(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080124
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】逐次比較型AD変換回路
(51)【国際特許分類】
H03M 1/46 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
H03M1/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193042
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 亮一
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AB04
5J022BA06
5J022CF01
5J022CF07
(57)【要約】
【課題】ADコンバータに対しアナログ入力信号を供給する回路の負荷を軽減する。
【解決手段】キャパシタアレイ及びスイッチアレイを有するキャパシタ型DAC(10)を備えたADコンバータ(1)において、キャパシタアレイ中の一部のキャパシタを第1信号配線(WR1)に接続し、他の一部のキャパシタを第2信号配線(WR2)に接続する。第1信号配線に第1基準電圧(V
L)を与え且つ第2信号配線に第2基準電圧(V
H>V
L)を与えた状態でアナログ入力信号(Ain)のサンプリングを行う。その後、第1及び第2信号配線を夫々に第3信号配線(WR3)に導通させることで第3信号配線に第1比較電圧(V1)を発生させる。逐次比較期間において、第1比較電圧を所定の第2比較電圧(V2)と比較し、比較結果に基づきスイッチアレイの状態制御を通じてデジタル出力信号(Dout)の値を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタ型DACを有し、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するよう構成される逐次比較型AD変換回路であって、
前記キャパシタ型DACは、複数のキャパシタを有するキャパシタアレイ、及び、各キャパシタの第1端に対して個別に第1基準電圧、前記第1基準電圧よりも高い第2基準電圧又は前記アナログ入力信号を選択的に与えるよう構成されたスイッチアレイを有し、
前記複数のキャパシタの一部は第1種キャパシタに属し、前記複数のキャパシタの残部は第2種キャパシタに属し、前記第1種キャパシタの第2端は第1信号配線に接続される一方で、前記第2種キャパシタの第2端は第2信号配線に接続され、
前記第1信号配線と前記第1基準電圧が加わる第1基準配線との間に設けられる第1基準スイッチと、
前記第2信号配線と前記第2基準電圧が加わる第2基準配線との間に設けられる第2基準スイッチと、
前記第1信号配線及び前記第2信号配線の夫々と第3信号配線との間に設けられる連結スイッチと、
コンパレータと、
前記スイッチアレイ、前記第1基準スイッチ、前記第2基準スイッチ及び前記連結スイッチの状態を制御するよう構成された制御回路と、を備え、
サンプリング期間において、前記制御回路は、前記第1基準スイッチ及び前記第2基準スイッチをオンに制御することで前記第1信号配線に前記第1基準電圧を与える一方で前記第2信号配線に前記第2基準電圧を与え、且つ、前記連結スイッチをオフに制御し、
前記サンプリング期間後の逐次比較期間において、前記制御回路は、前記第1基準スイッチ及び前記第2基準スイッチをオフに制御し、且つ、前記連結スイッチをオンに制御することで前記第1信号配線及び前記第2信号配線の夫々を前記第3信号配線に導通させ、
前記コンパレータは、前記逐次比較期間において、前記第3信号配線に加わる第1比較電圧を所定の第2比較電圧と比較して比較結果信号を生成し、
前記制御回路は、前記サンプリング期間において前記スイッチアレイの状態制御を通じ前記複数のキャパシタにおける複数の第1端に対し前記アナログ入力信号を与え、前記逐次比較期間において前記スイッチアレイの状態制御を通じ前記複数の第1端に対し個別に前記第1基準電圧又は前記第2基準電圧を与えつつ前記比較結果信号に基づき前記デジタル出力信号の値を決定する
、逐次比較型AD変換回路。
【請求項2】
前記第1信号配線及び前記第2信号配線間を直接短絡するための短絡スイッチが、前記連結スイッチとは別に設けられ、
前記制御回路は、前記サンプリング期間において前記短絡スイッチをオフに制御し、前記逐次比較期間において前記短絡スイッチをオンに制御する
、請求項1に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項3】
前記制御回路は、前記サンプリング期間の後、前記短絡スイッチ及び前記連結スイッチを同時にオフからオンに切り替える、又は、前記短絡スイッチをオフからオンに切り替えてから前記連結スイッチをオフからオンに切り替える
、請求項2に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項4】
前記第1信号配線及び前記第2信号配線間を直接短絡するための短絡スイッチが、前記連結スイッチとは別に設けられ、
前記制御回路は、前記サンプリング期間において前記短絡スイッチをオフに制御し、前記サンプリング期間を経て前記短絡スイッチを所定時間だけオンに制御した後、前記逐次比較期間前に前記短絡スイッチをオンからオフに切り替える
、請求項1に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項5】
前記制御回路は、前記短絡スイッチ及び前記連結スイッチを同時にオフからオンに切り替える、又は、前記短絡スイッチをオフからオンに切り替えてから前記連結スイッチをオフからオンに切り替える
、請求項4に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項6】
降圧用キャパシタを有し且つ前記第1基準配線及び前記第2基準配線に接続された降圧回路を更に備え、
前記降圧用キャパシタの第1端は前記第2信号配線に接続され、
前記制御回路は、前記降圧用キャパシタの第2端に対し、前記サンプリング期間では前記第2基準電圧を与え、前記逐次比較期間では前記第1基準電圧を与える
、請求項1~5の何れかに記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項7】
前記制御回路は、前記逐次比較期間において前記比較結果信号に基づき、バイナリサーチにより前記スイッチアレイの状態を順次切り替えながら前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定する
、請求項1~5の何れかに記載の逐次比較型AD変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、逐次比較型AD変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
逐次比較型AD変換回路は、一般に、DAC(デジタル-アナログ変換器)、コンパレータ、及び、逐次比較を担う論理回路(制御回路)を備える。DACとしてキャパシタ型DAC(容量性DAC)が用いられることも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャパシタ型DACを有する逐次比較型AD変換回路に対してアナログ入力信号を供給する回路(ドライバ)は、サンプリング期間においてキャパシタ型DACの各キャパシタにアナログ入力信号に応じた電荷を供給する。必要な電荷供給量が増大するほど、ドライバの負荷が大きくなる。負荷の増大は、ドライバの小型化又は省電力化を妨げる、或いは、ドライバに要求されるGB積の増大を招く。
【0005】
