(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000801
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】建設機械の制御装置、建設機械及び建設機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E21B 44/02 20060101AFI20231226BHJP
B66D 1/44 20060101ALI20231226BHJP
E21B 11/00 20060101ALI20231226BHJP
E02F 3/47 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
E21B44/02
B66D1/44 H
E21B11/00 Z
E02F3/47 F
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099718
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】沢村 俊明
(72)【発明者】
【氏名】菅野 直紀
(72)【発明者】
【氏名】細井 英彰
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129BA03
2D129BA19
2D129BB03
2D129CA04
2D129CA16
2D129CB13
2D129DA03
2D129EA11
2D129EB02
2D129EB16
2D129EB40
(57)【要約】
【課題】ハンマグラブ作業のサイクルタイムが長くなることを抑制しつつ、ハンマグラブの破損を抑制することができる建設機械の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、ハンマグラブ作業の作業対象における底部12からのハンマグラブ高さを取得するために用いられる検出器81と、ハンマグラブ高さが底部12より上に設定された設定高さHsよりも高い場合にはハンマグラブ10を自由落下させ、ハンマグラブ高さが設定高さHs以下である場合にはハンマグラブ10の下降速度が所定の目標速度Vsに近づくようにウインチドラムDR1に対するブレーキを調節する制御を行うコントローラ101と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインチドラムからワイヤロープを繰り出すことによりハンマグラブを落下させてハンマグラブ作業を行う建設機械の制御装置であって、
前記ハンマグラブ作業の作業対象における底部からの前記ハンマグラブの高さであるハンマグラブ高さを取得するために用いられる検出器と、
前記ハンマグラブ高さが前記底部より上に設定された設定高さよりも高い場合には前記ハンマグラブを自由落下させ、前記ハンマグラブ高さが前記設定高さ以下である場合には前記ハンマグラブの下降速度が所定の目標速度に近づくように前記ウインチドラムに対するブレーキを調節する制御を行うコントローラと、を備える建設機械の制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記ハンマグラブが前記底部に着地した後に前記ワイヤロープが前記ウインチドラムから余分に繰り出されることが抑制されるように前記ウインチドラムに対するブレーキを調節する制御を行う、請求項1に記載の建設機械の制御装置。
【請求項3】
オペレータによる前記設定高さの入力を受ける入力器をさらに備え、
前記コントローラは、前記入力に基づいて前記設定高さを設定する、請求項1又は2に記載の建設機械の制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記目標速度と、前記ハンマグラブが下降するときの目標の加速度と、を用いて前記設定高さを決定する、請求項1又は2に記載の建設機械の制御装置。
【請求項5】
前記ワイヤロープに作用する前記ハンマグラブの荷重であるハンマグラブ荷重を検出する荷重値検出器をさらに備え、
前記コントローラは、前記ハンマグラブが前記底部に接地している状態から前記ワイヤロープが前記ウインチドラムによって巻き取られることにより前記ハンマグラブ荷重が増加する荷重変化に基づいて前記ハンマグラブが前記底部から離れるときの高さ位置である地離れ高さを判定し、前記地離れ高さを原点として前記ハンマグラブ高さを演算する、請求項1に記載の建設機械の制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記荷重値検出器から入力される前記荷重変化に関する荷重変化情報と、前記ハンマグラブが前記底部から離れる時点から前記荷重変化情報が前記荷重値検出器から前記コントローラに入力されるまでの遅れ時間と、を用いて前記地離れ高さを判定する、請求項5に記載の建設機械の制御装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記ハンマグラブが前記底部に着地した後にオペレータによる巻き上げ操作が行われると、ほぐし作業を行うための制御であるほぐし制御を行う、請求項1に記載の建設機械の制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の制御装置と、
前記ウインチドラムと、を備える建設機械。
【請求項9】
ウインチドラムからワイヤロープを繰り出すことによりハンマグラブを落下させてハンマグラブ作業を行う建設機械の制御方法であって、
前記ハンマグラブ作業の作業対象における底部からの前記ハンマグラブの高さであるハンマグラブ高さを取得することと、
前記ハンマグラブ高さが前記底部より上に設定された設定高さよりも高い場合には前記ハンマグラブを自由落下させ、前記ハンマグラブ高さが前記設定高さ以下である場合には前記ハンマグラブの下降速度が所定の目標速度に近づくように前記ウインチドラムに対するブレーキを調節することと、を備える建設機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハンマグラブ作業において建設機械を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンマグラブを備えた建設機械が知られている。ハンマグラブは、オールケーシング工法を用いたハンマグラブ作業に用いられるアタッチメントである。このハンマグラブ作業は、地中に押し込まれたケーシング(筒状の部材)内においてハンマグラブを落下させることでケーシング内の土砂を掘削する掘削作業と、掘削された土砂を保持するハンマグラブを上昇させてケーシングの外に土砂を排出する排出作業と、を含む。掘削作業では、オペレータは、着地時のハンマグラブの破損を抑制するために適宜ブレーキペダルの操作を行う。このようなブレーキ操作は、オペレータがケーシング内のハンマグラブを目視することができない状況で行われるので、オペレータにとって難易度が高い。また、近年は建設機械のオペレータが不足している。従って、非熟練者であってもハンマグラブ作業を容易に行えるように、オペレータによるハンマグラブ作業をアシストする制御装置の開発が望まれる。
【0003】
特許文献1は、ハンマグラブ作業における一連の操作のうちの掘削操作を自動化して経験の浅いオペレータでも容易に操作できることを目的とした掘削機械の制御装置を開示している。この特許文献1の制御装置は、バケットがケーシング内の上部に配置されると、モータの動力によりバケットを低速で巻き下げ、この低速区間を経た後にモータの動力によりバケットを高速で巻き下げる。そして、この制御装置は、この高速区間を経た後に、バケットを自由落下させて地盤に貫入させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように特許文献1の制御装置では、バケットは低速区間及びこれに続く高速区間においてモータの動力により巻き下げられるので、ハンマグラブ作業のサイクルタイムが長くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ハンマグラブ作業のサイクルタイムが長くなることを抑制しつつ、ハンマグラブの破損を抑制することができる建設機械の制御装置、建設機械、及び建設機械の制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
提供されるのは、ウインチドラムからワイヤロープを繰り出すことによりハンマグラブを落下させてハンマグラブ作業を行う建設機械の制御装置であって、前記ハンマグラブ作業の作業対象における底部からの前記ハンマグラブの高さであるハンマグラブ高さを取得するために用いられる検出器と、前記ハンマグラブ高さが前記底部より上に設定された設定高さよりも高い場合には前記ハンマグラブを自由落下させ、前記ハンマグラブ高さが前記設定高さ以下である場合には前記ハンマグラブの下降速度が所定の目標速度に近づくように前記ウインチドラムに対するブレーキを調節する制御を行うコントローラと、を備える。
【0008】
この制御装置では、コントローラはハンマグラブ高さが設定高さに達するまではハンマグラブを自由落下させるので、低速区間及び高速区間においてモータの動力による巻き下げを行う従来の技術に比べて、ハンマグラブ作業のサイクルタイムを短縮することが可能になる。また、この制御装置では、コントローラはハンマグラブ高さが設定高さに達すると、ハンマグラブの下降速度が所定の速度に近づくようにウインチドラムに対するブレーキを調節するので、下降速度が大きくなり過ぎることが抑制される。従って、この制御装置は、ハンマグラブ作業のサイクルタイムが長くなることを抑制しつつ、ハンマグラブの破損を抑制することができる。
【0009】
前記コントローラは、前記ハンマグラブが前記底部に着地した後に前記ワイヤロープが前記ウインチドラムから余分に繰り出されることが抑制されるように前記ウインチドラムに対するブレーキを調節する制御を行うことが好ましい。この構成では、ハンマグラブが底部に着地した後にワイヤロープがウインチドラムから余分に繰り出されることが抑制されるので、ハンマグラブの着地後にウインチドラムが慣性で回り続けることを抑制することができる。これにより、その後に行われるワイヤロープの巻き取り時にウインチドラムに対するワイヤロープの巻き取り状態が乱れること(いわゆる乱巻き)が抑制される。
【0010】
前記制御装置は、オペレータによる前記設定高さの入力を受ける入力器をさらに備え、前記コントローラは、前記入力に基づいて前記設定高さを設定してもよい。この構成では、オペレータは、例えば、作業対象の状態、建設機械の特性、オペレータの技量などを考慮して設定高さを自由に設定することができる。
【0011】
前記コントローラは、前記目標速度と、前記ハンマグラブが下降するときの目標の加速度(減速度)と、を用いて前記設定高さを決定してもよい。この構成では、オペレータが非熟練者であっても、適切な設定高さがコントローラにより自動で設定される。また、この構成では、コントローラにより目標速度と目標の加速度(減速度)とを考慮した適切な設定高さが設定されることが可能になる。具体的には、コントローラは、目標速度と目標の加速度(減速度)とを用いてできるだけ小さい設定高さを設定し、これにより、ハンマグラブが自由落下する距離をできるだけ長く設定することが可能になり、サイクルタイムをより効果的に減少させることができる。
【0012】
前記制御装置は、前記ワイヤロープに作用する前記ハンマグラブの荷重であるハンマグラブ荷重を検出する荷重値検出器をさらに備え、前記コントローラは、前記ハンマグラブが前記底部に接地している状態から前記ワイヤロープが前記ウインチドラムによって巻き取られることにより前記ハンマグラブ荷重が増加する荷重変化に基づいて前記ハンマグラブが前記底部から離れるときの高さ位置である地離れ高さを判定し、前記地離れ高さを原点として前記ハンマグラブ高さを演算することが好ましい。この構成では、コントローラは、ハンマグラブが底部から離れるときの高さ位置である地離れ高さを、繰り返し行われるハンマグラブ作業ごとに取得することができる。しかも、ハンマグラブ荷重を検出する荷重値検出器はもともと建設機械に搭載されていることが比較的多く、この場合、荷重値検出器を別途追加する必要がないので、コストアップを抑制できる。
