(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080106
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】継電器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 49/00 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
H01H49/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193010
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 仁
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 守茂
(72)【発明者】
【氏名】蟹 冬樹
(57)【要約】
【課題】、電磁継電器10の接点31、32から異物70を除くことができる電磁継電器10の製造方法を提供する。
【解決手段】電磁継電器10の製造方法は、固定接点32と可動接点31とを備える電磁継電器10Aを用意することを含む。次の電磁継電器10の製造方法は、接点31、32と異物70との間に生じるクーロン力による引力によって異物70が電磁継電器10Aの接点31、32に付着している場合、高電圧発生器60が接点31、32の間に放電を生じさせることを含む。放電に伴う衝撃力によって異物70を接点31、32から分離させる。放電の際に、この分離された異物70を吹き飛ばして異物70接点31、32から除去する空気流を電動送風機61から発生させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料によって構成されている固定接点(32)と、導電性材料によって構成され、かつ変位によって前記固定接点に対して接触、或いは前記固定接点から離れることが可能になるように構成されている可動接点(31)とを備える継電器(10)を用意することと、
前記固定接点および前記可動接点の間に放電を生じさせることによる衝撃力により、前記固定接点および前記可動接点のうち少なくとも一方の接点に付着した異物を、前記少なくとも一方の接点から分離させることと、
前記放電を生じさせる際に、前記分離された前記異物を吹き飛ばして前記異物を前記少なくとも一方の接点から除去する空気流を送風機(61)から発生させることを含む継電器の製造方法。
【請求項2】
導電性材料によって構成されている固定接点(32)と、導電性材料によって構成され、かつ変位によって前記固定接点に対して接触、或いは前記固定接点から離れることが可能になるように構成されている可動接点(31)とを備える継電器(10)を用意することと、
前記固定接点および前記可動接点のうちいずれか一方の接点が異物(70)の帯電極性と同一極性となり、前記固定接点および前記可動接点のうち前記いずれか一方の接点を除いた他方の接点が前記異物の前記帯電極性と異なる極性となるように前記固定接点および前記可動接点の間に電圧を与えて、前記いずれか一方の接点と前記異物との間に作用しているクーロン力による引力を低下させることと、
前記固定接点および前記可動接点の間に電圧を与える際に、前記クーロン力による引力が低下された状態の前記異物を吹き飛ばして前記異物を前記いずれか一方の接点から除去する空気流を送風機(61)から発生させることを含む継電器の製造方法。
【請求項3】
導電性材料によって構成されている第1固定接点(32)と、導電性材料によって構成され、かつ前記第1固定接点に対して離れて配置されている第2固定接点(32A)と、導電性材料によって構成され、かつ変位によって前記第1固定接点および前記第2固定接点に対して接触、或いは前記第1固定接点および前記第2固定接点から離れることが可能になるように構成されている可動片(31A)とを備える継電器(10)を用意することと、
前記第1固定接点および前記第2固定接点の間に放電を生じさせることによる衝撃力によって、前記第1固定接点、前記第2固定接点、および前記可動片のうち少なくとも1つの部材に付着した異物(70)を前記少なくとも1つの部材から分離させることと、
前記第1固定接点および前記第2固定接点の間に放電を生じさせる際に、前記分離された前記異物を吹き飛ばして前記異物を前記少なくとも一方の部材から除去する空気流を送風機(61)から発生させることを含む継電器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継電器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、継電器では、固定接点と、変位によって固定接点に接触、或いは固定接点から離れさせることが可能になるように構成されている可動接点と、可動接点を変位させる電磁力を発生する電磁コイルとを備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電磁コイルは、固定接点に対して可動接点を接触させるために電磁力によって固定接点に対して可動接点を引き付ける引力を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、樹脂材料に含有される補強材として、ガラス繊維が用いられる場合がある。ガラス繊維を含有する樹脂製品が工場内の製品製造に用いられる場合、樹脂製品に含有されるガラス繊維が何らかの原因で他の部材に接触した際に摩擦帯電を生じ、帯電状態でガラス繊維が樹脂製品から分離して空気中を浮遊する場合が考えられる。
【0006】
ここで、電磁継電器の接点は、導電性材料によって構成されている。このため、空気中を浮遊する帯電状態のガラス繊維が接点に近づいた場合、ガラス繊維に帯電した電荷によって、ガラス繊維の帯電極性と異なる極性の電荷が接点の表面に誘導される。