本開示は、アナログ入力信号を供給する回路の負荷軽減に寄与する逐次比較型AD変換回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る逐次比較型AD変換回路は、キャパシタ型DACを有し、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するよう構成される逐次比較型AD変換回路であって、前記キャパシタ型DACは、複数のキャパシタを有するキャパシタアレイ、及び、各キャパシタの第1端に対して個別に第1基準電圧、前記第1基準電圧よりも高い第2基準電圧又は前記アナログ入力信号を選択的に与えるよう構成されたスイッチアレイを有し、前記複数のキャパシタの一部は第1種キャパシタに属し、前記複数のキャパシタの残部は第2種キャパシタに属し、前記第1種キャパシタの第2端は第1信号配線に接続される一方で、前記第2種キャパシタの第2端は第2信号配線に接続され、前記第1信号配線と前記第1基準電圧が加わる第1基準配線との間に設けられる第1基準スイッチと、前記第2信号配線と前記第2基準電圧が加わる第2基準配線との間に設けられる第2基準スイッチと、前記第1信号配線及び前記第2信号配線の夫々と第3信号配線との間に設けられる連結スイッチと、コンパレータと、前記スイッチアレイ、前記第1基準スイッチ、前記第2基準スイッチ及び前記連結スイッチの状態を制御するよう構成された制御回路と、を備え、サンプリング期間において、前記制御回路は、前記第1基準スイッチ及び前記第2基準スイッチをオンに制御することで前記第1信号配線に前記第1基準電圧を与える一方で前記第2信号配線に前記第2基準電圧を与え、且つ、前記連結スイッチをオフに制御し、前記サンプリング期間後の逐次比較期間において、前記制御回路は、前記第1基準スイッチ及び前記第2基準スイッチをオフに制御し、且つ、前記連結スイッチをオンに制御することで前記第1信号配線及び前記第2信号配線の夫々を前記第3信号配線に導通させ、前記コンパレータは、前記逐次比較期間において、前記第3信号配線に加わる第1比較電圧を所定の第2比較電圧と比較して比較結果信号を生成し、前記制御回路は、前記サンプリング期間において前記スイッチアレイの状態制御を通じ前記複数のキャパシタにおける複数の第1端に対し前記アナログ入力信号を与え、前記逐次比較期間において前記スイッチアレイの状態制御を通じ前記複数の第1端に対し個別に前記第1基準電圧又は前記第2基準電圧を与えつつ前記比較結果信号に基づき前記デジタル出力信号の値を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、アナログ入力信号を供給する回路の負荷軽減に寄与する逐次比較型AD変換回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るADコンバータの全体構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係るDACの内部構成図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係り、スイッチアレイにおける1つのスイッチの内部構成及び周辺回路を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係り、スイッチアレイにおける1つのスイッチの4状態を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係り、キャパシタアレイにおける複数のキャパシタの静電容量値の関係を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係り、スイッチアレイを構成する各スイッチが信号入力状態にあるときにおける、DAC10の等価回路図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係り、DAC及び2つの信号配線の第1接続構成を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係り、DAC及び2つの信号配線の第2接続構成を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係り、DAC及び2つの信号配線の第3接続構成を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係り、DAC及び2つの信号配線の第4接続構成を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に係り、AD変換動作のフローチャートである。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に係り、サンプリング動作が行われるときのADコンバータの状態を示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に係り、状態遷移動作のフローチャートである。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態に係り、状態遷移動作におけるスイッチの状態変化を示す図である。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態に係り、状態遷移動作に関わるADコンバータの状態を示す図である。
【
図16】
図16は、本開示の実施形態に係り、逐次比較動作のフローチャートである。
【
図17】
図17は、本開示の実施形態に係り、制御回路内のレジスタの構成図である。
【
図18】
図18は、本開示の実施形態に係り、逐次比較動作が行われるときのADコンバータの状態を示す図である。
【
図19】
図19は、第1参考例に係るADコンバータの一部構成及び動作概要を示す図である。
【
図20】
図20は、キャパシタ型DACを有するADコンバータのサンプリング時におけるモデル図である。
【
図21】
図21は、本開示の実施形態に係り、サンプリング期間におけるADコンバータの一部等価回路図である。
【
図22】
図22は、本開示の実施形態に係り、逐次比較期間におけるADコンバータの一部等価回路図である。
【
図23】
図23は、第2参考例に係るADコンバータの一部構成及び動作概要を示す図である。
【
図24】
図24は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、幾つかのスイッチの状態変化を示す図である。
【
図25】
図25は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、幾つかのスイッチの状態変化を示す図である。
【
図26】
図26は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、ADコンバータの全体構成図である。
【
図27】
図27は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、降圧回路の状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。
【0010】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。任意のスイッチを1以上のFET(電界効果トランジスタ)にて構成することができ、或るスイッチがオン状態のときには当該スイッチの両端間が導通する一方で或るスイッチがオフ状態のときには当該スイッチの両端間が非導通となる。任意のスイッチはアナログスイッチであって良い。以下、任意のスイッチについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0011】
図1に本開示の実施形態に係るADコンバータ1の全体構成図を示す。ADコンバータ1は逐次比較型A/D変換回路である。ADコンバータ1に対してドライバDRVが接続される。ドライバDRVはADコンバータ1に対してアナログ入力信号Ainを供給する信号供給回路である。ADコンバータ1に対しドライバDRVからのアナログ入力信号Ainが入力される。ADコンバータ1はアナログ入力信号Ainに対するAD変換動作を行う。アナログ入力信号Ainに対するAD変換動作では、アナログ入力信号Ainをバイナリサーチによってデジタル信号に変換し、得られたデジタル信号をデジタル出力信号Doutとして出力する。
【0012】
デジタル出力信号DoutはNビットのデジタル信号である。即ち、デジタル出力信号Doutは、第1番目のビットから第N番目のビットまでの計Nビットを有する。Nは2以上の任意の整数であり、例えば、8、10、12、14又は16である。ここで、第i番目のビットから見て第(i+1)番目のビットが上位側のビットであるとする。故に、第1番目~第N番目のビットの内、第1番目のビットが最下位ビットであり、第N番目のビットが最上位ビットである。iは任意の整数を表し、N以下の自然数を表すと解して良い。
