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特開2024-80192測距装置、測距方法及び測距プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080192
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】測距装置、測距方法及び測距プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/483 20060101AFI20240606BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20240606BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240606BHJP
   G01S 17/894 20200101ALN20240606BHJP
【FI】
G01S7/483
G01S17/10
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G01S17/894
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193174
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 克美
(72)【発明者】
【氏名】杉山 久貴
(72)【発明者】
【氏名】泉 克彦
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA12
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA03
2F112FA03
2F112FA07
2F112FA21
2F112FA23
2F112FA45
2F112GA01
5J084AA04
5J084AA05
5J084AD01
5J084AD02
5J084BA04
5J084BA40
5J084CA03
5J084CA20
5J084CA31
5J084EA04
5J084EA11
(57)【要約】
【課題】周期的に生じる距離の誤差を低減できる測距装置、測距方法及び測距プログラムを提供する。
【解決手段】測距装置は、測定対象物に測定光を照射するレーダダイオードと、測定対象物からの反射光を受光し、反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、照射部の測定光の発光及び消灯を制御し、受光センサの露光及び非露光を制御し、露光量に基づいて測定対象物までの距離を計算する制御装置と、を備える。制御装置は、第1制御状態でレーザダイオード及び受光センサを制御することにより取得した露光量に基づいて第1計測距離を計算し、第1制御状態と異なる第2制御状態でレーザダイオード及び受光センサを制御することにより取得した露光量に基づいて実際の距離と距離誤差との関係の周期性が第1計測距離と異なる周期性となる第2計測距離を計算する。制御装置は、第1計測距離及び第2計測距離を合成することにより、合成後計測距離を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に測定光を照射する照射部と、
前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、
前記照射部の前記測定光の発光及び消灯を制御し、前記受光センサの露光及び非露光を制御し、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの距離を計算する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
第1制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて第1計測距離を計算し、
前記第1制御状態と異なる第2制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて実際の距離と距離誤差との関係の周期性が前記第1計測距離と異なる周期性となる第2計測距離を計算し、
前記第1計測距離及び前記第2計測距離を合成することにより、合成後計測距離を算出する、
ように構成された、
測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測距装置において、
前記制御装置は、
前記第2計測距離として、前記実際の距離と距離誤差との関係の周期性が、前記第1計測距離の周期性に対して逆位相となる計測距離を計算する、
ように構成された、
測距装置。
【請求項3】
請求項1に記載の測距装置において、
前記制御装置は、
前記第2計測距離として、前記実際の距離と距離誤差との関係の周期性が、前記第1計測距離の周期性の周期幅に対して異なる周期幅となる周期となる計測距離を計算する、
ように構成された、
測距装置。
【請求項4】
請求項2に記載の測距装置において
前記制御装置は、
前記照射部が第1発光時間だけ発光する発光動作と、第1消灯時間だけ消灯する消灯動作とを交互に行い、前記受光センサが前記第1発光時間と同じ第1露光時間だけ露光を行う露光動作と、前記第1消灯時間と同じ第1非露光時間だけ非露光となる非露光動作とを交互に行い、且つ、発光開始と同じタイミングで露光が開始し、消灯と同じタイミングで露光が終了する第1発光露光期間と、
前記照射部が前記第1発光時間だけ発光する発光動作と、前記第1消灯時間だけ消灯する消灯動作とを交互に行い、前記受光センサが前記第1露光時間だけ露光を行う露光動作と、前記第1非露光時間だけ非露光となる非露光動作とを交互に行い、且つ、露光開始及び露光終了のそれぞれのタイミングが、発光開始及び露光終了のそれぞれのタイミングから前記第1発光時間分だけ遅れている第2発光露光期間と、
前記受光センサが前記第1露光時間だけ露光を行う露光動作と、前記第1非露光時間だけ非露光となる非露光動作とを交互に行い、且つ、露光開始及び露光終了のそれぞれのタイミングが、発光開始及び消灯のそれぞれのタイミングから前記第1発光時間の2倍分だけ遅れている第3発光露光期間と、
を実行する前記第1制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて前記第1計測距離を計算し、
前記第1制御状態の前記第1発光露光期間、前記第2発光露光期間及び前記第3発光露光期間のそれぞれの露光開始及び露光終了タイミングから所定の時間だけ異なる前記第1発光露光期間、前記第2発光露光期間及び前記第3発光露光期間と、
を実行する前記第2制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて前記第2計測距離を計算し、
