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特開2024-80160バイオガス利用設備の運転方法、およびバイオガス利用設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080160
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】バイオガス利用設備の運転方法、およびバイオガス利用設備
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/65 20220101AFI20240606BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20240606BHJP
   B09B 5/00 20060101ALN20240606BHJP
   B09B 101/70 20220101ALN20240606BHJP
【FI】
B09B3/65 ZAB
C02F11/04 A
B09B5/00 P
B09B5/00 E
B09B101:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193105
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】隅 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】竹田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】宮本 博司
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA03
4D004AA12
4D004AC05
4D004BA03
4D004CA17
4D004DA02
4D059AA01
4D059AA02
4D059AA04
4D059AA05
4D059AA07
4D059BA17
4D059BA56
4D059BB03
4D059BE08
4D059BE15
4D059BE16
4D059BE26
4D059BE37
4D059CA10
(57)【要約】
【課題】メタン発酵槽で発生したバイオガスを無駄なく有効に利用することができるバイオガス利用設備の運転方法およびバイオガス利用設備を提供すること。
【解決手段】メタン発酵槽(消化槽1)で発生したバイオガスを用いてガス発電機3にて発電し、ガス発電機3で当該発電の際に得られた発電廃熱を用いて第1熱媒および第2熱媒を加熱する、バイオガス利用設備の運転方法であって、熱エネルギー需要量Aと、発電廃熱量Q1と、発電廃熱量Q2との大小関係に応じて、ガス発電機3の負荷率、バイオガスとは別の燃料のガス発電機3への追加供給、バイオガスとは別の燃料を用いた第1熱媒ボイラにての第1熱媒の加熱、およびバイオガスとは別の燃料を用いた第2熱媒ボイラにての第2熱媒の加熱、のうちの少なくとも1つを切り替える運転を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を嫌気性発酵処理するメタン発酵槽と、
前記メタン発酵槽の中で嫌気性発酵処理された後の有機性廃棄物の処理物を加熱処理する加熱処理装置と、
前記メタン発酵槽で発生したバイオガスを用いて発電するガス発電機と、
前記メタン発酵槽を加温するための第1熱媒を加熱する第1熱媒ボイラと、
前記加熱処理装置へ供給する第2熱媒を加熱する第2熱媒ボイラと、
を備え、
前記バイオガスを用いて前記ガス発電機にて発電し、前記ガス発電機で当該発電の際に得られた発電廃熱を用いて前記第1熱媒および前記第2熱媒を加熱する、
バイオガス利用設備の運転方法であって、
熱エネルギー需要量Aと、発電廃熱量Q1と、発電廃熱量Q2との大小関係に応じて、前記ガス発電機の負荷率、前記バイオガスとは別の燃料の前記ガス発電機への追加供給、前記バイオガスとは別の燃料を用いた前記第1熱媒ボイラにての前記第1熱媒の加熱、および前記バイオガスとは別の燃料を用いた前記第2熱媒ボイラにての前記第2熱媒の加熱、のうちの少なくとも1つを切り替える運転を行う、
バイオガス利用設備の運転方法。
熱エネルギー需要量A:前記第1熱媒の加熱に必要な1日当たりの熱量の予測値と、前記第2熱媒の加熱に必要な1日当たりの熱量の予測値と、の合計
発電廃熱量Q1:前記ガス発電機に燃料として前記バイオガスのみを供給することとし、前記ガス発電機に供給する前記バイオガスの総量を、1日当たり発生する前記バイオガスの総量の予測値として、前記ガス発電機の負荷率を100%に固定して発電したときに得られる発電廃熱の熱量の総量の予測値
発電廃熱量Q2:前記ガス発電機に燃料として前記バイオガスのみを供給することとし、前記ガス発電機に供給する前記バイオガスの総量を、1日当たり発生する前記バイオガスの総量の予測値として、前記ガス発電機の負荷率を、1日当たり発生する前記バイオガスの総量の予測値の量で前記ガス発電機をちょうど24時間連続運転できる負荷率に固定して発電したときに得られる発電廃熱の熱量の総量の予測値
【請求項2】
請求項1に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記熱エネルギー需要量A≦前記発電廃熱量Q1の場合、前記ガス発電機の負荷率を100%に固定して前記ガス発電機を運転する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項3】
請求項1に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記発電廃熱量Q1<前記熱エネルギー需要量A≦前記発電廃熱量Q2の場合、前記ガス発電機の負荷率を変動させながら前記ガス発電機を連続運転する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項4】
