(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080111
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】物品保持具付きパルプモールド
(51)【国際特許分類】
B65D 77/26 20060101AFI20240606BHJP
B65D 1/36 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B65D77/26
B65D1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193017
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】綿世 真弓
(72)【発明者】
【氏名】八木 晴可
【テーマコード(参考)】
3E033
3E067
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA10
3E033BB07
3E033FA01
3E033GA03
3E067AA11
3E067AB40
3E067AC01
3E067BA15C
3E067BA25B
3E067BB01C
3E067BB11B
3E067BB13B
3E067BB14B
3E067BC04C
3E067EB17
3E067EE22
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】環境負荷の低減と様々な保持形態とが両立できる物品保持具付きパルプモールドを提供する。
【解決手段】物品保持具付きパルプモールド1Aは、パルプモールド2Aと、パルプモールド2Aとは異なる材料にて構成されるとともに、物品100を保持する保持部34が設けられてなる物品保持具3Aとを備える。物品保持具3Aは、保持部34が露出した状態でパルプモールド2Aに固定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプモールドと、
前記パルプモールドとは異なる材料にて構成されるとともに、物品を保持する保持部が設けられてなる物品保持具とを備え、
前記物品保持具が、前記保持部が露出した状態で前記パルプモールドに固定されている、物品保持具付きパルプモールド。
【請求項2】
基材および当該基材の一方の主面に設けられた接着剤層を有するラベルをさらに備え、
前記物品保持具は、当該物品保持具の周縁に位置するとともに外側に向けて延設された板状の張り出し部を有し、
前記張り出し部は、前記パルプモールドに面する側に位置する第1面と、当該第1面とは反対側に位置しかつ前記パルプモールドには面しない第2面とを含み、
前記第2面と当該第2面に隣接する部分の前記パルプモールドの表面とに跨がって前記ラベルが前記接着剤層によって貼り付けられることにより、前記張り出し部が前記ラベルと前記パルプモールドとによって挟み込まれ、これにより前記物品保持具が、前記パルプモールドに固定されている、請求項1に記載の物品保持具付きパルプモールド。
【請求項3】
前記物品保持具は、保持した物品を取り出すための取り出し口と、当該取り出し口の開口面の法線方向に沿って見た場合に当該取り出し口から内側に向けて突出する係止部とを有し、
前記物品保持具が、前記係止部に物品を嵌め込むことで当該物品を保持可能に構成されている、請求項1に記載の物品保持具付きパルプモールド。
【請求項4】
前記物品保持具は、保持した物品を取り出すための取り出し口を有し、
前記パルプモールドには、前記保持部に対応した位置に孔部が設けられ、
前記孔部に前記保持部が挿通されることにより、前記取り出し口が、前記張り出し部から見て前記パルプモールド側に位置している、請求項2に記載の物品保持具付きパルプモールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を保持可能に構成された物品保持具付きパルプモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減の観点から、容器としてのパルプモールドに対するニーズが高まっている。また、パルプモールドに収容される商品が多様化していることから、その商品の形状に合わせてパルプモールドの形状も多様化しており、特に、立体的な形状を有するパルプモールドが求められている。このような立体的な形状を有するパルプモールドが開示された文献としては、たとえば特開2001-97351号公報(特許文献1)や特開2002-138400号公報(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-97351号公報
【特許文献2】特開2002-138400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、単に物品を収容するのみならず収容した物品を保持可能な容器をパルプモールドにて構成することを想定した場合には、パルプモールド自体の繊維質が剥がれる等の破損が生じ易く、パルプモールドによって成形できる形状が限られることを考慮すると、その保持形態もまた自ずと限られたものとなってしまい、様々な保持形態を実現することは非常に困難となる。一方で、上記容器を樹脂成形品にて構成した場合には、様々な保持形態が実現できる反面、環境負荷の低減の観点からは必ずしも好ましいものとは言えない。
【0005】
したがって、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、環境負荷の低減と様々な保持形態とが両立できる物品保持具付きパルプモールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく物品保持具付きパルプモールドは、パルプモールドと、上記パルプモールドとは異なる材料にて構成されるとともに、物品を保持する保持部が設けられてなる物品保持具とを備えている。上記本発明に基づく物品保持具付きパルプモールドにあっては、上記物品保持具が、上記保持部が露出した状態で上記パルプモールドに固定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、環境負荷の低減と様々な保持形態とが両立できる物品保持具付きパルプモールドを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る物品保持具付きパルプモールドの上側容器部が閉じられた状態の斜視図である。
【
図2】
図1に示す物品保持具付きパルプモールドの上側容器部が開かれた状態の内側表面側の斜視図である。
【
図3】
図1に示す物品保持具付きパルプモールドの上側容器部が開かれた状態の外側表面側の斜視図である。
【
図4】
図1に示すパルプモールドの上側容器部が開かれた状態の平面図である。
【
図6】
図1に示す物品保持具付きパルプモールドの
