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特開2024-80185撮像装置、撮像システム、及び魚眼レンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080185
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像システム、及び魚眼レンズ
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/55 20230101AFI20240606BHJP
   H04N 23/698 20230101ALI20240606BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240606BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20240606BHJP
   G03B 37/00 20210101ALI20240606BHJP
【FI】
H04N23/55
H04N23/698
G03B15/00 W
G02B7/02 Z
G03B37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193152
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】515276277
【氏名又は名称】株式会社TSP
(71)【出願人】
【識別番号】522469279
【氏名又は名称】株式会社ズーム
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 宣夫
【テーマコード(参考)】
2H044
2H059
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AJ06
2H059BA01
2H059BA02
5C122DA12
5C122DA14
5C122EA37
5C122FA02
5C122FB02
5C122FB06
5C122FC02
5C122FH14
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】レンズの周辺部においてもより鮮明な画像を得ることができる撮像装置を提供する。
【解決手段】魚眼レンズ102を用いて撮像を行うカメラ12であって、画角が180度よりも大きい魚眼レンズ102と、魚眼レンズ102から投影される像を撮像する撮像素子104とを備え、レンズの画角における最大角度に対応する入射角である最大入射角での像高を最大像高と定義し、最大像高を魚眼レンズ102と等しくして等距離射影方式を示す数式によって算出される像高を等距離射影像高と定義した場合、90度の入射角において、魚眼レンズ102の像高は、等距離射影像高よりも小さく、かつ、単位角度あたりの像高の増加量を像高増加率と定義した場合、90度以上の範囲の入射角において、魚眼レンズ102の像高増加率は、等距離射影像高から算出される像高増加率よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚眼レンズを用いて撮像を行う撮像装置であって、
画角が180度よりも大きい前記魚眼レンズと、
前記魚眼レンズから投影される像を撮像する撮像素子と
を備え、
レンズの画角における最大角度に対応する入射角である最大入射角での像高を最大像高と定義し、前記最大像高を前記魚眼レンズと等しくして等距離射影方式を示す数式によって算出される像高を等距離射影像高と定義した場合、90度の入射角において、前記魚眼レンズの像高は、前記等距離射影像高よりも小さく、
かつ、単位角度あたりの像高の増加量を像高増加率と定義した場合、90度以上の範囲の入射角において、前記魚眼レンズの前記像高増加率は、前記等距離射影像高から算出される前記像高増加率よりも大きいことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記最大像高を前記魚眼レンズと等しくして立体射影方式を示す数式によって算出される像高を立体射影像高と定義した場合、0度よりも大きく、前記最大入射角よりも小さな入射角において、前記魚眼レンズの像高は、前記立体射影像高よりも大きく、かつ、前記等距離射影像高よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
90度の入射角における像高を90度像高と定義し、前記90度像高を前記魚眼レンズと等しくして立体射影方式を示す数式によって算出される像高を第2立体射影像高と定義し、前記90度像高を前記魚眼レンズと等しくして等距離射影方式を示す数式によって算出される像高を第2等距離射影像高と定義した場合、
0度以上、90度以下の入射角において、前記魚眼レンズの像高は、前記第2立体射影像高と一致し、
90度よりも大きな入射角において、前記魚眼レンズの像高は、前記第2等距離射影像高よりも大きく、かつ、前記第2立体射影像高よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
90度を超える入射角の範囲において、前記魚眼レンズの解像力は、MTFの250本/mmで20%以上であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像装置は、車両の上部に設置して使用されるものであり、
前記撮像素子は、800万画素以上の画素数での撮像を行うことで、前記車両の周囲を撮像した画像である車両周囲画像を撮像し、
かつ、前記車両周囲画像のうち、前記魚眼レンズにおける90度を超える入射角の範囲に対応する部分について、前記車両の周囲にある他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態で、前記車両周囲画像を撮像することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
画像を撮像する撮像システムであって、
請求項1から5のいずれかに記載の前記撮像装置と、
前記撮像装置が取得する画像に対して画像処理を行う画像処理装置と
を備えることを特徴とする撮像システム。
【請求項7】
前記撮像装置は、車両の上部に設置して使用され、当該車両の周囲を撮像した画像である車両周囲画像を撮像し、
前記画像処理装置は、前記車両周囲画像のうち、前記魚眼レンズにおける90度を超える入射角の範囲に対応する部分に基づき、前記車両の周囲にある他の車両のナンバープレートを読み取ることを特徴とする請求項6に記載の撮像システム。
【請求項8】
画角が180度よりも大きい魚眼レンズであって、
レンズの画角における最大角度に対応する入射角である最大入射角での像高を最大像高と定義し、前記最大像高を前記魚眼レンズと等しくして等距離射影方式を示す数式によって算出される像高を等距離射影像高と定義した場合、90度の入射角において、前記魚眼レンズの像高は、前記等距離射影像高よりも小さく、