請求項1に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記発電廃熱量Q2<前記熱エネルギー需要量Aの場合、
前記バイオガスのみを用いて前記ガス発電機を運転するとともに、
前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第1熱媒ボイラにて前記第1熱媒を加熱する、および/または、前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第2熱媒ボイラにて前記第2熱媒を加熱する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項5】
請求項1に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記発電廃熱量Q2<前記熱エネルギー需要量Aの場合、
前記バイオガスおよび前記バイオガスとは別の燃料を用いて、前記ガス発電機を運転するとともに、
前記ガス発電機で得られた発電廃熱のみを用いて、前記第1熱媒を加熱し且つ前記第2熱媒を加熱する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項6】
請求項5に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記ガス発電機の負荷率を100%に固定して前記ガス発電機を運転する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記ガス発電機の停止時は、前記バイオガスまたは前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第1熱媒ボイラにて前記第1熱媒を加熱する、および/または、前記バイオガスまたは前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第2熱媒ボイラにて前記第2熱媒を加熱する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、
前記メタン発酵槽の立ち上げ時は、前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第1熱媒ボイラにて前記第1熱媒を加熱する、
バイオガス利用設備の運転方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の運転を行う、バイオガス利用設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガス利用設備の運転方法、およびバイオガス利用設備に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオガス利用設備に関する技術として、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には、有機性廃棄物スラリーを嫌気性消化処理する嫌気性消化槽と、消化処理スラリーを加熱処理する可溶化設備と、嫌気性消化槽で発生したバイオガスを用いて発電する発電装置と、可溶化設備を構成する第二熱交換器に蒸気を供給する加温用ボイラであって、上記バイオガスを燃料として用いる加温用ボイラと、を備える有機性廃棄物の処理設備が記載されている。また、特許文献1には、発電装置を構成する原動機冷却水用熱交換器で得られた温水を用いて嫌気性消化槽を加温することが記載されている。
【0003】
上記からわかるように、特許文献1に記載の設備では、嫌気性消化槽で発生したバイオガスを、ガス発電、嫌気性消化槽の加温(発電廃熱で加温)、および可溶化設備における加熱処理に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3651836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
嫌気性消化槽でのバイオガスの発生量は、多かったり少なかったりする。バイオガスの発生量が多いときは、ガス発電を優先させて、バイオガスの多くを発電装置に供給しても特に問題はない。しかしながら、バイオガスの発生量が少ないときに、ガス発電を優先させると、嫌気性消化槽の加温や、可溶化設備における加熱処理に用いるバイオガス量が不足して、バイオガスを利用した嫌気性消化槽の加温などを適切に行うことができないことがある。すなわち、バイオガスを有効に利用できないことがある。
【0006】
本発明の目的は、メタン発酵槽で発生したバイオガスを無駄なく有効に利用することができるバイオガス利用設備の運転方法およびバイオガス利用設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本願で開示するバイオガス利用設備の運転方法は、有機性廃棄物を嫌気性発酵処理するメタン発酵槽と、前記メタン発酵槽の中で嫌気性発酵処理された後の有機性廃棄物の処理物を加熱処理する加熱処理装置と、前記メタン発酵槽で発生したバイオガスを用いて発電するガス発電機と、前記メタン発酵槽を加温するための第1熱媒を加熱する第1熱媒ボイラと、前記加熱処理装置へ供給する第2熱媒を加熱する第2熱媒ボイラと、を備え、前記バイオガスを用いて前記ガス発電機にて発電し、前記ガス発電機で当該発電の際に得られた発電廃熱を用いて前記第1熱媒および前記第2熱媒を加熱する、バイオガス利用設備の運転方法である。熱エネルギー需要量Aと、発電廃熱量Q1と、発電廃熱量Q2との大小関係に応じて、前記ガス発電機の負荷率、前記バイオガスとは別の燃料の前記ガス発電機への追加供給、前記バイオガスとは別の燃料を用いた前記第1熱媒ボイラにての前記第1熱媒の加熱、および前記バイオガスとは別の燃料を用いた前記第2熱媒ボイラにての前記第2熱媒の加熱、のうちの少なくとも1つを切り替える運転を行う。
