(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080170
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】売買管理装置、売買管理方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20240101AFI20240606BHJP
【FI】
G06Q50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193125
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】522470415
【氏名又は名称】株式会社ライクライフ
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【弁理士】
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(74)【代理人】
【識別番号】100212510
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 翔
(72)【発明者】
【氏名】井門 慶介
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC27
5L050CC27
(57)【要約】
【課題】目的物の譲渡益を得つつ、当該目的物の使用が継続できるような取引を管理する。
【解決手段】売買管理装置1は、売主によって入力され、希望売出し価格と分割支払いの払込期間との算定根拠になる入力情報に基づく売却情報を買主候補に提示するための処理を実行する提示処理部34と、所定の目的物の便益の享受者にとって所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報を取得すると、所定の目的物に係る所定の権利を買主に移転するための処理を実行する移転処理部36と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の目的物を分割により売買する取引を管理する売買管理装置であって、
売主によって入力され、希望売出し価格と分割支払いの払込期間との算定根拠になる入力情報に基づく売却情報を買主候補に提示するための処理を実行する提示処理部と、
前記所定の目的物の便益の享受者にとって前記所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報を取得すると、前記所定の目的物に係る所定の権利を買主に移転するための処理を実行する移転処理部と、
を備える売買管理装置。
【請求項2】
前記入力情報に含まれる売主が設定した価格に対して払込期間に基づく割引を行って前記希望売出し価格を算定する価値換算部を更に有する、
請求項1に記載の売買管理装置。
【請求項3】
前記価値換算部は、前記払込期間に加え、売主の現在の年齢及び日本人の平均寿命を反映して割引額を算出し、前記希望売出し価格を算定する、
請求項2に記載の売買管理装置。
【請求項4】
前記所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報は、前記便益の享受者の死亡を示す情報である、
請求項1に記載の売買管理装置。
【請求項5】
前記便益の享受者は、複数人であり、
前記所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報は、前記便益の享受者に設定される複数人全ての死亡を示す情報である、
請求項4に記載の売買管理装置。
【請求項6】
所定の目的物を分割により売買する取引を管理する売買管理方法であって、
売主によって入力され、希望売出し価格と分割支払いの払込期間との算定根拠になる入力情報に基づく売却情報を買主候補に提示するための処理を実行する提示処理ステップと、
前記所定の目的物の便益の享受者にとって前記所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報を取得すると、前記所定の目的物に係る所定の権利を買主に移転するための処理を実行する移転処理ステップと、
を含む売買管理方法。
【請求項7】
所定の目的物を分割により売買する取引を管理するコンピュータのプログラムであって、
売主によって入力され、希望売出し価格と分割支払いの払込期間との算定根拠になる入力情報に基づく売却情報を買主候補に提示するための処理を実行する提示処理ステップと、
前記所定の目的物の便益の享受者にとって前記所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報を取得すると、前記所定の目的物に係る所定の権利を買主に移転するための処理を実行する移転処理ステップと、
