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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008014
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】絶縁抵抗検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20240112BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20240112BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R35/00 J
G01R27/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109491
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】上島 鷹之
【テーマコード(参考)】
2G014
2G028
【Fターム(参考)】
2G014AA17
2G014AB24
2G014AB29
2G014AB61
2G028AA01
2G028BE04
2G028CG03
2G028DH06
2G028FK01
2G028MS02
(57)【要約】
【課題】絶縁抵抗検知の動作中に補正を行い、システムの要求精度を満たす絶縁抵抗検出装置を提供すること。
【解決手段】絶縁抵抗検出装置30は、コントローラ33と、パルス生成器31と、検出抵抗Rdと、測定ノードMに接続される漏電抵抗Rxと、漏電抵抗Rxとグランドとの間を遮断するオフ状態または漏電抵抗とグランドとの間を接続するオン状態に制御されるスイッチSWと、を備える。コントローラ33は、マスター品の電圧と絶縁抵抗値との関係を含むパラメータを示すパラメータマップを有しており、スイッチSWをオンさせ第一時間のパルスを印加したときの電圧の結果と、絶縁抵抗に関する特性を示すパラメータマップと、から絶縁抵抗値を算出し、スイッチSWを第一時間よりも長い第二時間飽和するまでオンし続けたときの飽和電圧と、マスター品の飽和電圧と、を用いて、絶縁抵抗値の候補を補正し絶縁抵抗値を算出する。
【選択図】図10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフレームと前記車両に搭載される高電圧回路との間の絶縁抵抗を検出する絶縁抵抗検出装置であって、
コントローラと、
所定の周期でパルスを生成するパルス生成器と、
前記パルス生成器と前記フレームとの間に設けられる検出抵抗と、
前記検出抵抗と前記フレームとの間の測定ノードに接続される漏電抵抗と、
前記漏電抵抗とグランドとの間を遮断するオフ状態または前記漏電抵抗とグランドとの間を接続するオン状態に制御されるスイッチと、を備え、
前記コントローラは、
マスター品の電圧と絶縁抵抗値との関係を含むパラメータを示すパラメータマップを有しており、
前記スイッチをオンさせ第一時間のパルスを印加したときの電圧の結果と、絶縁抵抗に関する特性を示す前記パラメータマップと、から絶縁抵抗値を算出し、
前記スイッチを前記第一時間よりも長い第二時間飽和するまでオンし続けたときの飽和電圧と、前記マスター品の飽和電圧と、を用いて、前記絶縁抵抗値の候補を補正し絶縁抵抗値を算出することを特徴とする、絶縁抵抗検出装置。
【請求項2】
前記車両は、冷却水のイオン交換器を有しており、
前記絶縁抵抗は前記フレームを通過する前記冷却水を介して変動し、
前記コントローラは、前記絶縁抵抗値を算出することで前記イオン交換器の状態を検知することを特徴とする、請求項1に記載の絶縁抵抗検出装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記スイッチをオンさせ前記第一時間のパルスを印加したときの電圧の結果を所定の単位時間毎に積算した電圧の積算値に基づいて前記絶縁抵抗値を算出することを特徴とする、請求項1に記載の絶縁抵抗検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁抵抗検出装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される電気回路は、多くのケースにおいて、その車両の車体(以下、車両フレーム)から電気的に絶縁される。例えば、燃料電池車には、燃料電池セル、DC/DCコンバータおよび負荷を含む高電圧回路が搭載される。この場合、この高電圧回路は、車両フレームから絶縁される。また、このような車両は、絶縁抵抗を検出するための絶縁抵抗検出装置を備える。なお、絶縁抵抗検出装置は、漏電検出装置と呼ばれることもある。
