20の輝度L2が90[cd/m]、仮想欠陥30の輝度L3が220[cd/m]である。
【0034】
境界ピクセルの輝度L1は、(背景20に属するサブピクセルSの数n2/サブピクセルSの総数n1)×背景20の輝度L2+(仮想欠陥30に属するサブピクセルSの数n3/サブピクセルSの総数n1)×仮想欠陥30の輝度L3によって、求められる。
【0035】
例えば、左上の境界ピクセルPaの輝度L1=(76/100)×90+(24/100)×220=121.2[cd/m]となる。左上以外の境界ピクセルPaの輝度L1についても、同様に計算する。なお、非境界ピクセルPbの輝度L1’は、仮想欠陥30の輝度L3と同じであるので、計算不要である。
【0036】
図3は、仮想欠陥描画画像10の圧縮表示を示す。図3に示すように、分割された複数のサブピクセルSを、境界ピクセルPaに圧縮する。非境界ピクセルPbを複数のサブピクセルSに分割していた場合には、境界ピクセルPaの場合と同様に、分割された複数のサブピクセルSを、非境界ピクセルPbに圧縮する。
【0037】
(第1実施形態の作用効果)
図4は、画像処理後における仮想欠陥描画画像10を示す。本実施形態によれば、図3,4に示すように、背景20(被検査対象2)と仮想欠陥30との境界部分(特に、境界ピクセルPaと境界ピクセルPaとの間又は境界ピクセルPaと非境界ピクセルPbとの間)において輝度L1のグラデーションができるので、背景20の輝度L2と仮想欠陥30の輝度L3とが明確に区別されずにリアルな状態となる。
【0038】
すなわち、被検査対象2に発生する実際の欠陥を仮想欠陥30にてリアルに再現することができる。
【0039】
そして、背景20(被検査対象2)に仮想欠陥30を描画してなる仮想欠陥描画画像10を欠陥検査装置に通すことによって、欠陥検査装置の欠陥検出感度の評価を十分に精度よく行うことができる。
【0040】
背景20の輝度L2及び仮想欠陥30の輝度L3並びに割合(n2:n3)に基づくので、被検査対象2を変更したとしても、同じ方法にて、境界ピクセルPaの輝度L1を都度求めることができる。
【0041】
背景20の輝度L2及び仮想欠陥30の輝度L3並びに割合(n2:n3)に基づいて境界ピクセルPaの輝度L1を求めるので、境界ピクセルPaを複数のサブピクセルSに分割したとしても、タクトタイムに大きく影響しない。
【0042】
上述の式を用いることによって、境界ピクセルPaの輝度L1を簡単に算出することができる。
【0043】
被検査対象2(背景20)の輝度L2の実際の測定値と仮想欠陥30の輝度L3の疑似的な設定値とを適宜に組み合わせることによって、好適な仮想欠陥描画画像10を、適宜に取得することができる。
【0044】
光学情報として輝度L1,L2,L3を採用することによって、被検査対象2に発生する実際の欠陥の(人間が感じる)見え方を、仮想欠陥30にてよりリアルに再現することができる。
【0045】
(第1実施形態の第1変形例)
図5は、第1実施形態の第1変形例に係る図2相当図である。図2,5に示すように、本変形例では、欠陥画像処理装置1は、境界ピクセルPa(及び/又は非境界ピクセルPb)が複数のサブピクセルSに分割された状態で、仮想欠陥描画画像10を移動可能である。
【0046】
図5の仮想欠陥描画画像10は、図2の仮想欠陥描画画像10に比較して、1つのサブピクセルS分だけ、下側に位置する。
【0047】
これにより、図5の仮想欠陥描画画像10では、図2の仮想欠陥描画画像10に比較して、左上、真上及び右上の境界ピクセルPaにおいて、背景20に属するサブピクセルSの数n2が増える一方、仮想欠陥30に属するサブピクセルSの数n3が減っている。これにより、左上、真上及び右上の境界ピクセルPaの輝度L1は、変化する。
【0048】
同様に、図5の仮想欠陥描画画像10では、図2の仮想欠陥描画画像10に比較して、左下、真下及び右下の境界ピクセルPaにおいて、背景20に属するサブピクセルSの数n2が減る一方、仮想欠陥30に属するサブピクセルSの数n3が増えている。これにより、左下、真下及び右下の境界ピクセルPaの輝度L1は、変化する。
【0049】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0050】
本変形例によれば、境界ピクセルPaの輝度L1を変化させるなどの微調整を行うことができる。
【0051】