【0013】
前記コントローラは、前記荷重値検出器から入力される前記荷重変化に関する荷重変化情報と、前記ハンマグラブが前記底部から離れる時点から前記荷重変化情報が前記荷重値検出器から前記コントローラに入力されるまでの遅れ時間と、を用いて前記地離れ高さを判定することが好ましい。この構成では、地離れ高さがより正確に判定されるので、ハンマグラブ高さの演算精度がより向上する。
【0014】
前記コントローラは、前記ハンマグラブが前記底部に着地した後にオペレータによる巻き上げ操作が行われると、ほぐし作業を行うための制御であるほぐし制御を行うことが好ましい。この構成では、ハンマグラブ作業においてハンマグラブが底部に着地した後に、ほぐし作業を円滑に開始することができる。
【0015】
本開示に係る建設機械は、上述した制御装置と、前記ウインチドラムと、を備える。この建設機械は、ハンマグラブ作業のサイクルタイムが長くなることを抑制しつつ、ハンマグラブの破損を抑制することができる。
【0016】
本開示に係る建設機械の制御方法は、ウインチドラムからワイヤロープを繰り出すことによりハンマグラブを落下させてハンマグラブ作業を行うための方法である。当該制御方法は、前記ハンマグラブ作業の作業対象における底部からの前記ハンマグラブの高さであるハンマグラブ高さを取得することと、前記ハンマグラブ高さが前記底部より上に設定された設定高さよりも高い場合には前記ハンマグラブを自由落下させ、前記ハンマグラブ高さが前記設定高さ以下である場合には前記ハンマグラブの下降速度が所定の目標速度に近づくように前記ウインチドラムに対するブレーキを調節することと、を備える。この制御方法は、ハンマグラブ作業のサイクルタイムが長くなることを抑制しつつ、ハンマグラブの破損を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本開示によれば、ハンマグラブ作業のサイクルタイムが長くなることを抑制しつつ、ハンマグラブの破損を抑制することができる建設機械の制御装置、建設機械、及び建設機械の制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施形態に係る制御装置を備えた建設機械を示す側面図である。
【
図3】前記制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】前記制御装置により制御されるハンマグラブの落下速度の変化の一例を示すグラフである。
【
図5】前記制御装置により制御されるハンマグラブの落下速度の変化の他の例を示すグラフである。
【
図6】作業対象における底部に対するハンマグラブの高さ位置と荷重値との関係を示すグラフである。
【
図7】実際の荷重値の変化に対し、荷重値検出器により計測される荷重値の変化の遅れを表すグラフである。
【
図8】前記制御装置のコントローラが行う演算制御動作を示すフローチャートである。
【
図9】前記コントローラが行う演算制御動作を示すフローチャートである。
【
図10】前記建設機械の油圧回路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、前記実施形態に係る建設機械であるクレーン200を示す。このクレーン200は、オールケーシング工法を用いたハンマグラブ作業を行うことができる。
図1に示すように、このハンマグラブ作業は、作業対象である地盤(地中)に押し込まれた筒状の部材であるケーシング11内においてハンマグラブ10を落下させることでケーシング11内の土砂を掘削する掘削作業と、掘削された土砂を保持するハンマグラブ10を上昇させてケーシング11の外に土砂を排出する排出作業と、を含む。
【0021】
このクレーン200は、下部体201と、この下部体201の上に旋回可能に支持される上部旋回体202と、この上部旋回体202に起伏可能に支持される起伏部材204と、複数のウインチと、ハンマグラブ10と、を備える。
【0022】
下部体201は、例えばクローラ走行装置などの走行装置を備え、自走可能なように構成される。ただし、下部体は、上部旋回体202を旋回可能に支持するものであればよく、自走可能ではない支持台のような構造体により構成されていてもよい。
【0023】
上部旋回体202は、下部体201に旋回可能に取り付けられた旋回フレーム203と、旋回フレーム203の前部に支持されたキャビンと、旋回フレーム203の後部に支持されたカウンタウエイトと、を備える。
【0024】
起伏部材204は、旋回フレーム203に起伏可能に支持されたブームにより構成される。ただし、起伏部材は、ブームと、このブームの先端部に回動可能に支持されたジブと、を含むものであってもよい。旋回フレーム203の上にはガントリ207が立設されている。ガントリ207の上端部には下部スプレッダ210が配置されている。起伏部材204の先端部にはガイライン208の一端が接続されており、ガイライン208の他端には上部スプレッダ209が接続されている。下部スプレッダ210と上部スプレッダ209とは互いに離間して配置されている。下部スプレッダ210及び上部スプレッダ209には、起伏ワイヤロープ211が掛け回されている。
【0025】
複数のウインチは、主巻ウインチWC1、補巻ウインチWC2及び起伏ウインチWC3を含む。本実施形態では、複数のウインチは上部旋回体202に支持されているが、複数のウインチの少なくとも一つが例えば起伏部材204に支持されていてもよい。
【0026】
起伏ウインチWC3は、起伏ワイヤロープ211が巻き付けられたウインチドラムDR3を有する。起伏ウインチWC3は、起伏ワイヤロープ211の巻き取り又は繰り出しを行うことにより下部スプレッダ210に対する上部スプレッダ209の離間距離を縮小又は拡大させる。当該離間距離の縮小又は拡大に伴って、起伏部材204が起伏される。
【0027】
主巻ウインチWC1は、主巻ワイヤロープR1の巻き取り及び繰り出しを行うための装置である。補巻ウインチWC2は、補巻ワイヤロープR2の巻き取り及び繰り出しを行うための装置である。
【0028】
図2は、クレーン200が備える油圧回路を示す図である。
図1及び
図2に示すように、主巻ウインチWC1は、主巻ワイヤロープR1が巻き付けられたウインチドラムである主巻ドラムDR1と、この主巻ドラムDR1を駆動する主巻モータ34と、主巻クラッチブレーキ48と、減速機47と、を有する。
【0029】
補巻ウインチWC2の構成は、主巻ウインチWC1の構成と実質的に同じである。従って、
図2の油圧回路では、主巻ウインチWC1の構成が代表して描かれており、補巻ウインチWC2の構成の図示は省略されている。補巻ウインチWC2は、補巻ワイヤロープR2が巻き付けられたウインチドラムである補巻ドラムDR2と、この補巻ドラムDR2を駆動する補巻モータ35と、補巻クラッチブレーキ49と、減速機47と、を有する。
【0030】
図1に示すように、ハンマグラブ10は、胴体10Aと、グラブ10Bと、クラウン10Cと、を備える。グラブ10Bは、胴体10Aの下部に開閉可能に取り付けられている。クラウン10Cは、グラブ10Bの開状態と閉状態を切り換えるための部材である。
図1の具体例では、クラウン10Cは胴体10Aよりも上方に配置されている。
【0031】
起伏部材204の先端部には、主巻ポイントシーブ205及び補巻ポイントシーブ206が取り付けられている。主巻ワイヤロープR1は、主巻ポイントシーブ205に巻き掛けられた状態で当該主巻ポイントシーブ205から垂れ下がっている。補巻ワイヤロープR2は、補巻ポイントシーブ206に巻き掛けられた状態で当該補巻ポイントシーブ206から垂れ下がっている。主巻ワイヤロープR1は、ハンマグラブ10の胴体10A及びグラブ10Bを吊り下げるためのワイヤロープであり、補巻ワイヤロープR2は、クラウン10Cを吊り下げるためのワイヤロープである。
【0032】
ハンマグラブ10は、例えば次のように動作する。まず、主巻ドラムDR1から主巻ワイヤロープR1が繰り出されることによってハンマグラブ10がケーシング11内において作業対象(掘削対象)である地盤の底部12に落下する。ハンマグラブ10は、落下に伴うエネルギーを利用して底部12の土砂を掘削する。その後、主巻ウインチWC1により主巻ワイヤロープR1が巻き取られてグラブ10Bが閉じることにより、グラブ10Bに土砂が保持される。そして、主巻ウインチWC1により主巻ワイヤロープR1がさらに巻き取られてハンマグラブ10がケーシング11外に出され、上部旋回体202が旋回することでハンマグラブ10が所定位置の上に移動した後、補巻ウインチWC2の補巻ドラムDR2から補巻ワイヤロープR2が繰り出される。そうすると、クラウン10Cがハンマグラブ10の胴体10Aに嵌合する。これにより、補巻ワイヤロープR2に胴体10A及びクラウン10Cが吊下げられ、かつ、グラブ10Bは開放可能な状態となる。この状態で主巻ウインチWC1の主巻ドラムDR1から主巻ワイヤロープR1が繰り出されることによりグラブ10Bが開いてハンマグラブ10から土砂が前記所定位置に排土される。
【0033】
主巻モータ34及び補巻モータ35のそれぞれは、油圧モータであり、油圧ポンプ31に接続されている。主巻モータ34は、油圧ポンプ31から吐出される作動油の供給を受けることにより主巻ドラムDR1を繰出方向及び巻取方向の何れかに回転させるように作動する。同様に、補巻モータ35は、油圧ポンプ31から吐出される作動油の供給を受けることにより補巻ドラムDR2を繰出方向及び巻取方向の何れかに回転させるように作動する。油圧ポンプ31は、図示されないエンジンなどの駆動源によって駆動される。
【0034】
主巻ウインチWC1の減速機47は、主巻モータ34の回転を減速し、主巻モータ34から主巻ドラムDR1に動力(回転力)を伝える。補巻ウインチWC2の減速機47は、補巻モータ35の回転を減速し、補巻モータ35から補巻ドラムDR2に動力(回転力)を伝える。これらの減速機47のそれぞれは、例えば遊星歯車機構を有する。
【0035】
主巻クラッチブレーキ48は、接続状態とフリー状態との間で切り換わることが可能である。主巻クラッチブレーキ48は、前記接続状態と前記フリー状態との間で主巻モータ34と主巻ドラムDR1との連結の度合いを調節することが可能である。
【0036】
前記接続状態は、主巻モータ34の動力を主巻ドラムDR1に伝えることが可能な状態である。すなわち、前記接続状態は、主巻モータ34の動力により主巻ワイヤロープR1の繰り出し及び巻き取りが可能な状態である。従って、前記接続状態で主巻モータ34が作動すると、主巻モータ34の動力が減速機47を介して主巻ドラムDR1に伝わり、主巻ドラムDR1が回転する。主巻ドラムDR1が回転すると、主巻ワイヤロープR1の繰り出し又は巻き取りが行われる。
【0037】
前記フリー状態は、主巻ワイヤロープR1を主巻ドラムDR1からハンマグラブ10の重量によって繰り出すことが可能な状態である。すなわち、前記フリー状態は、主巻ワイヤロープR1の張力によって主巻ドラムDR1から主巻ワイヤロープR1を繰り出すことが可能な状態、つまりハンマグラブ10が自由落下することが可能な状態、である。従って、前記フリー状態では、主巻ワイヤロープR1を繰り出す繰出方向に主巻モータ34を作動させなくても、主巻ドラムDR1から主巻ワイヤロープR1を繰り出すことができる。
【0038】
同様に、補巻クラッチブレーキ49は、接続状態とフリー状態との間で切り換わることが可能である。補巻クラッチブレーキ49は、前記接続状態と前記フリー状態との間で補巻モータ35と補巻ドラムDR2との連結の度合いを調節することが可能である。
【0039】
