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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080154
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ダストシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3232 20160101AFI20240606BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20240606BHJP
   F16J 15/3212 20160101ALI20240606BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F16J15/3232 101
F16J15/3204 101
F16J15/3212
F16J15/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193090
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】大河内 翔
(72)【発明者】
【氏名】松本 啓佑
【テーマコード(参考)】
3J006
3J043
【Fターム(参考)】
3J006AA01
3J006AB03
3J006AE16
3J006AE18
3J006AE30
3J006AE32
3J006AE42
3J006CA01
3J043AA13
3J043BA07
3J043CA02
3J043CB13
3J043CB20
3J043DA20
(57)【要約】
【課題】 本発明に係るダストシールによれば、ダストシールの取り付けスペースの拡大を抑制しつつ、ダストリップ及びシールリップの性能低下を抑制することができる。
【解決手段】 ダストシール1は、補強環10と、補強環10に取り付けられた弾性体から形成された弾性体部20と、2つのスプリング30,40とを備えている。弾性体部20は、ダストリップ21と、シールリップ22とを有している。2つのスプリング30,40の一方は、ダストリップ21を内周側部材に向かって付勢するためのダストリップスプリング30であり、2つのスプリング30,40の他方は、シールリップ22を内周側部材に向かって付勢するためのシールリップスプリング40である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側部材と、該外周側部材内を通る内周側部材との間を環状の隙間を閉塞するためのダストシールであって、
軸線周りに環状の補強環と、
前記補強環に取り付けられた、前記軸線周りに環状の弾性体から形成された弾性体部と、
2つのスプリングとを備え、
前記弾性体部は、前記軸線周りに環状のダストリップと、前記軸線周りに環状のシールリップとを有しており、
前記2つのスプリングの一方は、前記ダストリップを前記内周側部材に向かって付勢するためのダストリップスプリングであり、
前記2つのスプリングの他方は、前記シールリップを前記内周側部材に向かって付勢するためのシールリップスプリングである、
ダストシール。
【請求項2】
前記ダストリップスプリング及び前記シールリップスプリングの一方は、前記弾性体部と前記補強環との間に挟まれるようになっており、
前記ダストリップスプリング及び前記シールリップスプリングの他方は、前記弾性体部の部分に挟まれるようになっている、
請求項1に記載のダストシール。
【請求項3】
前記ダストリップスプリングが、前記弾性体部と前記補強環との間に挟まれるようになっており、
前記シールリップスプリングが、前記弾性体部の部分に挟まれるようになっており、
前記シールリップスプリングは、前記シールリップと、前記弾性体部の前記シールリップに対向する部分との間に挟まれるようになっている、
請求項2に記載のダストシール。
【請求項4】
前記弾性体部は、基部を有しており、前記基部は、前記弾性体部において、前記シールリップに対向する部分であり、
前記補強環は、前記基部を覆うようになっており、
前記ダストリップスプリングは、前記弾性体部の前記基部と前記補強環との間に挟まれるようになっている、
請求項3に記載のダストシール。
【請求項5】
前記弾性体部の前記基部は、前記ダストリップと前記シールリップとの間につながっている、
請求項4に記載のダストシール。
【請求項6】
前記弾性体部の前記基部の前記軸線方向における一方の側の端は、前記補強環の前記軸線方向における前記一方の側の端よりも、前記軸線方向において前記一方の側に位置しており、
前記軸線方向における前記一方の側は、前記軸線方向において前記シールリップの前記基部につながる端から前記シールリップの先端に向かう方向の側である、
請求項3に記載のダストシール。
【請求項7】
前記ダストリップスプリングは、前記基部及び前記ダストリップを夫々少なくとも部分的に外周側から覆うように形成された板ばねである、
請求項4に記載のダストシール。
【請求項8】
前記シールリップスプリングは、内周側から前記基部の少なくとも一部を、また、外周側から前記シールリップの少なくとも一部を覆うように形成された、鋭角に屈曲された板ばねである、
請求項4に記載のダストシール。
【請求項9】
前記補強環は、前記軸線に沿って延びる筒状の部分である筒部と、該筒部の前記軸線方向における他方の端から内周側に延びる部分であるフランジ部とを有する、
請求項6に記載のダストシール。
【請求項10】
前記補強環と、前記弾性体部と、前記ダストリップスプリングとは、接着されており、
前記弾性体部と、前記シールリップスプリングとは、接着されている、
請求項1に記載のダストシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダストシールに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧を利用して部材を駆動する油圧駆動装置、例えば油圧シリンダには、作動油を密封するための密封装置が設けられている。例えば、建設機械の油圧シリンダは、土埃や塵埃、ダスト等の異物に接触しやすい環境で用いられるため、建設機械の油圧シリンダの密封装置は異物に接触しやすい。密封装置のシールリップに異物が接触すると、油圧シリンダ内の作動油の漏れにつながる場合がある。このため、建設機械の油圧シリンダには、密封装置のシールリップに向かう異物の進入を防ぐためのシール装置であるダストシールが設けられているものがある。
【0003】