かつ、単位角度あたりの像高の増加量を像高増加率と定義した場合、90度以上の範囲の入射角において、前記魚眼レンズの前記像高増加率は、前記等距離射影像高から算出される前記像高増加率よりも大きいことを特徴とする魚眼レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像システム、及び魚眼レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚眼レンズを用いた撮像装置が広く用いられている。例えば、特許文献1には、魚眼レンズを用いて360度のパノラマ展開画像を撮影する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-28606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、魚眼レンズを用いた撮像装置について、様々な用途に用いることが検討されている。しかし、従来の構成の撮像装置を用いる場合、用途によっては、十分な品質の画像を得られない場合がある。より具体的に、一般的な魚眼レンズにおいては、通常、レンズの中央と比較して、レンズの周辺部における解像力(解像度)が低下する。また、その結果、例えば、レンズの周辺部における画像(映像)が潰れて、判別が難しくなることが考えられる。そのため、従来、レンズの周辺部においてもより鮮明な画像を得ることができる撮像装置等が望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる撮像装置、撮像システム、及び魚眼レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、魚眼レンズを用いた撮像装置の構成に関し、鋭意研究を行った。また、この鋭意研究において、特に、画角が180度よりも大きい俯角付きの魚眼レンズを用いる構成に着目して、鋭意研究を行った。そして、このような構成に関し、俯角部分等のレンズの周辺部においてより鮮明な画像を得ることが可能になる構成を見出した。
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、魚眼レンズを用いて撮像を行う撮像装置であって、画角が180度よりも大きい前記魚眼レンズと、前記魚眼レンズから投影される像を撮像する撮像素子とを備え、レンズの画角における最大角度に対応する入射角である最大入射角での像高を最大像高と定義し、前記最大像高を前記魚眼レンズと等しくして等距離射影方式を示す数式によって算出される像高を等距離射影像高と定義した場合、90度の入射角において、前記魚眼レンズの像高は、前記等距離射影像高よりも小さく、かつ、単位角度あたりの像高の増加量を像高増加率と定義した場合、90度以上の範囲の入射角において、前記魚眼レンズの前記像高増加率は、前記等距離射影像高から算出される前記像高増加率よりも大きいことを特徴とする。このように構成すれば、例えば、魚眼レンズの周辺部において画像が潰れることを適切に防止することができる。また、これにより、例えば、レンズの周辺部においてより鮮明な画像を得ることができる撮像装置を適切に提供することができる。
【0007】
ここで、従来の魚眼レンズを用いた撮像装置において、魚眼レンズは、一般的に、等距離射影方式又は正射影方式で設計される。そして、この場合、レンズの画角の最大角度付近の部分となるレンズの周辺部に対応する像高の割合が小さくなることで、周辺部における画像が潰れて、判別が難しくなることが考えられる。これに対し、上記の構成の撮像装置の魚眼レンズ(以下、上記魚眼レンズという)においては、90度の入射角での像高を等距離射影像高よりも小さくすることで、例えば、俯角部分に対応する像高の割合について、等距離射影方式で設計される魚眼レンズよりも大きくすることができる。また、この場合、更に、90度以上の範囲の入射角での像高増加率について、等距離射影像高から算出される増加率よりも大きくすることで、上記魚眼レンズにおいて、例えば、等距離射影方式で設計される魚眼レンズと比べて、レンズの周辺部において画像が潰れることを適切に防止することができる。また、この場合、上記魚眼レンズにおいて、例えば、正射影方式で設計される魚眼レンズと比べても、レンズの周辺部において画像が潰れることを適切に防止することができる。
【0008】
また、この構成において、最大像高を上記魚眼レンズと等しくして立体射影方式を示す数式によって算出される像高を立体射影像高と定義した場合、0度よりも大きく、最大入射角よりも小さな入射角において、上記魚眼レンズの像高について、立体射影像高よりも大きく、かつ、等距離射影像高よりも小さくすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、理論式に従って計算される立体射影像高及び等距離射影像高を基準にして、上記魚眼レンズの特性を適切に決定することができる。また、これにより、例えば、上記魚眼レンズの設計をより容易かつ適切に行うことができる。
【0009】
また、従来の魚眼レンズとしては、例えば、画角が180度以下のレンズが広く用いられている。そのため、例えば立体射影方式や等距離射影方式で魚眼レンズを設計する場合、画角が180度以下であれば、通常、容易かつ高精度にレンズの設計や製造を行うことができる。しかし、俯角部分まで含めて立体射影方式や等距離射影方式で魚眼レンズを設計することは、一般的な事項等ではない。特に、立体射影方式を用いる場合、俯角部分において、像高増加率の値が大きくなることで、レンズの設計や製造が難しくなること等も考えられる。これに対し、上記魚眼レンズを用いる場合、例えば、より柔軟な設計の指針に基づき、レンズの設計を行うことができる。また、これにより、例えば、レンズの設計や製造をより容易かつ適切に行うことができる。
【0010】
また、この場合、例えば、180度の画角に対応する0~90度の入射角の範囲では上記魚眼レンズの特性を立体射影方式と一致させた上で、俯角部分について、より高い自由度で設計すること等が考えられる。また、この場合、例えば、90度の入射角における像高に着目して、上記魚眼レンズの特性を考えることもできる。より具体的に、90度の入射角における像高を90度像高と定義し、90度像高を上記魚眼レンズと等しくして立体射影方式を示す数式によって算出される像高を第2立体射影像高と定義し、90度像高を上記魚眼レンズと等しくして等距離射影方式を示す数式によって算出される像高を第2等距離射影像高と定義した場合、例えば、0度以上、90度以下の入射角において、上記魚眼レンズの像高について、第2立体射影像高と一致させることが考えられる。また、この場合、90度よりも大きな入射角において、上記魚眼レンズの像高について、例えば、第2等距離射影像高よりも大きく、かつ、第2立体射影像高よりも小さくすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、上記魚眼レンズの設計等をより容易かつ適切に行うことができる。また、この場合、90度以下の入射角で上記魚眼レンズの像高と第2立体射影像高とを一致させることについては、例えば、レンズや撮像装置に求められる精度に応じて、実質的に一致させること等と考えることができる。