前記接続状態は、補巻モータ35の動力を補巻ドラムDR2に伝えることが可能な状態である。すなわち、前記接続状態は、補巻モータ35の動力により補巻ワイヤロープR2の繰り出し及び巻き取りが可能な状態である。従って、前記接続状態で補巻モータ35が作動すると、補巻モータ35の動力が減速機47を介して補巻ドラムDR2に伝わり、補巻ドラムDR2が回転する。補巻ドラムDR2が回転すると、補巻ワイヤロープR2の繰り出し又は巻き取りが行われる。
【0040】
前記フリー状態は、補巻ワイヤロープR2を補巻ドラムDR2からハンマグラブ10の重量によって繰り出すことが可能な状態である。すなわち、前記フリー状態は、補巻ワイヤロープR2の張力によって補巻ドラムDR2から補巻ワイヤロープR2を繰り出すことが可能な状態である。従って、前記フリー状態では、補巻ワイヤロープR2を繰り出す繰出方向に補巻モータ35を作動させなくても、補巻ドラムDR2から補巻ワイヤロープR2を繰り出すことができる。
【0041】
主巻クラッチブレーキ48は、主巻ドラムDR1に対してブレーキ力を与えること、つまり主巻ドラムDR1にブレーキをかけること、が可能である。具体的には、主巻クラッチブレーキ48は、主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節することが可能である。
【0042】
同様に、補巻クラッチブレーキ49は、補巻ドラムDR2に対してブレーキ力を与えること、つまり補巻ドラムDR2にブレーキをかけることが可能である。具体的には、補巻クラッチブレーキ49は、補巻ドラムDR2に対するブレーキ力を調節することが可能である。
【0043】
本実施形態では、主巻クラッチブレーキ48及び補巻クラッチブレーキ49のそれぞれは、いわゆる湿式ブレーキであり、ケース40と、パイロットポンプ36から加えられる油圧によりケース40に対して変位するピストン42と、複数のブレーキディスク41(複数のクラッチプレート)と、を備える。複数のブレーキディスク41のそれぞれは、例えば作動油に浸された摩擦板である。
【0044】
複数のブレーキディスク41は、ピストン42の作動により、複数のブレーキディスク41が互いに接触した状態と、複数のブレーキディスク41が互いに離れた状態と、の間で切り換わることが可能である。主巻クラッチブレーキ48及び補巻クラッチブレーキ49のそれぞれは、複数のブレーキディスク41が互いに離れた状態であるときには前記フリー状態となり、これにより、ハンマグラブ10は自重により下降(自由落下)することが可能になる。また、主巻クラッチブレーキ48及び補巻クラッチブレーキ49のそれぞれは、複数のブレーキディスク41が互いに接触した状態になることにより、前記接続状態となる。
【0045】
より具体的には、主巻クラッチブレーキ48及び補巻クラッチブレーキ49のそれぞれは、バネ46を備える。主巻クラッチブレーキ48及び補巻クラッチブレーキ49のそれぞれのケース40内には一対の油室43,44が形成されている。ピストン42は、一対の油室43,44を仕切る仕切り45を有する。バネ46は、複数のブレーキディスク41が互いに近づく方向にピストン42を付勢する。
【0046】
例えばパイロットポンプ36から一対の油室43,44に加えられる油圧が同じである場合には、バネ46の付勢力を受けるピストン42が複数のブレーキディスク41を押すことで複数のブレーキディスク41は、互いに接触した状態となる。パイロットポンプ36から一方の油室44に加えられる油圧が他方の油室43に加えられる油圧よりも所定の大きさ以上に大きくなると、複数のブレーキディスク41は、互いに離れた状態となる。すなわち、主巻クラッチブレーキ48及び補巻クラッチブレーキ49のそれぞれでは、油室44に加えられる油圧と油室43に加えられる油圧との差に応じて複数のブレーキディスク41の接触の度合いが変化する。従って、主巻クラッチブレーキ48は、油室43と油室44の差に応じて主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節することができ、補巻クラッチブレーキ49は、油室43と油室44との差に応じて補巻ドラムDR2に対するブレーキ力を調節することができる。
【0047】
クレーン200は、主巻ドラムDR1及び補巻ドラムDR2の動作を制御することによりハンマグラブ10を動作させるための制御装置を備える。
図3は、当該制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図2及び
図3に示すように、この制御装置は、複数の操作器と、複数のバルブと、ドラム回転検出器と、モニタスイッチ105と、荷重値検出器106と、一時キャンセルスイッチ107と、コントローラ101と、を備える。
【0048】
複数の操作器は、主巻ウインチ操作器51と、補巻ウインチ操作器53と、主巻ブレーキ操作器52と、補巻ブレーキ操作器54と、を含む。
【0049】
主巻ウインチ操作器51は、オペレータによる主巻ウインチ操作が入力される主巻レバー51Aと、入力された主巻ウインチ操作の方向及び操作量を検出する主巻レバー入力検出器51Bと、を備える。主巻レバー入力検出器51Bは、検出結果をコントローラ101に入力する。主巻ウインチ操作は、主巻ワイヤロープR1を巻き上げる巻き上げ操作と、主巻ワイヤロープR1を繰り出す繰り出し操作と、を含む。
【0050】
補巻ウインチ操作器53は、オペレータによる補巻ウインチ操作が入力される補巻レバー53Aと、入力された補巻ウインチ操作の方向及び操作量を検出する補巻レバー入力検出器53Bと、を備える。補巻レバー入力検出器53Bは、検出結果をコントローラ101に入力する。
【0051】
主巻ブレーキ操作器52は、オペレータによる主巻ブレーキ操作が入力される主巻ペダル52Aを備える。
【0052】
補巻ブレーキ操作器54は、オペレータによる補巻ブレーキ操作が入力される補巻ペダル54Aを備える。
【0053】
複数のバルブは、主巻ドラムDR1の動作を制御するための主巻バルブ群と、補巻ドラムDR2の動作を制御するための補巻バルブ群と、を含む。
図2に示すように、主巻バルブ群は、主巻制御弁32と、繰出比例弁61Aと、巻取比例弁61Bと、主巻ブレーキ制御比例弁62と、主巻ペダル比例弁67と、ブレーキ系統切換弁65と、モード切換弁66と、緊急ブレーキ切換弁69と、を含む。補巻バルブ群の構成は、主巻バルブ群の構成と実質的に同じである。従って、
図2の油圧回路では、主巻バルブ群が代表して描かれており、補巻バルブ群の図示は省略されている。補巻バルブ群は、補巻制御弁33と、繰出比例弁63Aと、巻取比例弁63Bと、補巻ブレーキ制御比例弁64と、補巻ペダル比例弁68と、ブレーキ系統切換弁65と、モード切換弁66と、緊急ブレーキ切換弁69と、を含む。
【0054】
主巻制御弁32は、油圧ポンプ31と主巻モータ34との間に介在し、補巻制御弁33は、油圧ポンプ31と補巻モータ35との間に介在する。主巻制御弁32及び補巻制御弁33のそれぞれは、繰出パイロットポートと巻取パイロットポートを有する。
【0055】
主巻制御弁32は、両パイロットポートにパイロット圧が加えられていないときには、中立位置に保持されて主巻モータ34を油圧ポンプ31から遮断する。主巻制御弁32は、繰出パイロットポートにパイロット圧が加えられたときには、主巻モータ34を繰出方向に回転させるための油路を形成するように開弁する。主巻制御弁32は、巻取パイロットポートにパイロット圧が加えられたときには、主巻モータ34を巻取方向に回転させるための油路を形成するように開弁する。
【0056】
同様に、補巻制御弁33は、両パイロットポートにパイロット圧が加えられていないときには、中立位置に保持されて補巻モータ35を油圧ポンプ31から遮断する。補巻制御弁33は、繰出パイロットポートにパイロット圧が加えられたときには、補巻モータ35を繰出方向に回転させるための油路を形成するように開弁する。補巻制御弁33は、巻取パイロットポートにパイロット圧が加えられたときには、補巻モータ35を巻取方向に回転させるための油路を形成するように開弁する。
【0057】
繰出比例弁61Aは、図示されない油圧源と主巻制御弁32の繰出パイロットポートとの間に介在する。繰出比例弁61Aは、例えば電磁比例弁である。繰出比例弁61Aは、コントローラ101から入力される主巻繰出指令に応じた2次圧であるパイロット圧を生成し、当該パイロット圧を主巻制御弁32の繰出パイロットポートに入力する。これにより、主巻制御弁32の開度は主巻繰出指令に応じた大きさに調節され、主巻モータ34がパイロット圧に応じた速度で繰出方向に回転する。
【0058】
巻取比例弁61Bは、前記油圧源と主巻制御弁32の巻取パイロットポートとの間に介在する。巻取比例弁61Bは、例えば電磁比例弁である。巻取比例弁61Bは、コントローラ101から入力される主巻巻取指令に応じた2次圧であるパイロット圧を生成し、当該パイロット圧を主巻制御弁32の巻取パイロットポートに入力する。これにより、主巻制御弁32の開度は主巻巻取指令に応じた大きさに調節され、主巻モータ34がパイロット圧に応じた速度で巻取方向に回転する。
【0059】
同様に、繰出比例弁63Aは、前記油圧源と補巻制御弁33の繰出パイロットポートとの間に介在する。繰出比例弁63Aは、例えば電磁比例弁である。繰出比例弁63Aは、コントローラ101から入力される補巻繰出指令に応じた2次圧であるパイロット圧を生成し、当該パイロット圧を補巻制御弁33の繰出パイロットポートに入力する。これにより、補巻制御弁33の開度は補巻繰出指令に応じた大きさに調節され、補巻モータ35がパイロット圧に応じた速度で繰出方向に回転する。
【0060】
巻取比例弁63Bは、前記油圧源と補巻制御弁33の巻取パイロットポートとの間に介在する。巻取比例弁63Bは、例えば電磁比例弁である。巻取比例弁63Bは、コントローラ101から入力される補巻巻取指令に応じた2次圧であるパイロット圧を生成し、当該パイロット圧を補巻制御弁33の巻取パイロットポートに入力する。これにより、補巻制御弁33の開度は補巻巻取指令に応じた大きさに調節され、補巻モータ35がパイロット圧に応じた速度で巻取方向に回転する。なお、前記油圧源は、パイロットポンプ36であってもよく、パイロットポンプ36とは別のポンプであってもよい。
【0061】
主巻ブレーキ制御比例弁62は、パイロットポンプ36と主巻クラッチブレーキ48との間に介在する。主巻ブレーキ制御比例弁62は、例えば電磁比例弁である。主巻ブレーキ制御比例弁62は、コントローラ101から入力される主巻ブレーキ指令に応じた2次圧(主巻パイロット圧)を生成し、この2次圧は、主巻クラッチブレーキ48の油室43に入力される。すなわち、主巻ブレーキ制御比例弁62は、コントローラ101から入力される主巻ブレーキ指令に応じたブレーキ力を、主巻クラッチブレーキ48において発生させることができる。
【0062】
同様に、補巻ブレーキ制御比例弁64は、パイロットポンプ36と補巻クラッチブレーキ49との間に介在する。補巻ブレーキ制御比例弁64は、例えば電磁比例弁である。補巻ブレーキ制御比例弁64は、コントローラ101から入力される補巻ブレーキ指令に応じた2次圧(補巻パイロット圧)を生成し、この2次圧は、補巻クラッチブレーキ49の油室43に入力される。すなわち、補巻ブレーキ制御比例弁64は、コントローラ101から入力される補巻ブレーキ指令に応じたブレーキ力を、補巻クラッチブレーキ49において発生させることができる。
【0063】
主巻ペダル比例弁67は、パイロットポンプ36と主巻クラッチブレーキ48との間に介在する。主巻ペダル比例弁67は、オペレータによって主巻ペダル52Aに入力される主巻ブレーキ操作の操作量に応じた2次圧(主巻パイロット圧)を生成し、この2次圧は、主巻クラッチブレーキ48の油室43に入力される。すなわち、主巻ペダル比例弁67は、オペレータによる主巻ブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力を、主巻クラッチブレーキ48において発生させることができる。