【0013】
ADコンバータ1は、DAC10、コンパレータ20、制御回路30及び電圧生成回路40、並びに、スイッチSH、SL、SC及びSSを備える。配線WRinはアナログ入力信号Ainが加わるアナログ入力配線である。配線WRHには所定の電圧VHが加わる。配線WRLには所定の電圧VLが加わる。電圧VH及びVLは共に直流電圧である。但し、電圧VHは電圧VLよりも高い。電圧VH及びVLはADコンバータ1における基準電圧に相当する。電圧VHがハイサイド側の基準電圧(高電位側の基準電圧)に相当し、電圧VLがローサイド側の基準電圧(低電位側の基準電圧)に相当する。故に、配線WRHはハイサイド側の基準配線に相当し、配線WRLはローサイド側の基準配線に相当する。電圧VHは正の直流電圧値(例えば5V)を有する。ここでは、電圧VLはグランド電圧であるとする。本実施形態では、以下、特に記述無き限り、電圧VLとグランド電圧とは同じものを指す。
【0014】
グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。配線WRLはグランド電圧が加わるグランド配線である。配線WRLそのものがグランドであると解しても良い。グランド電圧はグランドの電位を有し、故に0Vである。
【0015】
ドライバDRVは配線WRinに接続され、配線WRinに対してアナログ入力信号Ainを出力する。ドライバDRVは配線WRH及びWRLに接続される。ドライバDRVは電圧VLの電位を基準に電圧VHを駆動電圧として用いて駆動する。このため、アナログ入力信号Ainは電圧VL以上且つ電圧VH以下の電圧値を有する。DAC10に対しては配線WRin、WRH及びWRLが接続される。
【0016】
図2にDAC10の内部構成を示す。DAC10はキャパシタ型DAC(キャパシタ型デジタル-アナログ変換器)である。キャパシタ型DACは一般に容量性DACとも称される。DAC10はキャパシタアレイ11及びスイッチアレイ12を備える。キャパシタアレイ11はキャパシタC[1]~C[N]を備え、スイッチアレイ12はスイッチS[1]~S[N]を備える。
【0017】
キャパシタC[1]~C[N]は各々に第1端及び第2端を備え、第1端及び第2端間に電荷を蓄積する。キャパシタC[1]~C[N]に対応して、夫々、スイッチS[1]~S[N]が設けられる。即ちキャパシタC[i]に対応してスイッチS[i]が設けられる。また、キャパシタC[i]はデジタル出力信号Doutにおける第i番目のビットに対応する。キャパシタC[i]の第1端及び第2端の内、一方をスイッチ端と称し、他方を信号配線端と称する。キャパシタC[i]のスイッチ端はスイッチS[i]に接続される。キャパシタC[i]の信号配線端は信号配線WR1又はWR2に接続される。但し、
図2では、キャパシタC[1]~C[N]の各信号配線端が信号配線WR1又はWR2に接続される様子は図示されていない。キャパシタC[1]~C[N]のスイッチ端に対し、スイッチS[1]~C[N]を介して、アナログ入力信号Ain、電圧V
H又は電圧V
Lが印加され得る。
【0018】
図3にキャパシタC[i]とスイッチS[i]と配線WRin、WR
H及びWR
Lとの接続関係を示す。スイッチS[1]~S[N]は各々に共通端子T
COM及び切替端子Ta、Tb及びTcを備える。スイッチS[1]~S[N]の共通端子T
COMは、夫々、キャパシタC[1]~C[N]のスイッチ端に接続される。即ち例えば、スイッチS[1]の共通端子T
COMはキャパシタC[1]のスイッチ端に接続され、スイッチS[2]の共通端子T
COMはキャパシタC[2]のスイッチ端に接続される。スイッチS[3]等も同様である。スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Taは配線WRinに接続されてアナログ入力信号Ainを受ける。スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Tbは配線WR
Hに接続されて電圧V
Hを受ける。スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Tcは配線WR
Lに接続されて電圧V
Lを受ける。
【0019】
制御回路30の制御の下、スイッチS[1]~S[N]の夫々において、共通端子TCOMが切替端子Ta、Tb及びTcの何れか1つに選択的に接続される。但し、スイッチS[i]において共通端子TCOMが切替端子Ta、Tb及びTcの何れとも接続されないことがあっても良い。
【0020】
図4を参照し、以下では、任意のスイッチS[i]において、共通端子T
COMが切替端子Ta、Tb、Tcに接続される状態を、夫々、信号入力状態、ハイサイド接続状態、ローサイド接続状態と称し、共通端子T
COMが切替端子Ta、Tb及びTcの何れとも接続されない状態を開放状態と称する。スイッチS[i]の信号入力状態、ハイサイド接続状態、ローサイド接続状態では、夫々、アナログ入力信号Ain、電圧V
H、電圧V
LがキャパシタC[i]のスイッチ端に加わる。尚、
図2では例として、スイッチS[1]~S[N]が全て信号入力状態とされる様子が示されている。スイッチS[1]~[N]はマルチプレクサであって良い。
【0021】
図1を再度参照する。スイッチS
Lは信号配線WR1と配線WR
Lとの間に設けられたローサイドスイッチである。具体的には、スイッチS
Lの第1端は信号配線WR1に接続され、スイッチS
Lの第2端は配線WR
Lに接続されて電圧V
L(ここではグランド電圧)を受ける。スイッチS
Hは信号配線WR2と配線WR
Hとの間に設けられたハイサイドスイッチである。具体的には、スイッチS
Hの第1端は信号配線WR2に接続され、スイッチS
Hの第2端は配線WR
Hに接続されて電圧V
Hを受ける。
【0022】
スイッチS
Lがオンであるとき、スイッチS
Lの第1端及び第2端間が導通して信号配線WR1の電圧は電圧V
Lに固定される。スイッチS
Lがオフであるとき、スイッチS
Lの第1端及び第2端間は遮断される(非導通となる)。スイッチS
Hがオンであるとき、スイッチS
Hの第1端及び第2端間が導通して信号配線WR2の電圧は電圧V
Hに固定される。スイッチS
Hがオフであるとき、スイッチS
Hの第1端及び第2端間は遮断される(非導通となる)。尚、
図1では例として、スイッチS
L及びS
Hがオフとされる様子が示されている。
【0023】
スイッチS
Cは信号配線WR1及びWR2を信号配線WR3に接続するための連結スイッチである。スイッチS
Cは、信号配線WR1及びWR3間に設けられたスイッチS
C1と、信号配線WR2及びWR3間に設けられたスイッチS
C2と、から成る。スイッチS
C1の第1端は信号配線WR1に接続され、スイッチS
C1の第2端は信号配線WR3に接続される。故に、スイッチS
C1がオンであるとき信号配線WR1及びWR3間がスイッチS
C1を通じて導通する。スイッチS
C2の第1端は信号配線WR2に接続され、スイッチS
C2の第2端は信号配線WR3に接続される。故に、スイッチS
C2がオンであるとき信号配線WR2及びWR3間がスイッチS
C2を通じて導通する。尚、
図1では例として、スイッチS
C1及びS
C2がオフとされる様子が示されている。
【0024】
スイッチS
Sは、信号配線WR1及びWR2間を、信号配線WR3を介することなく、直接短絡するための短絡スイッチである。スイッチS
Sの第1端は信号配線WR1に接続され、スイッチS
Sの第2端は信号配線WR2に接続される。故に、スイッチS
Sがオンであるとき、信号配線WR1及びWR2間が信号配線WR3を介することなくスイッチS
Sを通じて導通する(短絡される)。尚、
図1では例として、スイッチS
Sがオフとされる様子が示されている。
【0025】
制御回路30によりスイッチSL、SH、SC1、SC2及びSSが、個別にオン又はオフに制御される。尚、任意のスイッチに関し、制御回路30が当該スイッチを或る注目した状態に制御するとは、制御回路30が当該スイッチの状態を当該注目した状態に設定することと同義である。
【0026】