【0011】
また、90度を超える入射角の範囲において、この魚眼レンズの解像力は、例えば、MTFの250本/mmで20%以上である。このように構成すれば、例えば、撮像装置において、高精細な画像を適切に取得することができる。また、これにより、この撮像装置について、例えば、従来の撮像装置では不可能であった様々な用途に用いること等も可能になる。また、この場合、上記魚眼レンズの俯角部分における最外周において、上記の解像力が得られることが好ましい。俯角部分における最外周での解像力については、例えば、レンズの仕様における画角の最外周での解像力等と考えることができる。
【0012】
また、このような撮像装置については、例えば、乗用車等の車両の上部に設置して使用することが考えられる。また、この場合、例えば、警察車両等の上部に撮像装置を設置して、周辺の車両のナンバープレートの読み取りを行うこと等が考えられる。また、より具体的に、この場合、車両の上部に設置して使用される撮像装置において、撮像素子は、例えば、800万画素以上の画素数での撮像を行うことで、車両の周囲を撮像した画像である車両周囲画像を撮像する。このように構成すれば、例えば、高い解像度の車両周囲画像を適切に取得することができる。また、この場合、撮像素子は、例えば、車両周囲画像のうち、上記魚眼レンズにおける90度を超える入射角の範囲に対応する部分について、この車両の周囲にある他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態で、車両周囲画像を撮像する。この場合、周囲にある他の車両のナンバープレートについては、例えば、撮像装置から所定の距離の範囲内にあるナンバープレート等と考えることができる。また、このナンバープレートは、例えば、撮像装置に対する向きが所定の条件を満たしているナンバープレートであってよい。また、この場合、上記魚眼レンズと、上記のような画素数の撮像素子とを組み合わせて用いることで、高精度でのナンバープレートの読み取りが可能になっていると考えることができる。このように構成すれば、例えば、周辺の車両のナンバープレートの読み取りを行う用途に対し、撮像装置を適切に用いることができる。また、この場合、例えば、撮像装置が取得する画像に対して画像処理を行う画像処理装置において、車両周囲画像のうち、上記魚眼レンズにおける90度を超える入射角の範囲に対応する部分に基づき、車両の周囲にある他の車両のナンバープレートを読み取る。
【0013】
また、上記の撮像装置は、例えば、ナンバープレートの読み取り以外の用途においても、好適に用いることができる。この場合、例えば、管状構造物の検査において、上記の撮像装置を用いること等が考えられる。また、より具体的に、この場合、魚眼レンズの中心方向を管状構造物の軸方向と合わせることで、魚眼レンズの俯角部分により、管状構造物の内壁の画像を取得すること等が考えられる。また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する撮像システムや魚眼レンズ等を用いることも考えられる。これらの場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。また、この場合、撮像システムは、例えば、上記撮像装置及び画像処理装置を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば、レンズの周辺部においてもより鮮明な画像を得ることができる撮像装置を適切に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る撮像システム10について説明をする図である。図1(a)は、撮像システム10の構成の一例を示す。図1(b)は、撮像システム10におけるカメラ12の構成の一例を示す。
図2】本例の魚眼レンズ102の特徴について説明をする図である。図2(a)、(b)は、魚眼レンズ102における入射角と像高との関係を示す表及びグラフである。図2(c)は、魚眼レンズ102の特性の一例を示す。
図3】魚眼レンズ102の特徴について更に詳しく説明をする図である。図3(a)は、図2(b)と異なる観点で魚眼レンズ102における入射角と像高との関係を示すグラフである。図3(b)、(c)は、入射角と像高増加率との関係を示すグラフである。
図4】撮像システム10の特徴を更に詳しく説明をする図である。図4(a)は、魚眼レンズ102の性能の一例を示すグラフである。図4(b)は、画像処理装置14において行う画像処理の一例を示す。
図5】撮像システム10の用途の例を示す図である。図5(a)は、撮像システム10の用途の一例を示す。図5(b)は、撮像システム10の用途の他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る撮像システム10について説明をする図である。図1(a)は、撮像システム10の構成の一例を示す。図1(b)は、撮像システム10におけるカメラ12の構成の一例を示す。本例において、撮像システム10は、魚眼レンズを用いて撮像を行うシステムであり、カメラ12及び画像処理装置14を備える。また、以下において説明をする点を除き、撮像システム10及び撮像システム10の各構成は、公知の撮像システムやその各構成と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0017】
カメラ12は、撮像システム10において撮像を実行する撮像装置の一例であり、カメラ12の周囲を示す画像を取得して、画像処理装置14へ供給する。また、本例において、カメラ12は、画像として動画形式での映像を生成して、画像処理装置14へ供給する。画像処理装置14は、カメラ12が取得する画像に対して画像処理を行う装置である。画像処理装置14としては、例えば、画像処理用のプログラムを実行するコンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ)等を用いることが考えられる。画像処理装置14としては、例えば、画像処理用の専用の装置を用いてもよい。
【0018】
また、本例において、カメラ12は、魚眼レンズ102、撮像素子104、及び制御部106を有する。魚眼レンズ102は、カメラ12における撮像用のレンズである。魚眼レンズ102については、例えば、カメラ12における光学系等と考えることもできる。また、図1(b)においては、図示の便宜上、魚眼レンズ102について、形状及び構成を単純化して図示している。実際の魚眼レンズ102としては、例えば、求められるレンズの性能等に応じた形状及び構成のレンズを用いることが考えられる。魚眼レンズ102としては、例えば、複数のレンズを組み合わせた組み合わせレンズを好適に用いることができる。
【0019】