熱エネルギー需要量A:前記第1熱媒の加熱に必要な1日当たりの熱量の予測値と、前記第2熱媒の加熱に必要な1日当たりの熱量の予測値と、の合計
発電廃熱量Q1:前記ガス発電機に燃料として前記バイオガスのみを供給することとし、前記ガス発電機に供給する前記バイオガスの総量を、1日当たり発生する前記バイオガスの総量の予測値として、前記ガス発電機の負荷率を100%に固定して発電したときに得られる発電廃熱の熱量の総量の予測値
発電廃熱量Q2:前記ガス発電機に燃料として前記バイオガスのみを供給することとし、前記ガス発電機に供給する前記バイオガスの総量を、1日当たり発生する前記バイオガスの総量の予測値として、前記ガス発電機の負荷率を、1日当たり発生する前記バイオガスの総量の予測値の量で前記ガス発電機をちょうど24時間連続運転できる負荷率に固定して発電したときに得られる発電廃熱の熱量の総量の予測値
【0008】
(2)前記(1)に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記熱エネルギー需要量A≦前記発電廃熱量Q1の場合、前記ガス発電機の負荷率を100%に固定して前記ガス発電機を運転してもよい。
【0009】
(3)前記(1)に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記発電廃熱量Q1<前記熱エネルギー需要量A≦前記発電廃熱量Q2の場合、前記ガス発電機の負荷率を変動させながら前記ガス発電機を連続運転してもよい。
【0010】
(4)前記(1)に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記発電廃熱量Q2<前記熱エネルギー需要量Aの場合、前記バイオガスのみを用いて前記ガス発電機を運転するとともに、前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第1熱媒ボイラにて前記第1熱媒を加熱する、および/または、前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第2熱媒ボイラにて前記第2熱媒を加熱してもよい。
【0011】
(5)前記(1)に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記発電廃熱量Q2<前記熱エネルギー需要量Aの場合、前記バイオガスおよび前記バイオガスとは別の燃料を用いて、前記ガス発電機を運転するとともに、前記ガス発電機で得られた発電廃熱のみを用いて、前記第1熱媒を加熱し且つ前記第2熱媒を加熱してもよい。
【0012】
(6)前記(5)に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記ガス発電機の負荷率を100%に固定して前記ガス発電機を運転してもよい。
【0013】
(7)前記(1)から(6)のいずれかに記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記ガス発電機の停止時は、前記バイオガスまたは前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第1熱媒ボイラにて前記第1熱媒を加熱する、および/または、前記バイオガスまたは前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第2熱媒ボイラにて前記第2熱媒を加熱してもよい。
【0014】
(8)前記(1)から(7)のいずれかに記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記メタン発酵槽の立ち上げ時は、前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第1熱媒ボイラにて前記第1熱媒を加熱してもよい。
【0015】
(9)本願で開示するバイオガス利用設備は、前記(1)から(8)に記載のバイオガス利用設備の運転方法を行ってもよい。
【発明の効果】
【0016】
前記構成のバイオガス利用設備の運転方法およびバイオガス利用設備によれば、メタン発酵槽で発生したバイオガスを無駄なく有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】バイオガス利用設備を示すブロック図である。
図2】バイオガス利用設備における1日間の熱エネルギー需要量を示すグラフである。
図3】ガス発電機の負荷率を変動させながらガス発電機を連続運転した場合の、ガスタンク内のバイオガスの貯留量レベルの変化の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
バイオガスの原料である有機性廃棄物は、下水汚泥、し尿汚泥、農業集落排水汚泥、浄化槽汚泥、生ごみなどの食品廃棄物(食品系バイオマス)、古紙・廃紙などのリグノセルロース系廃棄物、農業残渣、および家畜糞尿などである。これらの有機性廃棄物は、それぞれ単独で処理されてもよいし、混合処理されてもよい。以下では、バイオガスの原料である有機性廃棄物として下水汚泥を例にとって説明する。
【0020】
図1に示すように、バイオガス利用設備は、メタン発酵槽としての消化槽1と、ガスタンク2と、ガス発電機3と、第1熱媒ボイラとしての温水ボイラ4と、第2熱媒ボイラとしての熱媒油ボイラ5と、加熱処理装置としての水熱炭化装置6と、コントローラ10と、を備えている。
【0021】
(消化槽)
消化槽1は、下水汚泥を嫌気性発酵処理するタンクである。消化槽1は、中温発酵処理においては温度約30~42℃で滞留時間15~30日程度、高温発酵処理においては温度約50~60℃で滞留時間7~20日程度で運転される。
【0022】
下水汚泥の嫌気性発酵により消化槽1の中で消化ガスが発生する。消化ガスは、メタンが約60容量%、二酸化炭素が約40容量%のバイオガスである。発生した消化ガスは、消化槽1の中から取り出され、ガスタンク2に貯留される。消化槽1への下水汚泥の投入量、投入される下水汚泥の性状などによって、消化ガスの発生量は変化し、消化ガスの発生量は多かったり少なかったりする。
