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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080186
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】生体情報測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20240606BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A61B5/0245 A
A61B5/022 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193153
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤野井 幸哉
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA03
4C017AA08
4C017AA10
4C017AB01
4C017AC01
4C017BB12
4C017BC11
4C017BC21
4C017DD11
4C017DD17
4C017FF30
(57)【要約】
【課題】脈拍を検出可能な計測機器において、脈拍間隔を示す表示領域の分解能を最適化し、脈拍間隔の個人差に関わらず脈拍間隔の変動を視認しやすくする技術を提供する。
【解決手段】ユーザーの脈拍を検出する脈拍取得手段と、前記脈拍に基づいて、一の拍動とその直前の拍動との脈拍間隔を算出する脈拍間隔算出手段と、前記脈拍間隔を視覚的に示すレベルインジケータを表示する表示手段と、前記脈拍間隔の情報を用いて前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値及び最大値を決定する、表示分解能決定部と、を有する、生体情報測定装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの脈拍を検出する脈拍取得手段と、
前記脈拍に基づいて、一の拍動とその直前の拍動との脈拍間隔を算出する脈拍間隔算出手段と、
前記脈拍間隔を視覚的に示すレベルインジケータを表示する表示手段と、
前記脈拍間隔の情報を用いて前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値及び最大値を決定する、表示分解能決定部と、
を有する、生体情報測定装置。
【請求項2】
前記表示分解能決定部は、算出される連続した複数の前記脈拍間隔の最大値に所定の第1比率を乗じた値を、前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最大値として決定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記表示分解能決定部は、算出される連続した複数の前記脈拍間隔の最小値に所定の第2比率を乗じた値を、前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値として決定する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記表示分解能決定部は、算出される連続した複数の前記脈拍間隔の平均値を算出し、前記平均値に対する正の最大偏差に第3比率を乗じた値を前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最大値として決定し、前記平均値に対する負の最大偏差に第4比率を乗じた値を前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値として決定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記脈拍取得手段はカフ及び圧力センサを含み、前記カフによって前記ユーザーの血管を加圧し、前記圧力センサによって前記血管の圧脈波を検出することによって前記脈拍を検出するものであって、
前記表示分解能決定部は、前記血管の加圧開始から第1所定条件を満たすまでの間に算出される複数の前記脈波間隔の情報を用いて前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値及び最大値を決定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
検出した前記脈拍間隔の情報を記憶する記憶手段をさらに有しており、
前記脈拍取得手段はカフ及び圧力センサを含み、前記カフによって前記ユーザーの血管を加圧し、前記圧力センサによって前記血管の圧脈波を検出することによって前記脈拍を検出するものであって、
前記表示分解能決定部は、前記記憶手段に記憶されている第2所定条件を満たす前記脈拍間隔の情報を用いて前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値及び最大値を決定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
前記脈拍取得手段はカフ及び圧力センサを含み、前記カフによって前記ユーザーの血管を加圧し、前記圧力センサによって前記血管の圧脈波を検出することによって前記脈拍を検出するものであって、
前記表示分解能決定部は、前記カフに供給された流体が排出されるまでの間に算出される連続した複数の前記脈拍間隔の情報を用いて前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値及び最大値を決定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項8】
前記レベルインジケータは、前記表示手段において表示が活性化される領域の、長さ、
面積、角度、数、の少なくともいずれかによって、前記脈拍間隔を視覚的に示す、
ことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の生体情報測定装置。
【請求項9】
前記レベルインジケータは、複数の表示セグメントによって構成されており、表示が活性化される前記表示セグメントの数の多寡によって、前記脈拍間隔を表現する、