コンパレータ20及び制御回路30はグランド電圧を基準に所定の電源電圧VDDに基づいて駆動する。電源電圧VDDは正の直流電圧である。電圧VHが電源電圧VDDであっても良いし、電圧VHと異なる直流電圧が電源電圧VDDであっても良い。
【0027】
コンパレータ20は信号配線WR3及びWR4に接続される。信号配線WR3に加わる電圧を比較電圧V1と称し、信号配線WR4に加わる電圧を比較電圧V2と称する。コンパレータ20は比較電圧V1及びV2を比較し、比較電圧V1及びV2の比較結果(高低関係)を示す比較結果信号SCMPを生成及び出力する。比較結果信号SCMPは“0”又は“1”の値を有する二値化信号である。コンパレータ20は非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子を有する。ここでは、コンパレータ20において反転入力端子が信号配線WR3に接続され且つ非反転入力端子が信号配線WR4に接続されるものとする(但し、その逆の接続関係であっても良い)。
【0028】
コンパレータ20は、“V1<V2”の成立時において“1”の値を有する比較結果信号SCMPを自身の出力端子から出力し、“V1>V2”の成立時において“0”の値を有する比較結果信号SCMPを自身の出力端子から出力する。“V1=V2”の成立時において比較結果信号SCMPは“0”又は“1”の値を有する。“V1>V2”は比較電圧V1が比較電圧V2よりも高いことを表し、“V1<V2”は比較電圧V1が比較電圧V2よりも低いことを表す。電圧等の物理量を含む他の式についても同様である。
【0029】
制御回路30は比較結果信号SCMPを受ける。制御回路30はAD変換動作を全体的に制御し、AD変換動作によって得られたデジタル出力信号Doutを出力する。制御回路30にはレジスタ31が設けられ、レジスタ31にデジタル出力信号Doutの値を格納することができる。制御回路30はDAC10に対して制御信号CNTDAC(DAC入力信号)を供給することで、スイッチS[1]~S[N]の状態を個別に制御する。また、制御回路30はスイッチSL、SH、SC1、SC2及びSSに対して制御信号(不図示)を供給することで、スイッチSL、SH、SC1、SC2及びSSの状態を個別に制御する。
【0030】
電圧生成回路40は比較電圧V1と対比されるべき比較電圧V2を生成し、生成した比較電圧V2を信号配線WR4に供給する。
【0031】
DAC10において、任意の整数iに関し、キャパシタC[i+1]の静電容量値はキャパシタC[i]の静電容量値よりも大きい。ここでは、
図5に示す如く、DAC10内のキャパシタC[i]は“2
i-1・C
UNT”の静電容量値を有するものとする。故に、DAC10において、任意の整数iに関し、キャパシタC[i+1]の静電容量値はキャパシタC[i]の静電容量値の2倍である。C
UNTは所定の単位容量値を表す。
【0032】
図6に、スイッチS[1]~[N]が全て信号入力状態にあるときにおける、DAC10の等価回路を示す。
図6において、キャパシタC
Lは、キャパシタC[1]~C[N]の内、信号配線WR1に接続される全キャパシタの合成容量である。
図6において、キャパシタC
Hは、キャパシタC[1]~C[N]の内、信号配線WR2に接続される全キャパシタの合成容量である。
【0033】
キャパシタC[1]~C[N]の内、信号配線WR1に接続されるキャパシタを、便宜上、第1種キャパシタと称し、信号配線WR2に接続されるキャパシタを、便宜上、第2種キャパシタと称する。従って、キャパシタC[i]が第1種キャパシタである場合にはキャパシタC[i]の信号配線端は信号配線WR1に接続され、キャパシタC[i]が第2種キャパシタである場合にはキャパシタC[i]の信号配線端は信号配線WR2に接続される。DAC10において、キャパシタC[1]~C[N]の一部は第1種キャパシタに属し、キャパシタC[1]~C[N]の他の一部は第2種キャパシタに属する。キャパシタC[1]~C[N]の内、第1種キャパシタに属するキャパシタの個数は1以上であれば任意であり、第2種キャパシタに属するキャパシタの個数は1以上であれば任意である。但し、キャパシタC[1]~C[N]は各々に第1種キャパシタ及び第2種キャパシタの何れかに属する。
【0034】
例えば、DAC10は
図7に示す第1接続構成を有していて良い。第1接続構成では、キャパシタC[N-1]及びC[N]が第1種キャパシタに属し、且つ、キャパシタC[1]~C[N-2]が第2種キャパシタに属する。或いは例えば、DAC10は
図8に示す第2接続構成を有していて良い。第2接続構成では、キャパシタC[N]が第1種キャパシタに属し、且つ、キャパシタC[1]~C[N-1]が第2種キャパシタに属する。或いは例えば、DAC10は
図9に示す第3接続構成を有していて良い。第3接続構成では、キャパシタC[N-1]及びC[N]が第2種キャパシタに属し、且つ、キャパシタC[1]~C[N-2]が第1種キャパシタに属する。或いは例えば、DAC10は
図10に示す第4接続構成を有していて良い。第4接続構成では、キャパシタC[N]が第2種キャパシタに属し、且つ、キャパシタC[1]~C[N-1]が第1種キャパシタに属する。
【0035】
図7の第1接続構成が採用された場合、キャパシタC
L及びC
H間の容量比は約3:1となる(
図6も参照)。キャパシタC
L及びC
H間の容量比とは、詳細には、キャパシタC
Lの静電容量値とキャパシタC
Hの静電容量値との比を指す。
図8の第2接続構成が採用された場合、キャパシタC
L及びC
H間の容量比は約1:1となる。
図9の第3接続構成が採用された場合、キャパシタC
L及びC
H間の容量比は約1:3となる。
図10の第4接続構成が採用された場合、キャパシタC
L及びC
H間の容量比は約1:1となる。この他、キャパシタC[1]~C[N]の第1種キャパシタ及び第2種キャパシタへの分類方法は任意であって良い。
【0036】
図11にAD変換動作のフローチャートを示す。AD変換動作では、まずステップS1のサンプリング動作が行われ、その後、ステップS2の状態遷移動作を経てからステップS3の逐次比較動作が行われ、最後にステップS4の結果出力動作が行われる。以下、サンプリング動作が行われる期間をサンプリング期間と称し、逐次比較動作が行われる期間を逐次比較期間と称する。例えば、ADコンバータ1に対し外部装置(不図示)からAD変換指令信号が入力されたことを契機に、制御回路30はステップS1からステップS2への遷移を発生させ、ステップS2~S4の動作を順次実行する。
【0037】
図12はサンプリング期間におけるADコンバータ1の状態を示す。サンプリング期間において、制御回路30は、DAC10内の全スイッチS[1]~S[N]を信号入力状態に制御し、且つ、スイッチS
L及びS
Hをオンに制御し、且つ、スイッチS
C1、S
C2及S
Sをオフに制御する。
【0038】
サンプリング期間において、配線WRinがスイッチアレイ12を介してキャパシタアレイ11に接続されることで、アナログ入力信号Ainに応じた電荷がキャパシタアレイ11中の各キャパシタ(C[1]~C[N])に蓄積される。この際、制御回路30はスイッチSL及SHをオンに制御することで信号配線WR1に電圧VLを与え且つ信号配線WR2に電圧VHを与える。結果、ドライバDRVと電圧VHを生成及び出力する直流電圧源(不図示)との協働により、キャパシタアレイ11中の各キャパシタに電荷が蓄積される。サンプリング期間はAD変換の実行を待機している期間に相当し、サンプリング期間においてコンパレータ20及び電圧生成回路40の動作は停止している。このため、サンプリング期間はパワーダウン期間と称され得る。
【0039】
ステップS2における状態遷移動作の流れを
図13に示す。
図13の例では、状態遷移動作において、ステップS21、S22、S23の動作が、この順番で実行される。但し、変形としてステップS21及びS22の動作は同時に行われても良い。ステップS21では、DAC10のスイッチS[1]~S[N]の状態が全て信号入力状態から開放状態に切り替えられる。
【0040】
ステップS22では、スイッチS
L及びS
Hの状態をオンからオフに切り替える第1切替動作と、スイッチS
Sの状態をオフからオンに切り替える第2切替動作と、スイッチS
C1及びS
C2の状態をオフからオンに切り替える第3切替動作と、が実行される。典型的には、ステップS22において