図2中に示すVI-VI線に沿った模式断面図である。
【
図7】
図1に示す物品保持具付きパルプモールドの要部拡大断面図、および、
図1に示す物品保持具付きパルプモールドとは異なる構成のラベルを備える物品保持具付きパルプモールドの要部拡大断面図である。
【
図8】
図1に示す物品保持具付きパルプモールドの製造方法を示すフロー図である。
【
図9】
図8に示す工程S6を表わした模式断面図である。
【
図10】
図8に示す工程S7を表わした模式断面図である。
【
図11】
図8に示す工程S8を表わした模式断面図である。
【
図12】
図8に示す工程S9を表わした模式断面図である。
【
図13】変形例に係る物品保持具付きパルプモールドの上側容器部が開かれた状態の平面図である。
【
図14】変形例に係る物品保持具付きパルプモールドの上側容器部が閉じられた状態の平面図である。
【
図15】実施の形態2に係る物品保持具付きパルプモールドの上側容器部が開かれた状態の平面図である。
【
図16】
図15に示す物品保持具付きパルプモールドの
図15中に示すXVI-XVI線に沿った模式断面図である。
【
図17】実施の形態3に係る物品保持具付きパルプモールドの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、物品としてのSDカード(すなわち、ソフトウェア、各種データ等の電子情報の記憶媒体)と、付属品としての冊子を収容可能に構成された物品保持具付きパルプモールドに本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る物品保持具付きパルプモールドの上側容器部が閉じられた状態の斜視図である。
図2および
図3は、それぞれ
図1に示す物品保持具付きパルプモールドの上側容器部が開かれた状態の内側表面側および外側表面側の斜視図である。
図4は、
図1に示すパルプモールドの上側容器部が開かれた状態の平面図であり、
図5は、
図1に示す保持具の斜視図である。
図6は、
図1に示す物品保持具付きパルプモールドの
図2中に示すVI-VI線に沿った模式断面図である。
図7(A)は、
図1に示す物品保持具付きパルプモールドの要部拡大断面図であり、
図7(B)は、
図1に示す物品保持具付きパルプモールドとは異なる構成のラベルを備える物品保持具付きパルプモールドの要部拡大断面図である。まず、これら
図1ないし
図7を参照して、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Aについて説明する。なお、
図1および
図3においては、ラベル4Aに色を付している。
【0011】
図1ないし
図3に示すように、物品保持具付きパルプモールド1Aは、物品100と、付属品200とを収容するための容器であり、パルプモールド2Aと、物品100を着脱可能に保持する物品保持具3Aと、パルプモールド2Aおよび物品保持具3Aを覆うラベル4Aとを備えている。
【0012】
パルプモールド2Aは、これが閉じられた状態において、全体として平面視略矩形状の外形を有しており、下面開口の上側容器部21と、上面開口の下側容器部22と、これら上側容器部21および下側容器部22を回動可能に連結するヒンジ部23とを有している。
【0013】
図1ないし
図4に示すように、パルプモールド2Aの上側容器部21は、略平板状の部位と、その周囲に位置する湾曲状の部位とを含んでおり、これにより上側容器部21の内側表面には、凹形状の部位が設けられている。
【0014】
上側容器部21の外側表面の中央部は、略平面形状を有するように構成されている。また、上側容器部21の外側表面の周縁部には、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部と、一方向に湾曲した曲面からなる曲面部が位置している。
【0015】
図2に示すように、下側容器部22には、上側容器部21が閉じられた状態において当該上側容器部21に面する凹状の収容部22aが設けられている。収容部22aは、上側容器部21が閉じられた状態において、当該上側容器部21と共に、付属品200が収容される収容空間を規定する。
【0016】
また、
図4に示すように、下側容器部22には、平面視略矩形状の孔部22bが設けられている。孔部22bは、下側容器部22のうちの、後述する物品保持具3Aの保持部34に対応する位置に設けられている。
【0017】
下側容器部22の外側表面は、物品保持具3Aの後述する張り出し部31bの第1面31b1に当接する当接領域26と、当接領域26の外側に位置しかつ物品保持具3Aに対向しない非当接領域27とを含んでいる。当接領域26は、当該当接領域26と非当接領域27との境界部において、非当接領域27よりも後退している。これによって下側容器部22の外側表面に凹状の段差部25が設けられていることにより、物品保持具付きパルプモールド1Aの表面の平滑性が向上することになるが、この点については後において詳述することとする。
【0018】
上側容器部21の内側表面には、その周縁部の一部に沿うように第1マグネット301が取付けられており、上側容器部21が閉じられた状態において当該第1マグネット301に面する部分の下側容器部22の内側表面には、第2マグネット302が取付けられている。物品保持具付きパルプモールド1Aにあっては、これら第1マグネット301および第2マグネット302の磁力により、上側容器部21が閉じられた状態が維持される。なお、第1マグネット301および第2マグネット302のうちのいずれか一方は、鉄箔によって構成されたものであってもよい。
【0019】
パルプモールド2Aの原料としては、新聞紙、チラシ、中質紙、および上質紙等からなる印刷使用済み古紙に、湿式で離解、および精選等の処理を施すことによって得られる古紙パルプ、または、上記処理に加えて脱墨および漂白等の処理を施すことによって得られる脱墨古紙パルプ、もしくは晒パルプまたは未晒パルプ等のセルロースパルプが用いられる。パルプモールド2Aは、これらのパルプにサイズ剤、填料、染料、定着剤、および耐水化剤等が適宜添加されてなるパルプスラリーが、所望の形状に成形されることによって製作される。
【0020】
なお、上述した各種パルプに代えて、バージンパルプ、または、サトウキビの搾りかすであるバガスもしくは竹等の非木材系パルプが用いられてもよい。また、いずれのパルプにおいても、合成樹脂が少量(好ましくは5%以下程度)含まれていてもよい。
【0021】
図2、
図5および
図6に示すように、物品保持具3Aは、物品100を着脱可能に保持する部材である。物品保持具3Aは、板状の基部31と、基部31から立設された平面視略C字状の周壁部32とを有している。
【0022】
基部31は、これを平面視した場合に周壁部32よりも内側に位置する底部31aと、周壁部32よりも外側に位置する張り出し部31bとを含んでいる。底部31aは、周壁部32と共に凹状の物品収容部33を規定している。