ことを特徴とする、請求項8に記載の生体情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の脈拍を測定する生体情報測定装置に関し、特に、測定した脈拍の間隔に関する情報を提供する生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血圧値などの個人の身体・健康に関する情報を計測機器によって計測し、当該計測結果を記録・分析することで、健康管理を行うことが普及しつつある。特に、心房細動(AF:Atrial Fibrillation)などの不整脈は、脳・心血管疾患に繋がるおそれがあるため、上記のような機器によって脈拍間隔の変動を検出し、ユーザー本人が容易に認識できるように報知することが有効である。
【0003】
従来から、血圧計を用いて血圧測定を行う際に取得した生体情報に基づいて、このような脈拍間隔に関する情報を提供することは公知となっており、例えば特許文献1には、血圧値の測定に用いられる脈波を保存し、血圧値と同時に脈波グラフを表示することができる血圧計が開示されている。また、血圧値算定中に、画面に表示されるハートマークが拍動に合わせて点滅することも開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の血圧計によれば、ユーザーは血圧測定中に、拍動に併せて点滅するハートマークの明滅間隔を確認するによって、脈拍の間隔を認識することができる。また、事後的に脈波の信号レベルの時系列グラフを時系列脈波グラフとして表示するので、そのようなグラフを読み取ることでも、脈拍の間隔(及びその変動)を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-98003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術のように、マークが拍動に併せて明滅するだけでは脈拍間隔の変動を認識し難く、重要な脈拍間隔の変動を見落としてしまうという問題がある。これに対しては、例えば、マークの点滅ではなく、いわゆるバーグラフメータなどのレベルインジケータによって一拍ごとの脈拍間隔を表示することで、脈拍間隔の変動を認識し易くすることが考えられる。
【0007】
ところで、脈拍間隔は個人差が大きく、間隔の大小や平均値が人によって異なる。例えば、一般的な血圧計では測定する脈拍数の範囲を40拍/分から180拍/分としており、平均脈拍間隔は脈拍数40拍/分のユーザーでは1.5秒、脈拍数180拍/分のユーザーでは0.3秒となる。
【0008】
このため、上記のようにレベルインジケータによって測定中の脈拍間隔の変動をリアルタイムで表示するためには、想定される最大の脈拍間隔(例えば1.5秒)を表示できるように、レベルインジケータの最大値を設定しておく必要がある。そうすると、脈拍間隔が小さい(即ち、脈拍数の多い)ユーザーにとっては、レベルインジケータの表示分解能が低くなってしまい、脈拍間隔の変動が認識しづらくなる、という問題があった。
【0009】
本発明は上記のような事情に鑑み、脈拍を検出可能な計測機器において、脈拍間隔を示
す表示領域の分解能を最適化し、脈拍間隔の個人差に関わらず脈拍間隔の変動を視認しやすくする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。即ち、
ユーザーの脈拍を検出する脈拍取得手段と、
前記脈拍に基づいて、一の拍動とその直前の拍動との脈拍間隔を算出する脈拍間隔算出手段と、
前記脈拍間隔を視覚的に示すレベルインジケータを表示する表示手段と、
前記脈拍間隔の情報を用いて前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値及び最大値を決定する、表示分解能決定部と、
を有する、生体情報測定装置である。
【0011】
なお、ここでいうレベルインジケータは、所定の特徴量を数値ではない表示(例えば表示領域の大小など)によって示すものであればよく、その形状・表示態様に限定は無い。例えば、前記レベルインジケータは、前記表示手段において表示が活性化される領域の、長さ、面積、角度、数、の少なくともいずれかによって、前記脈拍間隔または前記変化量を視覚的に示すものであってもよい。
【0012】
このような構成であれば、レベルインジケータにおいて表示される脈拍間隔の最大値及び最小値をユーザーに応じて最適化し、脈拍間隔の個人差に関わらず脈拍間隔の変動を容易に視認することが可能になる。
【0013】
また、前記表示分解能決定部は、算出される連続した複数の前記脈拍間隔の最大値に所定の第1比率を乗じた値を、前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最大値として決定するのであってもよい。このような構成であれば、実際に測定されたユーザーの最大脈波間隔から所定のマージンを設けた値を、レベルインジケータにおける最大値とすることができるため、当該ユーザーに最適化された最大値を基準にして、レベルインジケータ―の分解能を決定することができる。
【0014】
また、前記表示分解能決定部は、算出される連続した複数の前記脈拍間隔の最小値に所定の第2比率を乗じた値を、前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値として決定するのであってもよい。このような構成であれば、実際に測定されたユーザーの最小脈波間隔から所定のマージンを設けた値を、レベルインジケータにおける最小値とすることができるため、当該ユーザーに最適化された最小値及び最大値を基準にして、レベルインジケータ―の分解能をユーザーに合わせて最適化することができる。
【0015】
また、前記表示分解能決定部は、算出される連続した複数の前記脈拍間隔の平均値を算出し、前記平均値に対する正の最大偏差に第3比率を乗じた値を前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最大値として決定し、前記平均値に対する負の最大偏差に第4比率を乗じた値を前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値として決定するのであってもよい。
【0016】
このような構成であれば、実際に測定された脈波間隔の平均値に対する正負の最大偏差に所定のマージンを設けた値をレベルインジケータの最小値、最大値としてレベルインジケータの分解能をユーザーに合わせて最適化することができる。さらに、上記の第3比率、第4比率を固定値とするのではなく、平均値がレベルインジケータの中央値となるように第3比率、第4比率変更することで、より視認性のよいレベルインジケータの表示を実現することができる。
【0017】