【0023】
嫌気性発酵処理後の下水汚泥の発酵残渣、すなわち発酵処理汚泥は、消化槽1の中から外部へ排出される。発酵処理汚泥は、嫌気性発酵処理された後の有機性廃棄物の処理物である。消化槽1の中から外部へ排出された発酵処理汚泥は、脱水処理(固液分離処理)される。発酵処理汚泥が脱水処理されて得られた脱水汚泥(脱水物)は、水熱炭化装置6に供給される。
【0024】
(ガスタンク)
ガスタンク2は、消化槽1で発生した消化ガスを貯留するタンクである。ガスタンク2として、低圧式ガスタンク、中圧式ガスタンクなどがある。ガスタンク2への消化ガスの流入量は多かったり少なかったりすることがあるが、ガスタンク2には、消化槽1で発生した消化ガスが原則常に流入してくる。
【0025】
(ガス発電機)
ガス発電機3は、消化ガスを燃料として用いて発電するガス発電機である。消化ガスは、ガスタンク2からガス発電機3へ供給される。ガス発電機3は、ガスエンジン7と、ガスエンジン7に接続された発電機(不図示)と、冷却水用熱交換器8と、排ガス用熱交換器9と、を備えている。
【0026】
ガスエンジン7は、消化ガスのみを燃料として用いるガスエンジンであってもよいし、消化ガスと都市ガスとを混焼させるガスエンジンであってもよい。
【0027】
冷却水用熱交換器8は、ガスエンジン7などを冷却して高温となった冷却水から熱エネルギー(熱)を回収する間接式熱交換器である。当該熱エネルギーは、ガス発電機3で得られる発電廃熱の一つである。冷却水用熱交換器8は、水-水熱交換器である。冷却水用熱交換器8において、ガスエンジン7などを冷却して高温となった冷却水から得られた温水は、冷却水用熱交換器8から消化槽1に供給される。消化槽1に供給された温水は、消化槽1の加温、より詳細には、消化槽1内の汚泥の加温に用いられる。図示を省略しているが、消化槽1には、汚泥加温用熱交換器が備えられている。汚泥加温用熱交換器は間接式熱交換器である。汚泥加温用熱交換器にて、温水から汚泥へ熱が移動され、汚泥は加温される。汚泥加温用熱交換器は消化槽1とは別に設置されていてもよく、その場合は、消化槽1内の汚泥の一部または全部が汚泥加温用熱交換器と消化槽1との間を循環することによって、汚泥加温用熱交換器にて、温水から汚泥へ熱が移動され、汚泥は加温される。このように、消化槽1は、ガス発電機3で得られた発電廃熱を用いて加温されるものである。なお、消化槽1内の汚泥の温度が消化温度よりも高くなる場合、バイパス配管(図1に示される破線矢印)を流れる温水の流量を増加させることにより、消化槽1への熱の供給を抑制してもよい。
【0028】
なお、消化槽1(消化槽1内の汚泥)を加温するための熱媒(第1熱媒)は、温水に限定されない。冷却水用熱交換器8において、ガスエンジン7などを冷却して高温となった冷却水と油との間で熱交換させ、得られた温油を用いて消化槽1を加温してもよい。すなわち、消化槽1(消化槽1内の汚泥)を加温するための熱媒(第1熱媒)として、温水の他に、温油(熱媒油)を挙げることができる。
【0029】
排ガス用熱交換器9は、ガスエンジン7の排ガスから熱エネルギー(熱)を回収する間接式熱交換器である。当該熱エネルギーは、ガス発電機3で得られる発電廃熱の一つである。排ガス用熱交換器9は、排ガス-熱媒油熱交換器である。排ガス用熱交換器9において、排ガスから得られた熱媒油は、排ガス用熱交換器9から水熱炭化装置6に供給される。水熱炭化装置6に供給された熱媒油は、発酵処理汚泥が脱水処理されて得られた脱水汚泥の加熱処理に用いられる。脱水汚泥は、発酵処理汚泥が、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、スクリュープレス脱水機、またはフィルタープレス脱水機などの脱水機により、例えば、含水率65~85重量%に脱水処理されて得られた脱水物である。脱水汚泥は、水熱炭化装置6にて、熱媒油によって間接加熱される。
【0030】
なお、水熱炭化装置6に供給される熱媒(第2熱媒)は、熱媒油に限定されない。排ガス用熱交換器9で蒸気(過熱蒸気)を発生させ、発生した蒸気を水熱炭化装置6へ供給してもよい。すなわち、水熱炭化装置6へ供給する熱媒(第2熱媒)として、熱媒油の他に、蒸気(過熱蒸気)を挙げることができる。
【0031】
図1では、排ガス用熱交換器9から水熱炭化装置6へ熱媒油が供給されるように、排ガス用熱交換器9と水熱炭化装置6とが配管を示す線で接続されている。熱媒油は、排ガス用熱交換器9から熱媒油ボイラ5を介さずに水熱炭化装置6へ供給されてもよく、排ガス用熱交換器9から熱媒油ボイラ5を介して(経由して)、水熱炭化装置6へ供給されてもよい。また、排ガス用熱交換器9からの熱媒油と、熱媒油ボイラ5からの熱媒油とが、水熱炭化装置6の前で合流してから、水熱炭化装置6へ供給されてもよい。
【0032】
(温水ボイラ)
温水ボイラ4は、消化槽1(消化槽1内の汚泥)を加温するための温水を加熱する第1熱媒ボイラである。温水ボイラ4の燃料は、消化ガスとは別の燃料、または消化ガスが用いられる。消化ガスとは別の燃料は、例えば、都市ガスである。温水ボイラ4で加熱された温水は、消化槽1に供給される。消化槽1に供給された温水は、消化槽1の加温、より詳細には、消化槽1内の汚泥の加温に用いられる。
【0033】
なお、消化ガスをガス発電機3の燃料として使用することに加えて、温水ボイラ4の燃料としても消化ガスを使用すると、温水ボイラ4で消化ガスを使用した分、ガス発電機3で使用可能な消化ガスの量が減少し、ガス発電機3の発電量が低下する。そのため、ガス発電機3の停止時以外は、温水ボイラ4の燃料として消化ガスは、基本的に使用されない。
【0034】
前記のとおり、消化槽1(消化槽1内の汚泥)を加温するための熱媒(第1熱媒)として、温水の他に、温油(熱媒油)を挙げることができる。すなわち、第1熱媒ボイラとして、温水ボイラ4に代えて、消化槽1を加温するための温油を加熱する温油ボイラを用いてもよい。