前記第2計測距離を所定の計測距離だけオフセットした後、前記第1計測距離と合成する、
ように構成された、
測距装置。
【請求項5】
請求項3に記載の測距装置において、
前記制御装置は、
前記照射部が第1発光時間だけ発光する発光動作と、第1消灯時間だけ消灯する消灯動作とを交互に行い、前記受光センサが前記第1発光時間と同じ第1露光時間だけ露光を行う露光動作と、前記第1消灯時間と同じ第1非露光時間だけ非露光となる非露光動作とを交互に行い、且つ、発光開始と同じタイミングで露光が開始し、消灯開始と同じタイミングで露光が終了する第1発光露光期間と、
前記照射部が前記第1発光時間だけ発光する発光動作と、前記第1消灯時間だけ消灯する消灯動作とを交互に行い、前記受光センサが前記第1露光時間だけ露光を行う露光動作と、前記第1非露光時間だけ非露光となる非露光動作とを交互に行い、且つ、露光開始及び露光終了のそれぞれのタイミングが、発光開始及び消灯のそれぞれのタイミングから前記第1発光時間分だけ遅れている第2発光露光期間と、
前記受光センサが前記第1露光時間だけ露光を行う露光動作と、前記第1非露光時間だけ非露光となる非露光動作とを交互に行い、且つ、露光開始及び露光終了のそれぞれのタイミングが、発光開始及び消灯のそれぞれのタイミングから前記第1発光時間の2倍分だけ遅れている第3発光露光期間と、
を実行する前記第1制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて前記第1計測距離を計算し、
前記照射部が前記第1発光時間の所定倍の第2発光時間だけ発光する発光動作と、前記第1消灯時間だけ消灯する消灯動作とを交互に行い、前記受光センサが前記第2発光時間と同じ第2露光時間だけ露光を行う露光動作と、前記第1非露光時間だけ非露光となる非露光動作とを交互に行い、且つ、発光開始と同じタイミングで露光が開始し、消灯と同じタイミングで露光が終了する第1発光露光期間と、
前記照射部が前記第2発光時間だけ発光する発光動作と、前記第1消灯時間だけ消灯する消灯動作とを交互に行い、前記受光センサが前記第2露光時間だけ露光を行う露光動作と、前記第1非露光時間だけ非露光となる非露光動作とを交互に行い、且つ、露光開始及び露光終了のそれぞれのタイミングが、発光開始及び消灯のそれぞれのタイミングから前記第2発光時間分だけ遅れている第2発光露光期間と、
前記受光センサが前記第2露光時間だけ露光を行う露光動作と、前記第1非露光時間だけ非露光となる非露光動作とを交互に行い、且つ、露光開始及び露光終了のそれぞれのタイミングが、発光開始及び消灯のそれぞれのタイミングから前記第2発光時間の2倍分だけ遅れている第3発光露光期間と、
を実行する前記第2制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて前記第2計測距離を計算する、
ように構成された、
測距装置。
【請求項6】
測定対象物に測定光を照射する照射部と、
前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、
前記照射部の前記測定光の発光及び消灯を制御し、前記受光センサの露光及び非露光を制御し、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの距離を計算する制御装置と、
を備えた測距装置に適用される測距方法であって、
前記制御装置によって、
第1制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて第1計測距離を計算し、
前記第1制御状態と異なる第2制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて実際の距離と距離誤差との関係の周期性が前記第1計測距離と異なる周期性となる第2計測距離を計算し、
前記第1計測距離及び前記第2計測距離を合成することにより、合成後計測距離を算出する、
測距方法。
【請求項7】
測定対象物に測定光を照射する照射部と、
前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、
前記照射部の前記測定光の発光及び消灯を制御し、前記受光センサの露光及び非露光を制御し、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの距離を計算する制御装置と、
を備えた測距装置の制御装置に処理を実行させる測距プログラムであって、
前記制御装置に、
第1制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて第1計測距離を計算し、
前記第1制御状態と異なる第2制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて実際の距離と距離誤差との関係の周期性が前記第1計測距離と異なる周期性となる第2計測距離を計算し、
前記第1計測距離及び前記第2計測距離を合成することにより、合成後計測距離を算出する処理を実行させる、
測距プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置、測距方法及び測距プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、温度及び電圧ドリフトによる発光パルス及び露光パルスとの間の位相ズレから発生する測距誤差を補正する測距システム(以下、「従来技術」と称呼される。)を開示する。
【0003】
従来技術は、撮像センサ上の基準画素についてのTOF信号と基準値との差分を検出し、差分に応じて位相制御信号と微調信号とを生成し、微調信号を元にTOF信号を補正し、その結果を画素毎の距離情報として出力し、位相制御信号をもとに発光信号と露光信号とのうちの少なくとも一方の位相シフトを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/208018号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術では、発光パルス及び露光パルスのタイミングのズレ、パルス形状の歪みなどにより、距離計測の正確性(実際の距離と計測距離との関係の線形性)が損なわれる場合がある。従来技術では、各パルスのタイミング調整や波形形状を修正することで、実際の距離と計測距離との関係の線形性の改善を行うが、周期的な距離誤差の歪み(即ち、実際の距離と距離誤差との正しい関係を示す理想的な線からの周期的なズレ)が十分に取り切れない場合がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、周期的に生じる距離の誤差を低減できる測距装置、距離方法及び測距プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の測距装置は、測定対象物に測定光を照射する照射部と、前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、前記照射部の前記測定光の発光及び消灯を制御し、前記受光センサの露光及び非露光を制御し、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの距離を計算する制御装置と、を備え、前記制御装置は、第1制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて第1計測距離を計算し、前記第1制御状態と異なる第2制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて実際の距離と距離誤差との関係の周期性が前記第1計測距離と異なる周期性となる第2計測距離を計算し、前記第1計測距離及び前記第2計測距離を合成することにより、合成後計測距離を算出する、ように構成されている。
