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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080123
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】スピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240606BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R9/02 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193041
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】江上 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】戸板 大樹
【テーマコード(参考)】
5D012
5D220
【Fターム(参考)】
5D012BB01
5D012BB05
5D012FA03
5D220AA50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】主磁気ギャップと副磁気ギャップを有する磁気回路部を用いたスピーカにおいて、副磁気ギャップを横断する磁束によりボイスコイルに制動力が作用するのを抑制することができるスピーカを提供する。
【解決手段】磁石11、12、プレート13、14、15及びヨーク16、17を有するスピーカの磁気回路部10は、主磁気ギャップG1と副磁気ギャップG2、G3とを有する。ボイスコイル7に流れるボイス電流と主磁気ギャップG1を横断する磁束とによる電磁力で振動部が振動する際に、ボイスコイル7が副磁気ギャップG2またはG3に接近するか又は入り込んだときに、ボイスコイル7に流れるボイス電流を反転させるか又は一時的に遮断するかあるいは減衰させる。これにより、副磁気ギャップG2又はG3を横断する磁束で、ボイスコイル7に制動力が作用するのを抑制することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板およびボイスコイルを有する振動部と、前記ボイスコイルを横断する磁束を形成する磁気回路部と、前記振動部の移動を検知する検知部と、を有するスピーカにおいて、
前記磁気回路部に、ボイスコイルの振動方向に間隔を空けて配置された2つの磁石と、2つの前記磁石の中間に形成された主磁気ギャップと、少なくとも一方の前記磁石を挟んで前記主磁気ギャップと間隔を空けて形成された副磁気ギャップとが設けられ、
前記主磁気ギャップと前記副磁気ギャップとで、その内部を移動可能なボイスコイルを横断する磁束の向きが相反しており、
前記検知部によって前記ボイスコイルが前記主磁気ギャップから前記副磁気ギャップに向けて所定距離移動したことが検知されたときに、前記ボイスコイルに与えられる電流の向きを反転させる振動制御部が設けられていることを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記振動制御部には、前記電流の向きを反転させる反転部と、電流量を補正する補正部が含まれている請求項1記載のスピーカ。
【請求項3】
前記ボイスコイルの振動方向での中心部が、前記主磁気ギャップと前記副ギャップとの中間位置に至ったときに、前記電流の向きを反転させる請求項1または2記載のスピーカ。
【請求項4】
振動板およびボイスコイルを有する振動部と、前記ボイスコイルを横断する磁束を形成する磁気回路部と、前記振動部の移動を検知する検知部と、を有するスピーカにおいて、
前記磁気回路部に、ボイスコイルの振動方向に間隔を空けて配置された2つの磁石と、2つの前記磁石の中間に形成された主磁気ギャップと、少なくとも一方の前記磁石を挟んで前記主磁気ギャップと間隔を空けて形成された副磁気ギャップとが設けられ、
前記主磁気ギャップと前記副磁気ギャップとで、その内部を移動可能なボイスコイルを横断する磁束の向きが相反しており、
前記検知部によって前記ボイスコイルが前記主磁気ギャップから前記副磁気ギャップに向けて所定距離移動したことが検知されたときに、前記ボイスコイルに与えられる電流を一時的に遮断しまたは減衰させる振動制御部が設けられていることを特徴とするスピーカ。
【請求項5】
前記振動制御部には、電流量を補正する補正部が含まれている請求項4記載のスピーカ。
【請求項6】
前記ボイスコイルの振動方向での中心部が、前記主磁気ギャップと前記副ギャップとの中間位置に至ったときに、前記電流を一時的に遮断しまたは減衰させる請求項4または5記載のスピーカ。
【請求項7】
前記主磁気ギャップを挟んで振動方向の一方向に間隔を空けて形成された第1副磁気ギャップと、他方向に間隔を空けて形成された第2副磁気ギャップとを有し、前記第1副磁気ギャップと前記第2副磁気ギャップは、共に磁束の向きが前記主磁気ギャップと相反しており、
