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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080113
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】マンモグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240606BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
A61B6/00 320M
A61B6/00 360Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193023
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 義行
(72)【発明者】
【氏名】山室 美佳
(72)【発明者】
【氏名】岩井 春樹
(72)【発明者】
【氏名】倉富 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】小林 由昌
(72)【発明者】
【氏名】池崎 理恵
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA11
4C093DA06
4C093ED21
4C093FF18
(57)【要約】
【課題】プレ撮影から得られた直接的情報に限らず、より適切な条件を決定するための情報を得ること。
【解決手段】本実施形態に係るマンモグラフィ装置は、取得部及び算出部を備える。取得部は、被検体の乳房に対する事前のX線撮影に係る情報として、撮影条件と当該乳房の状態を表す乳房状態情報と被検体に関する情報との少なくとも一つを含む第1の情報を取得する。算出部は、第1の情報に基づいて、乳房に関する指標を算出する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の乳房に対する事前のX線撮影に係る情報として、撮影条件と当該乳房の状態を表す乳房状態情報と前記被検体に関する情報との少なくとも一つを含む第1の情報を取得する取得部と、
前記第1の情報に基づいて、前記乳房に関する指標を算出する算出部と、
を備えたマンモグラフィ装置。
【請求項2】
前記乳房状態情報は、前記乳房に対する圧迫圧および前記乳房の厚みである乳房厚の少なくとも一方である、請求項1に記載のマンモグラフィ装置。
【請求項3】
前記取得部は、当該事前のX線撮影により収集された事前撮影画像を取得し、
前記算出部は、前記第1の情報と前記事前撮影画像とに基づいて、前記乳房に関する指標を算出する、請求項1に記載のマンモグラフィ装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記事前のX線撮影の後の本撮影を行うまでに、前記被検体に関する情報を取得する、請求項1に記載のマンモグラフィ装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記第1の情報に基づいて前記乳房に関する指標を算出する学習済みモデルに対して前記第1の情報を入力することにより、前記乳房に関する指標を算出する、請求項1に記載のマンモグラフィ装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記第1の情報と前記事前撮影画像とに基づいて前記乳房に関する指標を算出する学習済みモデルに対して前記第1の情報と前記事前撮影画像とを入力することにより、前記乳房に関する指標を算出する、請求項3に記載のマンモグラフィ装置。
【請求項7】
前記乳房に関する指標は、前記乳房を評価する指標であって、乳腺密度又は乳房構成を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のマンモグラフィ装置。
【請求項8】
前記算出した前記乳房に関する指標に基づいて、前記事前のX線撮影の後に実行する処理を決定する決定部、を更に備えた請求項1乃至6のいずれか一項に記載のマンモグラフィ装置。
【請求項9】
前記決定部は、前記乳房に関する指標と、前記第1の情報に含まれる乳房厚とに基づいて、前記処理を決定する、請求項8に記載のマンモグラフィ装置。
【請求項10】
前記処理は、前記事前のX線撮影の後の本撮影に関する撮影条件および画像処理条件の少なくとも一方である第1処理と、前記本撮影の取りやめに関する第2処理と、追加撮影に関する第3処理の少なくとも一つを含む、請求項8に記載のマンモグラフィ装置。
【請求項11】
前記事前のX線撮影と、前記事前のX線撮影の後に行う本撮影とは、前記被検体の同一の乳房に対するX線撮影である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のマンモグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、マンモグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マンモグラフィ装置では、被検体の乳房を圧迫して固定し、乳房に対する事前のX線撮影(以下、プレ撮影と呼ぶ)、本撮影という順番で2回のX線撮影を行う。また、マンモグラフィ装置では、微弱なX線を照射するプレ撮影から直接的に得られた情報(以下、直接的情報)のみを用いた自動露出制御(AEC)を用いて、本撮影の撮影条件や画像処理条件を決定している。なお、直接的情報は、圧迫時の乳房厚や、プレ撮影画像の画素値などである。また、マンモグラフィ装置は、決定した撮影条件に従って本撮影を行い、得られた本撮影画像に対して画像処理条件に基づく画像処理を施す。これにより、マンモグラフィ装置は、医師の読影しやすいX線画像を提供している。また、本撮影画像から乳腺密度が計測された結果、高濃度の乳房の場合には超音波検査の併用を推奨することや、将来の発がんリスクを通知することが行われている。