【0008】
本発明の測距方法は、測定対象物に測定光を照射する照射部と、前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、前記照射部の前記測定光の発光及び消灯を制御し、前記受光センサの露光及び非露光を制御し、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの距離を計算する制御装置と、を備えた測距装置に適用される測距方法であって、前記制御装置によって、第1制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて第1計測距離を計算し、前記第1制御状態と異なる第2制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて実際の距離と距離誤差との関係の周期性が前記第1計測距離と異なる周期性となる第2計測距離を計算し、前記第1計測距離及び前記第2計測距離を合成することにより、合成後計測距離を算出する。
【0009】
本発明の測距プログラムは、測定対象物に測定光を照射する照射部と、前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、前記照射部の前記測定光の発光及び消灯を制御し、前記受光センサの露光及び非露光を制御し、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの距離を計算する制御装置と、を備えた測距装置の制御装置に処理を実行させる測距プログラムであって、前記制御装置に、第1制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて第1計測距離を計算し、前記第1制御状態と異なる第2制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて実際の距離と距離誤差との関係の周期性が前記第1計測距離と異なる周期性となる第2計測距離を計算し、前記第1計測距離及び前記第2計測距離を合成することにより、合成後計測距離を算出する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、周期的に生じる距離の誤差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の第1実施形態に係る測距装置の構成例を示す図である。
図2図2は測距装置の距離の測定原理を説明するための図である。
図3図3は理想状態のパルス形状の例を示す図である。
図4図4はパルス形状の歪みの例を示す図である。
図5A図5Aは検証方法を説明するための図である。
図5B図5Bは測定結果を説明するための図である。
図6図6は本発明の概要を説明するための図である。
図7図7は本発明の第1実施形態に係る測距装置の作動の概要を説明するための図である。
図8図8は検証結果を説明するための図である。
図9A図9Aは実際の距離と計測距離との関係を示すグラフである。
図9B図9Bは距離合成後の実際の距離と計測距離との関係を示すグラフである。
図9C図9Cは距離合成後の実際の距離と計測距離の誤差との関係を示すグラフである。
図10図10は距離データの合成方法の概要を説明するための図である。
図11図11は距離計算部及びデータ合成部が実行する処理フローを示すフローチャートである。
図12図12は本発明の第2実施形態に係る測距装置の作動の概要を説明するための図である。
図13A図13Aは検証結果を説明するための図である。
図13B図13Bは検証結果を説明するための図である。
図14図14は距離データの合成方法の概要を説明するための図である。
図15図15は距離計算部及びデータ合成部が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の全図において、同一又は対応する部分には同一の符号を付す場合がある。以下の説明では、機能ブロックを主語として処理を説明する場合があるが、処理の主語が、機能ブロックに代えて、CPU又は装置とされてもよい。
【0013】
<<第1実施形態>>
<構成>
図1は本発明の第1実施形態に係る測距装置100の構成例を示す図である。図1に示すように、測距装置100は、レーザダイオード110と、受光センサ120と、電源130と、制御装置140と、を含む。測距装置100は、外部処理装置200と互いに情報を送受信可能に接続されている。
【0014】
レーザダイオード110は、測定対象物OB1に測定光として赤外領域の波長のパルス光を照射する照射部として機能する光源である。
【0015】
受光センサ120は、受光した光を光電変換により電気信号に変換して出力する撮像素子(例えば、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor))を含む。撮像素子は、格子状に並んだ複数の画素と、周知の読み出し回路等とを含む。受光センサ120は、露光及び非露光動作を示す露光信号を発生し出力する。受光センサ120は、レーザダイオード110から出射したパルス光が測定対象物OB1にて反射した光を受光する。
【0016】
電源130は、測距装置100を駆動するための電力を供給する。
【0017】
制御装置140は、発光制御部141と、距離計算部142と、第1距離データメモリ143と、第2距離データメモリ144と、データ合成部145と、画像処理部146と、を含む。制御装置140は、CPU等のプロセッサ及びメモリ等の記憶装置(記憶媒体)を含むコンピュータにより構成することができる。CPUは、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、発光制御部141、距離計算部142、データ合成部145及び画像処理部146の各機能を実現する。第1距離データメモリ143及び第2距離データメモリ144は、データを読み出し及び書き込み可能な不揮発性の記憶装置(記憶媒体)により構成される。