【0007】
したがって、ガラス繊維に生じる電荷と接点の表面に生じる電荷との間には、クーロン力による引力が生じてガラス繊維が異物として接点の表面に付着するという不具合が生じる虞がある。
【0008】
ガラス繊維は、その体積に対して、接点の表面に接触する接触面積が非常に大きく、ガラス繊維および接点の表面の間には、大きなクーロン力による引力が生じる。したがって、接点の表面に空気流を吹き付けただけでは、ガラス繊維を接点の表面から除去することができない。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、クーロン力によって継電器の接点に付着した異物を継電器の接点から除くことができる継電器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、継電器の製造方法において、導電性材料によって構成されている固定接点(32)と、導電性材料によって構成され、かつ変位によって固定接点に対して接触、或いは固定接点から離れることが可能になるように構成されている可動接点(31)とを備える継電器(10)を用意することと、
固定接点および可動接点の間に放電を生じさせることによる衝撃力により、固定接点および可動接点のうち少なくとも一方の接点に付着した異物を、少なくとも一方の接点から分離させることと、
放電を生じさせる際に、分離された異物を吹き飛ばして異物を少なくとも一方の接点から除去する空気流を送風機(61)から発生させることを含む。
【0011】
したがって、クーロン力によって継電器の接点に付着した異物を継電器の接点から除くことができる継電器の製造方法を提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、継電器の製造方法において、
導電性材料によって構成されている固定接点(32)と、導電性材料によって構成され、かつ変位によって固定接点に対して接触、或いは固定接点から離れることが可能になるように構成されている可動接点(31)とを備える継電器(10)を用意することと、
固定接点および可動接点のうちいずれか一方の接点が異物の帯電極性と同一極性となり、固定接点および可動接点のうちいずれか一方の接点を除いた他方の接点が異物の帯電極性と異なる極性となるように固定接点および可動接点の間に電圧を与えて、いずれか一方の接点と異物(70)との間に作用しているクーロン力による引力を低下させることと、
固定接点および可動接点の間に電圧を与える際に、クーロン力による引力が低下された状態の異物を吹き飛ばして異物をいずれか一方の接点から除去する空気流を送風機(61)から発生させることを含む。
【0013】
したがって、クーロン力によって継電器の接点に付着した異物を継電器の接点から除くことができる継電器の製造方法を提供することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、継電器の製造方法において、
導電性材料によって構成されている第1固定接点(32)と、導電性材料によって構成され、かつ第1固定接点に対して離れて配置されている第2固定接点(32A)と、導電性材料によって構成され、かつ変位によって第1固定接点および第2固定接点に対して接触、或いは第1固定接点および第2固定接点から離れることが可能になるように構成されている可動片(31A)とを備える継電器(10)を用意することと、
第1固定接点および第2固定接点の間に放電を生じさせることによる衝撃力によって、第1固定接点、第2固定接点、および可動片のうち少なくとも1つの部材に付着した異物(70)を少なくとも1つの部材から分離させることと、
第1固定接点および第2固定接点の間に放電を生じさせる際に、分離された異物を吹き飛ばして異物を少なくとも一方の部材から除去する空気流を送風機(61)から発生させることを含む。
【0015】
したがって、クーロン力によって継電器の接点に付着した異物を継電器の接点から除くことができる継電器の製造方法を提供することができる。
【0016】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態における電磁継電器の斜視図である。
【
図2】
図1中のII-II断面図であり、第1実施形態における電磁継電器のコア、ヨーク、可動接点、固定接点、アーマチャプレート、および板バネ等の構成の説明を補助するための図である。
【
図3】第1実施形態における電磁継電器の製造工程の詳細を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態における電磁継電器の製造工程の詳細の説明を補助するための図であり、高電圧発生器を電磁継電器の第1負荷端子と第2負荷端子とに接続した図である。
【
図5】第1実施形態における電磁継電器の可動接点、固定接点に異物が付着した状態を示す図であり、可動接点、固定接点に異物が付着するメカニズムの説明を補助するための図である。
【
図6】第1実施形態における電磁継電器の可動接点および固定接点の間に生じる放電の衝撃力によって可動接点、固定接点から異物を分離させる作動の説明を補助するための図である。
【
図7】第2実施形態における電磁継電器の製造工程の詳細を示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態の電磁継電器における可動接点および異物の間に作用するクーロン力による引力が低下して可動接点から異物を分離させる作動の説明を補助するための図である。
【
図9】第2実施形態における電磁継電器の固定接点に異物が付着した状態を示す図である。
【
図10】第2実施形態の電磁継電器の固定接点および異物の間に作用するクーロン力による引力が低下して固定接点から異物を分離させる作動の説明を補助するための図である。
【