【0003】
以上のようなマンモグラフィ装置は、特に問題は無いが、本発明者の検討によれば、プレ撮影後の条件を決定する際に、プレ撮影から得られた直接的情報のみを用いることから、必ずしも適切な条件を決定できない点で改善の余地があると考えられる。例えば同じ乳房厚の乳房の場合でも、乳房構成などに応じて、適切な撮影条件や画像処理条件が異なってくる。例えば、5cmの乳房厚がある脂肪性の乳房の場合、X線の高吸収体である乳腺組織が少ないため、より低い線量での撮影条件と、脂肪領域をより暗くした画像処理条件とを決定できることが好ましい。一方、5cmの乳房厚がある高濃度の乳房の場合、より高い線量での撮影条件と、乳腺領域をより明るくした画像処理条件とを決定できることが好ましい。従って、マンモグラフィ装置では、プレ撮影から得られた直接的情報に限らず、より適切な条件を決定するための情報が得られることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-115368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、プレ撮影から得られた直接的情報に限らず、より適切な条件を決定するための情報を得ることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るマンモグラフィ装置は、取得部及び算出部を備える。取得部は、被検体の乳房に対する事前のX線撮影に係る情報として、撮影条件と当該乳房の状態を表す乳房状態情報と被検体に関する情報との少なくとも一つを含む第1の情報を取得する。算出部は、第1の情報に基づいて、乳房に関する指標を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係るマンモグラフィ装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、一実施形態に係るX線撮影台の外観の一例を示す斜視図である。
図3図3は、一実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、一実施形態の変形例に係るマンモグラフィ装置の構成を示すブロック図である。
図5図5は、一実施形態の変形例における動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態に係るマンモグラフィ装置について図面を用いて説明する。
【0009】
図1は、一実施形態に係るマンモグラフィ装置の構成を示すブロック図であり、図2は、マンモグラフィ装置におけるX線撮影台の外観の一例を示す斜視図である。このマンモグラフィ装置1は、X線撮影台3とコンピュータ装置5とを備える。
【0010】
X線撮影台3は、基台部10とCアーム11とを有する。Cアーム11は、基台部10に突設された軸部12に取り付けられる。これによりCアーム11は、軸部12の軸心を回転中心軸Xとして回動可能なように基台部10に支持される。Cアーム11を回転させることにより、頭尾方向(CranioCaudal projection:CC)、内外方向(MedioLateral projection:ML)、内外斜方向(MedioLateral Oblique projection:MLO)等の通常撮影及びトモシンセシス撮影を行うことができる。トモシンセシスとは、X線管18を移動させて複数の角度から撮影して得られた医用画像を3次元再構成することで複数の断層画像を生成する撮影技法である。乳房のトモシンセシス撮影により、乳腺の重なりを低減させた複数の断層画像を得ることが可能である。
【0011】
Cアーム11は、アーム本体14にX線発生装置15、X線検出器16、及び圧迫ユニット17を取り付けて構成される。X線発生装置15及びX線検出器16は、アーム本体14の両端部に配置される。圧迫ユニット17は、X線発生装置15とX線検出器16との中間に配置される。
【0012】
X線発生装置15は、X線管18と高電圧発生器19とを有する。X線管18は、高電圧発生器19から管電圧の印加、及びフィラメント電流の供給を受けて圧迫ユニットに向けて所定のX線継続時間の間、X線を発生する。印加する管電圧とX線継続時間とは、撮影制御回路24からの制御信号を受けて、撮影に適した値に調整される。
【0013】
X線管18は、陰極フィラメントと陽極とを備える。陽極は、Mo(モリブデン)を材質としたMo陽極、Rh(ロジウム)を材質としたRh陽極、MoとRhとを混合してなるMo・Rh陽極等である。これら陽極は、撮影制御回路24からの制御信号を受けて、随時切り替え可能である。
【0014】
フィラメント電流の供給を受けた陰極フィラメントは加熱され、熱電子を発生する。発生された熱電子は、陰極フィラメントと陽極との間に印加された管電圧によって、陽極に衝突される。このように熱電子が陽極へ衝突することによりX線が発生される。陽極に衝突する熱電子によって、管電流が流れる。管電流は、フィラメント電流により調整される。撮影時におけるX線線量の調節は、撮影制御回路24からの制御信号を受けて、管電流とX線継続時間との積である管電流時間積を調節することにより行なわれる。
【0015】
X線管18には、発生されたX線の線質を変更するための線質フィルタが取り付けられる。線質フィルタは、Moを材質としたMoフィルタや、Rhを材質としたRhフィルタ、Al(アルミニウム)を材質としたAlフィルタ、或いはこれら材質を組み合わせてなるフィルタ等である。これら線質フィルタは、撮影制御回路24からの制御信号を受けて、随時切り替え可能である。
【0016】
圧迫ユニット17は、X線検出器16の検出面16aに対向配置され、Cアーム11の回転中心軸Xとは直交するZ軸に沿って検出面16aに対して接近/離反可能なようにCアーム11によって支持される圧迫板17aを有する。圧迫ユニット17は、撮影制御回路24からの制御信号を受けて、圧迫板17aを動作させることにより被検体の乳房を検出面16aに圧迫し、乳房厚を所定の状態にする。
【0017】