【0064】
同様に、補巻ペダル比例弁68は、パイロットポンプ36と補巻クラッチブレーキ49との間に介在する。補巻ペダル比例弁68は、オペレータによって補巻ペダル54Aに入力される補巻ブレーキ操作の操作量に応じた2次圧(補巻パイロット圧)を生成し、この2次圧は、補巻クラッチブレーキ49の油室43に入力される。すなわち、補巻ペダル比例弁68は、オペレータによる補巻ブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力を、補巻クラッチブレーキ49において発生させることができる。
【0065】
モード切換弁66は、迂回油路が形成される状態と、比例弁油路が形成される状態と、を切り換えるための切換弁である。モード切換弁66は、ブレーキ系統切換弁65と主巻クラッチブレーキ48との間に介在する。
【0066】
迂回油路は、パイロットポンプ36が主巻ブレーキ制御比例弁62及び主巻ペダル比例弁67を迂回して主巻クラッチブレーキ48の油室43に接続される油路である。すなわち、迂回油路は、パイロットポンプ36がこれらの比例弁62,67を介さずに主巻クラッチブレーキ48の油室43に接続される油路である。
【0067】
比例弁油路は、パイロットポンプ36が主巻ブレーキ制御比例弁62及び主巻ペダル比例弁67の何れか一方を介して主巻クラッチブレーキ48の油室43に接続される油路である。比例弁油路は、ブレーキ制御比例弁油路と、ペダル比例弁油路と、を含む。ブレーキ制御比例弁油路は、パイロットポンプ36が主巻ブレーキ制御比例弁62を介して主巻クラッチブレーキ48の油室43に接続される油路である。ペダル比例弁油路は、パイロットポンプ36が主巻ペダル比例弁67を介して主巻クラッチブレーキ48の油室43に接続される油路である。
【0068】
具体的には、例えば、モード切換弁66は、コントローラ101から入力される指令に応じて、迂回油路を形成する位置である迂回油路形成位置(
図2の右側位置)と、比例弁油路を形成する位置である比例弁油路形成位置(
図2の左側位置)と、の間で切り換わることが可能なスプールを有する2位置型の電磁切換弁であってもよい。
図2に示す具体例では、モード切換弁66のソレノイドが非励磁状態であるときには、モード切換弁66のスプールは迂回油路形成位置に配置され、モード切換弁66のソレノイドが励磁状態であるときには、モード切換弁66のスプールは比例弁油路形成位置に配置される。ただし、モード切換弁66の構造はこの具体例に限られない。モード切換弁66は、ソレノイドが励磁状態であるときにスプールが迂回油路形成位置に配置され、ソレノイドが非励磁状態であるときにスプールが比例弁油路形成位置に配置されるように構成されていてもよい。
【0069】
ブレーキ系統切換弁65は、前記ブレーキ制御比例弁油路が形成される状態と、前記ペダル比例弁油路が形成される状態と、を切り換えるための切換弁である。ブレーキ系統切換弁65は、比例弁62,67とモード切換弁66との間に介在する。
【0070】
具体的には、例えば、ブレーキ系統切換弁65は、コントローラ101から入力される指令に応じて、ブレーキ制御比例弁油路を形成する位置であるブレーキ制御比例弁油路形成位置(
図2の下側位置)と、ペダル比例弁油路を形成する位置であるペダル比例弁油路形成位置(
図2の上側位置)と、の間で切り換わることが可能なスプールを有する2位置型の電磁切換弁であってもよい。
図2に示す具体例では、ブレーキ系統切換弁65のソレノイドが非励磁状態であるときには、ブレーキ系統切換弁65のスプールはペダル比例弁油路形成位置に配置され、ブレーキ系統切換弁65のソレノイドが励磁状態であるときには、ブレーキ系統切換弁65のスプールはブレーキ制御比例弁油路形成位置に配置される。ただし、ブレーキ系統切換弁65の構造はこの具体例に限られない。ブレーキ系統切換弁65は、ソレノイドが励磁状態であるときにスプールがペダル比例弁油路形成位置に配置され、ソレノイドが非励磁状態であるときにスプールがブレーキ制御比例弁油路形成位置に配置されるように構成されていてもよい。
【0071】
補巻バルブ群のモード切換弁66は、迂回油路が形成される状態と、比例弁油路が形成される状態と、を切り換えるための切換弁である。補巻バルブ群のブレーキ系統切換弁65は、前記ブレーキ制御比例弁油路が形成される状態と、前記ペダル比例弁油路が形成される状態と、を切り換えるための切換弁である。補巻バルブ群のブレーキ系統切換弁65及びモード切換弁66の構成は、上述した主巻バルブ群のブレーキ系統切換弁65及びモード切換弁66の構成と実質的に同じであるので、これらについての詳細な説明は省略する。
【0072】
緊急ブレーキ切換弁69は、主巻クラッチブレーキ48の油室44がパイロットポンプ36に接続されるポンプ接続状態と、油室44がタンクに接続されるタンク接続状態と、を切り換えるための切換弁である。具体的には、例えば、緊急ブレーキ切換弁69は、パイロットポンプ36からの作動油が油室44に供給されることを許容する供給位置(
図2の左側位置)と、油室44内の作動油が油室44からタンクに排出されることを許容する排出位置(
図2の右側位置)と、の間で切り換わることが可能なスプールを有する2位置型の電磁切換弁であってもよい。
【0073】
通常時には、コントローラ101は、
図2に示すように、緊急ブレーキ切換弁69のスプールを供給位置にセットし、緊急ブレーキ切換弁69の状態をポンプ接続状態とする。一方、緊急時には、コントローラ101は、緊急ブレーキ切換弁69のスプールを供給位置から排出位置に切り換える。すなわち、緊急ブレーキ切換弁69の状態は、ポンプ接続状態からタンク接続状態に切り換わり、油室44はタンクに接続される。これにより、主巻ドラムDR1に対するブレーキ力が発生した状態、すなわち主巻ドラムDR1に対するブレーキがかかった状態となるので、主巻ドラムDR1の回転が減速して停止する。補巻バルブ群の緊急ブレーキ切換弁69の構成は、上述した主巻バルブ群の緊急ブレーキ切換弁69の構成と実質的に同じであるので、それについての詳細な説明は省略する。
【0074】
ドラム回転検出器は、主巻回転センサ81と、補巻回転センサ82と、を含む。主巻回転センサ81は、主巻ドラムDR1の回転量である主巻回転量ωmを検出し、主巻回転量ωmの検出結果をコントローラ101に入力する。補巻回転センサ82は、補巻ドラムDR2の回転量である補巻回転量ωaを検出し、補巻回転量ωaの検出結果をコントローラ101に入力する。なお、主巻回転センサ81は、主巻ドラムDR1の回転量に対応する他の部材の動き(例えば、主巻ポイントシーブ205の回転量)を検出するセンサであってもよい。同様に、補巻回転センサ82は、補巻ドラムDR2の回転量に対応する他の部材の動き(例えば、補巻ポイントシーブ206の回転量)を検出するセンサであってもよい。
【0075】
モニタスイッチ105は、ハンマグラブ10の重さであるハンマグラブ重さを設定するために用いられる入力器である。オペレータがハンマグラブ重さを設定したいときにオペレータがモニタスイッチ105を押すことでハンマグラブ重さがコントローラ101に記憶される。モニタスイッチ105は、例えば、上部旋回体202のキャビン内に配置された図略のモニタに設けられていてもよく、上部旋回体202の外においてオペレータが操作可能な携帯情報端末に設けられていてもよい。
【0076】
荷重値検出器106は、ハンマグラブ重さに相関する荷重値を検出することができるセンサである。本実施形態では、荷重値検出器106は、主巻ワイヤロープR1に作用する荷重値を検出するセンサである。荷重値検出器106は、荷重値の検出結果をコントローラ101に入力する。主巻ワイヤロープR1に作用する荷重値はハンマグラブ重さに相関する値であるので、コントローラ101は、荷重値検出器106から入力される検出結果に基づいてハンマグラブ重さに関する情報を取得することができる。具体的には、例えば、荷重値検出器106は、主巻ワイヤロープR1に接続されたロードセルを含んでいてもよい。
【0077】
一般に、クレーンは、モーメントリミッタ(過負荷防止装置)を備えている。このモーメントリミッタは、ブームを含む起伏部材の長さ、起伏部材の角度(姿勢)、ロープの張力などの情報を用いて、クレーンに作用するモーメントを演算し、演算されたモーメントが許容範囲を超えると、クレーンの動作を停止させたり、警報を発する動作を行ったりする。このモーメントリミッタは、ロードセルなどの荷重値検出器により検出されるワイヤロープの張力を用いて前記モーメントを演算する。本実施形態に係るクレーン200の荷重値検出器106は、前記モーメントを演算するための検出器としても用いられる。
【0078】
一時キャンセルスイッチ107は、オペレータが制御装置によるブレーキの自動制御を一時的に解除したいときにオペレータが入力する入力器である。
【0079】
コントローラ101(メカトロコントローラ)は、クレーン200の動作を制御する。コントローラ101は、CPU、MPUなどの演算処理装置と、メモリと、を含む。
【0080】
図3に示すように、コントローラ101は、主巻ドラム巻き層演算部108と、補巻ドラム巻き層演算部109と、初期設定部110と、ハンマグラブ高さ演算部111と、制御状態切換部112と、着地時自動ブレーキ制御演算部113と、衝撃力調整制御演算部114と、ほぐし制御演算部115(制御なし演算部115)と、自動ブレーキ無効制御演算部116(ブレーキ制御無効演算部116)と、主巻ブレーキ制御比例弁指令電流値演算部117と、切換弁指令電流値演算部118と、を備える。
【0081】
主巻ドラム巻き層演算部108は、ドラム回転検出器の主巻回転センサ81が検出する主巻回転量ωmを用いて主巻ドラムDR1に巻かれている主巻ワイヤロープR1の巻き層を演算する。巻き層は、主巻ドラムDR1に巻かれている主巻ワイヤロープR1の層数のことである。主巻ドラムDR1の直径及び軸方向の長さを含む主巻ドラムDR1のサイズ、主巻ワイヤロープR1の直径などの情報は、コントローラ101に予め記憶されている。従って、主巻ドラム巻き層演算部108は、主巻ドラムDR1の基準位置からの回転数を主巻回転量ωmを用いて得ることができ、その時点における主巻ワイヤロープR1の層数(巻き層)を演算することもできる。
【0082】
補巻ドラム巻き層演算部109は、ドラム回転検出器の補巻回転センサ82が検出する補巻回転量ωaを用いて補巻ドラムDR2に巻かれている補巻ワイヤロープR2の巻き層を演算する。巻き層は、補巻ドラムDR2に巻かれている補巻ワイヤロープR2の層数のことである。補巻ドラムDR2の直径及び軸方向の長さを含む補巻ドラムDR2のサイズ、補巻ワイヤロープR2の直径などの情報は、コントローラ101に予め記憶されている。従って、補巻ドラム巻き層演算部109は、補巻ドラムDR2の基準位置からの回転数を補巻回転量ωaを用いて得ることができ、その時点における補巻ワイヤロープR2の層数(巻き層)を演算することもできる。
【0083】
初期設定部110は、ハンマグラブ重さを設定する。初期設定部110は、例えば、荷重値検出器106が検出する荷重値を用いてハンマグラブ重さを演算してもよい。具体的には、初期設定部110は、オペレータによりモニタスイッチ105が押された時点において荷重値検出器106が検出する荷重値をハンマグラブ重さとして設定し、設定されたハンマグラブ重さをメモリに記憶するように構成されていてもよい。また、初期設定部110は、図略の入力器に対してオペレータが入力する入力値(例えば数値)をハンマグラブ重さとして設定してもよい。
【0084】