をコンピュータによって実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、売買管理装置、売買管理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不動産等の物件の売買を管理する技術が知られている。この種の技術が記載されるものとして、例えば、特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、物件情報処理装置が、不動産物件に関する情報であり、不動産物件の属性値である1以上の物件属性値を有する物件情報を受け付ける受付部と、物件情報を用いて、不動産物件の資産をキャッシュにするキャッシュ化が可能か否かを判断し、判断結果を取得する判断部と、判断結果に応じた情報を出力する出力部とを具備することが記載されている。特許文献1の記載によれば、当該物件情報処理装置により、不動産物件をキャッシュ化する場合に必要な情報提供を行えるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、目的物を譲渡したい場合であっても、当該目的物を使用し続けたい場合がある。例えば、住居等の不動産は、譲渡によって現金を得たい場合であっても、住居を引き渡せば新たな住居を探す必要がある。高齢者であれば住み慣れた住居を変えなければならず、不動産の売却をためらう原因となっていた。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、目的物の譲渡益を得つつ、当該目的物の使用が継続できるような取引を管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、所定の目的物を分割により売買する取引を管理する売買管理装置であって、売主によって入力され、希望売出し価格と分割支払いの払込期間との算定根拠になる入力情報に基づく売却情報を買主候補に提示するための処理を実行する提示処理部と、前記所定の目的物の便益の享受者にとって前記所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報を取得すると、前記所定の目的物に係る所定の権利を買主に移転するための処理を実行する移転処理部と、を備える売買管理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、目的物の譲渡益を得つつ、当該目的物の使用が継続できるような取引を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】売買管理装置が適用される売買管理システムの構成を示す模式図である。
【
図2】売買管理装置のハードウェア構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】売買管理装置の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】売買管理装置の管理処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
<概要>
本実施形態では、目的物の譲渡益を得つつ、当該目的物の使用が継続できるような取引を管理する売買管理装置について説明する。
本実施形態の売買管理装置においては、売主が高齢者であっても、生きている間は所定の目的物である住居の引き渡しが行われないので、安心して取引を行うことができる。一方、買主は、払込期間の途中であっても、売主が死亡する等、便益の享受者にとって恒久的に不要となった場合には、以後の分割代金の支払いを行うことなく所定の目的物を引き取ることができる。このように、残債を支払う必要をなくすことで、買主の購入動機を向上させることができる。
本実施形態における売買管理装置が管理対象とする所定の目的物としては、長期間価値が維持できるものであり、例えば、住居等の不動産、船舶、飲食店等の事業が挙げられる。以下の説明では、住居等の不動産が所定の目的物となる例を説明する。
【0011】
<システム構成>
以下、本実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る売買管理システム100の構成を示す模式図である。
売買管理システム100は、所定の目的物を分割支払により売買する取引を管理するシステムである。
図1の例では、売買管理システム100は、売買管理装置1と、売主側端末2と、買主側端末3と、がインターネット等の所定の通信ネットワークを介して相互に接続されることで構成される。また、売買管理システム100は、個人の売主と買主のマッチングを行うシステムとしても機能する。
【0012】
売買管理装置1は、売買に関する情報を受け付けたり、提示したりするサーバとして機能するコンピュータ(情報処理装置)である。売買管理装置1は、所定の目的物を売買する取引を管理する。売主側端末2は売主が所定の目的物に関する情報を入力したり、確認したりするためのコンピュータである。買主側端末3は、買主が所定の目的物に関する情報を確認したり、入力したりするためのコンピュータである。売買管理装置1は、売主側端末2と買主側端末3との各動作と協働して各種処理を実行する。
【0013】
本実施形態の売買管理装置1は、所定の目的物の便益の享受者(売主)にとって当該所定の目的物が恒久的に不要になったことをトリガ情報とし、所定の目的物に係る権利を買主に移転する処理を行う。
所定の目的物に係る権利は、特に限定される訳ではないが、例えば、所有権、占有権、使用権、利用権等である。また、「便益の享受者(売主)にとって当該所定の目的物が恒久的に不要になったこと」とは、特に限定される訳ではないが、例えば、便益の享受者(典型的には売主)の死亡を意味する。以下の説明では、売買管理装置1が、所定の目的物を住居等の不動産とし、所定の目的物に係る権利を住居に住む占有権とし、便益の享受者の死亡をトリガとして占有権が買主に移転する取引を管理する処理を実行する。
【0014】
