(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080136
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240606BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240606BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240606BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 653C
H01L29/78 653D
H01L29/78 652J
H01L29/78 658F
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193062
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】大瀬 直之
(57)【要約】
【課題】バリアメタルのバリア性を向上させ、しきい値変動を抑制できる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置は、第1導電型の出発基板1と、第1導電型の第1半導体層2と、第2導電型の第2半導体層3と、第1導電型の第1半導体領域7と、ゲート絶縁膜9と、ゲート電極10と、層間絶縁膜11と、オーミック電極13と、オーミック電極13および層間絶縁膜11の表面に設けられたバリアメタル20と、バリアメタル20の表面に設けられた表面電極15と、裏面電極14と、を備える。バリアメタル20は、オーミック電極13および層間絶縁膜11の表面で、第1TiN膜、Ti膜、第2TiN膜の3層構造であり、第1TiN膜のTiNの結晶粒径は、第2TiN膜のTiNの結晶粒径よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の出発基板のおもて面側に設けられた、前記出発基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の、前記出発基板側に対して反対側の表面層に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の、前記出発基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域および前記第2半導体層の表面にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜と、
前記第2半導体層および前記第1半導体領域の表面に設けられたオーミック電極と、
前記オーミック電極および前記層間絶縁膜の表面に設けられたバリアメタルと、
前記バリアメタルの表面に設けられた表面電極と、
前記出発基板の裏面に設けられた裏面電極と、
を備え、
前記バリアメタルは、前記オーミック電極および前記層間絶縁膜の表面で、第1TiN膜、Ti膜、第2TiN膜の3層構造であり、
前記第1TiN膜のTiNの結晶粒径は、前記第2TiN膜のTiNの結晶粒径よりも大きいことを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第1TiN膜は、TiN(200)の配向性を有し、
前記第2TiN膜は、TiN(200)の配向性を有しないことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記Ti膜の膜厚は、20nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記オーミック電極は、NiSiで構成され、
前記第1TiN膜は、前記NiSiと接することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第2TiN膜と前記表面電極との間に、第2Ti膜を備えることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通して前記第1半導体層に達するトレンチをさらに含み、
前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極は、前記トレンチの内部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
第1導電型の出発基板のおもて面側に、前記出発基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層を形成する第1工程と、
前記第1半導体層の、前記出発基板側に対して反対側の表面層に第2導電型の第2半導体層を形成する第2工程と、
前記第2半導体層の、前記出発基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域を形成する第3工程と、
前記第1半導体領域および前記第2半導体層の表面にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第5工程と、
前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜を形成する第6工程と、
前記第2半導体層および前記第1半導体領域の表面にオーミック電極を形成する第7工程と、
前記オーミック電極および前記層間絶縁膜の表面に一様に第1TiN膜を成膜する第8工程と、
前記第1TiN膜上にTi膜を形成する第10工程と、
前記Ti膜上に第2TiN膜を形成し、前記第1TiN膜、前記Ti膜、前記第2TiN膜の3層構造のバリアメタルを形成する第11工程と、
前記バリアメタルの表面に表面電極を形成する第12工程と、
前記出発基板の裏面に裏面電極を形成する第13工程と、
を含み、