また、本例において、魚眼レンズ102は、画角が180度よりも大きなレンズであり、例えば図1(b)に示すように、入射角が90度よりも大きな部分である俯角部分に対応する部分も含めた像を撮像素子104上に結像させる。この場合、魚眼レンズ102について、例えば、俯角付きの魚眼レンズ等と考えることができる。また、入射角については、例えば、レンズの中心方向に対してなす角度等と考えることができる。レンズの中心方向については、例えば、レンズの設計上の中心方向等と考えることができる。また、俯角部分については、例えば、レンズ基準面に対してレンズの中心方向の側と反対の側になる部分等と考えることもできる。レンズ基準面については、例えば、レンズの設計上の基準面等と考えることができる。また、レンズ基準面について、例えば、レンズの中心方向と直交し、かつ、90度の入射角の方向が面上にのる平面等と考えることもできる。また、より具体的に、本例において、魚眼レンズ102の画角は、約220度である。この場合、魚眼レンズ102について、例えば、約20度の俯角を有していると考えることができる。また、魚眼レンズ102は、魚眼レンズ102を通る光により、この画角に対応する円形の像(イメージサークル)を撮像素子104上に結像させる。
【0020】
また、本例の魚眼レンズ102において、中心方向と直交する方向における視野の範囲は、全周(360度)である。この場合、カメラ12について、例えば、カメラ12の周囲の全周を同時に撮像(撮影)可能な360度カメラ等と考えることもできる。視野の範囲が全周であることについては、例えば、魚眼レンズ102の側面方向の全周が視野になること等と考えることもできる。また、魚眼レンズ102における視野の範囲が全周であることについては、例えば、画角の範囲内での全周を示す像を撮像素子104に投影すること等と考えることができる。
【0021】
撮像素子104は、魚眼レンズ102から投影される像を示す信号を生成するセンサである。本例において、撮像素子104は、800万画素以上の画素数での撮像を行うイメージセンサであり、魚眼レンズ102の光学特性に応じて決まる所定の位置に設置されることで、魚眼レンズ102によって投影される像を示す信号を生成し、制御部106へ供給する。撮像素子104としては、例えば公知のCMOSイメージセンサ等を好適に用いることができる。制御部106は、撮像素子104の動作を制御するコントローラである。本例において、制御部106は、画像処理装置14から受け取る指示に基づいて撮像素子104に撮像の動作を実行させる。また、制御部106は、撮像素子104から受け取る信号に基づき、撮像素子104で撮像した画像を示すデータを生成し、画像処理装置14へ供給する。
【0022】
本例によれば、例えば、撮像システム10において、カメラ12の周囲を示す画像を適切に取得することができる。また、本例においては、以下において詳しく説明をする特徴を有する魚眼レンズ102を用いることで、例えば、魚眼レンズ102における周辺部においても、鮮明な画像を適切に得ることができる。また、これにより、例えば、レンズの周辺部においても鮮明な画像を得ることができるカメラ12及び撮像システム10を提供することができる。そこで、以下、本例における魚眼レンズ102の特徴等について、更に詳しく説明をする。
【0023】
図2は、本例の魚眼レンズ102の特徴について説明をする図である。図2(a)、(b)は、魚眼レンズ102における入射角と像高(像高値)との関係を示す表及びグラフである。また、図2(b)においては、魚眼レンズ102における入射角と像高との関係と比較するために、所定の条件の下で立体射影方式及び等距離射影方式を示す数式によって算出される像高について、入射角との関係を更に示している。より具体的に、レンズの画角における最大角度に対応する入射角を最大入射角と定義し、最大入射角での像高を最大像高と定義した場合、図2(b)における立体射影方式及び等距離射影方式の像高は、本例のカメラ12における魚眼レンズ102と最大像高が一致するように立体射影方式及び等距離射影方式を示す数式によって算出される像高である。また、本例において、図2(b)における立体射影方式の像高は、立体射影像高の一例である。立体射影像高については、例えば、本例のカメラ12における魚眼レンズ102と最大像高を等しくして立体射影方式を示す数式によって算出される像高等と考えることができる。また、図2(b)における等距離射影方式の像高は、等距離射影像高の一例である。等距離射影像高については、例えば、本例のカメラ12における魚眼レンズ102と最大像高を等しくして等距離射影方式を示す数式によって算出される像高等と考えることができる。
【0024】
また、上記の説明において、最大入射角については、例えば、魚眼レンズ102における半画角での最大角度等と考えることもできる。最大像高を一致させることについては、例えば、対応するイメージサークルの大きさを同じにすること等と考えることもできる。また、像高をyとし、入射角をθとし、焦点距離をfとした場合、立体射影方式を示す数式としては、y=2・f・tan(θ/2)で示される数式を用いることが考えられる。等距離射影方式を示す数式としては、y=f・θで示される数式を用いることが考えられる。また、この場合、fの値を調整することで、最大像高を一致させることが考えられる。
【0025】
また、図2(b)に示すように、最大像高を一致させて比較を行った場合、本例の魚眼レンズ102における入射角と像高との関係に関し、例えば、等距離射影方式と立体射影方式との間の特性になっていると考えることができる。より具体的に、この場合、0度よりも大きく、最大入射角よりも小さな入射角において、魚眼レンズ102の像高について、例えば、立体射影方式での像高よりも大きく、かつ、等距離射影方式での像高よりも小さくなっていると考えることができる。また、この場合、例えば、90度の入射角において、魚眼レンズ102の像高は、等距離射影方式での像高よりも小さくなっている。更に、図2(b)のグラフのみではわかりにくいが、単位角度あたりの像高の増加量を像高増加率と定義した場合、90度以上の範囲の入射角において、魚眼レンズ102における像高増加率は、等距離射影方式での像高から算出される像高増加率よりも大きくなっている。
【0026】
この点に関し、従来の魚眼レンズを用いた撮像装置において、魚眼レンズは、一般的に、等距離射影方式又は正射影方式で設計される。そして、この場合、レンズの周辺部に対応する像高の割合が小さくなることで、周辺部における画像が潰れて、判別が難しくなることが考えられる。この場合、レンズの周辺部については、例えば、レンズの画角の最大角度付近の部分等と考えることができる。また、画角が180度よりも大きい魚眼レンズを用いる場合、レンズの周辺部について、例えば、俯角部分の少なくとも一部を含む部分等と考えることができる。
【0027】