油圧シリンダのロッドを締め付けるダストリップの緊迫力が低下すると、ダストシールの異物の進入を防ぐ性能が低下する。ダストリップの緊迫力の低下(所謂、へたり)を防ぐために、ダストリップを内周方向に付勢するスプリングが設けられているダストシールが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63-27763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなダストシールには、例えばダストリップが異物を掻き出す際に作動油が漏れ出ることを防止するために、作動油側にシールリップが設けられているものがある。一方、建設機械におけるカーボンニュートラルの観点から、また、自律する建設機械との連携のもと、連携する各建設機械の高い稼働率を維持するために、油圧シリンダのダストシールには、寿命の長いダストシールが求められている。このため、シールリップに対しても、ダストリップと同様に、へたりによるシール性能の低下を防止してダストシールの寿命の短縮を防止する構成が求められている。
【0006】
これに対し、上記従来のダストシールと同様な構造を用いて、シールリップに対してスプリングを取り付けると、ダストシールの大型化につながり、油圧シリンダにおけるダストシールを取り付けるためのスペースを拡大する必要が生じる。ダストシールは交換部品であり、油圧シリンダにおけるダストシールの取り付けスペースの拡大を抑制することにより、このダストシールを種々のダストシールに変えて使用できるようにすることができる。
【0007】
このように、従来のダストシールに対しては、ダストシールの取り付けスペースを拡大させることなく、ダストリップに加えてシールリップの性能低下を防止する構成が求められている。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダストシールの取り付けスペースの拡大を抑制しつつ、ダストリップ及びシールリップの性能低下を抑制することができるダストシールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るダストシールは、外周側部材と、該外周側部材内を通る内周側部材との間を環状の隙間を閉塞するためのダストシールであって、軸線周りに環状の補強環と、前記補強環に取り付けられた、前記軸線周りに環状の弾性体から形成された弾性体部と、2つのスプリングとを備え、前記弾性体部は、前記軸線周りに環状のダストリップと、前記軸線周りに環状のシールリップとを有しており、前記2つのスプリングの一方は、前記ダストリップを前記内周側部材に向かって付勢するためのダストリップスプリングであり、前記2つのスプリングの他方は、前記シールリップを前記内周側部材に向かって付勢するためのシールリップスプリングである。
【0010】
本発明の一態様に係るダストシールにおいて、前記ダストリップスプリング及び前記シールリップスプリングの一方は、前記弾性体部と前記補強環との間に挟まれるようになっており、前記ダストリップスプリング及び前記シールリップスプリングの他方は、前記弾性体部の部分に挟まれるようになっている。
【0011】
本発明の一態様に係るダストシールにおいて、前記ダストリップスプリングが、前記弾性体部と前記補強環との間に挟まれるようになっており、前記シールリップスプリングが、前記弾性体部の部分に挟まれるようになっており、前記シールリップスプリングは、前記シールリップと、前記弾性体部の前記シールリップに対向する部分との間に挟まれるようになっている。
【0012】
本発明の一態様に係るダストシールにおいて、前記弾性体部は、基部を有しており、前記基部は、前記弾性体部において、前記シールリップに対向する部分であり、前記補強環は、前記基部を覆うようになっており、前記ダストリップスプリングは、前記弾性体部の前記基部と前記補強環との間に挟まれるようになっている。
【0013】
本発明の一態様に係るダストシールにおいて、前記弾性体部の前記基部は、前記ダストリップと前記シールリップとの間につながっている。
【0014】
本発明の一態様に係るダストシールにおいて、前記弾性体部の前記基部の前記軸線方向における一方の側の端は、前記補強環の前記軸線方向における前記一方の側の端よりも、前記軸線方向において前記一方の側に位置しており、前記軸線方向における前記一方の側は、前記軸線方向において前記シールリップの前記基部につながる端から前記シールリップの先端に向かう方向の側である。
【0015】
本発明の一態様に係るダストシールにおいて、前記ダストリップスプリングは、前記基部及び前記ダストリップを夫々少なくとも部分的に外周側から覆うように形成された板ばねである。
【0016】
本発明の一態様に係るダストシールにおいて、前記シールリップスプリングは、内周側から前記基部の少なくとも一部を、また、外周側から前記シールリップの少なくとも一部を覆うように形成された、鋭角に屈曲された板ばねである。
【0017】
本発明の一態様に係るダストシールにおいて、前記補強環は、前記軸線に沿って延びる筒状の部分である筒部と、該筒部の前記軸線方向における他方の端から内周側に延びる部分であるフランジ部とを有する。
【0018】
本発明の一態様に係るダストシールにおいて、前記補強環と、前記弾性体部と、前記ダストリップスプリングとは、接着されており、前記弾性体部と、前記シールリップスプリングとは、接着されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るダストシールによれば、ダストシールの取り付けスペースの拡大を抑制しつつ、ダストリップ及びシールリップの性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るダストシールの軸線に沿う断面における断面図である。
図2図1に示すダストシールの断面の軸線対する一方を示す部分断面図である。
図3】ダストシールの一部の分解斜視図である。
図4】ダストシールのダストリップスプリング及びシールリップスプリングを形成平板状のバネ部材を示す図である。
図5】油圧シリンダに取り付けられた使用状態におけるダストシールを示す油圧シリンダの軸線に沿う断面の一部を示す部分断面図である。
図6図5のダストシールの近傍を示す部分断面図である。
図7】ダストシールの作用を説明するための図である。
図8】本発明の実施形態に係るダストシールの変形例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