【0003】
絶縁抵抗検出装置は、例えば、パルス生成器、検出抵抗、デカップリングコンデンサ、コントローラを備える。この場合、パルス生成器により生成されるパルス信号は、検出抵抗、デカップリングコンデンサ、および絶縁抵抗を介して、車両に搭載される高電圧回路のグランドまで伝達される。そして、コントローラは、検出抵抗を利用してパルス信号の波高値を測定し、その波高値に基づいて絶縁抵抗が正常であるか否かを判定する。
【0004】
車体(車両フレーム)を電気回路の基準側と同電位にせずに、絶縁抵抗検知ができる絶縁抵抗検出装置である車体に対して絶縁された高電圧回路があり、装置は車両フレームにカップリングコンデンサを介して接続される。絶縁抵抗測定用にパルス波発生器、電圧検出回路を備える。そして、コントローラ33の内部(例えば「マイコン内」)で検出電圧を積算し、内部マップに基づいて絶縁抵抗値を算出し、絶縁抵抗低下が検出されている。
【0005】
このような絶縁抵抗検知の目的は、故障検知である。絶縁抵抗の検出閾値は、主に下記2つの観点から、必要な精度が算出される。(1)絶縁抵抗値は誤検知なきことや、(2)感電リスクがある絶縁抵抗であることを検知することである。
【0006】
そこで、絶縁抵抗検出装置は、自己診断機能を備えることがある。自己診断機能は、絶縁抵抗検出装置が正常に動作しているか否かを判定する。例えば、自己診断時には、擬似的な漏電状態が引き起こされる。そして、コントローラは、擬似的な漏電状態においてパルス信号の波高値を測定し、その波高値に基づいて絶縁抵抗検出装置が正常に動作しているか否かを判定する。
【0007】
なお、自己診断を行うことが可能な絶縁抵抗検出装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-187454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、絶縁抵抗検出装置の精度には、コントローラ(ECU)内部の回路素子やコントローラ(ECU)へ電源電圧を供給する12VDC/DCコンバータの物理的なもののばらつき(以下、「モノバラ」とも呼ぶ)や、温度のばらつき(以下、「温度バラ」とも呼ぶ)の影響を受けることとなる。そのため、システム上求められる精度を満たすために、改善が必要とされている。
【0010】
本発明の1つの側面に係る目的は、絶縁抵抗検知の動作中に補正を行い、システムの要求精度を満たす絶縁抵抗検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様に係わる絶縁抵抗検出装置は、車両のフレームと前記車両に搭載される高電圧回路との間の絶縁抵抗を検出する絶縁抵抗検出装置であって、コントローラと、所定の周期でパルスを生成するパルス生成器と、前記パルス生成器と前記フレームとの間に設けられる検出抵抗と、前記検出抵抗と前記フレームとの間の測定ノードに接続される漏電抵抗と、前記漏電抵抗とグランドとの間を遮断するオフ状態または前記漏電抵抗とグランドとの間を接続するオン状態に制御されるスイッチと、を備え、前記コントローラは、マスター品の電圧と絶縁抵抗値との関係を含むパラメータを示すパラメータマップを有しており、前記スイッチをオンさせ第一時間のパルスを印加したときの電圧の結果と、絶縁抵抗に関する特性を示す前記パラメータマップと、から絶縁抵抗値を算出し、前記スイッチを前記第一時間よりも長い第二時間飽和するまでオンし続けたときの飽和電圧と、前記マスター品の飽和電圧と、を用いて、前記絶縁抵抗値の候補を補正し絶縁抵抗値を算出する。
【0012】