【0023】
張り出し部31bは、物品保持具3Aの周縁に位置するとともに外側に向けて延設された板状の部位である。張り出し部31bは、物品保持具3Aが下側容器部22に固定された状態において下側容器部22に面する側に位置する第1面31b1と、第1面31b1とは反対側に位置しかつ下側容器部22には面しない第2面31b2とを含んでいる。
【0024】
周壁部32には、当該周壁部32の基部31に面しない側の軸方向端部から内側に向けて突出した複数の係止部としての爪部32aが設けられている。本実施の形態においては、周壁部32は、4つの爪部32aを含んでいる。
【0025】
物品保持具3Aにあっては、これら複数の爪部32aと物品収容部33とにより、物品保持具3Aの保持部34が規定されている。また、周壁部32の上記軸方向端部は、保持した物品を保持部34から取り出すための取り出し口34aを規定している。
【0026】
図2および
図6に示すように、保持部34は、下側容器部22の外側表面側から内側表面側に向けて孔部22bに挿通されている。これにより、取り出し口34aは、張り出し部31bから見て下側容器部22側に位置することになる。また、張り出し部31bは、その厚み方向の全ての部分が、上述した下側容器部22の段差部25に入り込んでいる。
【0027】
物品保持具3Aは、パルプモールド2Aとは異なる材料である樹脂製、金属製あるいは木製等にて構成されるが、好適には、可撓性に優れたポリエチレン、ポリプロピレンあるいはポリアミド等の樹脂製とされる。このように可撓性に優れた材料からなる物品保持具3Aとすることにより、当該物品保持具3Aに、パルプモールド2Aのみでは成形できない弾性変形可能な部位を設けることが可能になる。
【0028】
物品100は、上述した底部31aおよび周壁部32によって規定される物品収容部33と、複数の爪部32aとによって規定される保持部34に無理嵌めされることで物品保持具3Aによって保持される。
【0029】
より詳細には、物品100が、取り出し口34aに設けられた複数の爪部32aに押し当てられる。これによって外力が印加された複数の爪部32aは、これらが弾性変形して底部31a側に向けて傾倒する。これにより、物品100は、取り出し口34aを通過できることになり、結果として物品100は、物品収容部33に収容されることになる。このようにして物品100を保持部34に無理嵌めすることにより、物品100は、物品保持具3Aによって保持されることになる。
【0030】
なお、複数の爪部32aは、物品100の通過後に元の位置に復帰する。そのため、物品100の物品保持具3Aからの脱着は、上述した動作と逆の動作が意図的に行なわれた場合にのみ実現されることになる。
【0031】
このように、パルプモールド2Aとは異なる材料であってかつ可撓性に優れた材料(すなわち、上述したポリエチレン等の樹脂材料)によって物品保持具3Aを構成することにより、爪部32aの如くの弾性変形可能な部位を当該物品保持具3Aに設けることが可能になる。また、このように構成された物品保持具3Aがパルプモールド2Aに固定された物品保持具付きパルプモールド1Aとすることにより、パルプモールド2A単体によっては実現できない保持形態での物品の保持が可能になる。
【0032】
図1、
図3および
図6に示すように、ラベル4Aは、パルプモールド2Aの上側容器部21および下側容器部22の外側表面の全面に貼り付けられたシート状のものであり、基材4aおよび当該基材4aの一方の主面に設けられた接着剤層4bを有している(特に
図6参照)。これにより、ラベル4Aの一対の主面のうちの一方である第2主面4(2)は、接着剤層4bによって規定され、他方である第1主面4(1)は、基材4aによって規定されている。
【0033】
ラベル4Aの平面視した場合の外形は、上側容器部21および下側容器部22の外形に合わせて適宜変更されてもよく、たとえば、略円形状、略楕円形状、多角形状等であってもよい。
【0034】
基材4aとしては、純白洋紙や晒クラフト紙、未晒クラフト紙等の紙、合成紙、透明性を有するセロファン、およびプラスチックフィルム等が用いられる。基材4aに用いられる上記紙の米坪は、たとえば20g/m2以上100g/m2以下であることが好ましい。基材4aに用いられる上記セロファンの厚みは、たとえば20μm以上50μm以下であることが好ましい。基材4aに用いられるプラスチックフィルムとしては、たとえばポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸等のポリエステル系、ポリプロピレンや高密度ポリエチレン等のポリオレフィン系、スチレンブタジエン共重合体等のスチレン系のフィルムであって、厚みが10μm以上80μm以下のものが挙げられる。
【0035】
なお、基材4aは、デザイン印刷層を含んでいてもよい。この場合、基材4aは、たとえば、ベースとなる層としての紙や合成紙、セロファン、プラスチックフィルム等の一対の主面のうちの接着剤層4bとは反対側に位置する主面に、デザイン印刷層が施されたものによって構成される。
【0036】
接着剤層4bは、透明性を有しかつ熱接着性を有するものであることが好ましい。詳細には、接着剤層4bは、熱接着性を有する樹脂である、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene(LDPE))、またはエチレン酢酸ビニル共重合体(Ethylene-Vinyl Acetate(EVA))等の熱可塑性樹脂であることが好ましいが、アクリル系もしくはウレタン系等の良好な接着性を有する樹脂等であってもよい。
【0037】
さらに、接着剤層4bは、植物由来の原料を用いたPBS(Poly Butylene Succinate)やPLA(Poly Lactic Acid)等の生分解性樹脂であってもよく、このようにすれば、石油由来材料の使用を抑制することができる。なお、接着剤層4bは、粘着付与剤や滑剤等が添加されたものであってもよい。
【0038】
接着剤層4bは、熱接着性を有するもの以外のものでもよい。より詳細には、接着剤層4bとして、水の塗布や加湿によって活性化することで接着性が生じる再湿性接着剤が用いられてもよい。再湿性接着剤としては、ポリビニルアルコール樹脂や水溶性アクリル系樹脂、天然ゴム、カゼイン等からなるものが挙げられる。
【0039】
また、接着剤層4bとして、接着剤含有マイクロカプセルからなるものが用いられてもよい。このように構成された接着剤層4bは、加圧プレスされることでマイクロカプセルが破裂し、これによって露出した接着剤によって接着性が生じることになる。
【0040】
接着剤層4bを基材4aの主面に設ける手法としては、接着剤層4bを構成する上述した熱接着性を有する樹脂等を押出しラミネートによって基材4aにコーティングする手法でもよく、溶液もしくはエマルジョンの状態とした当該樹脂等を基材4aにコーティングして乾燥させる手法等でもよい。なお、接着剤層4bの厚みは、0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0041】