本発明に係るダストシールは、外周側部材と、この外周側部材内を通る内周側部材との間の環状の隙間を閉塞するためのダストシールである。本発明に係るダストシールは、土埃や塵埃、ダスト等の異物の進入を防ぐために用いられる。外周側部材は、例えばハウジングであり、内周側部材は、例えばハウジング内に収容され、往復運動可能にハウジングに支持される軸部材である。外周側部材及び内周側部材は夫々、具体的には例えば、建設機械の油圧シリンダのハウジングとロッドであり、本発明に係るダストシールは、具体的には例えば、油圧シリンダのシーリングシステムのダストシールである。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るダストシール1の軸線xに沿う断面における断面図であり、図2は、図1に示すダストシール1の断面の軸線x対する一方を示す部分断面図である。また、図3は、ダストシール1の一部の分解斜視図である。図3には、ダストシール1の一部が切断されて示されている。図1~3に示すように、ダストシール1は、軸線x周りに環状の補強環10と、補強環10に取り付けられた、軸線x周りに環状の弾性体から形成された弾性体部20と、2つのスプリング30,40とを備えている。弾性体部20は、軸線x周りに環状のダストリップ21と、軸線x周りに環状のシールリップ22とを有している。2つのスプリング30,40の一方は、ダストリップ21を内周側部材に向かって付勢するためのダストリップスプリング30であり、2つのスプリング30,40の他方は、シールリップ22を内周側部材に向かって付勢するためのシールリップスプリング40である。以下、ダストシール1の構成について具体的に説明する。
【0024】
ダストシール1において、ダストリップスプリング30及びシールリップスプリング40の一方は、弾性体部20と補強環10との間に挟まれるようになっており、ダストリップスプリング30及びシールリップスプリング40の他方は、弾性体部20の部分に挟まれるようになっている。本実施形態においては、ダストリップスプリング30が、弾性体部20と補強環10との間に挟まれるようになっており、シールリップスプリング40が、弾性体部20の部分に挟まれるようになっている。シールリップスプリング40は、例えば、シールリップ22と、弾性体部20のシールリップ22に対向する部分との間に挟まれるようになっている。
【0025】
以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(図1参照)方向の側(軸線方向において一方の側)を内側とし、軸線x方向において矢印b(図1参照)方向の側(軸線方向において他方の側)を外側とする。より具体的には、内側とは、軸線x方向において、密封対象空間に近づく方向の側であり、外側とは、軸線x方向において、密封対象空間から離れる方向の側であり、大気側である。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(図1の矢印c方向)の側を外周側とし、軸線xに近づく方向(図1の矢印d方向)の側を内周側とする。
【0026】
補強環10は、例えば図1~3に示すように、断面L字型の形状を有しており、軸線xに沿って延びる筒状の部分である筒部11と、筒部11の一方(外側)の端11aから内周側に延びる軸線x周りに環状の部分であるフランジ部12とを有している。筒部11は、具体的には例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円筒状又は略円筒状の部分であり、外周側に面す円筒面又は略円筒面である外周面11bと、内周側に面す円筒面又は略円筒面である内周面11cとを有している。フランジ部12は、軸線xに直交する面に平行又は略平行に広がる、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円環状又は略円環状の部分であり、内側に面する円環状又は略円環状に延びる面である内側面12aを有している。内側面12aは、例えば、軸線xに直交する面に平行又は略平行に広がっている。補強環10は、例えば、後述する弾性体部20の基部23及び腰部24夫々を外周側及び外側から覆うようになっている。
【0027】
補強環10は、金属製の部材であり、一体の部材として形成されており、筒部11及びフランジ部12は、同一の材料から一体に形成された補強環10の各部分であり、一体的に連続している。補強環10の金属材としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。なお、補強環10の材料は金属でなくてもよく、例えば、樹脂であってもよい。
【0028】
弾性体部20は、例えば図1~3に示すように、ダストリップ21と、シールリップ22と、基部23とを有している。基部23は、弾性体部20においてシールリップ22に対向する部分であり、具体的には、径方向において外周側からシールリップ22に対向している。基部23は、例えば、軸線xに沿って延びる筒状の部分であり、外周側に面する面である外周面23aを有している。外周面23aは、例えば、軸線xに沿って延びる筒面であり、具体的には例えば、図2に示すように、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円筒面又は略円筒面である。また、基部23は、ダストリップ21とシールリップ22との間につながっている。例えば、弾性体部20は、腰部24を有しており、基部23とダストリップ21及びシールリップ22とは夫々、腰部24を介してつながっている。腰部24は、具体的には例えば、基部23の外側の端23bから内周側に延びる環状の部分である。また、腰部24は、外側に面する面である外側面24bを有しており、外側面24bは、例えば、軸線xに直交する平面に平行又は略平行になっている。ダストリップ21及びシールリップ22は、腰部24の内周側の端部(端部24a)から延びている。
【0029】
ダストリップ21は、例えば図1,2に示すように、腰部24の端部24aから軸線xに沿って外側に延びている。具体的には例えば、ダストリップ21は、腰部24の端部24aから外側及び内周側に向かって、軸線xに対して傾斜して延びている。ダストリップ21の先端部21aには、内周側に突出するリップ先端部21bが形成されている。リップ先端部21bの軸線xに沿う断面の形状(以下、単に「断面形状」ともいう。)は、例えば図2に示すように、楔形となっている。また、ダストリップ21は、外周側に面する面である外周面21cを有している。外周面21cは、例えば、軸線xに沿って延びる筒面であり、具体的には例えば、図2に示すように、外側に向かって縮径する筒面であり、例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円錐面又は略円錐面である。
【0030】
シールリップ22は、例えば図1,2に示すように、腰部24の端部24aから軸線xに沿って内側に延びている。具体的には例えば、シールリップ22は、腰部24の端部24aから内側及び内周側に向かって、軸線xに対して傾斜して延びている。シールリップ22の先端部22aには、内周側に突出するリップ先端部22bが形成されている。リップ先端部22bの断面形状は、例えば図2に示すように、楔形となっている。また、シールリップ22は、外周側に面する面である外周面22cを有している。
【0031】