このように、絶縁抵抗検出装置は、スイッチをオンさせ第一時間のパルスを印加したときの電圧の結果と、絶縁抵抗に関する特性を示すパラメータマップと、から絶縁抵抗値を算出する。そして、スイッチを第一時間よりも長い第二時間飽和するまでオンし続けたときの飽和電圧と、マスター品の飽和電圧と、を用いて、絶縁抵抗値の候補を補正し絶縁抵抗値を算出して、絶縁抵抗を検出することができる。したがって、絶縁抵抗検知の動作中に補正を行い、システムの要求精度を満たすことができる。
【0013】
上述の態様において、車両は、冷却水のイオン交換器を有している。絶縁抵抗は前記フレームを通過する冷却水を介して変動する。コントローラは、絶縁抵抗値を算出することでイオン交換器の状態を検知してもよい。
【0014】
このように、絶縁抵抗値を算出することでイオン交換器の状態を検知することができる。したがって、燃料電池システムにおいて特に重要とされるイオン交換器の故障検知を迅速かつ正確に行うことができ、燃料電池システムの故障による弊害を最小限に抑制することができる。
【0015】
上述の態様において、コントローラは、スイッチをオンさせ第一時間のパルスを印加したときの電圧の結果を所定の単位時間毎に積算した電圧の積算値に基づいて絶縁抵抗値を算出してもよい。
【0016】
このように、絶縁抵抗値を電圧の積算値によって算出することにより、ノイズを吸収することができ、絶縁抵抗値の算出を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
上述の態様によれば、絶縁抵抗検知の動作中に補正を行い、システムの要求精度を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係わる絶縁抵抗検出装置の一例を示す。
図2】従来技術の事前準備のフローチャートの一例を示す図である。
図3】パルス生成器により生成されたパルス波形の一例を示す。
図4】電圧センサにより測定される測定ノードの電圧の波形の一例を示す。
図5】電圧センサにより測定される電圧を積算して算出した電圧積算値の例を示す図である。
図6】パラメータマップを示す図である。
図7】従来技術の実動作のフローチャートの一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態の絶縁抵抗検出装置が実行する事前準備のフローチャートの一例を示す図である。
図9】飽和時の電圧値の波形の一例を示す図である。
図10】本発明の実施形態の実動作のフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係わる絶縁抵抗検出装置の一例を示す。本発明の実施形態に係わる絶縁抵抗検出装置30は、車両1に搭載され、高電圧回路10と車両フレーム20との間の絶縁抵抗Riの抵抗値(以下、「絶縁抵抗値」とも呼ぶ)を検出する。車両1は、特に限定されるものではないが、例えば、フォークリフト等の産業車両である。ただし、車両1は、産業車両に限定されるものではなく、乗用車等であってもよい。
【0020】
高電圧回路10は、車両1に搭載され、燃料電池セル11、DC/DCコンバータ12、ラジエタ13、イオン交換器14、および負荷15を備える。なお、高電圧回路10は、図1に示していない他の回路または機能を備えてもよい。高電圧回路10は、燃料電池システムの一例を構成する。
【0021】
燃料電池セル11は、燃料ガス(例えば、水素)を利用して電力を生成する。DC/DCコンバータ12は、燃料電池セル11の出力電圧を昇圧および/または降圧する。負荷15は、例えば、車両1の走行用モータであり、DC/DCコンバータ12を介して直流電圧が印加される。すなわち、負荷15は、燃料電池セル11により生成される電力で駆動される。
【0022】
ラジエタ13は、燃料電池セル11の発熱により温められた冷却水を外気と熱交換させる。
【0023】
イオン交換器14は、燃料電池セル11に並列して設けられている。例えば、従って、ラジエタ13を流通する冷却水の一部は、イオン交換器14に収容されたイオン交換樹脂によって不純物イオンを除去される。イオン交換器14は、性能変化により冷却水を介した絶縁抵抗が低下する場合がある。
【0024】
