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特開2024-80158バイオガス利用設備の運転方法、およびバイオガス利用設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080158
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】バイオガス利用設備の運転方法、およびバイオガス利用設備
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/60 20220101AFI20240606BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20240606BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B09B3/60
B09B5/00 E
B09B5/00 P
C02F11/04 A ZAB
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193102
(22)【出願日】2022-12-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】井上 智行
(72)【発明者】
【氏名】迫田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】宮本 博司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】隅 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】竹田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕大
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 知依
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA12
4D004AC05
4D004BA03
4D004CA17
4D004CB34
4D004DA02
4D059AA01
4D059AA02
4D059AA03
4D059AA04
4D059AA05
4D059AA07
4D059BA17
4D059BA56
4D059BB03
4D059BE08
4D059BE15
4D059BE16
4D059BE26
4D059BE37
4D059CA10
(57)【要約】
【課題】ガス発電機の発電量を高く維持することができ、且つ、加熱処理装置における処理物に対する発電廃熱を用いた加熱を連続的に行うことができるバイオガス利用設備の運転方法およびバイオガス利用設備を提供すること。
【解決手段】水熱炭化装置6が処理物に対する加熱処理を行っていないとき、ガス発電機3の負荷率を固定してガス発電機3をオンオフ運転しながら、ガス発電機3から消化槽1へ発電廃熱を供給する。水熱炭化装置6が処理物に対する加熱処理を行っているとき、ガス発電機3の負荷率を変動させることでガス発電機3を連続運転しながら、ガス発電機3から消化槽1および水熱炭化装置6へ発電廃熱を連続的に供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を嫌気性発酵処理するメタン発酵槽と、
前記メタン発酵槽で嫌気性発酵処理された後の有機性廃棄物の処理物を加熱処理する加熱処理装置と、
前記メタン発酵槽で生成されたバイオガスを用いて発電するガス発電機と、
を備えるバイオガス利用設備の運転方法であって、
前記メタン発酵槽は、前記ガス発電機で得られた発電廃熱を用いて加温されるものであり、
前記加熱処理装置は、前記発電廃熱を用いて前記処理物を加熱処理するものであり、
前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っていないとき、前記ガス発電機の負荷率を固定して前記ガス発電機をオンオフ運転しながら、前記ガス発電機から前記メタン発酵槽へ前記発電廃熱を供給し、
前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っているとき、前記ガス発電機の負荷率を変動させることで前記ガス発電機を連続運転しながら、前記ガス発電機から前記メタン発酵槽および前記加熱処理装置へ前記発電廃熱を連続的に供給する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記バイオガスを貯留するガスタンクを備え、
前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っていないとき、前記ガスタンクの中の前記バイオガスの量が所定の範囲内に収まるように、前記ガス発電機をオンオフ運転する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項3】
請求項1に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記バイオガスを貯留するガスタンクを備え、
前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っているとき、前記ガスタンクの中の前記バイオガスの量が所定の範囲内に収まるように、前記ガス発電機の負荷率を変動させることで前記ガス発電機を連続運転する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っていないとき、前記ガス発電機の負荷率を、前記ガス発電機の発電効率が最大となる負荷率に固定して、前記ガス発電機をオンオフ運転する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項5】
請求項1または3に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記メタン発酵槽の加温に必要な熱エネルギーと、前記加熱処理装置による前記処理物の加熱処理に必要な熱エネルギーとの和と同等の前記発電廃熱が得られる前記ガス発電機の負荷率Xを求め、
前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っているとき、前記負荷率Xと、前記ガス発電機の発電効率が最大となる負荷率との間で、前記ガス発電機の負荷率を変動させることで前記ガス発電機を連続運転する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項6】