弾性体部20は、上述のように弾性体から形成されている部材であり、一体の部材として形成されており、ダストリップ21、シールリップ22、基部23及び腰部24は、同一の材料から一体に形成された弾性体部20の各部分であり、一体的に連続している。弾性体部20の弾性体としては、例えば、ウレタンゴムがある。また、弾性体部20の弾性体としては、ウレタンゴムのほかの各種樹脂材や各種ゴム材がある。各種樹脂材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)又はポリエチレン(PE)等がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)、シリコンゴム、及びフッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムがある。
【0032】
弾性体部20は、上述のような部分を有しており、図1~3に示すように、シールリップ22と基部23との間に環状の凹部25が形成されている。また、弾性体部20の外周側には、基部23の外周面23aと、腰部24の外側面24bと、ダストリップ21の外周面21cとが、段差を有する面(段差面20a)を形成している。
【0033】
弾性体部20の凹部25は、シールリップスプリング40が取り付けられる空間である。凹部25は、シールリップ22の外周面22cと、この外周面22cに径方向において対向する基部23の内周面23cと、シールリップ22の外周面22c及び基部23の内周面23cの夫々の外側の端に接続する腰部24の内側面24cとによって画成された空間である。なお、基部23の内周面23cは、基部23の内周側に面する面であり、腰部24の内側面24cは、腰部24の内側に面する面である。凹部25は、例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円環状又は略円環状の線に沿って環状に延びている。
【0034】
凹部25は、シールリップスプリング40が少なくとも径方向において接触するような形状となっている。具体的には、シールリップ22の外周面22cは、この外周面22cの少なくとも一部が、凹部25に取り付けられたシールリップスプリング40と接触するような形状となっている。また、基部23の内周面23cは、この内周面23cの少なくとも一部が、凹部25に取り付けられたシールリップスプリング40と接触するような形状となっている。シールリップ22の外周面22cは、例えば、軸線x方向において内側に向かうにつれて縮径する環状の面であり、具体的には例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円錐面又は略円錐面である。また、基部23の内周面23cは、例えば、軸線x方向において内側に向かうにつれて拡径する環状の面であり、具体的には例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円錐面又は略円錐面である。
【0035】
図2に示すように、基部23の先端23d側の端部には、例えば、内周面23cから内周側に突出した突出部23eが形成されている。また、基部23の先端23d側の端部は、例えば、シールリップ22の先端22dよりも、軸線x方向において内側に突出している。例えば図3に示すように、基部23の突出部23eの部分が、シールリップ22の先端22dよりも、軸線x方向において内側に突出している。また、基部23の先端23dは、ダストシール1において、補強環10の筒部11の先端11dよりも、軸線x方向において内側に位置するようになっている。なお、シールリップ22の先端22dは、軸線x方向において内側のシールリップ22の端であり、基部23の先端23dは、軸線x方向において内側の基部23の端である。また、補強環10の筒部11の先端11dは、軸線x方向において内側の筒部11の端である。
【0036】
また、図2に示すように、基部23の外周面23aの端23b側の端部には、内周側に凹む環状の凹部23fが形成されている。凹部23fは、後述する組み立てられた状態のダストシール1において、シールリップスプリング40の端部が収容される部分であり、例えば、収容されたシールリップスプリング40の部分が基部23の外周面23aと面一又は略面一となるような形状となっている。なお、基部23には凹部23fが形成されていなくてもよい。
【0037】
ダストリップスプリング30は、上述のように、ダストリップ21を内周側に付勢するための部材であり、基部23及びダストリップ21を夫々少なくとも部分的に外周側から覆うように形成された板ばねである。ダストリップスプリング30は、例えば、弾性体部20の外周側の面である、基部23の外周面23aと、腰部24の外側面24bと、ダストリップ21の外周面21cとがつながって形成される段差面20aに接触するような形状を有している。ダストリップスプリング30は、弾性体部20の段差面20aに沿った形状を有する環状のばね部材であり、例えば、板状のばね部材が弾性体部20の段差面20aに沿った形状に加工されて作られる。ダストリップスプリング30は、例えば図1~3に示すように、基部23の外周面23aに接触する部分である径方向固定部31と、腰部24の外側面24bに接触する部分である軸線方向固定部32と、ダストリップ21の外周面21cに接触する部分である付勢部33とを有している。
【0038】
径方向固定部31は、軸線xに沿って延びる筒状の部分であり、具体的には例えば、図2,3に示すように、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円筒又は略円筒状の部分である。また、径方向固定部31は、例えば、基部23に形成された凹部23fに収容されるような形状となっている。軸線方向固定部32は、図2,3に示すように、径方向固定部31の外側の端(端31a)から内周側に延びる環状の部分であり、軸線xに直交する面に沿って延びており、例えば、軸線xに直交する面に平行又は略平行に延びる軸線xを中心軸又は略中心軸とする円環又は略円環状の部分である。付勢部33は、図2,3に示すように、軸線方向固定部32の内周側の端(端32a)から外側に延びる、軸線xに沿って延びる環状の部分であり、例えば、外側に向かって縮径する環状の部分であり、具体的には例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円錐筒又は略円錐筒状の部分である。例えば、ダストリップスプリング30において、径方向固定部31と軸線方向固定部32とは、互いに滑らかに接続されており、軸線方向固定部32と付勢部33とは、互いに滑らかに接続されている。
【0039】
ダストリップスプリング30の径方向固定部31及び軸線方向固定部32は夫々、全体又は略全体において、基部23の外周面23a及び腰部24の外側面24bに接触するような形状となっている。なお、ダストリップスプリング30の径方向固定部31及び軸線方向固定部32は夫々、一部において、基部23の外周面23a及び腰部24の外側面24bに接触するような形状となっていてもよい。また、ダストリップスプリング30の付勢部33は、一部において、ダストリップ21の外周面21cに接触するような形状となっている。例えば、付勢部33は、先端33a側の端部33bにおいて、ダストリップ21の外周面21cに接触するような形状となっている。なお、付勢部33は、全体において、ダストリップ21の外周面21cに接触するような形状となっていてもよい。また、付勢部33は、端部33bではない部分において、ダストリップ21の外周面21cに接触するような形状となっていてもよい。また、付勢部33は、後述するダストシール1の使用状態において、上述のように、ダストリップ21の外周面21cに接触するような形状となっていてもよい。