図11】第3実施形態における電磁継電器の製造工程の詳細の説明を補助するための図であり、高電圧発生器を電磁継電器の第1負荷端子と第2負荷端子とに接続した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0019】
(第1実施形態)
本実施形態の電磁継電器10は、例えば車両に搭載され、電気回路を開放、或いは接続するための電磁リレー装置である。
図1、
図2に示されるように、電磁継電器10は、スプール21、コイル巻線26、コア27、ヨーク28、アーマチャプレート29、板バネ30、可動接点31、および固定接点32を備える継電器である。
【0020】
電磁継電器10には、第1負荷端子41、第2負荷端子42、第1コイル端子46、第2コイル端子47、およびベース51を備える。なお、以下、説明の便宜上、第1負荷端子41、第2負荷端子42、第1コイル端子46、第2コイル端子47を纏めて端子41、42、46、47という。さらに、可動接点31、固定接点32を纏めて接点31、32という。
【0021】
電磁継電器10のベース51は、スプール21、コイル巻線26、コア27、ヨーク28、アーマチャプレート29、板バネ30、可動接点31、および固定接点32を支える基材を成すものである。ベース51は樹脂材料で構成されている。
【0022】
ベース51は、スプール21、コイル巻線26、コア27等を、端子41、42、46、47が設けられた側から覆うように形成されている。例えば、スプール21やヨーク28などはベース51に対して固定されている。
【0023】
端子41、42、46、47はそれぞれ、ベース51から外側へ突き出ている。なお、
図1では、固定接点32、第2負荷端子42、およびベース51の図示が省略されている。
【0024】
スプール21は、例えば、電気絶縁性を有する樹脂材料によって構成されている。スプール21は、スプール軸部22と一方側スプール基部23と他方側スプール基部24とを有している。スプール軸部22と一方側スプール基部23と他方側スプール基部24は一体化されている。
【0025】
スプール軸部22は、コイル巻線26の軸方向Daに延びた円筒形状を成している。スプール軸部22は、スプール21のうちコイル巻線26が巻かれているボビン部である。
【0026】
コイル巻線26とスプール軸部22は、共通の軸心CLを中心線とした円筒状に形成されている。以下、軸心CLをコイル軸心CLとも称する。なお、本実施形態の説明では、コイル巻線26の軸方向Daをコイル軸方向Daとも称し、コイル巻線26の径方向DLをコイル径方向DLとも称する。
【0027】
一方側スプール基部23は、コイル巻線26およびスプール軸部22に対してコイル軸方向Daの一方側に設けられている。一方側スプール基部23は、スプール軸部22から第1交差方向D1とその第1交差方向D1に交差する第2交差方向D2とのそれぞれへ拡がるように形成されている。したがって、一方側スプール基部23は、スプール軸部22からコイル径方向DLへ拡がるように形成されている。
【0028】
他方側スプール基部24は、コイル巻線26およびスプール軸部22に対して、コイル軸方向Daの一方側とは反対側の他方側に設けられている。他方側スプール基部24は、スプール軸部22から第1交差方向D1と第2交差方向D2とのそれぞれへ拡がるように形成されている。したがって、他方側スプール基部24は、スプール軸部22からコイル径方向DLへ拡がるように形成されている。
【0029】
スプール21には、スプール軸部22の内側を通って一方側スプール基部23と他方側スプール基部24とを貫通するスプール貫通孔21aが形成されている。スプール貫通孔21aはコイル軸心CLを中心としてコイル軸方向Daに延びている。
【0030】
コイル巻線26は、後述するように、通電によって磁束を発生する電磁コイルである。コイル巻線26は、スプール軸部22の外周壁面に沿って線材が巻回れることで構成されている。コイル巻線26は、コイル軸方向Daの一方側に設けられたコイル一端面261と、コイル軸方向Daの他方側に設けられたコイル他端面262とを有している。
【0031】
コイル一端面261は、一方側スプール基部23に対して接触している。コイル他端面262は、他方側スプール基部24に対して接触している。
【0032】
コア27は、磁性材料で構成され、コイル軸心CLを中心とした略円柱状に形成されている。コア27は、コイル巻線26から生じる磁束を通過させる磁路を形成するものである。コア27は、スプール貫通孔21aに挿入されている。
【0033】
これにより、コア27は、後述するように、コイル巻線26から生じる磁束によってアーマチャプレート29を引きつける引力としての電磁力を発生する。
【0034】
ヨーク28は、磁性材料からなる板状部材によって略L字状に構成されている。具体的に、ヨーク28は、第1ヨーク板部281と第2ヨーク板部282とを有している。
【0035】
第1ヨーク板部281は、第2交差方向D2を厚み方向とした板状に形成されている。第1ヨーク板部281は、コイル軸方向Daに延びるように形成されている。第1ヨーク板部281は、コイル巻線26に対して第2交差方向D2の一方側にコイル巻線26から離れて配置されている。
【0036】
第2ヨーク板部282は、コイル軸方向Daを厚み方向とした板状に形成されている。第2ヨーク板部282は、第1ヨーク板部281におけるコイル軸方向Daの他方側の端部から第2交差方向D2の他方側へ延びるように形成されている。
【0037】
第2ヨーク板部282は、コイル巻線26との間に他方側スプール基部24を挟んでコイル巻線26に対しコイル軸方向Daの他方側に配置されている。第2ヨーク板部282には、コア27におけるコイル軸方向Daの他方側の端部がカシメ固定されている。
【0038】
アーマチャプレート29は、コア27および第1ヨーク板部281の間で磁束を通過させる磁路を形成するものである。