請求項5に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記バイオガスを貯留するガスタンクを備え、
前記ガスタンクの中の前記バイオガスの量が所定量以下になった場合、前記ガス発電機の負荷率を、一時的に、前記負荷率Xよりも小さい負荷率で変動させることで前記ガス発電機を連続運転するとともに、前記ガス発電機から前記メタン発酵槽への前記発電廃熱の供給を一時的に停止する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項7】
請求項5に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記バイオガスを貯留するガスタンクと、
前記メタン発酵槽を加温するための第1熱媒を加熱する第1熱媒ボイラと、
前記加熱処理装置へ供給する第2熱媒を加熱する第2熱媒ボイラと、
を備え、
前記ガスタンクの中の前記バイオガスの量が所定量以下になった場合、前記バイオガスとは別の燃料が供給された前記第1熱媒ボイラにて前記第1熱媒を加熱する、および/または、前記バイオガスとは別の燃料が供給された前記第2熱媒ボイラにて前記第2熱媒を加熱する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項8】
請求項5に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記バイオガスを貯留するガスタンクを備え、
前記ガスタンクの中の前記バイオガスの量が所定量以下になった場合、前記ガス発電機に前記バイオガスおよび前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記ガス発電機を運転する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記処理物を脱水処理し、脱水処理されて得られた脱水物を前記加熱処理装置によって加熱処理する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項10】
有機性廃棄物を嫌気性発酵処理するメタン発酵槽と、
前記メタン発酵槽で嫌気性発酵処理された後の有機性廃棄物の処理物を加熱処理する加熱処理装置と、
前記メタン発酵槽で生成されたバイオガスを用いて発電するガス発電機と、
を備え、
前記メタン発酵槽は、前記ガス発電機で得られた発電廃熱を用いて加温されるものであり、
前記加熱処理装置は、前記発電廃熱を用いて前記処理物を加熱処理するものであり、
前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っていないとき、前記ガス発電機の負荷率を固定して前記ガス発電機をオンオフ運転しながら、前記ガス発電機から前記メタン発酵槽へ前記発電廃熱を供給し、
前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っているとき、前記ガス発電機の負荷率を変動させることで前記ガス発電機を連続運転しながら、前記ガス発電機から前記メタン発酵槽および前記加熱処理装置へ前記発電廃熱を連続的に供給する、
バイオガス利用設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガス利用設備の運転方法、およびバイオガス利用設備に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオガス利用設備に関する技術として、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には、有機性廃棄物スラリーを嫌気性消化処理する嫌気性消化槽と、消化処理スラリーを加熱処理する可溶化設備と、嫌気性消化槽で生成されたバイオガスを用いて発電する発電装置と、を備えるバイオガス利用設備が記載されている。発電装置は、原動機と、発電機と、原動機冷却水用熱交換器と、原動機排ガス用熱交換器と、を有する。特許文献1には、上記原動機冷却水用熱交換器で得られた温水を用いて嫌気性消化槽を加温することが記載されている。また、上記発電装置で得られた蒸気を、可溶化設備において消化処理スラリーの加温に利用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3651836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電装置を構成する一般的なガスエンジンは、負荷率100%の時に最大発電効率を発揮し、負荷率が100%を下回ると発電効率は低下する。発電効率が低下すると発電量は小さくなる。そのため、発電効率を重視すると、ガスエンジン(ガス発電機)を、原則として負荷率100%で運転することになる。この場合、燃料であるバイオガスの消費量が大きいので、ガス発電機はオンオフ運転になってしまうことが多い。
【0005】
ここで、嫌気性消化槽を加温するための熱源、および可溶化設備などの加熱処理装置において消化処理スラリーを加熱処理するための熱源として、ガス発電機で得られた発電廃熱を用いるとする。
【0006】
嫌気性消化槽は、原則として連続的な加温が必要である。しかしながら、有機性廃棄物の適する消化温度には幅があるため、その幅に収まるように嫌気性消化槽を加温できれば、嫌気性消化槽を連続的に加温する必要は必ずしもない。そのため、連続的な加温とならない、ガス発電機のオンオフ運転は許容される。
【0007】
一方、加熱処理装置における消化処理スラリーの加熱処理には、所定の熱エネルギーが常に必要であり、熱エネルギーを加熱処理装置へ供給し続ける必要がある。すなわち、加熱処理装置(消化処理スラリーの加熱処理)は、連続的な加熱が必要である。そのため、連続的な加熱とならない、ガス発電機のオンオフ運転は好ましくない。
【0008】
なお、特許文献1に記載の技術では、嫌気性消化槽で生成されたバイオガスを発電装置の燃料として使用することに加えて、可溶化設備を構成する加温用ボイラの燃料としても使用しているので、発電装置の発電量は、その分、低下する。
【0009】