また、前記脈拍取得手段はカフ及び圧力センサを含み、前記カフによって前記ユーザーの血管を加圧し、前記圧力センサによって前記血管の圧脈波を検出することによって前記脈拍を検出するものであって、前記表示分解能決定部は、前記血管の加圧開始から第1所定条件を満たすまでの間に算出される複数の前記脈波間隔の情報を用いて前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値及び最大値を決定するものであってもよい。
【0018】
ここで、第1所定条件とは、例えばカフによる血管の加圧開始から所定時間(例えば5秒)経過、或いはカフ圧が所定圧力(例えば40mHg)に達する、などとすることができる。このような構成であれば、加圧測定、減圧測定のいずれであっても、レベルインジケータの最大値・最小値を決定するための連続した複数の脈波間隔の情報を、別途の測定を行うことなく取得することができる。
【0019】
また、検出した前記脈拍間隔の情報を記憶する記憶手段をさらに有しており、前記脈拍取得手段はカフ及び圧力センサを含み、前記カフによって前記ユーザーの血管を加圧し、前記圧力センサによって前記血管の圧脈波を検出することによって前記脈拍を検出するものであって、前記表示分解能決定部は、前記記憶手段に記憶されている第2所定条件を満たす前記脈拍間隔の情報を用いて前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値及び最大値を決定するものであってもよい。
【0020】
ここで、第2所定条件とは、例えば直近の生体情報測定の際に算出された全ての脈拍間隔、などとすることができる。このような構成であれば、十分な量のユーザー自身の脈拍間隔の情報を用いて、前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値及び最大値を精度よく決定することができる。
【0021】
また、前記脈拍取得手段はカフ及び圧力センサを含み、前記カフによって前記ユーザーの血管を加圧し、前記圧力センサによって前記血管の圧脈波を検出することによって前記脈拍を検出するものであって、前記表示分解能決定部は、前記カフに供給された流体が排出されるまでの間に算出される連続した複数の前記脈拍間隔の情報を用いて前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値及び最大値を決定するのであってもよい。
【0022】
このような構成によれば、減圧測定を行う場合には、加圧段階に取得した十分な量のユーザー自身の脈拍間隔の情報を用いて、前記レベルインジケータが示す脈拍間隔の最小値及び最大値を精度よく決定することができる。
【0023】
また、前記レベルインジケータは、複数の表示セグメントによって構成されており、表示が活性化される前記表示セグメントの数の多寡によって、前記脈拍間隔を表現するものであってもよい。
【0024】
なお、ここでいう「表示の活性化」とは、表示状態/非表示状態の切り換えが可能な領域において、表示状態となることを指す(即ち、表示の非活性化は、非表示状態になることを指す)。例えば、表示手段がLCDであればそのディスプレイ上の表示領域に表示が出力されることに相当し、表示手段がLEDライトなどであれば該ライトが点灯状態になることに相当する。また、表示セグメントは、個別に表示の活性化/非活性化を切り換え可能な表示領域の単位を指しており、その形状は特に限定されない。
【0025】
なお、上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。また、上記において、第1乃至第4比率は、それぞれが別の値であってもよいし、同じ値であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、脈拍を検出可能な計測機器において、脈拍間隔を示す表示領域の分解能を最適化し、脈拍間隔の個人差に関わらず脈拍間隔の変動を視認しやすくする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施例1に係る血圧測定装置の装置構成及び機能構成の概略を示す概略図である。
図2図2Aは、実施例1に係る血圧測定装置の画像表示手段に表示されるレベルインジケータの例を示す第1の図である。図2Bは、実施例1に係る血圧測定装置の画像表示手段に表示されるレベルインジケータの例を示す第2の図である。図2Cは、実施例1に係る血圧測定装置の画像表示手段に表示されるレベルインジケータの例を示す第3の図である。
図3図3は、血圧測定中に検出される脈波信号と脈波間隔について説明する説明図である。
図4図4は、洞調律者と心房細動患者の脈拍間隔のバラつきの例を説明するグラフである。
図5図5は、実施例に係る血圧測定装置のレベルインジケータの表示分解能について説明する説明図である。
図6図6は、実施例に係る血圧測定装置において行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、実施例1の第3の変形例において行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、実施例1の第4の変形例において行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図9図9は、実施例1の第5の変形例において行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図10図10は、実施例1の第6の変形例において行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図11図11Aは、実施例に係る血圧測定装置の画像表示手段に表示されるレベルインジケータのバリエーションを示す第1の図である。図11Bは、実施例に係る血圧測定装置の画像表示手段に表示されるレベルインジケータのバリエーションを示す第2の図である。図11Cは、実施例に係る血圧測定装置の画像表示手段に表示されるレベルインジケータのバリエーションを示す第3の図である。
図12図12Aは、実施例に係る血圧測定装置の画像表示手段に表示されるレベルインジケータのバリエーションを示す第4の図である。図12Bは、実施例に係る血圧測定装置の画像表示手段に表示されるレベルインジケータのバリエーションを示す第5の図である。図12Cは、実施例に係る血圧測定装置の画像表示手段に表示されるレベルインジケータのバリエーションを示す第6の図である。