ここで、
図6に示すように、ラベル4Aは、上述した上側容器部21および下側容器部22の外側表面の全面だけでなく、下側容器部22の孔部22bに挿通された物品保持具3Aの張り出し部31bの第2面31b2にも貼り付けられている。このように、ラベル4Aが、第2面31b2と、これに隣接する部分の下側容器部22の外側表面とに跨がって接着剤層4bによって貼り付けられることにより、張り出し部31bが、その厚み方向においてラベル4Aと下側容器部22とによって挟み込まれている。このように構成することにより、物品保持具3Aを、保持部34が露出した状態で下側容器部22に固定することが可能になる。
【0042】
また、上述したように、張り出し部31bは、その厚み方向の全ての部分が、上述した下側容器部22の段差部25に入り込んだ状態とされている。これにより、張り出し部31bに対応する部分およびその近傍に貼り付けられたラベル4Aの表面を平滑に仕上げることが可能になる。
【0043】
図1および
図3に示すように、ラベル4Aは、上側容器部21および下側容器部22のうちの複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を覆う第1領域41と、上側容器部21および下側容器部22のうちの上記曲面部以外の部分を覆う第2領域42とを有している。
【0044】
ここで、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部に対し、何らの手当ても行なわずに第1領域41が接着剤層4bを介して貼り付けられた場合には、第1領域41が皺になったり、折り重なったりすることによってラベル4Aの表面に段差が生じ易くなる。この点、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Aにあっては、後述するプレス工程によってラベル4Aをパルプモールド2Aに貼り付けることにより、皺や折り重なりが生じた第1領域41の厚みが、柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収された状態で貼り付けられることにより、上述した問題の解決が図られている。
【0045】
詳細には、
図7(A)に示すように、ラベル4Aの第1領域41の折り重なりが位置する部分に対応する部分のパルプモールド2Aは、当該折り重なりが位置しない部分に対応する部分のパルプモールド2Aよりも圧縮された状態とされている。これにより、折り重なりが位置する部分のラベル4Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込んだ状態となるように、ラベル4Aがパルプモールド2Aに貼り付けられている。
【0046】
より詳細には、ラベル4Aの第1領域41に生じた折り重なりに対応する部分のパルプモールド2Aの表面は、その余の部分の表面よりも後退している。これにより、パルプモールド2Aの表面には段差部分21cが形成されることになり、第1領域41の折り重なりは、段差部分21cに入り込んだ状態でパルプモールド2Aの表面に貼り付けられることになる。その結果、折り重なりが生じた第1領域41の厚みは、柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収されることになるため、皺や折り重なりを目立たなくさせることができるばかりでなく、物品保持具付きパルプモールド1Aの表面を平滑化できることになる。なお、このような構成は、第1領域41に生じた皺が位置する部分においても同様である。
【0047】
ここで、ラベルの皺や折り重なりをさらに目立たなくさせるために、接着剤層が基材4aの一対の主面の一方にのみ設けられているラベル4Aの代わりに、接着剤層が基材4aの一対の主面の両方に設けられたラベル4A’が用いられてもよい。詳細には、ラベル4A’は、当該ラベル4A’のパルプモールド2A側に位置する第2主面4(2)が、接着剤層4bによって規定されるとともに、他方である第1主面4(1)もまた、接着剤層4b’によって規定されることとなるように構成される。
【0048】
当該ラベル4A’が用いられた場合には、
図7(B)に示すように、ラベル4A’の第1領域41に生じた折り重なり部分においては、第2主面4(2)のうちの折り重なりを規定する部分同士が、接着剤層4bを介して接着されるとともに、第1主面4(1)のうちの折り重なりを規定する部分同士が、接着剤層4b’を介して接着されることになる。これにより、皺や折り重なりが捲れることを防止することができるため、ラベルの皺や折り重なりをさらに目立たなくさせることができる。ここで、
図7(B)においては、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Aと区別するため、ラベル4A’が用いられた物品保持具付きパルプモールドには、符号1A’を付している。
【0049】
なお、ラベル4A’が用いられた物品保持具付きパルプモールド1A’が製造される場合には、後述する第2型120のラベル4A’に面する側の表面には、離型性に優れたポリテトラフルオロエチレン系樹脂等によるコーティングが施されていることが好ましい。これにより、ラベル4A’の表面が、第2型120に接着することを防止することができる。
【0050】
また、ラベル4Aの第1領域41には、当該第1領域41において生じる皺や折り重なりが目立ちにくいような所定のデザインを施すことが好ましい。
【0051】
このようなデザインとしては、たとえば、木目調、石目調、石垣模様、岩肌模様、大理石模様、空模様、砂地柄、波柄、織物柄、小花柄、草花柄、樹木柄、唐草模様、小紋柄、ボタニカル柄、ペイズリー柄、カモフラージュ柄、ドット柄、水彩柄、およびマーブル模様等が挙げられる。第1領域41には、これらのうちのいずれかのデザインが施されることが好ましい。また、これらのデザイン以外にも、たとえば、パルプモールドの地模様と同一の模様、自然物を散在させたようなデザイン、および、実質的に同一の単位デザインが繰り返し並ぶように配置された連続柄のうちのいずれかとすることによっても、皺や折り重なりを目立ちにくくすることができる。
【0052】
図8は、
図1に示す物品保持具付きパルプモールドの製造方法を示すフロー図であり、
図9ないし
図12は、
図8に示す工程の一部を表わした模式断面図である。次に、これら
図8ないし
図12を参照して、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Aの製造方法について詳細に説明する。
【0053】
ここで、
図9は、
図2中に示すVIIII-VIIII線に対応した位置でのパルプモールド2A、物品保持具3A、ラベル4A、および後述する第1型110および第2型120の断面を表わした図である。