【0040】
例えば図2に示すように、ダストリップスプリング30の断面の厚さは、ダストリップスプリング30の延び方向に亘って一様又は略一様になっている。また、ダストリップスプリング30は、例えば図4に示すような、一対の端50a,50bを有する平板状のバネ部材50から形成される。バネ部材50は、端50aから延びるスリット50cと、端50bから延びるスリット50dとをバネ部材50の延び方向に交互に形成しており、端50aと端50bとの間を一方の方向又は他方の方向に交互に延びている。
【0041】
ダストリップスプリング30は、上述のようにバネ部材から形成されている部材であり、一体の部材として形成されており、径方向固定部31、軸線方向固定部32及び付勢部33は、同一の材料から一体に形成されたダストリップスプリング30の各部分であり、一体的に連続している。ダストリップスプリング30のバネ部材の材料は、例えば、金属である。ダストリップスプリング30のバネ部材の材料は、金属でなくてもよく、例えば樹脂であってもよい。ダストリップスプリング30のバネ部材の樹脂材料としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)又はポリアミド(PA)等がある。
【0042】
シールリップスプリング40は、上述のように、シールリップ22を内周側に付勢するための部材であり、内周側から基部23の少なくとも一部を、また、外周側からシールリップ22の少なくとも一部を覆うように形成された、鋭角に屈曲された板ばねである。シールリップスプリング40は、具体的には、弾性体部20の凹部25に収容されて、基部23の内周面23cと、シールリップ22の外周面22cとに接触するような形状を有している。シールリップスプリング40は、弾性体部20の凹部25を画成する面に沿った断面略v字状の形状を有する環状のばね部材であり、例えば、板状のばね部材が凹部25に沿った形状に加工されて作られる。シールリップスプリング40は、例えば図1~3に示すように、基部23の内周面23cに接触する部分である固定部41と、シールリップ22の外周面22cに接触する部分である付勢部42と、固定部41と付勢部42とを接続する部分である接続部43とを有している。
【0043】
固定部41は、図2,3に示すように、軸線xに沿って延びる環状の部分であり、例えば、内側に向かって拡径する環状の部分であり、具体的には例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円錐筒又は略円錐筒状の部分である。付勢部42は、図2,3に示すように、軸線xに沿って延びる環状の部分であり、例えば、内側に向かって縮径する環状の部分であり、具体的には例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円錐筒又は略円錐筒状の部分である。接続部43は、固定部41の外側の端41aと付勢部42の外側の端42aとの間に曲がって延びる部分であり、接続部43の断面形状は、例えば外側に突出した曲線を描く。接続部43は、断面において、固定部41と付勢部42との間の角度が鋭角となるように曲がっている。また、例えば、シールリップスプリング40において、固定部41と接続部43とは、互いに滑らかに接続されており、接続部43と付勢部42とは、互いに滑らかに接続されている。
【0044】
シールリップスプリング40の固定部41は、全体又は略全体において、基部23の内周面23cに接触するような形状となっている。なお、シールリップスプリング40の固定部41は、一部において、基部23の内周面23cに接触するような形状となっていてもよい。また、シールリップスプリング40の付勢部42は、一部において、シールリップ22の外周面22cに接触するような形状となっている。例えば、付勢部42は、先端42b側の端部42cにおいて、シールリップ22の外周面22cに接触するような形状となっている。なお、付勢部42は、全体において、シールリップ22の外周面22cに接触するような形状となっていてもよい。また、付勢部42は、端部42cではない部分において、シールリップ22の外周面22cに接触するような形状となっていてもよい。また、付勢部42は、後述するダストシール1の使用状態になって、上述のように、シールリップ22の外周面22cに接触するような形状となっていてもよい。シールリップスプリング40の接続部43は、例えば、一部又は全体において、腰部24の内側面24cに接触するような形状となっている。接続部43は、腰部24の内側面24cに接触しない形状となっていてもよい。
【0045】
例えば図2に示すように、シールリップスプリング40の断面の厚さは、シールリップスプリング40の延び方向に亘って一様又は略一様になっている。また、シールリップスプリング40は、ダストリップスプリング30と同様に、例えば図4に示すような、平板状のバネ部材50から形成される。
【0046】
シールリップスプリング40は、上述のようにバネ部材から形成されている部材であり、一体の部材として形成されており、固定部41、接続部43及び付勢部42は、同一の材料から一体に形成されたシールリップスプリング40の各部分であり、一体的に連続している。シールリップスプリング40のバネ部材の材料は、例えば、金属である。シールリップスプリング40のバネ部材の材料は、金属でなくてもよく、例えば樹脂であってもよい。シールリップスプリング40のバネ部材の樹脂材料としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)又はポリアミド(PA)等がある。
【0047】
ダストシール1は、上述の補強環10、弾性体部20、ダストリップスプリング30及びシールリップスプリング40が組み付けられて組み立てられる。図1,2に示すように、組み立てられた状態のダストシール1において、ダストリップスプリング30は、弾性体部20の段差面20aに接触している。具体的には、ダストリップスプリング30の径方向固定部31が外周側から弾性体部20の基部23の外周面23aに接触しており、また、凹部23f内に収容されている。また、径方向固定部31は、基部23の外周面23aと面一又は略面一になっている。また、具体的には、ダストリップスプリング30の軸線方向固定部32が外側から弾性体部20の腰部24の外側面24bに接触している。また、具体的には、ダストリップスプリング30の付勢部33が外周側から弾性体部20のダストリップ21の外周面21cに接触している。