売買管理装置1による管理下では、買主の分割支払が開始した時点だけではなく、買主の分割支払いが完了した時点でも、売主が死亡していない場合は占有権の移転が行われないことになる。一方、分割支払期間中に売主が死亡した場合、残債が残っていたとしても、残債がなくなったものとして占有権の移転が行われることになる。なお、少なくとも占有権が売主に属するように管理し、売主と買主の合意が取れた時点で所有権は移転するように管理してもよい。
【0015】
<ハードウェア構成>
次に、売買管理装置1を構成する各コンピュータのハードウェア構成の一例について説明する。
【0016】
図2は、売買管理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。売買管理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、出力部16と、入力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20と、を備えるコンピュータである。
【0017】
CPU11は、ROM12に記録されているプログラム、又は、記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。CPU11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。
【0018】
入出力インターフェース15には、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19及びドライブ20が接続されている。出力部16は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、各種情報を画像や音声として出力する。入力部17は、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成され、各種情報を入力する。
【0019】
記憶部18は、ハードディスクやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。通信部19は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置との間で通信を行う。
【0020】
ドライブ20には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア21が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア21から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。また、リムーバブルメディア21は、記憶部18に記憶されている各種データも、記憶部18と同様に記憶することができる。
【0021】
以上、売買管理装置1のハードウェアの構成例について説明した。
図1に示す売主側端末2は、
図2に示すハードウェア構成と同様の構成を有するコンピュータである。また、買主側端末3も、
図2に示すハードウェア構成と同様の構成を有するコンピュータである。
【0022】
<機能構成>
次に、
図3を参照し、上述の売買管理装置1のハードウェアの構成によって実現される機能構成について説明する。
図3は、売買管理装置の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、売買管理装置1は、当該売買管理装置1のCPU11において動作する機能部として、受付処理部31と、価値換算部32と、買取候補管理部33と、提示処理部34と、管理処理部35と、移転処理部36と、を備える。
【0023】
受付処理部31は、所定の目的物(不動産)の売買に関する各種の情報を取得する。各種の情報は、売主側端末2又は買主側端末3から通信ネットワークを介して受信してもよいし、オペレータが電話や面談結果等から売買管理装置1の入力部17を通じて入力してもよい。
【0024】
売買に関する各種の情報には、希望売出し価格と分割支払いの払込期間との算定根拠になる売主の入力情報が含まれる。売主の入力情報は、例えば、売主が設定する売出し価格や分割払いの払込期間である。また、売買に関する各種の情報には、所定の目的物が便益の享受者にとって恒久的に不要になったことを示す情報(死亡情報)も含まれる。
【0025】
価値換算部32は、入力情報に含まれる売主が設定した価格に対して払込期間に基づく割引を行って希望売出し価格や1回あたりの分割支払い金額等を算定する。この入力情報は、売主によって入力され、希望売出し価格と分割支払いの払込期間との算定根拠になるものである。目的物の価格が同じである場合には、払込期間が長ければ長い程、払込期間中に売主が死亡する可能性があるため買主にとっては有利となる。逆に、払込期間が短ければ売主に有利となる。そこで、本実施形態の価値換算部32は、売主の現在の年齢及び日本人の平均寿命、その他の情報を反映して払込期間を算出し、目的物(不動産)の価格をかかる払込期間に応じて割り引いた希望売出し価格を払込期間に応じて一定の割引率で算定する。所定の権利(占有権)の引き渡し時期は、売主の死亡に基づくものであるため、売主の年齢と日本人の平均寿命を考慮して割引額を算出するが、売主の意向により払込期間を長くし、又は短くすることができる。すなわち、本実施形態においては、上記の払込期間と割引率は、売主の意向により調整することができる。