(第1実施形態のその他の変形例)
非境界ピクセルPbを複数のサブピクセルSに分割しなくてもよい。
【0052】
<第2実施形態>
(第2実施形態に係る欠陥画像処理装置)
第2実施形態に係る欠陥画像処理装置1について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、詳細な説明を省略する場合がある。本実施形態では、第1実施形態と同様に、光学情報L2,L3は、輝度を含むものとする。
【0053】
図6は、欠陥画像処理装置1における仮想欠陥描画画像10を示す。仮想欠陥描画画像10は、被検査対象2の撮像画像2aを背景20として、背景20に仮想欠陥30を描画してなる。
【0054】
ここで、第1実施形態の場合と同様、仮想欠陥描画画像10を欠陥検査装置に通して欠陥検査装置の欠陥検出感度の評価を十分に精度よく行うためには、被検査対象2に発生する実際の欠陥を仮想欠陥30にてリアルに再現することが重要である。
【0055】
図6に示すように、背景20(被検査対象2)に仮想欠陥30を単に描画しただけでは、仮想欠陥30の輝度L3が背景20の輝度L2から与えられる影響や、背景20の輝度L2が仮想欠陥30の輝度L3から与えられる影響などが考慮されずに、不自然となる。この場合、被検査対象2に実際に欠陥を発生させた場合に比較して、欠陥検査装置の欠陥検出感度の評価を十分に行うことができない。
【0056】
そこで、欠陥画像処理装置1は、以下の画像処理を行う。
【0057】
図7は、仮想欠陥描画画像10のピクセル表示を示す。欠陥画像処理装置1は、仮想欠陥描画画像10を、複数のピクセルPで表示する。図7では、複数のピクセルPで表示された仮想欠陥描画画像10のうちの仮想欠陥30及びその周囲の領域を、5×6の30分割で示す。なお、ピクセルPの分割数は、任意に設定可能である。
【0058】
図8は、ボケの影響を定めたフィルタ40を示す。欠陥画像処理装置1は、フィルタ40を用意する。フィルタ40は、例えば、マイコン及びプログラムで構成されている。フィルタ40では、複数のピクセルPのうちの一のピクセルPiの輝度Liが全周囲の他のピクセルPjの輝度Ljから与えられるボケAの影響が定められている。ボケAとは、焦点がずれて画像が広がって見える現象をいう。
【0059】
具体的には、中央に位置する一のピクセルPiの輝度Liは、1つのピクセルP分だけ上・下・左・右の外側に位置する他のピクセルPjの輝度Ljから、1.6%のボケAの影響を受ける。中央に位置する一のピクセルPiの輝度Liは、1つのピクセルP分だけ左上・右上・左下・右下の外側に位置する他のピクセルPjの輝度Ljから、1.2%のボケAの影響を受ける。
【0060】
中央に位置する一のピクセルPiの輝度Liは、2つのピクセルP分だけ上・下・左・右の外側に位置する他のピクセルPjの輝度Ljから、1.0%のボケAの影響を受ける。中央に位置する一のピクセルPiの輝度Liは、2つのピクセルP分だけ左上・右上・左下・右下の外側に位置する他のピクセルPjの輝度Ljから、0.1%のボケAの影響を受ける。中央に位置する一のピクセルPiの輝度Liは、上記1.0%の他のピクセルPjの輝度Ljと上記0.1%の他のピクセルPjの輝度Ljとの間に位置する他のピクセルPjの輝度Ljから、0.5%のボケAの影響を受ける。
【0061】
なお、一のピクセルPiの輝度Liは、反対に、周囲の他のピクセルPjの輝度Ljに対して、ボケAの影響を与える。
【0062】
図9は、仮想欠陥描画画像10におけるピクセルPiの輝度Liを示す。図10は、仮想欠陥描画画像10における一のピクセルPiの輝度Liのフィルタ40を通じた補正を示す。仮想欠陥描画画像10において、一のピクセルPiの輝度Liは、フィルタ40を通じて、その全周囲の他のピクセルPjの輝度LjからのボケAの影響によって、補正され得る。
【0063】
なお、フィルタ40を通じた補正の前後(好ましくはフィルタ40を通じた補正の前)において、第1の実施形態に係る画像処理方法を用いて、仮想欠陥30と背景20との境界11を含むピクセルPを境界ピクセルPaとして、境界ピクセルPaを複数のサブピクセルSに分割して、背景20の輝度L2及び仮想欠陥30の輝度L3並びに境界ピクセルPaにおける背景20に属するサブピクセルSの数n2と仮想欠陥30に属するサブピクセルSの数n3との割合(n2:n3)に基づいて、境界ピクセルPaの輝度L1を求めておくことが好ましい(図2参照)。
