(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080144
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】シヤッターケース、及び、当該シヤッターケースの吊上方法
(51)【国際特許分類】
E06B 9/17 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
E06B9/17 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193074
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 聡
(57)【要約】
【課題】シヤッターケースの設置位置の上方に、吊上装置設置スペースを確保できない現場であっても、吊上装置を用いて吊り上げることができ、また、シヤッターケースの設置位置をより上方に設定できるようになって、開口部を有効利用できるようにしたシヤッターケース等を提供する。
【解決手段】本発明に係るシヤッターケース4は、少なくとも上板40Aと下板40Bと側板と前側枠板40Fと前板41とを備えて構成され、これら上板と下板と側板と前側枠板と前板とで囲まれて後側が開口された収容空間40Uを備えたシヤッターケースであって、上板40Aは、当該シヤッターケースを吊り上げるための吊上装置が通過可能な大きさの開口に形成された吊上装置通し口7を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上板と下板と側板と前側枠板と前板とを備えて構成され、これら上板と下板と側板と前側枠板と前板とで囲まれて後側が開口された収容空間を備えたシヤッターケースであって、
上板は、当該シヤッターケースを吊り上げるための吊上装置が通過可能な大きさの開口に形成された吊上装置通し口を備えたことを特徴とするシヤッターケース。
【請求項2】
前記吊上装置通し口を塞ぐ着脱可能な塞板を備えたことを特徴とする請求項1に記載のシヤッターケース。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシヤッターケースの吊上方法であって、
前記シヤッターケースが設置される開口部の上方側に吊上装置を設置するステップと、
前記吊上装置の下端側を前記シヤッターケースの吊上装置通し口を介して当該シヤッターケース内の下部側に連結するステップと、
前記吊上装置が前記シヤッターケースの吊上装置通し口を通って当該シヤッターケースの内側に位置されるようになるまで、前記吊上装置を作動させて、前記シヤッターケースを前記開口部の上方側の所定の位置まで吊り上げるステップと、
を備えたことを特徴とするシヤッターケースの吊上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を開閉する開閉装置のシヤッターケース等に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物等に形成された開口部を開閉する開閉装置(シヤッター)のシヤッターケースとして、例えば、上板(上面板4)と、下板(下面板5)と、側板(左側面板2,右側面板3,中間側面板7)と、前板(前面板6)とを備え、これら上板と下板と側板と前板とで囲まれて後側が開口された収容空間を備えた構成のシヤッターケースが知られている(特許文献1参照)。
当該シヤッターケースは、例えば角ケースと呼ばれ、工場等で予め組み立てられて、取付現場まで搬送される。
そして、シヤッターケースの取付現場においては、まず、開口部の上方における壁側の躯体に、左右のブラケット、巻取シャフト等の巻取体、巻取体に巻装される開閉体、開閉駆動手段等の開閉装置上部部材が設置される。
即ち、開口部上方の左右の壁側の躯体にそれぞれブラケットが取付けられて、当該左右のブラケットに巻取シャフト等の巻取体の左右の軸端側が回転可能に支持される。
また、巻取体に開閉体が巻装され、さらに、開閉駆動手段等が取付けられる。
そして、開口部の上方に開閉装置上部部材が設置された後、例えばチェーンブロック等の吊上装置を用いてシヤッターケースを吊り上げて、上述した開閉装置上部部材を覆うように当該シヤッターケースを開口部の上方の所定の設置位置に位置決めして壁側の躯体に取付けるようにしている。