前記ボイスコイルが、前記主磁気ギャップから前記第1副磁気ギャップに向けて所定距離移動したときのみならず、前記主磁気ギャップから前記第2副磁気ギャップに向けて所定距離移動したときにも、前記振動制御部による制御が行われる請求項1または4記載のスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主磁気ギャップとさらに少なくとも1つの副磁気ギャップとを有し、主磁気ギャップと副磁気ギャップとで磁束が相反する方向へ横断するスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1と特許文献2に、2つのマグネットを有する磁気回路部が設けられたスピーカが示されている。特許文献1の図2に記載されたスピーカは、ボイスコイルの振動方向である上下方向に沿って2つのリング状マグネットが設けられている。2つのリング状マグネットのS極どうしの間にプレートが挟まれ、また上側のリング状マグネットの上面のN極にプレートが設けられ、下側のリング状マグネットの下面のN極にもプレートが設けられている。2つのリング状マグネットの中間に位置するプレートとセンターポールとの間に中央の磁気ギャップが形成され、上側のリング状マグネットの上面に位置するプレートとセンターポールとの間に上側の磁気ギャップが形成され、下側のリング状マグネットの下面に位置するプレートとセンターポールの間に下側の磁気ギャップが形成されている。振動板に振動力を与えるボイスコイルは、中央の磁気ギャップの内部を基準として上下に駆動される。
【0003】
特許文献2に記載されたスピーカは、リング状のメインマグネットの上にリング状のセンタープレートが固定され、センタープレートの上に同じくリング状のサブマグネットが重ねられている。メインマグネットとサブマグネットは上下逆向きに着磁され、メインマグネットとサブマグネットは、センタープレートに同じ極性の磁極が対面している。センタープレートとセンターポールとの間に磁気ギャップが形成され、サブマグネットの上に設けられたトッププレートとセンターポールとの間にも磁気ギャップが形成されている。ボイスコイルは、センタープレートとセンターポールとの間の磁気ギャップの内部を基準として上下に駆動される。また、図3図4に示されたスピーカでは、ボイスコイルに、センタープレートとセンターポールとの間の磁気ギャップ内に位置する第1の巻線部分と、トッププレートおよびセンターポールよりもさらに上方に位置する第2の巻線部分とが設けられている。第1の巻線部分と第2の巻線部分とで電流の向きが同じである。このスピーカは、ボイスコイルが下向きに大きく動いたときに、第2の巻線部分がトッププレートとセンターポールとの間の磁気ギャップ内に至ることでボイスコイルに上向きに押し上げようとする駆動力が働き、これによりボイスコイルの底当たりを防止する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-197189号公報
【特許文献2】特開平5-227593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載用音響装置などにおいては、低音を再生するためにサブウーハーが使用される。サブウーハーなどにおいて低音域の音を効果的に再生するには、大きな面積の振動板を駆動して効果的な音圧を発生させることが必要であり、そのためには、ボイスコイルに大きな駆動力を与えることが必要である。特許文献1および特許文献2に記載されたスピーカのように、2つのマグネットを使用し、中央の磁気ギャップに磁束を集中させる構造は、大きな面積の振動板を駆動し低音域を効果的に再生する手段として有効である。
【0006】
ただし、サブウーハーなどのスピーカで低音域の音を再生するときは、大きな面積の振動板を大きな振幅で動作させるために駆動力のリニアリティを確保することが必要となり、リニアリティが確保できていないと、低音域の再生に歪みなどが発生しやすくなる課題がある。特許文献1に記載されたスピーカでは、中央の磁気ギャップの磁束の横断方向に対し、上側の磁気ギャップおよび下側の磁気ギャップにおける磁束の横断方向が逆向きとなっている。そのため、振動板の振幅が大きくなって、ボイスコイルが上側の磁気ギャップまたは下側の磁気ギャップに接近しまたは入り込むと、これら磁気ギャップ内の逆向きの磁束によりボイスコイルに制動力が作用し、さらには逆向きの駆動力が作用することになる。これにより、振動板に作用する駆動力のリニアリティが損なわれ、低音域の再生音に歪みなどが発生しやすくなる。
【0007】
特許文献2に記載されたスピーカにおいても、ボイスコイルの第1の巻線部分がトッププレートとセンターポールとの間に形成された上側の磁気ギャップに接近しまたは入り込むと、ボイスコイルに制動力が作用するようになる。さらに第2の巻線部分が設けられた構造では、ボイスコイルが下側に駆動されると、第2の巻線部分に作用する電磁力により大きな制動力が作用し、低音域の再生音質にさらに悪影響を与えやすくなる。特許文献1と特許文献2に記載されたスピーカは、振動板の振幅が小さい中音域や高音域での音の再生には適しているかもしれないが、大きな面積の振動板を大きな振幅で駆動して低音域の音を再現するサブウーハーなどのスピーカには適したものではない。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、複数の磁気ギャップを有する磁気回路部を使用して磁気駆動力を効果的に発生できるようにし、また駆動力のリニアリティを確保して、歪みの少ない再生音を発生することができるスピーカを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、振動板およびボイスコイルを有する振動部と、前記ボイスコイルを横断する磁束を形成する磁気回路部と、前記振動部の移動を検知する検知部と、を有するスピーカにおいて、