前記第1TiN膜のTiNの結晶粒径は、前記第2TiN膜のTiNの結晶粒径よりも大きいことを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第8工程における前記第1TiN膜の成膜温度は、前記第11工程における前記第2TiN膜の成膜温度よりも高温であることを特徴とする請求項7に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第8工程の後、前記第10工程の前に、前記第1TiN膜の熱処理をする第9工程をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理は、400℃以上800℃以下で行うことを特徴とする請求項9に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第12工程以降に、450℃以上の熱処理を行わないことを特徴とする請求項7に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通して前記第1半導体層に達するトレンチを形成する第4工程をさらに含み、
前記第5工程では、前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極は前記トレンチの内部に形成することを特徴とする請求項7に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に代わる次世代の半導体材料として期待されている。炭化珪素を半導体材料に用いた半導体素子(以下、炭化珪素半導体装置とする)は、シリコンを半導体材料に用いた従来の半導体素子と比較して、オン状態における素子の抵抗を数百分の1に低減可能であることや、より高温(200℃以上)の環境下で使用可能なこと等、様々な利点がある。これは、炭化珪素のバンドギャップがシリコンに対して3倍程度大きく、シリコンよりも絶縁破壊電界強度が1桁近く大きいという材料自体の特長による。
【0003】
炭化珪素半導体装置としては、現在までに、ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)、プレーナゲート構造やトレンチゲート構造の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)が製品化されている。
【0004】
従来の炭化珪素半導体装置の構造について、トレンチ型MOSFETを例に説明する。トレンチ型MOSFETでは、n+型出発基板のおもて面にn+型バッファ層およびn型炭化珪素エピタキシャル層が堆積される。n型炭化珪素エピタキシャル層のn+型出発基板側に対して反対側の表面側は、n型高濃度領域が設けられている。また、n型高濃度領域のn+型出発基板側に対して反対側の表面層には、第1p+型ベース領域が選択的に設けられている。n型高濃度領域には、トレンチの底面全体を覆うように第2p+型ベース領域が選択的に設けられている。
【0005】
また、従来のトレンチ型MOSFETには、さらにp型ベース領域、n+型ソース領域、p++型コンタクト領域、ゲート絶縁膜、ゲート電極、層間絶縁膜、オーミック電極(ソース電極)、裏面電極、トレンチ、ソース電極パッドおよびドレイン電極パッドが設けられている。オーミック電極は、n+型ソース領域、p++型コンタクト領域上に設けられ、オーミック電極上にソース電極パッドが設けられている。
【0006】
ソース電極パッド(Al電極)中に含まれる水素が、ゲート界面まで拡散することで、しきい値変動を引き起こすことが知られている。このため、ゲート界面とAl電極の間に水素吸蔵性を有する金属膜からなるバリアメタルを形成することが提案されている。例えば、Ti(チタン)の水素吸蔵効果を用いて、しきい値変動の問題を解決している。この場合、AlとTiが合金化すると水素吸蔵効果が失われるため、TiとAlの間にTiN(窒化チタン)からなる金属膜を挟み、合金化を抑制している。
【0007】
図12は、従来の炭化珪素半導体装置のバリアメタル形成の概要を示すフローチャートである。炭化珪素半導体装置のおもて面電極形成プロセスで、オーミック電極、バリアメタルおよびソース電極パッドは、次のように形成される。まず、層間絶縁膜にコンタクトホールを開口し(ステップS11)、n
+型ソース領域およびp
++型コンタクト領域を露出させる。次に、コンタクトホール内に成膜したニッケル(Ni)をアニールすることで、NiSi(ニッケルシリサイド)のオーミック電極を形成する(ステップS12)。次に、オーミック電極上にTi膜をスパッタリング法で成膜する(ステップS13)。次に、Ti膜上にTiN膜をスパッタリング法で成膜し(ステップS14)、Ti膜およびTiN膜からなるバリアメタルを形成する。次に、Al(アルミニウム)膜またはAl-Si膜を成膜することでソース電極パッドを形成する(ステップS15)。
【0008】
また、コンタクトホール内において半導体基板(n+型ソース領域)にオーミック接触し、かつ層間絶縁膜により第1ゲート電極と電気的に絶縁されている第1ソース電極を、n+型ソース領域上に順にNiSi電極、第1TiN膜、第1Ti膜、第2TiN膜、第2Ti膜およびAl合金膜が積層されている多層膜とする半導体装置が公知である(下記、特許文献1参照)。
【0009】
また、水素吸蔵性を有する第1金属で形成された水素吸蔵層と、水素吸蔵層の上方に設けられ、第1金属の窒化物で形成された窒化物層と、窒化物層の上方に設けられ、アルミニウムと第2金属の合金で形成された合金層と、合金層の上方に設けられ、アルミニウムで形成された電極層とを備え、電極層と窒化物層の間には、第2金属の純金属層が設けられていない半導体装置が公知である(下記、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-44274号公報