ハンマグラブ高さ演算部111は、作業対象(掘削対象)においてその時点における穴の底部12を原点として、その時点におけるハンマグラブ10の高さであるハンマグラブ高さを演算する。ハンマグラブ高さは、ハンマグラブ10が底部12よりも上にあるときに正の値となる。ハンマグラブ高さ演算部111は、ハンマグラブ作業中にハンマグラブ高さを周期的に繰り返し演算することで、ハンマグラブ作業中におけるハンマグラブ高さをリアルタイムで取得する。ハンマグラブ高さ演算部111は、ドラム回転検出器の主巻回転センサ81からコントローラ101に入力される主巻回転量ωmの検出結果を用いてハンマグラブ高さを演算することができる。ハンマグラブ高さ演算部111は、主巻回転センサ81からコントローラ101に入力される主巻回転量ωmの検出結果と、主巻ドラム巻き層演算部108により演算される主巻ワイヤロープR1の層数(巻き層)と、を用いてハンマグラブ高さを演算することで、層数が考慮されたより正確なハンマグラブ高さを取得することができる。
【0085】
ハンマグラブ高さ演算部111は、ハンマグラブ高さの基準である前記原点、すなわち穴の底部12の位置を、例えば次のように取得することができる。ハンマグラブ高さ演算部111は、ハンマグラブ10が穴の底部12に接地している状態から主巻ワイヤロープR1が主巻ドラムDR1によって巻き取られる過程において、荷重値検出器106により検出される荷重値が増加する荷重変化に基づいてハンマグラブ10が底部12から離れるときの高さ位置である地離れ高さを判定することができる。ハンマグラブ高さ演算部111は、この地離れ高さをその時点における原点に設定する。
【0086】
制御状態切換部112は、クレーン200の制御状態が予め設定されている複数の制御状態のうちの何れであるかを決定する。複数の制御状態は、着地時自動ブレーキ状態と、衝撃力調整状態と、ほぐし制御状態(制御なし状態)と、自動ブレーキ無効制御状態(ブレーキ制御無効状態)と、を含む。
【0087】
制御状態切換部112は、例えば、ハンマグラブ高さ、ハンマグラブ重さ、主巻ペダル入力、荷重値、一時キャンセルスイッチ107に対する入力などの情報を用いて、複数の制御状態の何れかを選択することができる。制御状態切換部112の詳細については後述する。
【0088】
着地時自動ブレーキ制御演算部113は、制御状態切換部112が制御状態を着地時自動ブレーキ状態に決定すると、着地時自動ブレーキ制御を実行する。着地時自動ブレーキ制御の詳細については後述する。
【0089】
衝撃力調整制御演算部114は、制御状態切換部112が制御状態を衝撃力調整状態に決定すると、衝撃力調整制御を実行する。衝撃力調整制御の詳細については後述する。
【0090】
ほぐし制御演算部115(制御なし演算部115)は、制御状態切換部112が制御状態をほぐし制御状態(制御なし状態)に決定すると、ほぐし制御を実行する。ほぐし制御の詳細については後述する。
【0091】
自動ブレーキ無効制御演算部116(ブレーキ制御無効演算部116)は、制御状態切換部112が制御状態を自動ブレーキ無効制御状態(ブレーキ制御無効状態)に決定すると、自動ブレーキ無効制御を実行する。自動ブレーキ無効制御の詳細については後述する。
【0092】
主巻ブレーキ制御比例弁指令電流値演算部117は、演算部113-116のそれぞれが演算する演算結果に基づいて、主巻ブレーキ制御比例弁62に入力するための主巻ブレーキ指令(指令電流値)を演算する。
【0093】
切換弁指令電流値演算部118は、演算部113-116のそれぞれが演算する演算結果に基づいて、ブレーキ系統切換弁65に入力するための指令(指令電流値)とモード切換弁66に入力するための指令(指令電流値)を演算する。
【0094】
以下、本実施形態に係るクレーン200の制御装置が行う衝撃力調整制御、着地時自動ブレーキ制御、ほぐし制御、及び自動ブレーキ無効制御について説明する。
【0095】
[衝撃力調整制御]
この衝撃力調整制御において、コントローラ101は、ハンマグラブ高さが底部12より上に設定された設定高さHsよりも高い場合にはハンマグラブ10を自由落下させ、ハンマグラブ高さが設定高さHs以下である場合にはハンマグラブ10の下降速度が所定の目標速度Vs(
図4参照)に近づくように主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節する。
【0096】
この衝撃力調整制御では、コントローラ101は、
図1に示すように、作業開始位置P1、減速制御開始位置P2及び着地位置P3の順にハンマグラブ10を落下させる。
【0097】
作業開始位置P1は、ハンマグラブ10による掘削作業を開始する位置である。この作業開始位置P1は、ハンマグラブ10の少なくとも一部がケーシング11内に配置され、かつ、ハンマグラブ10がケーシング11の上部に配置されるような位置である。衝撃力調整制御が開示される前に、オペレータは、主巻レバー51Aを手動で操作することによりハンマグラブ10を作業開始位置P1に配置する。作業開始位置P1は、設定高さHsよりも上方の位置である。
【0098】
減速制御開始位置P2は、ハンマグラブ10の下降速度を目標速度に近づける減速制御が開始される位置である。
【0099】
着地位置P3は、ハンマグラブ10が穴の底部12に着地する位置である。
【0100】
目標速度Vsは、この目標速度Vsでハンマグラブ10が着地した場合でもハンマグラブ10の破損を抑制できるように着地時の衝撃力を考慮した速度に設定される。目標速度Vsは、効率的に掘削作業を行えるように許容される範囲でできるだけ大きな値に設定されることが好ましい。目標速度Vsは、例えば、ハンマグラブ10の重さ、ハンマグラブ10の強度などのハンマグラブ10の特性、作業対象の穴の底部12の土質などの作業環境、などを考慮して予め設定された値である。また、目標速度Vsは、作業対象の土質(土の状態、土の硬さなど)を考慮して設定されてもよい。なお、
図4に記載されているように、制御装置は、オペレータが目標速度Vsを所望の値に調整することが可能なように構成されていてもよい。この場合、制御装置は、
図2に示す設定入力器91をさらに備え、オペレータは、設定入力器91に目標速度Vsを入力し、コントローラ101は、前記入力に基づいて目標速度Vsを設定する。
【0101】
設定高さHsは、オペレータが入力する情報に基づいて設定されてもよい。この場合、オペレータは、設定入力器91に設定高さHsを入力し、コントローラ101は、前記入力に基づいて設定高さHsを設定する。
【0102】
また、設定高さHsは、コントローラ101によって自動で設定されてもよい。この場合、コントローラ101は、例えば、目標速度と、目標の加速度(減速度)と、を用いて、設定高さHsを決定してもよい。コントローラ101による設定高さHsの決定方法については後述する。
【0103】
図4は、本実施形態に係る制御装置が行う衝撃力調整制御におけるハンマグラブ10の落下速度の変化の一例を示すグラフである。
【0104】
コントローラ101は、ハンマグラブ10が
図1に示す作業開始位置P1に配置された状態で衝撃力調整制御を開始する。衝撃力調整制御は、ハンマグラブ10が作業開始位置P1から減速制御開始位置P2までの範囲にあるときに行われる自由落下制御と、ハンマグラブ10が減速制御開始位置P2から着地位置P3までの範囲にあるときに行われる減速制御と、を含む。
【0105】
コントローラ101の衝撃力調整制御演算部114は、制御状態切換部112が制御状態を衝撃力調整状態に切り換えた場合に衝撃力調整制御を実行する。制御状態切換部112は、例えば、オペレータによる掘削作業開始指示に応じて、制御状態を衝撃力調整状態に切り換えてもよい。この場合、制御装置は、
図2に示す開始指示入力器92を備え、オペレータは、開始指示入力器92に掘削作業を開始させるための入力を行い、制御状態切換部112は、制御状態を衝撃力調整状態に切り換える。
【0106】
制御状態が衝撃力調整状態に切り換わると、衝撃力調整制御演算部114は、主巻クラッチブレーキ48を前記フリー状態に切り換える制御を行う(
図4の時間t1)。これにより、
図4に示すように、ハンマグラブ10は、その自重によって自由落下を開始する。
【0107】
具体的には、制御状態が衝撃力調整状態に切り換わると、衝撃力調整制御演算部114は、モード切換弁66のスプールを比例弁油路形成位置(
図2の左側位置)に配置するための指令をモード切換弁66に出力する。これにより、主巻クラッチブレーキ48が前記フリー状態に切り換わり、ハンマグラブ10がその自重によって自由落下することが可能な状態になる。
【0108】
また、本実施形態では、制御状態が衝撃力調整状態に切り換わると、衝撃力調整制御演算部114は、ブレーキ系統切換弁65のスプールをブレーキ制御比例弁油路形成位置(
図2の下側位置)に配置するための指令をブレーキ系統切換弁65に出力する。これにより、衝撃力調整制御演算部114は、当該衝撃力調整制御演算部114から主巻ブレーキ制御比例弁62に入力する主巻ブレーキ指令(指令電流値)に応じたブレーキ力を主巻クラッチブレーキ48において発生させることができる。
【0109】
ハンマグラブ10が作業開始位置P1から減速制御開始位置P2までの範囲にあるときには、衝撃力調整制御演算部114は、主巻クラッチブレーキ48においてブレーキ力を発生させないようにハンマグラブ10の動作を制御する。従って、
図4の時間t1から時間t2までの時間帯では、ハンマグラブ10の下降速度(ハンマグラブ速度)は、
図4において実線で示されるように目標速度Vsを超える大きな値となる。衝撃力調整制御では、ハンマグラブ高さ演算部111は周期的にハンマグラブ高さを演算する。
【0110】
ハンマグラブ10が減速制御開始位置P2まで自由落下してハンマグラブ高さが設定高さHsに達すると、衝撃力調整制御演算部114は、減速制御を開始する。
【0111】
この減速制御では、衝撃力調整制御演算部114は、ハンマグラブ10の下降速度が目標速度Vsに近づくように主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節する。衝撃力調整制御演算部114は、ハンマグラブ10の下降速度が目標速度Vsに近づくように主巻ブレーキ制御比例弁62に主巻ブレーキ指令(指令電流値)を入力し、ハンマグラブ10の下降速度が目標速度Vsに近づくようなブレーキ力を主巻クラッチブレーキ48において発生させる。これにより、ハンマグラブ10の下降速度が
図4に示すように目標速度Vsに調節され、ハンマグラブ10が着地位置P3まで落下して穴の底部12に着地するときの下降速度がほぼ目標速度Vsとなる。
【0112】
本実施形態では、衝撃力調整制御演算部114は、目標速度Vsとハンマグラブ10の下降速度との差である速度差がゼロになるように主巻ブレーキ制御比例弁62の開度を調節するフィードバック制御を行ってもよい。この場合、衝撃力調整制御演算部114は、前記速度差がゼロになるように主巻ブレーキ制御比例弁62に対する主巻ブレーキ指令を演算し、当該主巻ブレーキ指令を主巻ブレーキ制御比例弁62に入力する。フィードバック制御の方式として、例えばPID制御が用いられてもよく、PI制御が用いられてもよく、P制御が用いられてもよい。PID制御の場合、衝撃力調整制御演算部114は、例えば下記の式を用いて主巻ブレーキ指令を演算してもよい。
【0113】
u(t)=Kp×e(t)+Ki∫e(t)dt+Kd(de(t)/dt)
上記の式において、「u」は、主巻ブレーキ指令であり、「Kp」、「Ki」、「Kd」は、PIDゲイン(比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲイン)であり、「e」は、速度差である。PIDゲインは、予め設定されたものであり、コントローラ101に記憶されている。
【0114】
以上のように、本実施形態に係る制御装置では、コントローラ101はハンマグラブ高さが設定高さHsに達するまではハンマグラブ10を自由落下させるので、低速区間及び高速区間においてモータの動力による巻き下げを行う従来の技術に比べて、ハンマグラブ作業のサイクルタイムを短縮することが可能になる。すなわち、ハンマグラブ高さが設定高さHsに達するまでは自由落下に伴う大きな速度でハンマグラブ10を下降させることができるので、サイクルタイムを減少させることができる。また、この制御装置では、コントローラ101はハンマグラブ高さが設定高さHsに達すると、ハンマグラブ10の下降速度が目標速度Vsに近づくように主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節するので、下降速度が大きくなり過ぎることが抑制される。従って、この制御装置は、ハンマグラブ作業のサイクルタイムが長くなることを抑制しつつ、ハンマグラブ10の破損を抑制することができる。一方、本実施形態のような減速制御が行われない場合には、