前記磁気回路部に、ボイスコイルの振動方向に間隔を空けて配置された2つの磁石と、2つの前記磁石の中間に形成された主磁気ギャップと、少なくとも一方の前記磁石を挟んで前記主磁気ギャップと間隔を空けて形成された副磁気ギャップとが設けられ、
前記主磁気ギャップと前記副磁気ギャップとで、その内部を移動可能なボイスコイルを横断する磁束の向きが相反しており、
前記検知部によって前記ボイスコイルが前記主磁気ギャップから前記副磁気ギャップに向けて所定距離移動したことが検知されたときに、前記ボイスコイルに与えられる電流の向きを反転させる振動制御部が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明のスピーカは、前記振動制御部に、前記電流の向きを反転させる反転部と、電流量を補正する補正部が含まれていることが好ましい。
【0011】
本発明のスピーカは、例えば前記ボイスコイルの振動方向での中心部が、前記主磁気ギャップと前記副ギャップとの中間位置に至ったときに、前記電流の向きを反転させるものである。
【0012】
さらに本発明は、振動板およびボイスコイルを有する振動部と、前記ボイスコイルを横断する磁束を形成する磁気回路部と、前記振動部の移動を検知する検知部と、を有するスピーカにおいて、
前記磁気回路部に、ボイスコイルの振動方向に間隔を空けて配置された2つの磁石と、2つの前記磁石の中間に形成された主磁気ギャップと、少なくとも一方の前記磁石を挟んで前記主磁気ギャップと間隔を空けて形成された副磁気ギャップとが設けられ、
前記主磁気ギャップと前記副磁気ギャップとで、その内部を移動可能なボイスコイルを横断する磁束の向きが相反しており、
前記検知部によって前記ボイスコイルが前記主磁気ギャップから前記副磁気ギャップに向けて所定距離移動したことが検知されたときに、前記ボイスコイルに与えられる電流を一時的に遮断しまたは減衰させる振動制御部が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明のスピーカは、前記振動制御部に、電流量を補正する補正部が含まれていることが好ましい。
【0014】
本発明のスピーカは、例えば、前記ボイスコイルの振動方向での中心部が、前記主磁気ギャップと前記副ギャップとの中間位置に至ったときに、前記電流を一時的に遮断しまたは減衰させる遮断するものである。
【0015】
また、本発明のスピーカは、前記主磁気ギャップを挟んで振動方向の一方向に間隔を空けて形成された第1副磁気ギャップと、他方向に間隔を空けて形成された第2副磁気ギャップとを有し、前記第1副磁気ギャップと前記第2副磁気ギャップは、共に磁束の向きが前記主磁気ギャップと相反しており、
前記ボイスコイルが、前記主磁気ギャップから前記第1副磁気ギャップに向けて所定距離移動したときのみならず、前記主磁気ギャップから前記第2副磁気ギャップに向けて所定距離移動したときにも、前記振動制御部による制御が行われるものとして構成できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のスピーカは、磁気回路部に2つの磁石が設けられ、主磁気ギャップに2つの磁石で形成された磁束が集中するため、ボイスコイルを横断する磁束密度が高くなり、例えば低音用の大きな面積の振動板であっても大きな駆動力で振動させることが可能になる。また、振動板の振幅が大きくなって、ボイスコイルが副磁気ギャップに接近しまたは入り込んだときに、ボイスコイルに制動力が作用せず、むしろ本来の振動方向への力が補助的に作用するため、駆動力のリニアリティを維持でき、歪みの少ない再生音質を得ることができる。
【0017】
また、振動板の振幅が大きくなって、ボイスコイルが副磁気ギャップに接近しまたは入り込んだときに、ボイスコイルに流れる電流を減衰させまたは一時的に遮断することによって、ボイスコイルに制動力が作用するのを防止でき、これによっても、駆動力のリニアリティを維持でき、歪みの少ない再生音質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態のスピーカを示す断面図、
図2】第1実施形態のスピーカの一部を拡大して示す部分拡大断面図、
図3】検知部の構成を示す説明図、
図4】第1実施形態のスピーカを含む回路ブロック図、
図5】(A),(B),(C),(D)は、磁気回路部内でのボイスコイルの振動位置の変化を示す部分断面図、
図6】第1実施形態のスピーカの振動制御を示すフローチャート、
図7】ボイスコイルが、図5(A),(B),(C),(D)に示される振動を行っているときの、ボイスコイルの移動量と電流値との関係を示す線図、