【0026】
便益の享受者の死亡情報は、基本的に売主であるが、売主に限定される訳ではない。売主は、便益の享受者に他者を設定することができる。例えば、売主を含む夫婦の両方を便益の享受者に設定し、両方が死亡することが引き渡しのトリガ情報とすることができる。なお、売主以外の者の死亡をトリガ情報とする場合、割引額を高く設定することにより、買主の購入動機の低下を防ぐことができ、取引の公平性を担保できる。
【0027】
このように、売買管理装置1によって割引額(割引率)が設定される。なお、割引額の算出方法は、上述の方法に限定される訳ではない。例えば、物件の耐用年数を加味して割引額を算出してもよい。近隣の物件の賃貸料を加味して割引額を算出してもよい。また、売主の健康に関する健康情報を引き渡し時期に反映して割引額を算出してもよい。健康情報は、例えば、病歴や余命宣告等の診療情報を付帯した情報である。健康情報を加味することにより、日本人の平均寿命だけでは考慮しきれない条件も追加することができ、引き渡し時期の推定精度を向上させることができる。
【0028】
また、価値換算部32は、売主や買主に提示するために、割引額を算出した根拠を示す情報を生成する。割引額を算出した根拠を示す情報は、例えば、現在の年齢と平均年齢の差を加味して割引額を算出した場合は日本人の平均寿命、現在の年齢、払込期間等の文字情報である。
【0029】
買取候補管理部33は、所定の目的物(不動産)を購入したい買主候補に関する買主情報を管理する処理を実行する。買主情報は、例えば、買主が希望する価格の範囲や、払込期間等に関する情報である。買主情報は、買主側端末3から入力される情報であり、売買管理装置1の記憶部18に記憶される。
【0030】
提示処理部34は、売主によって入力され、希望売出し価格と分割支払いの払込期間との算定根拠になる入力情報に基づく売却情報を買主候補に提示するための処理を実行する。提示処理部34は、売主側端末2や買主側端末3等と通信を行い、売却情報を売主側端末2や買主側端末3の出力部16に出力する。売却情報は、売主側端末2から入力される情報であり、売買管理装置1の記憶部18に記憶される。
【0031】
売却情報には、希望売出し価格と分割支払いの払込期間に基づいて設定される月々の支払額等の支払方法が含まれる。支払方法は、例えば、払込期間が10年の場合に売主が毎月受け取る金額とその総額や、払込期間が20年の場合に売主が毎月受け取る金額とその総額等である。
【0032】
本実施形態では、払込期間によって割引額が変化するため、払込期間が10年の場合に売主が受け取る総額と、払込期間が20年の場合に売主が受け取る総額と、が異なる場合がある。この例では、割引額が小さい払込期間10年の場合が、割引額が大きい払込期間20年の場合よりも売主が受け取る総額が大きくなる。なお、各回の支払額は、均等であってもよいし、均等でなくてもよい。例えば、ボーナス月では他の月に比べて支払額が大きくなるような支払方法であってもよい。また、最初に比べ後半の支払額が大きくなるように設定する支払方法を設定することもできる。
【0033】
提示処理部34は、また、買主情報に基づいて売主に提示する参考情報を生成する。参考情報は、例えば、売主の入力情報に基づいて設定された希望売出し価格と分割支払いの払込期間に対し、買取希望を設定している買取候補の人数等を表示する。売主は設定した希望売出し価格と分割支払いの払込期間に対する買取候補の人数に応じて価格設定や払込期間を見直すことができる。また、参考情報は、不動産の土地、場所等に基づく標準額を提示してもよい。また、参考情報は、割引額を適用しない売出価格提示してもよい。これによって、普通に売却した場合と割引額を適用した場合との違いを容易に把握することができる。
【0034】
管理処理部35は、取引成立後の分割支払いの回数、残債等の売主と買主の取引管理を行う処理を実行する。管理処理部35は、決済処理を行ってもよい。更に、管理処理部35は、支払い履歴をブロックチェーンの技術を利用して管理することもできる。これにより、改ざんの可能性を防いで取引の安全性をより高めることができる。
【0035】
移転処理部36は、所定の目的物の便益の享受者にとって所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報(トリガ情報)を取得すると、この所定の目的物に係る所定の権利を買主に移転するための処理を実行する。上述の通り、恒久的に不要になったことを示す情報は、便益の享受者の死亡を示す情報である。例えば、定期的に住民票を提出してもらうことや、行政機関等からのかかるデータの取得が想定される。この移転処理は、払込期間中であるか否かに関係なく実行される。また、便益の享受者は複数人であってもよく、この場合には、所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報は、便益の享受者に設定される複数人全ての死亡を示す情報である。
【0036】
更に、恒久的に不要になったことを示す情報は、死亡情報に限定される訳ではない。恒久的に不要になったことを示す情報は、住居から老人ホームに移動するため、住居が不要になったような場合や長期入院が確定して住居に戻れなくなった等の特別な事情が発生したことを示す情報であってもよい。
【0037】
<処理内容>
図4を参照し、管理処理の流れについて説明する。