図4において破線で示されるように時間t2以降も目標速度Vsを超えた大きな速度でハンマグラブ10が底部12に着地することになる。
【0115】
図5は、本実施形態に係る制御装置が行う衝撃力調整制御におけるハンマグラブ10の落下速度の変化の変形例を示すグラフである。
図5に示す変形例は、ハンマグラブ10による掘削作業を開始する位置(作業開始位置)が設定高さHs以下である点で、
図4に示すケースと異なる。この変形例では次のような制御が行われる。
【0116】
この変形例における衝撃力調整制御は、上記のような減速制御を含む一方で、上記のような自由落下制御を含まない。すなわち、この変形例では、作業開始時点(
図5の時間t1)から減速制御が実行される。
【0117】
衝撃力調整制御演算部114は、制御状態切換部112が制御状態を衝撃力調整状態に切り換えた場合に減速制御を実行する。この減速制御では、衝撃力調整制御演算部114は、ハンマグラブ10の下降速度が目標速度Vsに近づくように主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節する。衝撃力調整制御演算部114は、ハンマグラブ10の下降速度が目標速度Vsに近づくように主巻ブレーキ制御比例弁62に主巻ブレーキ指令(指令電流値)を入力し、ハンマグラブ10の下降速度が目標速度Vsに近づくようなブレーキ力を主巻クラッチブレーキ48において発生させる。これにより、ハンマグラブ10の下降速度が
図5に示すように目標速度Vsに調節され、ハンマグラブ10が着地位置まで落下して穴の底部12に着地するときの下降速度がほぼ目標速度Vsとなる。従って、ハンマグラブ10の破損を抑制することができる。一方、変形例のような減速制御が行われない場合には、
図5において破線で示されるように目標速度Vsを超えた大きな速度でハンマグラブ10が底部12に着地することになる。
【0118】
[着地時自動ブレーキ制御]
着地時自動ブレーキ制御は、ハンマグラブ10が穴の底部12に着地した後に、主巻ワイヤロープR1が主巻ドラムDR1から余分に繰り出されること(過繰り出し)が抑制されるように主巻ドラムDR1に対するブレーキを調節するための制御である。すなわち、着地時自動ブレーキ制御は、ハンマグラブ10が穴の底部12に着地したと制御状態切換部112が判定したときに、主巻ワイヤロープR1の過繰り出しを防止するための制御である。
【0119】
制御状態切換部112は、ハンマグラブ10が着地したことを判定可能な予め設定された着地条件が満たされたことをトリガー(着地トリガー)として、ハンマグラブ10の着地を判定する。具体的には、例えば、制御状態切換部112は、初期設定部110により設定された原点とハンマグラブ高さ演算部111により演算されるハンマグラブ高さとを比較することによりハンマグラブ10の着地を判定してもよい。また、制御状態切換部112は、荷重値検出器106からコントローラ101に入力される荷重値の変化(荷重値の急激な減少)に基づいてハンマグラブ10の着地を判定してもよい。
【0120】
制御状態切換部112は、着地条件が満たされたときに制御状態を衝撃力調整状態から着地時自動ブレーキ状態に切り換え、着地時自動ブレーキ制御演算部113は、ハンマグラブ10の着地後に主巻ワイヤロープR1の過繰り出しを防止するために主巻ドラムDR1の回転に対してブレーキをかける着地時自動ブレーキ制御を実行する。本実施形態では、この着地時自動ブレーキ制御において、着地時自動ブレーキ制御演算部113は、主巻ドラムDR1の回転に対してフルブレーキ(最大ブレーキ)をかけるように主巻クラッチブレーキ48の動作を制御してもよい。
【0121】
具体的には、制御状態が着地時自動ブレーキ状態であるときには、モード切換弁66のスプールが比例弁油路形成位置(
図2の左側位置)に配置され、ブレーキ系統切換弁65のスプールがブレーキ制御比例弁油路形成位置(
図2の下側位置)に配置される。制御状態が衝撃力調整状態から着地時自動ブレーキ状態に切り換わる場合には、モード切換弁66のスプールの位置及びブレーキ系統切換弁65のスプールの位置は、衝撃力調整状態のときの位置のまま維持される。
【0122】
ハンマグラブ10が
図1における着地位置P3に達することで着地条件が満たされ、制御状態が着地時自動ブレーキ状態に切り換えられると、着地時自動ブレーキ制御演算部113は、主巻ドラムDR1の回転に対してフルブレーキがかかるような主巻ブレーキ指令(指令電流値)を主巻ブレーキ制御比例弁62に入力する。これにより、ハンマグラブ10が底部12に着地した直後に主巻クラッチブレーキ48において大きなブレーキ力が発生し、主巻ワイヤロープR1が主巻ドラムDR1から余分に繰り出されることが抑制される。その結果、ハンマグラブ10の着地後に主巻ドラムDR1が慣性で回り続けることを抑制することができる。よって、その後に行われる主巻ワイヤロープR1の巻き取り時に主巻ドラムDR1に対する主巻ワイヤロープR1の巻き取り状態が乱れること(いわゆる乱巻き)が抑制される。
【0123】
[ほぐし制御]
ほぐし制御は、例えば、穴の底部12の土をほぐして柔らかくすることで、その後に行う掘削作業の作業効率を高めるために行う作業(ほぐし作業)に用いられる。このほぐし作業では、掘削作業のように作業開始位置P1(高い位置)からハンマグラブ10を落下させるのではなく、底部12に比較的近い位置(低い位置)からハンマグラブ10を繰り返し落下させることで、底部12の土がほぐされる。
【0124】
ほぐし制御演算部115(制御なし演算部115)は、制御状態切換部112が制御状態をほぐし制御状態(制御なし状態)に決定すると、ほぐし制御を実行する。具体的には、制御状態がほぐし制御状態(制御なし状態)に切り換わると、ほぐし制御演算部115(制御なし演算部115)は、モード切換弁66のスプールを比例弁油路形成位置(
図2の左側位置)に配置するための指令をモード切換弁66に出力し、ブレーキ系統切換弁65のスプールをブレーキ制御比例弁油路形成位置(
図2の下側位置)に配置するための指令をブレーキ系統切換弁65に出力する。
【0125】
なお、制御状態切換部112は、ほぐし制御状態(制御なし状態)を、制御状態の初期設定としてもよい。制御状態切換部112は、予め定められたリセット動作が行われるまで、制御状態をほぐし制御状態(制御なし状態)に維持し、他の制御状態に遷移させない。ほぐし制御状態(制御なし状態)は、衝撃力調整制御のような自動ブレーキ制御が行われない状態である。
【0126】
前記リセット動作は、ハンマグラブ10の高さの基準となる原点を更新するための動作である。オペレータは主巻レバー51Aを手動で操作することでクレーン200にリセット動作を行わせる。リセット動作の具体例については後述する。制御状態切換部112は、リセット動作が行われた後、例えば、ハンマグラブ10の高さが予め定められた値である遷移高さ以上になったときに、ほぐし制御状態(制御なし状態)から他の制御状態に切り換える。他の制御状態としては、衝撃力調整状態を例示できる。ほぐし作業の後にハンマグラブ作業(掘削作業)が行われる場合が多いためである。
【0127】
制御状態切換部112は、ほぐし作業においてハンマグラブ10が底部12に着地することで、上述したような着地条件が満たされた場合にも、制御状態をほぐし制御状態(制御なし状態)から着地時自動ブレーキ状態に切り換え、着地時自動ブレーキ制御演算部113は、ハンマグラブ10の着地後に主巻ワイヤロープR1の過繰り出しを防止するために主巻ドラムDR1の回転に対してブレーキをかける着地時自動ブレーキ制御を実行してもよい。
【0128】
ハンマグラブ10が底部12に着地した後、オペレータは、主巻レバー51Aに対して巻き上げ操作を行う。従って、制御状態切換部112は、制御状態が着地時自動ブレーキ状態であるときに、オペレータによる巻き上げ操作が行われると、制御状態を着地時自動ブレーキ状態からほぐし制御状態(制御なし状態)に切り換えてもよい。これにより、着地後にほぐし作業を円滑に開始することができる。ただし、ハンマグラブ10の落下中にオペレータが主巻レバー51Aに対して巻き上げ操作を行うこともある。従って、制御状態切換部112は、制御状態が衝撃力調整状態又は着地時自動ブレーキ状態であるときに、オペレータによる巻き上げ操作が行われると、制御状態をほぐし制御状態(制御なし状態)に切り換えてもよい。
【0129】
[自動ブレーキ無効制御]
自動ブレーキ無効制御は、オペレータが主巻ブレーキ操作器52の主巻ペダル52Aに対してブレーキ操作(マニュアル操作)を行ったときに、従来の操作感と同じ操作感を得られるようにするための制御である。
【0130】
制御状態切換部112は、予め設定された無効条件が満たされた場合に、制御状態を自動ブレーキ無効制御状態に切り換える。具体的には、例えば、前記無効条件は、一時キャンセルスイッチ107(
図3参照)が押されることであってもよい。より具体的には、前記無効条件は、制御状態が衝撃力調整状態、ほぐし制御状態(制御なし状態)又は着地時自動ブレーキ制御状態の何れかで、主巻レバー51A及び補巻レバー53Aの何れにも操作が与えられておらず、かつ、主巻ペダル52Aにブレーキ操作が与えられているときに、一時キャンセルスイッチ107が押されることであってもよい。
【0131】
自動ブレーキ無効制御演算部116(ブレーキ制御無効演算部116)は、制御状態切換部112が制御状態を自動ブレーキ無効制御状態(ブレーキ制御無効状態)に決定すると、自動ブレーキ無効制御を実行する。具体的には、制御状態が自動ブレーキ無効制御状態に切り換わると、自動ブレーキ無効制御演算部116は、モード切換弁66のスプールを比例弁油路形成位置(
図2の左側位置)に配置するための指令をモード切換弁66に出力し、ブレーキ系統切換弁65のスプールをペダル比例弁油路形成位置(
図2の上側位置)に配置する。これにより、主巻ペダル比例弁67は、オペレータによる主巻ブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力を、主巻クラッチブレーキ48において発生させることができる。
【0132】
すなわち、ブレーキ力を自動制御するための主巻ブレーキ制御比例弁62ではなく、主巻ペダル比例弁67が主巻クラッチブレーキ48の油室43に接続される。従って、オペレータが主巻ブレーキ操作器52の主巻ペダル52Aに対してブレーキ操作(マニュアル操作)を行ったときに、主巻ドラムDR1に対して実際に発生するブレーキ力は、主巻ペダル52Aに対する主巻ブレーキ操作の操作量(ペダル操作量)に応じた大きさになるので、オペレータは、従来の操作感と同じ操作感を得られる。
【0133】
図8は、本実施形態に係る制御装置のコントローラ101が行う演算制御動作を示すフローチャートである。
【0134】
本実施形態に係る制御装置は、クレーン200の制御状態を、クレーン200が行う作業の段階に応じた制御状態に切り換えることで制御を行う。制御装置は、複数の制御状態のそれぞれの中でさらに細かく制御を管理するための複数の状態を有していてもよく、これによりクレーン200の動作が階層的に管理される。
【0135】
コントローラ101の初期設定部110は、初期設定を行う(ステップS1)。具体的には、初期設定部110は、上述したように、オペレータによりモニタスイッチ105が押された時点において荷重値検出器106が検出する荷重値をハンマグラブ重さとして設定し、設定されたハンマグラブ重さをメモリに記憶する。また、ハンマグラブ高さ演算部111は、作業対象(掘削対象)においてその時点における穴の底部12を原点に設定する。原点は、ハンマグラブ10の高さの基準である(ステップS1)。