【特許文献2】特許第6617546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、従来は、バリアメタルをTi膜およびTiN膜の2層構造で形成していた。この場合、NiSiのオーミック電極上にTiが形成される。炭化珪素半導体装置は、シリコン半導体装置に比べて、高温で使用される場合が多い。しかしながら、炭化珪素半導体装置を高温で長時間使用すると、NiSiとTiとの間にボイドが発生して、しきい値が変動するという課題がある。
【0012】
本発明は、バリアメタルのバリア性を向上させ、しきい値変動を抑制できる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の出発基板のおもて面側に、前記出発基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層が設けられる。前記第1半導体層の、前記出発基板側に対して反対側の表面層に第2導電型の第2半導体層が設けられる。前記第2半導体層の、前記出発基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記第1半導体領域および前記第2半導体層の表面にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられる。前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜が設けられる。前記第2半導体層および前記第1半導体領域の表面にオーミック電極が設けられる。前記オーミック電極および前記層間絶縁膜の表面にバリアメタルが設けられる。前記バリアメタルの表面に表面電極が設けられる。前記出発基板の裏面に裏面電極が設けられる。前記バリアメタルは、前記オーミック電極および前記層間絶縁膜の表面で、第1TiN膜、Ti膜、第2TiN膜の3層構造であり、前記第1TiN膜のTiNの結晶粒径は、前記第2TiN膜のTiNの結晶粒径よりも大きい。
【0014】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1TiN膜は、TiN(200)の配向性を有し、前記第2TiN膜は、TiN(200)の配向性を有しないことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記Ti膜の膜厚は、20nm以上100nm以下であることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記オーミック電極は、NiSiで構成され、前記第1TiN膜は、前記NiSiと接することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2TiN膜と前記表面電極との間に、第2Ti膜を備えることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通して前記第1半導体層に達するトレンチをさらに含み、前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極は、前記トレンチの内部に設けられることを特徴とする。
【0019】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、第1導電型の出発基板のおもて面側に、前記出発基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層を形成する第1工程を行う。次に、前記第1半導体層の、前記出発基板側に対して反対側の表面層に第2導電型の第2半導体層を形成する第2工程を行う。次に、前記第2半導体層の、前記出発基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域を形成する第3工程を行う。次に、前記第1半導体領域および前記第2半導体層の表面にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第5工程を行う。次に、前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜を形成する第6工程を行う。次に、前記第2半導体層および前記第1半導体領域の表面にオーミック電極を形成する第7工程を行う。次に、前記オーミック電極および前記層間絶縁膜の表面に一様に第1TiN膜を成膜する第8工程を行う。次に、前記第1TiN膜上にTi膜を形成する第10工程を行う。次に、前記Ti膜上に第2TiN膜を形成し、前記第1TiN膜、前記Ti膜、前記第2TiN膜の3層構造のバリアメタルを形成する第11工程を行う。次に、前記バリアメタルの表面に表面電極を形成する第12工程を行う。次に、前記出発基板の裏面に裏面電極を形成する第13工程を行う。前記第1TiN膜のTiNの結晶粒径は、前記第2TiN膜のTiNの結晶粒径よりも大きい。
【0020】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第8工程における前記第1TiN膜の成膜温度は、前記第11工程における前記第2TiN膜の成膜温度よりも高温であることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第8工程の後、前記第10工程の前に、前記第1TiN膜の熱処理をする第9工程をさらに含むことを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記熱処理は、400℃以上800℃以下で行うことを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第12工程以降に、450℃以上の熱処理を行わないことを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通して前記第1半導体層に達するトレンチを形成する第4工程をさらに含み、前記第5工程では、前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極は前記トレンチの内部に形成することを特徴とする。