図14に示す如く第1、第2及び第3切替動作を全て同時に実行して良い。ステップS22において、第1切替動作及び第2切替動作を同時に行ってから第3切替動作を行うようにしても良い。
【0041】
即ち、制御回路30は、サンプリング期間の後、スイッチSS、スイッチSC1及びSC2を同時にオフからオンに切り替えても良いし、スイッチSSをオフからオンに切り替えてからスイッチSC1及びSC2をオフからオンに切り替えても良い。
【0042】
ステップS21及びS22の後、ステップS3の逐次比較動作が完了するまで、スイッチSL及びSHはオフ状態に維持され、且つ、スイッチSS、SC1及びSC2はオン状態に維持される。但し、スイッチSSに関しては、スイッチSSがオンに切り替えられた後、逐次比較動作の開始前にスイッチSSがオフに切り替えられても良い。これについては後にも説明される。ステップS23では、DAC10のスイッチS[1]~S[N]の状態がハイサイド接続状態又はローサイド接続状態に切り替えられる。
【0043】
図15に、ステップS21~S23の動作を経た後のADコンバータ1の状態を示す。
図15の例では、ステップS23にてDAC10のスイッチS[1]~S[N]の状態が全てローサイド接続状態に切り替えられることが想定されている。尚、ステップS23の動作は省略され得る。
【0044】
図16にステップS3の逐次比較動作のフローチャートを示す。
図17にレジスタ31(
図1参照)の構造を示す。レジスタ31はNビット分の記憶容量を有し、値Rg[1]~Rg[N]を格納する。値Rg[1]~Rg[N]は夫々に“0”又は“1”である。任意の整数iに関し、値Rg[i+1]は値Rg[i]の上位側ビットの値である。逐次比較動作において値Rg[1]~Rg[N]が上位ビット側から1ビットずつ決定され、決定された値Rg[i]がデジタル出力信号Doutにおける第i番目のビットの値となる。
【0045】
逐次比較期間において電圧生成回路40は所定の比較電圧V2を生成及び出力する。比較電圧V2は、電圧VH及びVLと、キャパシタCL及びCH間の容量比と、に応じて設定される。ここでは、電圧VLが0Vであることを想定しているため、比較電圧V2は、電圧VHと、キャパシタCL及びCH間の容量比と、に応じて設定される
【0046】
逐次比較期間においてスイッチS[1]~S[N]が個別にハイサイド接続状態又はローサイド接続状態に設定される。サンプリング期間中にキャパシタアレイ11に蓄積された電荷が逐次比較期間中にキャパシタC[1]~C[N]に分配される。分配の状態は逐次比較期間中のスイッチS[1]~S[N]の状態に依存し、故に逐次比較期間中のスイッチS[1]~S[N]の状態に依存して比較電圧V1が変化する。制御回路30は、逐次比較動作において(換言すれば逐次比較期間において)、比較結果信号SCMPに基づきバイナリサーチによりスイッチアレイ12の状態を順次切り替えながら値Rg[1]~Rg[N](即ちデジタル出力信号Doutの値)をビットごとに決定する。
【0047】
図16の逐次比較動作では、まずステップS31にて、制御回路30にて管理される変数jに対しNの値が代入される。その後、ステップS32に進む。ステップS32において、制御回路30はスイッチS[j]をハイサイド接続状態に制御し且つスイッチS[1]~S[j-1]を全てローサイド接続状態に制御する。但し、“j=1”の状態でステップS32の処理が実行される場合にあっては、スイッチS[1]~S[j-1]は存在しないので、ステップS32にて単にスイッチS[1]がハイサイド接続状態に制御される。例として
図18に、“j=N”であるときにおけるステップS32での各スイッチの状態を示す。上述の説明から明らかなように、逐次比較期間において、制御回路30はスイッチS
L及びS
Hをオフに制御し、且つ、スイッチS
C1及びS
C2をオンに制御する。スイッチS
C1及びS
C2のオンにより信号配線WR1及びWR2が信号配線WR3に導通する。
図18ではスイッチS
Sがオンとされているが、スイッチS
Sは逐次比較期間にてオフとされ得る。
【0048】
ステップS32に続くステップS33において、制御回路30は、現時点の比較結果信号SCMPの値を取得する(即ち直近のステップS32の状態にてコンパレータ20から出力される比較結果信号SCMPの値を取得する)。取得した値が“1”であれば(ステップS33のY)ステップS34に進んで制御回路30はステップS34及びS35の処理を行う一方、取得した値が“0”であれば(ステップS33のN)ステップS36に進んで制御回路30はステップS36及びS37の処理を行う。
【0049】
ステップS34において制御回路30は値Rg[j]を“1”に決定する。続くステップS35において制御回路30はスイッチS[j]をハイサイド接続状態で維持する。以後、
図16の逐次比較動作が終了するまでスイッチS[j]はハイサイド接続状態で維持される。ステップS35の後、ステップS38に進む。ステップS35では実質的に何も実行されないので、ステップS35は省略されても良い。
【0050】
ステップS36において制御回路30は値Rg[j]を“0”に決定する。続くステップS37において制御回路30はスイッチS[j]の状態をハイサイド接続状態からローサイド接続状態に切り替える。以後、
図16の逐次比較動作が終了するまでスイッチS[j]はローサイド接続状態で維持される。ステップS37の後、ステップS38に進む。
【0051】
ステップS38において制御回路30は変数jが1であるかを確認する。変数jが1でない場合には(ステップS38のN)、ステップS39に進み、変数jより1を減算してからステップS32に戻ってステップS32及びそれ以降の処理を繰り返す。例えば、2回目のステップS32の処理では、スイッチS[N-1]がハイサイド接続状態に設定され且つスイッチS[1]~S[N-1]がローサイド接続状態に設定されることになる。この際、1回目のステップS33にて“SCMP=1”であったならば2回目のステップS32にてスイッチS[N]はハイサイド接続状態とされ、1回目のステップS33にて“SCMP=0”であったならば2回目のステップS32にてスイッチS[N]はローサイド接続状態とされる。
【0052】
ステップS32~S37から成る処理を単位比較動作と称する。そうすると、逐次比較動作は第1~第N単位比較動作を含む。“j=N”のときに実行される単位比較動作が第N単位比較動作であり、“j=N-1”のときに実行される単位比較動作が第(N-1)単位比較動作であり、・・・、“j=1”のときに実行される単位比較動作が第1単位比較動作である。第j単位比較動作において値Rg[j]が決定される、即ちデジタル出力信号Doutの第j番目のビットの値が決定される。
【0053】
ステップS38において“j=1”である場合(ステップS38のY)、
図16の逐次比較動作を終了する。この段階では、値Rg[1]~Rg[N]が全て決定済みである。
【0054】
ステップS4(
図11参照)の結果出力動作において、制御回路30は、ステップS3の逐次比較動作にて決定された値Rg[1]~Rg[N]を有するデジタル信号をデジタル出力信号Doutとして出力する。デジタル出力信号Doutを利用する任意の回路(不図示)に対してデジタル出力信号Doutが出力される。ステップS4の結果出力動作は、ステップS3の逐次比較動作の実行中に開始されても良い。即ち逐次比較動作にて値Rg[N]が決定され次第、制御回路30は、デジタル出力信号Dout中の値Rg[N]を出力して良い。同様に、逐次比較動作にて値Rg[N-1]が決定され次第、制御回路30は、デジタル出力信号Dout中の値Rg[N-1]を出力して良い。値Rg[N-2]~Rg[1]についても同様である。
【0055】
尚、逐次比較動作が終了すると又は結果出力動作が終了すると、サンプリング期間(換言すればパワーダウン期間)への移行が発生し、制御回路30により各スイッチの状態は
図12に示す状態(即ちサンプリング期間における状態)に設定される。
【0056】
ここで、本実施形態に係るADコンバータ1との対比に供される第1参考例を説明する。