図10ないし
図12についても同様である。
【0054】
図9に示すように、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Aの製造方法においては、まず、後述するプレス工程(工程S8)を経ることでそれ自体が圧縮されることが可能に構成されたパルプモールド2Aが準備される(工程S1)。
【0055】
このようなパルプモールド2Aは、たとえば、抄造成形される工程と乾燥される工程とを経ることで得られるものである。詳細には、まず、パルプモールド2Aの表面形状に沿う形状を有しかつ吸引用貫通孔が設けられた抄造成形用型の表面に網を張り、これらをパルプスラリーが充填された材料槽の中に浸漬する。次に、抄造成形用型の網が張られた側の主面とは反対側の主面が位置する側からパルプスラリーを吸引して上記網の表面にパルプスラリーを堆積させる。次に、堆積したパルプスラリーを抄造成形用型から取り外し、さらに乾燥させることにより、上述したパルプモールド2Aが得られることになる。
【0056】
なお、この工程においてパルプモールド2Aに孔部22bを設ける方法としては、たとえば、抄造成形用型にパルプスラリーが吸引される工程において、孔部22bに対応する部分の抄造成形用型に吸引用貫通孔を設けないことにより、当該部分にパルプスラリーが堆積されないようにする方法が挙げられる。また、他の方法として、堆積したパルプスラリーを抄造成形用型から取り外して乾燥させた後に、パルプモールド2Aのうちの孔部22bに対応する部分を切り抜くこととしてもよい。
【0057】
次に、パルプモールド2Aに固定される物品保持具3Aが準備される(工程S2)。
次に、パルプモールド2Aの上側容器部21および下側容器部22の外側表面の全面を覆うことが可能な大きさの外形を有するラベル4Aが準備される(工程S3)。次に、上側容器部21が開かれた状態におけるパルプモールド2Aの形状に沿う形状を有する第1型110と、上側容器部21が開かれた状態におけるパルプモールド2Aおよびこれを覆うラベル4Aの形状に沿う形状を有する第2型120が準備される(工程S4)。
【0058】
ここで、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、製品としての物品保持具付きパルプモールド1Aを構成するパルプモールド2Aの形状に実質的に沿う形状のことを意味しており、第2型120によってプレスされる工程(工程S8)の前のパルプモールド2Aの形状と完全に一致した形状を意味するものではない。すなわち、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、工程S8においてラベル4Aと共に第2型120によってプレスされた後の(すなわち、プレスによって圧縮変形した後の)パルプモールド2Aに沿う形状を意味している。
【0059】
また、パルプモールド2Aおよびこれを覆うラベル4Aの形状に沿う形状とは、製品としての物品保持具付きパルプモールド1Aを構成するパルプモールド2Aおよびラベル4Aの形状に実質的に沿う形状のことを意味しており、第2型120によってプレスされる工程(工程S8)の前のパルプモールド2Aおよびラベル4Aの形状と完全に一致した形状を意味するものではない。すなわち、パルプモールド2Aおよびこれを覆うラベル4Aの形状に沿う形状とは、工程S8において第2型120によってプレスされた後の(すなわち、プレスによって圧縮変形した後の)パルプモールド2Aおよびラベル4Aに沿う形状を意味している。
【0060】
次に、
図8および
図9に示すように、パルプモールド2Aが第1型110に載置される(工程S5)。
【0061】
次に、
図8および
図9に示すように、物品保持具3Aが、パルプモールド2Aの下側容器部22に設けられた孔部22bに挿通される(工程S6)。
【0062】
より詳細には、
図9に示すように、物品保持具3Aが、これが下側容器部22の外側表面側から内側表面側に向けて孔部22bに挿通されている。これにより、張り出し部31bの第1面31b1が、下側容器部22の外側表面に当接することになる。
【0063】
次に、
図8および
図10に示すように、ラベル4Aが、パルプモールド2Aに対して位置決めされて配置される(工程S7)。
【0064】
より詳細には、
図10に示すように、パルプモールド2Aおよび物品保持具3Aが第1型110に載置された状態において、ラベル4Aが、接着剤層4bが設けられた第2主面4(2)がパルプモールド2Aの下側容器部22に面し、かつ、後述するパルプモールド2Aおよびラベル4Aが第2型120によってプレスされる工程(工程S8)において下側容器部22の外側表面の全面を覆うこととなるように、パルプモールド2Aの下側容器部22に対して位置決めされて配置される。これにより、ラベル4Aは、第1型110と第2型120との間に配置されることになる。
【0065】
次に、
図8および
図11に示すように、ラベル4Aが、第1型110および第2型120によってプレスされることでパルプモールド2Aに貼り付けられる(工程S8)。
【0066】
詳細には、
図11に示すように、ラベル4Aがパルプモールド2Aに対して位置決めされた状態において、ラベル4Aが、第2型120によってパルプモールド2Aに向けて(すなわち、
図11中に示す矢印AR1方向に向けて)プレスされる。
【0067】
これにより、パルプモールド2Aおよびラベル4Aが、積層された状態で第1型110および第2型120によって挟み込まれることになり、ラベル4Aは、上側容器部21および下側容器部22の外側表面の全面を覆うように、熱接着性の接着剤層4bを介してこれらに貼り付けられる。
【0068】
また、ラベル4Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、パルプモールド2Aの上側容器部21および下側容器部22のうちの、ラベル4Aの第1領域41の皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分は、これが位置しない部分に対応する部分のパルプモールド2Aよりも圧縮された状態とされる。これにより、皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分のラベル4Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込んだ状態となるように、ラベル4Aがパルプモールド2Aに貼り付けられることとなる。
【0069】
さらに、張り出し部31bの第1面31b1に当接する部分の下側容器部22は、張り出し部31bの第1面31b1に当接しない部分の下側容器部22よりも圧縮された状態とされる。これにより、下側容器部22の外側表面に段差部25が形成され、張り出し部31bは、その厚み方向の全ての部分が、下側容器部22に設けられた段差部25に入り込むこととなる。