【0039】
アーマチャプレート29は、磁性材料で構成されて板状とされている。アーマチャプレート29は、第2交差方向D2の一方側に設けられた一端部291を有している。アーマチャプレート29は、その一端部291が、第1ヨーク板部281におけるコイル軸方向Daの一方側の端部に保持されている。
【0040】
アーマチャプレート29は、その一端部291を支点として揺動可能になっている。アーマチャプレート29は、一端部291よりも第2交差方向D2の他方側に配置された対向面29aを有している。この対向面29aは、コア27におけるコイル軸方向Daの一方側の一端面27aに対向している。
【0041】
このような構成からアーマチャプレート29には、コイル巻線26から生じる磁束が通過することにより磁化されてコア27に引きつけられる引力としての電磁力が作用する。このことにより、アーマチャプレート29は、電磁力によって、一端部291を支点として揺動し対向面29aがコア27に近づくことになる。
【0042】
板バネ30は、弾力性を有する導電性金属材料からなる板状部材で構成されている。板バネ30は、アーマチャプレート29と第1ヨーク板部281とに沿って略L字状に形成されている。
【0043】
板バネ30は、アーマチャプレート29に沿った部位にてアーマチャプレート29にカシメ固定されている。板バネ30は、第1ヨーク板部281に沿った部位にて第1ヨーク板部281にカシメ固定されている。
【0044】
板バネ30は、その弾性力によって、アーマチャプレート29の対向面29aをコア27の一端面27aから離す向きにアーマチャプレート29を付勢する。板バネ30は、第2交差方向D2の他方側に設けられた自由端部を有している。
【0045】
板バネ30の自由端部には、可動接点31が固定されている。可動接点31は、板バネ30を介して第1負荷端子41に接続されている。板バネ30は、可動接点31および第1負荷端子41の間を電気的に接続する導電部材を構成する。
【0046】
第1負荷端子41は、導電性の金属材料によって構成されている。可動接点31は、導電性材料(例えば、金属材料)によって構成されている。そして、固定接点32は、第2負荷端子42に接続されている。第2負荷端子42は、他方側スプール基部24に固定されている。
【0047】
第2負荷端子42は、導電性の金属材料によって構成されている。固定接点32は、可動接点31に対するコイル軸方向Daの他方側に配置されている。固定接点32は、導電性材料(例えば、金属材料)によって構成されている。
【0048】
図1、
図2に示されるように、第1負荷端子41、第2負荷端子42、第1コイル端子46、および第2コイル端子47はそれぞれ、ベース51からコイル軸方向Daの他方側へ突き出ている。端子41、42、46、47は、本実施形態では他方側スプール基部24に固定されている。
【0049】
第1コイル端子46は、コイル巻線26の一端部に接続されている。第2コイル端子47は、コイル巻線26のうち一端部以外の他端部に接続されている。第1コイル端子46と第2コイル端子47との間にコイル巻線26が接続されている。
【0050】
第1コイル端子46と第2コイル端子47は、導電性が高い銅合金などの金属材料で構成されている。
【0051】
第1コイル端子46と第2コイル端子47は、上記したようにスプール21のうち他方側スプール基部24に固定されている。第1コイル端子46と第2コイル端子47は第1交差方向D1に並んでいる。
【0052】
すなわち、第1交差方向D1はコイル端子46、47の並び方向である。詳細には、第1コイル端子46はコイル軸心CLに対し第1交差方向D1の一方側に配置され、第2コイル端子47はコイル軸心CLに対し第1交差方向D1の他方側に配置されている。
【0053】
次に、本実施形態の電磁継電器10の作動について説明する。
【0054】
まず、第1コイル端子46および第2コイル端子47の間に電圧が加えられてコイル巻線26に電流が流れた場合には、コイル巻線26に流れる電流によってコイル巻線26から磁束が発生する。この磁束は、コア27、ヨーク28、およびアーマチャプレート29によって構成される閉回路としての磁路を通過する。
【0055】
この際に、アーマチャプレート29およびコア27は、磁束によって磁化される。このため、アーマチャプレート29には、コア27に引き寄せられる引力としての電磁力が作用する。
【0056】
これに伴い、板バネ30が弾性変形しつつ、アーマチャプレート29は、一端部291を支点として揺動する。このため、アーマチャプレート29の対向面29aがコア27におけるコイル軸方向Daの一方側の一端面27aに近づくことになる。
【0057】
したがって、可動接点31はコイル軸方向Daの他方側へ変位する。この結果、可動接点31が固定接点32に接触する。これにより、第1負荷端子41と第2負荷端子42とが板バネ30、可動接点31、および固定接点32を介して電気的に接続されることになる。
【0058】
また、第1コイル端子46および第2コイル端子47の間への電圧の印加が停止されると、コイル巻線26に電流が流れなくなる。この場合、コイル巻線26から磁束が発生しなくなる。
【0059】
この際に、コア27およびアーマチャプレート29のそれぞれの磁化が消えるため、アーマチャプレート29には、上述した引力としての電磁力が作用しなくなる。これに伴い、板バネ30の弾性変形が戻る。
【0060】
これにより、アーマチャプレート29は、板バネ30の弾性力によって、対向面29aがコア27の一端面27aから離れるように一端部291を支点として揺動する。このため、アーマチャプレート29の対向面29aがコア27における一方側の一端面27aから離れることになる。
【0061】
これに伴って、可動接点31は、コイル軸方向Daの一方側へ変位する。この結果、可動接点31が固定接点32から離れる。これにより、第1負荷端子41と第2負荷端子42との間は、可動接点31、および固定接点32によって開放されることになる。