尚、当該シヤッターケースは、例えば、開閉駆動手段が収容される右側又は左側の収容空間側が前方に出っ張った形状に構成されていることが多い。
次に、従来のシヤッターケースの吊上方法について説明する。
例えば
図7に示すように、上板101と下板102と側板と前板103とで囲まれて後側が開口された収容空間100Uを備えた従来構成のシヤッターケース100を、吊上装置6としての例えばチェーンブロック60を用いて吊り上げる場合について説明する。
まず、建築構造物等に形成された図外の開口部の上方に、左右のブラケット、巻取シャフト等の巻取体、巻取体に巻装される開閉体、開閉駆動手段等の図外の開閉装置上部部材を設置する。
次に、チェーンブロック60の上フック62を、開口部の上方に位置される例えば天井側の躯体12に設けられた被引掛部13に引掛けることで、シヤッターケース4が設置される開口部の上方側にチェーンブロック60を設置する。
その後、チェーンブロック60のロードチェーン63の下フック64をシヤッターケース100の上板101の上面に設けられた被引掛部105に取付ける。
そして、チェーンブロック60を作動させて、シヤッターケース100を吊り上げた後、上述した開閉装置上部部材を覆うように当該シヤッターケース100を開口部の上方の所定の設置位置Xに位置決めして壁側の躯体11に取付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシヤッターケース100を用いた吊上方法によれば、チェーンブロック60を用いてシヤッターケース100を吊り上げるためには、シヤッターケース100が設置される所定の設置位置Xの上方に、例えばチェーンブロック60の上フック62から下フック64までのフック間最小距離H1よりも大きい上下高さ寸法のチェーンブロック設置スペースが必要となる。
従って、シヤッターケース100の設置位置Xの上方に、フック間最小距離H1以上の必要なチェーンブロック設置スペース(吊上装置設置スペース)を確保することができない現場においては、チェーンブロック60(吊上装置6)を用いてシヤッターケース100を吊り上げることができないという課題があった。
また、従来のシヤッターケース100を用いた吊上方法によれば、開口部の上方側に設置されたチェーンブロック60の下フック64よりも下方の位置までしかケース100を吊り上げることができないため、シヤッターケース100の設置位置を開口部の上端位置よりも上方に設定できずに、開口部を有効利用できなくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解消すべく、シヤッターケースの設置位置の上方に、吊上装置設置スペースを確保できない現場であっても、吊上装置を用いて吊り上げることができ、また、シヤッターケースの設置位置をより上方に設定できるようになって、開口部を有効利用できるようにしたシヤッターケース、及び、当該シヤッターケースを用いたシヤッターケースの吊上方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシヤッターケースは、少なくとも上板と下板と側板と前側枠板と前板とを備えて構成され、これら上板と下板と側板と前側枠板と前板とで囲まれて後側が開口された収容空間を備えたシヤッターケースであって、上板は、当該シヤッターケースを吊り上げるための吊上装置が通過可能な大きさの開口に形成された吊上装置通し口を備えたことを特徴とする。
また、前記吊上装置通し口を塞ぐ着脱可能な塞板を備えたことを特徴とする。
本発明に係るシヤッターケースによれば、シヤッターケースの設置位置の上方に、吊上装置設置スペースを確保できない現場であっても、吊上装置を用いて吊り上げることができ、また、シヤッターケースの設置位置をより上方に設定できるようになって、開口部を有効利用できるシヤッターケースを提供できるようになった。