これに対し、本例においては、90度の入射角での像高を等距離射影方式での像高よりも小さくした魚眼レンズ102を用いることで、例えば、俯角部分に対応する像高の割合について、等距離射影方式で設計される魚眼レンズよりも大きくすることができる。また、この場合、更に、90度以上の範囲の入射角での像高増加率について、等距離射影方式での像高から算出される増加率よりも大きくすることで、魚眼レンズ102において、例えば、等距離射影方式で設計される魚眼レンズと比べて、レンズの周辺部において画像が潰れることを適切に防止することができる。また、この場合、魚眼レンズ102において、例えば、正射影方式で設計される魚眼レンズと比べても、レンズの周辺部において画像が潰れることを適切に防止することができる。そのため、本例によれば、例えば、魚眼レンズ102の周辺部において画像が潰れることを適切に防止することができる。また、これにより、例えば、レンズの周辺部においてもより鮮明な画像を得ることが可能な解像力(解像度、分解能)の高い魚眼レンズ102や、そのような魚眼レンズ102を用いたカメラ12及び撮像システム10等を適切に提供することができる。より具体的に、本例の魚眼レンズ102を用いる場合、従来の一般的な魚眼レンズと比べて、例えば図2(c)に示すように、高い分解能を実現することができる。図2(c)は、魚眼レンズ102の特性の一例を示す図である。
【0028】
尚、図2(b)に示すグラフから理解できるように、90度の入射角での像高が等距離射影方式での像高よりも小さいことや、俯角部分での像高増加率が等距離射影方式での像高増加率よりも大きくなることについては、例えば、立体射影方式の場合でも同様であるといえる。この点に関し、従来の魚眼レンズとしては、画角が180度以下のレンズが広く用いられている。そのため、立体射影方式や等距離射影方式で魚眼レンズを設計する場合、画角が180度以下であれば、通常、容易かつ高精度にレンズの設計や製造を行うことができる。しかし、俯角部分まで含めて立体射影方式や等距離射影方式で魚眼レンズを設計することは、一般的な事項等ではない。また、特に、立体射影方式を用いる場合、俯角部分において、像高増加率の値が特に大きくなることで、レンズの設計や製造が難しくなること等も考えられる。
【0029】
これに対し、本例の魚眼レンズ102を用いる場合、俯角部分まで含めて立体射影方式で設計をしたレンズを用いなくても、魚眼レンズ102の周辺部において画像が潰れることを適切に防止することができる。そのため、本例によれば、魚眼レンズ102について、例えば、より柔軟な設計の指針に基づき、レンズの設計を行うことができる。また、この場合、魚眼レンズ102について、例えば、理論式に従って計算される立体射影方式での像高や等距離射影方式での像高を基準にして、レンズの特性を適切に決定することができる。そのため、本例によれば、例えば、魚眼レンズ102の設計や製造等をより容易かつ適切に行うことができる。また、この場合、魚眼レンズ102について、例えば、立体射影方式での像高を基準にすることで、レンズの設計において、俯角部分等に立体射影方式の計算式を適用していると考えることもできる。また、魚眼レンズ102に求められる精度や性能によっては、魚眼レンズ102について、例えば、画角の全体において立体射影方式での像高と一致させること等も考えられる。
【0030】
続いて、本例の魚眼レンズ102の特徴について、更に詳しく説明をする。図3は、魚眼レンズ102の特徴について更に詳しく説明をする図である。図3(a)は、図2(b)と異なる観点で魚眼レンズ102における入射角と像高との関係を示すグラフであり、魚眼レンズ102における入射角と像高との関係について、図2(b)とは異なる条件の下で立体射影方式及び等距離射影方式を示す数式によって算出される像高と共に示す。より具体的に、90度の入射角における像高を90度像高と定義した場合、図3(a)における立体射影方式及び等距離射影方式の像高は、本例のカメラ12における魚眼レンズ102と90度像高が一致するように立体射影方式及び等距離射影方式を示す数式によって算出される像高である。また、本例において、図3(a)における立体射影方式の像高は、第2立体射影像高の一例である。第2立体射影像高については、例えば、本例のカメラ12における魚眼レンズ102と90度像高を等しくして立体射影方式を示す数式によって算出される像高等と考えることができる。また、図3(a)における等距離射影方式の像高は、第2等距離射影像高の一例である。第2等距離射影像高については、例えば、本例のカメラ12における魚眼レンズ102と90度像高を等しくして等距離射影方式を示す数式によって算出される像高等と考えることができる。
【0031】
図3(a)に示すように、90度像高を等しくして比較を行った場合、0度以上、90度以下の入射角において、魚眼レンズ102の像高は、立体射影方式での像高と一致している。この場合、魚眼レンズ102と立体射影方式との間で像高が一致することについては、例えば、魚眼レンズ102やカメラ12等に求められる精度に応じて、実質的に一致すること等と考えることができる。また、90度よりも大きな入射角において、魚眼レンズ102の像高は、等距離射影方式での像高よりも大きく、かつ、立体射影方式での像高よりも小さくなっている。
【0032】
この点に関し、上記においても説明をしたように、立体射影方式を用いる場合、例えば画角が180度以下の魚眼レンズであれば、通常、容易かつ高精度にレンズの設計や製造を行うことができる。そのため、魚眼レンズ102において、180度の画角に対応する0~90度の入射角の範囲については、例えば、レンズの特性を立体射影方式と一致させることで、従来の魚眼レンズと同一又は同様に、レンズの設計や製造等を容易かつ適切に行うことができる。また、この場合において、入射角が90度を超える部分については、例えば、必ずしも立体射影方式と一致させないことで、より高い自由度でレンズの設計を行うことが可能になる。また、これにより、例えば、画角が180度を超える魚眼レンズ102について、より容易かつ適切に製造すること等が可能になる。
【0033】
また、図2(b)等に関連して上記においても説明をしたように、最大入射角での像高を一致させて考えた場合、90度以上の範囲の入射角において、魚眼レンズ102における像高増加率は、等距離射影方式での像高から算出される像高増加率よりも大きくなっている。そして、このような像高増加率に関する特徴については、90度像高を一致させて考えた場合にも、同様である。より具体的に、図2(b)及び図3(a)に示した入射角と像高のとの関係に合わせて、入射角と像高増加率との関係を示すと、図3(b)、(c)のようになる。図3(b)、(c)は、入射角と像高増加率との関係を示すグラフである。
【0034】
データ準備等の都合上、図3(b)、(c)において、像高増加率の算出は、図2(b)及び図3(a)の作成に用いたデータにおける像高から算出する差分に基づき、簡略化して行った。また、この場合において、本例の魚眼レンズ102における像高増加率の算出は、図2(a)に示した限られた数のデータのみから行った。そのため、図3(b)、(c)では、本例の像高増加率を示す点の位置について、ばらつきが大きくなっている。魚眼レンズ102において、実際の像高増加率は、グラフ中の点を単に結んだ線よりも、滑らかに変化している。また、図3(a)に関連して説明した事項等から理解できるように、図3(c)での90度以下の範囲において、魚眼レンズ102の像高増加率は、立体射影方式での像高増加率と、同じになる。