【0070】
工程S8における第2型120によるプレスは、プレス温度が概ね70℃以上200℃以下であることが好ましく、さらに好適には、90℃以上150℃以下とされる。その際、第1型110も同程度に加熱されていてもよい。プレス時間は、1秒以上5秒以下程度であることが好ましい。なお、上述したプレス温度およびプレス時間は、基材4aの耐熱性や接着剤層4bの接着温度等によって適宜変更されるものである。パルプモールド2Aは、このような条件下でラベル4Aと共にプレスされて圧縮変形されることにより、プレス前の状態に比べて、硬く、薄く、その表面が平滑化したものになる。一例として、プレス前において厚みが0.8mm以上3.0mm以下あるいは1.5mm以上2.5mm以下のパルプモールド2Aは、このプレスによって厚みが0.8mm以上1.5mm以下等になる。
【0071】
次に、
図8および
図12に示すように、第2型120によるパルプモールド2Aおよびラベル4Aのプレスが解除される(工程S9)。より詳細には、
図12に示すように、第2型120がプレス前の位置に後退する(すなわち、
図12中に示す矢印AR2方向に向けて移動する)ことにより、第2型120によるパルプモールド2Aおよびラベル4Aのプレスが解除される。これにより、
図1ないし
図3において示した物品保持具付きパルプモールド1Aの製造が完了する。
【0072】
なお、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Aの製造方法においては、上述したように、工程S1において、抄造成形されかつ乾燥されることで得られるパルプモールド2Aが準備される場合を例示したが、工程S1において準備されるパルプモールド2Aは、抄造成形されかつ乾燥された後に、さらに、プレスによって粗成形されたものであってもよい。抄造成形されかつ乾燥されることで得られるパルプモールド2Aは、柔らかく、かつ、厚みが相当程度に大きなものとなるだけでなく、厚みが不均一な状態で乾燥されることに起因して歪に変形したり、また、その表面には、厚みの不均一性やパルプ繊維の不規則な絡み合い等に起因する凹凸が形成されたりしている。そのため、抄造成形されかつ乾燥された後にさらに粗成形を行なうことで得られるパルプモールド2Aから孔部22bに対応する部分を切り抜くことにより、良好な仕上がりの孔部22bとすることができる。
【0073】
ここで、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Aにおいては、上述したように、パルプモールド2Aとは異なる材料からなり、物品100を保持する保持部34を有する物品保持具3Aがパルプモールド2Aに固定されており、この保持部34によって物品100を保持することが可能に構成されている。
【0074】
このように、物品保持具3Aを、繊維質が剥がれる等の破損が生じ易いパルプモールド2Aとは異なる材料にて構成されたものとすることにより、様々な保持形態が実現できる容器とすることができる。
【0075】
特に、パルプモールド2Aとは異なる材料であってかつ可撓性に優れた材料からなる樹脂材料にて物品保持具3Aを成形することにより、パルプモールド2Aでは実現困難な保持形態、たとえば、取り出し口34aの開口面の法線方向に沿って見た場合に内側に向けて突出する係止部としての爪部32aに物品を嵌め込むことでこれを保持するという保持形態が実現可能な物品保持具3A、およびこれを備えた物品保持具付きパルプモールド1Aとすることができる。
【0076】
また、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Aにあっては、容器を構成する部材の大部分が、パルプモールドによって構成されている。
【0077】
このように構成することにより、樹脂成形品からなる容器に比較して、樹脂の使用量を大幅に削減できるため、環境負荷の低減と製造コストの削減とが図られた容器とすることができる。
【0078】
したがって、このように構成することにより、環境負荷の低減と様々な保持形態とが両立できる物品保持具付きパルプモールドとすることができる。
【0079】
さらに、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Aにあっては、上述したように、ラベル4Aが、物品保持具3Aの張り出し部31bと、張り出し部31bに隣接する部分のパルプモールド2Aとに貼り付けられることにより、張り出し部31bが、その厚み方向においてパルプモールド2Aとラベル4Aとに挟み込まれ、これによって物品保持具3Aがパルプモールド2Aに固定されている。
【0080】
このように構成することにより、簡素な構成にて物品を保持できる物品保持具付きパルプモールドとすることができる。
【0081】
また、このように構成することにより、パルプモールド2Aにされている部分である張り出し部31bが、ラベル4Aによって覆われることで外部から視認不能となり、結果として物品保持具付きパルプモールド1Aの美観を向上させることができる。さらに、ラベル4Aにデザインを付与した場合には、物品保持具付きパルプモールド1Aに優れた意匠性を付与することも可能になる。
【0082】
さらに、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Aにあっては、上述したように、張り出し部31bの厚み方向の少なくとも一部が、パルプモールド2Aの下側容器部22に設けられた段差部25に入り込んだ状態とされている。このように構成することにより、張り出し部31bに対応する部分およびその近傍に貼り付けられるラベル4Aの表面に段差が生じ難くなるため、ラベル4Aの表面が平滑に仕上げられた物品保持具付きパルプモールド1Aとすることができる。
【0083】
なお、本実施の形態においては、ラベル4Aが、上側容器部21および下側容器部22の外側表面の全面を覆う場合について説明したが、ラベル4Aは、必ずしも上側容器部21および下側容器部22の外側表面の全面を覆う必要はなく、少なくとも物品保持具3Aの基部31およびこれに隣接する部分のパルプモールド2Aの外側表面を覆っていればよい。
【0084】
(変形例)
図13および
図14は、いずれも変形例に係る物品保持具付きパルプモールドの平面図であり、
図13は、上側容器部が開かれた状態の平面図、
図14は、上側容器部が閉じられた状態の平面図である。以下、これら
図13および
図14を参照して、上述した実施の形態1に基づいた変形例に係る物品保持具付きパルプモールド1A1について説明する。
【0085】
図13および
図14に示すように、変形例に係る物品保持具付きパルプモールド1A1は、上述した実施の形態1に係る物品保持具付きパルプモールド1Aと比較した場合に、パルプモールド2A1の上側容器部21A1が閉じられた状態を維持するための構成が相違している。