【0136】
次に、ハンマグラブ高さ演算部111は、上述したように、作業対象(掘削対象)においてその時点における穴の底部12を原点として、その時点におけるハンマグラブ10の高さであるハンマグラブ高さを演算する(ステップS2)。
【0137】
制御状態切換部112は、ハンマグラブ高さなどの情報を用いて、制御状態を切り換える(ステップS3)。初期状態としては、制御状態が例えばほぐし制御状態(制御なし状態)に設定されていてもよい。
【0138】
制御状態切換部112は、例えば、ハンマグラブ高さ、ハンマグラブ重さ、主巻ペダル入力、荷重値、一時キャンセルスイッチ107に対する入力などの情報を用いて、複数の制御状態の何れかを選択する(ステップS4)。
【0139】
着地時自動ブレーキ制御演算部113は、制御状態切換部112が制御状態を着地時自動ブレーキ状態に決定すると、上述したような着地時自動ブレーキ制御を実行する(ステップS5)。
【0140】
衝撃力調整制御演算部114は、制御状態切換部112が制御状態を衝撃力調整状態に決定すると、上述したような衝撃力調整制御を実行する(ステップS6)。
【0141】
ほぐし制御演算部115(制御なし演算部115)は、制御状態切換部112が制御状態をほぐし制御状態(制御なし状態)に決定すると、上述したようなほぐし制御を実行する(ステップS7)。
【0142】
自動ブレーキ無効制御演算部116(ブレーキ制御無効演算部116)は、制御状態切換部112が制御状態を自動ブレーキ無効制御状態(ブレーキ制御無効状態)に決定すると、自動ブレーキ無効制御を実行する(ステップS8)。
【0143】
主巻ブレーキ制御比例弁指令電流値演算部117は、演算部113-116のうちその時の制御状態に対応する演算部が演算する演算結果に基づいて、主巻ブレーキ制御比例弁62に入力するための主巻ブレーキ指令(指令電流値)を演算する(ステップS9)。そして、主巻ブレーキ制御比例弁指令電流値演算部117は、演算された主巻ブレーキ指令を主巻ブレーキ制御比例弁62に入力する(ステップS10)。なお、それぞれの制御状態で演算された指令電流値(ブレーキ入力)にフィルタ処理等を行い、急な電流値の変化を防ぐことが好ましい。
【0144】
切換弁指令電流値演算部118は、演算部113-116のうちその時の制御状態に対応する演算部が演算する演算結果に基づいて、ブレーキ系統切換弁65に入力するための指令(指令電流値)とモード切換弁66に入力するための指令(指令電流値)を演算する(ステップS9)。そして、切換弁指令電流値演算部118は、演算された指令をブレーキ系統切換弁65及びモード切換弁66にそれぞれ入力する(ステップS10)。
【0145】
図9は、コントローラ101が行う衝撃力調整制御(
図8のステップS6)の具体例を示すフローチャートである。衝撃力調整制御演算部114は、減速制御がON状態のときには上述したような減速制御を行い、減速制御がOFF状態のときには減速制御ではなく上述したような自由落下制御を行う。
【0146】
まず、制御状態切換部112が制御状態を衝撃力調整状態に切り換えると(衝撃力調整制御ON:ステップS21)、ハンマグラブ高さ演算部111は、作業対象(掘削対象)においてその時点における穴の底部12を原点として、その時点におけるハンマグラブ高さを演算する(ステップS22)。
【0147】
次に、衝撃力調整制御演算部114は、演算されたハンマグラブ高さが設定高さHsより高いか否かを判定する(ステップS23)。ハンマグラブ高さが設定高さHsより高い場合(ステップS23においてYES)、衝撃力調整制御演算部114は、ハンマグラブ10を自由落下させる自由落下制御を行う(ステップS25)。一方、ハンマグラブ高さが設定高さHs以下である場合(ステップS23においてNO)、衝撃力調整制御演算部114は、ハンマグラブ10の下降速度が目標速度Vsに近づくように主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節する減速制御を行う(ステップS24)。
【0148】
制御状態切換部112は、前記着地条件が満たされたか否かを判定する(ステップS26)。着地条件が満たされた場合(ステップS26においてYES)、制御状態切換部112は、制御状態を衝撃力調整状態から着地時自動ブレーキ状態に切り換え、コントローラ101は、衝撃力調整制御を終了して着地時自動ブレーキ制御を行う。
【0149】
着地条件が満たされていない場合(ステップS26においてNO)、コントローラ101は、上記のステップS22-S26を繰り返す。
【0150】
図6は、作業対象における穴の底部12に対するハンマグラブ10の高さ位置と荷重値との関係を示すグラフである。
図6は、ハンマグラブ10の着地時における荷重値の減少と、ハンマグラブ10の上昇時における荷重値の増加(立ち上がり)と、を示している。
【0151】
ハンマグラブ高さは、上述したように、主巻ドラムDR1の回転量と主巻ドラムDR1の有効径(巻き層)とを用いることで演算される。
図6に示すように、荷重値検出器106により検出される荷重値(ハンマグラブ荷重)は、ハンマグラブ10が落下しているときに比べて、ハンマグラブ10が着地するとハンマグラブ10の荷重は地面に預けられるので急激に低下してほぼゼロになる(
図6の時間t3)。ハンマグラブ10が着地することで底部12の掘削が行われるので、底部12の高さ位置はハンマグラブ10の着地前に比べて低くなる。従って、掘削作業の度に、底部12の高さ位置を再設定する必要がある。すなわち、掘削作業によって穴が深くなると、その深さに応じた原点の更新が必要になる。このハンマグラブ高さの原点は、
図6の時間t4の時点のようにハンマグラブ10が底部12から離れたとき(地離れしたとき)の荷重値の変化に基づいて再設定される。
【0152】
ハンマグラブ10の着地後に主巻ドラムDR1の主巻ワイヤロープR1が巻き上げられると、ハンマグラブ10はグラブ10Bを閉じながら上昇する。この巻き上げの過程においてハンマグラブ10が底部12から離れることでハンマグラブ10の荷重が再び主巻ワイヤロープR1にかかることにより時間t4の時点で荷重値が増加する(荷重値が立ち上がる)。コントローラ101は、この荷重値の立ち上がりに基づく地離れの検出によって原点の再設定(高さリセット)を行う。この一連の動作が上述したリセット動作である。
【0153】
なお、ハンマグラブ10が最初に着地するまではハンマグラブ高さがリセットできないため、最初の掘削作業時にはオペレータが適宜ブレーキ操作を行いながらハンマグラブ10を着地させ、高さリセットを行うことで作業を開始することができる。
【0154】
ハンマグラブ高さ演算部111は、ドラム回転検出器の主巻回転センサ81から得た回転量と、主巻ドラム巻き層演算部108により演算された主巻ドラムの巻き層と、主巻レバー入力検出器51Bからコントローラ101に入力された主巻レバー入力と、荷重値検出器106からコントローラ101に入力された荷重値と、初期設定部110により設定されたハンマグラブ重さと、を用いて、上記のリセット動作を行ってもよい。
【0155】
図7は、上記のリセット動作において、実際の荷重値の変化に対し、荷重値検出器106により計測される荷重値の変化の遅れを表すグラフである。
【0156】
ハンマグラブ10が実際に地離れした時点とその地離れを示す荷重値がコントローラ101に入力される時点との間には、通信遅れ、センサの特性などに起因して、時間的な遅れが発生することがある。この場合、
図6の時間t4における荷重値の立ち上がりは遅れて検出され、荷重値検出器106により荷重値の立ち上がりが検出された時には、ハンマグラブ10はすでに宙に浮いた状態である。このため荷重値の立ち上がりタイミングでハンマグラブ高さを原点としてリセット(初期化)すると、再設定された原点と実際の底部12の高さ位置との間に誤差が発生する。
【0157】
そこで、本実施形態では、コントローラ101は、荷重値検出器106から入力される荷重変化に関する荷重変化情報と、ハンマグラブ10が底部12から離れる時点から荷重変化情報が荷重値検出器106からコントローラ101に入力されるまでの遅れ時間td(
図7参照)と、を用いて地離れ高さを判定する。すなわち、コントローラ101は、遅れ時間tdに伴う誤差の大きさを考慮して、遅れ時間前の高さを底部12(地面)として再設定する。
【0158】
具体的には、コントローラ101は、遅れ時間tdとして見込まれる遅れ見込み時間を予め記憶している。オペレータは、リセット動作を行う前に、荷重値の遅れ時間(遅れ見込み時間)を、事前にフィルタ特性、通信による遅延特性などを見積もって決定してもよい。また、遅れ見込み時間は、リセット動作を行う前に、例えばシミュレーションにより設定されてもよく、また、実際に計測された遅れ時間に基づいて設定されてもよい。具体的には、例えば、実際のクレーンにおいて遅れの少ない手法で計測された荷重値と、荷重値検出器106を用いて計測された荷重値とを比較することにより遅れ見込み時間を決定してもよい。
【0159】
コントローラ101は、前記リセット動作を行う際に、遅れ見込み時間又はこれよりも長い時間だけ前の時点からハンマグラブ高さを時々刻々保存する。そして、コントローラ101は、遅れ見込み時間前のハンマグラブ高さと荷重値の立ち上がり時のハンマグラブ高さとの差を計算して、補正後の荷重値立ち上がり時の高さを演算する。これにより、ハンマグラブ高さの原点の再設定(初期化)を行う。コントローラ101は、この手法を用いるために、常に、「(荷重値の遅れ時間)/(制御周期)」個分のハンマグラブ高さを保存してもよい。
【0160】
具体例を挙げて説明すると次の通りである。遅れ見込み時間(荷重値遅れ時間)が例えば100msecに設定されていると仮定する。この場合、荷重値立ち上がりの100msec前においては原点の再設定前(初期化前)でのハンマグラブ高さが-300mmであり、荷重立ち上がり時の初期化前でのハンマグラブ高さが500mmであると仮定する。遅れが100msecであるから荷重値立ち上がりの100msec前の瞬間が真の地離れ発生の瞬間である。荷重値立ち上がりの100msec前(真の地離れの瞬間)に初期化前でのハンマグラブ高さが-300mmということは、このハンマグラブは一回の掘削で-300mm分の地盤を掘削した、ということを意味している。本来はそこを地面(0mm)としてリセットすべきである。しかし、荷重値立ち上がり時の初期化前でのハンマグラブ高さが500mmであるので、荷重値立ち上がりの時点で底から「500mm-(-300mm)=800mm」の高さだけハンマグラブ10が上昇していることになる。したがって、荷重値立ち上がりを検出した時にハンマグラブ高さが800mmであるということを考慮して、ハンマグラブ高さの原点を再設定(初期化)する。これにより、ハンマグラブ10が底部12(地面)に衝突する前にブレーキが駆動することを抑制できる。
【0161】
次に、コントローラ101が設定高さHsを設定する手法の一例について説明する。設定高さHsは、予め定数として与えられてもよいが、コントローラ101は、目標速度Vsと、目標の加速度(減速度)と、を用いて設定高さHsを決定してもよい。具体的には、コントローラ101は、例えば次の式(1)を用いて設定高さHsを決定することができる。
【0162】
【0163】
ここで、上記の式(1)において、「hdecSpeed」は、設定高さHsである。「vo」は、現在のハンマグラブ速度である。「vconf」は、予め設定された着地時の設定速度(すなわち前記目標速度Vs)である。「Tconf」は、一定速度「vconf」で落下する時間である。すなわち、「Tconf」は、ハンマグラブ速度が目標速度Vsに達してからハンマグラブが着地するまでの時間である。また、「aconf」は、目標の加速度(減速度)の大きさである。「aconf」は、例えばハンマグラブ重さ「Whammar」と、最大ワイヤ張力「Pconfmax」と、重力加速度「g」と、次の式(2)と、を用いて決定してもよい。