また、本発明に係るシヤッターケースの吊上方法は、前記シヤッターケースが設置される開口部の上方側に吊上装置を設置するステップと、前記吊上装置の下端側を前記シヤッターケースの吊上装置通し口を介して当該シヤッターケース内の下部側に連結するステップと、前記吊上装置が前記シヤッターケースの吊上装置通し口を通って当該シヤッターケースの内側に位置されるようになるまで、前記吊上装置を作動させて、前記シヤッターケースを前記開口部の上方側の所定の位置まで吊り上げるステップと、を備えたことを特徴とするので、シヤッターケースの設置位置の上方に、吊上装置設置スペースを確保できない現場であっても、吊上装置を用いてシヤッターケースを吊り上げることができ、また、シヤッターケースの設置位置をより上方に設定できるようになって、開口部を有効利用できるようにしたシヤッターケースの吊上方法を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係るシヤッターケースを備えた開閉装置の正面図。
【
図2】実施形態1に係るシヤッターケースを前側から見た斜視図。
【
図3】実施形態1に係るシヤッターケースの分解斜視図。
【
図4】実施形態1に係るシヤッターケースを示し、(a)は平面図、(b)は正面図。
【
図5】実施形態1に係るシヤッターケースを示し、(a)は前方下側から見た斜視図、(b)は後方下側から見た斜視図。
【
図6】実施形態1に係るシヤッターケースの吊上方法を示す図。
【
図7】従来のシヤッターケースの吊上方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態1
まず、実施形態1に係るシヤッターケースを備えた開閉装置の概要を
図1に基づいて説明する。
図1に示すように、開閉装置1は、開閉体2と、開閉手段3と、実施形態1に係るシヤッターケース(以下、「ケース」と略す)4と、ガイドレール5とを備える。
当該ケース4は、例えば角ケースと呼称されるケースである。
尚、本明細書においては、前、後、上、下、左、右は、
図1,
図2等に示した方向と定義して説明する。例えば、
図1において、「開口部10の前後方向」は、開口部10を開閉する開閉体2の開閉方向(上下方向)及び開閉体2の左右の幅方向(左右方向)と直交する方向であり、
図1の紙面と直交する手前側を前側と定義して説明する。
【0009】
開閉体2は、開閉体本体20と、当該開閉体本体20の他端(下端)に設けられた他端部構成部材21とを備え、一端(上端)が例えば図外の吊元と呼称される連結部材を介して後述する巻取体30に巻取り及び巻出し(繰出し)可能に連結されて、建築構造物等に形成された開口部10を開閉するように構成される。
開閉体2は、例えばシヤッターカーテンと呼称される。
開閉体本体20は、例えばスラットカーテンと呼称される。
他端部構成部材21は、例えば座板又は水切と呼称される。
尚、「建築構造物」とは、一戸建て、マンション、ビル、倉庫、工場などの所謂建物や、車庫、カーポート、門、塀などの外構、トンネルや地下街などの建造物等をいう。
【0010】
開閉手段3は、開閉体2を巻き取る巻取シャフトや巻取枠等の巻取体30と、巻取体30の中心線を回転中心として当該巻取体30を回転させることにより、開閉体2による開口部10の開閉動作を行わせる開閉駆動手段31とを備える。
巻取体30は、左右の両端側が、左右のブラケット40L,40Rに、回転可能に支持されている。当該左右のブラケット40L,40Rは、開口部10の上方に位置される壁側の躯体11に取付けられている。
開閉駆動手段31は、電動式の場合は、巻取体30を巻取方向及び繰出方向に回転させる駆動源としての図外のモーター、及び、モーターの回転力を巻取体30に伝達する図外の歯車やベルト等の動力伝達機構などにより構成され、手動式の場合は、巻取体30を巻取方向に回転させる図外のバネ及びバネに蓄えられた回転力を巻取体30に伝達する図外のプーリーのような動力伝達手段などにより構成される。
開閉駆動手段31により、開閉体2が巻取体30に巻き取られたり、開閉体2が巻取体30から繰り出されることによって、開口部10が開閉される。
【0011】
左右のガイドレール5,5は、開口部10の左右に位置される壁側の躯体11に設置されて、開閉体2の左右の幅方向(左右方向)の端部22,22を開閉体2の開閉方向(上下方向)に沿ってガイドするガイド溝5aを有した構成である。
【0012】
実施形態1に係るケース4は、例えば
図2乃至
図4に示すように、上板40Aと、下板40Bと、左側側板40Cと、右側側板40Dと、中側側板40Eと、前側枠板40F,40Gと、当該前側枠板40F,40Gに着脱可能に取付られた複数枚の前板41,41…とを備え、これら上板40Aと下板40Bと左側側板40Cと右側側板40Dと中側側板40Eと前側枠板40F,40Gと複数枚の前板41,41…とで囲まれた後側開口42の収容空間40U,40Vを有した矩形箱状体に形成されたものである。