【0048】
また、図1,2に示すように、組み立てられた状態のダストシール1において、補強環10は、弾性体部20に組み付けられたダストリップスプリング30を弾性体部20に固定するために、弾性体部20の基部23及び腰部24、並びにダストリップスプリング30の径方向固定部31及び軸線方向固定部32を、外周側及び外側から覆う。具体的には、補強環10の筒部11の内周面11cが、基部23の外周面23a及び径方向固定部32に外周側から接触し、また、補強環10のフランジ部12の内側面12aが、腰部24の外側面24b及び軸線方向固定部32に外側から接触している。
【0049】
また、図1,2に示すように、組み立てられた状態のダストシール1において、シールリップスプリング40は、弾性体部20の凹部25に収容されて、凹部25を画成する面に接触している。具体的には、シールリップスプリング40の固定部41が内周側から弾性体部20の基部23の内周面23cに接触しており、また、シールリップスプリング40の付勢部42が外周側からシールリップ22の外周面22cに接触している。また、具体的には、シールリップスプリング40の接続部43が内側から弾性体部20の腰部24の内側面24cに内側から接触している。
【0050】
また、図2に示すように、組み立てられた状態のダストシール1において、シールスプリング40の固定部41の先端41bは、基部23の先端23d側の端部に設けられた凹部23eに軸線x方向において対向している。これにより、シールリップスプリング40は、凹部25から外れ難くなっている。
【0051】
上述のように、組み立てられた状態のダストシール1において、弾性体部20の基部23の先端23dは、補強環10の筒部11の先端11dよりも、軸線x方向において内側に位置するようになっている。つまり、図1,2に示すように、組み立てられた状態のダストシール1において、基部23の先端23dは、補強環10の筒部11の先端11dよりも軸線x方向において内側に位置している。また、組み立てられた状態のダストシール1において、基部23のほとんどの部分、並びにシールリップ22及び腰部24は、径方向において補強環10に重なっている。一方、組み立てられた状態のダストシール1において、ダストリップ21のほとんどの部分は、径方向において補強環10に重なっていない。
【0052】
なお、補強環10の筒部11の内周面11cの径の値は、例えば、弾性体部20の基部23の外周面23aの径の値よりも小さい。なお、筒部11の内周面11cの径の値は、基部23の外周面23aの径の値と同じであってもよく、外周面23aの径の値よりも大きくてもよい。また、補強環10の筒部11の内周面11cの径の値は、例えば、ダストリップスプリング30の径方向固定部31の外周面31bの径の値よりも小さい。なお、筒部11の内周面11cの径の値は、径方向固定部31の外周面31bの径の値と同じであってもよく、外周面31bの径の値よりも大きくてもよい。また、ダストリップスプリング30の径方向固定部31の内周面31cの径の値は、例えば、弾性体部20の基部23の凹部23fの径の値よりも小さい。なお、径方向固定部31の内周面31cの径の値は、凹部23fの径の値と同じであってもよく、凹部23fの径の値よりも大きくてもよい。径方向固定部31の外周面31bは、径方向固定部31の外周側に面する面であり、径方向固定部31の内周面31cは、径方向固定部31の内周側に面する面である。
【0053】
次いで、上述の構成を有するダストシール1の作用について説明する。図5は、油圧シリンダ100に取り付けられた使用状態におけるダストシール1を示す油圧シリンダ100の軸線xに沿う断面の一部を示す部分断面図であり、図6は、図5のダストシール1の近傍を示す油圧シリンダ100の部分断面図である。なお、油圧シリンダ100において、各部材の軸線は、ダストシール1の軸線xと一致又は略一致するようになっており、説明の便宜上、油圧シリンダ100の各部材の軸線を軸線xとする。なお、図5,6において、ダストリップ21、シールリップ22、ダストリップスプリング30及びシールリップスプリング40は、変形していない状態で示されている。
【0054】
油圧シリンダ100は、例えば、建設機械に使用されて建設機械の作動部を駆動するためのものである。油圧シリンダ100は、例えば図5に示すように、シリンダチューブ101と、ロッド102とを有している。シリンダチューブ101は、軸線xに沿って延びる筒状の部材である。シリンダチューブ101は、油圧シリンダ100のハウジングを構成する。ロッド102は、軸線xに沿って延びる棒状の部材であり、軸部材である。ロッド102は、シリンダチューブ101内に収容されており、軸線xに沿って往復運動可能にシリンダチューブ101に支持されている。シリンダチューブ101は、ダストシール1の取付対象の外周側部材であり、ロッド102は、ダストシール1の取付対象の内周側部材である。
【0055】
シリンダチューブ101内には、ロッド102に作用してロッド102を往復運動させるための作動油が収容されている。油圧シリンダ100には、この作動油をシリンダチューブ101内部に密封するための密封装置としてロッドシール110が設けられている。また、油圧シリンダ100には、ロッドシール110に加わる作動油の油圧を緩衝するためのバッファリング111が、ロッドシール110よりも内側に設けられている。また、油圧シリンダ100には、ハウジング3内部への異物の進入を防ぐためのダストシール1が設けられている。ダストシール1は、ロッドシール110よりも外側に設けられており、異物がロッドシール110に接近することを防いでいる。図5に示すように、ロッドシール110、バッファリング111及びダストシール1は、ロッド102の外周面102aに接触するようにシリンダチューブ101に設けられている。ロッドシール110、バッファリング111及びダストシール1は、シリンダチューブ101の軸孔101aとロッド102の外周面102aとの環状の隙間を閉塞してシリンダチューブ101内を密封する油圧シリンダ100のシーリングシステムを形成している。
【0056】
油圧シリンダ100においてダストシール1は、図5に示すように、シリンダチューブ101に形成された凹部103に収容されて、シリンダチューブ101に固定されている。また、油圧シリンダ100は、シリンダチューブ101の凹部103を外側から覆うプレート104を有しており、図5に示すように、プレート104は、凹部103を覆った状態でシリンダチューブ101に固定される。プレート104は、例えば、ボルトによってシリンダチューブ101に固定される。油圧シリンダ100において、凹部103に収容されたダストシール1は、プレート104によって軸線x方向において固定される。
【0057】
