(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080090
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】カップ付き衣類
(51)【国際特許分類】
A41C 3/08 20060101AFI20240606BHJP
A41C 3/00 20060101ALI20240606BHJP
A41C 3/12 20060101ALI20240606BHJP
A41C 3/14 20060101ALI20240606BHJP
A41C 3/10 20060101ALI20240606BHJP
B65H 75/38 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A41C3/08
A41C3/00 Z
A41C3/12 A
A41C3/12 Z
A41C3/14 B
A41C3/10 B
B65H75/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192983
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】522470091
【氏名又は名称】一杉 喜重
(71)【出願人】
【識別番号】522470105
【氏名又は名称】林 智庚
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】一杉 喜重
(72)【発明者】
【氏名】林 智庚
【テーマコード(参考)】
3B131
3F068
【Fターム(参考)】
3B131AA16
3B131AA21
3B131AB04
3B131AB05
3B131AB06
3B131BA02
3B131BA11
3B131BA19
3B131BA33
3B131BB01
3B131BB22
3B131CA42
3F068AA14
3F068BA00
3F068CA02
3F068DA01
3F068FA03
3F068JB01
(57)【要約】
【課題】 豊かな胸の谷間を形成するための締め付け操作が簡単であると共に、その締め付けの程度を容易に調整することを可能にしたカップ付き衣類を提供する。
【解決手段】 左右の乳房を覆う一対のカップ部1,1と、該一対のカップ部1,1が取り付けられた衣類本体2と、一対のカップ部1,1の向かい合う縁部にそれぞれ設けられた一対の糸通し部3,3と、該一対の糸通し部3,3の双方に挿入された線材4と、衣類本体2に取り付けられていて線材4の両端部を引き込むダイヤル式巻き取り装置5とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の乳房を覆う一対のカップ部と、該一対のカップ部が取り付けられた衣類本体と、前記一対のカップ部の向かい合う縁部にそれぞれ設けられた一対の糸通し部と、該一対の糸通し部の双方に挿入された線材と、前記衣類本体に取り付けられていて前記線材の両端部を引き込むダイヤル式巻き取り装置とを備えることを特徴とするカップ付き衣類。
【請求項2】
前記ダイヤル式巻き取り装置は、前記衣類本体に取り付けられる基材と、該基材上に固定されていて前記線材が通過する切り欠き部が形成された円筒体と、該円筒体に対して回動自在に保持されたダイヤルと、前記円筒体の内側に配置されていて前記ダイヤルと一体的に回動するドラムとを備え、前記線材の両端部が前記ドラムの外周面に対して固定される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のカップ付き衣類。
【請求項3】
前記基材が前記一対のカップ部の下方側から前記一対の糸通し部に対応する高さ位置まで延在し、その先端部に前記線材を案内するガイド部を有することを特徴とする請求項2に記載のカップ付き衣類。
【請求項4】
前記ダイヤル式巻き取り装置の全体が前記衣類本体により被覆されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のカップ付き衣類。
【請求項5】