本発明の目的は、ガス発電機の発電量を高く維持することができ、且つ、加熱処理装置における処理物に対する発電廃熱を用いた加熱を連続的に行うことができるバイオガス利用設備の運転方法およびバイオガス利用設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本願で開示するバイオガス利用設備の運転方法は、有機性廃棄物を嫌気性発酵処理するメタン発酵槽と、前記メタン発酵槽で嫌気性発酵処理された後の有機性廃棄物の処理物を加熱処理する加熱処理装置と、前記メタン発酵槽で生成されたバイオガスを用いて発電するガス発電機と、を備えるバイオガス利用設備の運転方法である。前記メタン発酵槽は、前記ガス発電機で得られた発電廃熱を用いて加温されるものであり、前記加熱処理装置は、前記発電廃熱を用いて前記処理物を加熱処理するものである。前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っていないとき、前記ガス発電機の負荷率を固定して前記ガス発電機をオンオフ運転しながら、前記ガス発電機から前記メタン発酵槽へ前記発電廃熱を供給し、前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っているとき、前記ガス発電機の負荷率を変動させることで前記ガス発電機を連続運転しながら、前記ガス発電機から前記メタン発酵槽および前記加熱処理装置へ前記発電廃熱を連続的に供給する。
【0011】
(2)(1)に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記バイオガスを貯留するガスタンクを備え、前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っていないとき、前記ガスタンクの中の前記バイオガスの量が所定の範囲内に収まるように、前記ガス発電機をオンオフ運転してもよい。
【0012】
(3)(1)に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記バイオガスを貯留するガスタンクを備え、前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っているとき、前記ガスタンクの中の前記バイオガスの量が所定の範囲内に収まるように、前記ガス発電機の負荷率を変動させることで前記ガス発電機を連続運転してもよい。
【0013】
(4)(1)または(2)に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っていないとき、前記ガス発電機の負荷率を、前記ガス発電機の発電効率が最大となる負荷率に固定して、前記ガス発電機をオンオフ運転してもよい。
【0014】
(5)(1)または(3)に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記メタン発酵槽の加温に必要な熱エネルギーと、前記加熱処理装置による前記処理物の加熱処理に必要な熱エネルギーとの和と同等の前記発電廃熱が得られる前記ガス発電機の負荷率Xを求め、前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っているとき、前記負荷率Xと、前記ガス発電機の発電効率が最大となる負荷率との間で、前記ガス発電機の負荷率を変動させることで前記ガス発電機を連続運転してもよい。
【0015】
(6)(5)に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記バイオガスを貯留するガスタンクを備え、前記ガスタンクの中の前記バイオガスの量が所定量以下になった場合、前記ガス発電機の負荷率を、一時的に、前記負荷率Xよりも小さい負荷率で変動させることで前記ガス発電機を連続運転するとともに、前記ガス発電機から前記メタン発酵槽への前記発電廃熱の供給を一時的に停止してもよい。
【0016】
(7)(5)または(6)に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記バイオガスを貯留するガスタンクと、前記メタン発酵槽を加温するための第1熱媒を加熱する第1熱媒ボイラと、前記加熱処理装置へ供給する第2熱媒を加熱する第2熱媒ボイラと、を備え、前記ガスタンクの中の前記バイオガスの量が所定量以下になった場合、前記バイオガスとは別の燃料が供給された前記第1熱媒ボイラにて前記第1熱媒を加熱する、および/または、前記バイオガスとは別の燃料が供給された前記第2熱媒ボイラにて前記第2熱媒を加熱してもよい。
【0017】
(8)(5)から(7)のいずれかに記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記バイオガスを貯留するガスタンクを備え、前記ガスタンクの中の前記バイオガスの量が所定量以下になった場合、前記ガス発電機に前記バイオガスおよび前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記ガス発電機を運転してもよい。
【0018】
(9)(1)から(8)のいずれかに記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記処理物を脱水処理し、脱水処理されて得られた脱水物を前記加熱処理装置によって加熱処理してもよい。
【0019】
(10)本願で開示するバイオガス利用設備は、有機性廃棄物を嫌気性発酵処理するメタン発酵槽と、前記メタン発酵槽で嫌気性発酵処理された後の有機性廃棄物の処理物を加熱処理する加熱処理装置と、前記メタン発酵槽で生成されたバイオガスを用いて発電するガス発電機と、を備える。前記メタン発酵槽は、前記ガス発電機で得られた発電廃熱を用いて加温されるものであり、前記加熱処理装置は、前記発電廃熱を用いて前記処理物を加熱処理するものである。前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っていないとき、前記ガス発電機の負荷率を固定して前記ガス発電機をオンオフ運転しながら、前記ガス発電機から前記メタン発酵槽へ前記発電廃熱を供給し、前記加熱処理装置が前記処理物に対する加熱処理を行っているとき、前記ガス発電機の負荷率を変動させることで前記ガス発電機を連続運転しながら、前記ガス発電機から前記メタン発酵槽および前記加熱処理装置へ前記発電廃熱を連続的に供給する。
【発明の効果】
【0020】
前記構成のバイオガス利用設備の運転方法およびバイオガス利用設備によれば、ガス発電機の発電量を高く維持することができ、且つ、加熱処理装置における処理物に対する発電廃熱を用いた加熱を連続的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】バイオガス利用設備を示すブロック図である。
図2】加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っていないときの、ガスタンク内のバイオガスの貯留量レベルの変化の例を示すグラフである。
図3】加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っているときの、ガスタンク内のバイオガスの貯留量レベルの変化の例を示すグラフである。