【0035】
(熱媒油ボイラ)
熱媒油ボイラ5は、水熱炭化装置6へ供給する熱媒油を加熱する第2熱媒ボイラである。熱媒油ボイラ5の燃料は、消化ガスとは別の燃料、または消化ガスが用いられる。消化ガスとは別の燃料は、例えば、都市ガスである。熱媒油ボイラ5で加熱された熱媒油は、水熱炭化装置6に供給される。水熱炭化装置6に供給された熱媒油は、有機性廃棄物の処理物の加熱処理に用いられる。
【0036】
なお、消化ガスをガス発電機3の燃料として使用することに加えて、熱媒油ボイラ5の燃料としても消化ガスを使用すると、熱媒油ボイラ5で消化ガスを使用した分、ガス発電機3で使用可能な消化ガスの量が減少し、ガス発電機3の発電量が低下する。そのため、ガス発電機3の停止時以外は、熱媒油ボイラ5の燃料として消化ガスは基本的に使用されない。
【0037】
前記のとおり、水熱炭化装置6へ供給する熱媒(第2熱媒)として、熱媒油の他に、蒸気(過熱蒸気)を挙げることができる。すなわち、第2熱媒ボイラとして、熱媒油ボイラ5に代えて、水熱炭化装置6へ供給する蒸気(過熱蒸気)を加熱する蒸気ボイラを用いてもよい。
【0038】
(水熱炭化装置)
水熱炭化装置6は、消化槽1の中で嫌気性発酵処理された後の有機性廃棄物の処理物を加熱処理する装置である。水熱炭化装置6には、排ガス用熱交換器9などから熱媒油が供給される。供給された熱媒油は、発酵処理汚泥が脱水処理されて得られた脱水汚泥の加熱処理に用いられる。水熱炭化とは、水を含む処理対象物を、酸素を含有しない又は酸素濃度が低いガス雰囲気下にて又は酸素を遮断した状態にて高温高圧処理することで、有機物を炭化させることをいう。水熱炭化装置6において、脱水汚泥は、熱媒油によって間接加熱されて、例えば、200℃の温度にされる。なお、温度は、200℃に限定されるものではない。脱水汚泥は、160℃から250℃の範囲のうちの任意の温度にされてもよい。なお、水熱炭化装置6内の脱水汚泥の温度が250℃を超える場合、バイパス配管(図1に示される破線矢印)を流れる熱媒油の流量を増加させることにより、水熱炭化装置6への熱の供給を抑制してもよい。
【0039】
有機性廃棄物の処理物を加熱処理する装置は、水熱炭化装置6に限定されるものではない。有機性廃棄物の処理物を加熱処理する装置は、有機性廃棄物の処理物を水熱処理する水熱処理装置であってもよいし、乾留処理する乾留処理装置であってもよいし、乾燥処理する乾燥処理装置であってもよい。水熱処理とは、水熱炭化処理を含む、水熱炭化処理よりも広い概念の処理のことである。
【0040】
(コントローラ)
コントローラ10は、バイオガス利用設備を構成する各機器を制御する制御装置である。コントローラ10には、バイオガス利用設備を構成する各機器・配管に設けられた各種計器からの信号が入力される。コントローラ10は、前記各種計器からの信号に基づいて、バイオガス利用設備を構成する各機器を制御する。
【0041】
コントローラ10は、状況に応じて、バイオガス利用設備の運転方法を切り替えるように制御構成されている。なお、以下に記載するコントローラ10が行う制御を、人が手動で行ってもよい。すなわち、人が手動でガス発電機3などを動作させてもよい。
【0042】
コントローラ10は、例えば、消化ガスの全量をガス発電機3で用いて発電させ、ガス発電機3で当該発電の際に得られた発電廃熱を用いて温水および熱媒油を加熱させる。発電廃熱を用いた温水の加熱は、冷却水用熱交換器8で行われる。発電廃熱を用いた熱媒油の加熱は、排ガス用熱交換器9で行われる。消化ガスの全量をガス発電機3で用いて発電するというのは、温水ボイラ4、熱媒油ボイラ5などのガス発電機3以外のガス消費機器には消化ガスを供給せず、ガス発電機3のみに発生した消化ガスを供給して発電することをいう。このとき、コントローラ10は、ガス発電機3の発電量が最大となるガス発電機3の負荷率で、ガス発電機3を動作させて発電させる。ガス発電機3の発電量が最大となるガス発電機3の負荷率は、例えば、負荷率100%である。ガス発電機3の消化ガス最大消費量>消化ガスの計画発生量となるように、ガス発電機3は選定されているため、消化ガス最大消費量のとき、ガス発電機3の発電量は最大となる。
【0043】
なお、消化ガスの全量をガス発電機3で用いて発電しない場合もある。例えば、発生した消化ガスのうちの一部の消化ガスが、温水プール等の場内給湯設備50の燃料として利用される場合がある(図1参照)。この場合、コントローラ10は、消化ガスの一部が場内給湯設備50で用いられる分を除く全ての消化ガスを用いてガス発電機3にて発電させ、ガス発電機3で当該発電の際に得られた発電廃熱を用いて温水および熱媒油を加熱させる。すなわち、場内給湯設備50およびガス発電機3を除くガス消費機器には消化ガスは供給されない。この場合も、基本的には、ガス発電機3の発電量が最大となるガス発電機3の負荷率で、ガス発電機3を動作させて発電させる。
【0044】
コントローラ10は、冷却水用熱交換器8で加熱された温水を消化槽1に送るように制御し、消化槽1に送られた温水で消化槽1(消化槽1内の汚泥)を加温させる。また、コントローラ10は、排ガス用熱交換器9で加熱された熱媒油を、水熱炭化装置6に送るように制御し、さらに水熱炭化装置6を制御して、水熱炭化装置6に送られ熱媒油で脱水汚泥を加熱処理させる。
【0045】
図2は、バイオガス利用設備における1日間の熱エネルギー需要量Aを示すグラフである。コントローラ10は、汚泥を嫌気性発酵処理する温度(消化槽1の槽内温度)、消化槽1に投入される汚泥量、消化槽1に投入される汚泥の温度、および外気温などから「消化槽における熱エネルギー需要量B(第1熱媒の加熱に必要な1日当たりの熱量の予測値B)」を演算により求める。コントローラ10は、水熱炭化装置6における処理物の加熱温度、水熱炭化装置6に供給される処理物の量、水熱炭化装置6に供給される処理物の温度、および外気温などから「水熱炭化装置における熱エネルギー需要量C(第2熱媒の加熱に必要な1日当たりの熱量の予測値C)」を演算により求める。コントローラ10は、「第1熱媒の加熱に必要な1日当たりの熱量の予測値B」と「第2熱媒の加熱に必要な1日当たりの熱量の予測値C」との和である1日間の熱エネルギー需要量Aを求める(図2参照)。