図4は、売買管理装置1の管理処理の動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートを参照して説明する処理は、一例であり、処理の順序、処理の省略、追加及び処理の変更等を行ってもよい。
【0038】
ステップS1において、受付処理部31は、売主の入力情報が入力されたか否かを判定する。売主の入力情報が入力されると、受付処理部31は、処理をステップS2に進める(ステップS1;Yes)。受付処理部31は、売主の入力情報が入力されるまで受信情報を監視する(ステップS1;No)。
【0039】
ステップS2において、価値換算部32は、受付処理部31が取得した入力情報に含まれる売主が設定した価格と払込期間に基づいて割引額を設定し、当該割引額に基づいて希望売出し価格を算出する換算処理を実行する。ステップS2の処理の後、処理はステップS3に進む。
【0040】
ステップS3において、提示処理部34は、買主や売主に提示するために、価値換算部32が換算処理した希望売出し価格及び払込期間を含む売却情報を生成し、当該売却情報を記憶部18に記憶する売却情報生成処理を実行する。この売却情報生成処理では、売主に売却情報を提示し、承認を得た場合に記憶部18に記憶するステップを含んでもよい。この際、売却情報とともに上述の条件に合致する買主候補の人数や標準価格等の参考情報を提示してもよい。更に、売主による売却条件の修正を受け付け、希望売出し価格や払込期間を再提示する処理を含んでもよい。ステップS3の処理の後、処理はステップS4に進む。
【0041】
ステップS4において、受付処理部31は、買主候補のアクセスがあったか否かを判定する。買主候補のアクセスがあった場合は、受付処理部31は、処理をステップS5に進める(ステップS4;Yes)。受付処理部31は、買主候補のアクセスがあるまで受信情報を監視する(ステップS4;No)。
【0042】
ステップS5において、提示処理部34は、アクセス元の買主候補の買主側端末3に売却情報を提示する処理を実行する。ステップS5の処理の後、処理はステップS6に進む。
【0043】
ステップS6において、管理処理部35は、売主と買主の取引が成立するか否かを判定する。この判定は、例えば、買主側端末3や売主側端末2の操作等に基づいて行われる。売主と買主の取引が成立した場合は、管理処理部35は、処理をステップS7に進める(ステップS6;Yes)。管理処理部35は、売主と買主の取引が成立しなかった場合は、処理をステップS1に戻す(ステップS6;No)。
【0044】
ステップS7において、管理処理部35は、買主による毎月の支払等の管理を行う上述の管理処理を実行する。管理処理は、払込期間が経過して支払いが完了した場合であっても所定の権利(不動産の占有権)の引き渡しが完了するまで継続することになる。ステップS7の処理の後、処理はステップS8に進む。
【0045】
ステップS8において、移転処理部36は、死亡情報等の移転処理のトリガとなるトリガ情報を受信したか否かを判定する。トリガ情報を受信した場合は、移転処理部36は、処理をステップS9に進める(ステップS8;Yes)。移転処理部36は、トリガ情報を受信しない場合は、処理をステップS7に戻して管理処理を継続し、トリガ情報の受信を待機する(ステップS8;No)。
【0046】
ステップS9において、移転処理部36は、トリガ情報に基づいて所定の権利である占有権の移転を売主から買主に移行するための処理を実行する。以上、一連の処理により、所定の目的物である不動産(住居)が売主から買主に移転する。
【0047】
<本実施形態の有利な効果>
上述の実施形態によれば、売主が高齢者であっても、生きている間は所定の目的物である住居の引き渡しが行われないので、安心して取引を行うことができる。また、買主は、払込期間の途中であっても、売主が死亡する等、便益の享受者にとって恒久的に不要となった場合は所定の目的物を引き取ることができる。目的物の引き渡し以後は、分割代金の残債を支払う必要をなくすことで、買主の購入動機を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、売主の死亡前の時点で既に当該資産が売却されているため、当該資産は相続の対象財産に含まれない。これにより、相続人の関与なしに物件が処理でき、取引の迅速化や、相続税の圧縮につながる。
さらに、本実施形態によれば、買主は不動産購入時に一括で支払う資金が不要となり、ローンを利用する必要がなくなる。
【0048】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0049】
(変形例)
上記実施形態では、買主による繰り上げ返済について記載されていないが、繰り上げ返済を利用できるようにしてもよい。例えば、繰り上げ返済することにより、支払額を減らすような現在価値の再計算を行う構成としてもよい。
【0050】
また、買主が払込期間の間に、引き渡し時期に所定の目的物の引き渡しを受ける権利を他の人に移転する処理を加えてもよい。
【0051】
(その他)
また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。換言すると、上述の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理システムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に上述の例に限定されない。また、機能ブロックの存在場所も、特に限定されず、任意でよい。例えば、サーバの機能ブロックを他の装置等に移譲させてもよい。逆に他の装置の機能ブロックをサーバ等に移譲させてもよい。また、一つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0052】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