図4】バイオガス利用設備における1日間の熱エネルギー需要量を示すグラフである。
図5】ガス発電機の負荷率と発電廃熱発生量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0023】
バイオガスの原料である有機性廃棄物は、下水汚泥、し尿汚泥、農業集落排水汚泥、浄化槽汚泥、生ごみなどの食品廃棄物(食品系バイオマス)、古紙・廃紙などのリグノセルロース系廃棄物、農業残渣、および家畜糞尿などである。これらの有機性廃棄物は、それぞれ単独で処理されてもよいし、混合処理されてもよい。以下では、バイオガスの原料である有機性廃棄物として下水汚泥を例にとって説明する。
【0024】
図1に示すように、バイオガス利用設備は、メタン発酵槽としての消化槽1と、ガスタンク2と、ガス発電機3と、温水ボイラ4と、熱媒油ボイラ5と、加熱処理装置としての水熱炭化装置6と、コントローラ10と、を備えている。なお、温水ボイラ4および熱媒油ボイラ5は、補助的な装置である。そのため、温水ボイラ4および熱媒油ボイラ5は、いずれも、無くてもよい。
【0025】
(消化槽)
消化槽1に下水汚泥が投入される。消化槽1は、下水汚泥を嫌気性発酵処理するタンクである。消化槽1は、中温発酵処理においては温度約30~42℃で滞留時間15~30日程度、高温発酵処理においては温度約50~60℃で滞留時間7~20日程度で運転される。
【0026】
下水汚泥の嫌気性発酵により消化槽1の中で消化ガスが発生する(生成する)。消化ガスは、メタンが約60容量%、二酸化炭素が約40容量%のバイオガスである。発生した消化ガスは、消化槽1の中から取り出され、ガスタンク2に貯留される。消化槽1の中で、消化ガスは、原則常時、発生する。
【0027】
嫌気性発酵処理後の下水汚泥の発酵残渣、すなわち発酵処理汚泥は、消化槽1の中から外部へ排出される。発酵処理汚泥は、メタン発酵槽で嫌気性発酵処理された後の有機性廃棄物の処理物である。消化槽1の中から外部へ排出された発酵処理汚泥は、脱水処理(固液分離処理)される。発酵処理汚泥が脱水処理されて得られた脱水汚泥(脱水物)は、水熱炭化装置6に供給される。
【0028】
(ガスタンク)
ガスタンク2は、消化槽1で発生した消化ガスを貯留するタンクである。ガスタンク2として、低圧式ガスタンク、中圧式ガスタンクなどがある。ガスタンク2には、消化槽1で発生した消化ガスが原則常に流入してくる。
【0029】
(ガス発電機)
ガス発電機3は、消化ガスを燃料として用いて発電するガス発電機である。消化ガスは、ガスタンク2からガス発電機3へ供給される。ガス発電機3は、ガスエンジン7と、ガスエンジン7に接続された発電機(不図示)と、冷却水用熱交換器8と、排ガス用熱交換器9と、を備えている。
【0030】
ガスエンジン7は、消化ガスのみを燃料として用いるガスエンジンであってもよいし、消化ガスと都市ガスとを混焼させるガスエンジンであってもよい。
【0031】
冷却水用熱交換器8は、ガスエンジン7などを冷却して高温となった冷却水から熱エネルギー(熱)を回収する間接式熱交換器である。当該熱エネルギーは、ガス発電機3で得られる発電廃熱の一つである。冷却水用熱交換器8は、水-水熱交換器である。冷却水用熱交換器8において、ガスエンジン7などを冷却して高温となった冷却水から得られた温水は、冷却水用熱交換器8から消化槽1に供給される。消化槽1に供給された温水は、消化槽1の加温、より詳細には、消化槽1内の汚泥の加温に用いられる。図示を省略しているが、消化槽1には、汚泥加温用熱交換器が備えられている。汚泥加温用熱交換器は間接式熱交換器である。汚泥加温用熱交換器にて、温水から汚泥へ熱が移動され、汚泥は加温される。汚泥加温用熱交換器は消化槽1とは別に設置されていてもよく、その場合は、消化槽1内の汚泥の一部または全部が汚泥加温用熱交換器と消化槽1との間を循環することによって、汚泥加温用熱交換器にて、温水から汚泥へ熱が移動され、汚泥は加温される。このように、消化槽1は、ガス発電機3で得られた発電廃熱を用いて加温されるものである。なお、消化槽1内の汚泥の温度が消化温度よりも高くなる場合、バイパス配管(図1に示される破線矢印)を流れる温水の流量を増加させることにより、消化槽1への熱の供給を抑制してもよい。
【0032】
なお、消化槽1(消化槽1内の汚泥)を加温するための熱媒は、温水に限定されない。消化槽1(消化槽1内の汚泥)を加温するための熱媒として、温水の他に、蒸気、熱媒油(油)を挙げることができる。
【0033】
排ガス用熱交換器9は、ガスエンジン7の排ガスから熱エネルギー(熱)を回収する間接式熱交換器である。当該熱エネルギーは、ガス発電機3で得られる発電廃熱の一つである。排ガス用熱交換器9は、排ガス-熱媒油熱交換器である。排ガス用熱交換器9において、排ガスから得られた熱媒油は、水熱炭化装置6に供給される。水熱炭化装置6に供給された熱媒油は、発酵処理汚泥が脱水処理されて得られた脱水汚泥の加熱処理に用いられる。脱水汚泥は、発酵処理汚泥が、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、スクリュープレス脱水機、またはフィルタープレス脱水機などの脱水機により、例えば、含水率65~85重量%に脱水処理されて得られた脱水物である。脱水汚泥は、水熱炭化装置6にて、熱媒油によって間接加熱される。このように、水熱炭化装置6は、ガス発電機3で得られた発電廃熱を用いて有機性廃棄物の処理物を加熱処理するものである。
【0034】
なお、有機性廃棄物の処理物を加熱処理するための熱媒は、熱媒油に限定されない。有機性廃棄物の処理物を加熱処理するための熱媒として、熱媒油の他に、蒸気を挙げることができる。
【0035】
(温水ボイラ)
温水ボイラ4は、消化槽1(消化槽1内の汚泥)を加温するための温水を加熱する装置である。温水ボイラ4の燃料は、消化ガスとは別の燃料、または消化ガスである。消化ガスとは別の燃料は、例えば、都市ガスである。温水ボイラ4の燃料として消化ガスを用いる場合、ガスタンク2から温水ボイラ4へ消化ガスを供給する配管が必要になるので、図1において、ガスタンク2から温水ボイラ4へ向かう矢印を含む線が記載されることとなる。温水ボイラ4を使用した場合、温水ボイラ4からの温水も消化槽1に供給される。消化槽1に供給された温水は、消化槽1の加温、より詳細には、消化槽1内の汚泥の加温に用いられる。
【0036】
なお、消化ガスをガス発電機3の燃料として使用することに加えて、温水ボイラ4の燃料としても消化ガスを使用すると、温水ボイラ4で消化ガスを使用した分、ガス発電機3で使用可能な消化ガスの量が減少し、ガス発電機3の発電量が低下する。そのため、温水ボイラ4の燃料として消化ガスは基本的に使用しないことが望ましい。