【0035】
また、上記においても説明をしたとおり、最大入射角での像高を一致させた場合、図3(b)に示すように、90度以上の入射角において、魚眼レンズ102の像高増加率は、等距離射影方式での像高から算出される像高増加率よりも大きくなっている。更に、図3(c)に示すように、90度像高を一致させた場合も、90度以上の入射角において、魚眼レンズ102の像高増加率は、等距離射影方式での像高から算出される像高増加率よりも大きくなっている。そして、図3(b)、(c)に示した事項等から、本例において、レンズの周辺部分における画像の潰れ(像の潰れ)が生じにくくなることが理解できる。
【0036】
また、図3(b)、(c)に示すように、魚眼レンズ102については、例えば、入射角が小さな範囲であるレンズの中心付近において、等距離射影方式の場合よりも像高増加率が小さくなっていると考えることができる。そして、この場合、レンズの中心付近については、魚眼レンズ102において、等距離射影方式の場合よりも像が潰れると考えることができる。そのため、魚眼レンズ102については、例えば、入射角が小さい範囲における像高を抑えることで、俯角部分に対応する像高の割合を大きくしていると考えることもできる。また、より具体的に、例えば、図3(b)に示す場合、少なくとも、入射角が60度程度以下の範囲において、魚眼レンズ102の像高増加率が、等距離射影方式の場合よりも小さくなっている。そして、少なくとも、入射角が70度程度以上の範囲において、魚眼レンズ102の像高増加率が、等距離射影方式の場合よりも大きくなっている。また、図3(c)に示す場合、少なくとも、入射角が50度程度以下の範囲において、魚眼レンズ102の像高増加率が、等距離射影方式の場合よりも小さくなっている。そして、少なくとも、入射角が60度程度以上の範囲において、魚眼レンズ102の像高増加率が、等距離射影方式の場合よりも大きくなっている。これらのように構成すれば、例えば、魚眼レンズ102において、レンズの周辺部分における画像の潰れを適切に防止することができる。
【0037】
続いて、本例の撮像システム10の特徴について、更に詳しく説明をする。図4は、撮像システム10の特徴を更に詳しく説明をする図である。図4(a)は、撮像システム10において用いる魚眼レンズ102の性能の一例を示すグラフであり、実際に作成をした試作品の魚眼レンズ102を用いて測定を行ったMTF(変調伝達関数)曲線を示す。より具体的に、図4(a)では、互いに異なる2種類の空間周波数に対する放射方向(図中Sで表示)及び同心円方向(図中Tで表示)での幾何光学的MTFの測定値を示している。MTFの測定は、公知の方法で行った。図4(a)に示すように、本例の魚眼レンズ102について、俯角部分を含む魚眼レンズ102の周辺部分において、像の潰れを適切に抑えて、高い解像力を実現していることがわかる。
【0038】
ここで、カメラ12の性能に関し、高解像度といわれる画像を得るためには、一般的に、例えば、撮像素子の画素数を800万画素以上として、光学系の仕様について、MTFの250本/mmで20%以上とすることが望まれる。そのため、魚眼レンズ102の解像力についても、90度を超える入射角の範囲において、例えば、MTF(幾何光学的MTF)の250本/mmで20%以上とすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、カメラ12において、高精細な画像を適切に取得することができる。また、これにより、例えば、カメラ12について、従来のカメラでは不可能であった様々な用途に用いること等が可能になる。より具体的に、図4(a)においては、S2及びT2の曲線が、MTFの250本/mmに対応する曲線である。そして、縦軸(左軸)に示す数値での0.2以上が、MTFの20%以上に対応する。また、本例の魚眼レンズ102は、俯角部分の最外周において、MTFの250本/mmで20%以上の解像力を有する。俯角部分の最外周での解像力については、例えば、レンズの仕様における画角の最外周での解像力等と考えることができる。また、俯角部分の最外周について、例えば、像高が10割になる位置等と考えることもできる。また、この場合、画角における俯角部分の全ての位置において、MTFの250本/mmで20%以上の解像力を有することが好ましい。このように構成すれば、例えば、カメラ12で取得する画像における俯角部分に対応する部分について、ボケのない高精細な画像を適切に取得することができる。
【0039】
尚、魚眼レンズ102の解像力をより適切に高めるためには、魚眼レンズ102の具体的な構成に関し、例えば、レンズの性能を高めるための様々な技術を更に適用することが好ましい。この場合、例えば、魚眼レンズ102の材料として低分散の光学材料を使用することで、解像力の低下を招く倍率色収差を抑えること等が考えられる。また、魚眼レンズ102の解像力をより適切に高めるために、例えば、レンズにスパッタリングコーティングを施し、ゴーストを防止すること等も考えられる。また、魚眼レンズ102に関する上記の性能について、例えば球面レンズだけで実現しようとすると、各種収差除去の目的等も含め、構成するレンズの枚数が増えることが考えられる。また、その結果、例えば、芯合わせや組込工程等の難易度が増し、生産性が低下すること等が考えられる。また、レンズの枚数が増えることで、例えば、魚眼レンズ102を構成するレンズユニットの大型化や高重量化等の問題が生じること等も考えられる。そのため、魚眼レンズ102については、例えば、非球面レンズを含む複数のレンズで構成することが好ましい。
【0040】
また、本例の撮像システム10では、カメラ12で取得した画像(映像)に対し、画像処理装置14において、画像処理を行う。この場合、例えば図4(b)に示すように、画像の展開を行うことが考えられる。図4(b)は、画像処理装置14において行う画像処理の一例を示す。より具体的に、本例のカメラ12のように、魚眼レンズ102を用いて画像を取得する場合、撮像素子104で撮像した画像をそのまま表示すると、ユーザに不便が生じる場合がある。そのため、本例において、画像処理装置14は、例えばユーザの指示に応じて、ユーザが求める形式への画像の展開を行う。この場合、例えば、図4(b)の左側部分に示すように、カメラ12で取得する画像の中からユーザが指定する領域(指定エリア)について、人間の目が視認する状態に合わせて平面展開を行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、カメラ12で取得する画像について、ユーザがより確認しやすい形式に適切に展開することができる。この場合、画像処理装置14は、例えば、画像を表示する画面の範囲に合わせて、指定エリアに対応する部分を適宜拡大する。また、画像処理装置14は、展開によって生成する画像のいずれかの位置(例えば、いずれかの隅)に対し、エリア確認用の小画像(小画面)を表示してもよい。この場合、例えば、展開前の画像の全体について、エリア確認用の小画像として表示することが考えられる。また、エリア確認用の小画像の表示については、例えば、ユーザの指示に応じてオン、オフを切り替え可能にすることが好ましい。