図8】ボイスコイルが、図5(A),(B),(C),(D)に示される振動を行っているときの、ボイスコイルの移動量と駆動力との関係を示す線図、
図9】第1実施形態のスピーカの動作特性を示すものであり、周波数とボイスコイルの変位量との関係を示す線図、
図10】第1実施形態のスピーカの周波数特性を示すものであり、周波数と発生する音圧との関係を示す線図、
図11】本発明の第2実施形態のスピーカを示す回路ブロック図、
図12】本発明の第3実施形態のスピーカを示す断面図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図12に示されるスピーカは、50Hz付近に共振周波数を有するサブウーハーであり、例えば車載用音響装置の一部を構成してバックシートの内部などに設けられる。ただし、本発明のスピーカは車載用以外の用途で使用することも可能である。本発明のスピーカは、面積の大きい振動板を低音域で大きな振幅で駆動するのに適している。ただし、本発明のスピーカは、中音域の発音用として使用することもでき、この場合に、磁気回路部での駆動効率がよいため、薄型で駆動力のリニアリティが良好のスピーカを構成することができる。図1図12などでは、Z1-Z2方向が上下方向で、ボイスコイルの振動方向である。Z1方向が上方(または前方)でZ2方向が下方(または後方)であり、Z1方向とZ2方向のいずれかが主な発音方向である。また、X1-X2方向は断面図で見たときの横方向である。図3では、上下方向(Z1-Z2方向)および横方向(X1-X2方向)の双方に直交する縦方向がY1-Y2方向として示されている。
【0020】
図1に示される本発明の第1実施形態のスピーカ1は、フレーム2を有している。フレーム2は、非磁性材料または磁性材料で形成されており、下部フレーム2aと上部フレーム2bとが組み合わされて構成されている。フレーム2は上方から見た形状が円形である。フレーム2の内部に振動板3が設けられている。振動板3は円錐状のいわゆるコーン形状である。振動板3の外周端3aに弾性変形可能なエッジ部材4が接着剤により接合されている。エッジ部材4の外周端4aは、下部フレーム2aと上部フレーム2bとの間に挟まれて固定されている。下部フレーム2aと上部フレーム2bは、エッジ部材4の外周端4aを挟んだ状態で、ねじ止めなどで互いに固定されている。
【0021】
フレーム2の内部に円筒状のコイルボビン6が設けられている。振動板3の内周端3bはコイルボビン6の外周面に接着剤で固定されている。上部フレーム2bの上方の開口縁部2cに、断面がコルゲート形状の弾性変形可能なダンパー部材5の外周部5aが接着剤により固定されている。ダンパー部材5の内周部5bは、接着剤によってコイルボビン6の外周面に固定されている。振動板3の中心部には、コイルボビン6の前方の開口部を覆うキャップ8が接着されて固定されている。コイルボビン6の下部の外周面にボイスコイル7が設けられている。ボイスコイル7を構成する被覆導線は、コイルボビン6の外周面において所定のターン数で巻かれている。
【0022】
振動板3とコイルボビン6およびボイスコイル7は、エッジ部材4とダンパー部材5の弾性変形により、フレーム2に対して上下方向(Z1-Z2方向)に振動自在に支持されている。振動板3とキャップ8およびコイルボビン6とボイスコイル7が、フレーム2を含む駆動支持部に対して前後方向に振動する振動部を構成している。
【0023】
下部フレーム2aの中央部に磁気回路部10が接着やねじ止めなどの手段で固定されている。フレーム2と磁気回路部10とで、前記振動部を振動自在に支持する駆動支持部が構成されている。
【0024】
磁気回路部10は、ボイスコイル7を横断する磁束を形成するためのものである。磁気回路部10には、円板形状の第1磁石11と第2磁石12とが、ボイスコイル7の振動方向(Z1-Z2方向)に間隔を空けて設けられている。磁気回路部10はいわゆる内磁型であり、円板形状の2つの磁石11,12が、筒状のコイルボビン6の内側に設けられている。内磁型の磁気回路部10は、コイルボビン6の外側に磁石が存在していないため、コイルボビン6の外周での突出部分が小さくなっている。そのため、上下方向に振動する振動板3が磁気回路部10に当たりにくくなり、スピーカ1の上下方向の高さ寸法Hを低くしても振動板3の振幅を大きく確保することが可能となる。なお、本発明のスピーカは、コイルボビン6よりも外周側に磁石が設けられたいわゆる外磁型であってもよい。また、本発明の磁気回路部10に、前記2つの磁石11,12の他に、さらに1個以上の磁石が設けられていてもよい。
【0025】
図2にも示されているように、磁気回路部10は、第1磁石11の上面11aと第2磁石12の下面12aとの間に、中央プレート13が挟まれている。さらに、第1磁石11の下面11bに下部プレート14が重ねられ、第2磁石12の上面12bに上部プレート15が重ねられている。中央プレート13と下部プレート14および上部プレート15は、いずれも各磁石11,12よりも直径がやや大きい円板形状であり、鉄を主体とした磁性金属材料で形成されている。磁気回路部10は、筒形状の外周ヨーク16と、外周ヨーク16の上方に重ねられたリング形状の上部ヨーク17を有している。外周ヨーク16と上部ヨーク17は鉄を主体とした磁性金属材料で形成されている。磁気回路部10の最下部には、非磁性材料で形成された支持部材18が設けられ、下部プレート14と外周ヨーク16は、支持部材18に固定されている。