高電圧回路10は、車両フレーム20に対して電気的に絶縁されている。すなわち、高電圧回路10と車両フレーム20との間に絶縁抵抗Riが設けられている。ここで、絶縁抵抗Riの最小抵抗値は、規格等により決められている。燃料電池セル11と車両フレーム20とをマウントする絶縁抵抗Riは、絶縁性が経年劣化等で低下する場合がある。したがって、絶縁抵抗検出装置30は、絶縁抵抗Riの抵抗値をモニタする。
【0025】
絶縁抵抗検出装置30は、パルス生成器31、検出抵抗Rd、デカップリングコンデンサC、漏電抵抗Rx、スイッチSW、電圧センサ32、およびコントローラ(「ECU」とも呼ぶ)33を備える。なお、絶縁抵抗検出装置30は、図1に示していない他の回路または機能を備えてもよい。
【0026】
パルス生成器31は、所定の周期Tで所定の波高値を有するパルスを生成する。周期Tは、パルス列がデカップリングコンデンサCを通過できるように設定される。また、パルスの波高値は、電源電圧Vccに比例するものとする。なお、パルスは、特に限定されるものではないが、例えば、矩形波である。この場合、パルスのデューティは、特に限定されるものではない。そして、パルス生成器31により生成されるパルスは、検出抵抗Rdの一方の端子に与えられる。
【0027】
検出抵抗Rdの他方の端子(出力側端子)は、デカップリングコンデンサCの一方の端子に電気的に接続される。そして、デカップリングコンデンサCの他方の端子は、車両フレーム20に電気的に接続される。デカップリングコンデンサCは、直流電圧成分を除去するために設けられている。
【0028】
漏電抵抗Rxの一方の端子は、検出抵抗Rdの出力側端子に電気的に接続される。漏電抵抗Rxの他方の端子は、スイッチSWを介してグランドに電気的に接続される。すなわち、検出抵抗Rdの出力側端子とグランドとの間に、漏電抵抗RxおよびスイッチSWが直列に設けられる。スイッチSWの状態は、コントローラ33により制御される。具体的には、スイッチSWは、コントローラ33により、漏電抵抗Rxとグランドとの間を遮断するオフ状態または漏電抵抗Rxとグランドとの間を接続するオン状態に制御される。
【0029】
電圧センサ32は、検出抵抗Rdの出力側端子の電圧を測定する。そして、電圧センサ32により測定される電圧値は、コントローラ33に送られる。なお、以下の記載では、電圧センサ32により電圧が測定されるノードを「測定ノードM」と呼ぶことがある。
【0030】
コントローラ33は、絶縁抵抗Riの抵抗値を検出する。また、コントローラ33は、絶縁抵抗検出装置30が正常に動作しているか否かを判定する。即ち、コントローラ33は、絶縁抵抗検出装置30の自己診断を行う。なお、コントローラ33は、例えば、プロセッサおよびメモリにより実現される。この場合、メモリには、絶縁抵抗Riの抵抗値を検出するためのプログラムおよび絶縁抵抗検出装置30を診断するための自己診断プログラムが格納されている。そして、プロセッサがこれらのプログラムを実行することにより、絶縁抵抗Riの抵抗値が検出され、また、絶縁抵抗検出装置30の自己診断が実現される。
【0031】
上記構成の車両1において、絶縁抵抗Riの抵抗値を検出するときは、コントローラ33は、スイッチSWをオフ状態に制御する。すなわち、漏電抵抗Rxとグランドとの間が遮断される。また、コントローラ33は、パルス生成器31に所定の周期Tでパルスを生成させる。そうすると、パルス生成器31により生成されるパルス列は、検出抵抗RdおよびデカップリングコンデンサCを介して車両フレーム20に与えられる。さらに、このパルス列は、絶縁抵抗Riを介して高電圧回路10に到達し、高電圧回路10のグランドで終端される。
【0032】
コントローラ33は、事前準備と、実動作を実行する。
【0033】
<事前準備>