【0041】
また、画像処理装置14において、例えば、図4(b)の右側部分に示すように、カメラ12で取得する画像に対し、パノラマ展開を行うこと等も考えられる。この場合、画像処理装置14は、例えば、図4(b)の中央部分に示すような、カメラ12で取得した360度の画像の中から、不要部分になるレンズの中央を含む所定の範囲を削除する。そして、残りの部分について、例えば図4(b)の右側部分に示すように、180度ずつのパノラマ画像に展開する。このように構成した場合も、例えば、カメラ12で取得する画像について、ユーザがより確認しやすい形式に適切に展開することができる。また、画像処理装置14においては、例えば、ユーザの指示に応じて、上記のような平面展開と、パノラマ展開とを切り替えることが考えられる。
【0042】
続いて、本例の撮像システム10の用い方等について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例によれば、例えば、レンズの周辺部分での像の潰れが少なく、かつ高い解像力を有する魚眼レンズ102を適切に得ることができる。また、これにより、カメラ12により、例えば、魚眼レンズ102の周辺部分に対向する領域においても、鮮明な画像を取得することができる。また、この場合、例えば、鮮明に映る撮影範囲は広範囲かつ遠方にまで適切に広げること等も可能になる。そして、このような魚眼レンズ102を用いたカメラ12や撮像システム10については、例えば、魚眼レンズ102で取得する画像において俯角部分を含む魚眼レンズ102の周辺部分で取得する部分の重要度が高い用途において、特に好適に用いることができる。より具体的に、この場合、例えば図5(a)に示すように、車両20の上部にカメラ12を設置すること等が考えられる。
【0043】
図5は、撮像システム10の用途の例を示す図である。図5(a)は、撮像システム10の用途の一例を示す。上記においても説明をしたように、本例の撮像システム10において、カメラ12は、800万画素以上の画素数での撮像を行う撮像素子104を有する。また、本例において、カメラ12は、乗用車等の車両20の上部に設置され、車両20の周囲を撮像した画像である車両周囲画像を撮像する。この場合、カメラ12は、例えば、車両20の上に設置するための構造(例えば、固定部材等)を更に備えてよい。また、車両20の上部にカメラ12を設置することについては、例えば図中に示すように、カメラ12が天空を向いた状態で、車両の外側においてルーフ(屋根)上にカメラ12を設置すること等と考えることができる。カメラ12が天空を向いた状態については、例えば、魚眼レンズ102の中心方向を上方へ向けた状態等と考えることができる。また、車両20としては、例えば、警察車両(パトカー)等を用いることが考えられる。この場合、カメラ12について、例えば、警察車両の上部に設置される赤色灯の更に上に設置してもよい。また、撮像システム10の構成のうち、画像処理装置14については、例えば、車両20の室内に設置することが考えられる。
【0044】
また、上記においても説明をしたように、本例のカメラ12において、魚眼レンズ102は、俯角付きのレンズである。そのため、図5(a)に示すようにカメラ12を設置した場合、カメラ12について、例えば、設置位置の下方までも撮影範囲として、車両20の360度周辺を遠方までを見通せる車上カメラとして機能させることができる。また、この場合、1眼カメラでの撮影となるため、例えば、複数のカメラの画像を合成する必要もなく、画像処理の手間や時間を適切に低減することができる。また、この場合、複数のカメラの画像を合成する処理等を行わないことで、例えば、証拠能力の高い画像を取得することもできる。また、1台のカメラ12で、前後左右、上空までも撮影できるため、画像の応用範囲を適切に広げることもできる。また、上記においても説明をしたように、本例のカメラ12において、魚眼レンズ102は、俯角部分を含む周辺部分についても、高い解像力を有している。そのため、車両20の上部に魚眼レンズ102を設置した場合、車両周囲画像において魚眼レンズ102の俯角部分に対応する部分等により、車両20の周囲の状況を高い精度で適切に確認することができる。また、この場合において、上記のような高画素数の撮像素子104を用いることで、例えば、高い解像度の車両周囲画像を適切に取得することができる。
【0045】
また、このような構成で撮像システム10を用いる場合、撮像システム10により、例えば、カメラ12が取り付けられた車両20の周囲にある他の車両のナンバープレート(自動車登録番号標)の読み取りを行うこと等が考えられる。この場合、ナンバープレートを読み取ることについては、例えば、ナンバープレートに記載されている文字や数字等を識別すること等と考えることができる。また、ナンバープレートを読み取ることについて、例えば、自動車登録番号を確認するために必要な情報を読み取ること等と考えることもできる。周囲にある他の車両のナンバープレートについては、例えば、車両20の上に設置されているカメラ12から所定の距離の範囲内にあるナンバープレート等と考えることができる。このナンバープレートは、例えば、カメラ12に対する向きが所定の条件を満たしているナンバープレートであってよい。また、この場合、上記において説明をした特徴を有する魚眼レンズ102と、上記のような画素数の撮像素子104とを組み合わせて用いることで、高精度でのナンバープレートの読み取りが可能になっていると考えることができる。
【0046】
より具体的に、本例において、カメラ12における撮像素子104は、車両周囲画像のうち、魚眼レンズ102における90度を超える入射角の範囲に対応する部分について、車両20の周囲にある他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態で、車両周囲画像を撮像する。この場合、例えば、画像処理装置14において、車両周囲画像のうち、魚眼レンズ102における90度を超える入射角の範囲に対応する部分に基づき、車両20の周囲にある他の車両のナンバープレートを読み取ることが考えられる。このように構成すれば、例えば、撮像システム10において、周辺の車両のナンバープレートを適切に読み取ることができる。また、ナンバープレートの読み取りについては、例えば、撮像システム10のユーザの目視によって行ってもよい。この場合、画像処理装置14は、例えば、画像処理によって展開した車両周囲画像をモニタ等に表示することで、車両周囲画像をユーザに視認させる。また、ユーザは、モニタ等に表示された車両周囲画像に基づき、ナンバープレートの読み取りを行う。このように構成した場合も、撮像システム10において、例えば、周辺の車両のナンバープレートを適切に読み取ることができる。
【0047】