当該ケース4は、開口部10の上方における壁側の躯体11に後側開口42を向けて当該躯体11に取付けられる。
即ち、開口部10の上方における壁側の躯体11に取付けられた左右のブラケット40L,40R、当該左右のブラケット40L,40Rに回転可能に支持された巻取体30、巻取体30に巻装された開閉体2、左右のブラケット40L,40Rのうちの一方のブラケット側に設置された開閉駆動手段31等の開閉装置上部部材が、収容空間40U,40Vに収容されて当該ケース4で覆われるように、当該ケース4が開口部10の上方における壁側の躯体11に取付けられる。
【0013】
ケース4は、例えば、開閉駆動手段31が収容される収容空間40V側が前方に出っ張った構成とされている。例えば
図2に示すように、開閉駆動手段31が収容される右側の収容空間40Vの前後方向に延長する長さが長い寸法のケース4に形成される。
つまり、当該ケース4は、前後方向の長さが短い収容空間40Uと当該収容空間40Uよりも前後方向の長さが長い収容空間40Vとを備えた後端開口42の矩形箱状体に形成され、右側又は左側に開閉駆動手段31が収容される収容空間40Vを備えた構成となっている。例えば
図2に示すように、収容空間40Vは、上板40Aと下板40Bと右側側板40Dと中側側板40Eと前側枠板40Gとで囲まれた収容空間により構成される。
【0014】
上板40A、下板40B、左側側板40C、右側側板40D、中側側板40E、前板41は、例えば板厚が数mm~十数mm程度の平面板により構成される。
前側枠板40Fは、収容空間40Uの前側の開口40Hを構成するとともに、前板41の被取付部40Kを構成する枠板であり、前側枠板40Gは、収容空間40Vの前側の開口40Hを構成するとともに、前板41の被取付部を構成する枠板である。
図3に示すように、前側枠板40F及び前側枠板40Gは、ぞれぞれ、前板41の大きさに対応して当該前板41よりも一回り小さい寸法に形成された開口40Hと、当該開口40Hの周囲に設けられた枠状の被取付部40Kと、当該枠状の被取付部40Kの周囲を囲む枠状の周枠部40Lとを備えて構成される。
換言すれば、前側枠板40F及び前側枠板40Gは、例えば、中央に開口40Hが形成された枠状の被取付部40Kと、開口40Hを塞ぐように被取付部40Kに取付けられた前板41の外周を囲む枠状の周枠部40Lとが、溶接等で前後方向に重ね合わされて構成される。
【0015】
また、前板41の例えば上下縁側には、ビスなどの取付用のねじ50を通すための下孔51,51…が形成されている。
また、被取付部40Kの例えば上下縁側には、上述したねじ50を螺着させるためのねじ孔52,52…が形成されている。
つまり、前板41を周枠部40Lの内側に挿入して開口40Hを塞ぐとともに、前板41の後面の周縁側と被取付部40Kの前面の周縁側とを接触させた状態で、ねじ50を、前板41の下孔51に通して被取付部40Kのねじ孔52に螺着することによって、前板41の前面と周枠部40Lの前面とが同一平面上又は略同一平面上に位置されるように、前板41が、前側枠板40F又は前側枠板40Gに取付けられる。
また、ねじ50を外して、前側枠板40F又は前側枠板40Gから前板41を取り外すことにより、ケース4の前側から開口40Hを介してケース4の内側に位置される開閉装置上部部材のメンテナンス作業等が可能となる。
尚、
図2乃至
図4においては、収容空間40Uの前側に設けられた前側枠板40Fは、3枚の前板41,41,41の前面が左右方向に連なるように取付けられる構成の被取付部40K及び周枠部40Lを有したものを例示している。
【0016】
また、下板40Bにおける開閉駆動手段31の収容空間40Vの下方に対応する位置には、点検口43が設けられ、かつ、当該点検口43を開閉可能な蓋44を備える。
蓋44は、例えば、ヒンジ(丁番)を介してケース4の外側に移動可能に構成されて点検口43を開閉可能な扉蓋状、あるいは、ケース4の外側からねじ止等で着脱可能な構成とされて点検口43を塞いだり開くことができるように構成されている。
従って、当該蓋44を開いて、開閉駆動手段31の点検作業が可能となる。
【0017】