図13図13Aは、実施例に係る血圧測定装置の画像表示手段に表示されるレベルインジケータのバリエーションを示す第7の図である。図13Bは、実施例に係る血圧測定装置の画像表示手段に表示されるレベルインジケータのバリエーションを示す第8の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<実施例1>
以下、本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。ただし、この実施例に記載されている各構成の材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0029】
本発明は、例えば、図1に示すような血圧測定装置1に適用することができる。図1
、本実施例における血圧測定装置1の装置構成及び機能構成の概略を示す概略図である。図1に示すように、血圧測定装置1は、概略、本体部11、カフ部12、及びエアチューブ13からなる構成である。また血圧測定装置1は、図1の機能ブロックで示すように、制御部100、センサ部110、カフ圧制御部120、記憶部130、操作部140、画像表示部150、の各機能部を備えている。
【0030】
本体部11は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などの画像表示手段151、各種操作ボタン141の他、図示しないが、スピーカなどの音声出力手段、バッテリーなどの電源部、カフ部に連通するポンプ・弁、これらが収められる筐体、などを有している。また、カフ部12はユーザーの上腕に巻き付けられて用いられる部材であり、本体部11のポンプ・弁とエアチューブ13を介して連通する空気袋(カフ)、当該カフを内蔵するベルト、ベルトに設けられる圧力センサ(いずれも図示せず)、などを有する構成となっている。また、コロトコフ法により血圧測定を行う場合には、マイクを含んでいてもよい。
【0031】
なお、カフ部12のベルトにはカフ部12をユーザーの上腕に固定するための固定手段(例えば、面ファスナー)が設けられており、血圧測定装置1を用いて血圧測定を行う際には、ベルトによってユーザーの上腕にカフ部12を巻き付ける。
【0032】
制御部100は、血圧測定装置1の制御を司る手段であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含んで構成される。制御部100は、操作部140を介してユーザーの操作を受け付けると、所定のプログラムに従って血圧測定、各種情報の提示など、様々な処理を実行するように血圧測定装置1の各構成要素を制御する。なお、所定のプログラムは後述の記憶部130に保存され、ここから読み出される。また、制御部100は、機能モジュールとして、血圧値算出部101、脈拍間隔算出部102、表示分解能決定部103、レベルインジケータ(LI)表示内容決定部104を備えている。これらの機能モジュールについては、後に詳述する。
【0033】
センサ部110は、上述のようにカフ部12に設けられる圧力センサ(例えば、圧電素子を備えるピエゾ抵抗型センサなど)を含んで構成され、少なくともユーザーの脈波を検出する。なお、センサ部110は、圧力センサ以外のセンサを含んでいてもよく、脈波を光電方式により検出する場合にはPPG(Photoplethysmography)センサを含んでいてもよい。本実施例に係る血圧測定装置1は、センサ部110が検出する脈波に基づいて、ユーザーの脈拍を取得する。即ち、本実施例においてはカフ部12におけるカフ及び(圧力センサを含む)センサ部110が脈拍取得手段に該当する。
【0034】
カフ圧制御部120は、血圧測定の際に、本体部11のポンプ・弁を制御し、カフ部12のカフ圧を調節する。具体的には、血圧測定の際には、上腕にカフ部12を巻き付けた状態でポンプを駆動させてカフに空気を送り込みカフを膨張させる(カフ圧を高くする)制御を行う。そのようにして、ユーザーの上腕の血管を圧迫することにより一旦血流を阻害した後、ポンプを停止させて弁を開放し、徐々にカフから空気を放出してカフを収縮させる(カフ圧を低くする)制御を行う。以下では、カフ圧を高くする段階をカフ膨張段階、カフ圧を低くする段階をカフ収縮段階ともいう。
【0035】
記憶部130は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの主記憶装置、HDD、フラッシュメモリなどの補助記憶装置を含んで構成され、アプリケーションプログラム、血圧値、脈拍数、一拍ごとの脈波及び脈拍間隔などの各種の計測結果、その他取得した生体情報などの各種の情報を記憶する。なお、測定された血圧値、脈拍数などは、取得時刻や測定時刻などの時刻情報と関連付けて記憶部130に記憶されるようになっている。時刻情報は、例えばRTC
(Real Time Clock)を参照するなどして計時されたものを用いることができる。また、上記補助記憶装置は本体部11に着脱可能に構成されていてもよい。
【0036】
操作部140は、各種操作ボタン141(例えば、電源ボタン、測定実行ボタン、選択・決定ボタン、など)を含み、ユーザーからの入力操作を受け付け、制御部100に操作に応じた処理を実行させるための機能を果たす。
【0037】
画像表示部150は、本体部11の画像表示手段151を含んで構成され、測定された血圧値、現在時刻、カフの装着状態に係る情報など、各種の情報を画像表示手段151に表示することで、ユーザーに情報を提供する。図2A乃至図2Cに、画像表示手段151の表示内容の一例を示す。図2A乃至図2Cに示すように、画像表示手段151には、後述する脈波間隔についての情報を示すレベルインジケータLI1が表示される領域が設けられている。レベルインジケータLI1については、後にさらに詳細に説明する。
【0038】
以下では、制御部100の各機能モジュールについて説明する。血圧値算出部101は、センサ部110が取得した脈波に基づいて、ユーザーの血圧値(及び脈拍数)を算出する。血圧算出の方法は所望の公知技術を用いることができ、例えば圧力センサで圧脈波を検出して血圧を測定するオシロメトリック法を採用することができる。また、カフ部12にマイクを設け、コロトコフ音を検出するコロトコフ法を用いてもよい。血圧値算出部101が算出した血圧値及び脈拍数は、血圧測定時刻と関連付けられて記憶部130に記憶されるようにしてもよい。
【0039】