【0086】
より詳細には、変形例に係る物品保持具付きパルプモールド1A1にあっては、パルプモールド2A1の上側容器部21A1および下側容器部22A1に、それぞれ第1マグネット301および第2マグネット302が取付けられていない。一方で、上側容器部21A1の内側表面には、その周縁部の一部に平面視略T字状の留め片21dが設けられ、上側容器部21が閉じられた状態において当該留め片21dに面する部分の下側容器部22A1の内側表面には、切り欠き部22dが設けられている。
【0087】
留め片21dは、上側容器部21A1の周縁部から外側に向けて突出する本体部21d1と、本体部21d1の突出方向と交差する方向に向けて当該本体部21d1から突出した2つの突出部21d2とを含んでいる。物品保持具付きパルプモールド1A1にあっては、これら2つの突出部21d2を切り欠き部22dの縁に引っかけることにより、上側容器部21が閉じられた状態を維持することが可能になる。
【0088】
このように構成した場合には、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られることになり、環境負荷の低減と様々な保持形態とが両立できる物品保持具付きパルプモールドとすることができる。
【0089】
(実施の形態2)
図15は、実施の形態2に係る物品保持具付きパルプモールドの上側容器部が開かれた状態の平面図であり、
図16は、
図15に示す物品保持具付きパルプモールドの
図15中に示すXVI-XVI線に沿った模式断面図である。以下、これら
図15および
図16を参照して、実施の形態2に係る物品保持具付きパルプモールド1Bについて説明する。
【0090】
図15および
図16に示すように、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Bは、上述した実施の形態1に係る物品保持具付きパルプモールド1Aと比較した場合に、物品保持具3Bを下側容器部22Bに固定するための構成等が相違している。
【0091】
より詳細には、物品保持具付きパルプモールド1Bにおいては、パルプモールド2Bに孔部が設けられていない。また、物品保持具3Bの張り出し部31bの一対の主面のうちの下側容器部22Bに当接する側である第1面31b1は、下側容器部22Bの内側表面に当接している。そのため保持部34の取り出し口34aは、張り出し部31bから見て下側容器部22側とは反対側に位置している。
【0092】
ラベル4Bとしては、たとえば紙製の基材4aの一方の主面に接着剤層4bとしての粘着剤が設けられた、いわゆるタックラベルを用いることができる。
【0093】
ラベル4Bは、物品保持具3Bの張り出し部31bの第2面31b2および周面と、下側容器部22の内側表面のうちの第2面31b2に隣接する部分とに跨がって接着剤層4bによって貼り付けられている。これにより、簡素な構成にて物品保持具3Bをパルプモールド2Bに固定することができる。
【0094】
ここで、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Bの製造方法は、上述した実施の形態1に係る物品保持具付きパルプモールド1Aの製造方法と比較した場合に、ラベル4Bがプレスによってパルプモールド2Bに貼り付けられていない点等が相違している。
【0095】
本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Bを製造するに際しては、まず、上述した実施の形態1に係る物品保持具付きパルプモールド1Aの製造方法における工程S1,S4,S5,S8,S9に準じた工程を経ることでパルプモールド2Bを成形する。次に、下側容器部22Bの内側表面に物品保持具3Bを位置決めして配置し、その後に、タックラベルからなるラベル4Bを、張り出し部31bの第2面31b2および周面と、下側容器部22の内側表面のうちの第2面31b2に隣接する部分とに跨がるように貼り付ける。これにより、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Bが製造されることになる。
【0096】
なお、物品保持具付きパルプモールド1Bにあっては、ラベル4Bとは別に、デザインが施された加飾用ラベルがさらにパルプモールド2Bに貼り付けられていてもよい。このような物品保持具付きパルプモールド1Bを製造する場合には、まず、実施の形態1に係る物品保持具付きパルプモールド1Aの製造方法に準じた工程を経ることで加飾用ラベルが貼り付けられたパルプモールド2Bを成形し、その後に、物品保持具3Bの位置決め配置、および、タックラベルからなるラベル4Bの貼り付けを行なうこととすればよい。
【0097】
このように構成した場合には、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られることになり、環境負荷の低減と様々な保持形態とが両立できる物品保持具付きパルプモールドとすることができる。
【0098】
(実施の形態3)
図17は、実施の形態3に係る物品保持具付きパルプモールドの模式断面図である。以下、この
図17を参照して、実施の形態3に係る物品保持具付きパルプモールド1Cについて説明する。なお、
図17は、
図15中に示すXVI-XVI線に対応した位置でのパルプモールド2Cおよび物品保持具3Cの断面を表わした図である。
【0099】
図17に示すように、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Cは、上述した実施の形態1に係る物品保持具付きパルプモールド1Aと比較した場合に、物品保持具3Cを下側容器部22Cに固定するための構成が相違しており、これに起因してラベルを備えていない点においても相違している。
【0100】
より詳細には、物品保持具付きパルプモールド1Cにおいては、パルプモールド2Cに孔部が設けられていない。また、物品保持具3Cの平板状の基部31は、下側容器部22Cの内側表面側に面している。
【0101】
物品保持具3Cは、接着剤または粘着剤によって構成された接着部400によって下側容器部22Cの内側表面に固定されている。これにより、簡素な構成にて物品保持具3Cをパルプモールド2Cに固定することができる。
【0102】
接着部400を構成する接着剤または粘着剤としては、物品保持具3Cおよび下側容器部22Cのそれぞれに強固に接着できるものであれば特に限定されない。上記接着剤または粘着剤としては、たとえば、溶融状態で塗布するホットメルト接着剤、溶液状で塗布し乾燥接着する水系あるいは溶剤系の接着剤、塗布乾燥後に加熱活性化して接着する感熱接着剤や粘着剤、または、両面粘着テープによる接着等を用いることができる。なお、接着部400を用いた接着は、下側容器部22Cの内側表面の全面でなく、物品保持具3Cが固定可能な範囲に部分的に塗布してもよい。
【0103】