【0026】
図2に拡大して示されているように、中央プレート13の外周面と外周ヨーク16の内周面との間に主磁気ギャップG1が形成されている。上部プレート15の外周面と上部ヨーク17の内周面との間に第1副磁気ギャップG2が形成され、下部プレート14の外周面と外周ヨーク16の内周面との間に第2副磁気ギャップG3が形成されている。主磁気ギャップG1と第1副磁気ギャップG2は、第2磁石12を挟んでボイスコイル7の振動方向に間隔を空けて並んで位置しており、主磁気ギャップG1と第2副磁気ギャップG3は、第1磁石11を挟んでボイスコイル7の振動方向に間隔を空けて並んで位置している。ボイスコイル7は、主磁気ギャップG1の内部を基準として上下に振動するものであり、この振動の際に、ボイスコイル7が第1副磁気ギャップG2および第2副磁気ギャップG3の内部に接近し、さらには内部を移動することもある。
【0027】
図2に示されるように、第1磁石11は上面11aと下面11bが逆の極性となるように着磁され、第2磁石12も下面12aと上面12bが逆の極性となるように着磁されている。第1磁石11の上面11aと第2磁石12の下面12aは同じ極性であり、第1磁石11の下面11bと第2磁石12の上面12bは同じ極性である。図2に示される実施形態では、上面11aと下面12aが共にN極で、下面11bと上面12bが共にS極である。図2には、磁気回路部10の内部を流れる磁束の向きが示されている。中央プレート13には、上下の2つの磁石11,12からの磁束が集中するため、中央プレート13の外周面と外周ヨーク16の内周面との間に形成されている主磁気ギャップG1を横断する磁場の磁束密度が高くなっている。また、下部プレート14と上部プレート15にも磁束が流れるため、上部プレート15の外周面と上部ヨーク17の内周面との間に形成された第1副磁気ギャップG2を磁束が横断し、下部プレート14の外周面と外周ヨーク16の内周面との間に形成された第2副磁気ギャップG3を磁束が横断する。副磁気ギャップG2,G3での磁束の横断方向は、主磁気ギャップG1での磁束の横断方向と逆向きである。
【0028】
スピーカ1には、振動部の移動を検知する検知部(振動検知部)20が設けられている。図3に検知部20の詳細が示されている。検知部20は、振動部の一部であるコイルボビン6に固定された可動磁石21と、駆動支持部の一部である磁気回路部10に固定された磁気センサ22とで構成されている。この検知部20では、磁気回路部10において、上部ヨーク17から第1副磁気ギャップG2を横断して上部プレート15に向かう磁束の漏れ成分が、固定磁束成分Φxとして磁気センサ22にX1方向へ作用する。可動磁石21は、N極がY1方向へ向きS極がY2方向へ向くように着磁されており、磁気センサ22には、可動磁石21からの漏れ磁束である可動磁束成分ΦyがY2方向に作用する。固定磁束成分Φxの磁束密度は一定であるが、可動磁束成分Φyの磁束密度は振動部の振動により変化する。可動磁石21が磁気センサ22に近づくと可動磁束成分Φyの磁束密度が高くなり、可動磁石21が磁気センサ22から遠ざかると可動磁束成分Φyの磁束密度が低下する。
【0029】
磁気センサ22は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を有している。磁気抵抗効果素子は、固定磁性層とフリー磁性層を有するGMR素子またはTMR素子である。固定磁性層は磁化の向きが固定されているが、フリー磁性層は外部から作用する磁場の向きに応じて磁化の向きが変化する。GMR素子またはTMR素子は、MR効果により、固定磁性層で固定されている磁化の向きとフリー磁性層の磁化の向きとの相対角度の変化に応じて電気抵抗値が変化する。図3には、固定磁束成分Φxに基づいて磁気センサ22にX1方向へ作用する磁場Hxと、可動磁束成分Φyに基づいて磁気センサ22にY2方向へ作用する磁場Hyとが、共にベクトル量で示されている。磁気センサ22の前記フリー磁性層の磁化は、磁場Hxと磁場Hyとの合成ベクトルである検知磁場Hdの向きに追従する。そのため、磁気センサ22の電気抵抗値から、合成ベクトルである検知磁場Hdの角度θを知ることができる。これは磁場Hxを基準とした磁場Hyの大きさの変化を知ることと等価であり、磁気センサ22の抵抗値の変化から、可動磁石21の上下の位置の変化を知ることができる。
【0030】
なお、磁気センサ22として、2個のホール素子を、その検知方向がX方向とY方向となるように配置してもよい。これによっても、磁場Hxを基準として磁場Hyの大きさの変化を測定することが可能である。また、振動部の振動の変化を検知する検知部20として、光学方式など種々の手段を利用することができる。
【0031】
図4に、スピーカ1の動作を制御する振動制御部30の構成が示されている。振動制御部30は、メモリとCPUを主体として構成されており、例えば予めインストールされたソフトウエアに基づいて処理が実行される。振動制御部30は、オーディオアンプ40内に組み込まれていてもよいし、または、オーディオアンプ40などとは別に単独でスピーカ1のフレーム2の内部に設けられた回路基板に実装されていてもよい。