【0046】
消化槽1における汚泥の嫌気性発酵は常に行われているため、消化槽1の加温に必要な熱エネルギー需要量(kW)は、図2に示すように1日中存在する。これに対して、水熱炭化装置6のような加熱処理装置による処理物の加熱処理は、行われない時間帯と行われる時間帯とがあるので、加熱処理装置による処理物の加熱処理に必要な熱エネルギー需要量(kW)は、図2に示すように有るときと無いときとがある。後述する各運転方法は、いずれも、消化槽1を加温し、且つ、水熱炭化装置6により処理物の加熱処理を行っていることを前提とする。
【0047】
また、コントローラ10は、ガス発電機3の負荷率等から、発電の際に得られる発電廃熱の熱量(発電廃熱量Q1、Q2)を算出し、熱エネルギー需要量A(=B+C)と発電廃熱量Q1、Q2との大小関係を判定することで、運転制御を行う。
【0048】
ガス発電機3において発電の際に得られる発電廃熱の熱量とは、冷却水用熱交換器8で回収される熱エネルギー量(kW)と、排ガス用熱交換器9で回収される熱エネルギー量(kW)との和である。
【0049】
熱エネルギー需要量A、発電廃熱量Q1、Q2は、以下のとおりである。
熱エネルギー需要量A:前記第1熱媒の加熱に必要な1日当たりの熱量の予測値Bと、前記第2熱媒の加熱に必要な1日当たりの熱量の予測値Cと、の合計
発電廃熱量Q1:前記ガス発電機に燃料として前記バイオガスのみを供給することとし、前記ガス発電機に供給する前記バイオガスの総量を、1日当たり発生する前記バイオガスの総量の予測値として、前記ガス発電機の負荷率を100%に固定して発電したときに得られる発電廃熱の熱量の総量の予測値
発電廃熱量Q2:前記ガス発電機に燃料として前記バイオガスのみを供給することとし、前記ガス発電機に供給する前記バイオガスの総量を、1日当たり発生する前記バイオガスの総量の予測値として、前記ガス発電機の負荷率を、1日当たり発生する前記バイオガスの総量の予測値の量で前記ガス発電機をちょうど24時間連続運転できる負荷率に固定して発電したときに得られる発電廃熱の熱量の総量の予測値
ここで、「1日当たりの加温熱量の予測値」、「1日当たりの加熱熱量の予測値」、及び、「1日当たり発生するバイオガスの総量の予測値」とは、特に「1日当たり」に限定されず、ある一定期間内に必要な加温熱量の予測値、ある一定期間内に必要な加熱熱量の予測値、及び、ある一定期間内に発生するバイオガス総量の予測値が算出されればよいため、例えば、1時間、10時間、3日、5日当たりとしてもよい。
なお、ガス発電機において、その仕様に関係なく最大効率で発電が行われると、発電廃熱量は最小となることから、燃料の総量が同じであれば、当然に発電廃熱量Q1<発電廃熱量Q2となる。
【0050】
消化ガスの発生量は、消化槽1などに設けられたガス流量計(不図示)によって計測される。コントローラ10は、当該ガス流量計からの信号に基づいて、消化ガスの発生量が多いか少ないか判断する。消化ガスの発生量が多い場合というのは、例えば、消化ガスの計画発生量程度以上の消化ガスが発生している場合のことをいう。
【0051】
次に、コントローラ10が、熱エネルギー需要量A(=B+C)と発電廃熱量Q1、Q2との大小関係を判定することで、どのように運転制御が行われるか、以下説明する。
【0052】
〈熱エネルギー需要量A≦前記発電廃熱量Q1のときの運転制御〉
コントローラ10は、ガス発電機3の負荷率、ガス発電機3に供給される消化ガスの流量、あるいはガス発電機3に供給される消化ガスのメタン濃度などから、発電の際に得られる上記発電廃熱の熱量を演算により求める。求めた発電廃熱の熱量(発電廃熱量Q1)が、熱エネルギー需要量Aと同じ又は大きい場合、つまり、熱エネルギー需要量A≦前記発電廃熱量Q1の場合、ガス発電機3の負荷率を固定してガス発電機3を連続運転する。ガス発電機3の負荷率は、ガス発電機3の発電量が最大となるガス発電機3の負荷率100%に固定される。
【0053】
ガス発電機3の負荷率を100%に固定して連続運転することで、ガス発電機3で得られた発電廃熱により消化槽1の加温や水熱炭化装置6における加熱処理を確実に行うことができるとともに、ガス発電機3を用いたバイオガス発電の発電量を最大化することができる。
【0054】
〈発電廃熱量Q1<前記熱エネルギー需要量A≦前記発電廃熱量Q2のときの運転制御〉
コントローラ10は、熱エネルギー需要量Aが、求めた発電廃熱の熱量(発電廃熱量Q1)よりも大きく、求めた発電廃熱の熱量(発電廃熱量Q2)と同じ又は小さい場合、つまり、発電廃熱量Q1<前記熱エネルギー需要量A≦前記発電廃熱量Q2の場合、ガス発電機3の負荷率を下げて、ガス発電機3の負荷率を変動させながらガス発電機3を連続運転する。負荷率の変動のさせ方は、これに限定されることはないが、例えば、図3に示すように行う。コントローラ10は、ガス発電機3の負荷率を、100%、90%、95%、90%と順次、変動させることで、ガス発電機3を連続運転させる。
【0055】
負荷率100%でガス発電機3が運転されることで、消化ガスが消費され、ガスタンク2内の消化ガスの貯留量レベルは、運転開始後、時間T1になると、レベルH(High)からレベルL(Low)に下がる。消化ガスの貯留量レベルがレベルLになると、コントローラ10は、ガス発電機3の負荷率を90%に変更する。ガスタンク2には、消化槽1で発生した消化ガスが流入してくるので、ガス発電機3の負荷率を90%に変更すると、消化ガスの消費量が減少し、消化ガスの貯留量レベルは上昇に転じる。なお、これは、負荷率90%のときのガス発電機3における消化ガス消費量<ガスタンク2への消化ガスの流入量、であることを前提としている。負荷率90%のときのガス発電機3における消化ガス消費量>ガスタンク2への消化ガスの流入量、である場合には、ガス発電機3における消化ガス消費量<ガスタンク2への消化ガスの流入量となるガス発電機3の負荷率に設定することになる。