図19に第1参考例に係るADコンバータ1100の一部構成及び動作概要を示す。ADコンバータ1100では、DAC1110内の全キャパシタの各一端が配線WRaに共通接続され、配線WRaの電圧V1aをグランド電圧に固定した状態でサンプリングを行う。ADコンバータ1100において、逐次比較を行う際には、昇圧回路1150を用いて電圧V1aを上昇させ、上昇後の電圧V1aをコンパレータ1120にて他の所定電圧と比較する。昇圧回路1150が設けられることにより、コンパレータ1120に対して負電源を用意する必要が無い(昇圧回路1150が無ければ、逐次比較の際に電圧V1aが負となり得るので、負電源が必要となる)。
【0057】
図19の第1参考例では、昇圧回路1150が必須となる。また、サンプリング期間にてDAC1110内の各キャパシタに蓄積されるべき電荷は、全て、ドライバ(ADコンバータ1100に対してアナログ入力信号を供給するドライバDRVa)が供給することになる。このため、ドライバの負荷が大きい。
【0058】
一方、本実施形態に係るADコンバータ1では、サンプリング期間において、ドライバDRVと電圧VHを生成及び出力する直流電圧源(不図示)との協働により、キャパシタアレイ11中の各キャパシタに電荷が蓄積される。つまり、ドライバDRVと電圧VHを生成及び出力する直流電圧源とで、電荷供給が分担される。このため、第1参考例との比較においてドライバDRVの負荷が小さくなる。これは、ドライバDRVの小型化又は省電力化に繋がる、或いは、ドライバDRVに要求されるGB積の軽減に繋がる。加えて、第1参考例では必要となる昇圧回路も不要である。
【0059】
図20に、キャパシタ型DACを有するADコンバータのサンプリング時におけるモデルを示す。キャパシタ型DACを構成する全キャパシタの総容量をC
SUMで表す。そして、サンプリング時に各キャパシタの両端間に加わる電圧を“Vin-Vsh”で表す。Vinはドライバが供給するアナログ入力信号の電圧値を表す。従って、ADコンバータ1において、Vinはアナログ入力信号Ainの電圧値を表す。サンプリング時にドライバがキャパシタ型DACに供給すべき電荷量Qは“Q=C
SUM(Vin-Vsh)”で表され、サンプリング時には総容量C
SUM分のキャパシタにて電荷量Qが蓄積される。
【0060】
第1参考例に係るADコンバータ1100では“Vsh=0”であるため、“Q=C
SUM・Vin”である。これに対し、本実施形態に係るADコンバータ1では“Vsh>0”となるため、“Q<C
SUM・Vin”であり、故にドライバの負荷が軽減される。ADコンバータ1において、電圧Vshは、電圧V
H及びV
LとキャパシタC
L及びC
H間の容量比とで定まる。ここでは、電圧V
Lが0Vであることを想定しているため、電圧Vshは、電圧V
HとキャパシタC
L及びC
H間の容量比とで定まる。例えば、電圧V
Hが5Vであって、且つ、キャパシタC
L及びC
H間の容量比が“3:1”である場合(
図7の第1接続構成に対応)、“5V×1/(1+3)=1.25V”より、電圧Vshは1.25Vとなる。
【0061】
図21にサンプリング期間におけるADコンバータ1の一部等価回路を示す。ADコンバータ1において、サンプリング時にドライバDRVがDAC10に供給すべき電荷量Qは、下記式(1)にて表される。サンプリング時にはキャパシタC
L及びC
Hの合成容量にて電荷量Qが蓄積される。キャパシタC
L及びC
H間の容量比が1:3である場合、式(1)は式(2)に変形される。
Q=(0-Vin)・C
L+(V
H-Vin)・C
H ・・・(1)
Q=V
H・C
H-4・Vin・C
H ・・・(2)
【0062】
図22に逐次比較期間におけるADコンバータ1の一部等価回路を示す。但し、
図22では、スイッチアレイ12における全スイッチがローサイド接続状態にあることが想定されている。
図22の状態において、キャパシタC
L及びC
Hの合成容量にて蓄積される電荷量Q’は、下記式(3)にて表される。キャパシタC
L及びC
H間の容量比が3:1である場合、式(3)は式(4)に変形される。
Q’=(V1-0)・C
L+(V1-0)・C
H ・・・(3)
Q’=4・V1・C
H ・・・(4)
【0063】
電荷量保存の法則によりQ=Q’であるから、キャパシタC
L及びC
H間の容量比が3:1である場合、式(2)及び(4)により式(5)が成立し、式(5)を整理することで式(6)が得られる。全キャパシタを仮に第1種キャパシタに設定した場合には、式(6)の右辺は“-Vin”となる。一部のキャパシタを第2種キャパシタに設定することで、昇圧回路(
図19の昇圧回路1150に対応)を設けた場合と同様の効果が得られる。式(6)における電圧V
H/4は昇圧量に相当する。
V
H・C
H-4・Vin・C
H=4・V1・C
H ・・・(5)
V1=V
H/4-Vin ・・・(6)
【0064】
尚、逐次比較期間においてスイッチアレイ12における全スイッチがローサイド接続状態に設定される状態は、アナログ入力信号Ainがアナログ入力信号Ainの変動範囲の最低レベル近辺(従ってグランドのレベル近辺)にある状態に相当する。このとき、Vinは概ね0Vであるので、“V1>0”である。
【0065】
次に、本実施形態に係るADコンバータ1との対比に供される第2参考例を説明する。
図23に第2参考例に係るADコンバータ1200の一部構成及び動作概要を示す。ADコンバータ1200では、DAC1210内の全キャパシタの各一端が配線WRbに共通接続され、配線WRbの電圧V1bを基準電圧Vrefに固定した状態でサンプリングを行う。基準電圧Vrefは正の直流電圧値を有し、基準電圧源1250にて生成される。ADコンバータ1200において、逐次比較を行う際には、基準電圧源1250及び配線WRb間を遮断し、電圧V1bをコンパレータ1220にて他の所定電圧と比較する。基準電圧源1250の利用により逐次比較の際に電圧V1bが負にならないため、コンパレータ1220に対して負電源を用意する必要が無い。
【0066】
但し、
図23の第2参考例では、基準電圧源1250が必須となり、且つ、サンプリング中も(従ってパワーダウン中も)基準電圧源1250を常時駆動させる必要がある。また、サンプリング期間にてDAC1210内の各キャパシタに蓄積されるべき電荷は、全て、ドライバ(ADコンバータ1200に対してアナログ入力信号を供給するドライバDRVb)が供給することになる。このため、ドライバの負荷が大きい。
【0067】
一方、本実施形態に係るADコンバータ1では、サンプリング期間において、ドライバDRVと電圧VHを生成及び出力する直流電圧源(不図示)との協働により、キャパシタアレイ11中の各キャパシタに電荷が蓄積される。つまり、ドライバDRVと電圧VHを生成及び出力する直流電圧源とで、電荷供給が分担される。このため、第2参考例との比較においてドライバDRVの負担が小さくなる。これは、ドライバDRVの小型化又は省電力化に繋がる、或いは、ドライバDRVに要求されるGB積の軽減に繋がる。加えて、第2参考例では必要となる基準電圧源(1250)もADコンバータ1では不要であり、基準電圧源を常時駆動するための電力消費も発生しない。
【0068】
以下、複数の実施例の中で、ADコンバータ1に関わる応用技術又は変形技術等を説明する。ADコンバータ1に関して上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0069】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。ADコンバータ1では、サンプリング期間においてキャパシタC
Lに対し電圧V
Lを基準に電荷が蓄積され、キャパシタC
Hに対し電圧V
Hを基準に電荷が蓄積される(
図21参照)。サンプリング期間での蓄積電荷に基づく信号配線WR1及びWR2の電圧が状態遷移動作(
図13参照)の中で平均化されることで、逐次比較動作にて比較電圧V2と対比されるべき比較電圧V1が生成される。平均化が完了するまで逐次比較動作を正しく行うことができない。
【0070】
スイッチS
Sを設けることで上記平均化が短時間で完了する。スイッチS
Sのサイズを増大させれば上記平均化に必要な時間が短縮され、サンプリングの後、速やかに逐次比較動作を開始することができる。制御回路30は、
図13のステップS22にてスイッチS
Sをオフからオンに切り替えた後、逐次比較期間においてスイッチS
Sをオンに維持して良い(即ち逐次比較動作が完了するまでスイッチS
Sをオンに維持して良い)。
【0071】
但し、制御回路30は、ステップS22にてスイッチS