また、脈拍間隔算出部102は、センサ部110が取得した脈波(例えば、圧力センサによって取得された圧脈波)の波形から、一拍ごとにその波のピーク間の時間間隔を算出する。図3を用いて、脈拍間隔の算出について説明する。図3は脈波信号と時間との関係を模式的に示す説明図である。図3において、ある波のピークが検出される時間をtとし、その次の波のピークが検出される時間をtとすると、ある波とその次の波の間隔はt-t=Tとなる。脈拍間隔算出部102はこのように、t-tx-1=Tを脈拍間隔として算出する。
【0040】
表示分解能決定部103は、脈拍間隔算出部102が算出した脈拍間隔の情報を用いて、レベルインジケータLI1において表示される脈拍間隔の最小値と最大値を決定する。ここで、図2A乃至Cを参照して、レベルインジケータLI1の表示内容について説明する。本実施例に係るレベルインジケータLI1は、表示と非表示を切り替え可能な複数の表示セグメントSを備えており、表示が活性化されている状態(非表示ではなく、表示されている状態)の表示セグメントSの数の多寡により、脈拍間隔算出部102によって算出された脈拍間隔の大小を示すことができる。
【0041】
本実施例におけるレベルインジケータLI1は、10個分の表示セグメントSを備えており、10個の表示セグメントSのうち、いくつの表示セグメントを活性化させるかを後述のレベルインジケータ表示内容決定部104が決定し、これをレベルインジケータLI1に表示することにより脈拍間隔の大小を視覚的に示すことができる。
【0042】
ところで、脈拍間隔は個人差が大きく、間隔の大小や平均値が人によって異なる。また、図4に示すように、洞調律者(健常者)に比べて、心房細動患者は脈拍間隔のバラつきが大きくなる。図4は、洞調律者と心房細動患者の脈拍間隔のバラつきの例を、横軸(X軸)を測定開始からの脈拍数として、縦軸(Y軸)を脈拍間隔のバラつきとして示すグラフである。なお、脈拍間隔のバラつきは平均脈拍間隔に対する比率(%)で示している。図4に示すグラフでは、脈拍間隔のバラつきは洞調律者では10%以下であるが、心房細動患者では約80%に達している。
【0043】
このため、レベルインジケータLI1で表示する脈拍間隔の上下限値を所定の固定値として設定する場合にはどうしても上下限値の幅を大きくせざるを得ず、そうすると、脈拍数の多いユーザー(即ち、脈拍間隔の短いユーザー)にとっては、レベルインジケータLI1の表示分解能が不足してしまう。例えば、上記の心房細動患者の脈拍間隔のバラつきも踏まえて、平均脈拍間隔の±100%をレベルインジケータLI1で表示する脈拍間隔の上下限値とし、平均脈拍間隔を一般的な血圧計が測定可能な最小脈拍数40拍/mに基づいて、1.5秒(即ち大きく)と見積もった場合、表示セグメントSひとつが示す脈拍間隔は0.3秒、となる。即ち、レベルインジケータLI1において表示する脈拍間隔の上下限値は(0.3秒~3秒)ということになる。
【0044】
しかしながら、上記のように脈拍数が少ないユーザーを想定した上下限値では、脈拍数の多いユーザー(例えば、180拍/m、平均脈拍間隔0.3秒)の脈拍間隔を適切に表現することができない。図5に、表示セグメントの数が10個で、レベルインジケータLI1において表示する脈拍間隔の上下限値を0.3秒~3秒とした場合において、脈拍数が40拍/mであるユーザーの場合の平均脈拍間隔を示す表示と、脈拍数が180拍/mであるユーザーの場合の平均脈拍間隔を示す表示との対比関係を示す。
【0045】
この点、本実施例に係る表示分解能決定部103が、実際に測定されたユーザー個別の脈波間隔の情報を用いて、レベルインジケータLI1において表示される脈拍間隔の最小値と最大値を決定する。これにより、レベルインジケータLI1の表示分解能を動的に設定することができ、ユーザーの脈拍数の多寡に関わらず、脈拍間隔の変動を視認性良く表現することができる。なお、脈拍間隔の最小値と最大値を決定する具体的な方法については後述する。
【0046】
レベルインジケータ表示内容決定部104は、画像表示手段151において表示されるレベルインジケータLI1の表示内容を決定する。具体的には、レベルインジケータ表示内容決定部104は、一拍ごとに算出される脈拍間隔Tに基づいて活性化される表示セグメントSの数を決定し、レベルインジケータLI1における表示内容を一拍ごとに決定する。
【0047】
ここで、レベルインジケータ表示内容決定部104が活性化される表示セグメントSの数を決定する具体例を説明する。レベルインジケータ表示内容決定部104は、表示分解能決定部103が決定した、脈拍間隔の最小値をTmin、最大値をTmax、表示セグメントSの最大個数をNmaxとし、算出される脈拍間隔に応じた表示セグメントSの数Nを、下記式(1)及び式(2)により求める。
【0048】
【数1】

【数2】
【0049】
即ち、Nは(T-Tmin)/Δt+1の値を超えない最大の整数となる。このようにして求められたN個の表示セグメントSを、レベルインジケータLI1に一拍ごとに表示することで、脈拍間隔の変動を示すことができる。具体的には、表示が活性化している表示セグメントSが多いと、レベルインジケータLI1の表示活性化領域が大きくなり、逆に表示が活性化している表示セグメントSが少ないと、レベルインジケータLI1
の表示活性化領域が小さくなる。即ち、脈拍間隔が大きく(長く)なるほど、レベルインジケータLI1の表示活性化領域が大きくなり、脈拍間隔が小さく(短く)なるとレベルインジケータLI1の表示活性化領域が小さくなるため、ユーザーは当該表示を見ることで、表示活性化領域の大小のバラつきを直感的に把握し、これにより一拍ごとの脈拍間隔の変化量を認識することが可能になる。
【0050】
なお、レベルインジケータLI1に表示される表示セグメントSは、表示の態様を工夫することにより、脈拍間隔の変化量をよりユーザーに分かりやすく示すことができる。例えば、図2A乃至図2Cに示すように、左右方向に延びる直線状に表示セグメントSが配置される態様において、表示セグメントSの表示活性化を左端の1つ目から始めてN個に至るまで順次右側に1個ずつ表示個数を増やしていき、N個に至った後に、右側から順次非表示にしていくような表示態様にすることができる。
【0051】
図2A乃至図2Cは、このような表示セグメントSの表示の遷移の一例を示している。図2Aは、ある時点における脈拍間隔Tを示すものとして、N個=9個の場合のレベルインジケータLI1を示している。なお、この場合の例ではNmax=10個とする。即ち、レベルインジケータLI1全体としては10個の表示セグメントSが存在しているところ、9個分の表示セグメントSが左詰めで表示(活性化)された状態を示している。
【0052】