【0062】
このようにコイル巻線26の通電の有無によって、可動接点31が固定接点32に接触したり、可動接点31を固定接点32から離れたりする。これに伴い、第1負荷端子41と第2負荷端子42との間が接続したり、開放したりする。
【0063】
次に、本実施形態の電磁継電器10の製造工程について
図3、
図4、
図5、
図6を参照して説明する。
図3は、本実施形態の電磁継電器10の製造工程を示すフローチャートである。
【0064】
図4は、電磁継電器10の製造工程で使用される治具としての高電圧発生器60が電磁継電器10に接続され、かつ治具としての電動送風機61が電磁継電器10の付近に設置された状態を示す図である。
【0065】
図5は、可動接点31および固定接点32の間に放電を生じさせる前に、異物70が可動接点31および固定接点32のそれぞれに付着している状態を示している図である。
図6は、可動接点31および固定接点32の間の放電に伴う衝撃力によって異物70が可動接点31および固定接点32が分離される状態を示す図である。
【0066】
まず、ステップ100の第1工程において、スプール21、コイル巻線26、コア27、ヨーク28、アーマチャプレート29、板バネ30、接点31、32、端子41、42、46、47、およびベース51が組み付けられた電磁継電器10を用意する。
【0067】
ここで、
図5に示すように、摩擦帯電によって例えば正極に帯電された異物70が接点31、32に付着されている場合について説明する。
【0068】
まず、電磁継電器10の接点31、32の間の放電が生じる前には、固定接点32の表面には、異物70に生じている正電荷によって、負電荷が誘導されている。このため、異物70に生じる正電荷と固定接点32の表面に生じる負電荷との間には、クーロン力による引力が生じる。
【0069】
したがって、異物70が固定接点32に対してクーロン力による引力によって付着されている。同様に、電磁継電器10の可動接点31の表面には、異物70に生じている正電荷によって、負電荷が誘導されている。
【0070】
このため、異物70に生じる正電荷と可動接点31の表面に生じる負電荷との間には、クーロン力による引力が生じる。したがって、異物70が可動接点31に対してクーロン力による引力によって付着されている。
【0071】
これに対して、ステップ110の第2工程において、電動送風機61(すなわち、送風機)からの接点31、32に向けて送風する。
【0072】
さらに、コア27から電磁力が発生していなく、可動接点31が固定接点32から離れた状態で、高電圧発生器60から第1負荷端子41および第2負荷端子42の間に高電圧を出力させる。
【0073】
このため、接点31、32の間には、高電圧が印加される。これに伴い、接点31、32の間には、放電が生じる。本実施形態の放電としては、例えば、火花放電、アーク放電が想定されている。このとき、放電の衝撃力によって、電磁継電器10の接点31、32のそれぞれの表面から異物70が分離される。
【0074】
具体的には、接点31、32の間の放電に伴って、接点31、32の間の放電経路からその周りに向けて急速に流れる空気流が生じる。このため、空気流によって、
図6に示すように、接点31、32のそれぞれの表面から異物70が分離される。
【0075】
この際に、電動送風機61から吹き出される空気流が接点31、32に吹き付けられる。これに伴い、放電の衝撃力によって接点31、32から分離された異物70が空気流によって接点31、32に対して遠方に吹き飛ばされる。
【0076】
また、摩擦帯電によって負極に帯電された異物70が接点31、32に付着されている場合においても、同様に、異物70が接点31、32から除去する。
【0077】
この場合、接点31、32の間の放電が生じる前には、異物70に生じている負電荷によって、接点31、32のそれぞれの表面に正電荷が誘導されている。このため、異物70に生じる負電荷と固定接点32の表面に生じる正電荷との間には、クーロン力による引力が生じている。
【0078】
これに対して、接点31、32の間に放電を生じさせると、接点31、32の間の放電の衝撃力によって、接点31、32のそれぞれの表面から異物70が分離される。この際に、電動送風機61から接点31、32に吹き出される空気流によって、異物70が接点31、32に対して遠方に吹き飛ばされる。
【0079】
また、ガラス繊維ではなく、樹脂材料、金属材料等からなる異物70が摩擦帯電で帯電した状態で接点31、32の表面に付着した場合にも、放電と電動送風機61からの空気流とによって、異物70を接点31、32から除去することができる。
【0080】
以上により、電磁継電器10の接点31、32から異物70が除去される。これにより、本実施形態の電磁継電器10の製造が終了する。
【0081】
以上説明した本実施形態の電磁継電器10の製造工程の第1工程においては、導電性材料によって構成されている固定接点32と、導電性材料によって構成されている可動接点31とを備える電磁継電器10が用意される。
【0082】
可動接点31は、その変位によって、固定接点32に対して接触、或いは固定接点32から離れることが可能になるように構成されている。
【0083】
電磁継電器10の製造工程の第2工程では、接点31、32と異物70との間に生じるクーロン力による引力によって異物70が電磁継電器10の接点31、32に付着している場合に、高電圧発生器60が接点31、32の間に放電を生じさせる。
【0084】
このため、接点31、32の間に放電によって、接点31、32の間の放電に伴う衝撃力によって異物70を接点31、32から分離させることができる。
【0085】