Sをオフからオンに切り替えた後、逐次比較動作の開始前にスイッチS
Sをオフに切り替えるようにしても良い。第1実施例では、以下、この方法について説明する。この場合、逐次比較期間においてスイッチS
Sがオフに維持される。具体的には、
図24を参照し、制御回路30は、ステップS22にてスイッチS
Sをオフからオンに切り替え、その後、所定時間t
SSが経過してからスイッチS
Sをオンからオフに切り替える。その後に、制御回路30は逐次比較動作を開始する。
【0072】
スイッチSSのサイズの増大により上記平均化に必要な時間が短縮される。スイッチのサイズとは、当該スイッチを構成する半導体スイッチング素子の大きさを指す。但し、スイッチSSのサイズを大きくした場合には特に、スイッチSSをスイッチングさせたときに発生する注入電荷がノイズ要因となり得る。即ち、スイッチSSをオンに切り替えたときに発生する注入電荷、及び、スイッチSSをオフに切り替えたときに発生する注入電荷は、共に、比較電圧V1に変動(オフセット)を与え得る。但し、前者の注入電荷が比較電圧V1に与える変動の向きと、後者の注入電荷が比較電圧V1に与える変動の向きとは、互いに逆である。このため、スイッチSSを一旦オンに切り替えた後にオフに切り替えれば、注入電荷の影響がキャンセルされる。
【0073】
スイッチSL及びSHのオンからオフへの切り替えタイミングとスイッチSSのオフからオンへの切り替えタイミングは、同時であっても良いし、或いは、前者の切り替えタイミングから若干遅れて後者の切り替えタイミングが発生しても良い。
【0074】
スイッチS
Sのオフからオンへの切り替えタイミングとスイッチS
C1及びS
C2のオフからオンへの切り替えタイミングは同時であっても良いし、
図25に示す如く、スイッチS
Sをオフからオンへ切り替えてから、所定の微小時間Δtが経過した後にスイッチS
C1及びS
C2をオフからオンへ切り替えるようにしても良い。
【0075】
即ち、第1実施例に係る制御回路30は、サンプリング期間の後、スイッチS
S、スイッチS
C1及びS
C2を同時にオフからオンに切り替えても良いし、スイッチS
Sをオフからオンに切り替えてからスイッチS
C1及びS
C2をオフからオンに切り替えても良い。
図25では“Δt<t
SS”が想定されているが、“Δt=t
SS”又は“Δt>t
SS”であっても良い。何れにせよ、逐次比較動作が開始される時点では、スイッチS
Sはオフ状態であり且つスイッチS
C1及びS
C2はオン状態である。尚、スイッチS
SのサイズはスイッチS
C1及びS
C2の各サイズより大きくて良い。
【0076】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。
図1と共に
図20を再度参照する。実際とは異なるが、
図1の構成において仮に“Vsh=V
L=0”である場合、サンプリング時に“Vin=V
H”であれば、ドライバDRVは“Q=C
SUM(Vin-Vsh)=C
SUM・V
H”に相当する正の電荷をDAC10中のキャパシタアレイ11に供給する必要がある。逆に、
図1の構成において仮に“Vsh=V
H”である場合、サンプリング時に“Vin=V
L=0”であれば、ドライバDRVは“Q=C
SUM(Vin-Vsh)=C
SUM・V
H”に相当する負の電荷をDAC10中のキャパシタアレイ11に供給する必要がある。
【0077】
他方、
図1の構成において仮に“Vsh=(V
H+V
L)/2=V
H/2”である場合、サンプリング時にドライバDRVがキャパシタアレイ11に供給すべき最大電荷量は、“C
SUM・V
H”の半分になる。“Vsh=(V
H+V
L)/2=V
H/2”は、キャパシタC
L及びC
H間の容量比が1であるときに成立する。このため、キャパシタC
L及びC
H間の容量比が1に近いほどドライバDRVの負荷軽減効果が高まると言える。
【0078】
故に、ドライバDRVの負荷軽減効果を優先する場合には、キャパシタCL及びCH間の容量比を1に設定する又は1に近づけると良い。但し、この場合において“VDD<VH”であったならば、逐次比較時におけるコンパレータ20に入力される比較電圧V1が不適正に高くなることがある。例えば、(VH,VL)=(5V、0V)であって且つキャパシタCL及びCH間の容量比が1であるとき、逐次比較時における比較電圧V1は2.5Vを中心に、サンプリング時の電圧Vinに応じて変動する。この場合において例えば電源電圧VDDが3.0Vであれば、逐次比較時に比較電圧V1が3.0Vを超えることもあるので、電圧比較を行うことができない。
【0079】
これを考慮し、第2実施例に係るADコンバータ1には、
図26に示す如く降圧回路50が追加される。降圧回路50の追加を除き、第2実施例に係るADコンバータ1は、上述してきたADコンバータ1と同様の構成を有する。降圧回路50は配線WR
H、WR
L及びWR2に接続される。降圧回路50は降圧用キャパシタ51と切替スイッチ52を備える。降圧用キャパシタ51は第1端及び第2端を有する。降圧用キャパシタ51の第1端は信号配線WR2に接続される。
【0080】
降圧用キャパシタ51の第2端と配線WRH及びWRLとの間に切替スイッチ52が設けられる。具体的には、切替スイッチ52は降圧用キャパシタ51の第2端に接続されると共に配線WRH及びWRLに接続される。切替スイッチ52は、制御回路30の制御の下、配線WRH又はWRLを降圧用キャパシタ51の第2端に接続(導通)させる。配線WRHが切替スイッチ52を通じて降圧用キャパシタ51の第2端に接続されたとき、電圧VHが降圧用キャパシタ51の第2端に加わる。配線WRLが切替スイッチ52を通じて降圧用キャパシタ51の第2端に接続されたとき、電圧VLが降圧用キャパシタ51の第2端に加わる。切替スイッチ52はマルチプレクサであって良い。
【0081】
図27にサンプリング期間及び逐次比較期間における降圧回路50の状態を示す。サンプリング期間において、制御回路30は、配線WR
Hを切替スイッチ52を通じて降圧用キャパシタ51の第2端に接続(導通)させ、これによって降圧用キャパシタ51の第2端に電圧V
Hを与える。逐次比較期間において、制御回路30は、配線WR
Lを切替スイッチ52を通じて降圧用キャパシタ51の第2端に接続(導通)させ、これによって降圧用キャパシタ51の第2端に電圧V
Lを与える。
【0082】
降圧用キャパシタ51の第2端の接続先を配線WR
Hから配線WR
Lに切り替える第4切替動作は、
図13のステップ22にて行われる。第4切替動作は第1切替動作と同時に行われて良い。典型的には例えば第1~第4切替動作を同時に行って良い。但し、第1実施例に示した内容が本実施例にも適用されても良い。
【0083】
第4切替動作の実行により、降圧回路50が設けられていない構成と比べて、逐次比較期間における比較電圧V1が低下する。電源電圧VDDを考慮し、所望の低下量が得られるよう(逐次比較期間においてコンパレータ20が正しく電圧比較を行うことができるよう)降圧用キャパシタ51の静電容量値を設定すれば良い。
【0084】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。第3実施例では、上述の事項に対する補足事項又は変形技術等を説明する。
【0085】
ADコンバータ1においてスイッチSSを省略しても良い。
【0086】
電圧VLが0Vであることを想定したが、電圧VLは0V以外でも良い。但し、電圧VLは電圧VHよりも低い。
【0087】
キャパシタC[1]~C[N]の任意の何れかであるキャパシタC[i]について、キャパシタC[i]を2つに分割し、これによってキャパシタC[i]をキャパシタC
1[i]及びC
2[i]にて構成しても良い。そして、キャパシタC
1[i]を第1種キャパシタとして且つキャパシタC
2[i]を第2種キャパシタとしてDAC10に組み込むようにしても良い。キャパシタC
1[i]及びC
2[i]の合成容量値は“2
i-1・C
UNT”である(
図5参照)。従って例えば、キャパシタC
1[i]及びC
2[i]の夫々に“2
i-1・C
UNT/2”の静電容量値を持たせることができる。“1≦i≦N”を満たす全ての整数iに関し、キャパシタC
1[i]及びC
2[i]の夫々に“2
i-1・C
UNT/2”の静電容量値を持たせたならば、キャパシタC