前記線材が合成樹脂モノフィラメント、金属ワイヤ、天然繊維糸及び合成繊維糸のいずれかであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のカップ付き衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の乳房を覆う一対のカップ部と、該一対のカップ部が取り付けられた衣類本体とを備えたカップ付き衣類に関し、更に詳しくは、豊かな胸の谷間を形成するための締め付け操作が簡単であると共に、その締め付けの程度を容易に調整することを可能にしたカップ付き衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラジャーに代表されるカップ付き衣類は、左右の乳房を覆う一対のカップ部と、該一対のカップ部が取り付けられた衣類本体とを備えている。
【0003】
このようなカップ付き衣類において、一対のカップ部の向かい合う縁部に第1の締結要素と第2の締結要素を設け、これらを互いに締結することにより、カップ部同士を引き寄せて豊かな胸の谷間を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この場合、第1の締結要素と第2の締結要素を互いに締結することで胸の谷間が形成されるものの、その締め付けの程度を調整することができないという欠点がある。そのため、締め付けが強過ぎると息苦しさを感じることになる。
【0004】
また、カップ付き衣類において、豊かな胸の谷間を形成するために、一対のカップ部の向かい合う縁部に設けられた複数の孔部に対して交互に架け渡された紐部材により一対のカップ部を互いに引き寄せる構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この場合、靴紐のように編み上げられた紐部材による締め付け操作が極めて煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2016-527413号公報
【特許文献2】特開2016-56473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、豊かな胸の谷間を形成するための締め付け操作が簡単であると共に、その締め付けの程度を容易に調整することを可能にしたカップ付き衣類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明のカップ付き衣類は、左右の乳房を覆う一対のカップ部と、該一対のカップ部が取り付けられた衣類本体と、前記一対のカップ部の向かい合う縁部にそれぞれ設けられた一対の糸通し部と、該一対の糸通し部の双方に挿入された線材と、前記衣類本体に取り付けられていて前記線材の両端部を引き込むダイヤル式巻き取り装置とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、カップ付き衣類は、一対のカップ部の向かい合う縁部にそれぞれ設けられた一対の糸通し部と、該一対の糸通し部の双方に挿入された線材と、衣類本体に取り付けられていて線材の両端部を引き込むダイヤル式巻き取り装置とを備えているので、ダイヤル式巻き取り装置の操作により一対のカップ部を互いに引き寄せて豊かな胸の谷間を形成することができる。しかも、ダイヤル式巻き取り装置によれば、豊かな胸の谷間を形成するための締め付け操作が簡単であると共に、その締め付けの程度を容易に調整することができる。
【0009】
ダイヤル式巻き取り装置は、衣類本体に取り付けられる基材と、該基材上に固定されていて線材が通過する切り欠き部が形成された円筒体と、該円筒体に対して回動自在に保持されたダイヤルと、円筒体の内側に配置されていてダイヤルと一体的に回動するドラムとを備え、線材の両端部がドラムの外周面に対して固定される構造を有することが好ましい。このようなダイヤル式巻き取り装置はコンパクトな構造であるため、カップ付き衣類においてダイヤル式巻き取り装置が目立ち難くなる。
【0010】
また、ダイヤル式巻き取り装置の基材は一対のカップ部の下方側から一対の糸通し部に対応する高さ位置まで延在し、その先端部に線材を案内するガイド部を有することが好ましい。この場合、ダイヤル式巻き取り装置が衣類本体における一対のカップの下方側に配置される一方で、一対の糸通し部が同等の高さ位置に配置されたガイド部に向かって引き込まれるので、より美しい胸の谷間を形成することができる。その一方で、ダイヤル式巻き取り装置を一対のカップから離れた位置に配置することが可能となるので、ダイヤルの操作がカップと干渉するのを回避することができる。
【0011】
本発明において、ダイヤル式巻き取り装置の全体が衣類本体により被覆されていることが好ましい。これにより、カップ付き衣類においてダイヤル式巻き取り装置が目立ち難くなる。
【0012】