【0056】
消化ガスの貯留量レベルがレベルHに回復すると(時間T2)、コントローラ10は、ガス発電機3の負荷率を95%に変更する。ガス発電機3の負荷率を95%に変更すると、消化ガスの消費量が、ガスタンク2に流入してくる消化ガスの量を上回り、消化ガスの貯留量レベルは下降に転じる。なお、これは、負荷率95%のときのガス発電機3における消化ガス消費量>ガスタンク2への消化ガスの流入量、であることを前提としている。負荷率95%のときのガス発電機3における消化ガス消費量<ガスタンク2への消化ガスの流入量、である場合には、ガス発電機3における消化ガス消費量>ガスタンク2への消化ガスの流入量となるガス発電機3の負荷率に設定することになる。このようにして、コントローラ10は、熱エネルギー需要量Aが、求めた発電廃熱の熱量(発電廃熱量Q1)よりも大きく、求めた発電廃熱の熱量(発電廃熱量Q2)と同じ又は小さい場合、ガス発電機3の負荷率を下げて、ガス発電機3の負荷率を変動させながらガス発電機3を連続運転させる。
【0057】
ガス発電機3の負荷率を下げると、ガス発電機3の発電効率は低下するが、熱効率が増加する。そのため、発電廃熱の熱量(発電廃熱量Q2)は、負荷率の低下割合と同じ割合だけ低下することはなく、消化槽1の加温や水熱炭化装置6における加熱処理には有利になる。
【0058】
〈発電廃熱量Q2<前記熱エネルギー需要量Aのときの運転制御 その1〉
発電廃熱の熱量(発電廃熱量Q2)が熱エネルギー需要量Aよりも小さい場合、つまり、発電廃熱量Q2<前記熱エネルギー需要量Aの場合、コントローラ10は、次の制御を行ってもよい。コントローラ10は、消化ガスとは別の燃料を用いて熱媒油ボイラ5にて、熱媒油を加温させる。このとき、排ガス用熱交換器9からの熱媒油をさらに熱媒油ボイラ5にて、熱媒油を加熱し、熱媒油の温度をさらに上げてもよい。消化ガスとは別の燃料は、例えば、都市ガスである。これによれば、消化ガスのみをガス発電機に供給した発電で得られた発電廃熱だけでは水熱炭化装置6における処理物(脱水汚泥)の加熱処理に必要な熱エネルギーが不足している場合、不足している熱エネルギーを補うことができる。
【0059】
また、この場合、コントローラ10は、消化ガスとは別の燃料を用いて温水ボイラ4にて温水を加熱させてもよい。これによれば、消化槽1の加温に必要な熱エネルギーが不足している場合、不足している熱エネルギーを補うことができる。
【0060】
この場合、消化ガスとは別の燃料を用いた、熱媒油ボイラ5にての熱媒油の加熱、および温水ボイラ4にての温水の加熱は、両方を行ってもよいし、いずれか一方のみを行ってもよい。
【0061】
〈発電廃熱量Q2<前記熱エネルギー需要量Aのときの運転制御 その2〉
発電廃熱の熱量(発電廃熱量Q2)が熱エネルギー需要量Aよりも小さい場合、つまり、発電廃熱量Q2<前記熱エネルギー需要量Aの場合、コントローラ10は、次の制御を行ってもよい。コントローラ10は、消化ガスおよび/または消化ガスとは別の燃料を用いて、ガス発電機3を運転させるとともに、ガス発電機3で得られた発電廃熱のみを用いて、温水を加熱させ、熱媒油を加熱させてもよい。これによれば、消化槽1の加温、および水熱炭化装置6における処理物(脱水汚泥)の加熱処理に必要な熱エネルギーが不足している場合、不足している熱エネルギーを補うことができる。さらに、この場合において、ガス発電機3の負荷率を100%に固定してガス発電機3を運転してもよい。これによれば、ガス発電機3を用いたガス発電の発電量を最大化することができる。
【0062】
コントローラ10は、次のような制御も行う。
【0063】
〈ガス発電機の停止のときの運転制御〉
ガス発電機3が停止する、またはガス発電機3を停止させることがある。ガス発電機3が停止していると、発電廃熱が得られないため、発電廃熱を用いて温水および熱媒油を加熱することができない。
【0064】
コントローラ10は、ガス発電機3の停止時、消化槽1で発生した消化ガスを用いて温水ボイラ4にて温水を加熱させる。そして、この温水で消化槽1を加温させる。なお、温水ボイラ4の燃料として、消化ガスとは別の燃料を用いてもよい(例えば、都市ガス)。
【0065】
コントローラ10は、ガス発電機3の停止時、消化槽1で発生した消化ガスを用いて熱媒油ボイラ5にて熱媒油を加熱させる。そして、この熱媒油で脱水汚泥を加熱処理させる。なお、熱媒油ボイラ5の燃料として、消化ガスとは別の燃料を用いてもよい(例えば、都市ガス)。
【0066】
〈消化槽(メタン発酵槽)の立ち上げのときの運転制御〉
消化槽1の立ち上げ時は、消化ガスの発生量は極端に少ない。そのため、コントローラ10は、消化槽1の立ち上げ時、消化ガスとは別の燃料を用いて温水ボイラ4にて温水を加熱させる。そして、この温水で消化槽1を加温させる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態に係るバイオガス利用設備、およびその運転方法について説明した。前記の記載により、バイオガス利用設備、およびその運転方法について、以下の特徴が開示された。
【0068】
(1)バイオガス利用設備の運転方法(バイオガス利用設備)は、メタン発酵槽(消化槽1)で発生したバイオガス(消化ガス)を用いてガス発電機3にて発電し、ガス発電機3で当該発電の際に得られた発電廃熱を用いて、メタン発酵槽を加温するための第1熱媒(温水)、および加熱処理装置(水熱炭化装置6)へ供給する第2熱媒(熱媒油)を加熱し、熱エネルギー需要量Aと、発電廃熱量Q1と、発電廃熱量Q2との大小関係に応じて、前記ガス発電機の負荷率、前記バイオガスとは別の燃料の前記ガス発電機への追加供給、前記バイオガスとは別の燃料を用いた前記第1熱媒ボイラにての前記第1熱媒の加熱、および前記バイオガスとは別の燃料を用いた前記第2熱媒ボイラにての前記第2熱媒の加熱、のうちの少なくとも1つを切り替える運転を行う。