【0018】
なお、制御装置140は、その一部又は全部をハードウェアにより構成することもできる。例えば、制御装置140は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いて、発光制御部141、距離計算部142、第1距離データメモリ143、第2距離データメモリ144、データ合成部145及び画像処理部146の機能の少なくとも一部を実現するようにしてもよい。
【0019】
発光制御部141は、露光信号に基づいて、レーザダイオード110が出力するパルス光(矩形パルス光)の発光時間及び消灯時間を制御する。なお、発光制御部141が、レーザダイオード110に発光時間及び消灯時間を制御するための発光信号を出力し、受光センサ120に露光動作及び非露光動作を示す露光信号を出力して、レーザダイオード110の発光時間及び消灯時間と、受光センサ120の露光動作(露光時間)及び非露光動作(非露光時間)を制御するようにしてもよい。
【0020】
受光センサ120は、パルス光が測定対象物OB1にて反射した反射光を検出する。受光センサ120は、露光信号が露光動作を示すタイミングで反射光を露光し、受光センサ120の各画素位置での露光量(電荷量)を電気信号に変換し出力する(受光データとして出力する。)。
【0021】
距離計算部142は、受光センサ120からの電気信号(露光量)に基づいて、測定対象物OB1までの距離を計算する。なお、この測定対象物OB1までの距離は、「計測距離」と称呼される。
【0022】
距離計算部142は、受光データに基づき、計測距離として、ノーマル駆動計測距離と、逆位相駆動計測距離と、を計算する。
【0023】
ノーマル駆動計測距離は、Normal駆動フレームFm2(図7を参照。)を実行することにより取得された露光量に基づいて計算された距離である。Normal駆動フレームFm2を実行するために行うレーザダイオード110の発光及び消灯の制御、並びに、受光センサ120の露光及び非露光の制御の状態は、便宜上、「第1制御状態」とも称呼される。逆位相駆動計測距離は、逆位相駆動フレームFm1(図7を参照。)を実行することにより取得された露光量に基づいて計算された距離である。逆位相駆動フレームFm1を実行するために行うレーザダイオード110の発光及び消灯の制御、並びに、受光センサ120の露光及び非露光の制御の状態は、便宜上、「第2制御状態」とも称呼される。
【0024】
第1距離データメモリ143は、距離計算部142によって計算された逆位相駆動計測距離を記憶(格納)する。第2距離データメモリ144は、距離計算部142によって計算されたノーマル駆動計測距離を記憶(格納)する。
【0025】
データ合成部145は、画素毎の逆位相駆動計測距離とノーマル駆動計測距離とを合成し、画素毎の合成後の距離を、距離データとして出力する。
【0026】
画像処理部146は、距離データに基づいて、距離画像を生成し、生成した距離画像を外部処理装置200に出力する。画像処理部146は、受光データに基づいて、赤外画像(IR画像)を生成し、外部処理装置200に出力するようにしてもよい。
【0027】
外部処理装置200は、例えば、PC(Personal Computer)等のコンピュータである。外部処理装置200は、画像処理部146から入力された距離画像を利用する。例えば、外部処理装置200には、図示しないディスプレイが接続され、外部処理装置200は、入力された距離画像をディスプレイに表示する。なお、外部処理装置200は、画像処理部146から入力された赤外画像(IR画像)を利用してもよい。
【0028】
<本発明の課題の詳細>
ここで、本発明の理解を容易にするため、本発明の課題の詳細について説明する。図2は測距装置100の距離の測定原理を説明するための図である。
【0029】
制御装置140の発光制御部141は、レーザダイオード110の発光タイミングを制御する。発光パルス及び露光パルスは、パルス幅Tを有しており、露光パルスのパルス幅Tの間に受光した反射光の露光量を電気信号に変換する。
【0030】
距離を測定するための発光露光期間は、第1の発光露光期間(A0)、第2の発光露光期間(A1)及び第3の発光露光期間(A2)を含む。
【0031】
第1の発光露光期間(A0)では、発光パルス及び露光パルスが同期している。第2の発光露光期間(A1)では、露光パルスは、発光パルスより時間Tだけ位相が遅れている。第3の発光露光期間(A2)では、露光パルスは、発光パルスよりTより長い所定時間だけ位相が遅れている。この場合において、測定対象物OB1までの距離Lは、図2の計算式(1)により計算できる(なお、計算式(1)中のcは光速を示す。S0は第1の発光露光期間(A0)の露光量を示し、S1は第2の発光露光期間(A1)の露光量を示し、S2は第3発光露光期間の露光量を示す。)。なお、第3の発光露光期間(A2)では、発光パルスがオフであってもよい。
【0032】
「測距装置100から被写体までの実際の距離」と「測距装置100により計測される距離」とを比較して計測距離の正確性を評価すると、測距装置100から被写体までの実際の距離と測距装置100により計測される距離との関係性の線形性が悪くなって、計測距離の精度が不十分な場合がある。
【0033】
線形性の劣化には様々な要因があるが、一例としては、発光パルス及び露光パルスのタイミングのズレ及びパルス形状の歪みなどの要因がある。各パルスのタイミングの調整及び波形形状を修正することで線形性の改善を行うが、距離誤差の歪み(即ち、実際の距離と距離誤差との正しい関係を示す理想的な線からの周期的なズレ)が十分に取り切れない場合がある。
【0034】
理想状態の露光パルス及び発光パルスの形状の例が、図3に示す例であるとすると、要因となるパルス形状歪みの一例としては、図4に示す露光パルスの歪みの例が挙げられる。図示は省略するが、他にも、発光パルス及び露光パルスの幅のズレ及びタイミングのズレなどが要因となる。
【0035】
このように発光パルス及び露光パルスのタイミングのズレやパルス形状の歪みなどが要因となり、計測距離の線形性が損なわれて、距離誤差が生じる場合がある。
【0036】
本願発明者が検証したところ、例えば、図5Aに示すように、測定対象物OB1までの距離を変えて、測定対象物OB1までの各距離を測距装置100によって計測した場合、図5Bの線Ln1及び線Ln11に示すように、距離誤差の歪みは、繰り返すパルスの周期に応じて周期性を持った歪みとして現れることがわかった。なお、線Ln0は理想状態の実際の距離と計測距離との関係を示す。Lmaxは計測可能な最大距離(計測最大距離)である。
【0037】
そこで、本願発明者は、図6に示すように、距離誤差が周期的な歪みとなる計測距離値1(線Ln21、線Ln31)に対して、異なる距離誤差の周期を持つ計測距離値2(線Ln22、線L32)を合成することで計測距離の線形性を向上させることができる(線Ln41、線Ln51を参照。)ことを見出した。