【0064】
図9の例では、仮想欠陥描画画像10における中央に位置する一のピクセルPiの輝度Liは、フィルタ40を通じて、その全周囲の他のピクセルPjの輝度LjからのボケAの影響によって、19[cd/m]から24.5[cd/m]へと補正される。
【0065】
具体的には、以下の式で求められる。((50+51+71+73)×0.1%+(51+52+61+71+66+66+75+59)×0.5%+(53+68+68+63)×1.0%+(18+20+68+64)×1.2%+(20+22+69+11)×1.6%+19×(100%-0.1%×4-0.5%×8-1%×4-1.2%×4-1.6%×4))/100=24.538。
【0066】
図7の仮想欠陥描画画像10において、全てのピクセルPを順次に一のピクセルPiとして、当該一のピクセルPiの輝度Liを、その全周囲の他のピクセルPjの輝度LjからのボケAの影響によって補正する。これにより、仮想欠陥描画画像10における全てのピクセルPについて、輝度が補正される。
【0067】
仮想欠陥描画画像10において、仮想欠陥30に属する一のピクセルPiの輝度Li(L3)は、フィルタ40を通じて、仮想欠陥30に属する周囲の他のピクセルPjの輝度Lj(L3)からのボケAの影響によって補正され得るとともに、背景20(被検査対象2)に属する周囲の他のピクセルPjの輝度Lj(L2)からのボケAの影響によっても補正され得る。
【0068】
仮想欠陥描画画像10において、背景20(被検査対象2)に属する一のピクセルPiの輝度Li(L2)は、フィルタ40を通じて、仮想欠陥30に属する周囲の他のピクセルPjの輝度Lj(L3)からのボケAの影響によって補正され得る一方、背景20に属する周囲の他のピクセルPjの輝度Lj(L2)からのボケAの影響では補正され得ない。
【0069】
(第2実施形態の作用効果)
図11は、画像処理後における仮想欠陥描画画像10を示す。本実施形態によれば、仮想欠陥描画画像10に対してフィルタ40を通すことによって、仮想欠陥30の輝度L3が周囲の背景20(被検査対象2)の輝度L2から与えられる影響や、背景20の輝度L2が周囲の仮想欠陥30の輝度L3から与えられる影響などを、考慮することができる。
【0070】
これにより、仮想欠陥描画画像10における仮想欠陥30の輝度L3や背景20の輝度L2は、被検査対象2に実際に欠陥を発生させた場合に近いリアルな状態となる。
【0071】
すなわち、被検査対象2に発生する実際の欠陥を仮想欠陥30にてリアルに再現することができる。
【0072】
そして、背景20(被検査対象2)に仮想欠陥30を描画してなる仮想欠陥描画画像10を欠陥検査装置に通すことによって、欠陥検査装置の欠陥検出感度の評価を十分に精度よく行うことができる。
【0073】
仮想欠陥描画画像10では、仮想欠陥30の輝度L3は、フィルタ40を通す前において、周囲の仮想欠陥30の輝度L3からの影響及び周囲の背景20(被検査対象2)の輝度L2からの影響のいずれをも、未だ受けていない。しかしながら、被検査対象2に実際に欠陥を発生させた場合、このような実際の欠陥の輝度は、周囲の欠陥の輝度からの影響及び周囲の被検査対象2(背景20)の輝度からの影響の両方を、受ける。
【0074】
本実施形態によれば、仮想欠陥描画画像10に対してフィルタ40を通すことによって、仮想欠陥30の輝度L3を、周囲の仮想欠陥30の輝度L3からの影響及び周囲の背景20(被検査対象2)の輝度L2からの影響の両方によって補正する。これにより、仮想欠陥描画画像10における仮想欠陥30の輝度L3を、被検査対象2に実際に欠陥を発生させた場合により近づけて、よりリアルな状態にすることができる。
【0075】
仮想欠陥描画画像10では、背景20(被検査対象2)の輝度L2は、フィルタ40を通す前において、周囲の仮想欠陥30の輝度L3からの影響を未だ受けていない一方、周囲の背景20の輝度L2からの影響を既に受けている。このため、フィルタ40を通す前後にて、仮想欠陥描画画像10において、背景20の輝度L2が、周囲の背景20の輝度L2からの影響を二重に受けないようにしなければならない。
【0076】