【0037】
(熱媒油ボイラ)
熱媒油ボイラ5は、消化槽1で嫌気性発酵処理された後の有機性廃棄物の処理物を加熱処理するための熱媒油を加熱する装置である。熱媒油ボイラ5の燃料は、消化ガスとは別の燃料、または消化ガスである。消化ガスとは別の燃料は、例えば、都市ガスである。熱媒油ボイラ5の燃料として消化ガスを用いる場合、ガスタンク2から熱媒油ボイラ5へ消化ガスを供給する配管が必要になるので、図1において、ガスタンク2から熱媒油ボイラ5へ向かう矢印を含む線が記載されることとなる。熱媒油ボイラ5を使用した場合、熱媒油ボイラ5からの熱媒油も水熱炭化装置6に供給される。水熱炭化装置6に供給された熱媒油は、有機性廃棄物の処理物の加熱処理に用いられる。
【0038】
なお、消化ガスをガス発電機3の燃料として使用することに加えて、熱媒油ボイラ5の燃料としても消化ガスを使用すると、熱媒油ボイラ5で消化ガスを使用した分、ガス発電機3で使用可能な消化ガスの量が減少し、ガス発電機3の発電量が低下する。そのため、熱媒油ボイラ5の燃料として消化ガスは基本的に使用されない。
【0039】
(水熱炭化装置)
水熱炭化装置6は、消化槽1で嫌気性発酵処理された後の有機性廃棄物の処理物を加熱処理する装置である。水熱炭化装置6には、排ガス用熱交換器9から熱媒油が供給される。供給された熱媒油は、発酵処理汚泥が脱水処理されて得られた脱水汚泥の加熱処理に用いられる。水熱炭化とは、水を含む処理対象物を、酸素を含有しない又は酸素濃度が低いガス雰囲気下にて又は酸素を遮断した状態にて高温高圧処理することで、炭化させることをいう。水熱炭化装置6において、脱水汚泥は、熱媒油によって間接加熱されて、例えば、200℃の温度にされる。なお、温度は、200℃に限定されるものではない。脱水汚泥は、160℃から250℃の範囲のうちの任意の温度にされてもよい。なお、水熱炭化装置6内の脱水汚泥の温度が250℃を超える場合、バイパス配管(図1に示される破線矢印)を流れる熱媒油の流量を増加させることにより、水熱炭化装置6への熱の供給を抑制してもよい。
【0040】
有機性廃棄物の処理物を加熱処理する装置は、水熱炭化装置6に限定されるものではない。有機性廃棄物の処理物を加熱処理する装置は、有機性廃棄物の処理物を水熱処理する水熱処理装置であってもよいし、乾留処理する乾留処理装置であってもよいし、乾燥処理する乾燥処理装置であってもよい。水熱処理とは、水熱炭化処理を含む、水熱炭化処理よりも広い概念の処理のことである。
【0041】
(コントローラ)
コントローラ10は、バイオガス利用設備を構成する各機器を制御する制御装置である。コントローラ10には、バイオガス利用設備を構成する各機器に設けられた各種計器からの信号が入力される。
【0042】
コントローラ10は、次の制御を行うように制御構成されている。なお、以下に記載するコントローラ10が行う制御を、人が手動で行ってもよい。すなわち、人が手動でガス発電機3などを動作させてもよい。
【0043】
(加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っていないときの運転制御)
コントローラ10は、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っていないとき、ガス発電機3の負荷率を固定してガス発電機3をオンオフ運転させる。ガス発電機3がオンの状態、すなわち運転中のとき、冷却水用熱交換器8において温水が発電廃熱により加熱され、コントローラ10が消化槽1へ温水を供給させることにより、消化槽1は発電廃熱によって加温される。ガス発電機3がオフの状態、すなわち停止中のときは、発電廃熱が発生しないため、冷却水用熱交換器8における温水の発電廃熱による加熱は停止される。また、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っていないため、コントローラ10は、ガス発電機3がオンの状態であっても、排ガス用熱交換器9で発電廃熱により加熱された熱媒油の水熱炭化装置6への供給を停止させる。
【0044】
コントローラ10は、水熱炭化装置6の運転信号がコントローラ10に入力されていないとき、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っていないと判定する。
【0045】
コントローラ10が、ガス発電機3の負荷率を固定してガス発電機3をオンオフ運転させる場合、ガス発電機3の負荷率は、ガス発電機3の発電効率が最大となる負荷率に固定されることが好ましい。ガス発電機3の発電効率が最大となる負荷率は、一般的に100%である。ガス発電機3の負荷率を、ガス発電機3の発電効率が最大となる負荷率に固定すると、ガス発電機3の発電量を最大化することができるからである。
【0046】
なお、ガス発電機3の負荷率は、ガス発電機3の発電効率が最大となる負荷率に固定されることに限定されるものではない。例えば、発電効率が最大となる負荷率が100%である場合に、負荷率98%など、負荷率100%よりも少し低い負荷率であっても、ガス発電機3の発電量を十分高く維持することができる。
【0047】
また、コントローラ10は、ガスタンク2の中の消化ガスの量が所定の範囲内に収まるようにガス発電機3をオンオフ運転させる。これによれば、ガス欠によるガス発電機3の停止を防止することができる。なお、上記のガスタンク2の中の消化ガスの量が「所定の範囲内に収まる」とは、ガスタンク2の中の消化ガスが空にならない程度であればよい。
【0048】
図2は、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っていないときの、ガスタンク2内の消化ガスの貯留量レベルの変化の例を示すグラフである。
【0049】
図2に示す例では、ガス発電機3は、負荷率が100%に固定されて、オンオフ運転されている。負荷率100%でガス発電機3が運転されることで、消化ガスが消費され、ガスタンク2内の消化ガスの貯留量レベルは、運転開始後、時間T1になると、レベルH(High)からレベルL(Low)に下がる。消化ガスの貯留量レベルがレベルLになると、コントローラ10は、ガス発電機3の運転を停止させる。ガスタンク2には、消化槽1で発生した消化ガスが流入してくるので、ガス発電機3の運転を停止すると、消化ガスの貯留量レベルは上昇に転じる。消化ガスの貯留量レベルがレベルHに回復すると(時間T2)、コントローラ10は、負荷率100%でのガス発電機3の運転を再開させる。このようにして、コントローラ10は、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っていないとき、ガス発電機3の負荷率を固定してガス発電機3をオンオフ運転させる。