【0053】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザ等にプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザ等に提供される記録媒体等で構成される。プログラムはネットワークを介して配信可能であることから、記録媒体は、ネットワークに接続された、或いは接続可能なコンピュータに搭載、或いはアクセス可能なものであってもよい。
【0054】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0055】
換言すると、本発明が適用される売買管理装置は、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
すなわち、(1)本発明の売買管理装置は、所定の目的物を分割により売買する取引を管理する売買管理装置であって、売主によって入力され、希望売出し価格と分割支払いの払込期間との算定根拠になる入力情報に基づく売却情報を買主候補に提示するための処理を実行する提示処理部34と、前記所定の目的物の便益の享受者にとって前記所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報を取得すると、前記所定の目的物に係る所定の権利を買主に移転するための処理を実行する移転処理部36と、を備える。
これにより、目的物の譲渡益を得つつ、当該目的物の使用が継続できるような取引を管理することができる。具体的には、本発明の売買管理装置は、売主が亡くなって住居が不要になった時に、住居の占有権の移転が行われるという売買取引を管理する。
【0056】
また、(2)前記入力情報に含まれる売主が設定した価格に対して払込期間に基づく割引を行って前記希望売出し価格を算定する価値換算部32を更に有する。
これにより、希望売出し価格に現在価値を反映することができる。通常の利息割賦販売では利息分総額が高くなるが、本実施形態では割引されることになるので買主の購入動機を効果的に向上させることができる。
【0057】
また、(3)前記価値換算部32は、払込期間に加え、売主の現在の年齢及び日本人の平均寿命を反映して割引額を算出し、前記希望売出し価格を算定する。
これにより、売主と買主の間の公平さを売買管理装置1側で担保できるので、売主と買主の双方に本システムに参入する動機を効果的に与えることができる。
【0058】
また、(4)前記所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報は、前記便益の享受者の死亡を示す情報である。
これにより、放棄等とは異なる死亡という意思表示を要しない出来事がトリガ情報となるので、意思の確認を行うことなく、所定の権利(占有権)の移転をスムーズに行うことができる。
【0059】
また、(5)前記便益の享受者は、複数人であってもよく、前記所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報は、前記便益の享受者に設定される複数人全ての死亡を示す情報であってもよい。
これにより、高齢者の夫婦の一人が売主であるような場合であっても、両方の死亡がトリガ情報となっているので、売主が死亡したような場合であっても、残りの配偶者が同じ住居に住み続けることができる。
【0060】
また、(6)本発明の売買管理方法は、所定の目的物を分割により売買する取引を管理する売買管理方法であって、売主によって入力され、希望売出し価格と分割支払いの払込期間との算定根拠になる入力情報に基づく売却情報を買主候補に提示するための処理を実行する提示処理ステップと、前記所定の目的物の便益の享受者にとって前記所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報を取得すると、前記所定の目的物に係る所定の権利を買主に移転するための処理を実行する移転処理ステップと、を備える。
これにより、目的物の譲渡益を得つつ、当該目的物の使用が継続できるような取引を管理することができる。
【0061】
また、(7)本発明が適用されるプログラムは、所定の目的物を分割により売買する取引を管理するコンピュータのプログラムであって、売主によって入力され、希望売出し価格と分割支払いの払込期間との算定根拠になる入力情報に基づく売却情報を買主候補に提示するための処理を実行する提示処理ステップと、前記所定の目的物の便益の享受者にとって前記所定の目的物が恒久的に不要になったことを示す情報を取得すると、前記所定の目的物に係る所定の権利を買主に移転するための処理を実行する移転処理ステップと、を備える。
これにより、目的物の譲渡益を得つつ、当該目的物の使用が継続できるような取引を管理することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:売買管理装置
31:受付処理部
32:価値換算部
33:買取候補管理部
34:掲示処理部
35:管理処理部
36:移転処理部