X線検出器16は、検出面16aの面中心とX線管18の焦点とを結ぶ撮影軸(Z軸)に沿って、X線管18に接近/離反可能なようにCアーム11によって支持される。X線検出器16は、乳房を透過したX線を検出するフラット・パネル・ディテクタ等のデジタル検出器である。デジタル検出器は、入射X線を直接的に電気信号に変換する直接変換形又は入射X線を蛍光体で光に変換しその光を電気信号に変換する間接変換形の複数の半導体検出素子を有する。この複数の半導体検出素子は2次元格子状に配列される。また、デジタル検出器は、フォトダイオード等の半導体検出素子に加え、増幅回路及びA/D変換回路を含んでいる。これにより、X線入射に伴って複数の半導体検出素子で発生した信号電荷は増幅回路及びA/D変換回路を介して出力信号としてコンピュータ装置5に出力される。
【0018】
コンピュータ装置5は、X線撮影台3とともに、メモリ22、入力インタフェース23、撮影制御回路24、画像発生回路25、処理回路26、ディスプレイ27、システム制御回路28及びネットワークインタフェース29を備える。
【0019】
メモリ22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hardware Disk Drive)及び画像メモリなど電気的情報を記録するメモリ本体と、それらメモリ本体に付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路から構成されている。メモリ22は、プレ撮影画像、本撮影画像などのX線画像(医用画像)、プログラム及び学習済みモデルを記憶する。本撮影画像には、例えば、通常撮影の場合のマンモグラフィ画像や、トモシンセシス撮影の場合の複数の投影画像データや複数の断層画像がある。プログラムは、例えば、情報取得機能、指標算出機能、条件取得機能、表示制御機能及び決定機能をコンピュータに実現させるためのプログラムとしてもよい。ここでいう情報取得機能、指標算出機能、条件取得機能、表示制御機能及び決定機能は、後述する処理回路26の各機能に対応する。学習済みモデルは、例えば、乳房に対するプレ撮影に係る情報と、当該乳房に関する指標とのデータセットをAI(人工知能)で学習したモデルである。なお、AIに限らず、モデルの学習には、従来の回帰分析、サポートベクターマシン等の統計的手法を用いてもよく、機械学習、深層学習といった機械学習手法を用いてもよい。また、データセットは、乳房に対するプレ撮影に係る情報を入力データとし、当該乳房に関する指標を出力データとして、予め作成される。この学習済みモデルは、乳房に対するプレ撮影に係る情報に基づいて、当該乳房に関する指標を出力する。乳房に関する指標は、乳房に関する分類結果でもよく、乳房に関する連続値でもよい。
【0020】
入力インタフェース23は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定をコンピュータ装置5に入力するためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース23は、撮影制御回路24及び処理回路26等に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して撮影制御回路24又は処理回路26へと出力する。以下のコンピュータ装置5に関する説明中、「操作者の操作」は、「操作者による入力インタフェース23の操作」を意味する。なお、本明細書において入力インタフェース23はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を撮影制御回路24又は処理回路26へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース23の例に含まれる。
【0021】
入力インタフェース23は、操作者の操作に応じて、例えば、図示しないRIS(radiology information system)から送付された被検体情報を処理回路26に出力してメモリ22に保存する。被検体情報は、例えば、被検体ID、検査部位、検査目的、年齢、身長、体重、BMI (body mass index)等を含んでいる。また、入力インタフェース23は、例えば、撮影条件(管電圧、管電流時間積、陽極の材質、線質フィルタの材質、乳房厚、X線焦点-X線検出器間距離、拡大率等)や画像処理条件などを撮影制御回路24に設定するための操作パネルである。また、入力インタフェース23は、Cアーム11を動作させるためのインタフェースを備えており、その操作に応じてCアーム11はX軸回りに回動され任意の位置に設定される。設定されたCアーム11の位置に応じて、撮影方向が決定される。
【0022】
撮影制御回路24は、図示しないプロセッサとメモリを備え、入力インタフェース23を介して設定された撮影条件に基づいてX線撮影台3の各構成要素を制御することによって、X線撮影台3に設定に応じたX線撮影を行わせる。
【0023】
画像発生回路25は、X線検出器16の出力信号に基づいて、乳房のプレ撮影画像や本撮影画像のデータを発生する。例えば、画像発生回路25は、X線検出器16の出力信号に前処理を施して、X線画像を発生する。画像前処理とは、X線検出器16におけるチャンネル間の感度不均一の補正、及び脱落に関する補正等である。また、画像発生回路25は、発生したX線画像に画像処理を施す。例えば、画像発生回路25は、発生したX線画像に対して、散乱線補正処理を施す。また、画像発生回路25は、トモシンセシス撮影において、発生したX線管18の複数の位置に関する複数のX線画像に基づいて、ボリュームデータを再構成する。
【0024】
処理回路26は、操作者により入力インタフェース23を介してから入力された指示に基づいて、メモリ22に記憶された情報やプログラムを読み出し、これらに従ってコンピュータ装置5を制御する。例えば、処理回路26は、メモリ22から読み出したプログラムに従って、既存の機能に加え、プレ撮影後に、より適切な条件を決定するための情報を得るための各機能を実現させるプロセッサである。ここで、各機能としては、例えば、情報取得機能261、指標算出機能262、条件取得機能263及び表示制御機能264などがある。