【0025】
上述した発明によれば、バリアメタルは、オーミック電極上および層間絶縁膜上でも同じ構成となり、Ti膜を第1TiN膜と第2TiN膜で挟み込み、Ti膜を純Tiで構成している。これにより、ゲート界面とソース電極パッドとの間の純Tiによる水素貯蔵性によりソース電極パッドおよびその上層部に含まれる水素がゲート界面に到達することを防止でき、しきい値変動を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、バリアメタルのバリア性を向上させ、しきい値変動を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図2】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置のオーミック電極上のバリアメタルの構成を示す断面図である。
【
図3】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の層間絶縁膜上のバリアメタルの構成を示す断面図である。
【
図4】Ti膜上にTiN膜を成膜した場合のTiおよびTiNの結晶構造を示すグラフである。
【
図5】SiO
2膜上に直接TiN膜を成膜した場合のTiNの結晶構造を示すグラフである。
【
図6】バリアメタルの各膜のTiN(200)の有無と、TiN(200)の粒径を示す表である。
【
図7】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置のバリアメタルのTi膜厚としきい値変動との関係を示すグラフである。
【
図8】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置のバリアメタルの他の構成を示す断面図である。
【
図9】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置のバリアメタル形成の概要を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置のバリアメタル製造途中の状態を模式的に示す断面図である(その1)。
【
図11】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置のバリアメタル製造途中の状態を模式的に示す断面図である(その2)。
【
図12】従来の炭化珪素半導体装置のバリアメタル形成の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して±5%以内まで含むとするのがよい。
【0029】
(実施の形態)
本発明にかかる半導体装置は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成される。実施の形態においては、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いて作製(製造)された炭化珪素半導体装置について、トレンチ型MOSFET50を例に説明する。
図1は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図1では、トレンチ型MOSFET50の主電流が流れる活性領域のみを示している。
【0030】
図1に示すように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置は、n
+型出発基板(第1導電型の出発基板)1の第1主面(おもて面)、例えば(0001)面(Si面)に、n
+型バッファ層16と、第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1半導体層)2が堆積されている。
【0031】
n+型出発基板1は、例えば窒素(N)がドーピングされた炭化珪素単結晶基板である。n+型バッファ層16は、例えば膜厚が1μm以上5μm以下で、窒素が1×1017/cm3以上1×1018/cm3以下の高濃度でドーピングされた高ドーピング層である。n+型バッファ層16は、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2からのホールの再結合を促し、n+型出発基板1に到達するホール濃度を制御して、積層欠陥の発生およびその面積拡大を抑制している。
【0032】
第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2は、n+型出発基板1よりも低い不純物濃度で、例えば窒素がドーピングされている低濃度n-型ドリフト層である。第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2の、n+型出発基板1側に対して反対側の表面側は、第2n-型炭化珪素層6が形成されている。第2n-型炭化珪素層6は、n+型出発基板1よりも低く第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2よりも高い不純物濃度で、例えば窒素がドーピングされている高濃度n-型ドリフト層である。以下、n+型出発基板1とn-型炭化珪素エピタキシャル層2と第2n-型炭化珪素層6と後述するp型ベース層3を併せて炭化珪素半導体基体とする。
【0033】
n+型出発基板1の第2主面(裏面、すなわち炭化珪素半導体基体の裏面)には、ドレイン電極(不図示)が設けられている。ドレイン電極の表面には、ドレイン電極パッド14が設けられている。
【0034】