油圧シリンダ100に取り付けられた使用状態のダストシール1において、補強環10の筒部11は、シリンダチューブ101の凹部103に嵌着されている。例えば、筒部11の外周面11bは、凹部103の内周面103aに接触又は押し付けられている。また、使用状態のダストシール1において、補強環10のフランジ部12の外側面12bは、プレート104に接触して内側に向かって押圧されており、弾性体部20の基部23の先端23dは、凹部103の外側面103bに押し付けられている。これにより、基部23が軸線x方向において圧縮され、弾性体部20とダストリップスプリング30と補強環10との組み付けが強固なものとなっている。また、弾性体部20とシールリップスプリング40との組み付けが、突出部23eとも協働して強固なものとなっている。なお、油圧シリンダ100に取り付けられていない自由状態のダストシール1における補強環10のフランジ部12の外側面12bと弾性体部20の基部23の先端23dとの間の軸線x方向における幅w1(図2参照)は、凹部103の軸線x方向における幅w2(図6参照)よりも大きくなっている。幅w1は、幅w2と同じであってもよく、また、幅w2よりも小さくてもよい。
【0058】
なお、仮に、図7に示すように、組み立てられた状態のダストシール1において、基部23の先端23dが、補強環10の筒部11の先端11dよりも軸線x方向において外側に位置している場合、つまり、組み立てられた状態のダストシール1において、基部23の先端23d側の端部が、筒部11の先端11dよりも軸線x方向において内側に突出していない場合、使用状態において、ダストシール1は、上述のように組み付けられた状態で凹部103に強固に固定されない。これは、補強環10、弾性体部20及びダストスプリング30が凹部103に強固に固定されず、また、補強環10及び弾性体部20が、また、補強環10、弾性体部20及びダストスプリング30が、互いに固定されないからである。また、仮に、補強環10の軸線x方向の幅が、凹部103の幅w2(図6参照)に等しかったとしても、凹部103において、弾性体部20及びダストリップスプリング30は強固に固定されない。このため、この場合、ロッド102の運動によって、補強環10、弾性体部20及びダストスプリング30が凹部103内で動き、ダストシール1の性能が低下する場合がある。
【0059】
また、使用状態におけるダストシール1において、ダストリップ21のリップ先端部21bは、所定の締め代を持ってロッド102の外周面102aに接触しており、また、シールリップ22のリップ先端部22bは、所定の締め代を持ってロッド102の外周面102aに接触している。なお、締め代とは、図5,6に示すような、リップ先端部21b,22bとロッド102の外周面102aとの径方向における重なり幅である。これにより、使用状態のダストシール1は、ダストリップ21とロッド102の外周面102aとの間から異物が内部に進入することを抑制している。また、使用状態のダストシール1は、シールリップ22とロッド102の外周面102aとの間からシリンダチューブ101内の作動油が外側に漏れ出ることを抑制している。
【0060】
また、使用状態におけるダストシール1において、ダストリップ21は、上述の締め代に対応して外周側に押されている。このため、ダストリップスプリング30の付勢部33も外周側に押され、付勢部33は外周側に撓む、または変位する。この撓み又は変位に基づいて、付勢部33に内周側に向かう反力が発生する。この反力によって、付勢部33は、ダストリップ21を内周側に付勢し、ダストリップ21をロッド102の外周面102aに向かって付勢する。このダストリップスプリング30の付勢によって、ダストリップ21のロッド102に対する緊迫力が増大されている。このため、ダストリップ21の弾性等が劣化したとしても、ダストリップスプリング30の付勢によって、ダストリップ21のロッド102に対する緊迫力の低下が防止される、または、抑制される。これにより、ダストリップ21のへたりが防止され、または、抑制され、ダストリップ21のシール性能の低下が防止され、または、抑制される。付勢部33の先端33a側の端部がダストリップ21に接触している場合、ダストリップ21のリップ先端21bの近傍に付勢部33の反力を作用させることができ、ダストリップ21のシール性能の維持に付加的な効果を奏する。
【0061】
また、使用状態におけるダストシール1において、シールリップ22は、上述の締め代に対応して外周側に押されている。このため、シールリップスプリング40の付勢部42も外周側に押され、付勢部42は外周側に撓む、または変位する。この撓み又は変位に基づいて、付勢部42に内周側に向かう反力が発生する。この反力によって、付勢部42は、シールリップ22を内周側に付勢し、シールリップ22をロッド102の外周面102aに向かって付勢する。このシールリップスプリング40の付勢によって、シールリップ22のロッド102に対する緊迫力が増大されている。このため、シールリップ22の弾性等が劣化したとしても、シールリップスプリング40の付勢によって、シールリップ22のロッド102に対する緊迫力の低下が防止される、または、抑制される。これにより、シールリップ22のへたりが防止され、または、抑制され、シールリップ22のシール性能の低下が防止され、または、抑制される。付勢部42の先端42b側の端部がシールリップ22に接触している場合、シールリップ22のリップ先端22bの近傍に付勢部42の反力を作用させることができ、シールリップ22のシール性能の維持に付加的な効果を奏する。
【0062】
また、組み立てられた状態のダストシール1において、基部23のほとんどの部分、並びにシールリップ22及び腰部24は、径方向において補強環10に重なっている。この補強環10の径方向の幅は、ダストシール1が取り付けられるスペースである凹部103の幅w2(図6参照)の大部分を占める。このため、シールリップを有さないダストシールや、ダストシールスプリング及びシールリップスプリングを有さないダストシールのような従来のダストシールに対して、ダストシール1は、シリンダチューブに固定される部分の軸線方向の幅を大きくする構成を有していない。また、従来のダストシールに対して、ダストシール1は、径方向の幅を大きくする構成を有していない。このため、ダストシール1は、従来のダストシールに対して、取り付けのためのスペースを大きくすることはなく、シリンダチューブ101の凹部103を、従来のダストシールが取り付けられる収容部と同様の大きさにすることができる。このように、ダストシール1は、ダストシール1の取り付けスペースの拡大を抑制できる、または、防止できる。
【0063】
上述のように、本発明の実施形態に係るダストシール1によれば、ダストシール1の取り付けスペースの拡大を抑制しつつ、ダストリップ21及びシールリップ22のへたりを抑制することができる。
【0064】
次いでダストシール1の変形例について説明する。図8は、本発明の実施形態に係るダストシール1の変形例に係るダストシール2を示す部分断面図である。図8は、図2と同様に、変形例に係るダストシール2の軸線xに沿う断面の軸線xに対する一方の断面のみを示している。