【0025】
情報取得機能261は、被検体の乳房に対するプレ撮影(事前のX線撮影)に係る情報を取得する。具体的には、情報取得機能261は、プレ撮影時の乳房の状態を表す乳房状態情報と、撮影条件に関する情報と、被検体に関する情報との少なくとも一つを含む第1の情報を取得する。また、情報取得機能261は、プレ撮影により取得された事前撮影画像に基づく第2の情報を取得する。ここで、プレ撮影に係る情報は、例えば、乳房状態情報と、撮影条件と、被検体に関する情報と、プレ撮影によりマンモグラフィ装置1が収集したプレ撮影画像(事前撮影画像)である。乳房状態情報は、例えば、乳房圧迫圧と、乳房厚と、乳房圧迫に対する乳房の反力(抵抗)との少なくとも一つを含んでいる。プレ撮影に関する撮影条件は、プレ撮影に係るX線条件であり、例えば、管電圧kV、管電流時間積mAs、線質フィルタの少なくとも一つを含んでいる。一実施形態では、プレ撮影画像以外のプレ撮影に係る情報として、例えば、乳房圧迫圧、抵抗、乳房厚、管電圧kV、管電流時間積mAs、線質フィルタの少なくとも一つを含んでいる。ここで、乳房厚は、検出面16aと圧迫板17aの位置関係から求まる、幾何学的情報である。例えば、情報取得機能261は、撮影制御回路24からプレ撮影時に出力した制御信号に基づいて検出面16aと圧迫板17aの位置関係を取得し、取得した位置関係に基づいて乳房厚を取得する。また、例えば、情報取得機能261は、圧迫ユニット17に設けられたエンコーダやポテンショメータ等の値に基づいて乳房圧迫圧を取得する。さらに、例えば、情報取得機能261は、乳房の圧迫中に圧迫板17aが乳房から受け付ける反力(抵抗)を、圧迫中に取得した乳房圧迫圧と乳房厚との対応関係に基づいて取得する。情報取得機能261は、取得部の一例である。
【0026】
指標算出機能262は、プレ撮影に係る情報に基づいて、乳房に関する指標を算出する。乳房に関する指標としては、例えば、乳房を評価する指標であって、乳腺密度又は乳房構成を含む指標が適宜、使用可能となっている。なお、乳腺密度の一例には、乳腺濃度も含まれる。ここで、乳腺密度は、乳房に占める乳腺組織の割合を定量的に数値化したものである。乳腺密度は、一般に、マンモグラフィ画像の乳房内の画素値から得られる。詳しくは、乳腺密度は、一般に、マンモグラフィ画像における脂肪組織のみで構成される領域の画素値と乳腺組織を含む領域の画素値、ならびに脂肪組織と乳腺組織の線減弱係数を、乳腺密度を計算するための汎用式に代入することによって得られる(乳腺密度[%])。この数値をそのまま乳房に関する指標として用いることもできるし、例えば、カットオフ値を設けて、「極めて高濃度」、「不均一高濃度」、「乳腺散在」、「脂肪性」と同類の4段階に分類して用いてもよい。なお、乳腺密度は適宜異なる手法によって算出されてもよく、例えば、「乳房にX線を照射して取得した情報に基づくX線減弱係数から算出した乳線の含有量」を算出する方法が用いられても構わない。一方、乳房構成は、一般に、マンモグラフィ画像の乳房内の面積の割合から得られる。詳しくは、乳房構成は、一般に、マンモグラフィ画像において、「大胸筋と等濃度以上の部分の面積の総和」/「もともと乳腺組織が存在していたと想定される領域の面積」の割合から算出される、乳腺の含有量を示す指標(乳腺濃度[%])を「極めて高濃度」、「不均一高濃度」、「乳腺散在」、「脂肪性」の区分に分類して得られる。例えば、乳腺密度が80%以上未満を「極めて高濃度」、50%以上80%未満を「不均一高濃度」、10%以上50%未満を「乳腺散在」、10%未満を「脂肪性」と分類する。また例えば、「極めて高濃度」及び「不均一高濃度」の代わりに、乳腺密度が50%以上を「高濃度」と分類してもよい。なお、これらは一例であり適宜異なる手法を用いても構わない。
【0027】
一実施形態では、指標算出機能262は、プレ撮影に係る情報のうち、撮影条件、乳房状態情報、被検体に関する情報との少なくとも一つ(プレ撮影画像以外の情報)に基づいて、乳腺密度又は乳房構成を含む指標を算出する。プレ撮影画像以外の情報は、第1の情報の一例である。一実施形態では、例えば、指標算出機能262は、メモリ22から読み出した学習済みモデルに対して、プレ撮影に係る情報のうち、撮影条件と乳房状態情報と被検体に関する情報のうち少なくとも一つを入力することにより、乳房に関する指標を算出する。この学習済みモデルは、乳房に対するプレ撮影に係る情報のうち、撮影条件と乳房状態情報と被検体に関する情報のうち少なくとも一つに基づいて、当該乳房に関する指標を出力する。なお、学習済みモデルの入力データは、乳房状態情報と、撮影条件と、被検体に関する情報とのいずれかの組み合わせであってよいが、実施形態はこれに限定されず、さらにプレ撮影画像や、プレ撮影においてマンモグラフィ装置1が取得したその他の情報を含んでもよい。一実施形態では、例えば、指標算出機能262は、メモリ22から読み出した学習済みモデルに対して、撮影条件と乳房状態情報と被検体に関する情報のうち少なくとも一つと、プレ撮影画像とを入力することにより、乳房に関する指標を算出する。また、大胸筋と等濃度以上の部分の総和は、乳腺領域と呼んでもよい。指標算出機能262は、算出部の一例である。
【0028】
条件取得機能263は、算出された指標に基づいて、本撮影の撮影条件を取得する。例えば、乳房に関する指標と、本撮影の撮影条件とを関連付けた第1テーブルをメモリ22に予め保存しておく。条件取得機能263は、算出した指標に基づいて、メモリ22内の第1テーブルから撮影条件を取得すればよい。取得された撮影条件は、撮影制御回路24に送出される。また、条件取得機能263は、算出された指標に基づいて、本撮影により得られた本撮影画像の画像処理条件を取得する。また例えば、乳房に関する指標と、本撮影画像の画像処理条件とを関連付けた第2テーブルをメモリ22に予め保存しておく。条件取得機能263は、算出した指標に基づいて、メモリ22内の第2テーブルから画像処理条件を取得すればよい。取得された画像処理条件は、画像発生回路25に送出される。条件取得機能263は、条件取得部の一例である。