ここで、他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態とは、例えば、カメラ12との距離が所定の範囲内にあるナンバープレートを読み取り可能な状態であってよい。より具体的に、本例において、他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態は、例えば、車両20の全周囲において、カメラ12からの距離が20m程度以内の範囲にあるナンバープレートを読み取り可能な状態等であってよい。また、実用状、ナンバープレートを読み取れるか否かについては、例えば、ナンバープレートの角度、周囲の光の状態、及び車両の速度等の様々な要因が影響する。
【0048】
そのため、他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態について、例えば、車載カメラに一般的に求められる精度で他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態等と考えることもできる。この場合、他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態は、例えば、市販されている一般的なドライブレコーダと同程度以上の精度でナンバープレートを読み取り可能なこと等であってもよい。より具体的に、この場合、一般的なドライブレコーダとしては、例えば、200万画素程度(例えば120万~200万画素)の画像を取得するドライブレコーダを考えることができる。そして、この場合、本例のカメラ12において他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態については、例えば、車両20の走行中において、カメラ12から前方の車両のナンバープレートまでの距離が20m以下の場合において、このようなドライブレコーダと同程度以上の精度でナンバープレートを読み取り可能なことであってよい。また、他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態は、例えば、人間の目視と同程度以上での読み取りが可能な状態であることがより好ましい。この場合、他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態は、例えば、カメラ12との距離が所定の範囲内にあり、かつ、車両20に乗車している乗員の目視によっても読み取りが可能な状態にあるナンバープレートを読み取り可能な状態であってもよい。
【0049】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、例えば、カメラ12に対する向きが所定の条件を満たしているナンバープレートを対象にして、ナンバープレートの読み取りを行うことが考えられる。この場合、例えば、少なくとも、車両20に乗車している乗員の目視によって読み取ることが可能な向きのナンバープレートについて、読み取りの対象とすることが好ましい。より具体的には、例えば、車両20の前後を走行する他の車両のナンバープレートや、対向車線を走行する他の車両のナンバープレートについて、読み取りの対象とすることが考えられる。この場合、車両20の前後を走行する他の車両については、例えば、車両20の直前又は直後の位置で車両20が走行する車線と同じ車線を車両20と同方向へ走行する車両等と考えることができる。また、対向車線を走行する他の車両については、例えば、車両20が走行する車線とセンターラインを挟んで隣接する反対方向への車線を走行する車両等と考えることができる。
【0050】
また、これらの場合において、他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態は、例えば、車両20及び他の車両の速度が所定の速度以下の場合に他の車両のナンバープレートを読み取り可能な状態であってよい。より具体的に、この場合、少なくとも、車両20及び他の車両の速度が時速40km以下の場合に、ナンバープレートの読み取りが可能であることが好ましい。また、車両20及び他の車両の速度が時速60km以下の場合に、ナンバープレートの読み取りが可能であることがより好ましい。また、本例の撮像システム10を用いる場合、周辺を走行している他の車両に限らず、例えば、車両20の周囲に停車している車両のナンバープレートについても、ナンバープレートを読み取ることができる。この場合、例えば、車両20が走行している車線の路肩に駐車又は停車している他の車両のナンバープレートや、道路周辺の駐車場に駐車している他の車両のナンバープレート等を読み取ることが考えられる。また、撮像システム10においては、他の車両のナンバープレート以外の対象に対して読み取りを行ってもよい。例えば、撮像システム10において、車両20の周辺にいる人物の顔認証等を行って、人物の識別等を行ってもよい。
【0051】
また、撮像システム10やカメラ12については、上記以外の用途においても、好適に用いることができる。この場合、例えば、図5(b)に示すように、カメラ12を用いて、管状構造物の検査を行うこと等が考えられる。図5(b)は、撮像システム10の用途の他の例を示す。この場合、例えば図中に示すように、カメラ12における魚眼レンズ102の中心方向を管状構造物の軸方向と合わせることで、魚眼レンズ102の俯角部分等により、管状構造物の内壁の画像を取得する。このように構成すれば、例えば、管状構造物の内側の撮影を容易かつ適切に行うことができる。このような管状構造物としては、例えば、トンネル、下水道管、パイプを用いることが考えられる。また、この場合、管状構造物の軸方向に沿ってカメラ12を適宜移動させることで、管状構造物の各位置の画像を取得することが考えられる。この場合、撮像システム10における画像処理装置14については、管状構造物の種類等に応じて、管状構造物の内又は外に設置することが考えられる。また、例えばトンネルのような大型の構造物に対する検査を行う場合、カメラ12について、車両に設置して、構造物内を移動させること等も考えられる。
【0052】
また、上記においても説明をしたように、本例のカメラ12においては、俯角部分を含む魚眼レンズ102の側面における全周囲においても、鮮明な画像を得ることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、管状構造物に対し、1台のカメラ12による一度の撮影により、管状構造物の内面をリング状に適切に撮影することができる。また、これにより、例えば、従来の構成では必要であった複数の画像の合成(貼り合わせが)等を行うことなく、管状構造物の検査等をより容易かつ適切に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えば撮像装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
10・・・撮像システム、102・・・魚眼レンズ、104・・・撮像素子、106・・・制御部、12・・・カメラ、14・・・画像処理装置、20・・・車両、30・・・管状構造物
図1
図2
図3
図4
図5