【0038】
例えば、基準となる計測距離値の距離誤差歪みの周期性(実際の距離と距離誤差との関係の周期性)に対して逆周期(逆位相)、または、異なる周期長となる少なくとも2つの計測距離値を合成する(なお、図6に示す例では、逆周期(逆位相)となる2つの計測距離値を合成する)ことにより、測定結果の線形性(直線性)を向上させることができる。合成は、例えば、合成対象の計測距離値を足して、合成対象の計測距離値の数で割る(平均値を算出する)ことにより行われる。合成は、重み付け平均を算出することにより行われるなど他の計算方法により行われてもよい。なお、第1実施形態では、基準となる計測距離値の距離誤差の歪みの周期性に対して逆周期(逆位相)となる2つの計測距離値を合成する例について説明する。
【0039】
<作動の概要>
図7は本発明の第1実施形態に係る測距装置100の作動の概要を説明するための図である。図7に示すように、制御装置140は、駆動フレームとして、逆位相駆動フレームFm1とNormal駆動フレームFm2とを交互に実行する。
【0040】
Normal駆動フレームFm2は、Normal発光露光フェーズPh11と、Normalデータ処理フェーズPh12とを含む。
【0041】
Normal発光露光フェーズPh11では、発光パルスが示すタイミングでレーザダイオード110が発光及び消灯し、露光パルスが示すタイミングで受光センサ120の撮像素子が露光及び非露光を行い、受光データを取得する。
【0042】
Normal発光露光フェーズPh11の第1発光露光期間T0では、発光パルスのパルス幅(highパルス幅)と、露光パルスのパルス幅(lowパルス幅)とが同じであり、且つ、発光パルスの発光開始タイミングと、露光パルスの露光開始タイミングとが一致するようになっている。
【0043】
Normal発光露光フェーズPh11の第2発光露光期間T1では、発光パルスのパルス幅(highパルス幅)と、露光パルスのパルス幅(lowパルス幅)とが同じであり、且つ、発光パルスが示す発光開始タイミング対して、露光パルスが示す露光開始タイミングが、パルス幅分だけ遅くなっており、発光パルスが示す消灯のタイミングに対して、露光パルスが示す露光終了タイミングが、パルス幅分だけ遅くなっている。
【0044】
Normal発光露光フェーズPh11の第3発光露光期間T2では、発光パルスは立ち上がらない(オフになっている)が、第1発光露光期間T0及び第2発光露光期間T1のように発光パルスに対する露光パルスのタイミングを示すと、発光パルスが示す発光開始タイミング(図7の第3発光露光期間T2の点線で示すパルス)に対して、露光パルスが示す露光開始タイミングが、パルス幅2つ分遅くなっており、発光パルスが示す消灯のタイミングに対して、露光パルスが示す露光終了タイミングが、パルス幅2つ分遅くなっている。
【0045】
データ処理フェーズPh12では、受光データに基づき、ノーマル駆動計測距離を取得する。距離計算部142は、第1発光露光期間T0に蓄積された露光量をS0として、第2発光露光期間T1に蓄積された露光量をS1として、第3発光露光期間T2に蓄積された露光量をS3として、計算式(1)により、ノーマル駆動計測距離を計算する。
【0046】
逆位相駆動フレームFm1は、逆位相発光露光フェーズPh1と、逆位相データ処理フェーズPh2とを含む。逆位相発光露光フェーズPh1では、発光パルスが示すタイミングでレーザダイオード110が発光及び消灯し、露光パルスが示すタイミングで受光センサ120の撮像素子が露光及び非露光を行い、受光データを取得する。即ち、逆位相発光露光フェーズPh1では、発光パルスの信号が立ち上がるタイミングでレーザダイオード110が発光を開始し、パルス幅の時間だけ発光した後、信号が立ち下がるタイミングで消灯する。露光パルスの信号が立ち下がるタイミングで受光センサ120の撮像素子が露光を開始し、パルス幅の時間だけ露光した後、信号が立ち上がるタイミングで露光を終了する。
【0047】
逆位相発光露光フェーズPh1の第1発光露光期間T0では、発光パルスのパルス幅(highパルス幅)と、露光パルスのパルス幅(lowパルス幅)とが同じであり、且つ、発光パルスが示す発光開始タイミングに対して、露光パルスが示す露光開始タイミングは、パルス幅の半分の幅(1/2)分だけ遅くなっており、発光パルスが示す消灯のタイミングに対して、露光パルスが示す露光終了タイミングが、パルス幅の半分の幅(1/2)分だけ遅くなっている。
【0048】
逆位相発光露光フェーズPh1の第2発光露光期間T1では、発光パルスのパルス幅(highパルス幅)と、露光パルスのパルス幅(lowパルス幅)とが同じであり、且つ、発光パルスが示す発光開始タイミングに対して、露光パルスが示す露光開始タイミングが、パルス幅分に加えてパルス幅の半分の幅(1/2)分遅くなっており、発光パルスが示す消灯タイミングに対して、露光パルスが示す露光終了タイミングが、パルス幅分に加えてパルス幅の半分の幅(1/2)分遅くなっている。
【0049】
逆位相発光露光フェーズPh1の第3発光露光期間T2では、発光パルスは立ち上がらない(オフになっている)が、第1発光露光期間T0及び第2発光露光期間T1のように発光パルスに対する露光パルスのタイミングを示すと、発光パルスが示す発光開始タイミング(図7の第3発光露光期間T2の点線で示すパルス)に対して、露光パルスが示す露光開始タイミングが、パルス幅の2つ分に加えてパルス幅の半分の幅(1/2)分遅くなっており、発光パルスが示す消灯タイミングに対して、露光パルスが示す露光終了タイミングが、パルス幅の2つ分に加えてパルス幅の半分の幅(1/2)分遅くなっている。
【0050】
Normal発光露光フェーズPh11と逆位相発光露光フェーズPh1の第1発光露光期間T0の露光タイミングを比べると、Normal発光露光フェーズPh11の露光パルスに対して、逆位相発光露光フェーズPh1の露光パルスがパルス幅の半分の幅(1/2)分遅くなっている。
【0051】
Normal発光露光フェーズPh11と逆位相発光露光フェーズPh1の第2発光露光期間T1の露光タイミングを比べると、Normal発光露光フェーズPh11の露光パルスに対して、逆位相発光露光フェーズPh1の露光パルスがパルス幅の半分の幅(1/2)分遅くなっている。
【0052】
Normal発光露光フェーズPh11と逆位相発光露光フェーズPh1の第3発光露光期間T2の露光タイミングを比べると、Normal発光露光フェーズPh11の露光パルスに対して、逆位相発光露光フェーズPh1の露光パルスがパルス幅の半分の幅(1/2)分遅くなっている。
【0053】