【0029】
表示制御機能264は、プレ撮影画像や本撮影画像といった医用画像などをディスプレイ27に表示させる。表示制御機能264は、表示制御部の一例である。
【0030】
ディスプレイ27は、プレ撮影画像や本撮影画像といった医用画像などを表示するディスプレイ本体と、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイ本体と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。ディスプレイ27は、処理回路26に制御され、医用画像などを表示する表示部の一例である。
【0031】
システム制御回路28は、図示しないプロセッサとメモリを備え、マンモグラフィ装置1の中枢として、各構成要素を制御する。
【0032】
ネットワークインタフェース29は、コンピュータ装置5をネットワークNwに接続して外部装置(図示せず)と通信するための回路である。ネットワークインタフェース29としては、例えば、ネットワークインタフェースカード(NIC)が使用可能となっている。
【0033】
なお、コンピュータ装置5とX線撮影台3とは一体であるとしても良い。
【0034】
次に、以上のように構成されたマンモグラフィ装置の動作について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0035】
始めに、マンモグラフィ装置1では、例えばRISから送付された被検体情報をメモリ22に保存しているとする。被検体情報は、例えば、被検体ID、検査部位、検査目的、年齢、身長、体重、BMI (body mass index)等を含んでいる。また、被検体情報に基づき、被検体の乳房のマンモグラフィ検査が行われるとする。
【0036】
いま、ステップS10において、マンモグラフィ装置1では、操作者の操作に応じて、被検体の乳房が検出面16aに載置され、圧迫板17aにより圧迫されて検出面16aに固定される。このとき、マンモグラフィ装置1は、圧迫状態での乳房厚や乳房圧迫圧、抵抗などを取得する。
【0037】
ステップS10の後、ステップS20において、マンモグラフィ装置1は、操作者の操作に応じて、当該固定された乳房に対してプレ撮影を行う。すなわち、マンモグラフィ装置1は、操作者の操作に応じて、X線管18からX線を照射させる。X線管18から照射されたX線は、圧迫板17aと乳房とを透過してX線検出器16で検出される。このとき、マンモグラフィ装置1は、プレ撮影に係る撮影条件を取得しメモリ22に保存する。例えば、マンモグラフィ装置1は、管電圧kVや管電流時間積mAs、線質フィルタ等の撮影条件を取得しメモリ22に保存する。
【0038】
ステップS20の後、ステップS30において、マンモグラフィ装置1の処理回路26は、プレ撮影に係る情報を取得する。例えば、マンモグラフィ装置1の画像発生回路25は、X線検出器16で検出されたX線量に応じた出力信号をX線検出器16から受け取り、当該出力信号に画像処理を行うことで、被検体の乳房を表すプレ撮影画像を生成し、メモリ22に保存する。これにより、処理回路26は、メモリ22内のプレ撮影画像を取得する。また、処理回路26は、例えば、プレ撮影の撮影条件である管電圧kV、管電流時間積mAs、線質フィルタをメモリ22から取得する。また、処理回路26は、ステップS10の圧迫状態での乳房厚を取得する。
【0039】
ステップS30の後、ステップS40において、処理回路26は、プレ撮影に係る情報に基づき、乳房に関する指標を算出する。この例では、処理回路26は、メモリ22内の学習モデルに従い、乳房厚、管電圧kV、管電流時間積mAsに基づいて、乳房構成を含む指標を算出する。算出した指標は、プレ撮影した乳房について、脂肪性、乳腺散在、不均一高濃度、又は極めて高濃度、であると評価している。
【0040】
ステップS40の後、ステップS50において、処理回路26は、算出した指標に基づいて、本撮影の撮影条件を取得する。例えば、処理回路26は、予め保存した第1テーブルから、指標に関連付けた撮影条件を取得する。例えば、本撮影の撮影条件として、管電圧kV、管電流時間積mAsなどが取得される。なお、撮影条件は、高濃度乳房を示す指標の場合に、本撮影前に圧迫圧を少し上げることを含んでもよい。また、トモシンセシス撮影の場合、振り角、撮影枚数、圧迫圧などの撮影条件が更に取得される。補足すると、例えば脂肪性の乳房の場合、病変を見えにくくする乳腺が少ないため、より少ない線量で撮影できる。従って、脂肪性を示す指標の場合、より少ないX線線量に対応する本撮影の撮影条件が取得される。また、脂肪性の乳房にトモシンセシス撮影を行う場合でも、脂肪と病変の重なりが少ないため、深い深さ方向の分解能を要しない。従って、脂肪性を示す指標の場合、浅い振り角での画像収集に対応する本撮影の撮影条件が取得される。
【0041】
ステップS50の後、ステップS60において、処理回路26は、算出した指標に基づいて、本撮影画像の画像処理条件を取得する。例えば、処理回路26は、予め保存した第2テーブルから、指標に関連付けた画像処理条件を取得する。例えば、本撮影画像の画像処理条件としては、デノイズの強度、DCF(デジタル補償フィルタ)の強度、周波数強調処理、階調処理、空間フィルタ、散乱線補正などがある。また、トモシンセシス撮影の場合、繰り返し(iteration)数、スライス厚、スライス数などの再構成パラメータを含む画像処理条件が更に取得される。補足すると、例えば、脂肪性を示す指標であれば、脂肪を暗く表示したいため、従来よりも暗いウィンドウレベルに対応する本撮影画像の画像処理条件が取得される。
【0042】
ステップS60の後、ステップS70において、処理回路26は、ステップS50で取得した撮影条件に基づいて、乳房の本撮影を行う。なお、ステップS20のプレ撮影と、プレ撮影の後に行う本撮影とは、被検体の同一の乳房に対するX線撮影である。これにより、マンモグラフィ装置1では、ステップS10で固定された乳房の本撮影画像が得られる。