【0050】
消化槽1は、原則として連続的な加温が必要である。しかしながら、有機性廃棄物の適する消化温度には幅があるため、その幅に収まるように消化槽1(消化槽1内の汚泥)を加温できれば、消化槽1を連続的に加温する必要は必ずしもない。ガス発電機3が停止していると、発電廃熱が発生しないため、ガス発電機3の停止中、例えば、時間T1と時間T2との間、冷却水用熱交換器8から温水への発電廃熱の供給は停止する。しかしながら、有機性廃棄物の適する消化温度には幅があるため、ある程度のガス発電機3の停止は許容される。なお、ガス発電機3が停止している間だけ、温水ボイラ4の燃料として都市ガスなどの消化ガス以外の燃料を用い、消化槽1(消化槽1内の汚泥)を加温するための温水を温水ボイラ4から消化槽1へ送ってもよい。
【0051】
コントローラ10は、上記の制御に加えて、消化槽1内の汚泥(有機性廃棄物)の温度が、例えば、中温発酵処理の場合は35度、高温発酵処理の場合は55度まで低下したら、ガス発電機3が停止中であっても、ガス発電機3の運転を負荷率100%で再開するように制御構成されていてもよい。これによれば、汚泥の温度の低下を防止することができ、下水汚泥をより適切に嫌気性発酵処理することができる。
【0052】
(加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っているときの運転制御 その1)
コントローラ10は、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っているとき、ガス発電機3の負荷率を変動させることで(変動させながら)ガス発電機3を連続運転させる。また、コントローラ10は、冷却水用熱交換器8から消化槽1へ温水(発電廃熱)を供給させるとともに、排ガス用熱交換器9から水熱炭化装置6へ熱媒油(発電廃熱)を供給させる。すなわち、コントローラ10は、ガス発電機3を連続運転させながら、消化槽1および水熱炭化装置6へガス発電機3から連続的に発電廃熱を供給させる。
【0053】
コントローラ10は、水熱炭化装置6の運転信号がコントローラ10に入力されていると、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っていると判定する。
【0054】
コントローラ10は、ガスタンク2の中の消化ガスの量が所定の範囲内に収まるように、ガス発電機3の負荷率を変動させながらガス発電機3を連続運転させる。これによれば、ガス欠によるガス発電機3の停止を防止することができる。なお、上記のガスタンク2の中の消化ガスの量が「所定の範囲内に収まる」とは、ガスタンク2の中の消化ガスが空にならない程度であればよい。
【0055】
図3は、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っているときの、ガスタンク2内の消化ガスの貯留量レベルの変化の例を示すグラフである。
【0056】
図3の例では、ガス発電機3の負荷率を、100%、90%、95%、90%と順次、変動させることで、ガス発電機3を連続運転させている。負荷率100%でガス発電機3が運転されることで、消化ガスが消費され、ガスタンク2内の消化ガスの貯留量レベルは、運転開始後、時間T1になると、レベルHからレベルLに下がる。消化ガスの貯留量レベルがレベルLになると、コントローラ10は、ガス発電機3の負荷率を90%に変更する。ガスタンク2には、消化槽1で発生した消化ガスが流入してくるので、ガス発電機3の負荷率を90%に変更すると、消化ガスの消費量が減少し、消化ガスの貯留量レベルは上昇に転じる。なお、これは、負荷率90%のときのガス発電機3における消化ガス消費量<ガスタンク2への消化ガスの流入量、であることを前提としている。負荷率90%のときのガス発電機3における消化ガス消費量>ガスタンク2への消化ガスの流入量、である場合には、ガス発電機3における消化ガス消費量<ガスタンク2への消化ガスの流入量となるガス発電機3の負荷率に設定することになる。
【0057】
消化ガスの貯留量レベルがレベルHに回復すると(時間T2)、コントローラ10は、ガス発電機3の負荷率を95%に変更する。ガス発電機3の負荷率を95%に変更すると、消化ガスの消費量が、ガスタンク2に流入してくる消化ガスの量を上回り、消化ガスの貯留量レベルは下降に転じる。なお、これは、負荷率95%のときのガス発電機3における消化ガス消費量>ガスタンク2への消化ガスの流入量、であることを前提としている。負荷率95%のときのガス発電機3における消化ガス消費量<ガスタンク2への消化ガスの流入量、である場合には、ガス発電機3における消化ガス消費量>ガスタンク2への消化ガスの流入量となるガス発電機3の負荷率に設定することになる。このようにして、コントローラ10は、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っているとき、ガス発電機3の負荷率を変動させることで(変動させながら)ガス発電機3を連続運転させる。
【0058】
ガス発電機3の負荷率の数値の変動のさせ方は、上記に限定されるものではない。
【0059】
水熱炭化装置6のような加熱処理装置における処理物(脱水汚泥)の加熱処理には、所定の熱エネルギーが常に必要であり、熱エネルギーを加熱処理装置へ供給し続ける必要がある。ガス発電機3の負荷率を変動させながらガス発電機3を連続運転すれば、排ガス用熱交換器9から水熱炭化装置6へ熱媒油(発電廃熱)を連続的に供給することができるので、加熱処理装置における処理物に対する発電廃熱を用いた加熱を連続的に行うことができる。
【0060】
(加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っているときの運転制御 その2)
コントローラ10は、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っているとき、ガス発電機3の負荷率を、次のように変動させながらガス発電機3を連続運転させてもよい。
【0061】
図4は、バイオガス利用設備における1日間の熱エネルギー需要量を示すグラフである。消化槽1における汚泥の嫌気性発酵は常に行われているため、消化槽1の加温に必要な熱エネルギー需要量(kW)は、図4に示すように1日中存在する。これに対して、水熱炭化装置6のような加熱処理装置による処理物の加熱処理は、行われない時間帯と行われる時間帯とがあるので、加熱処理装置による処理物の加熱処理に必要な熱エネルギー需要量(kW)は、図4に示すように有るときと無いときとがある。図4において、熱エネルギー需要量Bは、消化槽1の加温に必要な熱エネルギー需要量である。熱エネルギー需要量Aは、熱エネルギー需要量Bと加熱処理装置による処理物の加熱処理に必要な熱エネルギー需要量との和である。なお、A、Bは1日の間で必ずしも一定ではなく変動することもある。