本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Cの製造方法においては、まず、上述した実施の形態1に係る物品保持具付きパルプモールド1Aの製造方法における上記工程S1と同様の工程を経て準備されたパルプモールド2Cがプレスされ、プレス後のパルプモールド2Cの下側容器部22Cの内側表面の所定の部分に接着部400が塗布される。次に、物品保持具3Cの基部31が、接着部400に押し当てられる。これにより、物品保持具付きパルプモールド1Cの製造が完了する。
【0104】
このように構成した場合には、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られることになり、環境負荷の低減と様々な保持形態とが両立できる物品保持具付きパルプモールドとすることができる。
【0105】
なお、本実施の形態に係る物品保持具付きパルプモールド1Cにあっては、上述した実施の形態1,2と異なり、物品保持具3Cが張り出し部を有していなくてもよい。
【0106】
また、本実施の形態においては、パルプモールド2Cの下側容器部22Cの内側表面の所定の部分に接着部400を塗布する場合について説明したが、物品保持具3Cの基部31にホットメルト接着剤あるいは両面粘着テープからなる接着部400を塗布あるいは貼り付けることにより、物品保持具3Cを下側容器部22Cに固定してもよい。
【0107】
上述した実施の形態およびその変形例において開示した物品保持具付きパルプモールドの特徴的な構成を要約すると、以下のとおりとなる。
【0108】
[付記1]
パルプモールドと、
上記パルプモールドとは異なる材料にて構成されるとともに、物品を保持する保持部が設けられてなる物品保持具とを備え、
上記物品保持具が、上記保持部が露出した状態で上記パルプモールドに固定されている、物品保持具付きパルプモールド。
【0109】
[付記2]
基材および当該基材の一方の主面に設けられた接着剤層を有するラベルをさらに備え、
上記物品保持具は、当該物品保持具の周縁に位置するとともに外側に向けて延設された板状の張り出し部を有し、
上記張り出し部は、上記パルプモールドに面する側に位置する第1面と、当該第1面とは反対側に位置しかつ上記パルプモールドには面しない第2面とを含み、
上記第2面と当該第2面に隣接する部分の上記パルプモールドの表面とに跨がって上記ラベルが上記接着剤層によって貼り付けられることにより、上記張り出し部が上記ラベルと上記パルプモールドとによって挟み込まれ、これにより上記物品保持具が、上記パルプモールドに固定されている、付記1に記載の物品保持具付きパルプモールド。
【0110】
[付記3]
上記物品保持具は、保持した物品を取り出すための取り出し口と、当該取り出し口の開口面の法線方向に沿って見た場合に当該取り出し口から内側に向けて突出する係止部とを有し、
上記物品保持具が、上記係止部に物品を嵌め込むことで当該物品を保持可能に構成されている、付記1または2に記載の物品保持具付きパルプモールド。
【0111】
[付記4]
上記物品保持具は、保持した物品を取り出すための取り出し口を有し、
上記パルプモールドには、上記保持部に対応した位置に孔部が設けられ、
上記孔部に上記保持部が挿通されることにより、上記取り出し口が、上記張り出し部から見て上記パルプモールド側に位置している、付記2に記載の物品保持具付きパルプモールド。
【0112】
[付記5]
接着部をさらに備え、
上記物品保持具が、上記接着部によって上記パルプモールドに固定されている、付記1に記載の物品保持具付きパルプモールド。
【0113】
(その他の形態等)
上述した実施の形態およびその変形例においては、上側容器部と下側容器部とがヒンジ部によって連結された場合の物品保持具付きパルプモールドの構成を例示して説明を行なったが、上側容器部および下側容器部は、ヒンジ部によって連結されることなく、別個の部材として形成されていてもよい。この場合、上側容器部および下側容器部は、たとえば、各々に形成された嵌合部を介して互いに取り付けられてもよい。
【0114】
また、上述した実施の形態およびその変形例においては、物品としてのSDカードを収容可能に構成された物品保持具付きパルプモールドに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、上述したSDカード等以外の種々の商品を物品として収容可能に構成された物品保持具付きパルプモールドにも、本発明は当然に適用可能である。具体的には、たとえば、物品としてのCDあるいはDVDを、そのディスク中央を着脱自在に保持する樹脂製の留め具としての物品保持具を具備する物品保持具付きパルプモールドや、物品としてのアンプル瓶を保持する樹脂製のトレイとしての物品保持具を具備する物品保持具付きパルプモールド、物品としてのファンデーションやアイシャドウ、リップ等の小型成形トレイを保持する樹脂製のメイクパレットとしての物品保持具を具備する物品保持具付きパルプモールドにも、本発明は当然に適用可能である。
【0115】
さらに、上述した実施の形態およびその変形例においては、付属品としての冊子も収容可能に構成された物品保持具付きパルプモールドに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、物品保持具付きパルプモールドは、これが必ずしも付属品を収容可能に構成される必要はない。
【0116】
また、上述した本発明の実施の形態およびその変形例において示した各部の形状や構成、大きさ、数、材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【0117】
さらに、上述した本発明の実施の形態およびその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当然に相互に組み合わせることができる。
【0118】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0119】
1A,1A1,1B,1C 物品保持具付きパルプモールド、2A,2A1,2B,2C パルプモールド、3A,3B,3C 物品保持具、4A,4B ラベル、4(1) 第1主面、4(2) 第2主面、4a 基材、4b 接着剤層、21,21A1 上側容器部、21c 段差部分、21d 留め片、21d1 本体部、21d2 突出部、22,22A1,22B,22C 下側容器部、22a 収容部、22b 孔部、22d 切り欠き部、23 ヒンジ部、25 段差部、26 当接面、27 非当接面、31 基部、31a 底部、31b 張り出し部、31b1 第1面、31b2 第2面、32 周壁部、32a 爪部、33 物品収容部、34 保持部、34a 取り出し口、41 第1領域、42 第2領域、100 物品、110 第1型、120 第2型、200 付属品、301 第1マグネット、302 第2マグネット、400 接着部。