また、図2Bは、右側から順次表示セグメントSが非表示になっていく状態を示している。図2Bに示すように、順次非表示にしていく際にN個目(この場合9個目)の表示セグメントSは表示を活性化したまま残しておくことにより、この残された表示セグメントSの位置の変化により脈拍間隔の変動を認識し易くすることができる。ただし、必ずしもこのようにする必要はなく、N個の表示セグメントSは、全て同時に表示を活性化し、次の脈拍間隔が得られるまでの間、全て表示させたままであってもよい。
【0053】
そして、次の脈波のピークが検出され、これに基づいて算出された脈拍間隔TX+1の表示内容がレベルインジケータ表示内容決定部104により決定されると、図2Cに示すようにレベルインジケータLI1に、6個の表示セグメントSが活性化された状態が表示される。なお、本実施例においては、このようなレベルインジケータLI1の表示は、検出される脈拍の波形に同期して変化するようになっている。即ち、脈拍間隔が短ければそれに応じてレベルインジケータLI1の表示が変化するタイミングも早くなり、脈拍間隔が長ければ表示が変化するタイミングが遅くなる。ただし、レベルインジケータLI1の表示が変化するタイミングは、必ずしも脈波と同期している必要はなく、一拍ごとの脈拍間隔を示す表示の開始・終了に係るタイミングは適宜設定することができる。
【0054】
次に、図6に基づいて、本実施例に係る血圧測定装置1によって血圧測定を行うとともに、レベルインジケータLI1で血圧測定中におけるユーザーの脈拍間隔の変動を表示する際の処理の流れを説明する。図6は、本実施例に係る血圧測定装置1で血圧測定を行う際の処理の流れの一部を示すフローチャートである。
【0055】
図6に示すように、ユーザーによって血圧測定開始の操作が行われると、センサ部110が、圧力センサを初期化する(S101)。続けて、カフ圧制御部120が、弁を閉じ(S102)、ポンプを駆動して(S103)カフに空気を送り込み、カフを膨張させる。その後、制御部100は、現時点が所定の加圧初期期間であるか否かの判定を行う(S104)。なお、所定の加圧初期期間であるか否かは、例えば、測定操作開始から所定時間(例えば5秒)が経過しているか否か、カフ圧が所定値(例えば40mHg)に達しているか否か、などを条件として判定することができる。
【0056】
ステップS104で加圧初期段階であると判定された場合には、脈拍間隔算出部102
が算出する脈拍間隔の情報を取得する(S105)。具体的には、例えば一拍ごとに算出される脈拍間隔の情報を記憶部130に蓄積する。ステップS105の処理が実行されると、次はステップS106に進み、カフ圧が所定の圧力(例えば200mHg)に達しているか否かを判定する(S106)。一方、ステップS104で加圧初期段階でないと判定された場合には、直接ステップS106に進む。
【0057】
ステップS106で、カフ圧が所定の圧力に達していないと判定された場合には、ステップS103に戻り、以降の処理を繰り返す。一方、ステップS106で、カフ圧が所定の圧力に達していると判定された場合には、カフ圧制御部120がポンプを停止する(S107)。
【0058】
そして、表示分解能決定部103が、S105で取得した連続する複数の脈拍間隔の情報に基づいて、レベルインジケータLI1において表示される脈拍間隔の最大値と最小値を決定する。即ち、レベルインジケータLI1の表示分解能を決定する(S108)。具体的には、例えば、取得した連続する複数の脈拍間隔のうちの最小値に、予め設定された比率(例えば90%)を乗じた値を、レベルインジケータLI1が示す脈拍間隔の最小値として決定できる。また、取得した連続する複数の脈拍間隔のうちの最大値に、予め設定された比率(例えば110%)を乗じた値を、レベルインジケータLI1が示す脈拍間隔の最大値として決定できる。このようにして決定された表示分解能は、実際に取得したユーザーの脈拍間隔に基づいて決定されるため、当該ユーザーに最適化されたものとなる。
【0059】
ステップS108の処理に続いて、カフ圧制御部120が弁を徐々に開き、カフを収縮させていく(S109)。そして、脈拍間隔算出部102は、この間に取得される脈波から、一拍ごとの脈拍間隔を算出し(S110)、これに基づいてレベルインジケータ表示内容決定部104が一拍ごとに活性化する表示セグメントSの数を決定する。そして、決定された内容を画像表示部150がレベルインジケータLI1に表示し(S111)、これによってユーザーは、血圧測定中の一拍ごとの脈拍間隔の変動を容易に視認することができる。
【0060】
また、カフが収縮する過程で、血圧値算出部101が血圧値(収縮期血圧及び拡張期血圧)を測定しており、ステップS112では、血圧値算出部101により血圧値算出が終了したか否かの判定が行われる(S112)。ここで、血圧値算出が終了していないと判定された場合には、ステップS110に戻り、以降の処理を繰り返す。一方、ステップS112で血圧値算出が終了したと判定された場合には、カフ圧制御部120が弁を開いてカフから急速排気を行ってカフを収縮させる(S113)。その後、画像表示部150が測定値(血圧値に加え、脈拍数などを含んでもよい)を表示し(S114)、一連の処理を終了する。なお、測定された各種の値は、記憶部130に記憶するようにしてもよい。
【0061】
以上のような構成の血圧測定装置1によれば、ユーザーは血圧測定中における脈拍間隔の変動を直感的に認識することができ、脈の拍動をより容易に認知することができる。これにより、不整脈などの異常があった場合にはその違和感から脈拍の異常を容易に把握することができ、日常的な血圧測定を通じて循環器疾患の早期発見に資することができる。さらに、表示分解能決定部103が、レベルインジケータLI1の表示分解能をユーザーに最適化されたものに決定するため、ユーザーごとの脈拍間隔の相違に関わらず、適切な分解能で脈拍間隔の変動を表示することができる。
【0062】
(変形例1)
なお、上記実施例1では、ステップS105で取得した連続する複数の脈拍間隔のうちの最小値・最大値に予め設定された比率を乗じた値をレベルインジケータLI1が示す脈拍間隔の最小値・最大値とする例を示したが、必ずしもこのようにする必要はない。最小
値・最大値のいずれか一方のみについてこのような処理を行い、他方については規定値を用いるようにしてもよい。例えば、表示分解能決定部103は最小値については規定値(例えば0秒)をレベルインジケータLI1が示す脈拍間隔の最小値として決定するようになっていてもよい。
【0063】
(変形例2)