本実施形態によれば、仮想欠陥描画画像10に対してフィルタ40を通すことによって、背景20(被検査対象2)の輝度L2を、周囲の仮想欠陥30の輝度L3からの影響によって補正する一方、周囲の背景20の輝度L2からの影響では補正しない。これにより、仮想欠陥描画画像10における背景20の輝度L2を、被検査対象2に実際に欠陥を発生させた場合により近づけて、よりリアルな状態にすることができる。
【0077】
ボケAの影響を考慮することによって、被検査対象2に発生する実際の欠陥を、仮想欠陥30にてよりリアルに再現することができる。
【0078】
光学情報として輝度Li,Lj(L2,L3)を採用することによって、被検査対象2に発生する実際の欠陥の(人間が感じる)見え方を、仮想欠陥30にてよりリアルに再現することができる。
【0079】
(第2実施形態の第1変形例)
図12は、第2実施形態の第1変形例に係る図8相当図であって、像流れBの影響を定めたフィルタ41を示す。
【0080】
フィルタ41では、一のピクセルPiの輝度Liがスキャン方向Fと反対側の他のピクセルPjの輝度Ljから与えられる像流れBの影響が定められている。像流れBとは、スキャンに伴って、スキャン方向Fと反対側に、画像がぼやけたりこすれたりするように流れる現象をいう。
【0081】
具体的には、中央に位置する一のピクセルPiの輝度Liは、1つのピクセルP分だけスキャン方向Fと反対側に位置する他のピクセルPjの輝度Ljから、5%の像流れBの影響を受ける。中央に位置する一のピクセルPiの輝度Liは、2つのピクセルP分だけスキャン方向Fと反対側に位置する他のピクセルPjの輝度Ljから、3%の像流れBの影響を受ける。
【0082】
仮想欠陥描画画像10において、一のピクセルPiの輝度Liは、フィルタ41を通じて、そのスキャン方向Fと反対側の他のピクセルPjの輝度Ljからの像流れBの影響によって、補正され得る。
【0083】
像流れBの影響を定めたフィルタ41を図9の例に当てはめると、仮想欠陥描画画像10において、中央に位置する一のピクセルPiの輝度Liは、フィルタ41を通じて、そのスキャン方向Fと反対側の他のピクセルPjの輝度Ljからの像流れBの影響によって、19[cd/m]から23.0[cd/m]へと補正される。
【0084】
具体的には、以下の式で求められる。(69×5%+68×3%+19×(100%-5%-3%))/100=22.97。
【0085】
その他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0086】
本変形例によれば、スキャンに伴う像流れBの影響を考慮することによって、被検査対象2に発生する実際の欠陥を仮想欠陥30にてよりリアルに再現することができる。
【0087】
(第2実施形態のその他の変形例)
ボケAの影響を定めたフィルタ40と像流れBの影響を定めたフィルタ41とを、組み合わせてもよい。ボケA及び像流れB以外の影響を定めたフィルタを用意してもよい。
【0088】
フィルタでは、一のピクセルPiの輝度Liが周囲の少なくとも一部の他のピクセルPjの輝度Ljから与えられる影響が定められればよい。
【0089】
<その他の実施形態>
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0090】
ピクセルPによる分割数及びサブピクセルSによる分割数は、上記に限定されず、ユーザが任意に設定してよい。光学情報として、輝度L1,L2,L3以外の指標を用いてもよい。
【0091】
欠陥画像処理装置1による仮想欠陥描画画像10の画像処理は、欠陥検査装置の欠陥検出感度の評価のため以外にも、適用されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本開示は、欠陥画像処理装置に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0093】
1 欠陥画像処理装置
2 被検査対象
2a 撮像画像
10 仮想欠陥描画画像
11 境界
20 背景
30 仮想欠陥
40 フィルタ
41 フィルタ
P ピクセル
Pa 境界ピクセル
Pb 非境界ピクセル
Pi 一のピクセル
Pj 他のピクセル
S サブピクセル
n1 総数
n2 数
n3 数
L1 輝度(光学情報)
L2 輝度(光学情報)
L3 輝度(光学情報)
L1’ 輝度
Li 輝度
Lj 輝度
A ボケ
B 像流れ
F スキャン方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12