この第2工程では、接点31、32の間の放電によって接点31、32から分離される異物70を吹き飛ばして異物70を接点31、32から除去する空気流を電動送風機61から発生させる。
【0086】
以上により、異物70を電磁継電器10の接点31、32から除くことができる電磁継電器10の製造方法を提供することができる。
【0087】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、電磁継電器10の接点31、32の間の放電によって異物70を接点31、32から分離した例について説明した。
【0088】
しかし、これに代えて、電磁継電器10の接点31と異物70との間に生じるクーロン力による引力を低下させて接点31から異物70を分離した本第2実施形態について説明する。
【0089】
本実施形態と上記第1実施形態とでは、電磁継電器10の製造工程が相違する。そこで、以下、電磁継電器10の製造工程について
図5、
図7、
図8、
図9、
図10を参照して説明する。
【0090】
図7は、本実施形態の電磁継電器10の製造工程を示すフローチャートである。
図8は、電磁継電器10の可動接点31から異物70が分離した状態を示している図である。
【0091】
図9は、接点31、32の間に高電圧が印加される前に、異物70が固定接点32に付着している状態を示している図である。
図10は、電磁継電器10の固定接点32から異物70が分離した状態を示す図である。
【0092】
まず、ステップ100の製造工程の第1工程において、上記第1実施形態と同様に、電磁継電器10を用意する。
【0093】
この第1工程では、上記第1実施形態と同様に、
図5に示すように、電磁継電器10Aの固定接点32の表面には、異物70に生じている正電荷によって、負電荷が誘導されている。このため、異物70に生じる正電荷と固定接点32の表面に生じる負電荷との間には、クーロン力による引力が生じる。
【0094】
同様に、電磁継電器10の可動接点31の表面には、異物70に生じている正電荷によって、負電荷が誘導されている。このため、異物70に生じる正電荷と可動接点31の表面に生じる負電荷との間には、クーロン力による引力が生じる。
【0095】
したがって、接点31、32のそれぞれには異物70がクーロン力による引力によって付着されている。
【0096】
これに対して、ステップ110Aの製造工程の第2工程において、電動送風機61からの可動接点31に向けて送風する。
【0097】
このとき、コア27から電磁力が発生していなく、可動接点31が固定接点32から離れた状態で、高電圧発生器60から第1負荷端子41および第2負荷端子42の間に高電圧を出力させる。この際に、接点31、32の間に放電が生じていない状態で、可動接点31は正極性になり、固定接点32は負極性になる。
【0098】
つまり、可動接点31は、異物70に帯電している帯電極性と同一の極性になり、固定接点32は、異物70の帯電極性と異なる極性になる。このため、可動接点31から異物70を引き離す斥力としてのクーロン力が異物70および可動接点31の間に生じることになる。
【0099】
すなわち、可動接点31に対して異物70を引きつける引力としてのクーロン力が低下する。したがって、
図8に示すように、異物70が可動接点31から分離される。このため、電動送風機61から吹き出される空気流が可動接点31に吹き付けられるため、可動接点31から分離された異物70が空気流によって可動接点31に対して遠方に吹き飛ばされる。
【0100】
このとき、
図9に示すように、固定接点32に異物70がクーロン力によって付着している場合、次のステップ110Bの製造工程の第3工程において、高電圧発生器60から第1負荷端子41および第2負荷端子42の間に高電圧を出力させる。
【0101】
このとき、コア27から電磁力が発生していなく、可動接点31が固定接点32から離れた状態で、接点31、32の間に放電が生じていない。この際に、可動接点31は負極性になり、固定接点32は正極性になる。このため、可動接点31は、異物70の帯電極性と異なる極性になり、固定接点32は、異物70の帯電極性と同一極性になる。
【0102】
これにより、固定接点32に対して異物70を引き離す斥力としてのクーロン力が異物70および固定接点32の間に生じる。すなわち、固定接点32に対して異物70を引きつける引力としてのクーロン力が低下する。
【0103】
したがって、
図10に示すように、異物70が固定接点32から分離される。このとき、電動送風機61から吹き出される空気流が固定接点32に吹き付けられるため、固定接点32から分離される異物70が固定接点32に対して遠方に吹き飛ばされる。
【0104】
また、摩擦帯電により表面に負電荷が生じている異物70がクーロン力による引力によって可動接点31に付着している場合、可動接点31が負極性となり、固定接点32が正極性になるように高電圧発生器60から接点31、32の間に高電圧を出力させる。
【0105】
この場合、可動接点31が固定接点32から離れ、かつ接点31、32の間に放電が生じていない状態で、可動接点31は、異物70の帯電極性と同一極性になり、固定接点32は、異物70の帯電極性と異なる極性になる。
【0106】
したがって、可動接点31から異物70を引き離す斥力としてのクーロン力が異物70および可動接点31の間に生じる。すなわち、可動接点31に対して異物70を引きつける引力としてのクーロン力が低下する。
【0107】
これにより、異物70が可動接点31から分離される。このとき、電動送風機61から吹き出される空気流が可動接点31に吹き付けられるため、可動接点31から分離される異物70が空気流によって可動接点31に対して遠方に吹き飛ばされる。
【0108】
摩擦帯電により表面に負電荷が生じている異物70がクーロン力による引力によって固定接点32に付着している場合、可動接点31が正極性となり、固定接点32が負極性になるように高電圧発生器60から接点31、32の間に高電圧を出力させる。