熱エネルギー需要量A:前記第1熱媒の加熱に必要な1日当たりの熱量の予測値と、前記第2熱媒の加熱に必要な1日当たりの熱量の予測値と、の合計
発電廃熱量Q1:前記ガス発電機に燃料として前記バイオガスのみを供給することとし、前記ガス発電機に供給する前記バイオガスの総量を、1日当たり発生する前記バイオガスの総量の予測値として、前記ガス発電機の負荷率を100%に固定して発電したときに得られる発電廃熱の熱量の総量の予測値
発電廃熱量Q2:前記ガス発電機に燃料として前記バイオガスのみを供給することとし、前記ガス発電機に供給する前記バイオガスの総量を、1日当たり発生する前記バイオガスの総量の予測値として、前記ガス発電機の負荷率を、1日当たり発生する前記バイオガスの総量の予測値の量で前記ガス発電機をちょうど24時間連続運転できる負荷率に固定して発電したときに得られる発電廃熱の熱量の総量の予測値
【0069】
上記の構成によれば、バイオガスの発生量に応じて運転方法を選択することができるため、メタン発酵槽の加温や加熱処理装置における加熱処理を確実に行うことができる。また、メタン発酵槽で発生したバイオガスを無駄なく有効に利用することができる。
【0070】
(2)前記熱エネルギー需要量A≦前記発電廃熱量Q1の場合、前記ガス発電機の負荷率を100%に固定して前記ガス発電機を運転する。これによれば、ガス発電機を用いたバイオガス発電の発電量を最大化することができる。
【0071】
(3)前記発電廃熱量Q1<前記熱エネルギー需要量A≦前記発電廃熱量Q2の場合、前記ガス発電機の負荷率を変動させながら前記ガス発電機を連続運転する。これによれば、都市ガス等の別の燃料を使用せず、バイオガスのみの発電廃熱により、メタン発酵槽の加温や加熱処理装置における加熱処理を確実に行うことができる。また、ガス発電機を用いたバイオガス発電の発電量を大きくすることができる。
【0072】
(4)前記発電廃熱量Q2<前記熱エネルギー需要量Aの場合、前記バイオガスのみを用いて前記ガス発電機を運転するとともに、前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第1熱媒ボイラにて前記第1熱媒を加熱する、および/または、前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第2熱媒ボイラにて前記第2熱媒を加熱する。これによれば、バイオガスのみを用いてガス発電機を運転することにより得られた発電廃熱と、都市ガス等の別の燃料が供給された熱媒ボイラにより加熱された熱媒により、メタン発酵槽の加温や加熱処理装置における加熱処理を確実に行うことができる。
【0073】
(5)前記発電廃熱量Q2<前記熱エネルギー需要量Aの場合、前記バイオガスおよび前記バイオガスとは別の燃料を用いて、前記ガス発電機を運転するとともに、前記ガス発電機で得られた発電廃熱のみを用いて、前記第1熱媒を加熱し且つ前記第2熱媒を加熱する。これによれば、発電に寄与しない熱媒ボイラを使用せず、ガス発電機の運転にバイオガスと都市ガス等の別の燃料を使用した発電廃熱により、メタン発酵槽の加温や加熱処理装置における加熱処理を確実に行うことができる。
【0074】
(6)前記(5)に記載のバイオガス利用設備の運転方法において、前記ガス発電機の負荷率を100%に固定して前記ガス発電機を運転する。これによれば、ガス発電機の負荷率を100%に固定して発電することで、ガス発電機を用いたガス発電の発電量を最大化することができる。
【0075】
(7)前記ガス発電機の停止時は、前記バイオガスまたは前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第1熱媒ボイラにて前記第1熱媒を加熱する、および/または、前記バイオガスまたは前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第2熱媒ボイラにて前記第2熱媒を加熱する。これによれば、ガス発電機3の停止時においても、メタン発酵槽を加温することができ、有機性廃棄物の嫌気性発酵処理を継続することができる。また、ガス発電機3の停止時においても、加熱処理装置における有機性廃棄物の処理物の加熱処理を継続することができる。
【0076】
(8)前記メタン発酵槽の立ち上げ時は、前記バイオガスとは別の燃料を用いて前記第1熱媒ボイラにて前記第1熱媒を加熱する。これによれば、メタン発酵槽の立ち上げを迅速に行うことができる。
【0077】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態の各構成を適宜組み合わせたり、上記の実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。例えば、上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0078】
上記の実施形態では、有機性廃棄物の処理物を脱水処理し、脱水処理されて得られた脱水物を加熱処理装置によって加熱処理している。これに代えて、有機性廃棄物の処理物を濃縮処理し、濃縮処理されて得られた濃縮物を加熱処理装置によって加熱処理してもよい。
【0079】
バイオガスの原料である有機性廃棄物は、下水汚泥に限られるものではない。下水汚泥、生ごみなどの食品廃棄物(食品系バイオマス)、古紙・廃紙などのリグノセルロース系廃棄物、農業残渣、および家畜糞尿などの様々な有機性廃棄物をバイオガスの原料とすることができる。前記のとおり、これらの有機性廃棄物は、それぞれ単独で処理されてもよいし、混合処理されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1:消化槽(メタン発酵槽)
3:ガス発電機
4:温水ボイラ(第1熱媒ボイラ)
5:熱媒油ボイラ(第2熱媒ボイラ)
6:水熱炭化装置(加熱処理装置)
図1
図2
図3