炭化珪素半導体基体の第1主面側(p型ベース層3側)には、トレンチゲート構造が形成されている。具体的には、トレンチ18は、n+型出発基板1の第1主面側の表面からn+型ソース領域7およびp型ベース層3を貫通して第2n-型炭化珪素層6に達する。トレンチ18の内壁に沿って、トレンチ18の底部および側壁にゲート絶縁膜9が形成されており、トレンチ18内のゲート絶縁膜9の内側にゲート電極10が形成されている。ゲート絶縁膜9によりゲート電極10が、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2、第2n-型炭化珪素層6およびp型ベース層3と絶縁されている。ゲート電極10の一部は、トレンチ18の上方(ソース電極パッド15側)からソース電極パッド15側に突出していてもよい。
【0035】
第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層2および第2n
-型炭化珪素層6の内部には、第1p
+型領域4と第2p
+型領域5が選択的に設けられている。第1p
+型領域4は、トレンチ18の底部よりもドレイン側に深い位置にまで達している。第1p
+型領域4の下端部(ドレイン側端部)は、トレンチ18の底部よりもドレイン側に位置する。第1p
+型領域4は、トレンチ18間に設けられている。
図1に記載のように、第1p
+型領域4は、後述するp
++型コンタクト領域8と接しているが、p
++型コンタクト領域8と接していない形態も可能である。この場合、第1p
+型領域4は、第2n
-型炭化珪素層6の表面層にも設けられ、第1p
+型領域4の上面はp型ベース層3に接する。
【0036】
第2p+型領域5の下端部は、トレンチ18の底部よりもドレイン側に位置する。第2p+型領域5は、トレンチ18の底部と深さ方向zに対向する位置に形成される。第2p+型領域5の幅は、トレンチ18の幅よりも広い。トレンチ18の底部は、第2p+型領域5に達してもよいし、p型ベース層3と第2p+型領域5に挟まれた第2n-型炭化珪素層6内に位置し、第2p+型領域5と接触していなくてもよい。第1p+型領域4と第2p+型領域5は、例えばアルミニウム(Al)がドーピングされている。
【0037】
第1p+型領域4は、その一部をトレンチ18側に延在させることで第2p+型領域5に接続した構造となっている。この場合、第1p+型領域4の一部は、第1p+型領域4と第2p+型領域5とが並ぶ方向(以下、第1方向とする)xと直交する方向(以下、第2方向とする)yに、第2n-型炭化珪素層6と交互に繰り返し配置された平面レイアウトを有していてもよい。つまり、直交する方向yで、第1p+型領域4の一部と第2p+型領域5の一部が少なくとも1か所以上接続されていればよい。これにより、第2p+型領域5と第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2の接合部分でアバランシェ降伏が起こったときに発生するホールを効率よくオーミック電極13に退避させることができ、ゲート絶縁膜9への負担が軽減されるため、信頼性が向上する。
【0038】
第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2の基体第1主面側には、p型ベース層(第2導電型の第2半導体層)3が設けられている。p型ベース層3の不純物濃度は、例えば第1p+型領域4の不純物濃度よりも低くてもよい。これにより、閾値電圧を下げるためにp型ベース層3の濃度を下げても、p型ベース層3の空乏層の広がりを抑えることでパンチスルーによる耐圧低下を回避することができる。p型ベース層3の内部には、基体第1主面側にn+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8が選択的に設けられている。また、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8は互いに接する。
【0039】
図1では、2つのトレンチMOS構造のみを図示しているが、さらに多くのトレンチ構造のMOSゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)構造が並列に配置されていてもよい。
【0040】
層間絶縁膜11は、炭化珪素半導体基体の第1主面側の全面に、トレンチ18に埋め込まれたゲート電極10を覆うように設けられている。オーミック電極(ソース電極)13は、NiSi(ニッケルシリサイド)で構成され、層間絶縁膜11に開口されたコンタクトホールを介して、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8に接する。オーミック電極13は、層間絶縁膜11によって、ゲート電極10と電気的に絶縁されている。オーミック電極13上には、ソース電極パッド(表面電極)15が設けられている。
【0041】
また、オーミック電極13および層間絶縁膜11と、ソース電極パッド15との間に、例えばオーミック電極13からゲート電極10側への金属原子の拡散を防止するバリアメタル20が設けられている。
【0042】
図2は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置のオーミック電極上のバリアメタルの構成を示す断面図である。
図3は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の層間絶縁膜上のバリアメタルの構成を示す断面図である。
図2は、
図1の領域S1の拡大断面図であり、
図3は、
図1の領域S2の拡大断面図である。
図2および
図3に示すように、バリアメタル20は、炭化珪素半導体基体上に一様に設けられている。このため、バリアメタル20は、オーミック電極13上および層間絶縁膜11上でも同じ構成となり、第1TiN膜23、Ti膜24および第2TiN膜25から構成されている。第2TiN膜25上にAlまたはAl-Siからなるソース電極パッド15が設けられている。
【0043】
ここで、
図4および