【0043】
ステップS70の後、ステップS80において、処理回路26は、ステップS60で取得した画像処理条件に基づいて、本撮影画像に画像処理を施す。
【0044】
ステップS80の後、ステップS90において、処理回路26は、画像処理後の本撮影画像をディスプレイ27に表示させる。画像処理後の本撮影画像は、プレ撮影後に算出された指標に基づく本撮影及び画像処理により得られており、読影しやすい画像となっている。
【0045】
上述したように一実施形態によれば、マンモグラフィ装置1は、被検体の乳房に対するプレ撮影に係る情報として、撮影条件と当該乳房の状態を表す乳房状態情報と被検体に関する情報との少なくとも一つを含む第1の情報を取得し、取得された当該第1の情報に基づいて、乳房に関する指標を算出する。ここで、なお、乳房に関する指標は、プレ撮影から間接的に得られた間接的情報であり、より適切な撮影条件や画像処理条件を決定するための情報として使用できる。補足すると、乳房に関する指標に基づき、例えば、脂肪性の乳房の場合には、より低い線量での撮影条件と、脂肪領域をより暗くした画像処理条件とを決定できる。同様に、乳房に関する指標に基づき、例えば、高濃度の乳房の場合には、より高い線量での撮影条件と、乳腺領域をより明るくした画像処理条件とを決定できる。従って、一実施形態によれば、プレ撮影から得られた直接的情報に限らず、より適切な条件を決定するための情報を得ることができる。ここで、第1の情報は、当該プレ撮影により取得されたプレ撮影画像以外の情報である。従って、一実施形態によれば、前述した効果に加え、プレ撮影画像を用いずに、乳房に関する指標を得ることができる。
【0046】
また、一実施形態によれば、マンモグラフィ装置1は、第1の情報に基づいて乳房に関する指標を算出する学習済みモデルに対して第1の情報を入力することにより、乳房に関する指標を算出する。これにより、一実施形態によれば、プレ撮影から得られた直接的情報に限らず、第1の情報に基づいて乳房に関する指標をより精度よく算出できる。従って、より適切な条件を決定するための情報を得ることができる。さらに、一実施形態によれば、マンモグラフィ装置1は、第1の情報と事前撮影画像とに基づいて乳房に関する指標を算出する学習済みモデルに対して第1の情報と事前撮影画像を入力することにより、乳房に関する指標を算出する。従って、一実施形態によれば、第1の情報を教師データとして作成された学習済みモデルよりも乳房に関する指標を精度よく算出できる。
【0047】
また、一実施形態によれば、乳房に関する指標は、乳房を評価する指標であって、乳腺密度又は乳房構成を含んでもよい。この場合、前述した効果に加え、本撮影前に、乳腺密度又は乳房構成を含んで乳房を評価する指標を得ることができるので、少なくとも乳腺密度又は乳房構成を考慮した条件として、本撮影の条件を決定することができる。補足すると、従来は、本撮影後に乳房構成が判明するので、本撮影条件を最適化できない不都合がある。また、従来は、本撮影後に乳腺密度又は乳房構成を算出してから、その後の処理に活用するので、処理時間がかかる不都合がある。これに対し、一実施形態によれば、本撮影の前に乳腺密度又は乳房構成を算出するので、これらの不都合を生じることがない。また、一実施形態によれば、例えば、脂肪性又は高濃度といった乳腺密度の違いや乳房構成による画質のばらつきを抑制することができる。さらに、乳腺密度を含む指標の場合、前述した効果に加え、より細かい値の指標となるので、乳房に関する指標の精度を向上させることができる。また、乳腺の被ばく線量である平均乳腺線量(MGD)の算出に指標(乳腺密度)を用いることで、乳腺の被ばく線量をより正確に算出できる。なお、従来の乳腺密度の計測結果は、本撮影画像から得られ、超音波検査の推奨や発がんリスクの通知などに利用されたが、本撮影の条件をより適切にする処理には用いられていない。
【0048】
また、一実施形態によれば、本撮影の条件を決定する際に、乳房に関する指標に含まれる乳腺密度又は乳房構成と、第1の情報に含まれる乳房厚とを用いてもよい。この場合、乳腺密度又は乳房構成と乳房厚とを用いて本撮影の条件を決定するので、例えば、乳房厚を用いずに乳腺密度又は乳房構成から本撮影の条件を決定するときに比べ、より適切に条件を決定することができる。また例えば、一実施形態によれば、本撮影前に画像処理条件を決定するので、本撮影画像から乳腺密度又は乳房構成を求めて画像処理条件の変更処理を行う場合に比べ、短時間でマンモグラフィ検査を行うことができる。
【0049】
また、一実施形態によれば、プレ撮影と、プレ撮影の後に行う本撮影とは、被検体の同一の乳房に対するX線撮影である。従って、前述した効果に加え、同一の圧迫状態の乳房に対してプレ撮影及び本撮影を行うので、例えば、左右の乳房に違いがある場合でも、乳房毎に指標を得ることができる。
【0050】
[変形例]
一実施形態では、プレ撮影に係る情報として取得される情報は、撮影条件と乳房状態情報と被検体に関する情報からなるプレ撮影画像以外の情報であったが、これに限定されない。例えば、プレ撮影画像以外の情報は、乳房のプレ撮影に係る機械的情報及び幾何学的情報としてもよい。機械的情報としては、例えば、乳房圧迫圧、抵抗の少なくとも1つを含んでいる。幾何学的情報としては、例えば、乳房厚が挙げられるが、これに限定されない。このように変形しても、一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
一実施形態では、プレ撮影に係る情報は、プレ撮影画像以外の情報であったが、これに限定されない。例えば、プレ撮影に係る情報は、当該プレ撮影により取得されたプレ撮影画像に基づく情報であってもよい。プレ撮影画像に基づく情報としては、例えば、プレ撮影画像、プレ撮影画像内の乳房領域における画素値の統計値(例、平均値、中央値など)が適宜、使用可能となっている。この場合、前述した効果に加え、乳房に関する指標がより適切な指標となることを期待することができる。なお、画素値の統計値は、平均値や中央値に限らず、画素値の範囲(最大値、最小値)などを用いてもよい。