図2を参照して、従来技術の事前準備の一例について説明する。図2は、従来技術の事前準備のフローチャートの一例を示す図である。コントローラ33は、事前準備として、マスター品にて、フレーム-GND間に接続し、各抵抗値で電圧積算値を算出し、パラメータマップ(絶縁抵抗値VS電圧積算値)を作成し、コントローラ33のマイコン内のソフトウェアに組み込む。具体的には、下記の各ステップS11~S13においてパラメータマップを作成する。パラメータマップとは、マスター品の結果によって絶縁抵抗の算出に用いる各種のパラメータを示すデータが含まれる情報である。マスター品とは、ECUのダイオード特性など、実際の絶縁抵抗値等を既知の抵抗器に接続して、どのような値になるか素性が把握されているサンプルとなる標準品である。マスター品は、DC/DCコンバータ12のモノバラや温度バラの影響を最小限に抑制する目的で使用される。マスター品を用いて、任意の値に絶縁抵抗値をふったときに測定された電圧を複数プロットすることによりパラメータマップを作成することができる。このマスター品により作成されるパラメータマップを作成する準備が、後述の事前準備で行われる処理となる。
【0034】
具体的には、電圧センサ32は、測定ノードMの電圧を測定する。そして、コントローラ33は、電圧センサ32により測定される電圧値を所定のサンプリング間隔で取得する。サンプリング間隔は、パルスの周期Tに対して十分に短いものとする。
【0035】
図3は、パルス生成器31により生成されたパルス波形の一例を示す。この実施例では、パルス生成器31により現れるパルスの波高値はV1である。パルス生成器31により所定のパルスを印加すると、ピークを有する波形が電圧センサ32により測定される。図3のグラフでは、横軸が経過時間を示し、縦軸が生値電圧を示す。
【0036】
コントローラ33は、電圧センサ32により電圧を検出する(ステップS11)。図4は、電圧センサ32により測定される測定ノードMの電圧の波形の一例を示す。図4のグラフでは、横軸が経過時間を示し、縦軸が生値電圧を示す。この実施例では、電圧センサ32により現れるパルスの波高値はV2である。波高値V2は、電源電圧Vccを検出抵抗Rdおよび絶縁抵抗Riで分圧することにより得られる電圧に比例する。この実施例では、例えば、パルス生成器31により100~999ms(第一時間)のパルスが印加されて測定された電圧が測定されている。図4に示す例では、絶縁抵抗Riの抵抗値が低下している。この場合、高電圧回路10に含まれるインダクタンス成分の影響が支配的となり、電圧波形がなまることになる。このため、図3に示すケースと比較して、測定ノードMに現れるパルスの波高値が閾値Vthを超えるタイミングは遅くなる。
【0037】
コントローラ33は、図3で示した電圧の積算値を算出する(ステップS12)。図5は、電圧センサ32により測定される電圧を積算して算出した電圧積算値の例を示す図である。図5のグラフでは、横軸が経過時間を示し、縦軸が合計値電圧を示す。コントローラ33は、図5に示すように、図4で示した電圧を所定時間毎に積算した値をプロットすることにより、図5に示す電圧積算値を算出することができる。
【0038】
そして、コントローラ33は、絶縁抵抗Riの抵抗値に応じた電圧積算値の関係をそれぞれプロットすることにより、図6に示すパラメータマップを作成する(ステップS13)。図6は、パラメータマップを示す図である。図6のグラフでは、横軸が絶縁抵抗値を示し、縦軸が電圧積算値を示す。パラメータマップは、絶縁抵抗Riの抵抗値に応じた電圧積算値の関係を示す。
【0039】
<実動作>
図7を参照して、従来技術の実動作の一例について説明する。図7は、従来技術の実動作のフローチャートの一例を示す図である。コントローラ33は、実動作として、車両1のキーオフ後に高電圧回路10により構成される燃料電池システムが終了フェーズへ移行して、下記の各ステップS21~S23において絶縁抵抗を測定する。
【0040】
コントローラ33は、第一時間パルスを印加して、電圧センサ32により電圧を測定する(ステップS21)。
【0041】
コントローラ33は、コントローラ33のマイコン内部で電圧積算値を算出する(ステップS22)。
【0042】
コントローラ33は、コントローラ33のマイコン内部でパラメータマップに電圧積算値を当てはめて、絶縁抵抗値を算出する(ステップS23)。上述のステップS11~ステップS13の従来の方法により、絶縁抵抗値を算出した場合には、マスター品と対象となる製品との間のモノバラや温度バラなどのばらつきを補正することができないため、別途キャリブレーションなどが必要となる。
【0043】