そして、実施形態1に係るケース4は、吊上装置6を用いて当該ケース4を吊り上げた際に、建築構造物の開口部10の上方に位置する例えば天井側の躯体12に取付けられた吊上装置6が、ケース4内に入り込めるように、上板40Aに、吊上装置6が通過可能な大きさの開口に形成された吊上装置通し口7を備え、かつ、当該吊上装置通し口7を塞ぐ着脱可能な塞板70を備えた構成とした。
例えば、吊上装置6としてのチェーンブロック60のギヤ機構,ホイール機構,ブレーキ機構等が内蔵された本体部61を通過させることができる大きさの吊上装置通し口7が、上板40Aに形成された構成のケース4とした。
塞板70は、例えば、ケース4の内側からねじ止等で着脱可能な構成とされて吊上装置通し口7を塞いだり開くことができるように構成されたり、あるいは、ヒンジ(丁番)を介してケース4の内側に移動可能に構成されて吊上装置通し口7を開閉可能な扉蓋状に構成されている。
【0018】
上述した角ケースと呼ばれるケース4は、予め工場などで組み立てられた後、取付現場に搬入される。
ケース4は、例えば、鋼板により形成された、上板40A、下板40B、左側側板40C、右側側板40D、中側側板40E、前側枠板40F,40G、前板41が組み合わされて構成される。
例えば、下板40Bの板面と左側側板40Cの板面とが互いに直交する板面となるように、下板40Bの左端縁と左側側板40Cの下端縁とが溶接にて接合され、下板40Bの板面と右側側板40Dの板面とが互いに直交する板面となるように、下板40Bの右端縁と右側側板40Dの下端縁とが溶接にて接合される。
また、上板40Aの板面と左側側板40Cの板面とが互いに直交する板面となるように、上板40Aの左端縁と左側側板40Cの上端縁とが溶接にて接合され、上板40Aの板面と右側側板40Dの板面とが互いに直交する板面となるように、下板40Bの右端縁と右側側板40Dの上端縁とが溶接にて接合される。
また、収容空間40Vの左側の側板を形成する中側側板40Eの板面と上板40Aの板面と下板40Bの板面とが互いに直交する板面となるように、中側側板40Eの上端縁と当該上端縁が対応する上板40Aの中側縁とが溶接にて接合されるとともに、中側側板40Eの下端縁と当該下端縁が対応する下板40Bの中側縁とが溶接にて接合される。
さらに、収容空間40Uの前側に配置される前側枠板40Fの板面と、上板40Aの板面、下板40Bの板面、左側側板40Cの板面、中側側板40Eの板面の各板面とが互いに直交する板面となるように、前側枠板40Fの上端縁と上板40Aの前端縁とが溶接にて接合され、前側枠板40Fの下端縁と下板40Bの前端縁とが溶接にて接合され、前側枠板40Fの左端縁と左側側板40Cの前端縁とが溶接にて接合され、前側枠板40Fの右端縁と中側側板40Eの後端縁とが溶接にて接合される。
さらに、収容空間40Vの前側に配置される前側枠板40Gの板面と、上板40Aの板面、下板40Bの板面、右側側板40Cの板面、中側側板40Eの板面の各板面とが互いに直交する板面となるように、前側枠板40Gの上端縁と上板40Aの前端縁とが溶接にて接合され、前側枠板40Gの下端縁と下板40Bの前端縁とが溶接にて接合され、前側枠板40Gの右端縁と右側側板40Cの前端縁とが溶接にて接合され、前側枠板40Gの左端縁と中側側板40Eの前端縁とが溶接にて接合される。
以上により、後側開口42を有した矩形箱状のケース4が製作される。
【0019】
ケース4は、例えば上述したように複数の鋼板を溶接して製作されるため重い。
従って、当該ケース4を、開口部10の上方に位置される壁側の躯体11に取付ける際には、通常、例えばチェーンブロック60等の吊上装置6を用いて、当該ケース4を、開口部10の上方まで吊り上げた後に、躯体11に取付ける。
【0020】
そこで、実施形態1に係るケース4の吊上方法では、ケース4が設置される開口部10の上方側に吊上装置6を設置する吊上装置設置ステップと、吊上装置6の下端側をケース4の吊上装置通し口7を介してケース4内の下部側に連結する連結ステップと、吊上装置6がケース4の吊上装置通し口7を通ってケース4の内側に位置されるようになるまで、吊上装置6を作動させて、ケース4を開口部10の上方側の所定の位置まで吊り上げる吊り上げステップと、を備えた方法とした。
【0021】
以下、吊上装置6としてチェーンブロック60を用いた場合の具体例を
図6に基づいて説明する。
まず、開口部10の上方に、左右のブラケット40L,40R、巻取シャフト等の巻取体30、巻取体30に巻装される開閉体2、開閉駆動手段31等の開閉装置上部部材を予め設置しておく。