【0062】
図5は、ガス発電機3の負荷率と、ガス発電機3の発電廃熱発生量(発電廃熱)との関係を示すグラフである。ガス発電機3の負荷率と、ガス発電機3の発電廃熱発生量とは、必ずしも直線関係とはならないが、ガス発電機3の負荷率が上がると、ガス発電機3の発電廃熱発生量も上がる。
【0063】
コントローラ10は、汚泥を嫌気性発酵処理する温度(消化槽1の槽内温度)、消化槽1に投入される汚泥量、消化槽1に投入される汚泥の温度、および外気温などから消化槽1の加温に必要な熱エネルギー需要量Bを演算により求める。コントローラ10は、水熱炭化装置6における処理物の加熱温度、水熱炭化装置6に供給される処理物の量、水熱炭化装置6に供給される処理物の温度、および外気温などから水熱炭化装置6による処理物の加熱処理に必要な熱エネルギー需要量を演算により求める。コントローラ10は、熱エネルギー需要量Bと、水熱炭化装置6による処理物の加熱処理に必要な熱エネルギー需要量との和である熱エネルギー需要量Aを求める。コントローラ10は、図5に示す、ガス発電機3の負荷率と、ガス発電機3の発電廃熱発生量との関係から、熱エネルギー需要量Aの発電廃熱発生量が得られるガス発電機3の負荷率Xを求める。図5に示すグラフの数値情報はマップとしてコントローラ10に格納されている。
【0064】
なお、ガス発電機3の負荷率Xは、熱エネルギー需要量Aと同等の発電廃熱発生量が得られる負荷率であればよく、上記のように、熱エネルギー需要量Aと全く同じ発電廃熱発生量が得られる負荷率でなくてもよい。すなわち、負荷率Xは、熱エネルギー需要量Aと同程度の発電廃熱発生量が得られる負荷率であればよい。
【0065】
コントローラ10は、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っているとき、負荷率Xと、ガス発電機3の発電効率が最大となる負荷率(例えば、負荷率100%)との間で、ガス発電機3の負荷率を変動させることでガス発電機3を連続運転させる。また、コントローラ10は、ガス発電機3を連続運転させながら、冷却水用熱交換器8から消化槽1へ温水(発電廃熱)を供給させるとともに、排ガス用熱交換器9から水熱炭化装置6へ熱媒油(発電廃熱)を供給させる。すなわち、コントローラ10は、上記のようにガス発電機3の負荷率を変動させることでガス発電機3を連続運転させながら、消化槽1および水熱炭化装置6へガス発電機3から連続的に発電廃熱を供給させる。これによれば、消化槽1の加温を適切に行うことができるとともに、水熱炭化装置6による処理物の加熱処理も適切に行うことができる。
【0066】
ここで、ガスタンク2への消化ガスの流入量が一時的に減少するなどして、ガスタンク2の中の消化ガスの量が所定量以下になった場合、コントローラ10は、ガス発電機3の負荷率を、一時的に、負荷率Xよりも小さい負荷率で変動させることでガス発電機3を連続運転させる。また、コントローラ10は、ガス発電機3(冷却水用熱交換器8)から温水への発電廃熱の供給を一時的に停止させる。なお、コントローラ10は、排ガス用熱交換器9から水熱炭化装置6への熱媒油(発電廃熱)の供給は継続させる。これによれば、ガスタンク2内の消化ガスの貯留量レベルを上昇(回復)させることができる、または、消化ガスの貯留量レベルの下降速度を抑えることができる。また、消化槽1の加温は一時的になされなくなるが、所定の熱エネルギーが常に必要な水熱炭化装置6への熱媒油の供給は適切に継続することができる。ガスタンク2の中の消化ガスの量が所定量以下になった場合とは、これに限定されることはないが、消化ガスの貯留量レベルが、例えば、レベルHとレベルLとの間の真ん中(=レベルM(Middle))以下になった場合のことである。
【0067】
上記の負荷率Xよりも小さい負荷率は、ガス発電機3における消化ガス消費量<ガスタンク2への消化ガスの流入量となるガス発電機3の負荷率とされることが望ましい。これによれば、ガスタンク2内の消化ガスの貯留量レベルを上昇(回復)させることができる。
【0068】
(加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っているときの運転制御 その3)
コントローラ10は、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っているとき、次の制御を行ってもよい。コントローラ10は、ガスタンク2の中の消化ガスの量が所定量以下になった場合、消化ガスとは別の燃料が供給された熱媒油ボイラ5にて、熱媒油を加熱させてもよい。消化ガスとは別の燃料は、例えば、都市ガスである。これによれば、水熱炭化装置6における処理物(脱水汚泥)の加熱処理に必要な熱エネルギーが不足していても、不足している熱エネルギーを補うことができる。
【0069】
この場合、コントローラ10は、消化ガスとは別の燃料が供給された温水ボイラ4にて温水を加熱させてもよい。これによれば、消化槽1の加温に必要な熱エネルギーが不足していても、不足している熱エネルギーを補うことができる。
【0070】
(加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っているときの運転制御 その4)
コントローラ10は、水熱炭化装置6が脱水汚泥に対する加熱処理を行っているとき、
次の制御を行ってもよい。コントローラ10は、ガスタンク2の中の消化ガスの量が所定量以下になった場合、消化ガスおよび消化ガスとは別の燃料を用いて、ガス発電機3を運転させてもよい。これによれば、消化ガスのみをガス発電機に供給して発電し、得られた発電廃熱を供給する場合に消化槽1の加温や水熱炭化装置6における処理物(脱水汚泥)の加熱処理に必要な熱エネルギーが不足していても、不足している熱エネルギーを補うことができる。
【0071】
(効果)
(1)本実施形態のバイオガス利用設備の運転方法(バイオガス利用設備)において、加熱処理装置(例えば、水熱炭化装置6)は、ガス発電機3で得られた発電廃熱を用いて処理物を加熱処理するものである。バイオガス利用設備の運転方法(バイオガス利用設備)は、加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っていないとき、ガス発電機3の負荷率を固定してガス発電機3をオンオフ運転しながら、ガス発電機3からメタン発酵槽へ発電廃熱を供給する。また、加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っているとき、ガス発電機3の負荷率を変動させることでガス発電機3を連続運転しながら、ガス発電機3からメタン発酵槽および加熱処理装置へ発電廃熱を連続的に供給する。