【0109】
この場合、可動接点31が固定接点32から離れ、かつ接点31、32の間に放電が生じていない状態で、固定接点32は、異物70の帯電極性と同一の極性になり、可動接点31は、異物70の帯電極性と異なる極性になる。
【0110】
したがって、固定接点32から異物70を引き離す斥力としてのクーロン力が異物70および固定接点32の間に生じる。すなわち、固定接点32に対して異物70を引きつける引力としてのクーロン力が低下する。
【0111】
このため、異物70が固定接点32から分離される。このとき、電動送風機61から吹き出される空気流が固定接点32に吹き付けられるため、固定接点32から分離される異物70が固定接点32に対して遠方に吹き飛ばされる。
【0112】
以上により、接点32、31に対してクーロン力による引力によって付着されている異物70を接点32、31から分離して除去することができる。
【0113】
以上により、電磁継電器10の接点31、32から異物70が除去される。これにより、本実施形態の電磁継電器10の製造が終了する。
【0114】
以上説明した本実施形態の電磁継電器10の製造工程の第1工程では、導電性材料によって構成されている固定接点32と、導電性材料によって構成されている可動接点31とを備える電磁継電器10が用意される。
【0115】
可動接点31は、その変位によって、固定接点32に対して接触、或いは固定接点32から離れることが可能になるように構成されている。
【0116】
電磁継電器10の製造工程の第2工程では、可動接点31に摩擦帯電された異物70が付着している場合に、接点31、32の間に高圧電圧を与える。このとき、接点31、32の間に放電が生じていない状態で、可動接点31は、異物70と帯電極性と同一極性になり、固定接点32は、異物70と帯電極性と異なる極性になる。
【0117】
このため、可動接点31および異物70の間に生じるクーロン力による引力が低下される。したがって、可動接点31から異物70が分離される。このとき、電動送風機61から吹き出される空気流によって、可動接点31から分離される異物70が可動接点31に対して遠方に吹き飛ばされる。
【0118】
電磁継電器10の製造工程の第3工程では、固定接点32に摩擦帯電された異物70が付着している場合に、接点31、32の間に高圧電圧を与える。このとき、接点31、32の間に放電が生じていない状態で、可動接点31は、異物70の帯電極性と異なる極性になり、固定接点32は、異物70の帯電極性と同一の極性になる。
【0119】
このため、固定接点32および異物70の間に生じるクーロン力による引力が低下される。したがって、固定接点32から異物70が分離される。このとき、電動送風機61から吹き出される空気流によって、固定接点32から分離される異物70が固定接点32に対して遠方に吹き飛ばされる。
【0120】
以上により、異物70を電磁継電器10の接点31、32から除くことができる電磁継電器10の製造方法を提供することができる。
【0121】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、異物70を除去する対象である継電器を、可動接点31および固定接点32を備える電磁継電器10とした例について説明した。
【0122】
しかし、これに代えて、可動片31Aおよび固定接点32、32A備える電磁継電器10とした本第3実施形態について説明する。
【0123】
本実施形態の電磁継電器10では、固定接点32が第2負荷端子42に接続されている第1固定接点である。固定接点32Aが第1負荷端子41に接続されている第2固定接点である。固定接点32Aは、固定接点32Aに対して離れて配置されている。固定接点32A、32Aは、それぞれ、導電性材料(例えば、金属材料)によって構成されている。
【0124】
可動片31Aは、導電部31aおよび可動接点31b、31cを備える。導電部31aは、可動接点31b、31cの間を電気的に接続する。導電部31aおよび可動接点31b、31cは、それぞれ、導電性材料(例えば、金属材料)によって構成されている。
【0125】
本実施形態の可動片31Aは、図示しない板バネによって支持されている。
【0126】
このように構成される本実施形態では、可動片31Aは、コイル巻線26から生じる電磁力によって、板ばねを弾性変形させつつ、変位して、可動接点31bが固定接点32Aに接触し、かつ可動接点31cが固定接点32に接触した状態になる。
【0127】
すなわち、可動片31Aは、コイル巻線26から生じる電磁力によって、固定接点32A、32のそれぞれに接触した状態になる。このため、可動片31Aによって、固定接点32A、32の間を電気的に接続した状態にすることができる。
【0128】
また、コイル巻線26から電磁力が生じていない場合に、板ばねの弾性変形が戻るため、可動片31Aの可動接点31bが固定接点32Aから分離し、かつ可動接点31cが固定接点32から分離した状態になる。
【0129】
すなわち、板ばねの弾性変形によって、可動片31Aは、固定接点32A、32のそれぞれから離れた状態になる。このため、可動片31Aによって、固定接点32A、32の間を開放した状態にすることができる。
【0130】
次に、本実施形態の電磁継電器10の製造工程について
図3、
図11を参照して説明する。
図3は、本実施形態の電磁継電器10の製造工程を示すフローチャートである。
図11は、電磁継電器10の製造工程で使用される治具としての高電圧発生器60が電磁継電器10に接続され、かつ治具としての電動送風機61が電磁継電器10の付近に設置された状態を示す図である。
【0131】
まず、ステップ100の製造工程の第1工程において、第1負荷端子41、第2負荷端子42、固定接点32、32A、および可動接点31b等が組み付けられた電磁継電器10を用意する。
【0132】