図5は、X線回折でTiおよびTiNの結晶構造を測定した結果である。
図4および
図5において、横軸はX線照射角度2θを示し、単位は度(deg)である。縦軸はカウント数を示す。
図4は、Ti膜上にTiN膜を成膜した場合のTiおよびTiNの結晶構造を示すグラフである。この場合、
図4に示すように、Tiによる配向性影響を受けるため、TiN膜は、TiN(111)の配向性を有し、TiN(200)の配向性を有していない。一方、
図5は、SiO
2膜上に直接TiN膜を成膜した場合のTiNの結晶構造を示すグラフである。
図5で、細線はアニール処理を行わなかった場合、太線はアニール処理を行った場合を示す。
図5に示すように、SiO
2膜上に直接TiN膜を成膜した場合は、アニール処理の有無に関わらず、TiN(111)とともに、TiN(200)の配向性を有している。
【0044】
図6は、バリアメタルの各膜のTiN(200)の有無と、TiN(200)の粒径とを示す表である。バリアメタルのTi膜は、純Tiであり、TiN(200)の配向性を有していない。
図5の結果より、SiO
2膜上に直接成膜したTiN膜およびこのTiN膜をアニールしたTiN膜は、TiN(200)の配向性を有する。アニールにより、TiN(200)の平均粒径(結晶粒径)は大きくなるため、アニールしたTiN膜のTiN(200)の平均粒径は、アニールしていないTiN膜のTiN(200)の平均粒径より大きくなる。アニールに替えて、TiN膜の成膜温度を上げることでも、TiN膜のTiN(200)の平均粒径を大きくすることができる。また、
図4の結果より、Ti膜上にTiN膜を成膜した場合は、TiN(200)の配向性を有しない。
【0045】
以上の
図4~
図6の結果より、実施の形態のバリアメタル20の各層は以下のようになる。第1TiN膜23は、オーミック電極13上および層間絶縁膜11上に設けられ、Tiによる配向性影響を受けないため、TiN(200)の配向性を有する。また、後述するように第1TiN膜23成膜後、アニール処理を行うため、TiNの平均粒径は大きくなっている。第2TiN膜25は、Ti膜24上に設けられ、Tiの結晶配向を引き継ぐため、TiN(111)の配向性を有し、TiN(200)の配向性を有しない。また、後述するように第2TiN膜25成膜後、アニール処理を行わないため、TiNの平均粒径は、第1TiN膜23のTiNの平均粒径より小さくなっている。例えば、X線回折において、主配向であるTiN(111)の半値幅から求めた第1TiN膜23のTiNの平均粒径は、15nm以上であり、第2TiN膜25のTiNの平均粒径である、11nmより小さい。Ti膜24は、第1TiN膜23と第2TiN膜25とに挟まれているため、純Tiとなっている。
【0046】
図7は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置のバリアメタルのTi膜厚としきい値変動との関係を示すグラフである。
図7において、横軸は、バリアメタル20のTi膜24の膜厚を示し、単位はnmである。縦軸は、しきい値変動を示し、単位はVである。
図7に示すように、しきい値変動を-0.1V以下にするためには、Ti膜24の膜厚を20nm以上にすることが好ましい。また、Ti膜24の膜厚が100nmを超えると、カバレッジが悪くなるため、Ti膜24の膜厚を100nm以下にすることが好ましい。
【0047】
図8は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置のバリアメタルの他の構成を示す断面図である。
図8に示すように、第2TiN膜25上に第2Ti膜26を設けてもよい。この第2Ti膜26より、バリアメタル20のバリア性をさらに向上させることができる。また、図示はしないが、第1TiN膜23と、オーミック電極13および層間絶縁膜11との間に、Ti、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の金属を設けてもよい。
【0048】
このように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置のバリアメタル20は、オーミック電極13上および層間絶縁膜11上でも同じ構成で、第1TiN膜23、Ti膜24および第2TiN膜25から構成されている。Ti膜24を第1TiN膜23と第2TiN膜25で挟み込み、Ti膜24を純Tiで構成している。このため、ゲート界面とソース電極パッド15との間の純Tiによる水素貯蔵性によりソース電極パッド15およびその上層部に含まれる水素がゲート界面に到達することを防止でき、しきい値変動を抑制できる。
【0049】
(実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。
図9は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置のバリアメタル形成の概要を示すフローチャートである。
図10、
図11は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置のバリアメタル製造途中の状態を模式的に示す断面図である。
【0050】
まず、n型の炭化珪素でできたn
+型出発基板1に、第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層2およびn
+型バッファ層16が堆積された炭化珪素半導体基板34(
図1参照)を用意する(第1工程)。この炭化珪素半導体基板34を購入してもよいし、n
+型出発基板1のみの基板を購入して、エピタキシャル成長でn
+型バッファ層16および第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層2を形成して、上述の炭化珪素半導体基板34としてもよい。この場合、n