すなわち、逆位相発光露光フェーズPh1の第1発光露光期間T0、第2発光露光期間T1及び第3発光露光期間T2内のそれぞれの露光パルスが示す露光タイミングは、Normal発光露光フェーズPh11の第1発光露光期間T0、第2発光露光期間T1及び第3発光露光期間T2内のそれぞれの露光パルスが示す露光タイミングに対して、パルス幅の半分の幅(1/2)分だけ遅くなるようなっている。
【0054】
なお、逆位相発光露光フェーズPh1の第1発光露光期間T0、第2発光露光期間T1及び第3発光露光期間T2内のそれぞれの露光パルスが示す露光タイミングは、Normal発光露光フェーズPh11の第1発光露光期間T0、第2発光露光期間T1及び第3発光露光期間T2内のそれぞれの露光パルスが示す露光タイミングに対して、パルス幅の半分の幅(1/2)分だけ早くなるようになっていてもよい。
【0055】
データ処理フェーズPh2では、受光データに基づき、逆位相駆動計測距離を取得する。距離計算部142は、第1発光露光期間T0に蓄積された露光量をS0として、第2発光露光期間T1に蓄積された露光量をS1として、第3発光露光期間T2に蓄積された露光量をS3として、計算式(1)により、逆位相駆動計測距離を計算する。
【0056】
図8の線Ln81及び線Ln82に示すように、実際の距離と計測距離との関係を検証すると、逆位相駆動フレームFm1を実行することにより取得された複数の測定点の逆位相駆動計測距離の集合(線Ln82)は、Normal駆動フレームFm2を実行することにより取得された、複数の測定点のノーマル駆動計測距離の集合(線Ln81)に対して、計測距離のoffset(ズレ)を含んだ状態で、逆周期(逆位相)となって現れる。なお、距離のoffset量は、パルスのズレ時間(ΔT)及び光速cから、又は、一次近似により求めることができる。
【0057】
図9Aに示すように、距離計算部142は、線Ln91に示す逆位相駆動計測距離の集合を距離のoffset量だけ補正した後に、線Ln92に示すノーマル駆動計測距離の集合に合成することにより、図9Bの線Ln93及び図9Cの線Ln94に示すように、距離誤差の歪みを低減できる。
【0058】
図10は距離データの合成方法の概要を説明するための図である。距離計算部142及びデータ合成部145は、以下のS1000乃至S1040の処理を実行する。
【0059】
S1000:距離計算部142は、逆位相駆動フレームFm1を実行することにより、画素毎の逆位相駆動計測距離を含む逆位相距離データを取得し、第1距離データメモリ143に出力する。
【0060】
S1010:距離計算部142は、逆位相距離データを第1距離データメモリ143に保管(記憶、格納)する。
【0061】
S1020:距離計算部142は、Normal駆動フレームFm2を実行することにより、画素毎のノーマル駆動計測距離を含むNormal距離データを取得し、第2距離データメモリ144に出力する。
【0062】
S1030:距離計算部142は、Normal距離データを第2距離データメモリ144に保管(記憶、格納)する。
【0063】
S1040:データ合成部145は、第1距離データメモリ143から逆位相距離データを取得し、第2距離データメモリ144からNormal距離データを取得し、逆位相距離データ及びNormal距離データを合成することにより、画素毎の合成後計測距離を算出する。データ合成部145は、画素毎の合成後計測距離を含む距離データを出力する。
【0064】
<具体的作動>
図11は距離計算部142及びデータ合成部145が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【0065】
距離計算部142及びデータ合成部145はステップ1100から処理を開始し、以下に述べるステップ1105乃至ステップ1155の処理を順に実行する。
【0066】
ステップ1105:距離計算部142は、逆位相駆動フレームFm1を実行することにより、逆位相距離データを取得し、第1距離データメモリ143に出力する。
【0067】
ステップ1110:距離計算部142は、逆位相距離データを第1距離データメモリに保管(記憶、格納)する。
【0068】
ステップ1115:距離計算部142は、Normal駆動フレームFm2を実行することにより、Normal距離データを取得し、第2距離データメモリ144に出力する。
【0069】
ステップ1120:距離計算部142は、Normal距離データを第2距離データメモリ144に保管(記憶、格納)する。
【0070】
ステップ1125:データ合成部145は、ステップ1105にて取得された逆位相距離データ及びステップ1115にて取得されたNormal距離データを合成することにより、合成後計測距離を算出する。データ合成部145は、画素毎の合成後計測距離を含む距離データを出力する。
【0071】
ステップ1130:距離計算部142は、逆位相駆動フレームFm1を実行することにより、逆位相距離データを取得し、第1距離データメモリ143に出力する。
【0072】
ステップ1135:距離計算部142は、逆位相距離データを第1距離データメモリ143に保管(記憶、格納)する。
【0073】
ステップ1140:データ合成部145は、ステップ1115にて取得されたNormal距離データ及びステップ1135にて取得された逆位相距離データを合成することにより、合成後計測距離を算出する。データ合成部145は、画素毎の合成後計測距離を含む距離データを出力する。
【0074】
ステップ1145:距離計算部142は、Normal駆動フレームFm2を実行することにより、Normal距離データを取得し、第2距離データメモリ144に出力する。
【0075】
ステップ1150:距離計算部142は、Normal距離データを第2距離データメモリ144に保管(記憶、格納)する。
【0076】
ステップ1155:データ合成部145は、ステップ1130にて取得された逆位相距離データ及びステップ1145にて取得されたNormal距離データを合成することにより、画素毎の合成後計測距離を算出する。データ合成部145は、画素毎の合成後計測距離を含む距離データを出力する。
【0077】
その後、距離計算部142及びデータ合成部145は、ステップ1130に戻り、既述のステップ1130乃至ステップ1155の処理を順に再度実行する。この場合、ステップ1140にて、データ合成部145は、ステップ1150にて取得されたNormal距離データ及びステップ1130にて取得された逆位相距離データを合成することにより、合成後計測距離を算出する。データ合成部145は、画素毎の合成後計測距離を含む距離データを出力する。なお、図示は省略するが、このステップ1130乃至ステップ1155のループ処理は、所定の終了条件が成立するまで繰り返し実行し、所定の終了条件が成立した場合、ループ処理を終了し、本処理フローを一旦終了する。
【0078】
<効果>
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る測距装置100は、発光パルス及び露光パルスのタイミングのズレ、パルス形状の歪みなどにより、周期的に生じる距離誤差の歪みを低減することで、計測距離の誤差を低減できる。