そして、吊上装置設置ステップでは、チェーンブロック60の上フック62を、開口部10の上方に位置される例えば天井側の躯体12に設けられた被引掛部13に引掛けることで、ケース4が設置される開口部10の上方側に吊上装置6を設置する。
連結ステップでは、開口部10の下方の床側にケース4を設置した後、チェーンブロック60のロードチェーン63を下降させて、下フック64を、吊上装置通し口7の下方に位置されるケース4内の下部側に設けられた被引掛部71に引掛ける。
尚、ケース4の吊り上げ時においては、少なくとも吊上装置通し口7の前側に位置される前板41は、取り外しておくことが好ましい。
【0022】
吊り上げステップでは、遠隔操作又は手動操作によって、チェーンブロック60のロードチェーン63を動作させて、チェーンブロック60の下フック64を上昇させることにより、ケース4を吊り上げる。
尚、下フック64に、図外の例えば2つ又は3つ又は4つの補助連結チェーンを設けて、2つ又は3つ又は4つの補助連結チェーンの下端側をケース4内の下部側に連結して吊り上げるようにしてもよい。即ち、ケース4を、例えば、2点支持、又は、3点支持、又は、4点支持で吊り上げるようにしても良い。
吊り上げ時においては、チェーンブロック60の本体部61がケース4の吊上装置通し口7を通過するように、作業員がケース4の姿勢や位置を調整し、かつ、チェーンブロック60の本体部61がケース4の内側に位置されるようになるまで、ケース4を開口部10の上方側の所定の位置まで吊り上げる。
その後、ケース4を、開口部10の上方における壁側の躯体11に近づくように移動させて、予め決められた所定の設置位置Xに位置決めした後に、図外の固定手段を用いて当該躯体11における所定の設置位置Xにケース4を取付ける。
【0023】
尚、吊上装置通し口7は、ケース4の上板40Aに1つ以上形成されていればよい。
即ち、ケース4の大きさや重さに応じて、吊上装置通し口7を複数設けるようにして、各吊上装置通し口7,7…に対応した位置を、それぞれ、チェーンブロック60(吊上装置6)を用いて吊り上げるようにすればよい。
【0024】
そして、開口部10の上方における壁側の躯体11に予め決められた所定の設置位置Xに、ケース4を取付けた後、チェーンブロック60の上フック62を被引掛部13から外して、チェーンブロック60の全体を吊上装置通し口7を介してケース4内に移動させる。
その後、チェーンブロック60の全体を前側枠板40Fの開口40Hを介してケース4の外側に取り出す。
さらに、吊上装置通し口7をケース4の内側から塞板70で塞いだ後、取り外されていた前板41を前側枠板40Fや前側枠板40Gの被取付部40Kにねじ50を用いて取付けることにより、前側枠板40Fや前側枠板40Gの開口40Hを塞ぐ。
以上により、開口部10の上方における壁側の躯体11に予め決められた所定の設置位置Xに対するケース4の設置作業が終了する。
【0025】
尚、吊上装置通し口7、及び、チェーンブロック60の下フック64の被引掛部71の位置は、ケース4を所定の設置位置Xに取付ける際において、チェーンブロック60のロードチェーン63や本体部61が、例えば巻取体30に巻装された開閉体2等の開閉装置上部部材に接触しないような位置に設定すればよい。
【0026】
実施形態1に係るケース4を用いた吊上方法によれば、ケース4を吊り上げる際に、開口部10の上方側に設置されたチェーンブロック60(吊上装置6)の本体部61を吊上装置通し口7を介してケース4内に位置させることができるようになったので、チェーンブロック60でケース4を吊り上げる際にケース4の所定の設置位置Xの上方側に必要となっていたチェーンブロック設置スペースを、フック間最距離H1よりも小さい距離H2(
図6参照)に縮小できるようになった。
従って、ケース4の所定の設置位置Xの上方に、フック間最距離H1以上のチェーンブロック設置スペースを確保することができないような現場であっても、チェーンブロック60(吊上装置6)を用いてケース4を吊り上げることができるようになった。
また、従来のケース100を用いた吊上方法によれば、開口部10の上方側に設置されたチェーンブロック60の下フック64よりも下方の位置までしかケース100を吊り上げることができなかったが、実施形態1に係るケース4を用いた吊上方法によれば、開口部10の上方側に設置されたチェーンブロック60の下フック64よりも上方の位置までケース4を吊り上げることができるようになったので、ケース4の設置位置をより上方に設定できるようになり、開口部10を有効利用できるようになった。