また、本発明において、線材は合成樹脂モノフィラメント、金属ワイヤ、天然繊維糸及び合成繊維糸のいずれかであることが好ましい。このような線材を用いることにより、ダイヤル式巻き取り装置による締め付け操作を円滑に行うことができ、また、線材の耐久性も十分に確保することができる。
【0013】
本発明において、カップ付き衣類としては、一対のカップ部を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ブラジャーやブラスリップ等のインナーウエアのみならず、水着やレオタード等のアウターウエアにも適用可能である。特に、ブラジャーに適用した場合、豊かな胸の谷間を形成する効果を有効に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態からなるカップ付き衣類(ブラジャー)を示す平面図である。
【
図2】
図1のカップ付き衣類の要部を示す平面図である。
【
図3】ダイヤル式巻き取り装置を示す側面図である。
【
図4】ダイヤル式巻き取り装置を分解した状態を示す分解図である。
【
図5】ダイヤル式巻き取り装置の他の配置例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1~
図4は本発明の実施形態からなるカップ付き衣類(ブラジャー)及びその細部を示すものである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るカップ付き衣類は、左右の乳房を覆う一対のカップ部1,1と、該一対のカップ部1,1が取り付けられた衣類本体2とを備えている。カップ部1は、その全周囲にわたって衣類本体2に対して縫合されている必要はなく、少なくとも一部が衣類本体2に対して縫合されていれば良い。衣類本体2は、乳房を含む胸部に巻かれるバンド部材21と、バンド部材21の両端部にそれぞれ取り付けられた第1の係合部材22及び第2の係合部材23と、バンド部材21の上部に取り付けられた一対の肩紐24,24とから構成されている。第1の係合部材22及び第2の係合部材23の構造は特に限定されるものではないが、例えば、第1の係合部材22をフック又はループとし、第2の係合部材23をループ又はフックとすることができる。第1の係合部材22及び第2の係合部材23のいずれか一方をバンド部材21の長手方向の位置が異なる複数個所に配置することにより、着用時のバンド部材21の周長を調整することができる。
【0017】
図1~
図4に示すように、本実施形態に係るカップ付き衣類は、一対のカップ部1,1の向かい合う縁部に設けられた一対の糸通し部3,3と、該一対の糸通し部3,3の双方に挿入された線材4と、カップ部1,1の中間位置において衣類本体2に取り付けられていて線材4の両端部を引き込むダイヤル式巻き取り装置5とを備えている。
【0018】
糸通し部3は、線材4の挿入を許容するように筒状又はリング状に構成されている。このような糸通し部3は、金属、合成樹脂、陶器の成形物であっても良く、或いは、天然繊維糸又は合成繊維糸の製織物であっても良い。例えば、天然繊維糸又は合成繊維糸からなる布地を折り返して縫合することにより、カップ1に対して一体的な糸通し部3を簡単に形成することができる。天然繊維糸としては、綿糸等が例示される。合成繊維糸としては、ナイロン糸やポリエステル糸等が例示される。
【0019】
線材4は、合成樹脂モノフィラメント、金属ワイヤ、天然繊維糸及び合成繊維糸のいずれかであると良い。合成樹脂モノフィラメントとしては、ナイロンモノフィラメントやポリエステルモノフィラメント等が例示される。天然繊維糸としては、綿糸等が例示される。合成繊維糸としては、ナイロン糸やポリエステル糸等が例示される。また、線材4の外径は例えば0.2mm~1.5mmの範囲にあると良い。このような線材4を用いることにより、ダイヤル式巻き取り装置5による締め付け操作を円滑に行うことができ、また、線材4の耐久性も十分に確保することができる。
【0020】
ダイヤル式巻き取り装置5は、線材4の両端部を引き込んで保持する一方で、引き込まれた線材4を巻き解く機能を有する装置である。このダイヤル式巻き取り装置5は、衣類本体2に取り付けられる基材6と、該基材6上に固定される円筒体7と、該円筒体7に対して回動自在に保持されたダイヤル8と、円筒体7の内側に配置されていてダイヤル8と一体的に回動するドラム9とを備え、線材4の両端部がドラム9の外周面に対して固定される構造を有している。
図3に示すように、ダイヤル式巻き取り装置5は、例えば、衣類本体2を構成する裏生地2Aに対して縫合されており、ダイヤル8のみが衣類本体2の表生地2Bから突き出すように配置されている。