また、表示分解能決定部103は、ステップS105で取得した連続する複数の脈拍間隔の平均値を算出し、取得した連続する複数の脈拍間隔の中から平均値に対する正負それぞれの最大偏差に所定の比率(例えば110%)を乗じた値をレベルインジケータLI1が示す脈拍間隔の最小値・最大値としてもよい。また、正の最大偏差と負の最大偏差とで、乗ずる所定の比率を異なるようにしてもよい。さらに、正負の最大偏差に乗ずる比率を固定値とするのではなく、平均値がレベルインジケータの中央値となるように正負の最大偏差に乗ずる比率を変更することで、より視認性のよいレベルインジケータの表示を実現することができる。
【0064】
(変形例3)
上記実施例1では、血圧測定をいわゆる減圧測定で実施する場合の処理について説明したが、いわゆる加圧測定の手法により血圧測定を実施する場合にも本発明を適用することは可能である。このような場合の処理の例を図7に示す。なお、本変形例における生体情報測定装置の装置構成は実施例1と同一である。また、図7に示す処理において、実施例1で説明した場合の処理と同様の処理については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0065】
図7に示すように、本変形例においてはステップS101からステップS105までの処理は上記実施例1の場合と同様である。本変形例においては、制御部100は、ステップS105の後、表示分解能が決定済か否か、即ち、レベルインジケータLI1によって表示される脈拍間隔の最小値・最大値がユーザーに合わせて最適化されているか否かを判定する処理を実行する(S201)。ここで、未だ表示分解能は決定されていないと判定された場合には、表示分解能決定部103が、表示分解能を決定する処理を実行する(S108)。なお、表示分解能を決定する方法は上記実施例1の場合と同様であってもよいし、上記変形例1又は2に記載のような方法を用いてもよい。
【0066】
ここで、本変形例においては加圧測定の方法によって血圧測定が行われるため、表示分解能決定の処理とあわせて、血圧値算出部101により血圧値を算出する処理が実行される。このため、ステップS201で表示分解能が決定済みであると判定された場合、及びステップS108で表示分解能が決定された後は、間を置かずして脈拍間隔算出部102が脈拍間隔を算出し(S110)、該算出した脈拍間隔を画像表示部150がレベルインジケータLI1に一拍ごとに表示する処理を実行する(S111)。その後、血圧値算出部101は血圧値算出が終了したか否かの判定を行い(S112)、血圧値算出が終了していないと判定した場合には、ステップS104に戻り、以降の処理を繰り返す。一方、ステップS112で血圧値算出が終了したと判定された場合には、カフ圧制御部120がポンプを停止し(S202)、弁を開いてカフを収縮させる(S113)。その後、画像表示部150が測定値を表示し(S114)、一連の処理を終了する。
【0067】
以上のように、血圧測定の初期の段階(より具体的にはカフによる加圧初期の段階)で得られる脈拍間隔の情報を用いて表示分解能を決定することで、減圧測定の場合に限らず、加圧測定の場合においてもレベルインジケータLI1の表示分解能をユーザーに応じて最適化したうえで、一拍ごとの脈拍間隔の変動を表示することができる。
【0068】
(変形例4)
なお、減圧測定の方法によって血圧測定を行う場合に限れば、次に示すような処理の流れとすることも可能である。図8は本変形例において血圧測定装置1において実行される処理の流れの一部を示すフローチャートである。図8に示すように、本変形例の処理の流れにおいては、実施例1におけるステップS104の処理が存在しない他は実施例1と同様の処理の流れとなっている。即ち、本変形例では、減圧測定のためのカフ膨張段階の間、連続して脈拍間隔を取得し、当該取得した連続する複数の脈拍間隔の情報を用いて表示分解能を決定した後、血圧測定のためのカフ収縮段階において算出される脈拍間隔を一拍ごとにレベルインジケータLI1に表示する、という処理が行われる。これによれば、カフ加圧の初期段階で取得する脈拍間隔の情報のみを用いるよりも表示分解能決定のために用いることができるデータ量が多くなるため、より精度よく表示分解能を決定することができる。
【0069】
(変形例5)
次に、本発明に係る第5の変形例について説明する。本変形例に係る血圧測定装置1の装置構成については実施例1の血圧測定装置1と同様であるため、実施例1と同一の符号を用いて重複する部分については省略する。本変形例においては、表示分解能決定に係る処理が上記実施例1とは異なるため、この点を中心に説明する。
【0070】
本変形例に係る血圧測定装置1では、記憶部130に、過去に血圧測定を行った際に算出した連続する複数の脈拍間隔の情報が記憶されている。なお、以下では一連の複数の脈拍間隔の情報のことを、「一群の脈拍間隔情報」ともいう。
【0071】
図9に、本変形例に係る血圧測定装置1で血圧測定を行う際の処理の流れを示す。図9に示すように、ユーザーによって血圧測定開始の操作が行われると、センサ部110が、圧力センサを初期化する(S301)。続けて、表示分解能決定部103が、記憶部130に記憶されている、前回血圧測定を実施した際の(即ち直近の)一群の脈拍間隔情報を読み出して取得し(S302)、これに基づいて表示分解能を決定する(S303)。なお、表示分解能決定は上記実施例1並びに上記変形例1又は2と同様の方法により行うことができるため、改めての説明は省略する。
【0072】
次に、カフ圧制御部120が、弁を閉じ(S304)、ポンプを駆動して(S305)カフに空気を送り込み、カフを膨張させる。その後、カフ圧制御部120は、カフ圧が所定の圧力(例えば200mHg)に達しているか否かを判定する(S306)。ここで、カフ圧が所定の圧力に達していないと判定された場合には、ステップS305に戻り、以降の処理を繰り返す。一方、ステップS306で所定の圧力に達していると判定された場合には、カフ圧制御部120はポンプを停止する(S307)。
【0073】
ステップS307の処理に続いて、カフ圧制御部120が弁を徐々に開き、カフを収縮させていく(S308)。そして、脈拍間隔算出部102は、この間に取得される脈波から、一拍ごとの脈拍間隔を算出し(S309)、これに基づいてレベルインジケータ表示内容決定部104が一拍ごとに活性化する表示セグメントSの数を決定する。そして、決定された内容を画像表示部150がレベルインジケータLI1に表示し(S310)、これによってユーザーは、血圧測定中の一拍ごとの脈拍間隔の変動を容易に視認することができる。
【0074】