【0164】
【0165】
上記の式(1)は、例えば以下のように求められる。
図4のグラフにおいて時間t2から減速制御が開始される場合に、時間t2におけるハンマグラブ速度から目標速度Vsまで一定の加速度(目標の加速度a
conf)で減速すると仮定する。この場合、目標の加速度a
confと、目標速度Vsまで減速するのに要する時間Tとは、次の式(3)の関係を有する。
【0166】
【0167】
式(3)を変形することで次の式(4)が得られる。
【0168】
【0169】
減速制御が開始された時間t2からハンマグラブが穴の底部12に着地するまでに必要な高さhdecSpeedは、次の式(5)で表すことができる。
【0170】
【0171】
上記の式(5)に上記の式(4)を代入することで次の式(6)が得られる。
【0172】
【0173】
上記の式(5),(6)のそれぞれにおいて、「margin」は、例えば、一定速度vconfで落下する時間Tconf(例えば1sec)を考慮して設定することができる。具体的には、「margin」は、例えば、「vconf×Tconf」に設定してもよい。この「margin」を上記の式(6)に代入することで上記の式(1)が得られる。
【0174】
上記のように、コントローラ101は、目標速度Vsと、ハンマグラブ10が下降するときの目標の加速度aconfと、を用いて設定高さHsを決定するので、オペレータが非熟練者であっても、適切な設定高さHsがコントローラ101により自動で設定される。この場合、コントローラ101は、安全が考慮された上記の数式を用いて、できるだけ小さい設定高さHsを設定することができる。これにより、ハンマグラブ10が自由落下する距離をできるだけ長く設定することが可能になり、サイクルタイムをより効果的に減少させることができる。具体的には、加速度(減速度)は、目標速度との差、ブレーキ時の衝撃などに関係するパラメータである。従って、これらに関係する目標の加速度を用いて設定高さHsが決定されることにより、減速制御において過度な急ブレーキをかけることなく、ハンマグラブ速度を目標速度Vsに安全に到達させることができる。
【0175】
本開示は、以上説明した実施形態に限定されない。本開示は、例えば次のような形態を含む。
【0176】
(A)クレーンの仕様について
図1に示す前記実施形態に係るクレーンは、ジブ及びストラットを備えていないが、クレーンの仕様は、
図1に示すものに限定されない。本開示に係るクレーンは、ジブ、フロントストラット及びリヤストラットを備えるラッフィングクレーンであってもよく、ジブ及び1つのストラットを備える固定ジブ仕様のクレーンであってもよい。また、本開示に係るクレーンは、ガントリではなくマストを備えるクレーン(例えば大型のクレーン)であってもよい。
【0177】
(B)操作器について
本開示に係る操作器は、主巻ウインチ及び補巻ウインチの種類及びその駆動装置によって適宜選定すればよい。例えば、
図2及び
図3に示される主巻ウインチ操作器51の主巻レバー入力検出器51B、及び補巻ウインチ操作器53の補巻レバー入力検出器53Bのそれぞれが、レバー操作に応じたパイロット圧を出力するリモコン弁と、このリモコン弁の2次圧を検出する圧力センサと、により構成されていてもよい。
【0178】
(C)ウインチについて
本開示に係る主巻ウインチ及び補巻ウインチは、例えば電動ウインチであってもよい。この場合、
図1に示す油圧回路は、当該電動ウインチを駆動する電気回路(例えばインバータを含む回路)に置換されることが可能である。
【0179】
(D)主巻と補巻について
前記実施形態では、ハンマグラブ10の胴体10A及びグラブ10Bは、主巻ドラムDR1から繰り出される主巻ワイヤロープR1に吊り下げされているが、補巻ドラムDR2から繰り出される補巻ワイヤロープR2に吊り下げられてもよい。この場合、ハンマグラブ10のクラウン10Cは、主巻ワイヤロープR1に吊り下げられる。すなわち、本開示に係る制御装置は、前記実施形態において「主巻」に関する構成要素が担う機能を「補巻」に関する構成要素が担うような変形例も含む。
【0180】
(E)電気ペダルについて
図2に示す前記実施形態に係る制御装置は、主巻ペダル比例弁67と、ブレーキ系統切換弁65と、を含む油圧回路を備え、主巻ペダル比例弁67は、主巻ブレーキ操作器52の主巻ペダル52Aに入力されるペダル操作量に応じた2次圧を生成し、ブレーキ系統切換弁65は、前記ブレーキ制御比例弁油路が形成される状態と、前記ペダル比例弁油路が形成される状態と、を切り換える。ただし、本開示における制御装置は、前記実施形態に限られず、例えば
図10に示す変形例に係る油圧回路を備えていてもよい。
図10に示す変形例に係るクレーン200の制御装置では、主巻ブレーキ操作器52は、いわゆる電気ペダルにより構成されている。
【0181】
具体的には、
図10に示すように、主巻ブレーキ操作器52は、オペレータによる主巻ブレーキ操作が入力される主巻ペダル52Aと、入力された主巻ブレーキ操作の操作量(ペダル操作量)に応じたペダル操作信号をコントローラ101に出力する出力器52Bと、を備える。出力器52Bから出力されたペダル操作信号は、コントローラ101に入力される。これにより、コントローラ101は、主巻ペダル52Aに入力されたペダル操作量を取得することができる。
【0182】
図10に示す変形例に係る制御装置では、衝撃力調整制御、着地時自動ブレーキ制御、ほぐし制御、及び自動ブレーキ無効制御の何れの制御においても、主巻クラッチブレーキ48におけるブレーキ力は、コントローラ101から主巻ブレーキ制御比例弁62に入力される主巻ブレーキ指令(指令電流値)に基づいて調節される。
図10に示す変形例に係る制御装置では、
図2に示す制御装置が備える主巻ペダル比例弁67及びブレーキ系統切換弁65は不要であるので省略されている。
【0183】
この変形例では、モード切換弁66は、主巻ブレーキ制御比例弁62と主巻クラッチブレーキ48との間に介在する。具体的には、パイロットポンプ36、主巻ブレーキ制御比例弁62、モード切換弁66、及び主巻クラッチブレーキ48の油室43は、この順に接続されている。
【0184】
[衝撃力調整制御]
この変形例では、制御状態が衝撃力調整状態に切り換わると、衝撃力調整制御演算部114は、モード切換弁66のスプールを比例弁油路形成位置(
図2の左側位置)に配置するための指令をモード切換弁66に出力する。これにより、主巻クラッチブレーキ48が前記フリー状態に切り換わり、ハンマグラブ10がその自重によって自由落下することが可能な状態になる。また、衝撃力調整制御演算部114は、当該衝撃力調整制御演算部114から主巻ブレーキ制御比例弁62に入力する主巻ブレーキ指令(指令電流値)に応じたブレーキ力を主巻クラッチブレーキ48において発生させることができる。
【0185】
[着地時自動ブレーキ制御]
また、この変形例では、制御状態が着地時自動ブレーキ状態に切り換わると、着地時自動ブレーキ制御演算部113は、モード切換弁66のスプールを比例弁油路形成位置(
図2の左側位置)に配置するための指令をモード切換弁66に出力する。そして、着地時自動ブレーキ制御演算部113は、主巻ドラムDR1の回転に対してフルブレーキがかかるような主巻ブレーキ指令(指令電流値)を主巻ブレーキ制御比例弁62に入力する。これにより、ハンマグラブ10が底部12に着地した直後に主巻クラッチブレーキ48において大きなブレーキ力が発生し、主巻ワイヤロープR1が主巻ドラムDR1から余分に繰り出されることが抑制される。
【0186】
[ほぐし制御]
また、この変形例では、制御状態がほぐし制御状態に切り換わると、ほぐし制御演算部115は、モード切換弁66のスプールを比例弁油路形成位置(
図2の左側位置)に配置するための指令をモード切換弁66に出力する。
【0187】
[自動ブレーキ無効制御]
また、この変形例では、制御状態が自動ブレーキ無効制御状態に切り換わると、自動ブレーキ無効制御演算部116は、モード切換弁66のスプールを比例弁油路形成位置(
図2の左側位置)に配置するための指令をモード切換弁66に出力する。そして、自動ブレーキ無効制御演算部116は、オペレータによる主巻ブレーキ操作の操作量(ペダル操作量)に応じたブレーキ力が主巻クラッチブレーキ48において発生するように主巻ブレーキ指令(指令電流値)を主巻ブレーキ制御比例弁62に入力する。
【0188】
なお、
図10に示す変形例に係る制御装置のその他の構成は、
図2に示す前記実施形態に係る制御装置の構成と同様であるので、詳細な説明を省略する。また、補巻ブレーキ操作器54が電気ペダルにより構成される場合には、補巻ブレーキ操作器54は補巻ペダル54Aと出力器54Bとを備え、当該補巻ブレーキ操作器54を含む油圧回路の構成は、電気ペダルに係る主巻ブレーキ操作器52を含む上記のような油圧回路の構成と同様であるので、これらについての詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0189】
10 :ハンマグラブ
11 :ケーシング
12 :底部(作業対象の底部)
48 :主巻クラッチブレーキ
51 :主巻ウインチ操作器
51A :主巻レバー
51B :主巻レバー入力検出器
52 :主巻ブレーキ操作器
52A :主巻ペダル
52B :出力器
62 :主巻ブレーキ制御比例弁
65 :ブレーキ系統切換弁
66 :モード切換弁
67 :主巻ペダル比例弁
81 :主巻回転センサ(ドラム回転検出器)
91 :設定入力器
92 :開始指示入力器
100 :クレーン
101 :コントローラ
105 :モニタスイッチ
106 :荷重値検出器
200 :クレーン
DR1 :主巻ドラム
Hs :設定高さ
P1 :作業開始位置
P2 :減速制御開始位置
P3 :着地位置
R1 :主巻ワイヤロープ
Vs :目標速度
WC1 :主巻ウインチ
【手続補正書】
【提出日】2023-12-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
ウインチドラムからワイヤロープを繰り出すことにより、地中に押し込まれたケーシング内においてハンマグラブを作業対象である地盤の底部に落下させてハンマグラブ作業を行う建設機械の制御装置であって、
前記地盤の前記底部からの前記ハンマグラブの高さであるハンマグラブ高さを取得するために用いられる検出器と、
コントローラと、
前記コントローラから入力されるブレーキ指令に応じたブレーキ力を発生させるためのブレーキ制御比例弁と、を備え、
前記コントローラは、前記ハンマグラブ高さが前記底部より上に設定された設定高さよりも高い場合には前記ブレーキ力を発生させずに前記ハンマグラブを自由落下させ、前記ハンマグラブ高さが前記設定高さ以下である場合には前記ハンマグラブの下降速度が予め設定された値である目標速度に近づくようなブレーキ指令を前記ブレーキ制御比例弁に入力して前記ウインチドラムに対するブレーキを調節する制御を行う、建設機械の制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
ウインチドラムからワイヤロープを繰り出すことにより、地中に押し込まれたケーシング内においてハンマグラブを作業対象である地盤の底部に落下させてハンマグラブ作業を行う建設機械の制御方法であって、
前記地盤の前記底部からの前記ハンマグラブの高さであるハンマグラブ高さを取得することと、
前記ハンマグラブ高さが前記底部より上に設定された設定高さよりも高い場合にはブレーキ力を発生させずに前記ハンマグラブを自由落下させ、前記ハンマグラブ高さが前記設定高さ以下である場合には前記ハンマグラブの下降速度が予め設定された値である目標速度に近づくようなブレーキ指令をコントローラがブレーキ制御比例弁に入力して前記ウインチドラムに対するブレーキを調節することと、を備える建設機械の制御方法。