【0032】
振動制御部30には、振動位置算出部31として機能する領域がある。振動制御部30にはセンサ検知回路33が付随している。センサ検知回路33で、前記磁気センサ22の抵抗変化に基づく検知出力が生成されて、その検知出力が振動位置算出部31に与えられる。記憶部32として機能する領域には、個々のスピーカにおける主磁気ギャップG1および副磁気ギャップG2,G3での横断磁束の実測値の情報、ボイスコイル7のインダクタンスならびに副磁気ギャップG2,G3とボイスコイル7の相対位置などの測定値の情報、ならびにこれら各情報に基づいて、ボイスコイル7がどの位置に至ったときに、副磁気ギャップG2,G3からボイスコイル7にどの程度の制動力が与えられるかの情報などが記憶されている。反転位置算出部34となる領域では、振動位置算出部31で算出された可動磁石21の位置と、記憶部32に記憶されているそのスピーカの特性の情報とから、どの時点でボイスコイル7に与えられる電流を反転すべきかが算出される。振動制御部30に出力調整部35として機能する領域が設けられ、この領域に反転部36と補正部37が設けられている。出力調整部35は、反転位置算出部34からの算出値に基づいて動作する。オーディオアンプ40から出力されるボイス電流は、出力調整部35に与えられ、反転位置算出部34からの算出値に基づくタイミングで電流の向きが反転させられる。反転部36は、例えばボイス電流の向き(あるいは位相)を反転させるインバータである。補正部37は、反転されたボイス電流の値(電流量)を補正するものであり、例えば反転したボイス電流が過大にならないように制御するリミッターである。
【0033】
次に、スピーカ1の発音動作を説明する。
図5(A)は、ボイスコイル7の基準位置を示しており、通電が停止しているときボイスコイル7は基準位置にある。基準位置でのボイスコイル7は、上下方向の中心部Ocが、主磁気ギャップG1の上下方向での中心に一致している。発音動作が開始されると、オーディオアンプ40から出力されたオーディオ信号に基づいてボイスコイル7にボイス電流が与えられる。主磁気ギャップG1を横断する磁束とボイスコイル7に流れるボイス電流とで励起される電磁力により、ボイスコイル7とコイルボビン6および振動板3を含む振動部が上下方向(Z1-Z2方向)へ振動し、振動板3からZ1方向とZ2方向の空間にボイス電流の周波数に応じた音圧が与えられる。
【0034】
第1実施形態のスピーカ1は、50Hz付近に共振周波数を有するサブウーハーである。サブウーハーは振動板3の面積が大きく、低音域を効果的に再生するためには振動板3を大きな振幅で駆動することが必要である。図2に示されるように、磁気回路部10の中央プレート13に、第1磁石11から発せられる磁束と第2磁石12から発せられる磁束が集中し、主磁気ギャップG1を横断する磁場の磁束密度が高くなっている。そのため、ボイスコイル7に与えられる駆動力も大きくなり、過大な磁気回路部10を用いることなく、大きな面積の振動板3を効率よく振動させて低音域の再生出力を得ることが可能になる。
【0035】
図5(A)、(B)、(C)、(D)には、ボイスコイル7に作用する電磁力によってボイスコイル7が上方向(Z1方向)へ移動するときの位置の変化が順番に示されている。ボイスコイル7が図5(B)の位置から図5(C)、(D)の位置へ向けて移動するにしたがって、第1副磁気ギャップG2を横断する逆向きの磁束がボイスコイル7に作用し始める。第1副磁気ギャップG2を横断する磁束の向きは、発音に寄与している主磁気ギャップG1を横断する磁束の向きと逆であるため、ボイスコイル7が図5(B)の位置から図5(C)、(D)の位置に至るにしたがって、振動部に下向き(Z2方向)の反力が作用するようになる。ボイス電流によって駆動されている振動部に反力が作用すると、低音域の再生音に歪みが発生するなどし、発音品質が低下することになる。
【0036】
そこで、図4に示される振動制御部30では、振動位置算出部31で算出されるボイスコイル7の位置と、記憶部32に記憶されているスピーカ1毎の固有の挙動情報とに基づいて、反転位置算出部34でボイス電流の向きを反転させるタイミングが算出される。出力調整部35は、反転位置算出部34の算出値に基づいて動作し、オーディオアンプ40から出力されるオーディオ信号に基づくボイス電流が、反転部36で反転され、さらに必要に応じて補正部37で補正される。例えば、図5(C)に示されるように、上方へ移動しているボイスコイル7の中心部Ocが、主磁気ギャップG1と第1副磁気ギャップG2の中間位置に至ったときにボイス電流の向きが反転させられる。ボイスコイル7に、その向き(位相)が反転したボイス電流が与えられると、反転したボイス電流と第1副磁気ギャップG2を横断する磁束とで、振動部に対して本来の挙動方向と同じ向きの駆動力が作用する。これにより振動部に作用する駆動力のリニアリティを維持できるようになり、低音域の再生音に歪みが生じるのを抑制できるようになる。さらには、補正部37で必要な補正を行うことで、振動部の動作を最適化できる。例えば、補正部37をリミッターとして動作させることで、振動部に過大な加速度が作用するのを抑制できる。