そこで、本発明の実施形態においては、事前準備のパラメータマップ作成時に、飽和電圧も取得し、ソフトに組み込むと共に、実動作の絶縁抵抗測定前に、電圧積算値を補正することとした。
【0044】
<事前準備>
以下、本発明の実施形態の事前準備について説明する。事前準備においては、コントローラ33のマイコンは、マスター品にて、絶縁抵抗のパラメータマップ作成時に、パルスオン時間を長くした。
【0045】
図8を参照して、本発明の実施形態の絶縁抵抗検出装置30が実行する事前準備の一例について説明する。図8は、本発明の実施形態の絶縁抵抗検出装置30が実行する事前準備のフローチャートの一例を示す図である。コントローラ33は、事前準備として、マスター品にて、フレーム-GND間に接続し、各抵抗値で電圧積算値を算出し、パラメータマップ(絶縁抵抗値VS電圧積算値)を作成し、コントローラ33のマイコン内のソフトウェアに組み込む。具体的には、下記の各ステップS31~S34においてパラメータマップを作成する。
【0046】
具体的には、コントローラ33は、パルスを電圧値が飽和するまで第二時間オンし続けて、飽和時の電圧値を飽和電圧としてコントローラ33のソフトウェアに組み込む(取得する)(ステップS31)。
【0047】
図9は、飽和時の電圧値の波形の一例を示す図である。図9のグラフでは、横軸が経過時間を示し、縦軸が生値電圧を示す。図9において、実線は、飽和しない場合の電圧値の波形L1を示し、点線は、飽和時の電圧値の波形L2を示す。この実施例では、飽和時の電圧値の波形L2は、飽和しない場合の電圧値の波形L1のピークとなる波高値V2を超えることにより、飽和しない場合の電圧値の波形L1よりも高くなり所定の値(波高値V3)で一定となる。この一定となった飽和時の波高値V3を飽和電圧として取得する。したがって、飽和時のパルスは、DC/DCコンバータ12のモノバラや温度バラの影響を最小限に抑制することができる。
【0048】
コントローラ33は、電圧センサ32により電圧を検出する(ステップS32)。図4は、電圧センサ32により測定される測定ノードMの電圧の波形の一例を示す。図4のグラフでは、横軸が経過時間を示し、縦軸が生値電圧を示す。この実施例では、電圧センサ32により現れるパルスの波高値はV2である。波高値V2は、電源電圧Vccを検出抵抗Rdおよび絶縁抵抗Riで分圧することにより得られる電圧に比例する。この実施例では、例えば、パルス生成器31により100~999ms(第一時間)のパルスが印加されて測定された電圧が測定されている。
【0049】
コントローラ33は、図4で示した電圧の積算値を算出する(ステップS33)。図5は、図4で示した電圧積算値を積算して算出した例を示す図である。図5のグラフでは、横軸が経過時間を示し、縦軸が合計値電圧を示す。コントローラ33は、図5に示すように、図4で示した電圧を所定時間毎に積算した値をプロットすることにより、図5に示す電圧積算値を算出することができる。例えば、図4のグラフにより示された電圧を所定時間毎にピークとなる波高値V2となるまでの時間の間積算した値をプロットすることにより図5に示す電圧積算値が算出される。
【0050】
そして、コントローラ33は、絶縁抵抗Riの抵抗値に応じた電圧積算値の関係をそれぞれプロットすることにより、図5に示すパラメータマップを作成する(ステップS34)。図6は、パラメータマップを示す図である。図6のグラフでは、横軸が絶縁抵抗値を示し、縦軸が電圧積算値を示す。パラメータマップは、絶縁抵抗Riの抵抗値に応じた電圧積算値の関係を示す。本発明の実施形態において作成されたパラメータマップは、飽和するまでスイッチSWをオンし続けて取得した際の電圧に基づいて作成されている。飽和し続けるまでスイッチSWをオンし続けた時間(第二時間)は、従来オンされていた時間(第一時間)のパルスを印加した結果よりも、長い時間オンし続けて作成されている。このため、第一時間よりも長い第二時間スイッチSWをオンし続けることにより作成された飽和時の電圧積算値を用いることによりDC/DCコンバータ12のモノバラや温度バラの影響を最小限に抑制することができる。
【0051】
<実動作>