次のステップ110の製造工程の第2工程において、電動送風機61からの固定接点32、32A、および可動接点31bに向けて送風する。
【0133】
このとき、可動片31Aが固定接点32、32Aから離れた状態で、高電圧発生器60から固定接点32、32Aの間に高電圧が印加される。このため、固定接点32、32Aの間に放電が生じる。
【0134】
具体的には、固定接点32および可動接点31cの間に放電が生じ、かつ可動接点31b、31cの間には、導電部31aを通して電流が流れる。これに加えて、固定接点32Aおよび可動接点31bの間に放電が生じる。
【0135】
すなわち、固定接点32および可動片31Aの間に放電が生じ、かつ可動片31Aに電流が流れ、さらに、固定接点32Aおよび可動片31Aの間に放電が生じる。
【0136】
このとき、固定接点32および可動接点31cの間の放電の衝撃力と、固定接点32Aおよび可動接点31bの間の放電の衝撃力とによって、電磁継電器10の可動片31A、固定接点32、32Aのそれぞれの表面から異物70が分離される。
【0137】
具体的には、固定接点32および可動接点31cの間の放電に伴って、固定接点32および可動接点31cの間の放電経路からその周りに向けて急速に流れる空気流が生じる。
【0138】
これに加えて、固定接点32Aおよび可動接点31bの間の放電に伴って、固定接点32Aおよび可動接点31bの間の放電経路からその周りに向けて急速に流れる空気流が生じる。
このため、このような放電による空気流によって、可動片31A、固定接点32、32Aのそれぞれの表面から異物70が分離される。
【0139】
このとき、電動送風機61から吹き出される空気流が異物70に吹き付けられると、異物70が可動片31A、固定接点32、32Aに対して遠方に吹き飛ばされる。
【0140】
これにより、摩擦帯電によって帯電された異物70が可動片31A、固定接点32、32Aに付着されている場合に、放電と送風によって、可動片31A、固定接点32、32Aから異物70を除去することができる。
【0141】
以上により、電磁継電器10の可動片31A、固定接点32、32Aから異物70が除去される。これにより、本実施形態の電磁継電器10の製造が終了する。
【0142】
以上説明した本実施形態の電磁継電器10の製造工程の第1工程では、導電性材料によって構成されている固定接点32と、導電性材料によって構成され、固定接点32に対して離れて配置されている固定接点32Aとを備える電磁継電器10が用意される。
【0143】
電磁継電器10には、導電性材料によって構成されている可動片31Aが設けられている。可動片31Aは、その変位によって、固定接点32、32Aに対して接触、或いは固定接点32、32Aから離れることが可能になるように構成されている。
【0144】
電磁継電器10の製造工程の第2工程では、固定接点32、32A、可動片31Aのうち少なくとも1つの部材に対してクーロン力による引力によって異物70が付着している場合に、次のように放電を生じさせる。
【0145】
すなわち、高電圧発生器60から固定接点32、32Aの間に高電圧を与えることにより、固定接点32および可動接点31cの間と、固定接点32Aおよび可動接点31bの間とに、放電を生じさせる。このため、このような放電に伴う衝撃力によって、異物70を前記少なくとも一方の部材から分離させることができる。
【0146】
この工程では、固定接点32、32Aの間に放電を生じさせる際に、この分離された異物70を吹き飛ばして異物70を前記少なくとも一方の部材から除去する空気流を電動送風機61から発生させる。
【0147】
以上により、異物70を電磁継電器10の固定接点32、32A、可動片31Aから除くことができる電磁継電器10の製造方法を提供することができる。
【0148】
(他の実施形態)
(1)上記第1、第2実施形態では、電磁力によって可動接点31を変位させて固定接点32に接触させる電磁継電器10を継電器とした例について説明した。これに代えて、作業者の手動によって可動接点31を固定接点32に接触させる手動型継電器を継電器としてもよい。
【0149】
(2)上記第3実施形態では、電磁力によって可動片31Aを固定接点32、32Aに接触させる電磁継電器10を継電器とした例について説明した。これに代えて、作業者の手動によって可動片31Aを固定接点32、32Aに接触させる手動型継電器を継電器としてもよい。
【0150】
(3)上記第1、第2実施形態では、電磁力によって可動接点31を固定接点32に接触させる電磁継電器10を継電器とした例について説明した。これに代えて、電磁力によって可動接点31を固定接点32から分離させる電磁継電器10を継電器としてもよい。
【0151】
(4)上記第3実施形態では、電磁力によって可動片31Aを固定接点32、32Aに接触させる電磁継電器10を継電器とした例について説明した。これに代えて、電磁力によって、可動片31Aを固定接点32、32Aから分離させる電磁継電器10を継電器としてもよい。
【0152】
(5)上記第1~第3実施形態では、継電器を車両用の電磁継電器10とした例について説明した。しかし、これに代えて、継電器を車両用以外の各種の用途に用いられる電磁継電器10としてもよい。
【0153】
(6)上記第1~第3実施形態では、
図7、
図11において、電動送風機61として軸流送風機を図示した。しかし、これに限らず、電動送風機61としては、軸流送風機以外の各種の送風機を用いてもよい。
【0154】
(7)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0155】
また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0156】
10 電磁継電器
31 可動接点
31A 可動片
32 固定接点
32A 固定接点
61 送風機
70 異物