L及びC
H間の容量比は1:1となる。キャパシタC
L及びC
H間の容量比が1:1と相違するよう、キャパシタC
1[i]及びC
2[i]の静電容量値を互いに相違させても良い。
【0088】
ADコンバータ1は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体からADコンバータ1の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた半導体装置(電子部品)である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置が形成される。ADコンバータ1に設けられる各回路及び各素子は半導体集積回路により構成されて良い。
【0089】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0090】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0091】
本開示の一側面に係る逐次比較型AD変換回路は、キャパシタ型DAC(10)を有し、アナログ入力信号(Ain)をデジタル出力信号(Dout)に変換するよう構成される逐次比較型AD変換回路(1)であって、前記キャパシタ型DACは、複数のキャパシタを有するキャパシタアレイ(11)、及び、各キャパシタの第1端に対して個別に第1基準電圧(VL)、前記第1基準電圧よりも高い第2基準電圧(VH)又は前記アナログ入力信号を選択的に与えるよう構成されたスイッチアレイ(12)を有し、前記複数のキャパシタの一部は第1種キャパシタに属し、前記複数のキャパシタの残部は第2種キャパシタに属し、前記第1種キャパシタの第2端は第1信号配線(WR1)に接続される一方で、前記第2種キャパシタの第2端は第2信号配線(WR2)に接続され、前記第1信号配線と前記第1基準電圧が加わる第1基準配線(WRL)との間に設けられる第1基準スイッチ(SL)と、前記第2信号配線と前記第2基準電圧が加わる第2基準配線(WRH)との間に設けられる第2基準スイッチ(SH)と、前記第1信号配線及び前記第2信号配線の夫々と第3信号配線(WR3)との間に設けられる連結スイッチ(SC)と、コンパレータ(20)と、前記スイッチアレイ、前記第1基準スイッチ、前記第2基準スイッチ及び前記連結スイッチの状態を制御するよう構成された制御回路(30)と、を備え、サンプリング期間において、前記制御回路は、前記第1基準スイッチ及び前記第2基準スイッチをオンに制御することで前記第1信号配線に前記第1基準電圧を与える一方で前記第2信号配線に前記第2基準電圧を与え、且つ、前記連結スイッチをオフに制御し、前記サンプリング期間後の逐次比較期間において、前記制御回路は、前記第1基準スイッチ及び前記第2基準スイッチをオフに制御し、且つ、前記連結スイッチをオンに制御することで前記第1信号配線及び前記第2信号配線の夫々を前記第3信号配線に導通させ、前記コンパレータは、前記逐次比較期間において、前記第3信号配線に加わる第1比較電圧(V1)を所定の第2比較電圧(V2)と比較して比較結果信号(SCMP)を生成し、前記制御回路は、前記サンプリング期間において前記スイッチアレイの状態制御を通じ前記複数のキャパシタにおける複数の第1端に対し前記アナログ入力信号を与え、前記逐次比較期間において前記スイッチアレイの状態制御を通じ前記複数の第1端に対し個別に前記第1基準電圧又は前記第2基準電圧を与えつつ前記比較結果信号に基づき前記デジタル出力信号の値を決定する構成(第1の構成)である。
【0092】
これにより、逐次比較型AD変換回路に対してアナログ入力信号を供給する回路の負荷を軽減することができる。
【0093】
上記第1の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記第1信号配線及び前記第2信号配線間を直接短絡するための短絡スイッチ(SS)が、前記連結スイッチとは別に設けられ、前記制御回路は、前記サンプリング期間において前記短絡スイッチをオフに制御し、前記逐次比較期間において前記短絡スイッチをオンに制御する構成(第2の構成)であっても良い。
【0094】
サンプリング期間での各キャパシタの蓄積電荷に基づく第1及び第2信号配線の電圧を平均化することで、第1比較電圧を生成する。この際、短絡スイッチを利用することで、平均化に必要な時間を短縮することができる。
【0095】
上記第2の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記制御回路は、前記サンプリング期間の後、前記短絡スイッチ及び前記連結スイッチを同時にオフからオンに切り替える、又は、前記短絡スイッチをオフからオンに切り替えてから前記連結スイッチをオフからオンに切り替える構成(第3の構成)であっても良い。
【0096】
上記第1の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記第1信号配線及び前記第2信号配線間を直接短絡するための短絡スイッチ(SS)が、前記連結スイッチとは別に設けられ、前記制御回路は、前記サンプリング期間において前記短絡スイッチをオフに制御し、前記サンプリング期間を経て前記短絡スイッチを所定時間(tSS)だけオンに制御した後、前記逐次比較期間前に前記短絡スイッチをオンからオフに切り替える構成(第4の構成)であっても良い。
【0097】
サンプリング期間での各キャパシタの蓄積電荷に基づく第1及び第2信号配線の電圧を平均化することで、第1比較電圧を生成する。この際、短絡スイッチを利用することで、平均化に必要な時間を短縮することができる。短絡スイッチのスイッチングにより発生する注入電荷がノイズ要因となり得るが、第4の構成の如く、短絡スイッチをオフからオンを経てオフに戻してから逐次比較期間に移行することで、注入電荷の影響をキャンセルすることができる。
【0098】
上記第4の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記制御回路は、前記短絡スイッチ及び前記連結スイッチを同時にオフからオンに切り替える、又は、前記短絡スイッチをオフからオンに切り替えてから前記連結スイッチをオフからオンに切り替える構成(第5の構成)であっても良い。
【0099】
上記第1~第5の構成の何れかに係る逐次比較型AD変換回路において、降圧用キャパシタ(51)を有し且つ前記第1基準配線及び前記第2基準配線に接続された降圧回路(50)を更に備え、前記降圧用キャパシタの第1端は前記第2信号配線に接続され、前記制御回路は、前記降圧用キャパシタの第2端に対し、前記サンプリング期間では前記第2基準電圧を与え、前記逐次比較期間では前記第1基準電圧を与える構成(第6の構成)であっても良い。
【0100】
降圧回路により、逐次比較期間における第1比較電圧のレベルを、コンパレータの電源電圧に合わせた適正レベルに調整することできる。
【0101】
上記第1~第6の構成の何れかに係る逐次比較型AD変換回路において、前記制御回路は、前記逐次比較期間において前記比較結果信号に基づき、バイナリサーチにより前記スイッチアレイの状態を順次切り替えながら前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定する構成(第7の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0102】
1 ADコンバータ
10 DAC
11 キャパシタアレイ
12 スイッチアレイ
20 コンパレータ
30 制御回路
31 レジスタ
40 電圧生成回路
50 降圧回路
51 降圧用キャパシタ
52 切替スイッチ
C[1]~C[N] キャパシタ
S[1]~S[N] スイッチ
SL、SH スイッチ(基準スイッチ)
SC、SC1、SC2 スイッチ(連結スイッチ)
SS スイッチ(短絡スイッチ)
VH、VL 電圧(基準電圧)
V1、V2 比較電圧
WRH、WRL、WRin 配線
WR1、WR2、WR3、WR4 信号配線
Ain アナログ入力信号
Dout デジタル出力信号
TCOM 共通端子
Ta、Tb、Tc 切替端子
CL、CH キャパシタ
1100、1200 ADコンバータ
1110、1210 DAC
1120、1220 コンパレータ
1150 昇圧回路
1250 基準電圧源