図10を参照して、本発明の実施形態の実動作の一例について説明する。図10は、本発明の実施形態の実動作のフローチャートの一例を示す図である。コントローラ33は、実動作として、車両1のキーオフ後に高電圧回路10により構成される燃料電池システムが終了フェーズへ移行して、下記の各ステップS41~S45において絶縁抵抗値を算出する。
【0052】
コントローラ33は、DC/DCコンバータ12のスイッチSWをオンさせ飽和するまでパルスを第二時間印加して、電圧センサ32により電圧を測定する(ステップS41)。第二時間として、第一時間よりも長い時間が設定される。第二時間として、例えば1000~10000msを設定することができる。
【0053】
コントローラ33は、DC/DCコンバータ12のスイッチSWをオンさせ第一時間パルスを印加して、電圧センサ32により電圧を測定する(ステップS42)。第一時間として、第二時間よりも短い時間が設定される。第一時間として、例えば100~999msを設定することができる。
【0054】
コントローラ33は、コントローラ33のマイコン内部でステップS42において電圧センサ32で測定した電圧値を所定時間毎に積算して電圧積算値を算出する(ステップS43)。
【0055】
コントローラ33は、事前準備で作成したパラメータマップを参照することによりマスター品の飽和電圧と比較して、電圧積算値を補正する(ステップS44)。補正済電圧積算値は、下記式1により算出される。
【0056】
補正済電圧積算値=電圧積算値×(マスター品飽和電圧/測定した飽和電圧)・・・式1
【0057】
例えば、マスター品の飽和電圧が12.5Vであることがパラメータマップにより既知であり、ステップS41において測定した飽和電圧が12.0Vであり、ステップS43において算出した電圧積算値が14000である場合には、各々の値を式1に代入することにより、補正済電圧積算値=14000×(12.5/12.0)=「14583.3」が算出される。
【0058】
コントローラ33は、マイコン内部でパラメータマップにステップS44で算出した電圧積算値補正を当てはめることにより、絶縁抵抗値の候補を補正し絶縁抵抗値を算出する(ステップS45)。コントローラ33は、算出した絶縁抵抗値に基づき絶縁抵抗Riを検出することができる。
【0059】
このように、本発明の実施形態に係わる絶縁抵抗検出装置30は、スイッチSWをオンさせ第一時間のパルスを印加したときの電圧の結果と、絶縁抵抗に関する特性を示すパラメータマップと、から絶縁抵抗値を算出する。そして、スイッチSWを第一時間よりも長い第二時間飽和し続けるまでオンし続けたときの飽和電圧と、マスター品の飽和電圧と、を用いて、絶縁抵抗値の候補を補正し絶縁抵抗値を算出して、絶縁抵抗検出することができる。したがって、絶縁抵抗検知の動作中に補正を行い、システムの要求精度を満たすことができる。
【0060】
また、このように、絶縁抵抗は車両フレーム20を通過する冷却水を介して変動し、コントローラ33は、絶縁抵抗値を算出することでイオン交換器14の状態を検知することができる。したがって、絶縁抵抗を検出することでイオン交換器14の状態を検知することができる。これにより、燃料電池システムにおいて特に重要とされるイオン交換器14の故障検知を迅速かつ正確に行うことができ、燃料電池システムの故障による弊害を最小限に抑制することができる。
【0061】
また、このように、絶縁抵抗検出装置30は、スイッチSWをオンさせ第一時間のパルスを印加したときの電圧の結果を所定の単位時間毎に積算した電圧の積算値によって絶縁抵抗値が算出される。これにより、ノイズを吸収して電圧の積算値によって算出することができ、絶縁抵抗値の決定を正確に行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 :車両
10 :高電圧回路
11 :燃料電池セル
12 :DC/DCコンバータ
13 :ラジエタ
14 :イオン交換器
15 :負荷
20 :車両フレーム
30 :絶縁抵抗検出装置
31 :パルス生成器
32 :電圧センサ
33 :コントローラ
C :デカップリングコンデンサ
Rd :検出抵抗
Ri :絶縁抵抗
Rx :漏電抵抗

図1
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図10