【0052】
同様に例えば、プレ撮影に係る情報は、当該プレ撮影により取得されたプレ撮影画像以外の情報と、当該プレ撮影画像に基づく情報とを含んでもよい。この場合、プレ撮影画像以外の情報と、当該プレ撮影画像に基づく情報とに基づいて、乳房に関する指標を算出するので、前述した効果に加え、乳房に関する指標が、より一層、適切な指標となることを期待することができる。
【0053】
また、一実施形態では、プレ撮影画像以外の情報は、例えば乳房厚、管電圧kV、管電流時間積mAsといったX線撮影に関する情報であったが、これに限定されない。例えば、プレ撮影画像以外の情報は、プレ撮影の後の本撮影を行うまでに、マンモグラフィ装置1が取得した被検体に関する情報を更に含んでもよい。被検体に関する情報としては、例えば、処理回路26がRISから取得した被検体情報の一部(例、年齢、身長、体重、BMI等)と、プレ撮影により取得した被検体の乳房厚や乳房圧迫圧といった、被検体の身体に関する情報が適宜、使用可能となっている。この場合、前述した効果に加え、被検体に関する情報を更に考慮して指標が算出されるので、乳房に関する指標がより適切な指標となることを期待することができる。
【0054】
また、一実施形態では、乳房に関する指標に基づいて、本撮影の撮影条件及び画像処理条件をそれぞれ求めたが、これに限定されない。例えば、本撮影の撮影条件及び画像処理条件のうち、少なくとも一方を求める処理を実行すればよい。但し、最適な条件を決定する観点から、本撮影の撮影条件及び画像処理条件をそれぞれ求めることが好ましい。
【0055】
また、一実施形態では、通常のマンモグラフィ撮影やトモシンセシス撮影について述べたが、これに限定されない。例えば、バイオプシ撮影、拡大撮影、スポット撮影などについても、適宜、実施可能となっている。
【0056】
例えば、バイオプシ撮影の場合、乳房全体の画像が撮影されない状況でも、プレ撮影の結果から乳腺密度等の指標が求まるので、乳房全体の画像を必要とした従来のバイオプシ撮影に比べ、利点が大きい。また、バイオプシ撮影では、指標に基づいて本撮影の撮影条件を決定する例として、乳腺密度に基づいてX線線量を上げる処理が特に有効である。この処理によれば、バイオプシ撮影における石灰化の視認性を上げて、抽出したい生体組織まで確実に穿刺をガイドすることが可能となる。
【0057】
また例えば、拡大撮影やスポット撮影(照射範囲を限定した撮影)の場合も同様に、乳房全体の画像が撮影されない状況でも、プレ撮影の結果から乳腺密度等の指標が求まるので、乳房全体の画像の本撮影を不要とした利点が大きい。補足すると、拡大撮影やスポット撮影の場合、基本的には2D撮影から拡大撮影を行うので、2D撮影で乳房構成が事前にわかる。なお、拡大撮影のみ、という状況はないが、2D撮影の後、後日に拡大撮影を行う場合がある。この場合には、後日の拡大撮影の直前に、過去の2D画像を探す必要がないので、利点が大きい。
【0058】
また、一実施形態では、乳房に関する指標に基づいてワークフローを変更する場合を説明しなかったが、これに限定されない。例えば、処理回路26は、乳房に関する指標に基づいて、プレ撮影後のワークフローを変更してもよい。具体的には例えば、処理回路26は、図4に示すように、前述した各機能と同様に、メモリ22内のプログラムに従って決定機能265を実現する。
【0059】
決定機能265は、指標算出機能により算出された指標に基づいて、プレ撮影の後に実行する処理を決定する。例えば、決定機能265は、乳房に関する指標と、プレ撮影に係る情報に含まれる乳房厚とに基づいて、処理を決定してもよい。なお、乳房に関する指標は、乳腺密度又は乳房構成を含んでもよい。また、決定される処理は、例えば、事前のX線撮影の後の本撮影に関する撮影条件および画像処理条件の少なくとも一方である第1処理と、本撮影の取りやめに関する第2処理と、追加撮影に関する第3処理との少なくとも一つを含んでいる。具体的には例えば、薄い乳房、脂肪性乳房の場合には、トモシンセシス撮影を取りやめる処理を決定してもよく、トモシンセシス撮影を取りやめずに撮影条件や画像処理条件を調整する処理を決定してもよい。その逆に、厚い乳房の場合には、本撮影全体を取りやめて超音波診断に回す処理を決定してもよく、本撮影を取りやめずに撮影条件や画像処理条件を調整する処理を決定してもよい。同様に、インプラントを含む乳房や、授乳中の乳房など、高吸収体を含む乳房の場合には、管電流時間積mAsが高くなり、乳腺密度が高く計測されるので、厚い乳房の場合と同様に、本撮影の取りやめや、条件の再調整といった処理を決定してもよい。決定機能265は、例えば、条件取得機能263が乳房の指標と、決定される処理とを関連付けたテーブルを参照することにより取得した本撮影の撮影条件に基づいて、係る決定を実行可能となっている。なお、当該テーブルは、乳房の指標と、決定される処理とに加え、医師の識別情報を更に関連付けてもよい。補足すると、乳房の指標と決定される処理との関係は、マンモグラフィ技術の進歩や医師の方針によって、前述したように、大きく異なる場合がある。この場合でも、決定機能265は、例えば当該テーブルを参照することにより、乳房の指標に基づいて処理を決定可能としている。なお、決定される処理は、第1処理、第2処理及び第3処理のうち、いずれか一つとしてもよい。あるいは、決定される処理は、本撮影に関する第1処理と、追加撮影に関する第3処理のように、矛盾しない2つの処理でもよい。決定機能265は、決定部の一例である。
【0060】
ここで、第1処理は、本撮影に関する処理であり、本撮影に関する撮影条件および画像処理条件の少なくとも一方を決定する処理を含んでいる。また、第1処理は、通常のマンモグラフィ撮影(2D撮影)及びトモシンセシス撮影のうち、トモシンセシス撮影を取りやめる処理を含んでもよい。例えば、第1処理は、トモシンセシス撮影及び2D撮影の順にX線撮影を行う場合には、トモシンセシス撮影を取りやめて、2D撮影を行うことを決定してもよい。また例えば、第1処理は、2D撮影及びトモシンセシス撮影の順にX線撮影を行う場合には、2D撮影を行った段階でX線撮影を終了することを決定してもよい。