【0037】
図6には、振動制御部30による制御動作のフローチャートが示されている。図6は各処理ステップがSTで示されている。ST1(ステップ1)で低音域の再生が開始されると、振動制御部30での処理動作が開始される。なお、図4に示されるオーディオアンプ40で音源入力部から入力された音源の周波数を監視し、オーディオ信号に例えば数百Hz以下の所定の低音域の周波数の信号が含まれているときのみ振動制御部30の処理動作が開始されるようにしてもよい。
【0038】
ST2では、反転位置算出部34が振動位置算出部31の算出値である振動位置情報を取得する。ST3では、振動位置情報に基づいて、ボイスコイル7が、主磁気ギャップG1から第1副磁気ギャップG2に向けて所定の出力切替え位置まで移動したか否かを判定する。ST3で、出力切替え位置へ移動したと判定されたらST4に移行し、ST4において反転部36により出力反転処理を行い、さらに必要に応じて補正部37で出力補正を行う。ST3において、ボイスコイル7が所定の出力切替え位置へ移動したと認識されていないときは、ST2の振動位置情報取得を継続する。出力反転処理が行われているときに、反転位置算出部34では、ST5において、ボイスコイル7が下方へ移動して主磁気ギャップG1に向けて所定の切替え位置へ復帰したか否かが監視される。所定の切替え位置に復帰していないときは、出力反転処理を継続し、所定の切替え位置に復帰したと判定されたときには、ST6に移行して出力反転処理を解除する。なお、ST3での出力切替え位置とST5の出力切替え位置は、同じ位置であってもよいし、位置がずれていてもよい。
【0039】
図5図6では、ボイスコイル7が主磁気ギャップG1から第1副磁気ギャップG2へ向けて移動するときの振動制御部30の処理動作を説明したが、ボイスコイル7が下方向(Z2方向)へ移動し、主磁気ギャップG1から第2副磁気ギャップG3へ向けて移動するときの振動制御部30による処理動作も同じである。ボイスコイル7が、主磁気ギャップG1から第1副磁気ギャップG2へ向けて移動するときと、主磁気ギャップG1から第2副磁気ギャップG3へ向けて移動するときとで、ボイスコイル7に与えられるボイス電流は対称に制御される。
【0040】
図7に、電流制御の一例が示され、図8には、図7に示される電流制御を行ったときの駆動力のリニアリティの特性が示されている。図7図8は、シミュレーション結果である。図7では、横軸にボイスコイル7の中心部Ocが上方向へ移動するときの移動量(mm)が示され、縦軸にボイスコイル7に与えられる電流値(A)が示されている。図8では、ボイスコイルの中心Ocが上方向(Z1方向)へ移動するときの移動量(正のmm)と下方向(Z2方向)へ移動するときの移動量(負のmm)が示され、縦軸に、ボイスコイル7に作用する電流1Aあたりの駆動力(N)の変化が絶対値で示されている。
【0041】
図7図8の各線図では、ボイスコイル7が図5(A)のときの移動位置が(a)で示され、ボイスコイル7が図5(B)のときの移動位置が(b)で示され、ボイスコイル7が図5(C)のときの移動位置が(c)で示され、ボイスコイル7が図5(D)のときの移動位置が(d)で示されている。このシミュレーションでの電流制御は、ボイスコイル7の中心部Ocが、図5(C)で示す位置であって主磁気ギャップG1から第1副磁気ギャップG2までの移動距離のちょうど半分の位置に移動したときに、図7の(c)に示されるようにボイスコイル7に流れるボイス電流が一瞬ゼロとなる。その後、ボイスコイル7が図5(C)の位置から図5(D)の位置に移動する間に、図7の(c)から(d)で示されるように、ボイスコイル7に流れる電流の向きが反転させられる。図8において移動量ゼロから右側に示されているように、図7に示される電流の反転制御を行った結果、駆動力のリニアリティが確保されているシミュレーション結果が得られることが解る。
【0042】
図9図10には、主磁気ギャップG1と2つの副磁気ギャップG2,G3を有する実施形態のスピーカ1の動作特性のシミュレーション結果が示されている。図9は、横軸にボイス電流の周波数が示され、縦軸にボイスコイル7の移動量が示されている。変位量はゼロを起点として正側が上方(Z1方向)への移動量(移動距離)であり、負側が下方(Z2方向)への移動量(移動距離)である。図9では、実線が、振動制御部30を動作させてボイス電流の向きを反転させる振動制御を行ったシミュレーション結果であり、破線は、図1図2に示す構造のスピーカで振動制御部30を設けず出力を反転させる制御を行わない比較例でのシミュレーション結果である。シミュレーションしたスピーカは、共振周波数が50Hzである。図9に示す線図から、電流の反転処理を行わない比較例に対し、電流の向きを反転させた実施形態では、低音域で振動部に制動力が作用せず、大きな振幅で動作していることを確認できる。
【0043】
図10は、図9のシミュレーションで使用した同じスピーカの周波数特性を示すものであり、横軸に周波数が示され、縦軸は音圧(dB)を示している。図10では、実施形態のスピーカ1の特性が実線で示され、振動制御部30を伴わない比較例の特性が破線で示されている。図10のシミュレーション結果から、共振周波数である50Hz付近で振動部に制動力が作用しておらず、周波数特性が向上していることを確認できる。