また、カフが収縮する過程で、血圧値算出部101が血圧値を測定しており、ステップS311では、血圧値算出が終了したか否かの判定が行われる(S311)。ここで、血圧値算出が終了していないと判定された場合には、ステップS309に戻り、以降の処理を繰り返す。一方、ステップS311で血圧値算出が終了したと判定された場合には、カフ圧制御部120が弁を開いてカフから急速排気を行ってカフを収縮させる(S312)
。その後、画像表示部150が測定値を表示し(S313)、続けて制御部100が記憶部130に、今回算出された一群の脈拍間隔情報を記憶する処理を実行し(S314)、一連の処理を終了する。
【0075】
以上のように、本変形例では、表示分解能決定のために用いられる脈拍間隔情報は、前回血圧測定した際に記憶した一群の脈拍間隔情報を用いて行うため、十分なデータに基づいて、表示分解能を精度よく設定することができる。
【0076】
(変形例6)
なお、上記変形例では、いわゆる減圧測定の方法で血圧値を測定する際の処理について説明したが、加圧測定の方法で血圧を測定する処理にも、同様に過去の一群の脈拍間隔情報を用いて表示分解能を決定することができる。図10にこのような場合の処理の流れを示す。図10に示すように本変形例においては、カフ圧が所定圧になるまでカフを膨張させてから徐々に減圧しながら血圧を測定する減圧方式ではなく、カフ圧を加圧する過程において血圧値の測定が行われるため、ステップS306からステップS308の処理が存在しない。それ以外については、上記変形例4と同様の処理が行われる。このように、事前に取得された一群の脈拍間隔情報を用いて表示分解能を決定する方法は、加圧測定により血圧測定を行う場合において好適に用いることができる。
【0077】
<その他>
なお、上記実施例の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。例えば、上記の実施例では、レベルインジケータLI1は、左右方向に延びる直線状に表示セグメントSが配置される構成であったが、レベルインジケータは装置形状や画像表示手段151の構造に応じて、様々に構成することができる。図11A乃至C、図12A乃至C、図13A乃至Bに、このような変形例に係るレベルインジケータの表示態様を示す。
【0078】
レベルインジケータの形状は、例えば図11Aに示すレベルインジケータLI2のように、直線状ではなく円形状とすることができる。また、図11Bに示すレベルインジケータLI3のように、縦方向に延びる直線状に構成されていてもよい。さらに、図11Cに示すように、放射状に複数列配置された表示セグメントSが、内側から外側に向かって表示が活性化されていくような態様のレベルインジケータLI4とすることもできる。
【0079】
また、レベルインジケータは、必ずしも複数の表示セグメントによって構成されている必要はない。図12A乃至Cにこのような場合のレベルインジケータLI5の例を示す。図12Aは、ある時点における脈拍間隔Tを示すものとして、切れ目のないバーBが左から右に向けて延びている状態を示している。この変形例の場合には、Nは表示セグメントの個数ではなく、レベルインジケータLI5全体の表示可能領域に占める表示活性化領域の長さ(或いは面積)として算出すればよい。また、図12Bは、右側から順次バーが非表示になっていく状態を示している。そして、この際には実施例1の場合と同様に、図12AにおけるバーBのピークレベルの部分の表示が活性化したまま残っている。また、図12Cは脈拍間隔を示すバーが左から右に向けて延び、脈拍間隔Tx+1を表示している状態を示している。
【0080】
また、脈拍間隔の変動の表現方法は、上述のようなレベルインジケータ内における表示領域の増減(表示が活性化する表示セグメント数の多寡、バーの長さや面積)だけに限られない。このようなレベルインジケータの表示態様を図13A及び図13Bに示す。図13A図13Bに示すレベルインジケータは、円周の一部(円弧)と円弧の内側から円弧に向けて延在する指針とを備える形状であり、いわゆるアナログメータのような構成とな
っている。
【0081】
図13Aは、一拍ごとの脈拍間隔を示す実施例1の変形例を示す図であり、レベルインジケータLI6の指針は、一拍ごとに脈拍間隔に対応する円周上のminからmaxの間のいずれかの位置を指し示すように表示される。即ち、脈拍間隔に応じて一拍ごとに指針の角度が変動することになる。
【0082】
一方、図13Bは、一群の脈拍間隔の情報を用いて算出される平均値を基準として、一拍ごとに平均値との偏差に対応する円弧上の位置を指し示すように表示するレベルインジケータLI7の例である。具体的には、レベルインジケータLI7は、円弧の中央部に配置される一群の脈拍間隔の情報を用いて算出される平均値を示す基準線Kを標準位置として、算出される最新の脈拍間隔が平均値に対して正の偏差となる値である場合には、指針が基準線Kから右に当該偏差分振れる表示となる。一方、算出される最新の脈拍間隔が平均値に対して負の偏差となる値である場合には、指針が基準線Kから左に当該偏差分振れる表示となる。なお、算出される最新の脈拍間隔が平均値と同等(分解能に応じて同一の範囲内となる場合)には、基準線Kから指針は左右のどちらにも振れないが、平均値と同等であることを認識し易くするために、指針を点滅させるなどの専用の表示を行ってもよい。
【0083】
また、上記各実施例では、レベルインジケータをLCDで表示する例を説明したが、これに替えて、表示セグメントを複数のLED表示灯からなる構成とすることができる。このような場合には、LED表示灯の点灯が、表示セグメントの活性化に相当する。
【0084】
また、上記各実施例では、圧脈波を圧力センサで取得していたが、PPGセンサにより容積脈波を取得するようにしてもよい。また、上記各実施例では血圧測定装置を例に説明したが、脈拍を取得可能なセンサを備えるものであればこれに限らず、その他の生体情報測定装置(例えば、心電計、体組成計など)にも、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1・・・血圧測定装置
11・・・本体部
12・・・カフ部
13・・・エアチューブ
151・・・画像表示手段
100、200・・・制御部
110・・・センサ部
120・・・カフ圧制御系
130・・・記憶部
140・・・操作部
150・・・画像表示部
LI1、LI2、LI3、LI4、LI5、LI6、LI7・・・レベルインジケータ
S・・・表示セグメント
B・・・バー
K・・・基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13