+型出発基板1の第1主面上に、n型の不純物、例えば窒素原子(N)をドーピングしながら炭化珪素でできたn
+型バッファ層16を、エピタキシャル成長させる。次に、n
+型バッファ層16上にn型の不純物、例えば窒素原子をドーピングしながら炭化珪素でできた第1n
-型炭化珪素エピタキシャル層2を成長させる。
【0051】
次に、炭化珪素半導体基板34の表面に選択的に不純物イオンを注入する。これにより、炭化珪素半導体基板34内に不純物領域(例えば、p型ベース層3、第1p+型領域4、第2p+型領域5、第2n-型炭化珪素層6、n+型ソース領域7、p++型コンタクト領域8等)を形成する。これらの不純物領域は以下のように形成される。
【0052】
まず、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有する図示しないレジストマスクを形成する。そして、イオン注入法によってp型の不純物、例えばアルミニウム原子をイオン注入することで、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2内に厚さ0.6μm程度の第1p+型領域4、第2p+型領域5を例えば1~5×1018/cm3の不純物濃度で形成する。
【0053】
次に、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有する図示しないレジストマスクを形成する。そして、イオン注入法によって窒素等のn型の不純物をドーピングした厚さ0.7μm程度の第2n-型炭化珪素層6を、例えば1~3×1017/cm3の不純物濃度で形成する。第2n-型炭化珪素層6は、第1n-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、エピタキシャル成長で形成してもよい。
【0054】
次に、n-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有する図示しないレジストマスクを形成する。そして、イオン注入法によって、厚さ0.5μm程度のp型ベース層3を例えば1~5×1017/cm3の不純物濃度で形成する(第2工程)。p型ベース層3は、第2n-型炭化珪素層6の表面上に、エピタキシャル成長で形成してもよい。
【0055】
次に、p型ベース層3の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有する図示しないレジストマスクを形成する。そして、イオン注入法によって、厚さ0.5μm程度のn+型ソース層7を例えば1~3×1019/cm3の不純物濃度で形成する(第3工程)。
【0056】
次に、所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成し、n+型ソース層7の一部、p型ベース層3の一部にアルミニウム等のp型の不純物をイオン注入し、p++型コンタクト領域8を例えば1~3×1020/cm3の不純物濃度で形成する。
【0057】
次に、1750℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理を行い、イオン注入で形成した不純物領域の活性化処理を実施する。なお、1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。
【0058】
次に、n+型ソース領域7の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する。ドライエッチングによってn+型ソース領域7およびp型ベース層3を貫通し、第2p+型領域5に達するトレンチ18を形成する(第4工程)。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。
【0059】
トレンチ18を形成した後、トレンチ18のダメージを除去するための等方性エッチングや、トレンチ18の底部およびトレンチ18の開口部の角を丸めるための犠牲酸化を行ってもよい。等方性エッチングと犠牲酸化はどちらか一方のみを行ってもよい。また、等方性エッチングを行った後に犠牲酸化を行ってもよい。これにより、炭化珪素のきれいな表面を出すことができ、角を丸めることにより、トレンチ18の底部や開口部での電界集中を抑えることができる。
【0060】
次に、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8の表面と、トレンチ18の底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜9を形成する。このゲート絶縁膜9は、酸素を含むガス雰囲気中において1300℃程度の温度の熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜9は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。
【0061】
次に、ゲート絶縁膜9上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層を設ける。この多結晶シリコン層はトレンチ18内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ18内部に残すことによって、ゲート電極10を形成する(第5工程)。
【0062】
次に、ゲート電極10の表面に絶縁膜を形成する。例えば1000℃の酸素雰囲気でアニールし熱酸化膜を形成する。次に、表面を保護膜で保護する、例えばフォト用のレジストにて形成する。次に、裏面に形成された絶縁膜、ゲート電極、ゲート絶縁膜をドライエッチングにて全て除去する。次に、灰化剥離工程にて表面に形成した保護膜を除去する。
【0063】