【0065】
ダストシール2は、ダストシール1の補強環10とは異なる補強環15を有している。補強環15は、図8に示すように、断面L字状ではなく、フランジ部12に対向するフランジ部16を有している。フランジ部16は、筒部11の端11aに背向する端(先端11d)から内周側に延びる環状の部分であり、例えば、フランジ部12と軸線xに直交する面について対称又は略対称な形状を有している。フランジ部16の形状は他の形状であってもよい。
【0066】
変形例に係るダストシール2においては、補強環15のフランジ部12,16及び筒部11が形成する空間に弾性体部20の基部23及び腰部24の一部が収容される。例えば、この収容される基部23及び腰部24の一部は、フランジ部12とフランジ部16との間に挟持され、軸線x方向に圧縮される。これにより、組み付け状態のダストシール2において、補強環15と、弾性体部10と、ダストリップスプリング30とを強固に組み付けることができる。
【0067】
なお、この変形例に係るダストシール2において、基部23の先端23dは、シールリップ22の先端22dよりも軸線x方向において内側に位置していなくてもよい。ダストシール1においても同様である。
【0068】
ダストシール1の他の変形例(不図示)に関し、上述のダストシール1においては、補強環10と弾性体部20と、補強環10とダストリップスプリング30と、弾性体部20とダストリップスプリング30と、弾性体部20とシールリップスプリング40とは、互いに接触しているだけであるが、これらは互いに接着されていてもよい。ダストシール2においても同様であり、補強環15と弾性体部20と、補強環15とダストリップスプリング30と、弾性体部20とダストリップスプリング30と、弾性体部20とシールリップスプリング40とは、互いに接着されていてもよい。これにより、ダストシール1又は2において、補強環10又は補強環15と弾性体部20とダストリップスプリング30との組み付けをより強固にでき、また、弾性体部20とシールリップスプリング40との組み付けをより強固にできる。
【0069】
ダストシール1のさらに他の変形例(不図示)において、補強環10とダストリップスプリング30とシールリップスプリング40とが、弾性体部20と一体にされていてもよい。具体的には、弾性体部20の成形時に、成形型のキャビティ内に補強環10とダストリップスプリング30とシールリップスプリング40とを配置して、これらと一体に弾性体部20を成形することができる。この場合、補強環10、ダストリップスプリング30及びシールリップスプリング40は夫々、少なくとも部分的に弾性体部20に埋まる。なお、補強環10、ダストリップスプリング30及びシールリップスプリング40の少なくとも1つが、弾性体部20と一体にされていてもよい。ダストシール2においても同様であり、補強環15とダストリップスプリング30とシールリップスプリング40とが、弾性体部20と一体にされていてもよい。具体的には、弾性体部20の成形時に、成形型のキャビティ内に補強環15とダストリップスプリング30とシールリップスプリング40とを配置して、これらと一体に弾性体部20を成形することができる。この場合、補強環15、ダストリップスプリング30及びシールリップスプリング40は夫々、少なくとも部分的に弾性体部20に埋まる。なお、補強環15、ダストリップスプリング30及びシールリップスプリング40の少なくとも1つが、弾性体部20と一体にされていてもよい。
【0070】
以上、上記実施形態を通じて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に様々な変更又は改良を加えることができることが当業者には明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0071】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、上述の実施形態は、本発明が利用される利用対象を限定するものではなく、本発明はあらゆるものをその利用対象として含み得る。上記実施形態が備える各構成要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。例えば、本発明は、製造上の公差等の実施において発生する差を含むものである。また、技術的に矛盾しない範囲において、異なる実施形態で示した構成要素同士を部分的に置換し又は組み合わせることができる。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせることができる。
【0072】
例えば、ダストシール1,2においては、ダストリップスプリング30が、弾性体部20と補強環10又は補強環15との間に挟まれるようになっており、シールリップスプリング40が、弾性体部20の部分に挟まれるようになっているが、本発明に係るダストシールにおいては、シールリップスプリングが、弾性体部20と補強環10との間に挟まれるようになっており、ダストリップスプリングが、弾性体部20の部分に挟まれるようになっていてもよい。例えば、本発明に係るダストシールのダストシールは上述のシールリップ22と同様に形成されていてもよく、本発明に係るダストシールのシールリップは、上述のダストリップ21と同様に形成されていてもよい。この場合、上述のシールリップスプリング40がダストリップスプリングとなり、上述のダストリップスプリングがシールリップスプリングとなる。
【符号の説明】
【0073】
1,2 ダストシール、10,15 補強環、11 筒部、11a 端、11b 外周面、11c 内周面、11d 先端、12,16 フランジ部、12a 内側面、12b 外側面、20 弾性体部、20a 段差面、21 ダストリップ、21a 先端部、21b リップ先端部、21c 外周面、22 シールリップ、22a 先端部、22b リップ先端部、22c 外周面、22d 先端、23 基部、23a 外周面、23b 端、23c 内周面、23d 先端、23e 突出部、23f 凹部、24 腰部、24a 端部、24b 外側面、24c 内側面、25 凹部、30 ダストリップスプリング、31 径方向固定部、31a 端、31b 外周面、31c 内周面、32 軸線方向固定部、32a 端、33 付勢部、33a 先端、33b 端部、40 シールリップスプリング、41 固定部、41a 端、42 付勢部、42a 端、42b 先端、42c 端部、43 接続部、50 バネ部材、50a,50b 端、50c,50d スリット、100 油圧シリンダ、101 シリンダチューブ、101a 軸孔、102 ロッド、102a 外周面、103 凹部、103a 内周面、103b 外側面、104 プレート、110 ロッドシール、111 バッファリング、x 軸線、w1,w2 幅
図1
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図8