【0072】
特許文献1では、前記のとおり、可溶化設備を構成する加温用ボイラの燃料としてバイオガスを使用するので、バイオガスを燃料とする発電装置の発電量は、その分、低下する。一方、本実施形態では、加熱処理装置において、ガス発電機3で得られた発電廃熱を用いて処理物を加熱処理する。そのため、ガス発電機3に供給するバイオガスを特許文献1の場合に比べて増やすことができる。その結果、ガス発電機3の発電量を高く維持することができる。また、加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っていないとき、ガス発電機3の負荷率を固定してガス発電機3をオンオフ運転することでも、ガス発電機3の発電量を高く維持することができる。
【0073】
また、加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っているとき、ガス発電機3の負荷率を変動させることでガス発電機3を連続運転しながら、ガス発電機3からメタン発酵槽および加熱処理装置へ発電廃熱を供給することで、加熱処理装置へ発電廃熱を連続的に供給することができ、加熱処理装置における処理物に対する発電廃熱を用いた加熱を連続的に行うことができる。
【0074】
(2)本実施形態では、加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っていないとき、ガスタンク2の中のバイオガスの量が所定の範囲内に収まるように、ガス発電機3をオンオフ運転する。これによれば、ガス欠によるガス発電機3の停止を防止することができる。
【0075】
(3)本実施形態では、加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っているとき、ガスタンク2の中のバイオガスの量が所定の範囲内に収まるように、ガス発電機3の負荷率を変動させることでガス発電機3を連続運転する。これによれば、ガス欠によるガス発電機3の停止を防止することができる。
【0076】
(4)加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っていないとき、ガス発電機3の負荷率を、ガス発電機3の発電効率が最大となる負荷率に固定して、ガス発電機3をオンオフ運転するとよい。これによれば、ガス発電機3の発電量を最大化することができる。
【0077】
(5)本実施形態では、メタン発酵槽の加温に必要な熱エネルギーと、加熱処理装置による処理物の加熱処理に必要な熱エネルギーとの和と同等の発電廃熱が得られるガス発電機3の負荷率Xを求め、加熱処理装置が処理物に対する加熱処理を行っているとき、負荷率Xと、ガス発電機3の発電効率が最大となる負荷率との間で、ガス発電機3の負荷率を変動させることでガス発電機3を連続運転する。これによれば、メタン発酵槽の加温を適切に行うことができるとともに、加熱処理装置による処理物の加熱処理も適切に行うことができる。また、加熱処理装置による処理物の加熱処理を適切に行う運転条件下での発電量を最大化できる。
【0078】
(6)本実施形態では、ガスタンク2の中のバイオガスの量が所定量以下になった場合、ガス発電機3の負荷率を、一時的に、負荷率Xよりも小さい負荷率で変動させることでガス発電機3を連続運転するとともに、ガス発電機3からメタン発酵槽への発電廃熱の供給を一時的に停止する。これによれば、バイオガスの貯留量レベルを上昇(回復)させることができる、または、バイオガスの貯留量レベルの下降速度を抑えることができる。また、メタン発酵槽の加温は一時的になされなくなるが、所定の熱エネルギーが常に必要な加熱処理装置への熱媒油の供給を適切に継続することができる。
【0079】
(7)本実施形態では、ガスタンク2の中のバイオガスの量が所定量以下になった場合、バイオガスとは別の燃料が供給された熱媒ボイラ4、5にて熱媒を加熱する。これによれば、熱媒ボイラ4、5により加熱された熱媒により、加熱処理装置における処理物の加熱処理を維持することができるとともに、メタン発酵槽の加温を適切に行うことができる。
【0080】
(8)本実施形態では、ガスタンク2の中のバイオガスの量が所定量以下になった場合、ガス発電機3にバイオガスおよびバイオガスとは別の燃料を用いてガス発電機3を運転する。これによれば、発電に寄与しない熱媒ボイラ4、5を使用せず、ガス発電機3で得られた発電廃熱により、加熱処理装置による処理物の加熱処理を維持することができるとともに、メタン発酵槽の加温を適切に行うことができる。
【0081】
(9)本実施形態では、処理物を脱水処理し、脱水処理されて得られた脱水物を加熱処理装置によって加熱処理している。これによれば、処理物の水分量が減少することで加熱処理に必要な発電廃熱の量を低減することができ、ガス発電機3の燃料であるバイオガスの発生量が仮に低下しても、加熱処理を適切に行いやすい。
【0082】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態の各構成を適宜組み合わせたり、上記の実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。例えば、上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0083】
上記の実施形態では、有機性廃棄物の処理物を脱水処理し、脱水処理されて得られた脱水物を加熱処理装置によって加熱処理している。これに代えて、有機性廃棄物の処理物を濃縮処理し、濃縮処理されて得られた濃縮物を加熱処理装置によって加熱処理してもよい。
【0084】
上記の実施形態では、有機性廃棄物を嫌気性発酵処理するメタン発酵槽は、湿式メタン発酵槽であるが、これに代えて、乾式メタン発酵処理を行うメタン発酵槽であってもよい。
【0085】
バイオガスの原料である有機性廃棄物は、下水汚泥に限られるものではない。下水汚泥、生ごみなどの食品廃棄物(食品系バイオマス)、古紙・廃紙などのリグノセルロース系廃棄物、農業残渣、および家畜糞尿などの様々な有機性廃棄物をバイオガスの原料とすることができる。前記のとおり、これらの有機性廃棄物は、それぞれ単独で処理されてもよいし、混合処理されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1:消化槽(メタン発酵槽)
2:ガスタンク
3:ガス発電機
6:水熱炭化装置(加熱処理装置)
図1
図2
図3
図4
図5