また、実施形態1に係るケース4によれば、上板40Aに、吊上装置通し口7を備えた構成としたので、上述した効果が得られるケース4の吊上方法を実現できるようになった。
【0027】
即ち、実施形態1によれば、ケースの設置位置Xの上方に、吊上装置設置スペースを確保できない現場であっても、吊上装置6を用いて吊り上げることができ、また、ケースの設置位置Xをより上方に設定できるようになって、開口部10を有効利用できるようにしたケース4、及び、当該ケース4を用いたケースの吊上方法を提供できるようになった。
【0028】
尚、上記では、吊上装置6としてチェーンブロック60を用いた吊上方法を例示したが、本発明に係るケースの吊上方法においては、ウインチ、ホイスト、クレーン等のチェーンブロック以外の吊上装置を用いても構わない。
【0029】
実施形態2
図7に示した従来のケース100や実施形態1に係るケース4では、前板41,41…を取り外して、開閉装置(シヤッター)の開閉装置上部部材のメンテナンスを行うことが可能な構成であるが、この場合、例えば、前板41を取付枠部40Kに止付けていたビス等のねじ50をすべて外すことになるため、誤って、前板41が脱落する可能性があった。
そこで、実施形態2においては、例えば、前板41の上下縁側に設けられたビスなどのねじ50用の下孔51,51…(
図3参照)のうち、前板の下縁側に設ける下孔として、下端が開口する上下方向に長い縦長孔を備えた構成の前板とした。
このように、前板の下縁側に設ける下孔として、下端が開口された縦長孔、即ち、前板の下縁が開口した縦長孔を備えた構成としたことにより、以下のような、前板脱落防止効果が得られるようにした。
即ち、当該前板を取り外す際は、まず、前板の上縁側に止付けられていたねじを取り外し、その後、前板の下縁側に止付けられていたねじによる締結を少し緩めた状態としてから、前板を上方に移動させ、下孔の下端開口を介して前板をねじから外すようにする。
この場合、作業員は、必ず、前板を持った状態で、前板を取り外すようになるから、前板の取り外し時において、前板を脱落させる可能性が少なくなる。
【0030】
尚、前板の下縁側に設ける下孔を、左右方向に長い横長孔とし、かつ、当該横長孔の左端部、又は、当該横長孔の右端部に、ねじのねじ頭の径よりも大径の大径孔部を備えた構成の下孔としてもよい。
このような下孔を備えた前板によれば、当該前板を取り外す際は、まず、前板の上縁側に止付けられていたねじを取り外し、その後、前板の下縁側に止付けられていたねじによる締結を少し緩めた状態としてから、前板を左側又は右側に移動して、大径孔部を介して前板をねじから外すようにする。
この場合でも、作業員は、必ず、前板を持った状態で、前板を取り外すようになるから、前板の取り外し時において、前板を脱落させる可能性が少なくなる。
【0031】
即ち、実施形態2に係るケースの前板は、下縁側に設ける下孔として、ねじを緩めた状態でねじから外れるように構成された下孔を備えた前板としたので、取り外し時において、脱落防止に寄与できる前板を提供できるようになった。
【0032】
尚、上記では、開閉駆動手段31が収容される右側の収容空間40V側が前方に出っ張った構成のケース4を例示したが、本発明に係るケースは、開閉駆動手段31が収容される収容空間が前方に出っ張っていない構成のケースであっても構わない。
即ち、本発明に係るケースは、少なくとも上板と下板と左右の側板と前側枠板と前板とを備えて、これら上板と下板と左右の側板と前側枠板と前板とで囲まれて後側が開口された収容空間を備えた箱状体に構成されて、かつ、上板に、当該ケースを吊り上げるための吊上装置が通過可能な大きさの開口に形成された吊上装置通し口を備えた構成のケースであればよい。
また、吊上装置通し口の塞板は、備えていることが好ましいが、備えていなくても良い。
【符号の説明】
【0033】
4 ケース
6 吊上装置
7 吊上装置通し口
10 開口部
40A 上板
40B 下板
40C 左側側板(側板)
40D 右側側板(側板)
40E 中側側板(側板)
40F,40G 前側枠板
41 前板41
60 チェーンブロック(吊上装置)
70 塞板。