【0079】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態に係る測距装置100について説明する。第2実施形態に係る測距装置100は、以下の点のみおいて、第1実施形態に係る測距装置100と相違点を有する。
・第2実施形態に係る測距装置100は、逆位相駆動フレームFm1に代えて位相周期変動駆動フレームFm11を実行する。
【0080】
以下、相違点を中心として説明する。
【0081】
<作動の概要>
図12は本発明の第2実施形態に係る測距装置100の作動の概要を説明するための図である。図12に示すように、制御装置140は、駆動フレームとして、位相周期変動駆動フレームFm11とNormal駆動フレームFm2とを交互に実行する。位相周期変動駆動フレームFm11は、位相周期変動発光露光フェーズPh21と、位相周期変動データ処理フェーズPh22とを含む。
【0082】
位相周期変動発光露光フェーズPh21では、発光パルスが示すタイミングでレーザダイオード110が発光し、露光パルスが示すタイミングで受光センサ120の撮像素子が露光を行い、受光データを取得する。位相周期変動駆動フレームFm11を実行するために行うレーザダイオード110の発光及び消灯の制御、受光センサ120の露光及び非露光の制御の状態も、便宜上、「第2制御状態」とも称呼される。
【0083】
位相周期変動発光露光フェーズPh21の第1発光露光期間T0では、発光パルスのパルス幅(highパルス幅)と、露光パルスのパルス幅(lowパルス幅)とが同じであり、且つ、発光パルスの発光開始タイミングと、露光パルスの露光開始タイミングとが一致するようになっている。更に、位相周期変動発光露光フェーズPh21の第1発光露光期間T0では、発光パルスのパルス幅(highパルス幅)及び露光パルスのパルス幅(lowパルス幅)は、Normal駆動フレームFm2の発光パルスのパルス幅(highパルス幅)及び露光パルスのパルス幅(lowパルス幅)の所定倍(本例では、1.5倍)になっている。
【0084】
位相周期変動発光露光フェーズPh21の第2発光露光期間T1では、発光パルスのパルス幅(highパルス幅)と露光パルスのパルス幅(lowパルス幅)とが同じであり、且つ、これらのそれぞれのパルス幅は、Normal駆動フレームFm2の発光パルスのパルス幅(highパルス幅)及び露光パルスのパルス幅(lowパルス幅)の所定倍(本例では、1.5倍)になっている。更に、露光パルスが示す露光開始タイミングが、発光パルスが示す発光開始タイミングに対して、パルス幅分だけ遅れており、露光パルスが示す露光終了タイミングが、発光パルスが示す消灯タイミングに対して、パルス幅分だけ遅れるようになっている。
位相周期変動発光露光フェーズPh21の第3発光露光期間T2では、発光パルスは立ち上がらず(オフになっており)、露光パルスが所定のタイミングで立ち下がり、露光パルスのパルス幅(lowパルス幅)の所定倍(本例では、1.5倍)になっている。位相周期変動発光露光フェーズPh21の第3発光露光期間T2では、発光パルスは立ち上がらない(オフになっている)が、第1発光露光期間T0及び第2発光露光期間T1のように発光パルスに対する露光パルスのタイミングを示すと、発光パルスが示す発光開始タイミング(図12の第3発光露光期間T2の点線で示すパルス)に対して、露光パルスが示す露光開始タイミングが、パルス幅2つ分遅くなっており、発光パルスが示す消灯のタイミングに対して、露光パルスが示す露光終了タイミングが、パルス幅2つ分遅くなっている。
【0085】
データ処理フェーズPh22では、受光データに基づき、位相周期変動計測距離を取得する。距離計算部142は、第1発光露光期間T0に蓄積された露光量をS0として、第2発光露光期間T1に蓄積された露光量をS1として、第3発光露光期間T2に蓄積された露光量をS3として、計算式(1)により、位相周期変動計測距離を計算する。
【0086】
図13Aに示すように、図5A及び図5Bに示した例と同様、測定対象物OB1までの距離を変えて、測定対象物OB1までの各距離を測距装置100によって計測した場合の位相周期変動計測距離の集合(線Ln131)を検証すると、ノーマル駆動計測距離の集合(線Ln132)の距離誤差の周期性に対して、異なる距離誤差の周期性を有することができる。
【0087】
図13Aに示すように、距離計算部142は、線Ln131に示す位相周期変動計測距離の集合を、線Ln132に示すノーマル駆動計測距離の集合に合成することにより、図13Bの線Ln133に示すように、距離誤差の歪みを抑制することができる。
【0088】
距離計算部142は、ノーマル駆動計測距離及び位相周期変動計測距離が共通して計測できる0より大きく且つ計測最大距離Lmax以下の範囲において、ノーマル駆動計測距離と位相周期変動計測距離とを合成することにより、距離誤差の歪みを抑制できる。
【0089】
図14は距離データの合成方法の概要を説明するための図である。距離計算部142は、以下のS1400及びS1410の処理を繰り返し実行する。
【0090】
S1400:距離計算部142は、位相周期変動駆動フレームFm11を実行することにより、画素毎の位相周期変動計測距離を含む位相周期変動距離データを取得し、第1距離データメモリ143に出力する。
【0091】
S1410:距離計算部142は、位相周期変動距離データを第1距離データメモリ143に保管(記憶、格納)する。
【0092】
S1420:距離計算部142は、Normal駆動フレームFm2を実行することにより、画素毎のノーマル駆動計測距離を含むNormal距離データを取得し、第2距離データメモリ144に出力する。
【0093】
S1430:距離計算部142は、Normal距離データを第2距離データメモリ144に保管(記憶、格納)する。
【0094】
S1440:データ合成部145は、第1距離データメモリ143から位相周期変動距離データを取得し、第2距離データメモリ144からNormal距離データを取得し、位相周期変動距離データ及びNormal距離データを合成することにより、画素毎の合成後計測距離を算出する。データ合成部145は、画素毎の合成後計測距離を含む距離データを出力する。
【0095】
<具体的作動>
図15は距離計算部142及びデータ合成部145が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【0096】
距離計算部142及びデータ合成部145はステップ1500から処理を開始し、以下に述べるステップ1505乃至ステップ1555の処理を順に実行する。
【0097】
ステップ1505:距離計算部142は、位相周期変動駆動フレームFm11を実行することにより、位相周期変動距離データを取得し、第1距離データメモリ143に出力する。