【0021】
図4に示すように、基材6は、ダイヤル8が配置されるダイヤル保持部61と、ダイヤル保持部61から突き出した延長部62とから構成されている。ダイヤル保持部61には、ドラム9の周縁部が挿入される環状溝63と、円筒体7に設けられた複数本の爪部71が係合する複数の係合穴64が形成されている。一方、延長部62の先端部には、線材4を案内するガイド部65が形成されている。更に、基材6には、衣類本体2に対する縫合に利用される複数の縫合穴66が設けられている。これらの縫合穴66を用いてダイヤル式巻き取り装置5の基材6が衣類本体2に対して縫合される。
【0022】
円筒体7は、その外周壁に一対の切り欠き部72,72を有し、これら切り欠き部72,72を介して線材4の両端部が円筒体7の内側まで引き込まれている。ダイヤル8は、その縁部が円筒体7の外周側に嵌め込まれており、その縁部に形成された複数本の爪部81が円筒体7をダイヤル8に対して係止している。そのため、ダイヤル8はドラム9と共に円筒体7に対して回動自在になっている。例えば、円筒体7とドラム9のいずれか一方にはその周方向に沿って歯車(不図示)が形成され、円筒体7とドラム9のいずれか他方には歯車に対して弾性的に係合する爪(不図示)が配設されることにより、円筒体7とドラム9の相互回転に対して負荷が与えられている。このような構成により、円筒体7とドラム9の相互回転が制限されるので、線材4の引き込み状態を保持することができる。なお、円筒体7とドラム9との間に線材4を引き込む方向の回転のみを許容するラチェット機構と、そのラチェット機構の解除ボタンとを設け、線材4を緩める際にはラチェット機構を解除するような構造しても良い。
【0023】
上述のように構成されるカップ付き衣類を使用する場合、一対のカップ部1,1が乳房を覆うようにカップ付き衣類を胸部に着用した後、胸の谷間を形成するためにダイヤル8を操作する。即ち、ダイヤル8を一方向に回転させることにより、ドラム9の周囲に線材4を巻き取ることができる。このようなダイヤル8の操作により線材4をダイヤル式巻き取り装置5の中に引き込み、一対のカップ部1,1を互いに引き寄せる。これにより、バストアップ効果が得られるので、豊かな胸の谷間を形成することができる。しかも、上述のダイヤル式巻き取り装置5によれば、豊かな胸の谷間を形成するための締め付け操作が簡単であると共に、その締め付けの程度を容易に調整することができる。なお、締め付け状態を緩める場合、ダイヤル8を他方向に回転させることにより、ドラム9の周囲に巻き付けられた線材4を巻き解くようにすれば良い。
【0024】
上述したカップ付き衣類において、ダイヤル式巻き取り装置5の基材6は一対のカップ部1,1の下方側から一対の糸通し部3,3に対応する高さ位置まで延在し、その先端部に線材4を案内するガイド部65を有することが好ましい。この場合、ダイヤル式巻き取り装置5が衣類本体2における一対のカップ1,1の下方側に配置される一方で、一対の糸通し部3,3が同等の高さ位置に配置されたガイド部65に向かって引っ張られるので、より美しい胸の谷間を形成することができる。その一方で、ダイヤル式巻き取り装置5を一対のカップ1,1から離れた位置に配置することが可能となるので、ダイヤル8の操作がカップ1,1と干渉することを回避し、豊かな胸の谷間を形成するための締め付け操作をより簡単に行うことができる。
【0025】
図5はダイヤル式巻き取り装置の他の配置例を示すものである。
図1~
図3においては、ダイヤル式巻き取り装置5のダイヤル8のみが衣類本体2の表生地2Bから突き出すように配置される例について説明したが、
図5の例では、ダイヤル式巻き取り装置5の全体が衣類本体2により被覆されている。即ち、
図5において、ダイヤル式巻き取り装置5が衣類本体2を構成する裏生地2Aに対して縫合され、衣類本体2を構成する表生地2Bはダイヤル式巻き取り装置5の全体を覆うように配置されている。この場合、カップ付き衣類において、ダイヤル式巻き取り装置5が目立ち難くなり、外観を良好に維持することが可能となる。なお、ダイヤル式巻き取り装置5の操作は裏生地2Aと表生地2Bとの間に指を挿入することで容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0026】
1 カップ部
2 衣類本体
3 糸通し部
4 線材
5 ダイヤル式巻き取り装置
6 基材
7 円筒体
8 ダイヤル
9 ドラム
65 ガイド部
72 切り欠き部