次に、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜11を形成する。次に、層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜10をフォトリソグラフィによりパターニングしn+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8を露出させたコンタクトホールを開口する(ステップS1)。次に、上記コンタクトホール内および層間絶縁膜11上にオーミック電極13となる導電性の膜、例えばニッケルを例えばスパッタ法により成膜する(ステップS2:第7工程)。次に1000℃程度の熱処理を行って導電性の膜と炭化珪素を選択的に反応させた後、未反応部分の導電性の膜を選択的に除去してコンタクトホール内にのみオーミック電極13を残し、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8とオーミック電極13とを接触させる。
【0064】
次に、オーミック電極13および層間絶縁膜11の表面に一様に第1TiN膜23をスパッタリング法で成膜する(ステップS3:第8工程)。ステップS3において、成膜時の基板温度を200~400℃と高温にすることで、第1TiN膜23の緻密性を向上させることができる。この場合、後述するステップS4のアニール処理を省略できる。ステップS3で成膜時に基板温度を上げる代わりに、第1TiN膜23をアニール(熱処理)することで、第1TiN膜23の緻密性を改善してもよい。この時平均粒径が大きくなることが分かっている(ステップS4:第9工程)。アニール温度は、400℃以上800℃以下が好ましい。400℃未満では成膜時の温度以下であるため緻密性の改善効果が見込めない。800℃より高いとTiNの表面凹凸が大きくなりすぎるためである。ここまでの状態が、
図10に記載される。このように第1TiN膜23の平均粒径を大きくすることで、オーミック電極13に含まれるニッケルが、ソース電極パッド15側に移動することを効率的に防ぐことができる。ここで、ステップS3やS4の後、大気中など酸素雰囲気にさらして、粒界に酸素を吸着させてもよい。これにより、さらに効率的にニッケルの移動を防ぐことができる。
【0065】
次に、第1TiN膜23の表面にTi膜24をスパッタリング法で成膜する(ステップS5:第10工程)。次に、Ti膜24の表面に第2TiN膜25をスパッタリング法で成膜する(ステップS6:第11工程)。これにより、第1TiN膜23、Ti膜24および第2TiN膜25から構成されるバリアメタル20が形成される。ここまでの状態が、
図11に記載される。また、この後、第1TiN膜25の表面に第2Ti膜26をスパッタリング法で成膜してもよい。なおステップS5,6では、成膜時の基板温度を200℃以下とすることで、第2TiN膜25のTiNの平均粒径を小さくしている。このように第2TiN膜25のTiNの平均粒径を小さくすることで、ソース電極パッド15側から水素イオンが侵入することを効率的に防ぐことができる。
【0066】
次に、例えばスパッタ法によって、バリアメタル20上に、ソース電極パッド15となるAl金属膜を例えばスパッタリング法により成膜する。金属膜は、例えば、1%の割合でシリコンを含んだアルミニウム(Al-Si)で形成してもよい。次に、金属膜を選択的に除去し、ソース電極パッド15を形成する(ステップS7:第12工程)。また、ソース電極パッド15形成以降には、第1TiN膜23、Ti膜24、第2TiN膜25で構成されるバリアメタル20のTi膜24を窒化させないため、450℃以上のアニール処理を実施しない。
【0067】
次に、n+型出発基板1のおもて面を保護膜(不図示)で覆って保護した後、n+型出発基板1を裏面側から研磨することで、n+型出発基板1を薄化して製品厚さとしてもよい。
【0068】
次に、n+型出発基板1の第2主面上に、ドレイン電極(不図示)となる導電性の膜、例えばモリブデン膜とニッケル膜を、例えばスパッタ法により続けて成膜する。その後、例えばレーザーアニールなどの熱処理を行って、n+型出発基板1と導電性の膜を反応させてオーミック接合を形成することで、ドレイン電極を形成する。
【0069】
次に、ドレイン電極の表面に、ドレイン電極パッド14として例えばチタン、ニッケルおよび金をこの順に成膜する(第13工程)。以上のようにして、
図1に示す炭化珪素半導体装置が完成する。
【0070】
以上、説明したように、実施の形態によれば、バリアメタルは、オーミック電極上および層間絶縁膜上でも同じ構成となり、Ti膜を第1TiN膜と第2TiN膜で挟み込み、Ti膜を純Tiで構成している。これにより、ゲート界面とソース電極パッドとの間の純Tiによる水素貯蔵性によりソース電極パッドおよびその上層部に含まれる水素がゲート界面に到達することを防止でき、しきい値変動を抑制できる。
【0071】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。各実施の形態では、トレンチ型MOSFETを例に説明しているが、プレーナ型MOSFETにも適用可能であり、さらに、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やダイオードなど、様々な半導体装置にも適用可能である。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 n+型出発基板
2 第1n-型炭化珪素エピタキシャル層
3 p型ベース層
4 第1p+型領域
5 第2p+型領域
6 第2n-型炭化珪素層
7 n+型ソース領域
8 p++型コンタクト領域
9 ゲート絶縁膜
10 ゲート電極
11 層間絶縁膜
13 オーミック電極(ソース電極)
14 ドレイン電極パッド
15 ソース電極パッド
16 n+型バッファ層
18 トレンチ
20 バリアメタル
23 第1TiN膜
24 Ti膜
25 第2TiN膜
26 第2Ti膜
34 炭化珪素基板半導体基板
50 トレンチ型MOSFET