【0061】
第2処理は、マンモグラフィ撮影(2D撮影)及びトモシンセシス撮影といった乳房のX線撮影(本撮影)を取りやめることを決定する処理である。第2処理は、超音波診断のように、マンモグラフィ装置と異なる医用画像診断装置の使用を推奨する処理を含んでもよい。
【0062】
第3処理としては、追加撮影のオーダを(仮)登録する処理や、追加撮影を提案する処理が適宜、使用可能となっている。
【0063】
他の構成は、一実施形態と同様である。
【0064】
以上のような変形例の構成によれば、前述同様に、ステップS10~S40の実行により指標が算出された後、図5に示すように、ステップS41が実行される。
【0065】
ステップS41において、処理回路26は、算出された指標に基づいて、プレ撮影の後に実行する処理を決定する。具体的には例えば、処理回路26は、指標に含まれる乳房構成と、プレ撮影に係る情報に含まれる乳房厚とに基づいて、処理を決定する。なお、このとき、処理回路26は、乳房構成に代えて乳腺密度を用いてもよい。
【0066】
ステップS41の後、ステップS42において、処理回路26は、決定された処理が本撮影の取りやめに関する第2処理であるか否かを判定する。判定の結果、第2処理の場合(ステップS42:Yes)にはステップS43に移行し、他の場合(ステップS42:No)にはステップS44に移行する。
【0067】
ステップS43において、処理回路26は、本撮影の取りやめに関する第2処理を実行し、処理を終了する。
【0068】
ステップS44において、処理回路26は、ステップS41で決定された処理が追加撮影に関する第3処理であるか否かを判定する。判定の結果、第3処理の場合(ステップS44:Yes)にはステップS44に移行し、第1処理の場合(ステップS44:No)にはステップS50に移行する。
【0069】
ステップS45において、処理回路26は、追加撮影に関する第3処理を実行する。例えば、処理回路26は、追加撮影のオーダを(仮)登録する処理、又は追加撮影を提案する処理を実行する。なお、検診でなく診断フェーズの場合、高濃度の乳房については、追加撮影を行うことが安全である。従って、診断フェーズが含まれる2次検診の場合に、高濃度の乳房については、処理回路26は、追加撮影のオーダを登録する。あるいは、1次検診の場合には、病変が疑われるものがあれば、追加撮影が行われる。いずれの場合にしても、追加撮影のオーダを自動で(仮)登録するか又は提案し、その旨をポップアップ画面等でディスプレイ27に表示することで、撮影し忘れを防ぐことができる。なお、追加撮影が実行されない場合には、検査終了に伴い、オーダを削除するとよい。ステップS45の後、ステップS50に移行する。
【0070】
以下、前述同様に、ステップS50以降の処理が実行される。
【0071】
図4及び図5に示した変形例によれば、処理回路26は、算出した指標に基づいて、プレ撮影の後に実行する処理を決定する。従って、一実施形態の効果に加え、指標に基づいてワークフローを変更できるので、本撮影に限らず、プレ撮影後の処理の流れを改善することができる。さらに、この変形例によれば、処理回路26は、乳房に関する指標に含まれる乳腺密度又は乳房構成と、プレ撮影に係る情報(第1の情報)に含まれる乳房厚とに基づいて、処理を決定する。従って、プレ撮影の後に実行する処理を、乳房厚や乳腺密度等に応じて適切に決定することができる。
【0072】
また、この変形例によれば、決定される処理は、事前のX線撮影の後の本撮影に関する撮影条件および画像処理条件の少なくとも一方である第1処理、本撮影の取りやめに関する第2処理、追加撮影に関する第3処理、の少なくとも一つを含んでいる。従って、プレ撮影後に、本撮影の撮影条件や画像処理条件、本撮影の取りやめ、又は、追加撮影の処理、のいずれの処理を行うかを、指標に基づいて決定することができる。
【0073】
なお、この変形例は、乳房に関する指標が高濃度を示す場合に、追加撮影に関する第3処理を行ったが、これに限定されない。例えば、処理回路26は、乳房に関する指標と、当該乳房に対するCADの結果とに基づいて、追加撮影に関する第3処理を実行してもよい。例えば、乳房に関する指標が高濃度を示し、且つCADの結果が陽性を示す場合に、追加撮影に関する第3処理を実行してもよい。この場合、前述した変形例の効果に加え、より適切に第3処理を実行することができる。
【0074】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、プレ撮影から得られた直接的情報に限らず、より適切な条件を決定するための情報を得ることができる。
【0075】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1及び図4における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0076】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 マンモグラフィ装置
3 X線撮影台
5 コンピュータ装置
10 基台部
11 Cアーム
12 軸部
14 アーム本体
15 X線発生装置
16 X線検出器
16a 検出面
17 圧迫ユニット
17a 圧迫板
18 X線管
19 高電圧発生器
22 メモリ
23 入力インタフェース
24 撮影制御回路
25 画像発生回路
26 処理回路
261 情報取得機能
262 指標算出機能
263 条件取得機能
264 表示制御機能
265 決定機能
27 ディスプレイ
28 システム制御回路
29 ネットワークインタフェース
Nw ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5