【0098】
ステップ1510:距離計算部142は、位相周期変動距離データを第1距離データメモリ143に保管(記憶、格納)する。
【0099】
ステップ1515:距離計算部142は、Normal駆動フレームFm2を実行することにより、Normal距離データを取得し、第2距離データメモリ144に出力する。
【0100】
ステップ1520:距離計算部142は、Normal距離データを第2距離データメモリ144に保管(記憶、格納)する。
【0101】
ステップ1525:データ合成部145は、ステップ1105にて取得された位相周期変動距離データ及びステップ1115にて取得されたNormal距離データを合成することにより、画素毎の合成後計測距離を算出する。データ合成部145は、画素毎の合成後計測距離を含む距離データを出力する。
【0102】
ステップ1530:距離計算部142は、位相周期変動駆動フレームFm11を実行することにより、位相周期変動距離データを取得し、第1距離データメモリ143に出力する。
【0103】
ステップ1535:距離計算部142は、位相周期変動距離データを第1距離データメモリ143に保管(記憶、格納)する。
【0104】
ステップ1540:データ合成部145は、ステップ1115にて取得されたNormal距離データ及びステップ1135にて取得された位相周期変動距離データを合成することにより、画素毎の合成後計測距離を算出する。データ合成部145は、画素毎の合成後計測距離を含む距離データを出力する。
【0105】
ステップ1545:距離計算部142は、Normal駆動フレームFm2を実行することにより、Normal距離データを取得し、第2距離データメモリ144に出力する。
【0106】
ステップ1550:距離計算部142は、Normal距離データを第2距離データメモリ144に保管(記憶、格納)する。
【0107】
ステップ1555:データ合成部145は、ステップ1130にて取得された位相周期変動距離データ及びステップ1545にて取得されたNormal距離データを合成することにより、画素毎の合成後計測距離を算出する。データ合成部145は、画素毎の合成後計測距離を含む距離データを出力する。
【0108】
その後、距離計算部142及びデータ合成部145は、ステップ1530に戻り、既述のステップ1530乃至ステップ1555の処理を順に再度実行する。この場合、ステップ1540にて、データ合成部145は、ステップ1550にて取得されたNormal距離データ及びステップ1530にて取得された位相周期変動距離データを合成することにより、合成後計測距離を算出する。データ合成部145は、画素毎の合成後計測距離を含む距離データを出力する。なお、図示は省略するが、このループ処理は、所定の終了条件が成立するまで繰り返し実行し、所定の終了条件が成立した場合、ループ処理を終了し、本処理フローを一旦終了する。
【0109】
<効果>
以上説明したように、本発明の第2実施形態に係る測距装置100は、発光パルス及び露光パルスのタイミングのズレ、パルス形状の歪みなどにより、周期的に生じる距離誤差の歪みを低減することで、計測距離の誤差を低減できる。
【0110】
<<変形例>>
本発明は上記各実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。更に、上記各実施形態は、本発明の範囲を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。例えば、測距装置100の変形例は、基準となる計測距離値の距離誤差歪みの周期性に対して逆周期(逆位相)、または、異なる周期長(周期幅)となる3つ以上の計測距離値を合成して、距離データを出力するようにしてもよい。上記第1実施形態において、逆位相発光露光フェーズPh1の第3発光露光期間T2及びNormal発光露光フェーズPh11の第3発光露光期間T2が省略されていてもよい。上記第2実施形態において、位相周期変動発光露光フェーズPh21の第3発光露光期間T2及びNormal発光露光フェーズPh11の第3発光露光期間T2が省略されていてもよい。
【0111】
なお、本発明は、以下の構成をとることもできる。
【0112】
[1]
測定対象物に測定光を照射する照射部と、
前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、
前記照射部の前記測定光の発光及び消灯を制御し、前記受光センサの露光及び非露光を制御し、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの距離を計算する制御装置と、
を備えた測距装置に適用される測距方法であって、
前記制御装置によって、
第1制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて第1計測距離を計算し、
前記第1制御状態と異なる第2制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて実際の距離と距離誤差との関係の周期性が前記第1計測距離と異なる周期性となる第2計測距離を計算し、
前記第1計測距離及び前記第2計測距離を合成することにより、合成後計測距離を算出する、
測距方法。
【0113】
[2]
測定対象物に測定光を照射する照射部と、
前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、
前記照射部の前記測定光の発光及び消灯を制御し、前記受光センサの露光及び非露光を制御し、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの距離を計算する制御装置と、
を備えた測距装置の制御装置に処理を実行させる測距プログラムであって、
前記制御装置に、
第1制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて第1計測距離を計算し、
前記第1制御状態と異なる第2制御状態で前記照射部の前記測定光の発光及び消灯と、前記受光センサの露光及び非露光とを制御することにより取得した前記露光量に基づいて実際の距離と距離誤差との関係の周期性が前記第1計測距離と異なる周期性となる第2計測距離を計算し、
前記第1計測距離及び前記第2計測距離を合成することにより、合成後計測距離を算出する処理を実行させる、
測距プログラム。
【符号の説明】
【0114】
100…測距装置、110…レーザダイオード、120…受光センサ、130…電源、140…制御装置、141…発光制御部、142…距離計算部、143…第1距離データメモリ、144…第2距離データメモリ、145…データ合成部、146…画像処理部、200…外部処理装置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15