【0044】
図11に、本発明の第2実施形態が示されている。第2実施形態のスピーカは、磁気回路部10の構造が図1図2に示されたものと同じであるが、図4に示したのと異なる振動制御部130が使用されている。図11に示される振動制御部130は、図4に示された反転部36の代わりに一時遮断部または減衰部136として機能する領域を有している。また、図4に示された反転位置算出部34の代わりに一時遮断または減衰位置算出部134として機能する領域を有している。
【0045】
図11に示される振動制御部130では、振動位置算出部31で算出されるボイスコイル7の位置と、記憶部32に記憶されているスピーカ1毎の固有の挙動情報とに基づいて、一時遮断または減衰位置算出部134において、ボイス電流を一時遮断または減衰させるタイミングが算出される。一時遮断部または減衰部136は、一時遮断または減衰位置算出部134での算出値に基づいて、例えば、図5(C)に示されるようにボイスコイル7の中心Ocが主磁気ギャップG1と副磁気ギャップG2(または副磁気ギャップG3)との中間位置に至ったときに、オーディオアンプ40から出力されるオーディオ信号に基づくボイス電流を一時的に遮断しまたは減衰させる。ボイス電流を一時的に遮断しまたは減衰させることで、図5(C)から図5(D)に示されるように、ボイスコイル7が副磁気ギャップG2またはG3に接近しまたは入り込んだときに、副磁気ギャップG2またはG3での逆向きの磁束によってボイスコイル7に作用する制動力を無くし、または低減させることができる。
【0046】
図11に示される振動制御部130においても、ボイスコイル7が図5(D)に示す位置から図5(C)に示す位置に復帰したときに、あるいはその付近に復帰したときに、一時遮断部または減衰部136の動作を停止し、オーディオアンプ40から送られるボイス電流を正常な電流量に復活させる。また、図11に示される出力調整部135にもリミッターなどの補正部137が設けられ、ボイスコイル7の動作が補正される。図11に示される振動制御部130を用いた振動制御においても、低音域において振動板3を大きな振幅で動作させることができ、発音の歪みなどの発生を抑制できる。
【0047】
なお、本発明では、ボイスコイル7が図5(B)の位置と図5(C)の位置の中間、または図5(C)の位置と図5(D)の位置の中間に至ったときに、ボイス電流の向きを反転させまたは一時的に遮断しあるいは減衰させてもよいし、図5(D)に示されるように、ボイスコイル7が副磁気ギャップG2内に入り始めたときあるいは入ったときに、ボイス電流の向きを反転させまたは一時的に遮断しあるいは減衰させてもよい。
【0048】
図12に本発明の第3実施形態のスピーカ101が示されている。スピーカ101の下部フレーム2aに磁気回路部110が固定されている。磁気回路部110は、磁性金属材料で形成された凹形状の外周ヨーク116の中心部に、第1磁石11、中央プレート13、第2磁石12、上部プレート15の順に重ねて固定されている。中央プレート13と外周ヨーク116との間に主磁気ギャップG1が形成され、上部プレート15と上部ヨーク17との間に1つの副磁気ギャップG2が設けられている。
【0049】
図12に示されるスピーカ101には、図4に示される振動制御部30または図11に示される振動制御部130が付随して設けられている。図12では、ボイスコイル7が主磁気ギャップG1から上方(Z1方向)に移動して、副磁気ギャップG2に接近しまたは副磁気ギャップG2に入り込んだときに、ボイス電流の向きが反転されまたはボイス電流が一時的に遮断されあるいは減衰させられる。図12に示されるスピーカ101では、主磁気ギャップG1の上方にのみ副磁気ギャップG2が設けられているため、ボイスコイル7が上方へ移動するときにのみ副磁気ギャップG2の影響を受けることになる。しかし、ボイスコイル7が上方へ移動するときに、図4または図11に示される振動制御部でボイス電流を制御することで、副磁気ギャップG2の横断磁束でボイスコイル7に制動力が作用するのを抑制でき、ボイスコイル7が主磁気ギャップG1内の位置を基準として上方向へ振動したときと下方向へ振動したときとで動作の対称性を維持でき、これによっても再生音質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1,101, スピーカ
2 フレーム
3 振動板
6 コイルボビン
7 ボイスコイル
10,110 磁気回路部
11 第1磁石
12 第2磁石
13 中央プレート
14 下部プレート
15 上部プレート
16 外周ヨーク
17 上部ヨーク
20 検知部
21 可動磁石
22 磁気センサ
30,130 振動制御部
31 振動位置算出部
32 記憶部
34 反転位置算出部
36 反転部
37 補正部
40 オーディオアンプ
134 一時遮断または減衰位置算出部
136 一時遮断部または減衰部
G1 主磁気ギャップ
G2 第1副磁気ギャップ
G3 第2副磁気ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12